説明

放電灯点灯装置及び照明器具

【課題】定格電力、定格電圧或いは定格電流の異なる放電灯を高周波電力により点灯・調光させる放電灯点灯装置において、装着される放電灯の予熱電流をほぼ等しくし、ランプ寿命を確保しつつ、電力ロスを低減し、安定調光を実現させる。
【解決手段】直流電圧Vdcを高周波に変換する少なくとも1つ以上のスイッチング素子Q1,Q2を備え、その出力端に共振回路(L1,Cf0)を介して、定格電力、定格電圧、或いは定格電流の異なる放電灯Laを接続可能な負荷回路4が接続されたインバータ3と、インバータ3の出力を変化させる調光制御部を具備した放電灯点灯装置において、放電灯Laのフィラメントを予熱する予熱電流供給源は、インバータ3の動作周波数が低いと予熱電流供給量が減少する第1の供給源(L2)と、放電灯電圧が高いと予熱電流供給量が増加する第2の供給源(Cf0)から少なくとも構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定格電力、定格電圧或いは定格電流の異なる放電灯を高周波電力により点灯・調光させる放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定格電力の異なる放電灯を点灯・調光する場合、フィラメント電流をほぼ等しくすることは困難となる。しかし、定格電力の異なる放電灯であっても、ランプの定格寿命を満足し、バルブの黒化を抑制するためには、何れの放電灯でも、フィラメント電流をほぼ一定としたほうが良い場合がある。特に、同じフィラメントを用いている定格電力が異なる放電灯の場合は、調光時のランプ寿命や安定調光のための最適な常時予熱電流が、ほぼ同じ値となる。FHT42、FHT32、FHT24などの放電灯がその一例である。
【0003】
(コンデンサ予熱方式)
従来より広く用いられている予熱回路方式に、コンデンサ予熱方式がある。図11(a)に基本構成を示す。ランプLaの各フィラメントの非電源側端子間に接続された予熱用コンデンサCfに流れる共振電流によりランプLaの各フィラメントを予熱するものである。予熱用コンデンサCfは共振用のコンデンサと兼用されるから、部品実装面積が小さくて済み、また、低コストであるという利点を有するが、この回路構成では、ランプ電圧により予熱電流が変化するため、ランプ電圧が異なる放電灯を点灯させたときに、予熱電流を等しくすることはできない。
【0004】
(予熱トランス方式)
図11(b)に予熱トランス方式の回路図を示す。インバータの出力にコンデンサを介して予熱トランスT1の1次側を接続し、その2次側から予熱用コンデンサを介してランプLaの各フィラメントに予熱電流を供給するものである。この回路方式では、ランプ電圧による予熱電流の変化は少ないが、動作周波数による予熱電流の変化が大きくなる。定格電力の異なる、定格電流の略等しいランプA,Bを点灯させる場合、全点灯のみであれば、各ランプA,B装着時の動作周波数fa,fbを共振回路の無負荷共振周波数f0の近傍に設定することで、略同じ予熱電流を供給できるが、インバータの動作周波数を可変とする調光時においては定格電力の異なるランプA,Bでは予熱電流が異なる。その理由を以下に述べる。
【0005】
定格電力の異なる放電灯を調光する方式として、ランプ電流フィードバック方式がある。これは、図11(b)に示すように、ランプ電流検出回路5によりランプ電流を検出し、調光信号から生成される指令値V*とランプ電流検出信号を比較し、その誤差を誤差増幅器OP1で比較して、増幅された信号により、インバータの動作周波数を可変とすることで、所望のランプ電流を得るものである。
【0006】
しかし、定格電力の異なる、定格電流の略等しいランプA,Bを調光点灯させる場合、図12に示すように同じランプ電流に対して、インバータの動作周波数fa,fbが異なるため、フィラメントに供給される予熱電流の量が異なる。これは、予熱トランスT1から予熱用コンデンサを介してフィラメントに電流を供給するため、インピーダンスに周波数特性を持つためである。
【0007】
また、動作周波数を変化させずに調光する方式として、インバータの電源電圧Vdcを変化させるVdc調光方式や、インバータのスイッチング素子Q1,Q2のオン・デューティをアンバランスにさせるDuty調光方式があるが、何れの方式を用いた場合も、図13に示すように、ランプ電流が低減される調光時においては予熱トランスT1の1次側の電圧が低下するため、調光時には定格出力時よりも予熱電流が低下することになる。
【0008】
調光時に予熱電流を低下させることは、ランプ寿命の悪化を招く。また、それを防ぐために定格出力時の予熱電流を過剰に多くすると、不必要な電力ロスを発生させるほか、定格出力時のランプ寿命を悪化させることになる。
【0009】
(チョッパチョークの2次巻線を用いた予熱方式)
図11(c)に示す予熱回路は、チョッパチョークL2の2次巻線から予熱電流を供給するものである。この予熱方式は、力率改善回路として一般的な昇圧チョッパ回路を用いたものである。ランプ負荷や入力電圧が変化しても、チョッパスイッチQ3の動作周波数やオン・デューティが変化することで、チョッパ出力電圧を略等しくするものである。ランプ負荷の違いや電源電圧の違いによりチョッパ回路の動作周波数やオン・デューティが異なるので、定格電力の異なる放電灯を点灯させる場合や、入力電圧が異なる場合は放電灯の予熱電流を等しくすることはできない。調光方式が、先に述べた周波数調光方式やVdc調光方式、Duty調光方式の場合でも同様である。
【0010】
(バラストチョークの2次巻線を用いた予熱方式)
図11(d)に示す予熱回路は、共振回路のバラストチョークL1の2次巻線から予熱電流を供給するものである。この予熱方式では、ランプ電流フィードバック方式を用いて調光制御すると、定格電力の異なる、定格電流の略等しいランプA,Bを調光点灯させる場合、図12に示すように同じランプ電流に対して、インバータの動作周波数fa,fbが異なるため、フィラメントに供給される予熱電流の量が異なる。バラストチョークL1から予熱用コンデンサを介して、フィラメントに電流を供給するため、そのインピーダンスに周波数特性を持つためである。また、動作周波数を変化させずに調光する方式として、上述のVdc調光方式やDuty調光方式を用いた場合も、バラストチョークL1の1次側の電圧が低下するため、調光時には定格出力時よりも予熱電流が低下することになる。
【0011】
調光時に予熱電流を低下させることは、ランプ寿命の悪化を招く。また、それを防ぐために定格出力時の予熱電流を過剰に多くすると、不必要な電力ロスを発生させるほか、定格出力時のランプ寿命を悪化させることになる
【0012】
(別予熱手段方式)
特開平2−144895号公報(特許文献1)には、「ランプに高周波電力を供給して点灯するインバータと、調光信号に応じて調光制御を行う調光制御手段と、上記調光信号に応じてランプのフィラメントの予熱を制御する予熱制御手段とを備えた放電灯点灯装置」が開示されている。この文献には、予熱回路用のインバータを放電灯点灯用のインバータとは別に設けた構成が開示されている。調光信号に応じて、予熱回路用のインバータが動作し、ランプ負荷や入力電圧によらずに所望の予熱電流を供給できるほか、定格点灯時には予熱をカットするなど、予熱電流の供給の設計が容易に行える。しかし、当然のことながら、コストが増大し、部品実装面積が大きくなる等の欠点があることは言うまでもない。
【特許文献1】特開平2−144895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、定格電力、定格電圧或いは定格電流の異なる放電灯を高周波電力により点灯・調光させる放電灯点灯装置において、装着される放電灯の予熱電流をほぼ等しくし、ランプ寿命を確保しつつ、電力ロスを低減し、安定調光を実現させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、図1に示すように、直流電圧Vdcを高周波に変換する少なくとも1つ以上のスイッチング素子Q1,Q2を備え、その出力端に共振回路(L1,Cf0)を介して、定格電力、定格電圧、或いは定格電流の異なる放電灯Laを接続可能な負荷回路4が接続されたインバータ3と、インバータ3の出力を変化させる調光制御部を具備した放電灯点灯装置において、放電灯Laのフィラメントを予熱する予熱電流供給源は、インバータ3の動作周波数が低いと予熱電流供給量が減少する第1の供給源(チョッパチョークL2)と、放電灯電圧が高いと予熱電流供給量が増加する第2の供給源(共振用コンデンサCf0)から少なくとも構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、予熱電流供給源が、インバータの動作周波数が低いと予熱電流供給量が減少する第1の供給源と、ランプ電圧が高いと予熱電流供給量が増加する第2の供給源から少なくとも構成されることで、定格電力の異なる放電灯の予熱電流を略等しくすることができ、ランプ寿命の確保とバルブ黒化の抑制、安定調光を実現することができる。また、それぞれの供給源からの予熱電流供給量を変化させることで、使用されるランプに適した予熱電流を供給することもできる。
請求項2の発明によれば、ランプ電流フィードバック方式による調光を行うことで、調光信号に対して使用されるランプのランプ電流を等しくすることができ、装着されるランプに応じて、同じランプ電流におけるインバータ周波数が異なるので、ランプ電流に対する予熱電流供給量を等しくすることが出来る。
請求項3の発明によれば、コストと部品実装面積を抑えて、請求項1、2を実現する回路を構成でき、入力電圧に影響されず、深く安定に調光することができる。
請求項4の発明によれば、請求項1〜3の回路を用いて、ランプ電流が0.1A以下のときの予熱電流を0.34A〜0.37Aとすることで、FHT42、FHT32、FHT24の定格ランプ寿命を確保し、安定に調光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1の回路図である。本実施形態は、コンデンサ予熱方式とチョッパチョークの2次巻線による予熱方式と、ランプ電流フィードバック回路とを組み合わせたものである。
【0017】
以下、その回路構成について説明する。本回路は、出力電圧一定の直流電源Eと、直流電源Eの出力端に接続されたインバータ3と、インバータ3の出力端に接続された共振回路とランプLaからなる負荷回路4と、ランプLaに流れるランプ電流を検出し、ランプ電流信号を出力するランプ電流検出回路5と、調光信号を出力する調光器8と、その出力を変換するDuty−DC変換回路9と、オペアンプOP1を含むランプ電流フィードバック手段7から構成されている。ランプLaは蛍光灯のような熱陰極型放電灯である。
【0018】
直流電源Eは昇圧チョッパ回路を用いている。昇圧チョッパ回路は図示するように、交流電源Vsと、ダイオードブリッジDB1と、インダクタL2と、ダイオードD1と、平滑コンデンサC3と、スイッチング素子Q3とからなっており、スイッチング素子Q3にはスイッチング素子Q3を駆動する制御回路2の出力端子が接続されている。本回路を用いると、直流電源Eの出力電圧Vdcの範囲は、Vs(peak)≦Vdcのある値で一定となる。ここで、Vs(peak)は交流電源Vsのピーク値を示している。100Vの交流電源であれば約141V、200Vの交流電源であれぱ約282Vがその値となる。チョッパ回路の動作により、チョッパ出力電圧Vdcを一定にしたり、可変させたりすることができる。
【0019】
インバータ3は直流電源Eの出力に並列に、スイッチング素子Q1,Q2の直列回路が接続され、スイッチング素子Q1とQ2の中点とバラストチョークL1の間には直流カット用コンデンサCdが接続されている。スイッチング素子Q1,Q2は制御回路1により高周波で交互にオン・オフするように駆動される。
【0020】
制御回路1はPWM−ICであり、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング周波数やオン・デューティを可変することができる。
【0021】
ランプ電流検出回路5は、ランプLaに流れる電流をカレントトランスCTで検出し、その2次巻線出力をダイオードブリッジDB2で整流し、抵抗R1により電圧信号であるランプ電流検出信号に変換して出力する。
【0022】
ランプ電流フィードバック手段7は、誤差増幅器としてのオぺアンプOP1とその帰還インピーダンス(コンデンサCl、抵抗Rp)からなる帰還制御回路6と、オペアンプOP1の入力抵抗R−,R+および調光信号により変化する指令値電圧V*から構成されている。
【0023】
オぺアンプOP1のマイナス側(反転入力端子)にはランプ電流検出信号が入力され、プラス側(非反転入力端子)には指令値電圧V*が入力されている。オぺアンプOP1のゲインは入力抵抗R−と、帰還インピーダンスの抵抗Rp、コンデンサClの比例積分ゲインで決され、コンデンサClと抵抗Rpはカットオフ周波数を決定しており、低周波のリップルを低減している。
【0024】
制御回路1は帰還制御回路6の出力信号である調光制御信号が増加すると動作周波数を低下させて、光出力(ランプ電流)を増加させるようにスイッチング素子Q1,Q2を制御する。調光制御信号が低下すると、動作周波数を増加させて、光出力(ランプ電流)を低下させるようにスイッチング素子Q1,Q2を制御する。
【0025】
調光器8は調光信号としてPWM信号を出力し、Duty−DC変換回路9において、PWM信号はDC信号に変換される。DC信号は指令値電圧V*としてオぺアンプOP1のプラス側に入力される。PWM信号はオン・デューティが減少していくに従い、ランプLaの定格出力から調光下限へ調光される。Duty−DC変換回路9はランプLaの定格出力から調光下限に向かうに従い、DC電圧である指令値電圧V*を低下させていく。
【0026】
チョッパ出力電圧Vdcはランプ負荷によらず、一定で動作する。予熱電流供給源は2種類で構成され、1つはインバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少し、もう一方はランプ電圧が高いと予熱電流量が増加するものである。
【0027】
本実施形態では、「インバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少する」予熱回路として、チョッパチョークL2の2次巻線による予熱方式、「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱回路として、コンデンサ予熱方式を採用している。
【0028】
以下、本実施形態の基本動作について説明する。図2(a)は本実施形態におけるランプV−I特性とバラストV−I特性である。ランプAとランプBは定格電力の異なる、定格電流の略等しい放電灯である。
【0029】
本実施形態では、チョッパ回路の動作周波数は、ランプAよりもランプBの方が高くなる。これは、定格電力がランプBの方が低いので、ランプAとランプB共にチョッパ出力電圧Vdcを一定とするため、ランプAよりも負荷の軽いランプBは出力電圧Vdcの昇圧を抑えるため、動作周波数が高くなるのである。
【0030】
よって、チョッパチョークL2の2次巻線からの供給電流は、ランプAよりもランプBの方が多くなる。ランプBの方がチョッパ回路の動作周波数が高く、チョッパチョークL2の2次側の予熱用コンデンサ(Cf1、Cf2)のインピーダンスが低下するため、予熱電流が多く流れるからである。
【0031】
一方、共振用コンデンサと予熱用コンデンサを兼用している、所謂コンデンサ予熱回路には、点灯時のランプ電圧が大きいランプAの方がランプBよりも多くの予熱電流が流れる。コンデンサ予熱回路方式では、ランプ電圧が予熱電流に影響を与えるからである。
【0032】
予熱用コンデンサCf0に流れる電流は、I=2πf・C(fは周波数、Cは予熱用コンデンサCf0の容量)で決定される。ランプAとランプBの定格出力時の動作周波数fa,fbは共振回路の無負荷共振周波数foの近傍である。従って、ランプ電圧のみが影響し、ランプ電圧の高いランプAの方が多くの電流が予熱用コンデンサCf0に流れる。調光下限時はランプ電流フィードバック動作により、ランプAの動作周波数よりもランプBの動作周波数の方が高くなる(fa≪fb)。従って、ランプAとランプBの調光下限付近のランプ電流に対する予熱電流の差は、ランプV−I特性の差よりも少なくなる。ランプAとランプBのランプ電圧はランプAの方が高いが、インバータ動作周波数はランプBの方が高いからである。
【0033】
図2(b)に本実施形態におけるランプ電流に対するコンデンサ予熱方式による予熱電流供給量を示す。また、図2(c)に本実施形態でのチョッパチョークL2の2次巻線からの予熱電流供給量を示す。
【0034】
本実施形態では、コンデンサ予熱方式による予熱電流供給量とチョッパチョークの2次巻線からの予熱電流供給量の合計が予熱電流全体となるので、ランプAとランプBは略同じ予熱電流量となる。
【0035】
(実施形態2)
図3に本発明の実施形態2の回路図を示す。本実施形態が先の実施形態と異なる点は、「インバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少する」予熱回路として、予熱トランス方式を採用し、「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱回路としてコンデンサ予熱方式を採用している点である。
【0036】
図4(a)は本実施形態でのランプV−I特性とバラストV−I特性である。ランプAとランプBは定格電力の異なる、定格電流の略等しい放電灯である。ランプ電流フィードバック動作により、定格出力時のインバータ動作周波数は、ランプAはfa=50kHzであり、ランプBはfb=55kHzである。また、調光下限時は、ランプAはfa=85kHzであり、ランプBはfb=110kHzである。これは、ランプV−I特性とバラストV−I特性の関係からランプAとランプBでは同じランプ電流では、定格電力の大きいランプAの方がランプBよりも動作周波数が低くなるためである。
【0037】
よって、予熱トランスT1からの供給電流は、ランプAよりもランプBの方が多くなる。ランプBの方が周波数が高く、予熱トランスT1の2次側の予熱用コンデンサ(Cf1,Cf2)のインピーダンスが低下するため、予熱電流が多く流れるからである。
【0038】
一方、共振用コンデンサと予熱用コンデンサを兼用している、所謂コンデンサ予熱回路のコンデンサCf0には、点灯時のランプ電圧が大きいランプAの方がランプBよりも多くの予熱電流が流れる。コンデンサ予熱回路方式では、ランプ電圧が予熱電流に影響を与えるからである。
【0039】
図4(b)に本実施形態でのランプ電流に対する、コンデンサ予熱回路からの予熱電流供給量を示す。また、図4(c)に本実施形態でのランプ電流に対する、予熱トランスからの予熱電流供給量を示す。
【0040】
図4(b)および図4(c)から明らかなように、本実施形態では、コンデンサ予熱回路からの予熱電流供給量と予熱トランスからの予熱電流供給量の合計が予熱電流全体となるので、ランプAとランプBは略同じ予熱電流量となる。
【0041】
また、実施形態1と異なり、チョッパチョークL2の2次巻線を用いないため、交流電源Vsの入力電圧が異なる場合にも対応できる。(実施形態1では交流電源Vsの入力電圧によりチョッパ動作周波数が異なるため対応できない。入力電圧により予熱電流が変化してしまう。)
【0042】
(実施形態3)
図5に本発明の実施形態3の回路図を示す。本実施形態がこれまでの実施形態と異なる点は「インバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少する」予熱回路として、チョッパチョークL2の2次巻線による予熱方式、「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱回路として、バラストチョークL1の2次巻線による予熱方式を採用している点である。
【0043】
本実施形態では、「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱方式として、コンデンサ予熱回路方式を用いずに、バラストチョークL1の2次巻線による予熱方式を採用している。バラストチョークL1の1次巻線はランプ電圧に応じて1次側の電圧が変化するので、ランプAの方がランプBよりもバラストチョークL1の1次巻線の電圧が高くなる。よって、コンデンサ予熱回路方式と同様の効果を得ることが出来る。
【0044】
また、共振回路を2重共振回路とすることで、定格出力付近だけでなく、調光下限時のインバータ動作周波数も共振回路の無負荷共振周波数をすることができ、これまでの実施形態よりも深く、安定に調光することができる。
【0045】
(実施形態4)
図6に本発明の実施形態4の回路図を示す。本実施形態がこれまでの実施形態と異なる点は、「インバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少する」予熱回路として、予熱トランス方式を採用し、「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱回路として、バラストチョークの2次巻線による予熱方式を採用している点である。また、バラストチョークL1の2次巻線とランプLaのフィラメントとの間にLC並列共振回路が接続されており、予熱トランスT1の2次巻線とフィラメントとの間にLC直列共振回路が接続されている点である。
【0046】
本実施形態では、これまでの実施形態とは異なり、コンデンサ予熱回路方式を用いずに「ランプ電圧が高いと予熱電流量が増加する」予熱方式として、バラストチョークL1の2次巻線による予熱方式を採用している。よって、実施形態3と同様に、2重共振回路により深く、安定に調光することが出来る。
【0047】
また、チョッパチョークL2の2次巻線を用いずに、「インバータ動作周波数が低いと予熱電流量が減少する」予熱回路として、予熱トランス方式を採用している。従って、定格電圧の異なる入力電圧に対応することが出来る。
【0048】
また、バラストチョークL1の2次巻線とランプLaのフィラメントとの間にはLC並列共振回路(Lf3,Cf3;Lf4,Cf4)が接続されており、その並列共振周波数はランプAの定格出力付近での動作周波数近傍(fa=50kHz)としている。従って、定格点灯時における予熱電流はランプA(fa=50kHz)の方が、ランプB(fb=55kHz)よりも並列共振周波数近傍で動作するので、低く抑えられる方向に働く。
【0049】
また、予熱トランスT1の2次巻線とランプLaのフィラメントとの間にLC直列共振回路(Lf1,Cf1;Lf2,Cf2)が接続されているが、その直列共振周波数はランプBの調光下限時の周波数近傍(fb=110kHz)に設定されている。従って、調光下限時における、予熱電流はランプB(fb=110kHz)の方が、ランプA(fa=85kHz)よりも直列共振周波数近傍で動作するので、出力が多くなる方向に働く。
【0050】
図7(a)は本実施形態でのランプV−I特性とバラストV−I特性である。これまでの実施形態におけるランプV−I特性と異なる点は、ランプAとランプBのランプ電圧の差が大きい点である。このような場合、これまでの実施形態だけでは、ランプAとランプBの予熱電流を等しくすることは困難である。
【0051】
図7(b)に本実施形態でのランプ電流に対する、バラストチョークL1の2次巻線からの予熱電流供給量を示す。バラストチョークL1の2次巻線とフィラメントの間に接続されたLC並列共振回路(Lf3,Cf3;Lf4,Cf4)により、ランプAの定格出力時のフィラメント電流は低く抑えられる方向に働く。
【0052】
図7(c)に本実施形態でのランプ電流に対する予熱トランスT1からの予熱電流供給量を示す。予熱トランスT1の2次巻線とフィラメントの間に接続されたLC直列共振回路(Lf1,Cf1;Lf2,Cf2)により、ランプBの調光下限時のフィラメント電流は多くなる方向に働く。
【0053】
図7(b)および図7(c)から明らかなように、本実施形態では、バラストチョークL1の2次巻線からの予熱電流供給量と予熱トランスT1からの予熱電流供給量の合計が予熱電流全体となるので、ランプAとランプBは略同じ予熱電流量となる。
【0054】
以上のように、2次巻線側とフィラメントとの間に直列共振回路や並列共振回路を接続することで、ランプ特性(ランプ電圧や点灯周波数)に対する設計範囲や設計余裕度を広くすることが出来る。
【0055】
この方式を、これまでの実施形態で述べた予熱電流供給源と組み合わせることで、より一層、設計可能な範囲が広がることは言うまでもない。
【0056】
更に、2次巻線側とフィラメントとの間に直列共振回路や並列共振回路を接続することで、ランプ電流に対する予熱電流量を調整することができるので、これまでの実施形態のように定格電力の異なるランプの予熱電流を等しくするだけでなく、それぞれのランプにあった最適な予熱電流量に合わせ込むこともできる。
【0057】
放電灯点灯装置に装着されるランプによっては、必ずしもランプ電流に対する予熱電流を等しくする必要はなく、個々のランプに最適な予熱電流に設定すればよいのである。個々のランプに最適な予熱電流量は、例えば、ランプ寿命満足、黒化抑制、安定調光等の観点から決定される。
【0058】
(実施形態5)
図8に本発明の実施形態5の回路図を示す。また、図9に本実施形態で点灯されるランプのV−I特性を示す。本実施形態では、定格電力、定格電流の異なる放電灯が接続される場合について説明する。ランプAとランプBは定格ランプ電力の異なる、定格ランプ電圧の略等しいランプである。図9の点Aと点BはランプAとランプBの定格ランプ電力動作ポイントである。
【0059】
本実施形態の特徴的な点は、調光制御信号固定回路10を具備し、ランプ電圧が一定値以下になると、調光制御信号が増加しないため、インバータ出力が増加しない点である。調光制御信号固定回路10は、ランプ電圧を検出するコンパレータCP1と、コンパレータCP1の出力がべースに接続されているトランジスタTr1と、トランジスタTr1と制御回路1の間に接続されている、ツェナーダイオードZD1から構成されている。
【0060】
コンパレータCP1はランプ電圧が一定値以下となると、High信号を出力する。本実施形態では、コンパレータCP1の+端子の基準電圧はランプAとランプBの定格ランプ電圧時の抵抗R4の電圧に相当している。コンパレータCP1がHigh信号を出力すると、トランジスタTr1がオンし、調光制御信号はツェナーダイオードZD1のツェナー電圧以上は増加しなくなる。よって、定格電流が異なるランプである、ランプAとランプBを点灯させる場合においても、定格出力電力以下で使用することができる。
【0061】
(実施形態6)
本実施形態では、定格電力が異なる定格電流の略等しい放電灯として、FHT42、FHT32、FHT24をランプ負荷としている。
【0062】
図10は実施形態1〜4を用いて、FHT42、FHT32、FHT24を調光した場合のランプ電流に対するフィラメント予熱電流の関係である。Ila=100mA以下の予熱電流をIf=340mA〜370mAとし、リード線電流をフィラメント電流以下とすることで、各ワットのランプとも予熱電流不足によるネオン発光の発生や過剰な予熱電流による赤熱(電極の異常温度上昇)を回避することができ、ランプ定格寿命を満足し、安定調光のための十分な予熱電流を供給することができる。
【0063】
本発明者は上記ランプ電流、予熱電流でのランプ寿命試験と電極温度確認を実施し、定格寿命10,000時間を満足することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態1の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1の動作説明のための特性図である。
【図3】本発明の実施形態2の回路図である。
【図4】本発明の実施形態2の動作説明のための特性図である。
【図5】本発明の実施形態3の回路図である。
【図6】本発明の実施形態4の回路図である。
【図7】本発明の実施形態4の動作説明のための特性図である。
【図8】本発明の実施形態5の回路図である。
【図9】本発明の実施形態5の動作説明のための特性図である。
【図10】本発明の実施形態6の動作説明のための特性図である。
【図11】従来の予熱回路方式を示す回路図である。
【図12】従来例の動作を説明するための特性図である。
【図13】従来の予熱トランス方式の動作説明図である。
【符号の説明】
【0065】
E 直流電源回路(チョッパ回路)
1 制御回路(インバータ制御回路)
2 制御回路(チョッパ制御回路)
3 インバータ
4 負荷回路
5 ランプ電流検出回路
6 帰還制御回路
7 ランプ電流フィードバック手段
8 調光器
La ランプ(熱陰極型放電灯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を高周波に変換する少なくとも1つ以上のスイッチング素子を備え、その出力端に共振回路を介して、定格電力、定格電圧、或いは定格電流の異なる放電灯を接続可能な負荷回路が接続されたインバータと、インバータの出力を変化させる調光制御部を具備した放電灯点灯装置において、放電灯のフィラメントを予熱する予熱電流供給源は、インバータの動作周波数が低いと予熱電流供給量が減少する第1の供給源と、放電灯電圧が高いと予熱電流供給量が増加する第2の供給源から少なくとも構成されることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
放電灯のランプ電流を検出する電流検出回路と、前記電流検出回路の検出信号を受けて所望のランプ電流となるように出力制御可能な帰還制御回路を備えるランプ電流フィードバック手段を具備し、前記帰還制御回路は、調光信号に応じて変化する指令値信号と前記電流検出回路の検出信号との誤差を増幅し、その増幅された信号を前記調光制御部に出力する誤差増幅回路を備えることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
予熱電流供給源を構成する予熱回路は、インバータの高周波電力を予熱用トランスと予熱用トランスの2次側に接続された予熱用コンデンサ又は予熱用インダクタを介して、放電灯フィラメントへ予熱電流を供給する回路と、共振回路の共振用インダクタの2次巻線と共振用インダクタの2次側に接続された予熱用コンデンサ又は予熱用インダクタを介して、放電灯のフィラメントへ予熱電流を供給する回路とから構成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
定格電力の異なる放電灯は、定格出力42Wの高周波点灯専用形コンパクト型ランプ、或いは定格出力32Wの高周波点灯専用形コンパクト型ランプ、或いは定格出力24Wの高周波点灯専用形コンパクト型ランプであり、放電灯に流れるランプ電流が0.1A以下の場合のフィラメント予熱電流が0.34A〜0.37Aの範囲であり、且つ、リード線電流はフィラメント電流以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯装置と、この放電灯点灯装置により点灯動作が制御される放電灯とを含むことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−305500(P2007−305500A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134638(P2006−134638)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】