説明

放熱板ユニット及び電子回路装置

【課題】簡易的な構成で複数の発熱部品の放熱を効果的に行う技術を提供する。
【解決手段】電子回路装置1には、発熱する複数の電子部品として第1のIC51と第2のIC52が備わる。そして、第1のIC51と第2のIC52には複合放熱板10が共通に取りつけられ、ビス91、92によって基板80に固定されている。なおここでは、第1のIC51の発熱量が第2のIC52の発熱量より多い。複合放熱板10は、第1の放熱板20と第2の放熱板30とを備えており、それらは、熱分離部材40を介して一体になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板ユニット及び電子回路装置に係り、例えば、複数の発熱部品を放熱する機能を備えた放熱板ユニット及びその様な放熱板ユニットと複数の発熱部品を備えた電子回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路装置にはIC等の各種の電子部品が搭載されている。そのよう電子部品の中には、発熱量が多く、放熱板等を取りつける必要がある部品もある。そして、発熱量が多い場合には、放熱面積を広げるために多数のフィンを設けたヒートシンクを採用した技術が知られている。また、放熱板を複数回折り曲げ、放熱面積を大きくし、効率良く放熱する技術(特許文献1参照)もある。
【0003】
ここで、図8(a)及び(b)に複数の電子部品に対して放熱板を取りつけた電子回路装置の例を示す。図8(a)は側面図であり、(b)は平面図である。基板180には第1のIC151と第2のIC152が取りつけられて、それぞれに放熱板111、112がビス191で固定されている。このように発熱部品(電子部品)それぞれに放熱板が取りつけられるのが一般的である。そして、発熱量に応じて、放熱板111、112の厚さや放熱面積が適宜変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3153291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8に示したように、発熱量の異なる部品がある場合、相互の熱の影響を受けないように、それぞれの部品に放熱板を取りつけて熱分離している。しかし、取り付け時には基板やシャーシに余分に穴をあけたり、余分なビスが必要となる等の課題があり、それらを解決する技術が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、簡易的な構成で複数の発熱部品の放熱を効果的に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る装置は、放熱板ユニットに関する。この放熱板ユニットは、基板に配置された第1の部品に発生する熱を放熱する第1の放熱板と、前記基板に配置された第2の部品に発生する熱を放熱する第2の放熱板と、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板とに挟まれ、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板を熱分離しつつ一体に構成する熱分離手段とを備え、前記第1の放熱板は、前記第2の放熱板の一部を覆っている。
また、前記第2の放熱板は、前記第1の放熱板に覆われていない部分に、前記基板へ固定するための固定用穴を備えてもよい。
また、前記熱分離手段は、弾性材料であって、前記第1の部品と前記第2の部品の高さのずれを調整可能な方向に伸縮可能に形成されてもよい。
また、前記熱分離手段は、弾性材料であって、固定位置のずれを調整可能な方向に伸縮可能に形成されてもよい。
本発明に係る別の装置は、上記の放熱板ユニットと、前記放熱板ユニットが共通に取りつけられた前記第1の部品と前記第2の部品とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易的な構成で複数の発熱部品の放熱を効果的に行う技術を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る、電子回路装置を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、第1の放熱板の形状を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る、第2の放熱板の形状を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、熱分離部材の形状を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、複合放熱板の効果を説明する図である。
【図6】本発明の変形例に係る、電子回路装置を模式的に示した図である。
【図7】本発明の変形例に係る、電子回路装置を模式的に示した図である。
【図8】従来技術に係る、電子回路装置を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る電子回路装置1を模式的に示した図であり、図1(a)は正面図であり、図1(b)は平面図を示している。
【0011】
図示のように、電子回路装置1には、発熱する複数の電子部品として第1のIC51と第2のIC52とが備わる。そして、第1のIC51と第2のIC52には、放熱板ユニットとして複合放熱板10が共通に取りつけられ、ビス91、92によって基板80に固定されている。なおここでは、第1のIC51の発熱量が第2のIC52の発熱量より多いものとする。
【0012】
複合放熱板10は、第1の放熱板20と第2の放熱板30とを備えており、それらは、熱分離部材40を介して一体になっている。具体的には、第1の放熱板20は、伝熱特性の良好な金属製(例えばアルミニウム製)であって、発熱量が相対的に多い第1のIC51の放熱手段として機能する。一方、第2の放熱板30は、同様に伝熱特性の良好な金属製であって、発熱量が相対的に少ない第2のIC52の放熱手段として機能する。
【0013】
図2は、第1の放熱板20を示した図であり、図2(a)は正面図であり、図2(b)は平面図であり、図2(c)は右側面図である。第1の放熱板20は、図2(b)に示すように、平面視で長方形の形状を呈している。また、上下左側端部の近傍にはビス穴93が、上下を貫通して形成されている。
【0014】
さらに、底面22には、その一部を取り除いたように第2の放熱板30及び熱分離部材40を配置するための空間が形成されている。具体的には、第2の放熱板30の厚さと熱分離部材40の厚さの合計の厚さの直方体の空間(配置用空間29)が取り除かれている。一方で、上面21は面一に形成されているが、放熱面積を拡大するためのフィン等の形状が形成されてもよい。
【0015】
図3は、第2の放熱板30を示した図であり、図3(a)は正面図であり、図3(b)は平面図であり、図3(c)は右側面図である。第2の放熱板30は、平板状である。また、上下右側端部の近傍にはビス穴94が、上下を貫通して形成されている。そして、図1や図3(b)に示すように、上面31の左側部分(全体の3/4程度)が第1の放熱板20(接合面23)に覆われる接合面31aとなる。一方、右側の残りの部分は、上方が露出する露出面31bとなる。底面32には、第2のIC52が取りつけられる。
【0016】
図4は、熱分離部材40を示した図である。熱分離部材40は、例えばシリコン樹脂で形成されている。シリコン樹脂は、一定の断熱特性を有すると共に弾性を有している。熱分離部材40の外形の寸法は、第1の放熱板20の底面22に形成された配置用空間29に配置可能な大きさとなっている。さらに、この熱分離部材40の底面42にも第2の放熱板30を配置するための空間(配置用空間49)が形成さている。ここで、図4(a)や図4(b)で示す配置用空間49の幅、つまり、接合面43の幅は、第2の放熱板30の接合面31aの幅と一致する。
【0017】
そして、複合放熱板10を製造する場合は、例えば、まず第1の放熱板20の配置用空間29に熱分離部材40を取りつける。つまり、第1の放熱板20の接合面23に熱分離部材40の接合上面41を取りつける。このとき、第1の放熱板20の段差部分である接合側面24は、熱分離部材40の接合側面45(例えば図4(a)で左側面)と接合する。
【0018】
つづいて、熱分離部材40の配置用空間49に第2の放熱板30を取りつける。つまり、熱分離部材40の接合下面43に第2の放熱板30の上面31と取りつける。このとき、熱分離部材40の内側壁面44が第2の放熱板30の接合側面34と接合する。これによって、第1の放熱板20と第2の放熱板30とが熱分離部材40によって介装した状態で一体に構成された複合放熱板10が形成される。そして、第1の放熱板20のビス穴93でビス91によって第1の放熱板20が基板80に固定される。同様に、第2の放熱板30のビス穴94でビス92によって第2の放熱板30が基板80に固定される。このとき、第1のIC51の上には第1の放熱板20が配置され、また、第2のIC52の上には第2の放熱板30が配置されている。なお、第1の放熱板20、第2の放熱板30、及び熱分離部材40の接合として、圧着や接着剤によって行うことができる。
【0019】
このとき、図1に示したように、第2の放熱板30の上面31の右側一部(露出面31b)が、上方を露出させている。そして、その露出面31bの部分に形成されたビス穴94でビス固定されている。一方で、第1の放熱板20は、第2の放熱板30の上面31の接合面31aを覆うように広がっている。つまり、発熱量の多い第1のIC51の放熱面積は拡大さている。一方で、第2のIC52の放熱面は第1の放熱板20(熱分離部材40)に覆われており放熱性能が全面が露出する場合と比べると低下する。しかし、第2のIC52は、第1のIC51と比べて発熱量が小さいので、所望の放熱特性を確保することができ、必要な放熱特性に応じて露出量が設定される。さらに、第1の放熱板20と第2の放熱板30とは熱分離部材40によって熱的に分離されているため、第1の放熱板20の熱が第2の放熱板30に対して大量に伝わることはない。また、一般には、第1のIC51と第2のIC52の熱限界は、同じような値であることが多い。そのような場合に、第1のIC51の発熱量が実際に大きくなった場合に、一定の熱を熱分離部材40を介して第1の放熱板20から第2の放熱板30に安全に逃がすことができ、その結果、全体の放熱効率を向上させることができる。
【0020】
図5に本実施形態の効果を説明する図を示す。図5(a)に示すように、熱分離部材40が弾性を有しているので、第1の放熱板20や第2の放熱板30のビス穴93、94の位置誤差D1や、基板80のビス穴の位置誤差D2が比較的大きくても、熱分離部材40の第1の放熱板20と第2の放熱板30の間の距離が所定量d1だけ変形することで、それら誤差が吸収される。したがって、誤差の許容量が大きくなり、製造時の不良品発生率を低下させることができる。また、設計の自由度の向上する。
【0021】
さらにまた、図5(b)に示すように、第1のIC51と第2のIC52の高さが異なる場合であっても、熱分離部材40が所定量d2だけ変形し、高さの差を吸収することができる。
【0022】
また、熱分離部材40が部材の振動吸収をすることができるため、故障発生の抑制や、上記同様に設計の自由度が向上する。
【0023】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0024】
図6に変形例に係る電子回路装置1Aを示す。ここでは、第1の放熱板20Aを固定するための二つのビス穴93Aを、第1のIC51を挟んで対向するように配置する。同様に、第2の放熱板30Aを固定するための二つのビス穴94Aを第2のIC52を挟んで対向するように配置する。また、第1の放熱板20A及び熱分離部材40において、第2の放熱板30を覆う部分が、上記のビス穴94Aが露出できるような形状に変形されている。このように、ビス固定する位置を第1及び第2のIC51、52を挟んで対向する位置とすることで、第1及び第2のIC51、52と複合放熱板10との固定バランスが良好にすることが容易になり、密着を良好に保つことができる。
【0025】
図7に別の変形例に係る電子回路装置1Bを示す。ここでは、第1の放熱板20Bを固定するための二つのビス穴93Bを、第1のIC51を挟んで対向するように配置する。さらに、第2の放熱板30Bを固定するための二つのビス穴94Aを第2のIC52を挟んで対向するように配置する。ただし、図6の変形例とは異なり、第1の放熱板20Bの形状は、図1の第1の放熱板20と同様である。そして、第1の放熱板20Bには、第2の放熱板30Bのビス穴94Bの上方部分に、同じ径のビス穴94Cが形成される。また、熱分離部材40にも、それらビス穴94B、94Cと対応する位置にビス穴94Dが形成される。つまり、第1の放熱板20と第2の放熱板30とが重なる部分で固定される。この構成でも、第1及び第2のIC51、52と複合放熱板10との固定バランスが良好にすることが容易になり、密着を良好に保つことができる。
【符号の説明】
【0026】
1 電子回路装置
10 複合放熱板
20 第1の放熱板
21 上面
22 底面
23 接合面
24 接合側面
30 第2の放熱板
31 上面
31a 接合面
31b 露出面
32 底面
34 接合側面
40 熱分離部材
44 内側壁面
45 接合側面
51 第1のIC
52 第2のIC
80 基板
91、92 ビス
93、94 ビス穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に配置された第1の部品に発生する熱を放熱する第1の放熱板と、
前記基板に配置された第2の部品に発生する熱を放熱する第2の放熱板と、
前記第1の放熱板と前記第2の放熱板とに挟まれ、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板を熱分離しつつ一体に構成する熱分離手段と
を備え、
前記第1の放熱板は、前記第2の放熱板の一部を覆っている
ことを特徴とする放熱板ユニット。
【請求項2】
前記第2の放熱板は、前記第1の放熱板に覆われていない部分に、前記基板へ固定するための固定用穴を備えていることを特徴とする請求項1に記載の放熱板ユニット。
【請求項3】
前記熱分離手段は、弾性材料であって、前記第1の部品と前記第2の部品の高さのずれを調整可能な方向に伸縮可能に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の放熱板ユニット。
【請求項4】
前記熱分離手段は、弾性材料であって、固定位置のずれを調整可能な方向に伸縮可能に形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の放熱板ユニット。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の放熱板ユニットと、前記放熱板ユニットが共通に取りつけられた前記第1の部品と前記第2の部品とを備えることを特徴とする及び電子回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−258869(P2011−258869A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133943(P2010−133943)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】