説明

断熱性能に優れた押出発泡体

【課題】 発泡剤としてフロン類を使用することなく、顕著な断熱性能の改善効果を有する断熱材用押出発泡体を提供することを課題とする。
【解決手段】 該押出発泡体が、厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有する押出発泡体であって、密度が20〜65kg/mであり、厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことを特徴とする押出発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用、保冷庫用、保冷車用などの断熱材として好適に使用される押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂からなる発泡体は建築用の断熱材などとして幅広く用いられている。炭酸ガス排出量削減の観点から、住宅、建築物などの省エネルギー化の要求が高まっており、断熱材のさらなる需要が見込まれている。
【0003】
このような断熱材の中では、これまでフロン類を発泡剤として用いた硬質ポリウレタンフォームが高い断熱性能がある発泡体として広く用いられてきた。しかしながら、地球環境保護の点から、硬質ポリウレタンフォームだけではなく種々の発泡体において、発泡剤としてフロン類を用いない発泡体の開発が進められるようになった。
【0004】
フロン類を用いず、さらに、断熱性に優れ、その経時変化も少ない発泡体として熱硬化性樹脂のフェノール樹脂を用いた発泡体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂からなる発泡体の中では最も優れた断熱性を有する発泡体であるといえる。しかしながら、省エネルギーに加えさらに省資源化の観点から鑑みれば、樹脂として再利用する、いわゆる「リサイクル」性の点からその使用が制限されており、広く普及しているとはいえないのが現状である。
【0005】
このようなことから、リサイクル可能な熱可塑性樹脂を用いたフロン類を用いない発泡体であって、従来以上に高断熱性の発泡体の技術開発が望まれている。
【0006】
熱可塑性樹脂を用いた発泡体の断熱性を向上させる技術としては種々の技術が提案されている。
例えば、発泡体の厚み方向の気泡径に対する押出方向(あるいは水平方向)の気泡径の比を制御する方法など、気泡形状、さらには気泡径を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。特許文献2または3では、フロン類を用いない発泡体に関する技術も開示されている。特許文献4では表層部分の気泡および発泡体中心部分での気泡の形状、気泡径を制御することによりさらに断熱性が向上することが開示されている。
また、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタンなどの添加剤を添加する方法も提案されている(例えば、特許文献5〜7参照)。特に特許文献6または7ではフロン類を用いない発泡体に関する技術も開示されており、グラファイトや酸化チタンを添加することにより断熱性が向上することが開示されている。
【0007】
このように、熱可塑性樹脂を用いた発泡体の断熱性を向上させる技術が種々開示されているが、フロン類を用いない技術においては、フロン類からの発泡剤の転換によって生じる断熱性の低下を補うことを目的とした技術が多い。
【0008】
さらなる断熱性向上の可能性がある技術として、共押出法により発泡層と非発泡層が交互に積層されてなる同時押出発泡複合体が挙げられる。例えば、同時押出発泡複合体であって、カーボンブラックなどの添加剤を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献8または9参照)。しかしながら、いずれもフロン類を用いた発泡体での効果しか例示されていない。また、同時押出発泡複合体であって、厚み方向の気泡径に対する押出方向の気泡径の比を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献10)。しかしながら、特許文献10の技術は強度改善を目的としており、発泡体の断熱性向上については全く示唆されていない。
【0009】
このように、同時押出発泡複合体において、フロン類を用いず、高断熱性の発泡体、さらにはフェノール樹脂を用いた発泡体やフロン類を用いた硬質ポリウレタンフォームのような高断熱性の発泡体を得ることを目的とした技術は、未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2000/001761号公報
【特許文献2】特表2005−528494号公報
【特許文献3】特開2004−59595号公報
【特許文献4】特開2008−13659号公報
【特許文献5】特表平4−502173号公報
【特許文献6】特開2004−196907号公報
【特許文献7】特開2002−194129号公報
【特許文献8】特表平6−510247号公報
【特許文献9】特開平5−57779号公報
【特許文献10】WO2008/008875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するものであり、熱可塑性樹脂からなる発泡体であって、発泡剤としてフロン類を使用することなく、顕著な断熱性能の改善効果を有する発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記の事項等を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)発泡体構造として発泡層と非発泡層との交互積層構造とし、特定の密度範囲において、押出発泡体を構成する発泡層の気泡において、厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡が、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)を制御することにより押出発泡体の断熱性がより向上すること。
(2)さらに、これを共押出法を用いて製造することにより、製造直後に発生する発泡層セル内への空気の侵入を非発泡層が抑止すること。
【0013】
すなわち、本発明は、
[1] 厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有する押出発泡体であって、
密度が20〜65kg/mであり、かつ、
厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことを特徴とする、押出発泡体、
[2] 厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有する押出発泡体であって、密度が20〜65kg/mであり、
前記発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満の気泡径を有する小気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する大気泡よりなる気泡構造を有し、小気泡の平均気泡径が0.25mm以下であり、かつ、厚み方向中央部に位置する前記発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことを特徴とする、押出発泡体、
[3] 前記発泡層の厚み方向の平均気泡径(A)が0.03〜0.40mmであることを特徴とする、[1]または[2]に記載の押出発泡体、
[4] 前記押出発泡体の密度が20〜40kg/mであることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の押出発泡体、
[5] 前記厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡が、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.0を満たすことを特徴とする、請求項[1]〜[4]のいずれか1項に記載の押出発泡体、
[6] 前記押出発泡体の厚み方向中央部分に位置する前記発泡層の断面に占める気泡径0.25mm以下の小気泡の総面積の割合が5〜95%であることを特徴とする、[2]〜[5]のいずれかに記載の押出発泡体、
[7] 前記押出発泡体が、厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる前記構造を複数個有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の押出発泡体、
[8] 前記発泡層を構成する樹脂が、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体および変性ポリフェニレンエーテル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の押出発泡体、
[9] 前記発泡層を構成する気泡内に、プロパン、n−ブタン、i−ブタンおよびシクロペンタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素が含有されることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の押出発泡体、
[10] 厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有し、密度が20〜65kg/mであり、かつ、
厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たす押出発泡体の製造方法であって、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を高圧下で厚み方向に合流させた後、大気圧下に開放する共押出法により得ることを特徴とする、押出発泡体の製造方法、および
[11] 厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有し、密度が20〜65kg/mであり、
前記発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満の気泡径を有する小気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する大気泡よりなる気泡構造を有し、小気泡の平均気泡径が0.25mm以下であり、かつ、厚み方向中央部に位置する前記発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たす押出発泡体の製造方法であって、前記押出発泡体が、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を高圧下で厚み方向に合流させた後、大気圧下に開放する共押出法により得ることを特徴とする、押出発泡体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の押出発泡体による効果は、以下のとおりである。
・発泡体構造として発泡層が非発泡層を介して積層されてなる積層構造を有し、特定の密度範囲における、押出発泡体を構成する発泡層の、厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)を制御することにより、発泡体の断熱性がより向上する。
・発泡層と非発泡層との積層構造を有する発泡体とし、かつ、気泡構造を制御することにより、従来の技術である発泡体であって気泡構造を制御するのみの場合に比べ、断熱性がさらに向上し、これは、従来の発泡複合体に関する先行技術からは全く示唆されない効果が発現されている。
・発泡層と非発泡層との発泡層が非発泡層を介して積層されてなる積層構造を有する押出発泡体を共押出法を用いて製造することにより、製造直後に発生する発泡層セル内への空気の侵入を非発泡層が抑止することができ、特に厚み方向に発泡層の両面が非発泡層によって被覆された構造をとることにより、外気からの発泡層セル内への空気の浸入が抑制され、得られる発泡体の断熱性能をさらに改善することができる。
上記押出発泡体による効果は、発泡体の断熱性改善を目的とする他の従来技術との組み合わせが可能であるため、従来にない優れた断熱性能を有する発泡体の提供を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る押出発泡成形体の積層構造に関する、押出断面でのSEM写真の一例である。
【図2】図2は、本発明に係る発泡層中の気泡構成を示すSEM写真である。(a)ほぼ均一な気泡径を有する気泡のみから構成される発泡層。(b)小気泡と大気泡より構成される発泡層。
【図3】図3は、小気泡と大気泡より構成される発泡層における、厚み方向および押出方向の気泡径の測定方法を説明するための操作手順を示す、SEM写真である。
【図4】図4は、本発明に係る押出発泡成形体の厚みの測定位置を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明に係る押出発泡成形体の幅の測定位置を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の押出発泡体では、厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有し、密度が20〜65kg/mであり、かつ、押出発泡体厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことにより、従来の押出発泡体よりも高断熱性の発泡体とすることができる。
【0017】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層とは、複数の気泡が気泡壁(wall)および気泡壁結合部(struts)によって結合された気泡構造を有する層をいう。その形状としては、特に限定されず、フィルム形状、シート形状、ボード形状が挙げられ、これらの中でも、断熱性能を発現しやすいこと、押出発泡体に軽量性を付与できることより、シート形状、ボード形状が好ましい。当該発泡層の密度は、目的とする押出発泡体の密度にもよるが、500kg/m以下が好ましい。
【0018】
本発明の押出発泡成形体を構成する非発泡層とは、発泡層を構成する気泡の気泡壁あるいは気泡壁結合部のうち厚みの大きな部分よりも1.1倍以上の厚みを有する層であって、非発泡層の周囲を構成する発泡層よりも密度の高い層をいう。非発泡層の密度は用いる樹脂、添加剤などの密度にもよるが、500kg/m超であることが好ましい。非発泡層には発泡層より少ない数の気泡が含まれていてもよい。
【0019】
本発明の押出発泡体の密度は、軽量でかつ高断熱性の発泡体が得られることから、20〜65kg/mが好ましく、軽量性と断熱性の両立という観点から20〜50kg/mがより好ましく、20〜40kg/mがさらに好ましい。
【0020】
本発明の押出発泡体では、厚み方向中央部に位置する発泡層において、それを構成する気泡の、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことにより、高断熱性を実現できる。これは、A/Bの比を1.5以下にすることにより、1.5を超える発泡層に比べ、単位厚みあたりの厚み方向における気泡数を増加させることができるなどの効果によるものと推測される。A/Bの比を0.3以上とすることにより、得られた押出発泡体の圧縮強度を従来の発泡体と同等レベル程度に維持することができる厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)は、押出発泡体の圧縮強度と断熱性の両立という観点から0.3〜1.0を満たすことがより好ましい。
【0021】
以下に、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)、および、その比(A/B)の算出方法について述べる。
同様な気泡径を有する気泡のみから構成される発泡層の場合では、以下の方法で求められる。なお、前記厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)はこの場合、厚み方向の平均気泡径(A1)と押出方向の平均気泡径(B1)に相当する。
(1)中央部に位置する発泡層の断面写真を顕微鏡、例えば、マイクロハイスコープ、走査型電子顕微鏡などを用いて倍率20〜200倍にて撮影する。このとき、厚み方向を縦方向、押出方向を横方向にて撮影する。また、倍率は気泡径により適宜選択される。
(2)縦方向に任意に2000μmの直線を3本引き、その直線に接する気泡の個数(X1)を測定する。
(3)次の式により厚み方向の平均気泡径(A1)を求める。
A1[単位:μm]=2000×3÷気泡の個数(X1)
(4)押出方向に任意に2000μmの直線を引き、その直線に接する気泡の個数(Y1)を測定する。
(5)次の式により押出方向の平均気泡径(B1)を求める。
B1[単位:μm]=2000×3÷気泡の個数(Y1)
(6)厚み方向の平均気泡径(A1)と押出方向の平均気泡径(B1)の比(A1/B1)は次の式により求める。
A1/B1=厚み方向の平均気泡径(A1)÷押出方向の平均気泡径(B1)
(7)なお、平均気泡径(D1)は、次の式により求める。
D1[単位:μm]={厚み方向の平均気泡径(A1)+押出方向の平均気泡径(B1)}÷2
【0022】
一方、平均気泡径D2の1.2倍未満の気泡径を有する気泡(以下、小気泡)と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する気泡(以下、大気泡)より構成される気泡構造から構成される発泡層の場合では、以下の方法で求められる。
なお、前記厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)は、この場合、厚み方向の平均気泡径(A5)と押出方向の平均気泡径(B5)に相当する。
(8)中央部に位置する発泡層の断面写真を顕微鏡、例えばマイクロハイスコープ、走査型電子顕微鏡などを用いて倍率20〜200倍にて撮影する[図3(a)参照]。このとき、厚み方向を縦方向、押出方向を横方向にて撮影する。また、倍率は気泡径により適宜選択される。
(9)断面写真の縦方向に任意に2000μmの直線を3本引き、その直線に接する気泡の個数(X2)を測定する。次の式により、気泡の厚み方向の平均気泡径(A2)を求める。
A2[単位:μm]=2000×3÷気泡の個数(X2)
図3(b−2)に示すように、断面写真の押出方向に任意に2000μmの直線を3本引き、その直線に接する気泡の個数(Y2)を測定する。次の式により、気泡の押出方向の平均気泡径(B2)を求める。
B2[単位:μm]=2000×3÷気泡の個数(Y2)
次の式により平均気泡径(D2)を求める。
D2[単位:μm]=(A2+B2)÷2
(10)図3(c)の矢印で示すように、画像内にあるD2の1.2倍以上の気泡径[=(厚み方向の径+押出方向の径)÷2](ただし、気泡の全周が判別できる気泡のみ)を有する全ての気泡を大気泡とし、その個数(X3)、個々の気泡の厚み方向の気泡径、および、個々の気泡の押出方向の気泡径を測定する。なお、気泡径は、各気泡の厚み方向および押出方向での最大長とした。
次の式により、大気泡の厚み方向の平均気泡径(A3)と大気泡の押出方向の平均気泡径(B3)を求める。
A3[単位:μm]=個々の大気泡の厚み方向の気泡径の総和÷大気泡の気泡の個数(X3)
B3[単位:μm]=個々の大気泡の押出方向の気泡径の総和÷大気泡の気泡の個数(X3)
次の式により、平均大気泡径(D3)を求める。
D3[単位:μm]=(A3+B3)÷2
(11)上記(9)で気泡径を測定しなかった気泡を、小気泡とする。
上記(9)で測定した全ての大気泡を包含する長方形領域[図3(d)参照]の、厚み方向および押出方向の寸法を測定し、その領域の面積(S)を求める。
次の式により、小気泡の総面積割合(S)は次式により求める。
S[単位:%]=[S−{π×(D3÷2)}×X3]÷S×100
(12)図3(e−1)に示すように、上記(10)での長方形領域内の、小気泡が縦方向に500μm以上連続して存在する領域において、縦方向に任意に500μmの直線を3本引き、その直線に接する気泡の個数(X4)を測定する。
次の式により、小気泡の厚み方向の平均気泡径(A4)を求める。
A4[単位:μm]=500×3÷気泡の個数(X4)
図3(e−2)に示すように、小気泡が横方向に500μm以上連続して存在する領域において、横方向に任意に500μmの直線を3本引き、その直線に接する気泡の個数(Y4)を測定する。
次の式により、小気泡の押出方向の平均気泡径(B4)を求める。
B4[単位:μm]=500×3÷気泡の個数(Y4)
次の式により、平均小気泡径(D4)を求める。
D4[単位:μm]=(A4+B4)÷2
(13)上記(9)の長方形領域S内における小気泡の個数(Z1)を、次の式により、近似的に求める。
Z1[単位:個]=S×(S/100)÷{π×(D4÷2)
(14)厚み方向の平均気泡径(A5)を、次の式により、近似的に求める。
A5[単位:μm]=(A3×X3+A4×Z1)÷(X3+Z1)
次の式により、押出方向の平均気泡径(B5)を、近似的に求める。
B5[単位:μm]=(B3×X3+B4×Z1)÷(X3+Z1)
(15)厚み方向の平均気泡径(A5)と押出方向の平均気泡径(B5)の比(A5/B5)は、次の式により求める。
A5/B5=厚み方向の平均気泡径(A5)÷押出方向の平均気泡径(B5)
(16)平均気泡径(D5)は、次の式により求める。
D5[単位:μm]=[{厚み方向の平均気泡径(A5)+押出方向の平均気泡径(B5)}÷2]
【0023】
本発明の押出発泡体の発泡層を構成する樹脂(以降、「発泡層構成樹脂」と称する場合がある)は、押出発泡成形が可能な熱可塑性樹脂から任意に選択される。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、シクロオレフィン系(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂およびこれらに分岐構造、架橋構造を導入しレオロジーコントロールされた樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック;ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
本発明の押出発泡体の発泡層を構成する樹脂としてスチレン系樹脂を用いる場合には、特に限定されず、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0025】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;などがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0026】
これらの中でも、押出発泡成形が容易で軽量かつ、断熱性に優れた押出発泡体が得られることから、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸変性ポリスチレン、スチレン−不飽和ジカルボン酸無水物−N−アルキル置換マレイミド系共重合体、耐衝撃性ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂の混合樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。最も好ましくは、ポリスチレンホモポリマーである。
【0027】
本発明の押出発泡体の発泡層は、溶融した発泡層構成樹脂に高圧下で発泡剤を圧入し、溶融混練した後、大気開放することにより得られるが、圧入する発泡剤としては、特に限定されず、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、などの炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類;窒素、空気、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、さらには、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤等が挙げられる。また、オゾン破壊係数がゼロで、かつ、地球温暖化係数の低いフッ素化された炭化水素も使用しうる。これら発泡剤は単独または2種以上混合して使用することができる。
【0028】
前記発泡剤の中でも、押出発泡成形性と高断熱性を両立できるという点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素が好ましく、気体自体の特性として熱伝導率が低く、押出発泡体を構成する熱可塑性樹脂に対する透過性も低いため、高断熱性の押出発泡体が得られると共にその性能も長く維持されるという点から、n−ブタン、i−ブタン、シクロペンタンが特に好ましい。また、低密度の押出発泡体が得られるという点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類が好ましい。さらに、不燃性であり環境適合性に優れるという点から、窒素、空気、水、二酸化炭素などの無機発泡剤が好ましい。
軽量でかつ高断熱性の押出発泡成形体を得るという点からは、n−ブタン、i−ブタン、シクロペンタンから選ばれる1種以上の炭化水素と、二酸化炭素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類、水、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類よりなる群から選ばれる1種以上の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
溶融した発泡層構成樹脂中に圧入される発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選定されるが、軽量でかつ高断熱性の押出発泡体を得るという点からは、発泡剤の合計量を、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部とすることが好ましく、3〜8重量部とすることがより好ましい。
【0030】
発泡剤を圧入する際の圧力としては、特に限定されず、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0031】
高断熱性の押出発泡体が得られるという点からは、得られた押出発泡体100重量部に対して、n−ブタン、i−ブタン、シクロペンタンなどの炭化水素を0.5〜5重量部含有することが好ましい。
【0032】
本発明の押出発泡体を構成する熱可塑性樹脂からなる発泡層における平均気泡径は、0.03〜1mmが好ましく、さらに好ましくは0.03〜0.4mm、特に好ましくは0.03〜0.3mmである。
【0033】
また、発泡剤として、水、アルコール水溶液、無機塩類の水溶液よりなる群から少なくとも1種を併用する場合、発泡体中に、平均気泡径D2の1.2倍未満であり、0.25mm以下の気泡径を有する気泡(小気泡)と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する気泡(大気泡)が海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する発泡層が得られ、この気泡構造は、得られる押出発泡体の断熱性能向上に寄与するため、発泡剤として水、および/または、水溶液を併用することが好ましい。
【0034】
さらに、気泡径0.25mm以下の小気泡および大気泡が混在してなる特定の気泡構造の発泡層においては、厚み方向中央部分に位置する前記発泡層の断面に占める小気泡の面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)(以下、小気泡面積率という)は、5〜98%が好ましく、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは20〜80%、最も好ましくは25〜70%である。小気泡面積率が5〜98%の範囲では、低密度かつ断熱性能に優れた押出発泡体を得ることができる。
【0035】
発泡剤として、水および/または水溶液を用いる場合、小気泡および大気泡の生成しやすさや加工性の面から、発泡剤全量に対する水の含有率は、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは2〜70重量%、特に好ましくは3〜60重量%である。
【0036】
発泡剤として、水および/または水溶液を用いる場合は、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性または水膨潤性の層状珪酸塩類またはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなど(本明細書においては、これらの物質を「吸水性物質」と総称する)の1種または2種以上を添加することにより、発泡層中に、前記小気泡および大気泡の発生する作用をさらに向上することができ、得られる発泡体の成形性、生産性および断熱性能をさらに向上させることができる。
【0037】
ここで、使用する吸水性物質は、熱可塑性樹脂に対して相溶性のない水を吸水してゲルを形成し、ゲルの状態で熱可塑性樹脂中に均一に分散させることができると考えられることから、使用される。
【0038】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層を製造する際に用いられる吸水性物質の添加量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、一般に、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部が好ましく、0.3〜8重量部がさらに好ましく、0.5〜7重量部が特に好ましい。吸水性物質の添加量が0.2〜10重量部の場合、押出機内で水が良好に分散され、気泡ムラ、ボイドの発生の無い良好なセル構造を有する発泡層が得られ、バラツキのない良好な断熱性能を有する押出発泡体を得ることができる。
【0039】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層を製造する際に用いられる層状珪酸塩とは、酸化ケイ素を主成分とする四面体シートと、金属水酸化物を主成分とする八面体シートからなり、前記四面体シートと前記八面体シートが単位層を形成し、単位層単独構造の、または複数の単位層が層間に陽イオンなどを介して積層された構造の一次粒子、および、一次粒子の凝集体(二次粒子)として存在するものである。層状珪酸塩の具体例としては、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などがあげられる。
【0040】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(I)
0.2〜0.62〜310(OH)・nHO・・・・・・一般式(I)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、および1/2Mgからなる群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、およびCrからなる群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、およびAlからなる群より選ばれる1種以上である。なお、HOは層間イオンと結合している水分子を表わすが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。
【0041】
前記スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトおよびベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(II)
0.5〜1.02〜3(Z10)(F、OH)・・・・・・一般式(II)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、およびSrからなる群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、およびLiからなる群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、およびBからなる群より選ばれる1種以上である)で表される、天然または合成されたものである。
【0043】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、および水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
前記膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(III)
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4−xAl)O10(OH)・(M,M2+1/2)・nHO・・・・・・一般式(III)
(ただし、MはNaおよびMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものがあげられる。
【0045】
膨潤性層状珪酸塩は、単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。これらの内では、得られる発泡体中の分散性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、さらに好ましい。
【0046】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどがあげられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0047】
ベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、水の添加量などによって適宜調整されるものであるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部が好ましく、0.3〜8重量部がさらに好ましく、0.5〜7重量部が特に好ましく、1〜5重量部が最も好ましい。
スメクタイトの含有量が0.2重量部未満では、水の圧入量に対してスメクタイトによる水の吸着量が不足し、押出機内で水の分散不良による気孔が発生し成形体不良になる傾向がある。一方、スメクタイトの含有量が10重量部を超える場合には、熱可塑性樹脂中に存在する無機物粉体の量が過剰になるため、熱可塑性樹脂中への均一分散が困難になり、気泡ムラが発生する、さらには、独立気泡を保持することが困難となる傾向にある。したがって、発泡体の断熱性能の悪化とバラツキを生じ易くなる。
【0048】
水/スメクタイト(ベントナイト)の混合比率は、重量比で、0.02〜20が好ましく、0.1〜10がさらに好ましく、0.15〜5が特に好ましく、0.25〜2の範囲が最も好ましい。
【0049】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層の密度は、軽量でかつ優れた断熱性を付与するため、10〜60Kg/mであることが好ましく、15〜50Kg/mであることがより好ましい。
【0050】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層の製造時において、必要に応じて、ハロゲン系難燃剤、ハロゲン−リン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、窒素−リン系難燃剤、窒素−ハロゲン系難燃剤などの難燃剤、リン系化合物、窒素系化合物、ホウ素系化合物、金属酸化物、鉄含有化合物、ラジカル開始剤などの難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物、エポキシ化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を添加させることが好ましい。さらに後述する熱線輻射抑制材を添加してもよい。
【0051】
本発明の押出発泡体を構成する発泡層の厚さは、押出発泡体の厚さおよび押出発泡体中の発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて適宜選択される。
【0052】
本発明における非発泡層を構成する樹脂あるいは樹脂組成物(以降、「非発泡層構成樹脂」と称する場合がある)は、目的の高断熱性の押出発泡体を得るためには得られた押出発泡体の発泡層と非発泡層とが良好に接着されていることが好ましいため、発泡層を構成する樹脂と相溶性を有する樹脂を選定することが好ましい。なお、該樹脂が、発泡層を構成する樹脂と相溶性を有さなくても、発泡層との間でアンカー効果が発現するような粘着性・接着性を有する樹脂層を介して積層することも可能である。
【0053】
前記非発泡層構成樹脂としては、例えば、前記発泡層構成樹脂で例示した樹脂と同じスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エンジニアリングプラスチック、脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、前記発泡層構成樹脂として好ましく用いられるポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸変性ポリスチレン、スチレン−不飽和ジカルボン酸無水物−N−アルキル置換マレイミド系共重合体、耐衝撃性ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂の混合樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いた場合には、分子量、共重合成分、官能基などが異なっていてもよいが、非発泡層構成樹脂としても、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸変性ポリスチレン、スチレン−不飽和ジカルボン酸無水物−N−アルキル置換マレイミド系共重合体、耐衝撃性ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂の混合樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を用いることが好ましい。さらに発泡層構成樹脂と同一の樹脂を用いることが特に好ましい。
【0054】
また、発泡層構成樹脂として、スチレン系樹脂を用いた場合に、これと粘着性・接着性を有する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合樹脂、天然ゴム系樹脂、クロロプレン系樹脂および、上記樹脂にロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、ケトン樹脂等の粘着付与剤樹脂を配合してなる樹脂組成物等が挙げられる。
【0055】
本発明の押出発泡体を構成する非発泡層の構造は、特に限定されず、単層、複層のいずれの構造も採りうる。また、非発泡層の厚みは、押出発泡体の厚みおよび押出発泡体中の発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて適宜選択される。
【0056】
非発泡層の厚みは、発泡層を構成する気泡の気泡壁あるいは気泡壁結合部のうち厚みの大きな部分よりも1.1倍以上の厚みを有する限りにおいて限定されず、 好ましくは5〜500μmであり、5〜300μmがより好ましく、5〜200μmが特に好ましく、5〜100μmが最も好ましい。非発泡層の厚みが5〜500μmの範囲では、軽量性および断熱性を備えた押出発泡体を得ることができる。
【0057】
また、得られた押出発泡体における発泡層および非発泡層は、流れ方向および幅方向に平坦であって、それぞれの層が概ね平行な状態で広がっていることが、目的の高断熱性の押出発泡体を得るために、好ましい。このため、押出発泡体の製造方法として、後述する共押出法を採用する場合、非発泡層構成樹脂は、成形温度での溶融状態において、発泡層構成樹脂と発泡剤および任意の添加剤からなる溶融状態の樹脂組成物と、できる限り同程度の溶融粘度とすることが好ましい。この手段としては、例えば、非発泡層構成樹脂の分子量を調整する方法、非発泡層構成樹脂に対して可塑化能力を有する添加剤を添加する方法、非発泡層構成樹脂に対して溶融粘度を向上させる添加剤を添加する方法、などが挙げられる。
【0058】
非発泡層構成樹脂の溶融粘度を調整するために添加される添加剤としては、可塑剤、非発泡層構成樹脂よりも溶融粘度が低く、かつ、相溶性がある化合物などが挙げられる。可塑剤としては、特に限定されず、一般に可塑剤として使用されているいずれの化合物の使用も可能であり、例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸混基エステル(C〜C11)等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジアルキル(C6,8,10)(610A)、アジピン酸ジアルキル(C,C)(79A)アゼライン酸ジオクチル(DOZ)セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリクレシル(TCP)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、エポキシ化大豆油(ESBO)、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)、塩素化パラフィン等の非フタル酸エステル類、等が挙げられる。
【0059】
非発泡層構成樹脂に対する可塑剤の添加量は、狙いとする溶融粘度によって適宜選択されるが、非発泡層構成樹脂100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、2〜15重量部が更に好ましく、3〜12重量部が特に好ましく、4〜10重量部が好ましい。可塑剤の添加量が非発泡層構成樹脂100重量部に対して、1〜20重量部の範囲では、押出の際に吐出変動が無く、押出後の表面ブリードアウトの無い非発泡層が得られる。
【0060】
非発泡層構成樹脂よりも溶融粘度が低く、かつ、相溶性がある化合物としては、トリフェニルホスフェートなどの燐酸エステル類などが挙げられるが、難燃剤、難燃助剤、安定剤、他の種類の非発泡層構成樹脂の中にも同様の効果が得られる化合物がある。
【0061】
本発明の押出発泡体を構成する非発泡層構成樹脂には、必要に応じて、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤、熱線輻射抑制剤などの添加剤を添加することができる。
【0062】
本発明の押出発泡体を構成する非発泡層中に添加される熱線輻射抑制剤とは、近赤外または赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射・散乱・吸収する特性を有する物質をいい、黒体放射率が発泡層および非発泡層を構成する樹脂よりも小さいものをいう。熱線輻射抑制剤としては、以下に述べる熱線反射剤、熱線吸収剤が挙げられる。
【0063】
熱線反射剤としては、近赤外または赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射・散乱する物質であれば、特に限定されず、具体的には、アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム系化合物、アルミン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ハイドロタルサイト等のマグネシウム系化合物;銀等の銀系化合物:チタン、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等のチタン系化合物;ステンレス、ニッケル、錫、銀、銅、ブロンズ、シラスバルーン、セラミックバルーン、マイクロバルーン、パールマイカ等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0064】
熱線反射剤としては、熱伝導率低減効果が大きいこと、コスト的に有利なこと、環境適合面、安全面を含めたハンドリング性が良好なこと等の点から、アルミニウム系化合物、マグネシウム系化合物、銀系化合物またはチタン系化合物が好ましく、このなかでも、アルミニウムペースト、酸化チタンが、熱伝導率低減効果とコストのバランスが優れるため、より好ましい。
【0065】
非発泡層構成樹脂への熱線反射剤の添加量は、熱線反射剤の種類、非発泡層の厚みによって適宜設定されるが、その指標としては、非発泡構成樹脂に熱線反射剤を所定量添加し溶融混練した後、非発泡層と同じ厚みのフィルムを作製し、そのフィルムの赤外線分光光度計(IR)測定により得られたスペクトルにおいて800〜3000nmの吸光度が添加量を増やしても殆ど変化の無いような領域に達する最小量を添加量として設定することが、押出発泡体の熱伝導率の低減効果とコストのバランスが優れるため、好ましい。
【0066】
前記熱線吸収剤とは、近赤外又は赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を吸収する特性を有する物質をいう。
【0067】
前記熱線吸収剤としては、近赤外または赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を吸収する物質であれば、特に限定されず、具体的には、カーボンブラック、炭素粉末;硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、メルカライト、ハロトリ石、ミョウバン石、鉄ミョウバン石等の硫酸金属塩;三酸化アンチモン、酸化アンチモン、無水アンチモン酸亜鉛等のアンチモン系化合物;酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジニウム錫、等の金属酸化物;アンモニウム系、尿素系、イモニウム系、アミニウム系、シアニン系、ポリメチン系、アントラキノン系、ジチオール系、銅イオン系、フェニレンジアミン系、フタロシアニン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系、ベンゾトリアゾール系等の有機染顔料;等を挙げることができる。
【0068】
熱線吸収剤としては、熱伝導率低減効果が大きいこと、コスト的に有利なこと、環境適合面、安全面を含めたハンドリング性が良好なこと等の点から、カーボングラファイト、カーボンブラック、硫酸金属塩またはアンチモン系化合物が好ましく、このなかでも、カーボングラファイト、カーボンブラック、酸化アンチモンまたは硫酸バリウムが、熱伝導率低減効果とコストのバランスが優れより好ましい。
【0069】
非発泡層構成樹脂への熱線吸収剤の添加量は、熱線吸収剤の種類、非発泡層の厚みによって適宜設定されるが、その指標としては、非発泡構成樹脂に熱線吸収剤を所定量添加し溶融混練した後、非発泡層と同じ厚みのフィルムを作製し、そのフィルムの赤外線分光光度計(IR)測定により得られたスペクトルにおいて800〜3000nmの吸光度が添加量を増やしても殆ど変化の無いような領域に達する最小量を添加量として設定することが、押出発泡体の熱伝導率の低減効果とコストのバランスが優れるため、好ましい。
【0070】
本発明の押出発泡体の製造方法、特に発泡層と非発泡層との積層方法については、特に限定はなく、例えば、最外面(発泡層との被着面)に粘着性・接着性を有する(または粘着性・接着性を付与した)非発泡層を予めフィルム状またはシート状に成形し、これを予め成形された発泡層で挟み込み圧着する方法;非発泡層の構成樹脂を、押出機を用いて溶融混練し、溶融された非発泡層の構成樹脂を、予め成形された発泡層で挟み込み圧着する方法;予め成形された非発泡層と発泡層を用い、非発泡層を発泡層で挟み込んだ後、加熱圧着する方法;非発泡層と発泡層の構成樹脂を各々異なる押出機を用いて溶融混練し、各々溶融樹脂を多層状に合流させ積層した後に発泡成形する方法;等が挙げられる。
【0071】
これらの製造方法のうち、本発明の押出発泡体に対しては、発泡層と非発泡層の構成樹脂を各々異なる押出機等を用いて溶融混練を行い、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂とし、多層積層装置を用いて、高圧領域にて各々の溶融樹脂を多層状に合流させ積層した後に、ダイを通して低圧領域に押出発泡して、発泡層を形成し、さらに、成形することにより製造することが好ましい。共押出法により押出発泡体を得ることにより、製造直後に発生する発泡層セル内への空気の侵入を非発泡層が抑止することができ、特に厚み方向に発泡層の両面が非発泡層によって被覆された構造をとることにより、外気からの発泡層セル内への空気の浸入が抑制され、得られる発泡体の断熱性能をさらに改善することができる。
【0072】
本発明において、各々の溶融樹脂を多層積層装置にて多層状に合流させ積層する方法としては、特に限定されず、例えば、共押出フィルムで一般に使用されているフィードブロック法、マルチマニホールド法;特公昭54−23025号公報、特開平4−278323号公報等に記載の複数の層からなる積層流を作った後、分割・積層を繰り返す方法;特表2005−523831号公報、特開2004−249520号公報、等に記載の複数の分割流を作った後、逐次積層する方法、等が挙げられる。
【0073】
押出発泡体を製造する際の多層積層装置の温度は、多層積層装置に供給される発泡剤含有溶融樹脂の樹脂温度に等しいか、異なっていても±10℃以下が好ましい。温度差が±10℃以下の場合、発泡適正温度でダイによる成形加工が可能となり、高倍率で低独立気泡率の良好な発泡層を有する押出発泡体を得ることができる。
【0074】
押出発泡体を製造する際の多層積層装置内の圧力は、多層積層装置に供給される発泡剤含有溶融樹脂が多層積層装置内で発泡を起こさない圧力に設定される。但し、多層積層装置内で発泡を起こさない圧力は、発泡剤種、発泡剤量、発泡剤含有溶融樹脂の温度に依存するため、一概には設定できない。
本発明において、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0075】
なお、発泡層の構成樹脂の溶融混練に関しては、
(i)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ii)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上を混合した後、加熱溶融し、これに残りの前記添加剤をそのまま、または必要により液体化または溶融させて添加し加熱混合する、
(iii)予め熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの前記添加剤、必要に応じて熱可塑性樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
等、熱可塑性樹脂、必要に応じて、前記添加剤を加熱溶融押出機に供給し、
その後、任意の段階において高圧条件下で発泡剤を熱可塑性樹脂に添加し、発泡剤を含有する溶融樹脂(以下、「流動ゲル」と称す場合もある)となす。その後、該流動ゲルは、押出発泡に適する温度に冷却した後、多層積層装置に供給される。
【0076】
熱可塑性樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜280℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリュー形状を用いる方が好ましい。
【0077】
また、非発泡層の構成樹脂の溶融混練に関しても、例えば、
(i)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ii)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上を混合した後、加熱溶融し、これに残りの前記添加剤をそのまま、または必要により液体化または溶融させて添加し加熱混合する、
(iii)予め熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの前記添加剤、必要に応じて熱可塑性樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
など、熱可塑性樹脂、必要に応じて前記添加剤を押出機に供給し、加熱溶融混練を行う。その後、該溶融混練物は多層積層装置に供給される。
【0078】
熱可塑性樹脂と添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよいが、溶融樹脂が供給される多層積層装置の設定温度と等しいか、異なっていても温度差が±10℃以内であることが好ましい。温度差が±10℃以下の場合、発泡層と非発泡層の界面部分に破泡がなく接着不良のない良好な押出発泡体を得ることができる。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので、一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂と添加剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の樹脂押出に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリュー形状を用いる方が好ましい。
【0079】
本発明の押出発泡体の構造としては、例えば、発泡層/非発泡層/発泡層の如く、押出発泡体の厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有することが好ましい。これは、非発泡層の両面に発泡層が積層された構造において、非発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤による熱伝導率低減効果が有効に作用することによる。なお、非発泡層/発泡層/非発泡層の如く非発泡層の片面のみに発泡層が積層された構造では、非発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤による熱伝導率低減効果が十分発現しない傾向がある。
【0080】
また、発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の如く、非発泡層が複数層存在することがさらに好ましい。これは、押出発泡体の厚み方向に熱線輻射抑制剤を含む非発泡層を複数層設けることにより、1層の非発泡層(熱線輻射抑制を含有)では得られない、優れた熱伝導率の低減効果が発現することによる。
本発明の押出発泡体を構成する発泡層の平均気泡径を制御する方法としては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物などに代表される造核剤や、前記層状珪酸塩を発泡層構成樹脂に添加し、これらの添加量を調整する方法があげられる。また、発泡剤の種類、組成および添加量によっても、平均気泡径は調整される。また、溶融混練手段である押出機のスクリュー形状や、加熱温度、圧力、溶融混練された発泡層構成樹脂組成物がダイリップから吐出される量、ダイス形状、吐出の際の樹脂温度などによっても、平均気泡径は調整される。
【0081】
本発明の押出発泡体の厚み方向中央部に位置する発泡層において、それを構成する気泡が、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすように平均気泡径を制御する方法としては、例えば、多層状に積層された発泡層構成樹脂組成物/非発泡層構成樹脂あるいはその組成物を、ダイリップを通して低圧域に押出して発泡させ、板状に賦形して押出発泡体を製造する際に、十分に冷却される前の任意の段階で、
(i)押出発泡体の厚みよりも小さい厚みに押圧して板状に賦形する方法、
(ii)押出発泡する際の線速に対し1.01倍以上の線速で延伸して板状に賦形する方法、等が挙げられる。このとき、ダイリップの開口高さおよび樹脂温度と、得られた発泡体の引き取り速度、発泡剤の種類、組成および使用量、押出吐出量、樹脂温度、所望とする押出発泡体の密度、厚みに応じて適宜条件が設定される。
【0082】
(i)の押圧する方法としては、例えば、ダイリップを通過し、低圧域に押出して所定の厚みになった直後に、板状の成形金型により上下から挟み込む方法、ダイリップを通過し、低圧域に押出して所定の厚みになった後に、上下にロールを配置した装置のロール間を通過させて上下から挟み込む方法、上下にベルトコンベアを配置した装置のコンベア間を通過させて上下から挟み込み押圧する方法などが挙げられる。
【0083】
(ii)の延伸する方法としては、例えば、ダイリップを通過し、低圧域に押出して所定の厚みに賦形する際に、上下にロールを配置した装置あるいは上下にベルトコンベアを配置した装置に挟み込んで、押出吐出量からなる線速よりも速い速度で引き取る方法、ダイリップを通過し、低圧域に押出して所定の厚みに賦形した後に、2台以上の複数の引き取り装置の間で延伸する方法等が挙げられる。なお、延伸する際に加温装置内で加熱しながら延伸しても良い。
【0084】
本発明の押出発泡体の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などに使用される断熱材用途の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与するためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のような厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0085】
本発明の押出発泡体の20℃での等価熱伝導率は、0.034W/m・K(0.0292kcal/m・hr・℃)以下が好ましく、0.028W/m・K(0.0275kcal/m・hr・℃)以下がより好ましく、0.026W/m・K(0.0258kcal/m・hr・℃)以下が特に好ましい。
【0086】
等価熱伝導率が0.034W/m・K以下の押出発泡体は、建築用部材用途として好適に使用され、快適な居住空間の提供に貢献する。
【0087】
本発明の押出発泡体は、その優れた軽量性、断熱性の点から、種々の用途、例えば、床材、壁材、屋根材などの建築用部材、保冷車用断熱材、車両バンパー、自動車天井材などの自動車用部材、地盤の凍上防止剤などの土木用部材などに好適に使用できる。
【実施例】
【0088】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は重量%を表わす。
【0089】
実施例および比較例に対する評価方法は、以下のとおりである。
【0090】
(1)押出発泡体寸法(単位:mm)
厚み:異なる時間にサンプルングした3つの発泡成形体について、図3に示すように、幅方向(押出方向と直交する水平方向)における中央部(幅方向の中点)での厚みを測定し、平均値を算出した。
幅:異なる時間にサンプルングした3つの発泡成形体について、図4に示すように、厚み方向における中央部(厚み方向の中点)での幅を測定し、平均値を算出した。
厚み方向中央部分の特定:上表面から前記厚みの1/2の値、左側面から前記幅の1/2の値に位置する部分を中央部分とした。
【0091】
(2)押出発泡体の密度(単位:kg/m
異なる時間にサンプリングした3つの押出発泡体に対して、JIS K7222−1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法に則り、発泡体密度を測定してその平均値を算出した。
【0092】
(3)熱伝導率(単位:W/m・K)
押出発泡体の熱伝導率を、熱伝導率測定装置(栄弘精機製、HC−074−300)を用いて測定した。押出発泡体気泡内の空気の分圧が51kPa時の熱伝導率を、実施例に示した。
【0093】
(4)押出発泡体気泡内の空気の分圧
押出発泡体を切り出し面から10mmの部分を削除した後、巾方向における中央部より巾方向25mm、長さ方向25mm、厚み方向は発泡体のままの厚さで切り出し、押出発泡体中の空気量を、ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−14A)を用いて分析測定し、平均値を算出することにより、押出発泡体気泡内の空気の分圧を求めた。なお、測定は熱伝導率測定と同時に行った。
【0094】
(5)平均気泡径(D)、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)およびその比(A/B)、小気泡の総面積割合(S)
厚み方向中央部分をマイクロスコープ((株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900)を用いて、倍率100倍にて観察し、明細書本文中に記載した方法で平均気泡径(D)、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)およびその比(A/B)、小気泡の総面積割合(S)を求めた。
【0095】
(実施例1)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:G680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、58kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.2重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.1重量%および水0.6重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は15.8MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は18.2MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を124℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ8Kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
125℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、3.4MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含まない溶融樹脂(1層)を、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、125℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向2.0mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、70℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型に挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、さらに上下にロールを配置した装置(II)で引き取ることにより、延伸率25%にて延伸して、厚み26mm、幅220mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡体を得た。
【0096】
得られた押出発泡体の密度は34Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0257W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0097】
(実施例2)
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]において、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取る操作のみで、上下にロールを配置した装置(II)で引き取る操作を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、厚み30mm、幅240mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は33Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0266W/m・Kであった。
【0098】
(実施例3)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、52kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.2重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.1重量%および水0.6重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は15.6MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は17.0MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を122℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ4Kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
120℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、4.1MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含まない溶融樹脂(1層)を、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、125℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向1.5mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、70℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、さらに上下にロールを配置した装置(II)で引き取ることにより、延伸率1%にて延伸して、厚み29mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は34Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0274W/m・Kであった。
評価結果を、表1に示した。
【0099】
(実施例4)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:G9401、MFR=2.2g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、40kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.5重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.2重量%および水0.7重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は14.0MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は15.0MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を131℃に冷却した後、4つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種7層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ3Kg/時間で供給した。供給した樹脂を128℃に加熱して溶融混練を行い、3つに分流して、前記2種7層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
128℃に温調された前記2種7層多層積層用フィードブロック内で、6.9MPaの圧力下にて、厚み方向に、3つに分流された発泡剤を含まない溶融樹脂それぞれについて、4つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、それぞれ、5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、128℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向2.5mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、さらに別の上下にベルトコンベアを配置した装置(III)で引き取りながら押圧することにより、延伸率14%にて延伸して、厚み24mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の13層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は41Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0267W/m・Kであった。
評価結果を、表1に示した。
【0100】
(実施例5)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、46kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.4重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.2重量%および水0.7重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は14.0MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は15.5MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を124℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部、熱線輻射抑制剤としてグラファイト(伊藤黒鉛鉱業株式会社製、商品名X−10)10.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
【0101】
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ3Kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
125℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、3.0MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含まない溶融樹脂(1層)を、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、123℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向2.0mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型で挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、厚み30mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は36Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0259W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0102】
(実施例6)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:G9401、MFR=2.2g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、42kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.1重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.1重量%および水0.7重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は13.0MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は14.5MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を131℃に冷却した後、4つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種7層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)85重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)6.0重量部を添加し、更に熱線輻射抑制剤としてカーボンブラック/PSマスターバッチ(住化カラー株式会社製、商品名:ブラック (カーボンブラック比率40wt%)25.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ3Kg/時間で供給した。供給した樹脂を135℃に加熱して溶融混練を行い、3つに分流して、前記2種7層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
135℃に温調された前記2種7層多層積層用フィードブロック内で、7.0MPaの圧力下にて、厚み方向に、3つに分流された発泡剤を含まない溶融樹脂それぞれについて、4つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mmの厚みで合流させた。合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、135℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向2.5mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型で挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、厚み24mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の13層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は40Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0103】
(実施例7)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.1重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、60kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.0重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)4.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は15.2MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は13.3MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ2kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]
120℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、3.1MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含まない溶融樹脂(1層)を、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、120℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向1.6mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型で挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、厚み29mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた押出発泡成形体の密度は33kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しておらず、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0298W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0104】
(実施例8)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:G9401、MFR=2.2g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、64kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)3.8重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)1.9重量%および水0.7重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は14.5MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は16MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を130℃に冷却した後、4つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種7層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン−アクリル共重合体(PSジャパン株式会社製、商品名:SC004)を、口径50mmの押出機へ4.5Kg/時間で供給した。供給した樹脂を135℃に加熱して溶融混練を行い、3つに分流して、前記2種7層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
130℃に温調された前記2種7層多層積層用フィードブロック内で、8MPaの圧力下にて、厚み方向に、3つに分流された発泡剤を含まない溶融樹脂それぞれについて、4つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mm/1.4mm/5.2mmの厚みで合流させた後、厚さ方向2.5mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型で挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、厚み24mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の7層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は37Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0273W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0105】
(比較例1)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.1重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、49kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.0重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)4.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は10.0MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は12.0MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を130℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]
128℃に温調された前記2種7層多層積層用フィードブロック内で、2.9MPaの圧力下にて、厚み方向に、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂を、それぞれ、11mm/11mmの厚みで合流させた。合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、130℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向1.6mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、成形金型で挟み込んで押圧し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に挟み込んで引き取り、厚み22mm、幅230mmの直方体状で発泡層のみの1層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた押出発泡成形体の密度は30kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しておらず、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0311W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
【0106】
(比較例2)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:G680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.2重量部、酸化ケイ素(日本アエロジル(株)製、AEROSIL)0.1重量部、ベントナイト((株)ホージュン製、ベンゲルブライト11)1.0重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、46kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、200℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.4重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)2.2重量%および水0.6重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は16.0MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は17.2MPaに設定した。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を128℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ4Kg/時間で供給した。供給した樹脂を130℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡体を製造する方法]
130℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、5.0MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含まない溶融樹脂(1層)を、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂で挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させた。
合流させた多層流を、特公昭54−23025号公報記載の多層流を分割・積層する機能と同様な機能を有し、130℃に温調されたダイス(株式会社プラ技研製)に供給した後、厚さ方向1.4mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した装置(I)に押圧しない程度に挟み込んで引き取り、厚み28mm、幅240mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡体を得た。
得られた押出発泡体の密度は36Kg/mであり、発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満で気泡径0.25mm以下の気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径の気泡より構成される気泡構造を有しており、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0288W/m・Kであった。
評価結果を表1に示した。
本発明の実施例である実施例7と比較例である比較例1の試作8日後の空気含有量はそれぞれ、55kPa、および、83kPaであり、本発明の実施例では空気の進入が抑制されていることが確認された。
【0107】
【表1】

【符号の説明】
【0108】
1.押出発泡成形体の厚さ測定位置
2.押出発泡成形体の幅測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有する押出発泡体であって、
密度が20〜65kg/mであり、かつ
該押出発泡体が、厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たすことを特徴とする、押出発泡体。
【請求項2】
厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有する押出発泡体であって、
密度が20〜65kg/mであり、かつ
前記発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満の気泡径を有する小気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する大気泡よりなる気泡構造を有し、小気泡の平均気泡径が0.25mm以下であり、かつ、厚み方向中央部に位置する前記発泡層を構成する気泡が、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)0.3〜1.5を満たすことを特徴とする、押出発泡体。
【請求項3】
前記発泡層の厚み方向の平均気泡径(A)が0.03〜0.40mmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の押出発泡体。
【請求項4】
前記押出発泡体の密度が20〜40kg/mであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の押出発泡体。
【請求項5】
前記厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡が、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)0.3〜1.0を満たすことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の押出発泡体。
【請求項6】
前記押出発泡体の厚み方向中央部分に位置する前記発泡層の断面に占める気泡径0.25mm以下の気泡の総面積の割合が5〜95%であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の押出発泡体。
【請求項7】
前記押出発泡体が、厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる前記構造を複数個有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の押出発泡体。
【請求項8】
前記発泡層を構成する樹脂が、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の押出発泡体。
【請求項9】
前記発泡層を構成する気泡内に、プロパン、n−ブタン、i−ブタンおよびシクロペンタンよりなる群から選ばれる1種以上の炭化水素が含有されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の押出発泡体。
【請求項10】
厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有し、密度が20〜65kg/mであり、かつ、
厚み方向中央部に位置する該発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たす押出発泡体の製造方法であって、
発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を高圧下で厚み方向に合流させた後、大気圧下に開放する共押出法により得ることを特徴とする、押出発泡体の製造方法。
【請求項11】
厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層されてなる構造を有し、密度が20〜65kg/mであり、かつ、
前記発泡層が、平均気泡径D2の1.2倍未満の気泡径を有する小気泡と、平均気泡径D2の1.2倍以上の気泡径を有する大気泡よりなる気泡構造を有し、小気泡の平均気泡径が0.25mm以下であり、かつ、厚み方向中央部に位置する前記発泡層を構成する気泡において、厚み方向の平均気泡径(A)と押出方向の平均気泡径(B)の比(A/B)が0.3〜1.5を満たす押出発泡体の製造方法であって、
前記押出発泡体が、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を高圧下で厚み方向に合流させた後、大気圧下に開放する共押出法により得ることを特徴とする、押出発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25519(P2011−25519A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173494(P2009−173494)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19〜21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】