説明

放熱器

【課題】 本発明は、ペルチェ素子を用いて重要部品の温度を一定に保つ必要のあるデバイスに用いる放熱器に係り、より少ない電力で所期の効果を得ることのできる放熱器を提供することを目的とする。
【解決手段】 ペルチェ素子を用いて重要部品の温度の安定化を図るデバイスの筐体の表面に、凸状の突片からなる放熱フィンを平行に複数配設し、各放熱フィン間の流路に、強制冷却ファンからの冷却風を流下させる放熱器に於て、前記放熱フィンの冷却風の上流側に、一定値より低い周囲温度で前記流路を閉鎖する可動部材を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱器に係り、詳しくはペルチェ素子を用いて重要部品の温度を一定に保つデバイスに用いる放熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、冷却,加熱効果のある電子部品としてペルチェ素子が広く知られており、従来、重要部品の温度を一定に保つ必要のあるデバイスでは、このペルチェ素子を用いて温度の安定化が図られている。
このように温度を一定に保つ必要のあるデバイスの例として、長距離・大容量伝送用の光送受信機のLDモジュールが挙げられ、このLDモジュールでは、周囲温度が25℃より上昇した場合にはペルチェ素子にLDモジュールを冷却する方向に電流を流し、また、25℃より低下した場合は逆方向に電流を流してLDモジュールを加熱することにより温度の安定化を図っている。
【0003】
そして、高温に於ては回路やデバイス自体の発熱に加えてペルチェ素子も発熱するため、これを十分放熱できるだけの表面積の大きな(熱抵抗の小さな)放熱器が用いられている。
而して、従来、この種の放熱器は、図11及び図12に示す光送信モジュール1のように筐体(放熱筐体)3を放熱器として兼用させたものが一般的で、最小限の占有体積で最大の放熱効果(最少の熱抵抗)を得るため、熱伝導度のよい材料(例えば、アルミや銅等)で筐体3を形成し、更に、表面積を稼ぎつつ強制冷却ファンからの冷却風を妨げないように、筐体3の上部5に凸状の突片からなる放熱フィン7を冷却風の流れに沿って平行に複数配設して、各放熱フィン7間の流路(溝)8に強制冷却ファンからの冷却風を流下させる構造となっている。
【0004】
そして、前記放熱フィン7は、筐体3の製造時にこれと一体に形成され、或いは筐体3と別途に削り出し等で製造されて筐体3の上部5に固着された構造となっており、放熱フィン7が取り付く筐体3の上部5の裏面側に、ペルチェ素子9やチップ11を封止したLDモジュール13が固着された構造となっている。
【特許文献1】特開2006−86396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし乍ら、上述の如き構造の放熱器は、発熱量が最大となる高温での放熱効率を第一の目的として設計されているため、低温でも放熱効率がよい。
このため、低温時にデバイスの温度を一定に保つために大電流を流してペルチェ素子を加熱しなければならず、加熱に要する電力が大きくなってしまう欠点があった。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、ペルチェ素子を用いて重要部品の温度を一定に保つ必要のあるデバイスに用いる放熱器に改良を加え、より少ない電力で所期の効果を得ることのできる放熱器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ペルチェ素子を用いて重要部品の温度の安定化を図るデバイスの筐体の表面に、凸状の突片からなる放熱フィンを平行に複数配設し、各放熱フィン間の流路に、強制冷却ファンからの冷却風を流下させる放熱器に於て、前記放熱フィンの冷却風の上流側に、一定値より低い周囲温度で前記流路を閉鎖する可動部材を設けたことを特徴とする。
【0007】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放熱器に於て、前記可動部材は、放熱フィンの上流側端部に固着され、一定値以上の周囲温度で断面L字状の形状に回復して前記流路を開放し、一定値より低い周囲温度で平坦な形状に変形されて前記流路を閉鎖する形状記憶合金製の開閉金具であることを特徴とする。
更に、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の放熱器に於て、前記開閉金具は、総ての放熱フィンの上流側端部に固着されていることを特徴とし、請求項4に係る発明は、請求項2に記載の放熱器に於て、前記開閉金具は、ペルチェ素子の取付位置に応じて、放熱フィンの上流側端部に固着されていることを特徴とする。
【0008】
一方、請求項5に係る発明は、請求項1に記載の放熱器に於て、前記可動部材は、筐体の表面に回転可能に取り付き、前記流路を開閉する回転フィンで、該回転フィンは形状記憶合金からなる感温アクチュエータに接続され、該感温アクチュエータは、一定値以上の周囲温度で形状を回復して前記回転フィンを回転させて前記流路を開放し、一定値より低い周囲温度で前記流路を回転フィンで閉鎖することを特徴とする。
【0009】
そして、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の放熱器に於て、前記感温アクチュエータは、一定値以上の周囲温度で伸長する形状に回復するコイル状の形状記憶合金バネと、該形状記憶合金バネのバネ力に抗するバネ力を持ったコイルバネとからなり、該感温アクチュエータと前記回転フィンとの間にワイヤが接続されると共に、該回転フィンに前記コイルバネと反対方向へ張力を与える第二のコイルバネが、回転フィンにワイヤを介して接続されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る発明は、ペルチェ素子を用いて重要部品の温度の安定化を図るデバイスの筐体の表面に、一定値より低い周囲温度で該表面を覆い、一定値以上の周囲温度で筐体の表面から離間するように形状を回復する形状記憶合金からなる可動部材を装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
各請求項に係る発明によれば、従来に比し少ないペルチェ素子の消費電力でデバイスの温度を一定に保つことができることとなった。
そして、請求項3に係る発明によれば、開閉金具を総ての放熱フィンの上流側端部に固着することで、デバイスの仕様に応じペルチェ素子の取付位置が異なっても一つの筐体で総ての仕様に対応できる。
【0012】
また、請求項4に係る発明のように、ペルチェ素子の取付位置に応じて開閉金具を放熱フィンの上流側端部に固着すれば、開閉金具の個数を軽減して部品点数と取付工数の削除を図ることができる。
更に、請求項6の発明によれば、可動部材たる回転フィンと感温部たる感温アクチュエータを分離した構造としたため、感温アクチュエータはペルチェ素子と熱的に近い位置に設置し、回転フィンはペルチェ素子よりも風上側に置くといった最適設計を容易に行える利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図4は請求項1乃至請求項3に係る発明の一実施形態を示し、図1に於て、15は図11の光送信モジュールと同様、図示しない光送信モジュールの筐体(放熱筐体)の上部表面に平行に配設した複数の凸状の突片からなる放熱フィンで、これらの放熱フィン15は筐体の製造時に筐体と一体に形成され、放熱フィン15はアルミや銅等の熱伝導度のよい材料で形成されている。
【0014】
そして、放熱フィン15が形成された筐体の上部の裏面側にペルチェ素子やチップを封止したLDモジュールが取り付き、図12のLDモジュール13と同様、本実施形態に於ても、周囲温度が25℃より上昇した場合にペルチェ素子にLDモジュールを冷却する方向に電流を流し、周囲温度が25℃より低下した場合は、ペルチェ素子にLDモジュールを冷却する方向に電流を流して温度の安定化を図るようになっている。
【0015】
尚、本実施形態は、放熱フィン15を筐体に一体形成した光送信モジュールに本発明を適用したものであるが、別途製造した放熱フィンを筐体の上部に複数取り付けた光送信モジュールに本発明を適用することも可能である。
そして、図1に示すように強制冷却ファン(図示せず)からの冷却風Wが、放熱フィン15間の流路(溝)17を流下するようになっているが、本実施形態は、上述の如き従来と同様の構成に加え、総ての放熱フィン15の冷却風Wの上流側端部19に、一定値(一例として25℃)より低い低温時に前記流路17を閉鎖する可動部材を取り付けたことを特徴とする。
【0016】
図2乃至図4に示すように可動部材は、一定値(25℃)より低い低温にて平面状に加工されて、一定値(25℃)以上の高温で断面L字状の形状を回復する形状記憶合金からなる薄肉な板状の開閉金具21で、その一端側21a側が放熱フィン15の上流側端部19にネジ止め,接着,スポット溶接等の手段で固着されている。
そして、図4に示すように前記開閉金具21は、夫々、周囲温度が一定値(25℃)より低い低温時に平坦な形状を利用して放熱フィン15間の流路17の入口を閉鎖し、そして、周囲温度が一定値(25℃)以上の高温に達すると、図1及び図3に示すように断面L字状の形状を回復して流路17の入口を開放するように構成されている。
【0017】
本実施形態はこのように構成されており、筐体内に組み込まれたLDモジュールは、既述したように周囲温度が25℃以上に上昇した場合にペルチェ素子にLDモジュールを冷却する方向に電流を流し、周囲温度が25℃より低下した場合はLDモジュールを加熱するように逆方向に電流を流して温度の安定化を図るが、斯様に周囲温度が25℃以上の高温になると、図4の如く平坦な形状に変形して放熱フィン15間の流路17を閉鎖していた開閉金具21は、図1及び図3に示すように断面L字状の形状を回復して流路17の入口を開放するため、強制冷却ファンからの冷却風Wが放熱フィン15間の流路17を流下して従来と同様な放熱特性が得られることとなる。
【0018】
そして、周囲温度が25℃より低下すると、既述したようにペルチェ素子に逆方向の電流を流してペルチェ素子を加熱するが、斯様に周囲温度が低下すると、図4の如く開閉金具21は平坦な形状に変形して流路17を閉鎖して冷却風Wの流入を妨げるため、放熱フィン15の熱抵抗が大きくなって放熱特性が悪化し、この結果、少ない電力でペルチェ素子が速やかに加熱される。そして、周囲温度が再び25℃以上の高温になると、開閉金具21が断面L字状の形状を回復して流路17の入口を開放するため、良好な放熱特性が回復する。
【0019】
このように本実施形態は、周囲温度が一定値以上の高温に達すると、放熱フィン15の上流側端部19に固着した開閉金具21が断面L字状の形状を回復して流路17を開放するため、放熱フィン15の良好な放熱特性が確保でき、また、周囲温度が一定値より低下すると、開閉金具21が流路17の通風をブロックして放熱フィン15の熱抵抗が大きくなるように構成したので、従来に比し少ないペルチェ素子の消費電力でLDモジュールの温度を一定に保つことができることとなった。
【0020】
また、本実施形態は、開閉金具21を総ての放熱フィン15の上流側端部19に固着したので、デバイスの仕様に応じペルチェ素子の取付位置が異なっても、一つの筐体で総ての仕様に対応できる利点を有する。
尚、斯様に開閉金具21を総ての放熱フィン15に固着せず、ペルチェ素子の取付位置に応じて開閉金具21を放熱フィン15の上流側端部19に適宜固着してもよく、この請求項1,請求項2及び請求項4の一実施形態によれば、開閉金具の個数を軽減して部品点数と取付工数の削除を図ることが可能である。
【0021】
図5乃至図8は請求項1,請求項5及び請求項6に係る発明の一実施形態を示し、本実施形態は、前記開閉金具21に代え、放熱フィン15の冷却風Wの上流側に、前記流路17を開閉する正面視矩形状の回転フィン(可動部材)23を複数装着したもので、回転フィン23は夫々、放熱フィン15と同軸上に軸支した回転軸25によって、図示しない筐体(放熱筐体)の上部表面に回転可能に並設されている。
【0022】
そして、図5に示すように回転フィン23の向きが放熱フィン15と一直線上にあるとき、回転フィン23は放熱フィン15間の流路17の入口側を開放し、そして、図8に示すように回転フィン23が矢印A方向へ回転すると、回転フィン23の左右端部が夫々隣接する回転フィン23の左右端部に当接して、流路17の入口を閉鎖するようになっている。
【0023】
次に、回転フィン23の開閉駆動機構を説明すると、図5に於て、27はペルチェ素子と熱的に近い筐体の上部表面に固着された感温アクチュエータで、図6及び図7に示すように感温アクチュエータ27は、断面コ字状に形成された平面視矩形状のケーシング29と、該ケーシング29の前後の側壁31,33を挿通して略中間に平板状の境界部35が形成された作動軸37と、該境界部35を挟んでケーシング29内の前後に収容された形状記憶合金バネ39と通常のコイルバネ41とからなり、両バネ39,41の中央を作動軸37が挿通している。
【0024】
而して、感温アクチュエータ27は、放熱フィン15と平行にケーシング29が筐体の上部表面に固着され、前側の側壁31から突出する作動軸37の端部に1本のワイヤ43の一端が接続されている。そして、図5に示すように該ワイヤ43は、筐体の上部表面に装着されたローラ45により回転フィン23方向へ平面視L字状に配線されて、各回転フィン23の上部の一端側に順次接続されている。
【0025】
そして、前記形状記憶合金バネ39は、一定値(25℃)以上の高温で図7の如く伸長した状態に形状を回復する形状記憶合金からなるコイル状のバネ部材で、一定値(25℃)より低い低温時に図6の如く伸縮した形状に変形されている。そして、前記コイルバネ41は、該形状記憶合金バネ39のバネ力(伸長)に抗するバネ力を持った一般的なバネ部材である。
【0026】
このため、感温アクチュエータ27の周囲温度が一定値(25℃)より低い低温時には、図6の如く形状記憶合金バネ39が伸縮してコイルバネ41が伸長するため、前記境界部35と作動軸37を介してワイヤ45が矢印B方向に引っ張られて、図8に示すように各回転フィン23が矢印A方向に回転するようになっている。そして、斯様に各回転フィン23が矢印A方向に回転して図6の如くコイルバネ41が側壁31と境界部35との間で最大限に伸長したとき、図8に示すように各回転フィン23の左右端部が、夫々、隣接する回転フィン23の左右端部に当接して、流路17の入口を閉鎖するように設計されている。
【0027】
また、図5中、47は各回転フィン23に前記コイルバネ41と反対方向(図8中、矢印C方向)へ張力を与える第二のコイルバネで、該コイルバネ47と各回転フィン23との間に、ローラ49を介して平面視L字状に配線されたワイヤ51が接続されている。
従って、上述したようにコイルバネ41が回転フィン23を矢印A方向へ回転させる場合、コイルバネ41はこのコイルバネ47のバネ力に抗して回転フィン23を同方向へ回転させることとなる。
【0028】
そして、感温アクチュエータ27の周囲温度が一定値(25℃)以上になると、図7に示すように形状記憶合金バネ39は伸長した形状を回復するため、前記コイルバネ47による張力との相乗作用でワイヤ43が矢印D方向に繰り出されて回転フィン23が矢印C方向へ回転する。そして、図7に示すように形状記憶合金バネ39が側壁33と境界部35との間で最大限に伸長したとき、図5に示すように各回転フィン23が放熱フィン15と一直線上になって、放熱フィン15間の流路17の入口側を開放するように設計されている。
【0029】
本実施形態はこのように構成されているから、感温アクチュエータ27の周囲温度が一定値(25℃)以上になると、図7の如く形状記憶合金バネ39が伸長した形状を回復する。そして、コイルバネ47による張力との相乗作用でワイヤ43が矢印D方向に繰り出されて、回転フィン23が図8の状態から矢印C方向へ回転して図5の如く放熱フィン15間の流路17の入口側を開放するため、放熱フィン15の良好な放熱特性が確保できる。
【0030】
そして、周囲温度が一定値より低下すると、図6の如く形状記憶合金バネ39が伸縮してコイルバネ41が伸長するため、ワイヤ45が矢印B方向に引っ張られて図8の如く各回転フィン23が矢印A方向に回転して流路17の入口を閉鎖する。
このように本実施形態は、周囲温度に応じ感温アクチュエータ27で回転フィン23の向きを変えて、流路17への冷却風Wの流入を調整するように構成したので、本実施形態によっても、図1の実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能で、従来に比し少ないペルチェ素子の消費電力でLDモジュールの温度を一定に保つことができることとなった。
【0031】
また、本実施形態は、可動部材たる回転フィン23と、感温部たる感温アクチュエータ27を分離した構造としたため、感温アクチュエータ27はペルチェ素子と熱的に近い位置に設置し、回転フィン23はペルチェ素子よりも風上側に置くといった最適設計を容易に行える利点を有する。
図9及び図10は請求項7に係る発明の一実施形態を示し、図中、53はアルミや銅等の熱伝導度のよい材料で形成された光送信モジュールの筐体(放熱筐体)で、図12の従来例と同様、その上部55の裏面側にペルチェ素子やチップを封止したLDモジュールが固着されている。
【0032】
また、筐体53の上部55の表面には、図9の如く断面L字状の形状記憶を持たせ、一定値(25℃)より低い低温にて平面状に加工した4枚のNi−Ti合金の形状記憶合金からなる可動フィン(可動部材)57が同方向に並べて装着されており、筐体55の上部表面の多くの領域が、平面状に展開した可動フィン57で覆われるようになっている。
そして、可動フィン57の周囲温度が一定値(25℃)以上の高温になると、図9に示すように可動フィン57が断面L字状の形状を回復してその一片59が筐体55の上部表面から離間して上方へ起立するため、冷却風Wが一片59間の流路61を流下する。
【0033】
また、周囲温度が一定値(25℃)より下がると、図10に示すように可動フィン57が平面状に変形して、筐体55の上部表面の多くの領域が平面状の可動フィン57で覆われるようになっている。
本実施形態はこのように構成されているから、既述したように可動フィン57の周囲温度が一定値(25℃)以上の高温になると、図9の如く可動フィン57が断面L字状の形状を回復して、その一片59が筐体55の上部表面から離間して上方へ起立するため、筐体53の上部55が流路61を流下する冷却風Wに触れて良好な放熱効果が得られる。
【0034】
また、可動フィン57の周囲温度が一定値(25℃)より下がると、図10に示すように可動フィン57が平面状に変形して、筐体55の上部表面の多くの領域が平面状の可動フィン57で覆われる。
而して、アルミの熱伝導度が237W/(m・k)、銅の熱伝導度が390W/(m・k)であるのに対し、代表的な形状記憶合金であるNi−Ti合金の熱伝導度は20W/(m・k)と悪いため、図10の如く可動フィン57が平面状に変形して筐体55の上部表面の多くの領域が可動フィン57で覆われると、筐体53の熱抵抗が大きくなる。
【0035】
このように本実施形態は、可動フィン57の周囲温度が一定値(25℃)以上の高温になると、図9の如く可動フィン57が断面L字状の形状を回復して、筐体53の上部表面が冷却風Wに触れ、また、可動フィン57の周囲温度が一定値(25℃)より下がると、図10に示すように可動フィン57が平面状に変形して筐体55の上部表面を覆って放熱効率を悪くするように構成したので、既述した各実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能で、従来に比し少ないペルチェ素子の消費電力でLDモジュールの温度を一定に保つことができることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】請求項1乃至請求項3の一実施形態に係る放熱器の放熱フィンとこれに取り付く開閉金具の全体斜視図である。
【図2】放熱フィンとこれに取り付く開閉金具の部分斜視図である。
【図3】開閉金具の動作を説明する放熱フィンと開閉金具の部分斜視図である。
【図4】開閉金具の動作を説明する放熱フィンと開閉金具の部分斜視図である。
【図5】請求項1,請求項5及び請求項6の一実施形態に係る放熱器の放熱フィンと回転フィン,感温アクチュエータの平面図である。
【図6】感温アクチュエータの構造を示す断面図である。
【図7】感温アクチュエータの構造を示す断面図である。
【図8】回転フィンの動作を説明する放熱フィンと回転フィン,感温アクチュエータの平面図である。
【図9】請求項7の一実施形態に係る筐体(放熱筐体)の全体斜視図である。
【図10】低温時に於ける筐体の全体斜視図である。
【図11】放熱筐体を用いた従来の光送信モジュールの全体斜視図である。
【図12】図11の光送信モジュールの断面図である。
【符号の説明】
【0037】
15 放熱フィン
17,61 流路
19 上流側端部
21 開閉金具(可動部材)
23 回転フィン(可動部材)
25 回転軸
27 感温アクチュエータ
29 ケーシング
31,33 側壁
35 境界部
37 作動軸
39 形状記憶合金バネ
41,47 コイルバネ
43,51 ワイヤ
45,49 ローラ
53 筐体(放熱筐体)
57 可動フィン(可動部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルチェ素子を用いて重要部品の温度の安定化を図るデバイスの筐体の表面に、凸状の突片からなる放熱フィンを平行に複数配設し、各放熱フィン間の流路に、強制冷却ファンからの冷却風を流下させる放熱器に於て、
前記放熱フィンの冷却風の上流側に、一定値より低い周囲温度で前記流路を閉鎖する可動部材を設けたことを特徴とする放熱器。
【請求項2】
前記可動部材は、放熱フィンの上流側端部に固着され、一定値以上の周囲温度で断面L字状の形状に回復して前記流路を開放し、一定値より低い周囲温度で平坦な形状に変形されて前記流路を閉鎖する形状記憶合金製の開閉金具であることを特徴とする請求項1に記載の放熱器。
【請求項3】
前記開閉金具は、総ての放熱フィンの上流側端部に固着されていることを特徴とする請求項2に記載の放熱器。
【請求項4】
前記開閉金具は、ペルチェ素子の取付位置に応じて、放熱フィンの上流側端部に固着されていることを特徴とする請求項2に記載の放熱器。
【請求項5】
前記可動部材は、筐体の表面に回転可能に取り付き、前記流路を開閉する回転フィンで、該回転フィンは形状記憶合金からなる感温アクチュエータに接続され、
該感温アクチュエータは、一定値以上の周囲温度で形状を回復して前記回転フィンを回転させて前記流路を開放し、一定値より低い周囲温度で前記流路を回転フィンで閉鎖することを特徴とする請求項1に記載の放熱器。
【請求項6】
前記感温アクチュエータは、一定値以上の周囲温度で伸長する形状に回復するコイル状の形状記憶合金バネと、該形状記憶合金バネのバネ力に抗するバネ力を持ったコイルバネとからなり、
該感温アクチュエータと前記回転フィンとの間にワイヤが接続されると共に、該回転フィンに前記コイルバネと反対方向へ張力を与える第二のコイルバネが、回転フィンにワイヤを介して接続されていることを特徴とする請求項5に記載の放熱器。
【請求項7】
ペルチェ素子を用いて重要部品の温度の安定化を図るデバイスの筐体の表面に、一定値より低い周囲温度で該表面を覆い、一定値以上の周囲温度で筐体の表面から離間するように形状を回復する形状記憶合金からなる可動部材を装着したことを特徴とする放熱器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−192751(P2008−192751A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24454(P2007−24454)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000237662)富士通アクセス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】