説明

断熱材

【課題】 約1000度以上の環境で使用可能な断熱材を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも発泡体から構成される基礎材110に、アルミナセメントが塗布された断熱材100である。この断熱材100においては、塗布されたアルミナセメントが、基礎材110の表面で固結して薄いアルミナセメント層120を形成しているのみならず、基礎材110の微孔にまで浸透して固結し、浸透層130を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音性、遮音性、断熱性、耐火性等の目的で容器や建築物の床、壁、天井、容器等に使用する断熱材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、次のような断熱材が提案された。すなわち、たとえば粉砕したざくろ石とバインダを混合して型枠内に充填し、焼成して発泡成形させた断熱材である(特許文献1参照)。この従来の断熱材はざくろ石を使用しているが、ざくろ石を焼成したものは断熱性にすぐれ、表面にガスバーナの炎を近づけたままその反対側に手で触れても熱くないほどであるし、また保水性がなく水分を透過させるので結露やかびの発生がない。また、ざくろ石は製造や廃棄の際の加熱において有害成分を発生することがない。また、ざくろ石を焼成したものは加工性がよく、通常のカッタナイフで容易に切断することができる。したがって、この従来の断熱材によれば、安価で断熱性、耐火性、吸音性にもすぐれ、建築物や容器等の耐火性能や安全性、居住性を向上させることができる。また、この従来の断熱材は、空隙が大きく通気性に優れているため、フィルタとして使用したり、あるいは反応塔における触媒の担体としたり、薬剤を染み込ませてかびの発生を防止するなど、さまざまな利用法も考えられる。
【特許文献1】特開2004−69060
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ざくろ石は約1000度で焼成するため、この焼成温度以上の環境に耐え得る断熱材を製造するためには、上記した従来の断熱材に新たな改良を加える必要がある。
そこで、本発明は、約1000度以上の環境で使用可能な断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、上記した課題は、次の手段により解決される。
【0005】
第1の発明は、少なくとも発泡体から構成される基礎材に、アルミナセメントが塗布されていることを特徴とする断熱材である。
ここで、アルミナセメントは、約2000度で焼成する。したがって、従来は、発泡体を含む基礎材の表面にアルミナセメント層を「厚く」設ければ、断熱材を約1000度以上の環境でも使用できるのではないかと考えられていた。他方で、従来は、発泡体を含む基礎材にアルミナセメントを「塗布」しただけでは、基礎材の表面にアルミナセメント層が「薄く」設けられるに過ぎないため、いかにアルミナセメントの焼成温度が約2000度であっても、この断熱材を約1000度以上の環境で使用すると、断熱材の周囲の温度が基礎材を構成する発泡体に伝達し、発泡体が焼成して、基礎材が変形などしてしまうと考えられていた。
しかしながら、第1の発明は、少なくとも発泡体から構成される基礎材に、アルミナセメントが塗布されている場合であっても、約1000度以上の環境で使用できることを提案するものである。その原理は、仮説として、次のように説明される。
すなわち、少なくとも発泡体から構成される基礎材は、多孔質であるため、多くの微孔を備えている。したがって、基礎材にアルミナセメントを塗布した場合、塗布されたアルミナセメントは、基礎材の表面で固結するのみならず、基礎材の微孔にまで浸透して、固結する。よって、約1000度以上の環境で使用した場合に、断熱材の周囲の温度が基礎材に伝達されたとしても、基礎材中の微孔で固結しているアルミナセメントによって、基礎材の変形は抑制される。また、アルミナセメントは、基礎材の表面だけではなく、微孔にまで浸透して固結しているため、厚みは薄いものの、ひび割れることなどがない。
したがって、第1の発明に係る断熱材は、約1000度以上の環境で使用可能である。また、第1の発明に係る断熱材は、そのアルミナセメント層が薄いため、軽量で、使い勝手がよい。
【0006】
ここで、基礎材は、少なくとも発泡体から構成されていれば足り、発泡体をバインダで固めたものや、所定の形状に切り出された発泡体などが基礎材に含まれる。
また、発泡体とは、発泡して多孔質となっている部材をいい、たとえば、発泡可能石を焼成して発泡させ多孔質としたものなどが含まれる。なお、発泡可能石とは、たとえば、黒曜石や真珠岩やざくろ石などをいう。ここで、ざくろ石は二価の金属と三価の金属とを含む珪酸塩鉱物の総称で、硬度が高いため研削・研磨材として使用される他、透明の美しい結晶はガーネットと呼ばれ、宝石として賞用される。
【0007】
上記構成において、基礎材は、粉砕した発泡可能石とバインダとを混合して型枠内に充填し、焼成して発泡、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、基礎材の成形に際して、発泡可能石を型枠内で発泡して発泡体とすることができるため、成形と発泡とを同一工程で行うことができる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。
また、上記構成において、基礎材は、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたものとバインダとを混合して型枠内に充填し、高温加熱により圧縮、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、高温加熱で圧縮すれば、成形可能となる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。なお、「粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの」には、パーライトなどが含まれる。
また、上記構成において、基礎材は、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたものとバインダとを混合して型枠内に充填し、低温加熱により乾燥、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、低温加熱で乾燥させれば、成形可能となる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。なお、「粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの」には、パーライトなどが含まれる。
また、上記構成において、基礎材は、所定の形状に切り出した発泡可能石を焼成し発泡したものであることが好ましい。このようにすれば、バインダを用いて成形しなくとも、発泡体から構成される基礎材を得ることができる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。
【0008】
第2の本発明は、少なくとも発泡体から構成される基礎材に、アルミナセメントが含まれていることを特徴とする断熱材である。
第2の発明に係る断熱材によれば、基礎材のなかでアルミナセメントが固結しているため、約1000度以上の環境で使用した場合に断熱材の周囲の温度が基礎材に伝達されたとしても、基礎材中で固結しているアルミナセメントによって、基礎材の変形は抑制される。
【0009】
ここで、基礎材は、少なくとも発泡体から構成されていれば足り、発泡体をバインダで固めたものなどが基礎材に含まれる。
また、発泡体とは、発泡して多孔質となっている部材をいい、たとえば、発泡可能石を焼成して発泡させ多孔質としたものなどが含まれる。なお、発泡可能石とは、たとえば、黒曜石や真珠岩やざくろ石などをいう。ここで、ざくろ石は二価の金属と三価の金属とを含む珪酸塩鉱物の総称で、硬度が高いため研削・研磨材として使用される他、透明の美しい結晶はガーネットと呼ばれ、宝石として賞用される。
【0010】
上記構成において、断熱材は、粉砕した発泡可能石とバインダとアルミナセメントとを混合して型枠内に充填し、焼成して発泡、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、断熱材の成形に際して、発泡可能石を型枠内で発泡して発泡体とすることができるため、成形と発泡とを同一工程で行うことができる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。
また、上記構成において、断熱材は、粉砕した発泡石を焼成して発泡させたものとバインダとアルミナセメントとを混合して型枠内に充填し、高温加熱により圧縮、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、高温加熱で圧縮すれば、成形可能となる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。なお、「粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの」には、パーライトなどが含まれる。
また、上記構成において、断熱材は、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたものとバインダとアルミナセメントとを混合して型枠内に充填し、低温加熱により乾燥、成形したものであることが好ましい。このようにすれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、低温加熱で乾燥させれば、成形可能となる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。なお、「粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの」には、パーライトなどが含まれる。
【0011】
第3の発明は、上記第1の発明及び第2の発明の構成において、前記アルミナセメントの組成は、Alが95〜96%、SiOが2〜3%、Feが0.05〜0.08%である、ことを特徴とする断熱材である。このようにすれば、断熱材の色を良好な白とすることができる。
【0012】
上記第1の発明及び第2の発明において、発泡体をバインダで固める場合には、このバインダに、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムを主体とする無機バインダを用いることが好ましい。このようにすれば、発泡体を良好に固めることができる。なお、第1の発明及び第2の発明においては、バインダに、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムのいずれか一方を有する無機バインダを用いることもできる。
さらに、発泡体を固めるバインダとしては、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ、NaOH)を有する無機バインダを用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ、NaOH)を主体とする無機バインダを用いることが望ましい。粉砕した発泡可能石とバインダとを混合して焼成する場合、あるいは粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたものとバインダとを混合して高温加熱により圧縮または低温加熱により乾燥する場合には、たとえ型を用いて成形したとしても、基礎材の反りが大きくなってしまう場合がある。しかしながら、上記のようにすれば、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムを主体とする無機バインダを用いる場合と比較して、基礎材の反りが小さくなり、基礎材の成形を良好に行うことができるようになる。
【0013】
なお、上記第1の発明及び第2の発明に係る断熱材は、その形状が板状、管状、または容器状であることが好ましい。このようにすれば、約1000度以上の環境で使用可能な断熱材を、より取り扱い易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、約1000度以上の環境で使用可能な断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、第1の実施の形態に係る断熱材100の概略を示す図であり、図1(a)は断熱材100の斜視概略図、図1(b)は図1(a)中のA−A断面の概略を示す図である。
図1に示すように、第1の実施の形態に係る断熱材100は、少なくとも発泡体から構成される基礎材110に、アルミナセメントが塗布されている。この第1の実施の形態においては、塗布されたアルミナセメントが、基礎材110の表面で固結して薄いアルミナセメント層120を形成しているのみならず、基礎材110の微孔にまで浸透して固結し、浸透層130を形成する。このため、第1の実施の形態に係る断熱材100は、約1000度以上の環境で使用して、断熱材100の周囲の温度が基礎材110に伝達されたとしても、焼成温度が約2000度のアルミナセメントが浸透している浸透層130によって、基礎材110の変形は抑制される。また、第1の実施の形態に係る断熱材100は、アルミナセメント層120のみならず、アルミナセメントが基礎材110の微孔に浸透して形成された浸透層130を備えているため、アルミナセメント層120は、その厚みは薄いものの、ひび割れることなどがない。また、第1の実施の形態に係る断熱材は、そのアルミナセメント層120が薄いため、軽量で、使い勝手がよい。
なお、ここで基礎材110は、少なくとも発泡体から構成されていれば足り、発泡体をバインダで固めたものや、所定の形状に切り出された発泡体などが基礎材に含まれる。
また、発泡体とは、発泡して多孔質となっている部材をいい、たとえば、発泡可能石を焼成して発泡させ多孔質としたものなどが含まれる。なお、発泡可能石とは、たとえば、黒曜石や真珠岩やざくろ石などをいう。ここで、ざくろ石は二価の金属と三価の金属とを含む珪酸塩鉱物の総称で、硬度が高いため研削・研磨材として使用される他、透明の美しい結晶はガーネットと呼ばれ、宝石として賞用される。
【0017】
図2は、第1の実施の形態に係る断熱材100の製造方法の概略を示す図である。
図2に示すように、第1の実施の形態に係る断熱材100は、基礎材110を用意して(図2(a))、この用意した基礎材110にハケ300などを用いてアルミナセメントを塗布し(図2(b))、この塗布したアルミナセメントを乾燥させる(図2(c))。このようにすれば、塗布されたアルミナセメントが基礎材110の表面で固結して薄いアルミナセメント層120が形成されるとともに、基礎材110の微孔にまでアルミナセメントが浸透して固結し、浸透層130が形成される。アルミナセメントの塗布は、たとえば、アルミナセメント粉末に水を加えて撹拌したものを、基礎材に塗布することにより行うことが好ましい。ここで、アルミナセメント粉末に対して加える水の量を、アルミナセメント粉末の重量に対して約5〜15%とすれば、浸透層130におけるアルミナセメントの耐熱性や耐火性などの機能を損なうことなく、アルミナセメントを基礎材110の微孔に良好に浸透させることができる。また、アルミナセメントの基礎材110への塗布は、少なくとも1回以上であれば足りるが、2回以上塗布すれば、アルミナセメントが基礎材110の微孔に十分に浸透し、好ましい。また、アルミナセメントが塗布された基礎材110の乾燥は、自然乾燥でも足りるが、80℃までの温度で行うことが好ましい。
【0018】
図3は、第1の実施の形態において、基礎材110の製造方法の概略を示す図である。
図3(a)は基礎材110の製造方法の第1の例を示し、図3(b)は基礎材110の製造方法の第2の例を示し、図3(c)は基礎材110の製造方法の第3の例を示す。
まず、第1の例について説明する。図3(a)に示すように、第1の例では、400は焼成がま、410は棚板、420は型枠、430は矢印に示すようにこれにかぶせる天板を用いる。型枠420内には、粉砕した発泡可能石140とバインダ150とが混合して充填されている。このような焼成がま400を用いて、バインダ150と混合された発泡可能石140を焼成して発泡、成形させれば、基礎材110の成形に際して、発泡可能石140を型枠420内で発泡して発泡体とすることができ、成形と発泡とを同一工程で行うことができる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。なお、必要に応じて天板430に重石を載せることも効果的である。
次に、第2の例について説明する。図3(b)に示すように、第2の例では、型枠420内に、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160とバインダ150とを混合して型枠内に充填し、天板430を載せる。天板430は型枠420内を下降できる形状としてあるが、所定の高さ以下には下がらないよう、ストッパ440が挿入してある。粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160を用いているので、発泡は済んでおり、焼成温度で加熱する必要はないが、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160が軟化し、割れずに圧縮成形可能となる程度の高温、例えば800〜1200℃に高温加熱し、天板430の重量により、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160を圧縮して型枠420の内面形状に成形する。焼成後の厚みは天板430を支えるストッパ440の高さにより任意に設定可能である。なお、型枠420は、これを例えば石材を加工して作ることにより、高温で変形したり融着したりしないようにすることができる。この第2の例によれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、高温加熱で圧縮すれば、成形可能となる。また、焼成して発泡させる場合に比べて加熱温度の均一性に対する条件が多少ゆるやかなので、大寸法のものも問題なく製造できる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。なお、天板430の重量によって圧縮を行う代わりに、ホットプレス等で直接圧縮してもよい。なお、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160としては、「パーライト」などを用いることができる。
次に、第3の例について説明する。図3(c)に示すように、第3の例では、上枠510、下枠520はスペーサ540によって所定の間隔に保持された2枚重ねの型枠で、その中間に、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160とバインダ150とが混合してが充填される。上枠510、下枠520はいずれも多数の孔を設けた、例えばパンチメタルと呼ばれる金属板で作られており、支持材550で複数段重ねて支持され、型枠の中間に温風ダクト530から温風が吹き込まれる。温風は型枠の孔から型枠内に侵入してバインダを乾燥させ、内容物を型枠の形状に成形する。したがって温風は常温からせいぜい300℃程度の温度でよい。温風の温度が高ければ処理時間が短縮されることはいうまでもない。乾燥の前工程として別途水切り処理を行うことが好ましい。図3(b)で示した第2の例と同様に、大寸法のものの製造に好適であるが、型枠の中だれを防止するために適宜中間位置に補助支持材550を使用することが好ましい。この第3の例によれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、低温加熱で乾燥させれば、成形可能となる。また、このようにして製造された基礎材の微孔には、アルミナセメントが好適に浸透する。なお、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160としては、「パーライト」などを用いることができる。
なお、図示しないが、第4の例として、発泡可能石を所定の形状に切り出して基礎材とすることもできる。このようにして製造された基礎材の微孔にも、アルミナセメントは好適に浸透する。
【0019】
図4は、第2の実施の形態に係る断熱材200の概略を示す図であり、図4(a)は断熱材200の斜視概略図、図4(b)は図4(a)中のB−B断面の概略を示す図である。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る断熱材200は、少なくとも発泡体から構成される基礎材210に、アルミナセメント220が含まれている。この第2の実施の形態に係る断熱材200によれば、基礎材210の中でアルミナセメント220が固結しているため、約1000度以上の環境で使用した場合に、断熱材200の周囲の温度が基礎材210に伝達されたとしても、基礎材210中で固結している焼成温度が約2000度のアルミナセメント220によって、基礎材210の変形は抑制される。また、第2の実施の形態に係る断熱材200は、アルミナセメント層を基礎材の表面に厚く形成しなくてもよいため、軽量で、使い勝手がよい。
なお、ここで基礎材210は、少なくとも発泡体から構成されていれば足り、発泡体をバインダで固めたものなどが基礎材に含まれる。
また、発泡体とは、発泡して多孔質となっている部材をいい、たとえば、発泡可能石を焼成して発泡させ多孔質としたものなどが含まれる。なお、発泡可能石とは、たとえば、黒曜石や真珠岩やざくろ石などをいう。ここで、ざくろ石は二価の金属と三価の金属とを含む珪酸塩鉱物の総称で、硬度が高いため研削・研磨材として使用される他、透明の美しい結晶はガーネットと呼ばれ、宝石として賞用される。
【0020】
図5は、第2の実施の形態に係る断熱材200の製造方法の概略を示す図である。
以下、図5(a)は断熱材200の製造方法の第1の例を示し、図5(b)は断熱材200の製造方法の第2の例を示し、図5(c)は断熱材200の製造方法の第3の例を示す。
まず、第1の例について説明する。図5(a)に示すように、第1の例では、400は焼成がま、410は棚板、420は型枠、430は矢印に示すようにこれにかぶせる天板を用いる。型枠420内には、粉砕した発泡可能石240とバインダ250とアルミナセメント粉末270とが混合して充填されている。このような焼成がま400を用いて、バインダ250及びアルミナセメント270が混合された発泡可能石240を焼成して発泡、成形させれば、発泡可能石240を型枠420内で発泡して発泡体とすることができ、成形と発泡とを同一工程で行うことができる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。なお、必要に応じて天板430に重石を載せることも効果的である。
次に、第2の例について説明する。図5(b)に示すように、第2の例では、型枠420内に、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260とバインダ250とアルミナセメント粉末270とを混合して型枠内に充填し、天板430を載せる。天板430は型枠420内を下降できる形状としてあるが、所定の高さ以下には下がらないよう、ストッパ440が挿入してある。粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260を用いているので、発泡は済んでおり、焼成温度で加熱する必要はないが、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260が軟化し、割れずに圧縮成形可能となる程度の高温、例えば800〜1200℃に高温加熱し、天板430の重量により、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260を圧縮して型枠420の内面形状に成形する。焼成後の厚みは天板430を支えるストッパ440の高さにより任意に設定可能である。なお、型枠420は、これを例えば石材を加工して作ることにより、高温で変形したり融着したりしないようにすることができる。この第2の例によれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、高温加熱で圧縮すれば、成形可能となる。また、焼成して発泡させる場合に比べて加熱温度の均一性に対する条件が多少ゆるやかなので、大寸法のものも問題なく製造できる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。なお、天板430の重量によって圧縮を行う代わりに、ホットプレス等で直接圧縮してもよい。なお、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260としては、「パーライト」などを用いることができる。
次に、第3の例について説明する。図5(c)に示すように、第3の例では、上枠510、下枠520はスペーサ540によって所定の間隔に保持された2枚重ねの型枠で、その中間に、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260とバインダ250とアルミナセメント粉末270とが混合されて充填される。上枠510、下枠520はいずれも多数の孔を設けた、例えばパンチメタルと呼ばれる金属板で作られており、支持材550で複数段重ねて支持され、型枠の中間に温風ダクト530から温風が吹き込まれる。温風は型枠の孔から型枠内に侵入してバインダを乾燥させ、内容物を型枠の形状に成形する。したがって温風は常温からせいぜい300℃程度の温度でよい。温風の温度が高ければ処理時間が短縮されることはいうまでもない。乾燥の前工程として別途水切り処理を行うことが好ましい。図5(b)で示した第2の例と同様に、大寸法のものの製造に好適であるが、型枠の中だれを防止するために適宜中間位置に補助支持材550を使用することが好ましい。この第3の例によれば、すでに発泡済みのものをバインダで成形することとなるため、成形の際の温度を焼成温度まで高めなくとも、低温加熱で乾燥させれば、成形可能となる。また、このようにして製造した断熱材においては、発泡体の微孔でアルミナセメントが好適に固結する。なお、粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの260としては、「パーライト」などを用いることができる。
【0021】
上記説明したアルミナセメントの組成は、特に限定されないが、たとえば、
(1)Alが98.5%、SiOが0.5〜0.8%、Feが0.02〜0.05%であるもの、
(2)Alが95〜96%、SiOが2〜3%、Feが0.05〜0.08%であるもの、
(3)Alが93〜94%、SiOが3〜4%、Feが0.5〜0.8%、CaOが0.05〜0.1%、MgOが0.1〜0.2%であるもの、
(4)Alが91〜94%、SiOが0.8〜1.2%、CaOが4〜5%であるもの、
(5)Alが90〜92%、SiOが0.8〜1.2%、CaOが4〜5%であるもの、
(6)Alが88〜90%、SiOが7〜8%であるもの、
(7)Alが89〜91%、SiOが6〜7%、Feが0.3〜0.5%であるもの、
(8)Alが97〜98%、SiOが0.7〜0.9%であるもの、
(9)Alが99.4〜99.8%、SiOが0.05〜0.1%であるもの、
などを用いることが好ましい。
そして、特に、(2)Alが95〜96%、SiOが2〜3%、Feが0.05〜0.08%であるものを用いれば、断熱材の色を良好な白とすることができ、望ましい。
【0022】
また、上記説明した形態において、発泡体をバインダ150(250)で固める場合には、このバインダ150(250)に、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムを主体とする無機バインダを用いることが好ましい。このようにすれば、発泡体を良好に固めることができる。なお、バインダ150(250)には、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムのいずれか一方を有する無機バインダを用いることもできる。
さらに、発泡体を固めるバインダ150(250)としては、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ、NaOH)を有する無機バインダを用いることが好ましく、特に、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ、NaOH)を主体とする無機バインダを用いることが望ましい。粉砕した発泡可能石140(240)とバインダ150(250)とを混合して焼成する場合、あるいは粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの160(260)とバインダ150(250)とを混合して高温加熱により圧縮または低温加熱により乾燥する場合には、たとえ型を用いて成形したとしても、基礎材110(210)の反りが大きくなってしまう場合がある。しかしながら、上記のようにすれば、珪酸ソーダおよび珪酸カリウムを主体とする無機バインダを用いる場合と比較して、基礎材110(210)の反りが小さくなり、基礎材110(210)の成形を良好に行うことができるようになる。
【0023】
なお、上記説明した第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、断熱材の形状が板状である場合について説明したが、本発明において、断熱材の形状は特に限定されず、板状のほか、たとえば、管状、または容器状などとすることもできる。なお、容器状の断熱材は、断熱材による蓋を取り付けて重要品を火災から守る保存容器とすることができるが、別の用途として、発泡体に保水性がないことを利用して緑化用パネルやヴェランダに置くプランタ等に使用することもできる。
【0024】
上記実施の形態に係る断熱材は、これを2枚の表面材の中間にはさむ複合パネルに用いることができる。このようにすれば、複合パネルの断熱性及び耐火性をより向上させることができる。
【0025】
なお、本発明においては、アルミナセメントが塗布された基礎材をポケット内に充填されたマットを、2枚の表面材の中間に挿入して、複合パネルとすることもできる。このようにしても、複合パネルの断熱性及び耐火性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態に係る断熱材100の概略を示す図であり、図1(a)は断熱材100の斜視概略図、図1(b)は図1(a)中のA−A断面の概略を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る断熱材100の製造方法の概略を示す図である。
【図3】第1の実施の形態において、基礎材110の製造方法の概略を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る断熱材200の概略を示す図であり、図4(a)は断熱材200の斜視概略図、図4(b)は図4(a)中のB−B断面の概略を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る断熱材200の製造方法の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
100・・・断熱材、110・・・基礎材、120・・・アルミナセメント層、130・・・浸透層、140・・・粉砕した発泡可能石、150・・・バインダ、160・・・粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの、200・・・断熱材、210・・・基礎材、220・・・アルミナセメント、240・・・粉砕した発泡可能石、250・・・バインダ、260・・・粉砕した発泡可能石を焼成して発泡させたもの、270・・・アルミナセメント粉末、300・・・ハケ、400・・・焼成がま、410・・・棚板、420・・・型枠、430・・・天板、440・・・ストッパ、510・・・上枠、520・・・下枠、530・・・温風ダクト、540・・・スペーサ、550・・・補助支持材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも発泡体から構成される基礎材に、アルミナセメントが塗布されていることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
少なくとも発泡体から構成される基礎材に、アルミナセメントが含まれていることを特徴とする断熱材。
【請求項3】
前記アルミナセメントの組成は、Alが95〜96%、SiOが2〜3%、Feが0.05〜0.08%である、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の断熱材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−50934(P2008−50934A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191540(P2007−191540)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(593193756)株式会社三和製作所 (17)
【Fターム(参考)】