説明

放電灯点灯回路

【課題】地絡の影響なく放電灯の状態をモニタできる点灯回路を提供する。
【解決手段】。点灯回路11は、共振用キャパシタ17と、共振用インダクタ19とを含み、更に、第1の出力21と、第2の出力23と、抵抗25と、モニタ回路29とを備える。点灯回路11では、直流交流変換回路13は直流電圧から交流電圧を生成する。抵抗25の一端25aは第2の出力23に接続され、他端25bは二次側巻線33の一端33aに接続される。モニタ用出力27は、抵抗25の他端25bに接続されており、また放電灯30に流れる電流をモニタするための信号を提供するために設けられている。抵抗25の一端25aは、接地線GNDに接続されている。モニタ回路29にはモニタ用出力27からの信号を受ける。モニタ回路29は、放電灯30に流れる電流ILをモニタするための信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用放電灯の点灯回路が記載されている。点灯回路は、DC昇圧回路を用いてバッテリからの電圧を昇圧している。DC昇圧回路の昇圧出力は、高周波昇圧回路に接続されている。高周波昇圧回路は、自励式インバータ回路であり、その動作周波数は制御信号に応じて変化しない。自励式インバータ回路は、一対の電界効果トランジスタと、トランスとを含む。DC昇圧回路の昇圧出力は、チョークコイルを介してトランスのセンタータップに接続されている。一方の電界効果トランジスタは、トランスの一次側巻線の一端に接続されたドレインとグランドラインに接続されたソースとを有する。他方の電界効果トランジスタは、トランスの一次側巻線の他端に接続されたドレインとグランドラインに接続されたソースとを有する。これらの電界効果トランジスタのゲートは、それぞれ、トランスの帰還巻線の一端および他端に接続されている。トランスの二次側巻線の一端はトリガートランスを介して放電灯の一端に接続されており、またトランスの二次側巻線の他端は抵抗を介して放電灯の他端に接続されている。
【特許文献1】特願平4−141988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された点灯回路と異なる方式の点灯回路もいくつかある。これらの点灯回路のうちの一つは、直流−交流変換回路と共に直列共振回路を用いる。直流−交流変換回路は、制御信号に応じた周波数の交流電力を生成すると共に、トランスは、直列共振回路において発生する電圧を昇圧する。トランスの二次側巻線の一端および他端は放電灯の両端にそれぞれ接続されており、また二次側巻線の一端は接地されている。制御信号は、放電灯に印加される電圧(以下、ランプ電圧と呼ぶ)と放電灯に流れる電流(以下、ランプ電流と呼ぶ)に応じて生成され、放電灯に印加される電力を制御している。
【0004】
この点灯回路では、ランプ電圧およびランプ電流は、トランスの二次側ではなく、二次側の電圧よりも小さい電圧が加わる一次側に検出回路を設けていた。しかしながら、放電灯に供給される電力を高精度に制御するためには、ランプ電圧およびランプ電流の検出精度をより高くすることが必要である。これ故に、放電灯の状態をモニタするためのモニタ回路をトランスの一次側ではなく二次側に設けることが好ましい。また、点灯回路では、放電灯の一端と接地との間に地絡が生じた場合にも正確なモニタができることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、地絡の影響なく放電灯の状態を正確にモニタできる点灯回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、放電灯を点灯するための点灯回路である。この点灯回路は、(a)前記放電灯に印加する電力を制御する制御信号に応答して、入力される直流電圧を交流電圧に変換する直流交流変換回路と、(b)前記直流交流変換回路の出力から前記交流電圧を受ける一次側巻線および二次側巻線を含むトランスと、(c)前記トランスの一次側に設けられたキャパシタと、(d)前記トランスの一次側に設けられたインダクタと、(e)前記二次側巻線からの電力を前記放電灯に供給するための第1および第2の出力と、(f)前記第2の出力に接続され接地された一端と前記二次側巻線の一端に接続された他端とを有する抵抗と、(g)前記放電灯に流れる電流を前記抵抗の前記他端からの信号を用いてモニタする電流モニタ回路を含む検出回路とを備え、前記キャパシタ、前記インダクタおよび前記一次側巻線は直列に接続されている。
【0007】
この点灯回路によれば、第2の出力とトランスの二次側巻線の一端との間に抵抗を接続したので、トランスの一次側ではなく二次側において放電灯に流れる電流をモニタできる。また、抵抗の上記一端を接地するので、検出回路は、トランスの二次側巻線に流れる電流により抵抗両端に生じる電位差を示す信号を受ける。したがって、当該点灯回路の出力と放電灯との間の配線において地絡が生じたときでも、放電灯の状態を正確にモニタできる。故に、正確なモニタ値に応じて当該点灯回路が制御される。
【0008】
本発明に係る点灯回路では、前記トランスの前記二次側巻線は中間タップを有しており、前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、前記電圧モニタ回路は、前記中間タップに接続された入力を有すると共に、該入力の交流電圧の振幅に対応する第2の信号を生成する第2の生成回路と、前記第1の信号および第2の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第1の演算回路とを備えることができる。
【0009】
この点灯回路によれば、高電圧が印加される放電灯の両端子間の電圧を直接にモニタせずに、トランスの中間タップからの出力の値を用いるので、モニタ入力部の耐圧性能を低減できる一方、放電灯に印加される電圧を示す信号を高精度にできる。また、抵抗の上記一端が接地されているので、トランスの中間タップからの出力の値は、トランスの二次側巻線の一端と中間タップとの間に現れる電圧と上記抵抗の両端間の電圧との和である。中間タップからの信号を第1および第2の生成回路並びに第1の演算回路を用いて処理すれば、上記抵抗の影響が実質的に除かれており放電灯に印加される電圧を示す信号が得られる。
【0010】
本発明に係る点灯回路では、前記トランスの前記二次側巻線は中間タップを有しており、前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、前記電圧モニタ回路は、前記抵抗の他端に接続された第1の入力と前記二次側巻線の中間タップに接続された第2の入力と有すると共に、当該第1および第2の入力からの交流信号の差分に対応する第3の信号を生成する第3の生成回路と、前記第1の信号と前記第3の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第2の演算回路とを備えることができる。
【0011】
この点灯回路によれば、高電圧が印加される放電灯の両端子間の電圧を直接にモニタせずに、トランスの中間タップからの出力の値を用いるので、モニタ入力部の耐圧性能を低減できる一方、放電灯に印加される電圧を示す信号を高精度にできる。また、抵抗の上記一端が接地されているので、トランスの中間タップからの出力の値は、トランスの二次側の一端と中間タップとの間に現れる電圧と上記抵抗の両端間の電圧との和である。トランスの中間タップからの信号を第3の生成回路を用いて処理すれば、トランスの二次側の一端と中間タップとの間に現れる電圧を示す信号が得られる。この信号を更に第2の演算回路を用いて処理すると、上記抵抗による電位差の影響が実質的に除かれた信号(放電灯に印加される電圧を示す信号)が得られる。
【0012】
本発明に係る点灯回路では、前記トランスの二次側は、追加巻線を有しており、前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、前記電圧モニタ回路は、前記追加巻線に接続された入力を有すると共に、前記追加巻線の両端の電位差に対応する交流電圧に応じた第4の信号を生成する第4の生成回路と、前記第1の信号と前記第4の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第3の演算回路とを備えることができる。
【0013】
この点灯回路によれば、トランスの二次側に追加巻線を設けて、高電圧が印加される放電灯の両端子間の電圧を直接にモニタしないので、モニタ入力部の耐圧性能を低減できる一方、放電灯に印加される電圧を示す信号を高精度にできる。
【0014】
本発明に係る点灯回路では、前記第1の生成回路は、当該第1の生成回路の前記入力からの信号の振幅に対応する信号を保持して出力する保持回路を含むことができる。
【0015】
本発明に係る点灯回路では、前記第2の生成回路は、当該第2の生成回路の前記入力からの信号の振幅に対応する信号を保持して出力する保持回路を含むことができる。また、前記第3の生成回路は、当該第3の生成回路の前記第1及び第2の入力からの交流信号を差分した信号の振幅に対応する信号を保持して出力する保持回路を含むことができる。さらに、前記第4の生成回路は、当該第4の生成回路の前記入力からの信号の振幅に対応する信号を保持して出力する保持回路を含むことができる。
【0016】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、地絡の影響なく放電灯の状態を正確にモニタできる点灯回路が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の点灯回路に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、車両用放電灯のための点灯回路を概略的に示す回路図である。点灯回路は、車両用前照灯等の車両用灯具のために用いられる。点灯回路11は、直流交流変換回路13と、トランス15と、キャパシタ17と、インダクタ19と、第1の出力21と、第2の出力23と、抵抗25と、モニタ回路29とを備える。直流交流変換回路13は、制御信号Sおよび直流電圧を受けており、直流電圧を変換して制御信号Sに応じた周波数の交流電圧を生成する。トランス15は、直流交流変換回路13から交流電圧を受ける一次側巻線31と、当該点灯回路11に接続される放電灯30に電力を供給するための二次側巻線33とを含む。キャパシタ17およびインダクタ19は、トランス15の一次側に設けられている。また、キャパシタ17、インダクタ19および一次側巻線31は、直列に接続されており、またこれらは直流交流変換回路13の出力13aに接続されている。本実施例では、例えば、キャパシタ17およびインダクタ19は、直流交流変換回路13の出力13aとトランス15の一次側巻線31の一端31aとの間に接続される。キャパシタ17は、直流交流変換回路13の出力13aに接続された一端17aと、インダクタ19の一端19aに接続された他端17bとを有する。インダクタ19の別の端子19bは、一次側巻線31の一端31aに接続されている。第1および第2の出力21、23は、トランス15の二次側巻線33からの交流電力を放電灯30に供給するために設けられている。抵抗25は、第2の出力23に接続された一端25aと二次側巻線33の一端33aに接続された他端25bとを有する。第1の出力21は、二次側巻線33の他端33bに接続されている。モニタ用出力27は、抵抗25の他端25bに接続されており、また放電灯30に流れる電流をモニタするための信号を提供するために設けられている。抵抗25の一端25aは、接地線GNDに接続されている。この点灯回路11を用いて、放電灯30は交流点灯される。モニタ回路29はモニタ用出力27からの信号を受ける。モニタ回路29は、放電灯に流れる電流をモニタするための電流モニタ回路28aを含む。電流モニタ回路28aは、抵抗25の他端25bからの信号を用いて、放電灯30に流れる交流電流ILACの大きさを示す信号を生成する。電流ILACは、VILAC/R1により導出される(ここで、電圧VILACは抵抗25の両端間の電位差であり、抵抗25は抵抗値R1を有する)。モニタ回路29は、電圧モニタ回路28bを含む。
【0020】
この点灯回路11によれば、第2の出力23と二次側巻線33の一端33aとの間に抵抗25を接続したので、トランス15の一次側ではなく二次側において放電灯30に流れる電流ILACをモニタできる。また、抵抗25の一端25aを接地するので、二次側巻線33に流れる電流による抵抗25の両端に生じる電位差を示す信号をモニタ用出力27から提供できる。したがって、当該点灯回路11の出力23と放電灯30との間の配線において地絡が生じたときでも、放電灯30の状態を正確にモニタできる。そして、正確なモニタ値に応じて当該点灯回路11が制御される。
【0021】
引き続き、点灯回路をさらに詳細に説明する。直流交流変換回路13は、点灯回路11の第1および第2のパワー入力35a、35bに接続された第1および第2の入力13b、13cを有する。第1および第2の入力13b、13cは、点灯回路11の第1および第2のパワー入力35a、35bに接続された外部電源37から電力Pを受ける。また、外部電源37は、例えばバッテリといった直流電源である。あるいは、外部電源37は、交流電力を整流し、この後に整流波形を平滑することにより得られる直流電力を供給するものでもよい。直流交流変換回路13は、また制御信号Sを受けており、この制御信号Sに応じた周波数の交流電力を電力Pから変換する。制御信号Sは、駆動回路39により発生される。この駆動回路39は、放電灯30に流れる電流ILACおよび放電灯30に印加される交流電圧VLACに対応するモニタ信号に応答して動作する。制御信号Sの周波数は、これらのモニタ信号に応じて変化する。この周波数の値は、例えば100kHzから3MHz程度である。また、抵抗25の値は、例えば0.1Ω〜1Ωである。
【0022】
直流交流変換回路13は、スイッチング素子41、43を含む。スイッチング素子41、43の導通および非導通は、制御信号Sによって制御される。スイッチング素子41、43は直列に接続されており、共有するノードJが直流交流変換回路13の出力13aに接続されている。スイッチング素子41、43の各々は、例えばトランジスタであり、スイッチング素子41、43として、例えば電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタを用いることができる。スイッチング素子41の制御端子41aに加わる信号に応じて第1端子41bと第2端子41cとの導通・非導通が制御される。また、スイッチング素子43の制御端子43aに加わる信号に応じて第1端子43bと第2端子43cとの導通・非導通が制御される。直流交流変換回路13として、本実施例では、ハーフブリッジ回路を用いているが、フルブリッジ回路を用いることもできる。
【0023】
キャパシタ17と、インダクタ19および一次側巻線31は、直流交流変換回路13の出力13aと入力13cとの間に直列に接続されている。点灯回路11の動作中に、キャパシタ17と、インダクタ19および一次側巻線31の少なくともいずれかとにより構成される共振回路が動作する。例えば、放電灯30の点灯前では、二次側巻線33が開放状態であるので、キャパシタ(キャパシタンスC)17、インダクタ(インダクタンスL1)19および一次側巻線31(インダクタンスL2)からなる直列共振が生じる。実際には、この直列共振には、トランス15の漏れインダクタンス(インダクタンスL3)も寄与しており、この場合、合成インダクタンスはL1+L2+L3で表される。この共振周波数f1は、1/(2×π×sqrt(C×(L1+L2+L3)))で規定される。放電灯30の点灯後では、キャパシタ(キャパシタンスC)17、インダクタ(インダクタンスL1)19および漏れインダクタンス(インダクタンスL3)からなる直列共振が生じる。この共振周波数f2は、1/(2×π×sqrt(C×(L1+L3)))で規定される(sqrtは平方根を示す。πは円周率を示す)。
【0024】
あるいは、点灯回路11は、キャパシタ17と一次側巻線31とにより構成される共振回路を利用することができる。この共振回路は、追加のインダクタを含まない。放電灯30の点灯前では、二次側巻線33が開放状態であるので、キャパシタ(キャパシタンスC)17、一次側巻線31(インダクタンスL2)およびトランス15の漏れインダクタンス(インダクタンスL3)からなる直列共振が生じる。この共振周波数f1は、1/(2×π×sqrt(C×(L2+L3)))で規定される。放電灯30の点灯後では、キャパシタ(キャパシタンスC)17および漏れインダクタンス(インダクタンスL3)からなる直列共振が生じる。この共振周波数f2は、1/(2×π×sqrt(C×L3))で規定される。
【0025】
直流交流変換回路13は、制御信号Sの周波数fに応じた交流電力を共振回路に提供する。点灯回路11は、これらの共振回路の共振周波数と交流電力の周波数との関係を利用して、放電灯30の点灯を制御する。この制御のために、放電灯30の状態(放電灯に流れる電流値および放電灯に加わる電圧値)の正確なモニタが必要となる。モニタのための信号は、例えば、モニタ用出力27およびモニタ用出力47から提供される。これらのモニタ用信号は、周波数fの信号である。モニタ用出力47は、例えば、二次側巻線33の中間タップ33cに接続されている。検出回路49は、モニタ回路29および第1の生成回路50を含む。検出回路49は、モニタのための信号に応答して、放電灯に流れる電流値に対応する信号、および放電灯に加わる電圧値に対応する信号を生成する。制御回路52は、検出回路49の出力に接続された周波数変調回路54をさらに含む。周波数変調回路54からの信号は、駆動回路39に提供される。
【0026】
点灯回路11は、起動回路45を含む。起動回路45は放電灯30の点灯のために必要な高電圧を生成する。本実施例では、起動回路45は一次側巻線31の中間タップ31cおよび接地線GNDに接続されている。
【0027】
図2(a)〜図2(d)は、地絡が生じたときの等価回路を説明する図面である。放電灯Lampは、接続点CONを介して点灯回路に接続されている。図2(a)および図2(b)に示された点灯回路51では、トランスTRANの二次側巻線の一端が接地されている。また、電流モニタ用抵抗RがトランスTRANの二次側巻線の一端と接続点CONの一端(出力)に接続されている。点灯回路51および放電灯Lampにおいて地絡が発生すると、地絡に起因する等価抵抗Rは、上記のモニタ用抵抗Rと並列に接続され、放電灯に流れる電流を正確に検出できない。
【0028】
一方、図2(c)および図2(d)に示された点灯回路11では、接続点CONに接続された抵抗Rの一端が接地されている。これ故に、地絡抵抗Rがモニタ用抵抗Rと並列に接続されることはない。
【0029】
以上説明したように、地絡の影響なく放電灯の状態をモニタできる点灯回路を提供できる。また、点灯回路の制御において、抵抗Rが接続されている出力23の地絡を考慮する必要がない。点灯回路の制御において地絡の影響を排除できるので、点灯回路の出力の地絡に対応するフェイルセーフ回路が不要になり、制御回路が簡素化でき、この結果、点灯回路のコストを低減できる。放電灯に流れる電流を、出力の状態に関係なくモニタできるので、高い信頼性の点灯回路が提供される。
【0030】
図3は、放電灯に印加される電圧VLをモニタするために回路の一例を示す図面である。点灯回路では、放電灯を起動するときに、20キロボルト程度の高電圧パルスを放電灯に加える。このため、放電灯に印加されている電圧VLACをモニタするために放電灯の両端の電位差VLACを直接にモニタ回路に加えることなく、二次側巻線33の中間タップ33cにモニタ回路を接続する。中間タップ33cは、二次側巻線33の全数Nsに対して、二次側巻線33の一端33aから巻数Ns1の位置に設けられている。抵抗25の一端25aが接地されているので、中間タップ33cに現れる電圧VVLACは、トランス15の部分巻線Ns1に生じる電圧Vs1ACと、モニタ抵抗25(抵抗値R1)の両端に生じる電位差VILACとの差である。この値は下記の式
VLAC =Vs1AC − VILAC (1)
で表される。また、放電灯の両端の電位差VLACは、二次側巻線33の両端33a、33bの間に生じる電圧Vs2ACと、モニタ抵抗25の両端に生じる電位差VILACとの和である。電圧VVLACの位相は電圧Vs2ACの位相と反対であるので、電圧の和は下記の式
VLAC =Vs2AC − VILAC (2)
で表される。
【0031】
二次側巻線33の両端33a、33bの間に生じる電圧Vs2、トランス15の部分巻線Ns1に生じる電圧Vs1は巻線比Ns1/Nsに関係している。この関係は下記の式
Ns1/Ns=Vs1/Vs2 (3)
Vs2=Vs1×Ns/Ns1 (4)
で表される。
【0032】
放電灯に流れる電流を検出するための抵抗25の電位差VILACを無視できるならば、式(2)から放電灯の両端の電圧VLACはVs2ACにほぼ等しい。しかしながら、放電灯の両端の電圧VLが小さい場合には、電圧VILACを無視できない。このため、トランス15の部分巻線Ns1に生じる電圧Vs1ACから電圧VILACの寄与を除き、電圧VILACの寄与を含まない、放電灯のためのモニタ電圧を求める。
【0033】
図3に示される矢印ILの向きに電流が流れる期間に、矢印の向きに正電圧(実効電圧)V、VIL、VVL、Vs1、Vs2が発生する。図3を参照しながら、次の2つの場合を説明する。絶対値記号を「ABS」と記す。
(1)ケース1(ABS(Vs1AC)≧ABS(VILAC)、中間タップ電圧VVLの矢印の向きが正方向)
VL=Vs1+(−VIL
=Vs2×Ns1/Ns−VIL
=(Ns1/Ns)×(VL−(−VIL))−VIL
=(Ns1/Ns)×VL+((Ns1−Ns)/Ns)×VIL
したがって、
a×VL
=a×(Ns/Ns1)×VVL+a×((Ns−Ns1)/Ns1)×VIL
である。つまり、a×VLは、右辺の第1項と第2項との和で表される。ここで、シンボル「a」は、ランプ電圧VLを制御回路52の内部で使用されるランプ電圧に相当する値(a×VL)に変換するための係数であり、例えばaの値は0.05である。
(2)ケース2(ABS(Vs1AC)≦ABS(VILAC)、中間タップ電圧VVLの矢印の向きが負方向)
VL=−(Vs1+(−VIL))
=−((Ns1/Ns)×VL+((Ns1−Ns)/Ns)×VIL
したがって
a×VL=
−a×(Ns/Ns1)×VVL+a×((Ns−Ns1)/Ns1)×VIL
である。つまり、a×VLは、右辺の第2項と第1項との差で表される。
【0034】
点灯回路11aでは、検出回路49は、抵抗25の他端25bからの信号に応答して、放電灯に流れる電流値に対応する信号を生成すると共に、抵抗25の他端25bからの信号に応じて中間タップ33cからの信号を処理することによって抵抗25の両端の電位差の影響を小さくした信号(放電灯に加わる電圧値に対応する信号)を生成する。引き続いて、ケース1について説明する。検出回路49は、第1の生成回路50と、第2の生成回路55と、第1の演算回路57とを備える。第1の生成回路50は、抵抗25の他端25bからの交流電圧信号を入力50aに受けて、またこの交流電圧信号の振幅に対応する第1の信号V1を生成する。第1の信号V1は、例えば信号VILACに対応する。第1の信号V1は、電流モニタ回路28aに提供される。電圧モニタ回路28bの第2の生成回路55は、中間タップ33cからの交流電圧信号を入力55aに受けて、またこの交流電圧信号の振幅に対応する第2の信号V2を生成する。第2の信号V2は、例えば信号VVLACに対応する。第1および第2の信号V1、V2は、第1の演算回路57に提供される。第1の演算回路57は、入力57a、57bにそれぞれ第1および第2の信号V1、V2を受けて、また第1の信号V1および第2の信号V2との演算(ケース1では加算)を行ってランプ電圧相当信号を生成する。第1の演算回路57は、a×VLに対応する信号を提供する出力57cを有する。
【0035】
この点灯回路11aによれば、抵抗25の一端25aが接地されているので、トランス15の中間タップ33cからの出力の値には、二次側巻線33の一端33aと中間タップ33cとの間に現れる電圧Vs1と、上記抵抗25の両端間の電圧VILとの両方が含まれる。これらの電圧を検出回路49を用いて処理すれば、抵抗25による電圧降下の影響が実質的に除かれる。
【0036】
点灯回路11aでは、第1の生成回路50は、入力50aからの信号を受けるピーク検出回路を含むことが好ましい。第1の信号V1は入力50aに受ける信号のピーク値を示す。その為、V1=VIL×sqrt(2)となる。また、第2の生成回路55は、入力55aからの信号を受けるピーク検出回路を含むことが好ましい。第2の信号V2は入力55aに受ける信号のピーク値を示す。その為、V2=VVL×sqrt(2)となる。点灯回路11aによれば、それぞれのピーク値を用いて、放電灯に流される電流および放電灯に印加される電圧に対応する信号を発生できる。また、これらのピーク検出回路の各々は、入力50a、55aに加わる負電圧をクランプするためにクランプ回路と、このクランプ回路の出力のピーク値を保持するピークホールド回路とを含む。
【0037】
図4は、第1の演算回路の一例を示す図面である。第1の演算回路57は、第1の信号V1を分圧比D1で分圧した第1の信号S1と第2の信号V2を分圧比D2で分圧した第2の信号S2とを生成して、これら第1および第2の信号V1、V2の和または差の演算を行って、放電灯に印加される電圧をモニタするための信号を生成する。より具体的には、第1の処理回路59は、電圧VILACのピーク値を示す第1の信号V1を入力59aに受けており、VIL×(Ns−Ns1)/Ns1に比例する第1の信号S1を生成し、また該第1の信号S1を提供する出力59bを有する。第2の処理回路61は、電圧VVLACのピーク値を示す第2の信号V2を入力61aに受けており、VVL×Ns/Ns1に比例する第2の信号S2を生成し、また該第2の信号S2を提供する出力61bを有する。加算回路63は、第1の信号S1および第2の信号S2をそれぞれ第1および第2の入力63a、63bに受け、第1の信号S1および第2の信号S2の加算(ケース2では、減算)を行い、また加算値(ケース2では、減算値)を示す第3の信号S3を出力63cに提供する。この例では、分圧比D1はa×(Ns−Ns1)/Ns1/sqrt(2)に関連しており、分圧比D2はa×Ns/Ns1/sqrt(2)に関連している。D2−D1はa/sqrt(2)に関連している。
【0038】
第1の処理回路59は、入力59aと接地GNDとの間に抵抗R4と抵抗R5が直列に接続されて成る分圧回路59cを含む。抵抗R4と抵抗R5との接続点は演算増幅器A1の非反転入力に接続されており、この非反転入力は抵抗R4、R5による分圧値を受ける。演算増幅器A1の反転入力は、演算増幅器A1の出力に接続されている。演算増幅器A1の出力は、第1の処理回路59の出力59bに接続されている。
【0039】
第2の処理回路61では、入力61aと接地GNDとの間に抵抗R2と抵抗R3が直列に接続されて成る分圧回路61cを含む。抵抗R2と抵抗R3との接続点は演算増幅器A2の非反転入力に接続されており、この非反転入力は抵抗R2、R3による分圧値を受ける。演算増幅器A2の反転入力は、演算増幅器A2の出力に接続されている。演算増幅器A2の出力は、第2の処理回路61の出力61bに接続されている。
【0040】
加算回路63は、演算増幅器A3を含む。加算回路の一入力63aは、抵抗R61を介して演算増幅器A3の非反転入力に接続されている。加算回路の別の入力63bは、抵抗R62を介して演算増幅器A3の非反転入力に接続されている。演算増幅器A3の反転入力は、抵抗R63を介して演算増幅器A3の出力に接続されると共に、抵抗R64を介して接地されている。
【0041】
第1の処理回路59において、第1の信号S1がa×VIL×(Ns−Ns1)/Ns1になるように、抵抗R4、R5の値が決定される。また、第2の処理回路61において、第2の信号S2がa×VVL×Ns/Ns1になるように、抵抗R2、R3の値が決定される。このとき、V1=VIL×sqrt(2)、V2=VVL×sqrt(2)より、
R3/(R2+R3)=a×Ns/Ns1/sqrt(2)
R5/(R4+R5)=a×(Ns−Ns1)/Ns1/sqrt(2)
という関係が満たされる。R61=R62とすれば、演算増幅器A3の非反転入力において信号S1およびS2の平均値が入力され、更にR63=R64とすることにより、この平均値は演算増幅器A3を用いて2倍に増幅され、加算回路63の出力には、a×VLが現れる。これにより、ケース1は詳細に説明された。
ケース1の結果:
a×VL
=a×(Ns/Ns1)×VVL+a×(Ns−Ns1)/Ns1×VIL
ケース2の結果:
a×VL
=−a×(Ns/Ns1)×VVL+a×(Ns−Ns1)/Ns1×VIL
を比較すると、ケース2のための回路は、加算回路に代えて減算回路を用いればよいことが理解される。VL検出範囲、IL検出範囲等に基づき、VLとILの関数であるVs1(=Ns1/Ns×(VL+IL×R1))とVIL(=IL×R1)の大きさの関係に依り、ケース1およびケース2のいずれの回路を用いるかを決定する。
図3を参照すると、検出回路49は、第1の生成回路50からの信号V1を第1の演算回路57に提供しているけれども、第2の生成回路55が、抵抗25の他端25bからの交流電圧信号を受けると共に、信号V2に追加して、この交流電圧信号の振幅に対応する信号(信号V1と同等の信号)を生成することもできる。この検出回路では、第1の演算回路は、第2の生成回路55からの2つの信号に応答して動作する。
【0042】
図5は、第1の演算回路の別の例を示す図面である。第1の演算回路58は、分圧回路を含まない。第1の演算回路58では、第3の処理回路65は、信号V1に応答して信号S3を生成しており、またこのためのボルテージフォロア回路を含む。演算増幅器A1の非反転入力は、入力65aを介して第1の信号V1を受ける。演算増幅器A1の反転入力は、演算増幅器A1の出力に接続されている。演算増幅器A1の出力は、第3の処理回路65の出力65bに接続されている。第4の処理回路67は、信号V2に応答して信号S4を生成しており、またこのためのボルテージフォロア回路を含む。演算増幅器A2の非反転入力は、入力67aを介して第2の信号V2を受ける。演算増幅器A2の反転入力は、演算増幅器A2の出力に接続されている。演算増幅器A2の出力は、第4の処理回路67の出力67bに接続されている。加算回路69は、演算増幅器A3を含む。加算回路69の一入力69aは、抵抗RR1を介して演算増幅器A3の非反転入力に接続されている。加算回路69の別の入力69bは、抵抗RR2を介して演算増幅器A3の非反転入力に接続されている。演算増幅器A3の反転入力は、抵抗RR4を介して演算増幅器A3の出力に接続されると共に、抵抗RR3を介して接地されている。
【0043】
加算回路69の出力値VOUT
OUT=(VVL×sqrt(2))×(RR2/RR3)×((RR3+RR4)/(RR1+RR2))+(VIL×sqrt(2))×(RR1/RR3)×((RR3+RR4)/(RR1+RR2))
となる。一方、上記のケース1の結果によれば、
a×VL
=a×(Ns/Ns1)×VVL+a×((Ns−Ns1)/Ns1)×VIL
である。VVL、VILの項を対比すると、
(RR2/RR3)×((RR3+RR4)/(RR1+RR2))=a×Ns/Ns1/sqrt(2)
(RR1/RR3)×((RR3+RR4)/(RR1+RR2))=a×(Ns−Ns1)/Ns1/sqrt(2)
となる。これらの式から、抵抗RR1とRR2の関係、および抵抗RR3とRR4との関係が得られる。また、ケース2に関しても同様の計算により抵抗値を設定することができる。以上の説明より理解されるように、検出回路を構成する回路には様々な変形例が考えられる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図6は、検出回路の別の例を示す図面である。点灯回路11bでは、検出回路71は、抵抗25の他端25bからの信号(放電灯に流れる電流値に対応する信号)および中間タップからの信号の差分値に対応する電圧信号を生成して、またこの電圧信号と、抵抗25の他端25bからの信号に応答して生成された信号とを処理して、抵抗25の両端の電位差からの影響を中間タップからの信号において小さくした信号(放電灯に加わる電圧値に対応する信号)を生成する。点灯回路11bでは、検出回路71は、第1の生成回路50と、第3の生成回路73と、第2の演算回路75とを含む。第3の生成回路73は、抵抗25の他端25bに接続された第1の入力73aと中間タップ33cに接続された第2の入力73bとを有すると共に、当該第1および第2の入力73a、73bからの交流信号の差分に対応する第3の信号V3を生成する。第3の信号V3は、図6に示された電位差Vs1ACに対応する信号である。第2の演算回路75は、第1の信号V1と第3の信号V3を演算してランプ電圧相当信号を生成する。このために、第2の演算回路75は、電位差Vs1ACに対応する信号と放電灯に流れる電流値に対応する信号とを用いて、a×VLに対応する信号を生成する。この信号は出力75cに提供される。
図6に示されるように電圧VILACの向きが電圧VVLACの向きと逆であるので、例えば、電圧VVLACが正の最大振幅であるとき、電圧VILACが負の最大振幅となり、差分を示す信号Vs1ACは、VILACの最大振幅値(正値)とVVLACの最大振幅値(正値)との和が最大振幅となる交流信号になる。
【0045】
この点灯回路11bによれば、高電圧が印加される放電灯の両端子間の電圧を直接にモニタせずに中間タップ33cからの出力の値を用いるので、モニタ入力部の耐圧性能を低減できる一方、放電灯に印加される電圧を示す信号を高精度にできる。また、抵抗25の一端が25a接地されているので、中間タップ33cからの出力の値は、二次側巻線33の一端33aと中間タップ33cとの間に現れる電圧Vs1と上記抵抗25の両端間の電圧との和である。第1および第3の生成回路からの電圧信号を第2の演算回路75を用いて処理すれば、抵抗25の影響が実質的に除かれて、中間タップ33cと抵抗の他端25bとの間の電位差を示す信号が得られる。
【0046】
図7は、第3の生成回路の構成の一部を表す一例を示す図面である。第3の生成回路73は、減算回路76を含む。減算回路76は、入力73a、73bからの信号の差分値に対応する電圧信号を生成する。減算回路76の第1の入力76aは演算増幅器A4の反転入力に抵抗R72を介して接続されており、演算増幅器A4の反転入力は、演算増幅器A4の出力に抵抗R74を介して接続されている。また、減算回路76の第2の入力76bは演算増幅器A4の非反転入力に抵抗R71を介して接続されており、演算増幅器A4の非反転入力は抵抗R73を介して接地されている。
第1の入力76aは第3の生成回路73の入力73a(入力信号はVILAC)に接続され、第2の入力76bは第3の生成回路73の入力73b(入力信号はVVLAC)に接続される。また、抵抗R71=R72=R73=R74と設定することにより、演算増幅器A4の出力信号を交流電圧VF3ACと記載すると、次の関係
VF3AC=VVLAC−VILAC=Vs1AC
となる。信号Vs1ACをピークホールド回路を通したピーク値が信号V3(=Vs1×sqrt(2))になる。この回路により、入力電圧の値の差分が提供され、電圧Vs1ACに対応する信号が生成される。トランス15の巻線比の関係
Ns1/Ns=Vs1/Vs2
を用いて、
a×Vs2=a×Vs1×Ns/Ns1
を得る。
点灯回路11bにおいても、第3の生成回路73は、点灯回路11aと同様なピーク検出回路を含むことができる。点灯回路11bによれば、交流信号として求めた差分値のピーク値を用いて、放電灯に流される電流および放電灯に印加される電圧に対応する信号を発生できる。また、ピーク検出回路はクランプ回路とピークホールド回路とを含む。
a×Vs2に対応する信号は、Vs1ACのピーク値V3を得た後に、図4に示されるように、例えばV3に対応する信号を分圧比D3で分圧する回路(例えば分圧抵抗およびボルテージフォロア回路)を用いて生成される。この分圧比D3はa×Ns/Ns1/sqrt(2)に関連づけられている。
抵抗25の両端間の電位差が小さいならば、実質的に
a×VL=a×Vs2=a×Vs1×Ns/Ns1
=a×V3×Ns/Ns/Ns1/sqrt(2)
となる。抵抗25の両端間の電位差を考慮するならば、
a×VL=a×Vs2−a×VIL
=a×Vs1×Ns/Ns1−a×VIL
=a×V3×Ns/Ns1/sqrt(2)−a×V1/sqrt(2)
を得る。これ故に、減算回路を用いて、Vs1ACに対応する信号とVILACに対応する信号との差を生成することにより、ランプ電圧相当信号であるa×VLを得ることができる。
【0047】
検出回路71は、第1の生成回路50からの信号V1を第2の演算回路75に提供しているけれども、第3の生成回路73が、抵抗25の他端25bからの交流電圧信号を受けると共に、信号V3に追加して、この交流電圧信号の振幅に対応する信号(信号V1と同等の信号)を生成することもできる。この検出回路では、第2の演算回路は第3の生成回路からの2つの信号に応答して動作する。
【0048】
(第3の実施の形態)
図8は、検出回路の別の例を示す図面である。点灯回路11cでは、トランス15の二次側は追加巻線34(巻数Ns3)を含む。トランス15の二次側に追加巻線34を設ければ、中間タップを用いることがない。検出回路81は、第1の生成回路50と、第4の生成回路83と、第3の演算回路85とを含む。第4の生成回路83は、モニタ用出力48を介して追加巻線34に接続された入力83aを有すると共に、追加巻線34の両端の電位差に対応する交流電圧に応じた第4の信号V4を生成する。第3の演算回路85は、第1の信号V1と第4の信号V4を演算してランプ電圧相当信号を出力する。第4の信号V4は、Vs3ACの最大振幅値に対応する信号である。二次側巻線33と追加巻線34との巻線比の関係
Ns3/Ns=Vs3/Vs2
を用いて
a×Vs2=a×Vs3×Ns/Ns3
を得る。
点灯回路11cにおいても点灯回路11a、11bと同様に、第4の生成回路83は、入力83aからの信号を受けるピーク検出回路を含むことが好ましい。第4の信号V4は入力83aに受ける信号のピーク値を示す。
【0049】
抵抗25の両端間の電位差が小さいならば、実質的に
a×VL=a×Vs2=a×Vs3×Ns/Ns3
=a×V4×Ns/Ns3/sqrt(2)
となる。抵抗25の両端間の電位差を考慮するならば、
a×VL=a×Vs2−a×VIL
=a×Vs3×Ns/Ns3−a×VIL
=a×V4×Ns/Ns3/sqrt(2)−a×V1/sqrt(2)
を得る。第3の演算回路85は、Vs3ACに対応する信号を受ける入力85aとVILACに対応する信号を受ける入力85bと有しており、またVs3ACに対応する信号V4とVILACに対応する信号V1に対し、各々(a×Ns/Ns3/sqrt(2))と(a/sqrt(2))に分圧した値との差信号を生成する。抵抗25の両端間の電位差が小さいならば、−a×V1/sqrt(2)を演算するための減算回路は不要となる。第3の演算回路85は、a×VLに対応する信号を提供する出力85cを有する。
【0050】
検出回路81は、第1の生成回路50からの信号V1を第3の演算回路85に提供しているけれども、第4の生成回路83が、抵抗25の他端25bからの交流電圧信号を受けると共に、信号V4に追加して、この交流電圧信号の振幅に対応する信号(信号V1と同等の信号)を生成することもできる。この検出回路では、第3の演算回路は、第4の生成回路からの2つの信号に応答して動作する。
【0051】
(第4の実施の形態)
図9は、点灯回路11a、11b、11cに用いられるピークホールド回路を示す図面である。ピークホールド回路89は、演算増幅器91と、第1のトランジスタ93と、第2のトランジスタ95と、ホールド用のキャパシタ97と、抵抗99とを含む。演算増幅器91は、入力信号Vinを受ける非反転入力91a、反転入力91bおよび出力91cを有する。第1のトランジスタ93および第2のトランジスタ95の各々は、バイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタであることができる。第1のトランジスタ93がバイポーラトランジスタ(電界効果トランジスタ)であるとき、第1のトランジスタ93は、電源線Vccに接続されたコレクタ(ドレイン)93a、演算増幅器91の出力91cに接続されたベース(ゲート)93b並びに演算増幅器91の反転入力91bおよび抵抗99の一端99aに接続されたエミッタ(ソース)93cを有する。第2のトランジスタ95がバイポーラトランジスタ(電界効果トランジスタ)であるとき、第2のトランジスタ95は、電源線Vccに接続されたコレクタ(ドレイン)95a、演算増幅器91の出力91cに接続されたベース(ゲート)95bおよびキャパシタ97の一端97aに接続されたエミッタ(ソース)95cを有する。キャパシタ97の他端97bおよび抵抗99の他端99bは接地されている。
【0052】
演算増幅器91の出力がトランジスタ93のベース93bに接続されると共に、トランジスタ93のエミッタ93cが演算増幅器91の反転入力91bに接続されているので、第1のトランジスタ93は、負帰還のために設けられている。また、演算増幅器91の出力がトランジスタ95のベース95bに接続されると共に、トランジスタ95のエミッタ95cがキャパシタ97の一端97aに接続されているので、第2のトランジスタ95は、ピーク電圧のホールドのために設けられている。これ故に、出力の飽和無しに演算増幅器91が動作するので、ピークホールド回路89の周波数帯域は、演算増幅器91の周波数帯域と同程度まで広い。入力周波数が上記の周波数帯域にあるとき、ピークホールド回路89は入力信号の変化に追従して動作する。
【0053】
必要な場合には、ピークホールド回路89は、キャパシタ97と並列に接続された抵抗を更に含むことができる。
【0054】
点灯回路11a、11b、11cにおいて、ランプ電圧は、交流の極性切り替わり毎に、交流信号の振幅より大きいパルス状の再点弧電圧が発生する場合には、この再点弧電圧をマスクして振幅(交流信号のピーク値)を検出する必要がある。
【0055】
点灯回路11a、11b、11cのモニタ用出力27、47、48には、直流交流変換回路13のスイッチング周波数に応答した信号が現れる。モニタ回路は、このスイッチング周波数に応答して動作することが求められる。しかしながら、通常、ピークホールド回路は、演算増幅器の出力に接続されたホールド用のキャパシタを含んでいるので、このキャパシタの容量値によって動作上限周波数が決まってしまうことが多い。ところが、ピークホールド回路89を用いると、演算増幅器91の周波数帯域と同程度までモニタ信号は応答する。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態に係る点灯回路によれば、地絡が生じても、ランプ電圧およびランプ電流を正確にモニタして電力演算が行えるので、放電灯に過大な電力が供給されてしまう事態を防ぎ、安全に地絡を検出できる。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、車両用放電灯のための点灯回路を概略的に示す回路図である。
【図2】図2(a)〜図2(d)は、点灯回路および放電灯からなる回路において地絡が生じたときの等価回路を示す図面である。
【図3】図3は、放電灯に印加される電圧VLをモニタするために回路の一例を示す図面である。
【図4】図4は、第1の演算回路の一例を示す図面である。
【図5】図5は、第1の演算回路の別の例を示す図面である。
【図6】図6は、放電灯に印加される電圧VLをモニタするために回路の一例を示す図面である。
【図7】図7は、第3の生成回路の構成の一部を表す一例を示す図面である。
【図8】図8は、放電灯に印加される電圧VLをモニタするために回路の一例を示す図面である。
【図9】図9は、点灯回路に用いられるピークホールド回路を示す図面である。
【符号の説明】
【0058】
11、11a、11b、11c…点灯回路、13…直流交流変換回路、13a…直流交流変換回路の出力、15…トランス、17…キャパシタ、19…インダクタ、21…第1の出力、23…第2の出力、25…抵抗、25a…抵抗の一端、25b…抵抗の他端、29…モニタ回路、S…制御信号、30…放電灯、31…一次側巻線、33…二次側巻線、31a…一次側巻線の一端、31b…一次側巻線の他端、31c…一次側巻線の中間タップ、33a…二次側巻線の一端、33b…二次側巻線の他端、33c…二次側巻線の中間タップ、34…追加巻線、35a、35b…パワー入力、37…外部電源、41、43…スイッチング素子、45…起動回路、47…モニタ用出力、48…モニタ用出力、49…検出回路、59c…分圧回路、61c…分圧回路、89…ピークホールド回路、91…演算増幅器、93…第1のトランジスタ、95…第2のトランジスタ、97…キャパシタ、99…抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を点灯する点灯回路であって、
前記放電灯に印加する電力を制御する制御信号に応答して、入力される直流電圧を交流電圧に変換する直流交流変換回路と、
前記直流交流変換回路の出力から前記交流電圧を受ける一次側巻線および二次側巻線を含むトランスと、
前記トランスの一次側に設けられたキャパシタと、
前記トランスの一次側に設けられたインダクタと、
前記二次側巻線からの電力を前記放電灯に供給するための第1および第2の出力と、
前記第2の出力に接続され接地された一端と前記二次側巻線の一端に接続された他端とを有する抵抗と、
前記放電灯に流れる電流を前記抵抗の前記他端からの信号を用いてモニタする電流モニタ回路を含む検出回路と
を備え、
前記キャパシタ、前記インダクタおよび前記一次側巻線は直列に接続されている、ことを特徴とする点灯回路。
【請求項2】
前記トランスの前記二次側巻線は中間タップを有しており、
前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、
前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、
前記電圧モニタ回路は、
前記中間タップに接続された入力を有すると共に、該入力の交流電圧の振幅に対応する第2の信号を生成する第2の生成回路と、
前記第1の信号および第2の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第1の演算回路と
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載された点灯回路。
【請求項3】
前記トランスの前記二次側巻線は中間タップを有しており、
前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、
前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、
前記電圧モニタ回路は、
前記抵抗の他端に接続された第1の入力と前記二次側巻線の中間タップに接続された第2の入力と有すると共に、当該第1および第2の入力からの交流信号の差分に対応する第3の信号を生成する第3の生成回路と、
前記第1の信号と前記第3の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第2の演算回路と
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載された点灯回路。
【請求項4】
前記トランスの二次側は、追加巻線を有しており、
前記検出回路は、前記抵抗の他端に接続された入力を有する第1の生成回路と、電圧モニタ回路とを有しており、
前記第1の生成回路は、該入力の交流電圧の振幅に対応する第1の信号を生成し、
前記電圧モニタ回路は、
前記追加巻線に接続された入力を有すると共に、前記追加巻線の両端の電位差に対応する交流電圧の振幅に応じた第4の信号を生成する第4の生成回路と、
前記第1の信号と前記第4の信号を演算してランプ電圧相当信号を出力する第3の演算回路と
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載された点灯回路。
【請求項5】
前記第1の生成回路は、当該第1の生成回路の前記入力からの信号の振幅に対応する信号を保持して出力する保持回路を含む、ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−27710(P2008−27710A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198535(P2006−198535)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】