説明

放電灯点灯装置、及びそれを用いた照明器具

【課題】 簡易な構成で調光下限が拡大した放電灯点灯装置、及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】 直流電圧Vdcを出力する直流電源回路1と、直流電源回路1が出力する直流電圧Vdcから、高周波電力を生成して出力する高周波電源回路2と、高周波電源回路2と無電極放電灯4との間に配置され、無電極放電灯4に高周波電力を供給する共振回路3と、無電極放電灯4を調光制御する調光制御回路5と、高周波電源回路2駆動周波数を変化させる周波数制御部6とを備え、共振回路2を高周波電力が極大であるときに、出力電圧Voutが極小となるように二重共振回路を構成し、出力電圧Voutが極小となるように駆動周波数を変動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光制御が可能な放電灯点灯装置、及びそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電灯への出力電圧と出力電流の位相差を一定に制御する放電灯点灯装置が開示されている(例えば、特許文献1)。従来例1として、この放電灯点灯装置を以下に説明する。
【0003】
本従来例の放電灯点灯装置の構成図を図9に示す。本従来例の放電灯点灯装置は、無電極放電灯点灯装置であり、商用交流電源143はダイオードブリッジ144で整流されたあと、直流電圧レギュレータ145で安定化された直流電源VDDにされ、ハーフブリッジ型に接続されたスイッチング素子のFET−T101,T102に加えられる。ここで、増幅器139、ドライバ122およびFET−T101,T102は、インバータ回路を構成している。このインバータ回路から出力される高周波電源は、直列共振コンデンサCsと並列共振コンデンサCpからなるマッチング回路を介して無電極放電ランプの励起コイルLに供給される。STは、始動回路である。インバータ回路の出力電圧は検出点124Bで検出され、位相比較器146に送られ、出力電流は検出点124Aで検出され、位相比較器146に送られる。この位相比較器146では、出力電流と出力電圧の位相差が検出され、この位相差に比例した電圧信号が電圧制御発振器137に送られる。この電圧制御発振器137の出力は、増幅器139を介してインバータスイッチング素子を駆動するドライバ122に供給される。これにより、高周波電源の出力電流と出力電圧の位相差が一定に保たれるように、インバータ回路の駆動周波数が制御される。また、インバータ回路の出力電流は、整流回路147で直流に変換され、出力電流値に比例した電圧信号にされたあと比較器148に送られる。この比較器148では、基準電圧149と出力電流値とが比較され、この比較出力に基づいて直流電圧レギュレータ145が制御されることにより、インバータ回路の出力電流値が一定に保たれる。
【0004】
このように位相を合わせるループと出力電流値を一定化する2つの制御ループが働いており、このような制御ループによりインバータ回路の出力状態を監視することにより、インバータ回路のスイッチング素子に逆方向電流が流れなくなり、素子を保護できる。また、スイッチング素子のバラツキやマッチング回路のバラツキに対する許容幅を広くでき、始動時に十分な電流を励起コイルに流すことができる。
【0005】
次に、従来例2として、部品ばらつきが大きい場合においても、立ち消えを抑制することのできる無電極放電灯点灯装置を以下に説明する(例えば、特許文献2)。
【0006】
本従来例の無電極放電灯点灯装置は、図10に示すようにスイッチング素子SW1、SW2のオン・オフにより直流電源Eが供給する直流電力を高周波電力に変換する高周波電源回路201と、高周波電源回路201に接続されインダクタLs及びコンデンサCs、Cpを含む共振回路202と、共振回路202に接続され無電極放電灯203に誘導電界を誘起する誘導コイルLcと、を備えている。
【0007】
誘導コイルLcに高周波電力を供給する高周波電源回路201の直流電源Eは、外部からの調光信号に応じた直流電圧を出力するもので、スイッチング素子SW1及びSW2の直列回路に接続されるとともに、直流電源Eの直流電圧を調光信号に基づいて増減させる出力電圧調整回路204に接続されている。
【0008】
共振回路202は、高周波電源回路201のスイッチング素子SW2の両端に接続されたインダクタンスLsとコンデンサCpの直列回路及びコンデンサCpの両端に接続されたコンデンサCsとで構成されている。コンデンサCsの負荷側の端子とコンデンサCpの回路グランド側の端子、即ち共振回路202の出力端には、無電極放電灯203に電磁誘導電界を誘起する誘導コイルLcが接続されている。
【0009】
また、図10に示すように共振回路202のインダクタンスLsには、共振回路202に流れる電流を検出する2次巻線が設けられており、その一端は回路グランドに接続され、他端は共振回路202の共振状態を検出する共振状態検出手段の1つであるインピーダンス算出部210の第1の入力端子に接続されている。インダクタンスLsとスイッチング素子SW1及びSW2の接続点には、共振回路202の電圧を検出する抵抗R201及び抵抗R202の直列回路が接続されており、抵抗R201と抵抗R202の接続点が、インピーダンス算出部210の第2の入力端子に接続されている。インピーダンス算出部210は、共振回路202の電圧と共振電流の比によりインピーダンスを算出するもので、インピーダンス算出部210の出力端は、インピーダンス算出部210の検出信号に基づいてスイッチング素子SW1及びSW2を共振周波数の近傍で駆動させるように駆動周波数を変化させる制御回路211の入力端に接続されている。ここで、制御回路211は、駆動周波数の変化前のインピーダンスを記憶するメモリと、メモリに記憶されたインピーダンスと検出されたインピーダンスとを比較部と、を備えている(いずれも図示せず)。制御回路211の出力端は、スイッチング素子SW1及びSW2に駆動信号を出力する駆動回路212に接続され、駆動回路212の出力端は、スイッチング素子SW1及びSW2に接続されている。
【0010】
上記の構成によって、共振回路202における共振電流と共振電圧とを検出し、共振電流と共振電圧との比からインピーダンス算出部210がインピーダンスを算出する。そして、得られるインピーダンスが極大値となるように駆動周波数を変動させる。インピーダンスが極大値となる点で駆動周波数が共振周波数となるとみなせるので、共振回路202の部品ばらつきが大きい場合においても、立ち消えを抑制することができ、より深い調光が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−184592号公報
【特許文献2】特開2006−155963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来例1は、出力電力の効率を上げるために出力電圧と出力電流の両方を検出して位相差を算出し、位相差を一定にする制御をしているが、回路構成および制御方法が複雑となる。また、位相差を算出する手段が必要となるため、コストが増加する。
【0013】
従来例2も、駆動周波数と共振周波数を一致させるために出力電圧と出力電流の両方を検出してインピーダンスを算出しているが回路構成が複雑となる。また、インピーダンスを算出する手段が必要となるため、コストが増加する。
【0014】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で調光下限が拡大した放電灯点灯装置、及びそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、直流電圧を出力する直流電源回路と、直流電源回路が出力する直流電圧から、高周波電力を生成して出力する高周波電源回路と、高周波電源回路と放電灯との間に配置され、放電灯に高周波電力を供給する共振回路と、放電灯を調光制御する調光制御回路と、放電灯の全点灯時および調光点灯時において、放電灯に供給される前記高周波電力が極大となるように、前記共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを用いて、前記高周波電源回路の駆動周波数を変化させる周波数制御回路とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項1の発明によれば、放電灯に供給される高周波電力が極大であるときは、高周波電源回路の駆動周波数は、共振回路の共振周波数であるとみなすことができ、共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを用いて、放電灯に供給される高周波電力が極大となるように高周波電源回路の駆動周波数を変化させることによって、簡易な構成で駆動周波数を共振回路の共振周波数と一致させることができるので、調光下限が拡大し、広範囲にわたって調光制御が可能となる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、前記共振回路は、放電灯に供給される前記高周波電力が極大である時に、前記共振回路の放電灯への出力電圧または出力電流は極小となる構成であり、前記周波数制御回路は、共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを検出し、当該検出した出力電圧または出力電流が極小となるように、前記高周波電源回路の駆動周波数を変化させることを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明によれば、高周波電力が極大であるときに、放電灯への出力電圧または出力電流は極小となる構成であるので、出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを検出し、検出した出力電圧または出力電流が極小となるように、高周波電源回路の駆動周波数を変化させることによって、駆動周波数を共振周波数と一致させることができるので、調光下限の拡大および調光比に応じた連続調光をすることができる。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記共振回路は、2つ以上の共振周波数を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明によれば、2つ以上の共振周波数を備えるように共振回路を構成することによって、高周波電力が極大であるときに、放電灯への出力電圧または出力電流が極小となるように構成することができる。
【0021】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記調光制御回路は、前記直流電源回路が出力する直流電圧を変化させることによって、前記放電灯を調光制御することを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明によれば、直流電源回路が出力する直流電圧と、放電灯に供給される高周波電力との関係は、略比例関係にあるので、直流電圧を制御することによって、放電灯を調光制御することができる。
【0023】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記放電灯は無電極放電灯で構成されており、当該無電極放電灯に誘導電磁界を供給する誘導コイルを用いて、前記共振回路を構成することを特徴とする。
【0024】
請求項5の発明によれば、無電極放電灯に誘導電磁界を供給する誘導コイルを用いて、共振回路を構成することによって、共振回路を簡略化することができる。
【0025】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって点灯する放電灯とを備えることを特徴とする。
【0026】
請求項6の発明は、照明器具において、放電灯に供給される高周波電力が極大であるときは、高周波電源回路の駆動周波数は、共振回路の共振周波数であるとみなすことができ、共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを用いて、放電灯に供給される高周波電力が極大となるように高周波電源回路の駆動周波数を変化させることによって、簡易な構成で駆動周波数を共振回路の共振周波数と一致させることができるので、調光下限が拡大し、広範囲にわたって調光制御が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明では、簡易な構成で調光下限を拡大することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1における放電灯点灯装置のブロック構成を示す図である。
【図2】同上の回路構成を示す図である。
【図3】同上の調光比と直流電圧の関係を示す図である。
【図4】同上の駆動周波数に対する高周波電力および出力電圧の出力特性を示す図である。
【図5】同上の調光時における駆動周波数に対する高周波電力の出力特性を示す図である。
【図6】(a)(b)同上の照明器具の構成を示す図である。
【図7】(a)(b)実施形態2における放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。
【図8】同上の駆動周波数に対する高周波電力および出力電流の出力特性を示す図である。
【図9】従来例1における放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。
【図10】従来例2における放電灯点灯装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の放電灯点灯装置のブロック構成図を図1、回路構成図を図2に示す。本実施形態の放電灯点灯装置は、商用交流電源ACから出力される交流電圧を直流電圧Vdcに変換して出力する直流電源回路1と、直流電源回路1から出力される直流電圧Vdcから高周波電力を生成して出力する高周波電源回路2と、高周波電源回路2と無電極放電灯4との間に配置され、無電極放電灯4に高周波電力を供給する共振回路3と、制御部8とで構成されており、制御部8は、調光信号S1に基づいて無電極放電灯4を調光制御する調光制御回路5と、高周波電源回路2の駆動周波数を変動させる周波数制御部6とを備えている。
【0031】
無電極放電灯4とは、例えば略電球形状のガラスバルブ内に不活性ガス・金属蒸気等の放電ガス(水銀・希ガスなど)が封入され、ガラスバルブの内側表面に蛍光体が塗布されている。また、中心方向に向かって略円柱形上の凹部をもつキャビティ部を有している。
【0032】
直流電源回路1は、商用交流電源ACから出力される交流電圧を直流電圧Vdcに変換する昇圧チョッパ回路を備えており、交流電圧を整流するダイオードブリッジDBと、チョークコイルL1と、チョークコイルL1を介してダイオードブリッジDBの出力端間に設けられるスイッチング素子Q3と、整流用のダイオードD1と、平滑コンデンサC1と、スイッチング素子Q3のオン・オフを制御するチョッパ制御回路11とで構成されている。なお、上記の昇圧チョッパ回路の構成は、従来より周知である構成であり、詳細な説明は省略する。
【0033】
高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力端に直列接続されたスイッチング素子Q1、Q2と、スイッチング素子Q1、Q2のオン・オフを制御するドライブ回路21とで構成されており、ドライブ回路21によってスイッチング素子Q1、Q2を交互にオン・オフすることによって、直流電圧Vdcを変換して高周波電力を出力している。
【0034】
共振回路3は、スイッチング素子Q2の両端間に接続されたインダクタLsとコンデンサCpの直列回路と、コンデンサCpの両端間に接続されたコンデンサCsと無電極放電灯に誘導電力を供給する誘導コイルLcの直列回路とで構成されており、高周波電源回路2の出力端から見て2重の共振点を備えている。つまり、本実施形態の共振回路3は、2つの共振周波数を備えている。誘導コイルLcは、少なくとも磁性コア(図示なし)を備え、磁性コアの周囲にコイルを巻回することで構成されている。また、誘導コイルLcは無電極放電灯4のキャビティ部内に近接配置されている。共振回路3は高周波電源回路2の出力を略正弦波に変換し、始動時および安定点灯時に所望の高周波電力を誘導コイルLcに供給し、誘導コイルLcから発生する高周波電磁界により無電極放電灯4は点灯する。
【0035】
制御部8に備えられた調光制御回路5は、調光信号入力端子T1、T2間に直列接続された分圧抵抗R1、R2と、分圧抵抗R2に並列接続された平滑用コンデンサC2と、マイコン7とで構成されている。調光信号入力端子T1、T2間に調光信号S1が入力されると、分圧抵抗R1、R2で分圧され、平滑用コンデンサC2で平滑されてマイコン7に入力する。調光信号S1は、調光比に応じてハイレベルのパルス幅(オンデューティ比)が変化する矩形波信号である。したがって、調光信号S1は調光比が大きくなるにつれて、オンデューティ比が大きくなり、平滑用コンデンサC2の両端電圧(充電電圧)が上昇する。そして、マイコン7は平滑用コンデンサC2の両端電圧から調光比を算出し、算出した調光比に基づいたチョッパ制御信号S2をチョッパ制御回路11に出力する。チョッパ制御信号S2は矩形波信号で構成されており、マイコン7は算出した調光比に基づいてチョッパ制御信号S2のオンデューティ比を変動させる。そして、チョッパ制御回路11はチョッパ制御信号S2に同期して、昇圧チョッパ回路のスイッチング素子Q3をオン・オフして、直流電圧Vdcを出力する。なお、チョッパ制御信号S2を直流電圧信号やパルス信号等で構成し、チョッパ制御回路11は、チョッパ制御信号S2の振幅やパルスのオン・オフに基づいて、スイッチング素子Q3をオン・オフするオンデューティ比を制御してもよい。
【0036】
次に、調光比を示す調光信号S1と、直流電源回路1が出力する直流電圧Vdcの関係について説明する。直流電圧Vdcと、無電極放電灯4に供給される高周波電力との関係は略比例関係にある。また、調光信号S1と、直流電圧Vdcとの関係も図3に示すように略比例関係にあり、調光信号S1が示す調光比が100%であるときに、直流電圧Vdcの出力は100%となる。したがって、調光信号S1に基づいて直流電圧Vdcを変化させることによって、所望の調光比に連続して調光制御することができる。また、調光信号S1のオンデューティ比に対する直流電圧Vdcを示すデータテーブル等を記憶部(図示なし)に格納しておくことによって、高周波電力または無電極放電灯4の照度または直流電圧Vdc等を検出してフィードバック制御しなくても、容易な制御で調光信号S1に示される調光比に応じた調光制御を精度よく行うことができる。
【0037】
次に、高周波電源回路2の駆動周波数に対する共振回路3における誘導コイルLcへの出力電圧Voutおよび、無電極放電灯4に供給する高周波電力の出力特性を図4を用いて説明する。図4は、共振周波数を2つ備えた共振回路3における、高周波側の共振周波数f0近傍を動作点とした時の駆動周波数に対する高周波電力の出力特性(グラフG1)および、出力電圧Voutの出力特性(グラフG2)である。本実施形態の共振回路3は、インダクタLs、コンデンサCp、Cs、誘導コイルLcとで2重共振回路を構成しており、駆動周波数が高周波側の共振周波数f0と一致したときに高周波電力が極大、出力電圧Voutが極小となるように構成されている。したがって、出力電圧Voutを検出し、出力電圧Voutが極小となるように駆動周波数を変動させることで、駆動周波数と共振周波数f0とを略一致させることができる。以下に、駆動周波数と共振周波数f0とを一致させる方法について説明する。
【0038】
制御部8に備えられた周波数制御部6は、マイコン7内のプログラム等によって実行されるものであり、調光信号S1に示される調光比が変動した場合に、駆動周波数制御信号S3を出力して、高周波電源回路2の駆動周波数を変動させる。具体的には、マイコン7が誘導コイルLcに出力される出力電圧Voutを検出し、図示しないメモリに出力電圧Voutを記憶させておく。また、高周波電源回路2の駆動周波数を制御するドライブ回路21は、マイコン7から出力される駆動周波数制御信号S3に基づいて、スイッチング素子Q1、Q2をオン・オフさせる周期を増加または低減させる。そして、マイコン7は、駆動周波数制御信号S3を出力して駆動周波数を微小変動させ、駆動周波数を変動させた現在の出力電圧Voutと、メモリに記憶された変動前の出力電圧Voutとを比較する。比較した結果に基づいて、出力電圧Voutが低下するように駆動周波数制御信号S3を出力し、駆動周波数の増加・低減を繰り返すことによって、出力電圧Voutが略極小値に制御される。出力電圧Voutを極小値に制御することによって、駆動周波数と共振周波数f0が略一致することになり、無電極放電灯4に供給される高周波電力が極大となる。
【0039】
また、調光比を変動させた場合の駆動周波数に対する高周波電力の出力特性を図5に示す。調光比を変動させると、負荷のインピーダンスが変化するが、このときに共振回路3の誘導コイルLcのインダクタンス成分が変化すると、共振周波数も変化することとなる。例えば、図5のグラフG1に示すように、ある調光比では高周波電力が極大となる共振周波数はf0であるが、直流電圧Vdcを低下させて調光比を低減させると、グラフG3に示すように高周波電力が低下すると共に、高周波電力が極大となる共振周波数がf0からf1に変動する。しかし、本実施形態では、調光によって共振周波数が変動しても、出力電圧Voutを検出し、出力電圧Voutが極小となるように駆動周波数を制御することによって、駆動周波数を変動後の共振周波数f1に追従して略一致させることができる。
【0040】
このように、誘導コイルLcに出力される出力電圧Voutのみを検出して、出力電圧Voutを極小値とする簡易な回路構成および制御方法によって、無電極放電灯4の全点灯時および調光点灯時において、駆動周波数を共振周波数に略一致させることができるので、調光点灯時における無電極放電灯4の立ち消えを抑制し、調光下限の拡大が可能となり、広範囲にわたって調光制御が可能となる。
【0041】
また、共振回路3を2つの共振周波数を備えた二重共振回路で構成することによって、一方の共振周波数に駆動周波数を一致させたときに、出力電圧Voutが極小となるように構成することができる。それによって、出力電圧Voutの検出手段に、耐圧が低い素子を選択することができ、コストを下げることができる。
【0042】
また、本実施形態では、調光比を示す調光度が変化した場合にのみ、出力電圧Voutを極小となるように駆動周波数を制御しているが、常に出力電圧Voutが極小となるように駆動周波数を制御してもよい。
【0043】
次に、上記で説明した放電灯点灯装置を備えた照明器具の例として、図6(a)(b)に示すような照明器具X、Yが考えられる。図6(a)は、照明器具Xの一部が破断した正面図、図6(b)は照明器具Yの外観斜視図である。図6(a)に示す照明器具Xの筐体9は内部に点灯装置および無電極放電灯4を具備し、内部空間を密閉することにより防水性能が付与されたものであって、街路灯として屋外で使用される。また、図6(b)に示す照明器具Yの筐体10も内部に点灯装置および無電極放電灯4を具備し、内部空間を密閉することで防水性能が付与されたものであって、電柱P等に取り付けられ防犯灯として屋外で使用される。照明器具X、Yは、上記で説明した本発明の放電灯点灯装置を備えているので、駆動周波数を共振周波数に略一致させることができるので、調光点灯時における無電極放電灯4の立ち消えを抑制し、調光下限の拡大が可能となり、広範囲にわたって調光制御が可能となる。
【0044】
(実施形態2)
本発明の実施形態2の放電灯点灯装置の回路構成を図7(a)に示す。本実施形態の放電灯点灯装置は、直流電圧Vdcを出力する直流電源Eと、高周波電源回路2と、共振回路3と、無電極放電灯4と、周波数制御部6とで構成されている。実施形態1と異なる点は、交流電圧を直流電圧に変換して出力する直流電源回路1ではなく、直流電圧Vdcを出力する直流電源Eを備えている点と、誘導コイルLcに出力する出力電圧Voutを検出するのではなく、誘導コイルLcに流れる出力電流を検出する点である。出力電流を検出する手段として、誘導コイルLcの後段に抵抗R3が備えられている。そして、マイコン7内のプログラム等で動作する周波数制御部6は、抵抗R3の両端電圧から出力電流を検出している。なお、他の構成は、実施形態1と同様の構成であるので、説明は省略する。また、本実施形態でも、調光信号S1に基づいてマイコン7が直流電源Eが出力する直流電圧Vdcを変動させて調光制御するが、実施形態1と略同様の構成であるので、説明は省略する。
【0045】
本実施形態の共振回路3も、実施形態1と同様にインダクタLsと、コンデンサCs、Cpと、誘導コイルLcとで2つの共振周波数を備えた二重共振回路を構成している。図8に、共振周波数を2つ備えた共振回路3における、高周波側の共振周波数f0近傍を動作点とした時の駆動周波数に対する高周波電力の出力特性(グラフG1)および、出力電流の出力特性(グラフG4)である。本実施形態の共振回路3は、インダクタLs、コンデンサCp、Cs、誘導コイルLcとで2重共振回路を構成しており、駆動周波数が高周波側の共振周波数f0と一致したときに高周波電力が極大、出力電流が極小となるように構成されている。したがって、実施形態1で説明した出力電圧Voutが極小となるなるように駆動周波数を制御する方法と同様に、抵抗R3の両端電圧から出力電流を検出し、出力電流が極小となるように駆動周波数を変動させ、駆動周波数と共振周波数f0とを略一致させる。それによって、実施形態1と同様に、調光点灯時における無電極放電灯4の立ち消えを抑制し、調光下限の拡大が可能となり、広範囲にわたって調光制御が可能となる。
【0046】
また、誘導コイルLcに流れる出力電流を検出する別構成として、図7(b)に示すように、高周波電源回路2のスイッチング素子Q2の後段に抵抗R4を設けてもよい。抵抗R4の両端電圧を検出することによって、誘導コイルLcに流れる出力電流を検出することができる。
【0047】
また、無電極放電灯4の調光時に、直流電源Eが出力する直流電圧Vdcをマイコン7が検出し、直流電圧Vdcをフィードバック制御してもよい。マイコン7が、直流電圧Vdcを検出してフィードバック制御することによって、調光信号S1に示される調光比に応じた調光制御の精度より向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 直流電源回路
2 高周波電源回路
3 共振回路
4 放電灯
5 調光制御回路
6 周波数制御部
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する直流電源回路と、
直流電源回路が出力する直流電圧から、高周波電力を生成して出力する高周波電源回路と、
高周波電源回路と放電灯との間に配置され、放電灯に高周波電力を供給する共振回路と、
放電灯を調光制御する調光制御回路と、
放電灯の全点灯時および調光点灯時において、放電灯に供給される前記高周波電力が極大となるように、前記共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを用いて、前記高周波電源回路の駆動周波数を変化させる周波数制御回路とを備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記共振回路は、放電灯に供給される前記高周波電力が極大である時に、前記共振回路の放電灯への出力電圧または出力電流は極小となる構成であり、前記周波数制御回路は、共振回路の出力電圧と出力電流とのいずれか一方のみを検出し、当該検出した出力電圧または出力電流が極小となるように、前記高周波電源回路の駆動周波数を変化させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記共振回路は、2つ以上の共振周波数を備えることを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記調光制御回路は、前記直流電源回路が出力する直流電圧を変化させることによって、前記放電灯を調光制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記放電灯は無電極放電灯で構成されており、当該無電極放電灯に誘導電磁界を供給する誘導コイルを用いて、前記共振回路を構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって点灯する放電灯とを備えることを特徴とする照明器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−113762(P2011−113762A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268075(P2009−268075)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】