説明

放熱板一体型空気熱交換器

【課題】 厚みの薄いパネルヒータ型の熱交換器であって、迅速に暖房することができるものの提供。
【解決手段】 放熱板5の裏面側に多数の偏平チューブ2の一方の平面を接触固定する。それと共に、その偏平チューブ2の他方の平面に第1フィン6を接触して、全体が偏平なコア7を設ける。さらにそのコア7の一端から他端に空気を流通させる空気流路8を形成する。そして放熱板5の表面側を室内に露出させ、前記コア7を流通した温風10を、放熱板5の他端から室内に導き、室内を暖房する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として室内の壁面に配置され、温水やオイル、高温ガス、その他の加熱流体を利用した放熱板と、チューブおよびフィン並びにファンからなる温風放出型熱交換器との一体化したものに関する。
【背景技術】
【0002】
室内やトイレ等に配置される温水利用のパネルヒータは、内部に多数の温水流路を形成し、その外面から輻射熱を放出すると共に、室内の空気が自然対流する暖房機である。このパネルヒータは、床置きタイプのものと壁掛けタイプのものが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の温水利用のパネルヒータは、輻射および空気の自然対流を利用する暖房機であるため、室内を急速に温めることができない。そのため、トイレ等においては使用時間が比較的短いにもかかわらず、常時暖房しておく必要があった。
さらには、パネルヒータの上方に空間が存在しないと、空気の自然対流か起こらず暖房効果が低下する欠点がある。即ち、パネルヒータ自体を壁面の凹部に収納する壁埋込タイプとすることができない欠点があった。
そこで本発明は、輻射熱と温風(強制風)を組み合わせたコンパクトな放熱板一体型空気熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明は、内部に加熱流体(1) を流通させる多数の偏平チューブ(2) の夫々両端が一対のヘッダ(3) (4) に連通し、
放熱板(5) の裏面側に、夫々の偏平チューブ(2) の一方の平面が接触固定され、
夫々の前記偏平チューブ(2) の他方の平面を第1フィン(6) に接触固定して、全体が偏平なコア(7) を構成し、
前記コア(7) の裏面側がそれに近接または接触して裏面板(9) で被蔽され、その裏面板と放熱板(5) の裏面側との間で、そのコア(7) の一端から他端に空気を流通させる空気流路(8) が形成され、
前記放熱板(5) の表面側が露出されると共に、前記空気流路(8) を流通して前記コア(7) で加熱された温風(10)が前記コア(7) の他端から外部に導かれるように構成された放熱板一体型空気熱交換器である。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、
前記空気流路(8) は、前記コア(7) の一端に空気流入口(11)が開口する放熱板一体型空気熱交換器である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、
夫々の偏平チューブ(2) が、その長手方向の中間でU字状に折返し曲折され、各偏平チューブ(2) は前記放熱板(9) に接触した接触部(2a)と、それに対向して平行に位置された非接触部(2b)とを有し、夫々の接触部(2a)と非接触部(2b)との間に前記第1フィン(6) が接触固定された放熱板一体型空気熱交換器である。
【0006】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、
夫々の偏平チューブ(2) の非接触部(2b)の裏面側と前記裏面板(9) との間に第2フィン(12)が接触固定された放熱板一体型空気熱交換器である。
請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4において、
夫々の偏平チューブ(2) の前記接触側の端部が断面L字状に前記裏面板(9) 側へ曲折され、一対の前記ヘッダ(3) (4) がコア(7) の平面方向に並列された放熱板一体型空気熱交換器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放熱板一体型空気熱交換器は、放熱板5の裏面側に多数の偏平チューブ2の一方の平面が接触固定され、その放熱板5の表面側が露出されるから、その表面から効率よく輻射熱を放出することができる。それと共に、夫々の偏平チューブ2の多数の平面には第1フィン6が接触固定されて、コアの一端から他端に空気を流通させる空気流路8を形成する。そして空気流路8を流通して加熱された空気が、温風10となってコア7の他端から導かれるように構成したから、急速に室内を暖房することができる。
また、コア7は全体が偏平であり、それに近接または接触して裏面板9が被嵌されたものであるから、全体として偏平でコンパクトな熱交換器となり、壁面等に省スペースで取付けることができる。
【0008】
上記構成において、コア7の一端に空気流入口11を開口した場合には、空気流路8を流通する空気を円滑に導き、室内の空気を効率よく対流させることができる。
上記構成において、夫々の偏平チューブ2の長手方向中間をU字状に曲折して、そのU字状の間に第1フィン6を接触固定したものにおいては、省スペースで空気流路の伝熱面積の大きな熱交換器を形成でき、より迅速に室内を暖房することができる。
【0009】
上記構成において、U字状に曲折された偏平チューブ2の非接触部2bの裏面側と裏面板9との間に第2フィン12を接触固定したものにおいては、さらに伝熱面積を大きくし、より迅速に室内を暖房することができる。
上記構成において、U字状に曲折した偏平チューブ2の放熱板5の接触側の端部を断面L字状に裏面板9側に曲折して、一対のヘッダ3,4が放熱板5の平面方向に並列するようにしたものにおいては、全体としての厚みをさらに薄くし、より省スペースで取扱い易い熱交換器となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態を示す熱交換器であって、図1はその分解斜視図、図2は同組立て状態を示す斜視図、図3はその使用状態を示す縦断面図である。
この熱交換器は、表面側に放熱板5を有し、その裏面側に温水を加熱源とするコア7が設けられている。このコア7は、内部に加熱流体1が流通する多数の偏平チューブ2が並列されている。偏平チューブ2はその長手方向中間部がU字状に折り返されている。そして、折り返された一方側の接触部2aが放熱板5の裏面に接触すると共に、それに対向した非接触部2bが浅い溝型に形成された裏面板9の各スリット19に挿通される。
【0011】
この例では、接触部2aの先端はL字状に曲折されてL字状部20を形成する。L字状部20の先端は、一方のヘッダ3の各チューブ挿通孔に挿通されると共に、非接触部2bの先端は他方のヘッダ4の各チューブ挿通孔に挿通される。そして接触部2aと非接触部2bとの間に第1フィン6が挿入され、非接触部2bと裏面板9との間には第2フィン12が挿通される。第1フィン6および第2フィン12は金属板を波形に曲折したものであり、その波の稜線が図において上下方向に位置する。この例では、第1フィン6の厚みは第2フィン12の2倍ある。そこで第1フィン6として2枚の第2フィン12を重ね合わせたものを用いている。それに代えて、振幅の大き波形フィンを1枚を第1フィン6として使用してもよい。
【0012】
また、設計変更することにより第1フィン6の厚みと第2フィン12の厚みを同一とすることも可能である。
この例では、放熱板5の横幅がコア7の横幅よりも僅かに大に形成されている。放熱板5の両側には、一対の断面L字状の曲げ部21が形成されている。図2のように組立てられた熱交換器は、各接触部間が一体にろう付け固定される。そしてこの例では、コア7の下端に隣接しファン14が配置され、ファン14にモータ16が連結されている。これらの外周には、放熱板5の表面側を除いてケーシング15が被嵌される。また、放熱板5の上端に空気流入口11が開口し、下端に温風流出口13が開口する。
【0013】
そして加熱流体1が一方のヘッダ3から各偏平チューブ2に流入し、それが他方のヘッダ4より外部に流出する。そしてモータ16を駆動することによりファン14を回転させ、空気18を第1フィン6,第2フィン12を有する空気流路8に流通させ、それを温風10として温風流出口13から放熱板5の表面側に流出させる。それと共に、偏平チューブ2の接触部2aに接する放熱板5の表面側から輻射熱17を放出する。
なお、図3の例ではこの熱交換器を壁面22に形成した凹部に埋込、壁面22の表面と放熱板5の表面とを面一にし体裁よく収納したものである。
【0014】
次に、図4,図5は本発明の熱交換器の他の例であり、図4はその正面図、図5は図4のV−V矢視断面略図である。
この例が前記第1の実施の形態と異なる点は、多数の偏平チューブ2が直線状に形成され、それらが厚み方向に二列配置されている。それと共に、コア7の裏面側を被嵌するケーシング15自体が裏面板9を構成する。そしてコア7の上端から空気18を内部に導き、下端から温風10として放熱板5側にそれを放出する。このように温風10を放熱板5側に放出することにより、放熱板5の表面側を迅速に且つ効率よく暖房することができる。
【0015】
なお、図5においてチューブおよび裏面板9は壁に凹陥した内壁面自体を利用してもよい。何れにしても、それらによって放熱板5との間に空気流路8が形成されればよい。勿論、本熱交換器を壁面に取付け、全体が壁面から突出するように配置してもよい。
また、図2においてこの熱交換器は上下方向に配置されることが好ましいが、場所によってはそれを90°回転させてもよい。さらには、上下逆向きに配置してもよい。又、加熱流体は温水に限らず、オイル、高温ガス、その他を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す熱交換器の分解斜視図。
【図2】同組立て状態を示す斜視図。
【0017】
【図3】同取付け状態を示す縦断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す熱交換器の正面図。
【図5】図4のV−V矢視断面略図。
【符号の説明】
【0018】
1 加熱流体
2 偏平チューブ
2a 接触部
2b 非接触部
3 ヘッダ
4 ヘッダ
5 放熱板
6 第1フィン
7 コア
8 空気流路
9 裏面板
10 温風
【0019】
11 空気流入口
12 第2フィン
13 温風流出口
14 ファン
15 ケーシング
16 モータ
17 輻射熱
18 空気
19 スリット
20 L字状部
21 曲げ部
22 壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱流体(1) を流通させる多数の偏平チューブ(2) の夫々両端が一対のヘッダ(3) (4) に連通し、
放熱板(5) の裏面側に、夫々の偏平チューブ(2) の一方の平面が接触固定され、
夫々の前記偏平チューブ(2) の他方の平面を第1フィン(6) に接触固定して、全体が偏平なコア(7) を構成し、
前記コア(7) の裏面側がそれに近接または接触して裏面板(9) で被蔽され、その裏面板と放熱板(5) の裏面側との間で、そのコア(7) の一端から他端に空気を流通させる空気流路(8) が形成され、
前記放熱板(5) の表面側が露出されると共に、前記空気流路(8) を流通して前記コア(7) で加熱された温風(10)が前記コア(7) の他端から外部に導かれるように構成された放熱板一体型空気熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記空気流路(8) は、前記コア(7) の一端に空気流入口(11)が開口する放熱板一体型空気熱交換器。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
夫々の偏平チューブ(2) が、その長手方向の中間でU字状に折返し曲折され、各偏平チューブ(2) は前記放熱板(9) に接触した接触部(2a)と、それに対向して平行に位置された非接触部(2b)とを有し、夫々の接触部(2a)と非接触部(2b)との間に前記第1フィン(6) が接触固定された放熱板一体型空気熱交換器。
【請求項4】
請求項3において、
夫々の偏平チューブ(2) の非接触部(2b)の裏面側と前記裏面板(9) との間に第2フィン(12)が接触固定された放熱板一体型空気熱交換器。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
夫々の偏平チューブ(2) の前記接触側の端部が断面L字状に前記裏面板(9) 側へ曲折され、一対の前記ヘッダ(3) (4) がコア(7) の平面方向に並列された放熱板一体型空気熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−40649(P2007−40649A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227927(P2005−227927)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】