説明

放熱部材

【課題】発熱部で発熱した熱を放熱する放熱部材を、発熱部を収納する筐体と発熱部それぞれに固着した構成では、衝撃等の外乱を受けた場合に発熱部や筐体が損傷する。
【解決手段】発熱電子部品1と固着した接合部6aと、筐体3の内部に備えるシールド部4に対し当接係合する係合部6dと、接合部6aと係合部6dとを連設する屈曲部6b及び傾斜部6とで構成された放熱部材6で、係合部6dとシールド部4との間が当接係合しているため、衝撃に対する耐性を備えながら発熱電子部品1からの熱をシールド部4に放熱できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力印加により熱を発生する発熱部品を冷却する放熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電力印加で発熱する電子部品は、例えば光ピックアップ等に適用される半導体レーザやコンピュータ等に供される集積回路などが知られている。このような発熱電子部品が発熱すると、半導体レーザでは波長変動が発生し、集積回路では処理速度が遅くなる等の課題が生じるため、発熱部品の冷却方法の各種検討が成されている。
【0003】
例えば特許文献1では、良熱伝導材として金属箔と金属箔の一方の面に弾性部材とを積層した吸熱板を、発熱性半導体部品の発熱面と導電処理を施した筐体との間に、弾性部材を収縮させて充填する旨が提案されている。この提案により、半導体部品と筐体との間にあり曲げ充填した吸熱板の金属箔が弾性部材で押し当てられるため、面状に当接することで効率よく冷却路が形成される効果がある。
【特許文献1】特開2000−022366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等のように面状に吸熱板を発熱部品と筐体との間に充填する構成では、例えば落下や異物等に不用意な当接等の衝撃を受けた際には、弾性部材は縮小限界に近いため衝撃を吸収することが出来なく、連続した衝撃を受けた場合や衝撃力が大きい場合には、発熱部品を実装している回路基板を筐体に対して螺合等で締結している締結力の弱化、及び/または基板に割れ等が生じるという重大な課題がある。
【0005】
さらに、近年では回路基板への実装効率向上のため、一般にBGAと称される実装が適用されているが、発熱部品をBGA実装した際には発熱部品と回路基板との電気的接続に損傷を与えるという課題も想定される。
【0006】
そこで、本発明は係る従来の課題に鑑み、放熱効率が高くしかも回路基板等の発熱部品を実装する実装対への損傷を抑制できる放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の放熱部材は、発熱部で発生した熱を冷却部に放熱する放熱路を備える放熱部材であって、前記放熱路は、前記発熱部に固定される接合部と、前記冷却部に当接係合する係合部と、前記接合部と前記係合部とを連結すると共に、前記冷却部に前記係合部が当接係合する付勢力を付与する変形部を有する結合部とを備える構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の放熱部材は上記構成を備えることで、接合部が発熱部に固定されることで冷却部への放熱効率が高く、衝撃等に起因する急激な振動を発熱部が外部から受けた場合であっても、係合部でその振動を弱化させることができるため、放熱効率が高い耐衝撃性を備える放熱部材を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の放熱部材における最良の実施形態について、発熱部の例として回路基板に実装した発熱電子部品、発熱部で発生した熱を放熱する冷却部の例として、発熱電子部品及び回路基板を収納する筐体に備えるシールド部を例に挙げて、図面を参照して説明する。また、参照する図面で共通する構成は同一の符号を付与する。
【0010】
図1は、本発明の放熱部材に係る一実施形態の要部断面図で、1は集積回路等の発熱電子部品、2は発熱電子部品1を実装する回路基板、3は回路基板2を内蔵する筐体、4は筐体3の内面を導電処理したシールド部、5は回路基板2を筐体3に対して螺合等の係止手段により支持する支持部材、6は放熱部材である。放熱部材6は、熱伝導性グリス、導電材料を含有した導電性接着剤、両面背着テープ、非溶剤型接着剤、場合によっては半田等の金属といった公知の固着部(図では割愛)で発熱電子部品1に固着した接合部6a、放熱部材6を発熱電子部品1側から当該発熱電子部品1を実装する回路基板2の裏面方向に屈曲させる屈曲部6b、及び、屈曲部6bと筐体3に備えるシールド部4に当接係合する係合部6dとを繋ぐ傾斜部6cで構成した例である。すなわち、本実施形態では、変形部は屈曲部6bに相当し、結合部は屈曲部6bと傾斜部6cとが相当する。
【0011】
次に本実施形態における発熱電子部品1からシールド部4への熱伝導経路について説明する。回路基板2から不図示の電源から電力が発熱電子部品1に供給されると、発熱電子部品1は例えば集積回路の場合は演算、半導体レーザの場合はレーザ発光等の所定の動作を行い、この動作に伴って熱を発生する。発熱電子部品1で発生した熱は、固着部、接合部6a、屈曲部6b、傾斜部6c、係合部6dを介して冷却部を担うシールド部4に流れることで冷却される。このように発熱電子部品1と接合部6aとは面上で固着接合されているため、発生した熱は放熱部材6に必ず流れる。換言すると、放熱部材6の熱容量だけは冷却されることとなるため、放熱部材6は少なくとも接合部6aは発熱電子部品1の発熱面(すなわち、固着部で固着される発熱電子部品1の面)以上の面積を有するシート状とすることが好ましい。
【0012】
発熱電子部品1から接合部6aに流れた熱は、屈曲部6b及び傾斜部6cを経て、係合部6dでシールド部4に伝達される。シールド部4は、回路基板2側に筐体3に導電性処理を施すことで、回路基板2に装着した各種電子部品から輻射される電磁波等が外部に漏洩することを抑制する等の機能が本来の役割であるが、周知のように電気伝導性物質は熱伝導性も高いため、発熱電子部品1が発生した熱は放熱部材6を介してシールド部4に伝達することで冷却することができる。
【0013】
次に本実施形態の放熱部材6に、外部から衝撃が加わった場合について説明する。衝撃力は筐体3から支持部材5を介して回路基板2に伝達する。伝達された振動力は回路基板2では振動に変換される。この振動は、Zで示した図の紙面上下方向の縦方向に振動する縦方向振動モードと、Z方向に直交する面方向(図ではXとして紙面横方向だけ示す)に振動する面方向振動モードとがある。瞬間的に受けた衝撃は、これらの方向にランダムに印加され、その結果、回路基板2が受ける際には単に上下または左右方向のみの振動だけに留まらず、回路基板2の面方向に捻れも加わる振動となる。一方、例えば携帯機器の場合にはカバン等に収納し持ち運ぶ過程等で、瞬間的な衝撃と継続的な振動とが加わる。このような状況下、特許文献1のように発熱体と筐体との間で実質的に固着状態に充填した放熱部材の構成では、振動が筐体を介して事実上直接発熱体に伝搬し、発熱体と回路基板との電気的接続や回路基板と筐体とを螺子等の支持に損傷を与えてしまう。これに対して本実施形態の放熱部材6では、発熱電子部品1と接合部6aとは固着されているが、シールド部4と係合部6dとは当接関係とした構成であるため、外部から筐体3に対し加えられた衝撃は、支持部材5及び回路基板2を介して発熱電子部品1に伝搬されるが、係合部6dとシールド部4とが摺動することで吸収でき、放熱部材6に起因する課題は全て解消することができる。
【0014】
この課題が解消できる作用を詳細に述べる。発熱電子部品1を内蔵する電子機器が衝撃等に起因する振動を受けない通常状態の場合には、係合部6dはシールド部4に対し当接しているだけで位置的には静止している。電子機器が受けた衝撃を筐体3から伝わると、前述したように発熱電子部品1が振動する。この振動がZ方向の縦方向振動モードの場合で、発熱電子部品1が筐体3から離隔する方向の時は、放熱部材6の屈曲部6bによる曲げ応力により係止部6dはシールド部4上を矢印B方向に摺動し、逆に発熱電子部品1が筐体3に近接する方向の時は、放熱部材6の屈曲部6bをさらに屈曲するため係止部6dはシールド部4上を矢印A方向に摺動する。また、振動がX方向の面方向振動モードの場合で、紙面左すなわち矢印A方向に移動する時は、係止部6dはシールド部4に当接した状態のまま矢印A方向に摺動し、逆に紙面右すなわち矢印B方向に移動する時は、係止部6dはシールド部4に当接した状態のまま矢印B方向に摺動する。また、上述したように縦方向振動モードと面方向振動モードとが組み合わさり回路基板2の面を捻る振動が生じた際は、係止部6dとシールド部4とは基本的には縦方向振動モードと面方向振動モードとに応じた追従を成すが、瞬間的に係止部6dとシールド部4との当接関係が外れることが想定される。このような場合であっても、放熱部材6に伝達しているのは発熱電子部品1で発生した熱であるので、瞬間的な当接関係の乱れは何等影響することなく、さらに放熱部材6を図1の紙面奥行き方向に広がる面状にすることで、係止部6dの何れかはシールド部4と当接関係を維持できるため、実質上係止部6dとシールド部4とは当接関係を維持することができる。その上、上述の係止部6dとシールド部4との当接関係が外れることは、衝撃が加わった際に、発熱電子部品1と回路基板2との電気的接続及び/または支持部材5を介して回路基板2と筐体3とを支持する螺合等の支持関係に与える放熱部材6の影響を抑制できることでもある。
【0015】
また、屈曲部6bは、放熱部材6に屈曲復元性(バネ性)を付与する機能と、放熱部材6の放熱経路を長くすることで、放熱部材6自体の熱容量も増加する機能もあり、スペースと材料の可撓性限界との兼ね合いもあるが、屈曲部6bが長いほど放熱効果を向上させることができる。
【0016】
なお、本実施形態における屈曲部6bは曲率を有する湾曲形状としたが、本実施形態のように回路基板2を跨いだ状態で放熱部材6を屈曲させるには一般的に湾曲させる方が有利であるためであって、バネ性を維持できる構成であれば後述のように折り曲げ部や重畳部を備える構成であっても適用できる。
【0017】
以上のように本実施形態では、回路基板2に実装した発熱電子部品1と固着された接合部6aと、回路基板2を支持する筐体3が備えるシールド部4に対して当接する係合部6dとを屈曲部6bで結合した放熱部材6の構成により、どのようなモードの振動が加わったとしても、シールド部4への熱伝達率が高く維持でき、しかも発熱電子部品1で発生した熱をシールド部4に放熱する係合部6dは当該シールド部4に対して当接関係にあるため、衝撃に起因する振動による発熱電子部品1、回路基板2及び/または支持部材5に対する機械的損傷を抑制することができる効果がある。
【0018】
また、上記構成により発熱電子部品1が回路基板2に対しBGA実装されている場合であっても、衝撃に起因する振動が発熱電子部品1に印加されないため、実装不良が生じる主原因を抑制することもできる。
【0019】
なお、本実施形態及び以下述べる他の実施形態に適応することができる放熱部材の材料としては、曲げ変形に対して復元力を備える可撓性を有する熱伝導材料であれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、銅等の展性を有する金属箔、グラファイト等の炭素系材料等の可撓性を有する導電材料、他には可撓性を例えばポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルムまたはポリイミド系フィルム等可撓性高分子フィルムが担いアルミニウム等の導電処理を施した複合材料等が挙げられる。
【0020】
なお、上述の実施形態の放熱部材6は回路基板2が支持された筐体3に放熱する構成で説明したが、この構成に限定されるものではなく、図2に示す実施形態の構成であっても良い。同図は、発熱電子部品1を実装した回路基板2を、螺合等の係止手段により支持部材5で筐体3に支持され、筐体3と対向する筐体である上側筐体8に上側シールド部9を備え、発熱電子部品1が発熱した熱を放熱部材7により上側シールド部9に放熱する構成である。本実施形態における放熱部材7は、発熱電子部品1に不図示の固着部で固着した接合部7a、放熱部材7を接合部7aから上側シールド部9の方向へ折り曲げる折り曲げ部7b、及び、折り曲げ部7bと上側シールド部9に当接する係合部7dとを繋ぐ傾斜部7cで構成した例である。すなわち、本実施形態では、変形部は折り曲げ部7bに相当し、結合部は折り曲げ部7bと傾斜部7cとが相当する。
【0021】
本実施形態の放熱部材7は、接合部7aと傾斜部7cとの間に折り曲げ部7bを介して折り畳んだ構成であるが、平面状の放熱部材7を折り曲げ部7bで折り畳むと一般的には屈曲復元性(バネ性)に欠けるが、例えば接合部7aと傾斜部7cとを折り曲げた状態で成形すること等でバネ性を備えることができる。
【0022】
また、衝撃等に起因する振動を受けた際に、本実施の形態における放熱部材7の接合部7a、折り曲げ部7b及び係合部7dの動作は基本的には放熱部材6における接合部6a、屈曲部6b及び係合部6dと同様であるが、筐体3に備えるシールド部4に当接係合する係合部6dとシールド部4との関係と、上側筐体8に備える上側シールド部9に当接係合する係合部7dと上側シールド部9との関係とは、下記の点では異なる。
【0023】
すなわち、筐体3には回路基板2が支持部材5を介して固着されているため、構造的にはリジッドであり静止圧力に対する耐性は比較的強いが、一般的に上側筐体8は図2のように主に周囲(図示は割愛)で筐体3に係止される構成が多く、そのため静止圧力を受けると変形することが多い。同様に、例えば紙面横方向から圧縮力を加えられた場合も、変形し易い。このように本実施形態における上側シールド部9に放熱する放熱部材7では、先の実施形態における放熱部材6よりも当接係合する上側シールド部9に当接係合する係合部7dの効果は高い。つまり、上側筐体8の上面から力Fが加えられ、上側筐体8が筐体3の方向に変形すると、係合部7dは上側シールド部9上を矢印A方向に摺動すると共に、折り曲げ部7bの折り曲げ角度をα方向に狭めることで、上側筐体8の部分的変形に追従することができる。なお、力Fの印加が解除されると、折り曲げ部7bによる復元力で折り曲げ角度は元の角度に復帰し、同時に係合部7dは上側シールド部9上を矢印B方向に摺動して元の状態に戻る。
【0024】
このように、本実施形態の放熱部材7の構成によれば、衝撃等の動的圧力に起因する振動に対しても先の実施形態と同様に耐性を有することができ、その上静止圧力に起因する変形に対しても耐性を備える効果を奏する。
【0025】
なお、本実施形態では接合部7aと傾斜部7cとを折り曲げた折り曲げ部7bを備える構成で説明したが、発熱電子部品1と上側筐体8との間隙に余裕がある場合や、折り曲げ部7bを備える方向における発熱電子部品1及び/または回路基板2に空間的余裕がある場合には、先の実施形態における屈曲部6bのように湾曲した構成であっても何等問題はない。
【0026】
上述の実施形態は片側のみに配置されたシールド部に熱を逃がすことで冷却する構成であるが、例えば発熱電子部品1の発熱量が多い場合、及び/または、衝撃等に起因した振動を発熱電子部品1が激しく受ける場合等における対策の一例を、図3を参照して説明する。同図は、放熱部材6の構成と放熱部材7の構成とを合体した放熱部材10であり、発熱電子部品1に不図示の固着部で固着した接合部10a、接合部10aと上側シールド部9と当接係合する第1の係合部10dとを繋ぐ第1の傾斜部10c、屈曲部10bを介して接合部10aから延在する第2の傾斜部10e、及び第2の傾斜部から延在しシールド部4に当接係合する第2の係合部10fを備える。
【0027】
本実施形態におけるシールド部4と第2の係合部10fとの構成、及び上側シールド部9と第1の係合部10dとの構成はそれぞれ先に述べた実施形態と同様であり、それらの構成に基づく作用・効果も同様である。但し、本実施形態における放熱部材10は、上側シールド部9に当接係合する第1の係合部10dと、シールド部4に当接係合する第2の係合部10fとを備えているため、動的な振動及び/または静的圧力が如何に発熱電子部品1に印加されたとしても、第1の係合部10dまたは第2の係合部10fの何れかは必ず当接することができるため、発熱電子部品1の発熱を確実に冷却することができるという効果を奏することができる。また、放熱部材10では、接合部10aと第1の結合部10dとの間のバネ性は屈曲部10bから第1の傾斜部10c方向に分岐した折り曲げ部が担い、接合部10aと第2の係合部10fとの間のバネ性は屈曲部10bの屈曲に対する復元力が担う構成に加え、第1の係合部10dが上側シールド部9に対する当接力と第2の係合部10fがシールド部4に対する当接力とに起因するバネ性も存在するため、総合的なバネ性は先の何れの実施形態よりも大きくすることができ、以て放熱効果を高めることができる。これらが相俟って、動的振動や静的圧力の度合いが大きい場合や発熱電子部品1の発熱量が大きい場合においても、確実かつ速やかな冷却を実現することができる。
【0028】
なお、接合部10aと第1の傾斜部10cとの折り曲げ部や屈曲部10bの構成は、先の実施形態で説明した構成であっても良い。
【0029】
上述の何れの実施形態における放熱部材6、7及び10は、基本的に発熱電子部品1とシールド部4との間の熱伝達経路、及び発熱電子部品1等上側シールド部9との間に熱伝達経路のみを備える構成であるが、放熱部材自体の熱容量を大きくすることで放熱孤立をさらに向上した構成について、先ず図4を参照して説明する。図4における放熱部材11の構成は、基本的には放熱部材7と同様であるが、放熱部材7の接合部7aと傾斜部7cとが折り曲げ部7bで折り曲げた構成であったが、折り曲げ部を接合部11a及び傾斜部11cそれぞれから延在して折り曲げる重畳部11bを備えることで、放熱部材の熱容量を向上した構成である。
【0030】
本実施形態の放熱部材11における衝撃や静的圧力に対する耐性は、放熱部材7として説明した上記実施形態と同じである。但し、発熱電子部品1で発生した熱の放熱経路中に重畳部11bを備えることによって、重畳部11bだけ放熱部材11が有する熱容量を高くすることができ、例えば発熱電子部品1のパフォーマンスを低く設定することで発熱量を低くした状態から急激にパフォーマンスを高め発熱量が瞬時に向上する等の際に、重畳部11bが一時的に蓄熱するバッファとしての機能や、筐体3、上側筐体8及び上側シールド部9を割愛した斜視図の図5に示した重畳部11bの突出部における少なくとも一部が、例えば不図示の側面筐体に当接係合する構成等で別の放熱路が形成でき、放熱効率を向上させることができる。なお、重畳部11bの重畳距離Lは、空隙の大きさ等の寸法に応じて適宜設定することができる。
【0031】
なお、本実施形態における重畳部11bは接合部11aと傾斜部11cとの対向側を、接合部11aと発熱電子部品1とを固着する固着部と同様の材料を適用することで、接合部11a及び傾斜部11c間の面的な熱伝達を達成することができ、傾斜部11cへの熱伝導効率を向上できると共に、折り曲げ部7bによる折り曲げに比べると係合部11dへのバネ性も向上できる効果も奏する。
【0032】
また、本実施形態の放熱部材11は、上側シールド部9のみに放熱する構成で説明したが、例えば図1のシールド部4に放熱する構成であっても何等問題なく適用できる。この構成の場合には、図1の屈曲部6dにおける湾曲形状の一部に重畳部を備えるだけでの軽微な変更だけは必要である。
【0033】
本実施形態では上述したように上側シールド部9のみに放熱させる構成であるが、前述したように例えば発熱電子部品1の発熱量が多い場合、及び/または、衝撃等に起因した振動を発熱電子部品1が激しく受ける場合等では、シールド部4及び上側シールド部9の双方に放熱させる構成にも適用できる。その一例として図6を参照して説明する。同図は視認し易くするため筐体3、シールド部4、上側筐体8及び上側シールド部9は省略し、発熱電子部品1、回路基板2及び放熱部材12だけを図示した斜視図である。放熱部材12の接合部12aは上述の実施形態と同様に発熱電子部品1と固着部で固着されている。発熱電子部品1で発生した熱は第1の傾斜部12cを経て第1の係合部12dから上側シールド部に放熱すると共に、屈曲部12bで回路基板2を跨ぎ構成した第2の傾斜部12電子を経て第2の係合部12fからシールド部に放熱する。
【0034】
なお、同図に示したように、放熱部材12における第1の傾斜部12cと接合部12aとは別部材で、重畳部12gに備える固着部で固着されている。この固着部に適用する材料は、接合部12aと発熱電子部品1とを固着する材料を流用することができ、重畳部12gの面積で接合部12aに流れる熱を第1の係合部12dに伝達する。この第1の傾斜部12cと第2の傾斜部12eとを独立した別部材とすることにより、重畳部12gでの屈曲で発生するバネ性の制御が容易であり、上側シールド部に対する第1の係合部12dの当接係合力を確実になし得る。
【0035】
なお、上述の実施形態は、発熱部として回路基板に実装された電子部品を例に説明したが、電子部品の具体例としてはコンピュータ等の演算を担う集積回路、光ピックアップ等に適用される半導体レーザ、シャッター機能で画像を表示する液晶パネル等の表示パネルのバックライトに適用するLED光源、プラズマディスプレイのプラズマ発光部、この他にも、複写機等の熱定着部など幅広い分野の発熱部に適用することができる。
【0036】
また、上述の実施形態では放熱部材としてシールド部を適用した場合で説明したが、例えば発熱部品の発熱量が大きい場合には放熱部材の熱容量を増加するため、専用の放熱部材を別途備える等、適宜変更することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の放熱部材は、外乱に対する耐性と高熱伝達率とを備えるため、携帯機器から大型の据置機器まで幅広い製品分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の放熱部材における一実施形態の構成を示す要部断面図
【図2】本発明の放熱部材における他の実施形態の構成を示す要部断面図
【図3】本発明の放熱部材における別の実施形態の構成を示す要部断面図
【図4】本発明の放熱部材におけるさらに他の実施形態の構成を示す要部断面図
【図5】同実施形態の構成を示す要部斜視図
【図6】本発明の放熱部材におけるさらに別の実施形態の構成を示す要部斜視図
【符号の説明】
【0039】
1 発熱電子部品
2 回路基板
3 筐体
4 シールド部
5 支持部材
6 放熱部材
6a 接合部
6b 屈曲部
6c 傾斜部
6d 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部で発生した熱を冷却部に放熱する放熱路を備える放熱部材であって、
前記放熱路は、
前記発熱部に固定される接合部と、
前記冷却部に当接係合する係合部と、
前記接合部と前記係合部とを連結すると共に、前記冷却部に前記係合部が当接係合する付勢力を付与する変形部を有する結合部とを備える放熱部材。
【請求項2】
前記発熱部は、前記接合部を固定する前記発熱部の第1の面と、前記第1の面と対向配置された第2の面とを備え、
前記第1の面に対し前記接合部を介して第1の所定距離だけ離隔して配置される第1の冷却部と、前記第2の面に対し第2の所定距離だけ離隔して配置される第2の冷却部とを備える請求項1記載の放熱部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−103278(P2010−103278A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272765(P2008−272765)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】