説明

断熱板取付具及び断熱水槽

【課題】水槽躯体の内面に、合成樹脂発泡体製の断熱板を、断熱水槽の水槽躯体に固定されるアンカーピンと、該アンカーピンを介して水槽躯体の内面に断熱板を押さえ付ける押え具とを備えた断熱板取付具で取り付けた断熱水槽において、水圧による断熱板の厚み減少に伴う漏水を防止できるようにする。
【解決手段】押え具30として、アンカーピン20の軸部21が貫通する軸孔33と、アンカーピン20の頭部23を収容する頭部収容孔34とが中心軸方向に連通して形成された筒部32を備え、該筒部32の頭部収容孔34側の端部外周に鍔部31が張り出している一方、軸孔33と頭部収容孔34の間に、頭部収容孔34側から筒部32内に軸部21から差し込んだアンカーピン20の頭部23が当接する頭部受け部35が形成されており、しかも頭部収容孔34の中心軸方向長さLがアンカーピンの頭部高さHより長くなったものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー化のために建物の地下に設置する断熱水槽、及び断熱水槽の水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を取り付けるために用いる断熱板取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等の集合住宅建物の地下には断熱水槽が設置される場合があり、この断熱水槽内に貯溜した水を夏季は冷房に利用し、冬季は暖房に利用している。この断熱水槽は、コンクリートを打設して水槽躯体を形成した後、その内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を取り付けて断熱性を付与したものとなっている。
【0003】
従来、上記断熱水槽において、断熱板を水槽躯体に取り付けるための断熱板取付具としては、熱可塑性樹脂皮膜鋼板製の板状の押え具の中心部にネジの軸部を貫通させたものが知られている。また、断熱水槽としては、耐圧盤(水槽躯体)の内面に、断熱板と、防水層であるシートとを順次重ねて配置し、上記断熱板取付具のネジを、シートと断熱板を貫通して水槽躯体に固定し、断熱板とシートを、ネジの頭部に係止された押え具で押さえ付けて取り付けると共に、上記ネジと押え具上をシート片で覆って断熱板取付具周りを防水した構造のものが知られている。(特許文献1の段落〔0031〕及び図15参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−60759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の断熱板取付具を用いた断熱水槽では、貯水後に、水圧により合成樹脂発泡体製の断熱板が圧縮されて厚みが減少し、この断熱板の厚み減少と共に押え具が断熱板側へ押し込まれる結果、ネジの頭部が押え具より突き出て、ネジと押え具上を覆っているシート片を押し上げ、これによってシート片を破損させ、水漏れを生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を取り付けた断熱水槽において、水圧による断熱板の厚み減少に伴う漏水を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0008】
即ち、本発明に係る断熱板取付具は、軸部の一端に頭部を有し、軸部が断熱水槽の水槽躯体に固定されるアンカーピンと、該アンカーピンを介して、上記水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を押さえ付ける押え具とを備えた断熱板取付具において、
上記押え具が、上記アンカーピンの軸部が貫通する軸孔と、上記アンカーピンの頭部を収容する頭部収容孔とが中心軸方向に連通して形成された筒部を備え、該筒部の上記頭部収容孔側の端部外周に鍔部が張り出している一方、上記軸孔と頭部収容孔の間に、上記頭部収容孔側から上記筒部内に軸部から差し込んだ上記アンカーピンの頭部が当接する頭部受け部が形成されており、しかも上記頭部収容孔の中心軸方向長さが上記アンカーピンの頭部高さより長くなっていることを特徴とする断熱板取付具である。
【0009】
上記断熱板取付具において、上記アンカーピンが打ち込み式であって、上記筒部の外周面に抜け止め部が突設されていることが好ましい。
【0010】
また、上記断熱板取付具において、上記アンカーピンがねじ込み式であって、上記筒部の外周面に、アンカーピンのねじと同方向巻きのねじ山部が突設されていることが好ましい。
【0011】
さらに、上記アンカーピンがねじ込み式である場合において、上記アンカーピンの頭部と、上記押え具の頭部受け部とに、両者の当接面にそれぞれ上記アンカーピンのねじ込み時に上記押え具を共回り可能とする凹凸部が形成されていることが好ましい。
【0012】
一方、本発明に係る断熱水槽は、断熱水槽の水槽躯体に固定されるアンカーピンと、該アンカーピンを介して、上記水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を押さえ付ける押え具とを備えた断熱板取付具を用いて、上記水槽躯体の内面に上記断熱板が取り付けられた断熱水槽において、
上記断熱板取付具が、上記のいずれかに記載の断熱板取付具であり、上記押え具の頭部収容孔側から上記筒部内に軸部から差し込まれた上記アンカーピンが、上記断熱板を貫通して上記水槽躯体に固定されていると共に、当該アンカーピンの頭部の着座面が上記押え具の頭部受け部に当接している一方、上記押え具の筒部が上記軸孔側から上記断熱板に埋入され、上記押え具の鍔部が水槽躯体との間に上記断熱板を押さえ付けていることを特徴とする断熱水槽である。
【0013】
上記断熱水槽の構成において、上記アンカーピンの上記水槽躯体への固定と、上記押え具の筒部の上記軸孔側からの上記断熱板への埋入とが、上記断熱板の表面を覆って付設された防水層を貫通して行われており、上記押え具の鍔部上を覆って防水シート片が貼着されていることが好ましい。
【0014】
また、上記断熱板取付具の取り付け箇所を含む上記断熱板の表面を覆って防水層が付設されていてもよい。
【0015】
さらに、上記押え具の頭部収容孔側端部に、当該頭部収容孔を塞ぐキャップが取り付けられていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、押え具の頭部収容孔の中心軸方向長さがアンカーピンの頭部高さより長くなっているので、水圧により合成樹脂発泡体製の断熱板の厚みが減少して、押え具が断熱板の厚み減少と共に断熱板側へ押し込まれても、押え具からアンカーピンの頭部が突出しない。したがって、水圧により合成樹脂発泡体製の断熱板の厚みが減少しても、断熱板取付具を原因とした防水層の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
〔第1の実施形態〕
まず、図1及び図4を参照して、本発明に係る断熱水槽、及びその施工に使用される断熱板取付具の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態の断熱水槽の断面構造を示す模式図である。図2は、第1の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成するアンカーピンを示し、(a)は左側面図、(b)は正面図である。図3は、第1の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成する押え具を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図4は、第1の実施形態の押え具を示す軸方向に沿った断面図である。
【0019】
図1に示すように、断熱水槽1の水槽躯体2は、例えば、中空直方体状の掘削孔内にコンクリートを打設して箱体状の容器として形成されている。この水槽躯体2は、例えば、RCコンクリートにより形成されている。
【0020】
水槽躯体2の内面には、合成樹脂発泡体製の断熱板3が内装されている。合成樹脂発泡体としては、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリウレタン系樹脂発泡体、フェノール系樹脂発泡体等を用いることができるが、吸水性が低く、断熱性に優れることからポリスチレンの発泡体が好ましい。また、ビーズ発泡成形体でも押出発泡成形体でもよいが、耐圧性に優れることから、押出発泡成形体が好ましい。断熱板3を構成する合成樹脂発泡体の発泡倍率は20〜50倍程度、厚みは30〜60mm程度であることが好ましい。
【0021】
水槽躯体2の内面に設けられた断熱板3同士間の継ぎ目を封止するため、この断熱板3の表面は防水層4で覆われている。防水層4として、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性合成樹脂からなる防水シートを用いることができる。
【0022】
断熱板3及び防水層4は、断熱板取付具10を用いて、水槽躯体2の内面に積層した状態で取り付けられている。この断熱板取付具10は、コンクリート製の水槽躯体2に固定されるアンカーピン20と、このアンカーピン20を介して、水槽躯体2の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板3を押さえ付ける押え具30とを備えている。
【0023】
図2に示すように、アンカーピン20は、軸部21の一端に、この軸部21より径の大きな頭部23を備えたもので、本実施形態のアンカーピン20はねじ込み式のピンである。本実施形態のアンカーピン20は、軸部21の軸方向の中間部から先端側が基端側(頭部23側)よりも縮径されており、先端側の外周部に雄ねじ部22が切られている。このアンカーピン20の頭部23は、例えば、円柱状の平頭に形成され、この頭部23の端面中央部に不図示の電動ドライバの先端部を装着してねじ込むための六角星状のヘクスローブ穴24が形成されている。このドライバ装着穴24の形状はこれに限定されず、例えば、トルクス穴や十字穴等の他の形状であっても構わない。なお、25は、頭部23の軸部21側の面である着座面で、この着座面25には、径方向に対向するように、軸方向へ板状に隆起した凸部26が突設されている。
【0024】
一方、押え具30は、加工性や耐蝕性等を考慮して、例えば、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂により形成されている。この押え具30は、図3及び図4に示すように、円板状の鍔部31と筒部32とを備え、鍔部31は筒部32の一方の端部外周に張り出している。筒部32には、アンカーピン20の軸部21(図2参照)が貫通する軸孔33と、アンカーピン20の頭部23(図2参照)を収容する頭部収容孔34と、が中心軸方向に連通して形成されている。
【0025】
図2及び図4に示すように、押え具30の筒部32の軸孔33の内径Aはアンカーピン20の軸部21の外径Bよりも若干大きく形成され(A>B)、上記筒部32の頭部収容孔34の内径Cはアンカーピン20の頭部23の外径Dよりも若干大きく形成されている(C>D)。また、アンカーピン20の頭部23を収容する頭部収容孔34の内径Cは軸部21が貫通する軸孔33の内径Aよりも大きく(C>A)、上記筒部32の外径も、頭部収容孔34側が軸孔33側よりも大きくなっている。
【0026】
鍔部31は、筒部32の頭部収容孔34側の端部外周に外方へ張り出して形成されている。鍔部31は、筒部32側の面が若干窪んだ凹レンズ状に湾曲しており、この筒部32側の面には補強リブ38が十字形に形成されている。
【0027】
上記筒部32の軸孔33と頭部収容孔34との間には、アンカーピン20の軸部21を頭部収容孔34側から筒部32内に差し込んで軸孔33に挿通させた場合に、アンカーピン20の頭部23の着座面25が当接する頭部受け部35が形成されている。この頭部受け部35は、径の相違する頭部収容孔34と軸孔33の段差面で、アンカーピン20の頭部23の着座面25の形状に合わせて形成され、例えば、逆載頭円錐状等に形成されている。図2、図4及び図6に示されるように、筒部32の頭部収容孔34の中心軸方向長さLは、アンカーピン20の頭部23の高さHより長く(L>H)設定されている。
【0028】
押え具30の頭部受け部35におけるアンカーピン20との当接面、つまりアンカーピン20の着座面25との当接面には、着座面25に突設された凸部26が嵌合する直状溝状の凹部36が形成されている。即ち、アンカーピン20の頭部23の着座面25と、押え具30の頭部受け部35における該着座面25との当接面とには凹凸部26,36が形成され、上記凹部36に上記凸部26が嵌合することにより、アンカーピン20のねじ込み時に押え具30を共回り可能としている。本実施形態では、アンカーピン20の着座面25に凸部26を形成し、押え具30の頭部受け部35の当接面に凹部36を形成しているが、アンカーピン20と押え具30とが共回する凹凸部形状であれば、これに限定されず、アンカーピン20の着座面25に凹部を形成し、押え具30の頭部受け部35の当接面に凸部を形成しても構わない。
【0029】
押え具30の筒部32の外周面には、アンカーピン20の雄ねじ部22と同方向巻きのねじ山部37が突設されている。例えば、アンカーピン20の雄ねじ部22が右ねじの場合には、筒部32の外周面のねじ山部37も右ねじの巻き方向で形成されている。即ち、アンカーピン20のねじ込み時に押え具30を共回りさせることにより、押え具30の筒部32のねじ山部37を断熱板3中にねじ込むことができるように構成されている。
【0030】
次に、図1から図6を参照して、上記断熱板取付具10を用いた断熱水槽1の施工手順を説明する。図5は、第1の実施形態の断熱板取付具による断熱板の取付状況を説明する図である。図6は、第1の実施形態の断熱板取付具の取付状態を示す要部拡大断面図である。
【0031】
まず、図1に示すように、建物の地下部分となる地盤中に形成された中空直方体状の掘削孔内にコンクリートを打設して、箱体状の水槽躯体2を形成する。次いで、この水槽躯体2の内面に、合成樹脂発泡体製の断熱板3を宛い、断熱板3同士の継ぎ目を封止すべく、この断熱板3の表面を防水シート等の防水層4で覆う。
【0032】
次に、図5(a)に示すように、この防水層4の上から、不図示のコンクリートドリルを用いて、防水層4及び断熱板3を貫通させて、水槽躯体2にアンカーピン20をねじ込む下穴6を開ける。この下穴6の内径Uは、アンカーピン20の雄ねじ部22の最大径N(図2参照)よりも小さく設定されている(U<N)。これにより、アンカーピン20の雄ねじ部22を水槽躯体(コンクリート躯体)2にねじ込んだ場合の保持力を確保する。
【0033】
次に、図5(b)に示すように、断熱板3に開けた下穴6内に、防水シート4を介して、押え具30の筒部32の先端側(軸孔33側)を挿入する。断熱板3は合成樹脂発泡体製であるので、筒部32の先端部で下穴6を押し拡げれば、筒部32の先端側を容易に下穴6内へ侵入させることができる。
【0034】
次に、図5(c)に示すように、押え具30の筒部32内へアンカーピン20を、その軸部21の先端側から挿入して頭部収容孔34及び軸孔33に通し、不図示の電動ドリルにより、軸部21の先端側の雄ねじ部22を水槽躯体2の下穴6にねじ込む。
【0035】
アンカーピン20をねじ込んでいると、その頭部23の着座面25が上記頭部収容孔34最深部の頭部受け部35に着座し、その際、上記着座面25に形成された凸部26が上記頭部受け部35に形成された凹部36内に嵌合する。このように上記頭部受け部35の凹部36内に上記着座面25の凸部26が嵌合すると、アンカーピン20のねじ込み動作に伴って押え具30が共回りする。
【0036】
そして、図1及び図5(d)に示すように、アンカーピン20の雄ねじ部22が水槽躯体2の下穴6内にねじ込まれると共に、これと共回りした押え具30の筒部32の外周面に形成されたねじ山部37は断熱板3内にねじ込まれることになる。
【0037】
このように本実施形態では、アンカーピン20の水槽躯体2への固定と、押え具30の筒部32の軸孔側からの断熱板3への埋入とが、断熱板3の表面を覆って付設された防水シート等の防水層4を貫通して行われている。そこで、図1及び図6に示すように、押え具30の鍔部31上を覆うように防水シート片5を貼着して封止する。
【0038】
以上のように、断熱水槽1の施工が完了した状態において、図6に示すように、アンカーピン20の頭部23の着座面25は押え具30の頭部受け部35に当接している一方で、押え具30の筒部32が軸孔33側から断熱板3に埋入され、押え具30の鍔部31が水槽躯体2との間に防水層4上から断熱板3を押さえ付けている。上述したように、本実施形態の断熱板取付具10では、押え具30の頭部収容孔34の中心軸方向長さLがアンカーピン20の頭部高さHより長く設定されているので(L>H)、アンカーピン20の頭部23の着座面25を頭部受け部35に着座させた場合に、頭部収容孔34内に余空間40が形成される。したがって、断熱水槽1内に貯水して水圧により合成樹脂発泡体製の断熱板3の厚みが減少し、押え具30が多少断熱板3側へ押し込まれても、余空間40の軸方向長さSが断熱板3の圧縮代より大きい限り、押え具30の筒部32内からアンカーピン20の頭部23が突出しない。よって、アンカーピン20の頭部23により防水シート片5が押し上げられることがなく、断熱板3の水圧による圧縮を原因とした漏水を防止することができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に、図7から図9を参照して、第2の実施形態の断熱水槽及びこれに用いる断熱板取付具について説明する。図7は、第2の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成するアンカーピンを示し、(a)は左側面図、(b)は正面図である。図8は、第2の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成する押え具を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図9は、第2の実施形態の押え具を示す軸方向に沿った断面図である。図10は、第2の実施形態の断熱板取付具の取付状態を示す要部拡大断面図である。なお、断熱水槽の基本的な層構成は第1の実施形態と変わらないので、層構成についての説明を省略する。また、第1の実施形態と異なる構造の部位及び部材以外は、同一の符号を付して説明する。
【0040】
図7に示すように、第2の実施形態のアンカーピン20は、軸部21の先端側にねじが切られておらず、打ち込みによって先端部が拡径して固定されるアンカーボルト様の打ち込み式のピンである。
【0041】
図8に示すように、本実施形態の押え具30の筒部32の先端部(軸孔33側の端部)外周面には、抜け止め部39が突設されている。抜け止め部39は断面が直角三角形の楔状の突起部であり、アンカーピン20を打ち込みによる筒部32の埋入方向へは断熱板3内に埋入し易い形状であって、筒部32を引き抜く方向には抜け止めとなる形状を呈している。なお、図8において、抜け止め部39は押え具30の筒部32の先端部の外周面にリング状に形成されているが、これに限定されず、筒部32の先端部の外周面に断続的に形成しても構わない。
【0042】
第2の実施形態では、図10に示すように、断熱板取付具10の取り付け箇所を含む断熱板3の表面を覆うように防水層4が付設されている。本実施形態の防水層4としては、例えば、熱可塑性合成樹脂製の防水シートや、合成樹脂塗装等が挙げられる。
【0043】
防水シートを採用する場合は、断熱板取付具10の取り付け箇所を含む断熱板3の表面全体に防水シート4を接着固定する。
【0044】
一方、合成樹脂塗装を採用する場合は、例えば、合成樹脂を吹き付け塗装する前に、押え具30の筒部32における頭部収容孔34の側端部に、この頭部収容孔34を塞ぐキャップ43を挿着することが好ましい。このキャップ43の厚みTは、前記余空間40の軸方向長さSを十分残すことができる厚みであることが好ましい。このように押え具30の頭部収容孔34をキャップ43で塞ぐので、このキャップ43及び鍔部31を含む断熱板3の表面全体に合成樹脂塗装を施すことができる。
【0045】
以上説明したように、第2の実施形態の断熱水槽1及びこれに用いる断熱板取付具10によれば、第1の実施形態と同様に、アンカーピン20の頭部23の着座面25を頭部受け部35に着座させた場合に、頭部収容孔34内に断熱板3の圧縮に伴うアンカーピン20の頭部23相対的位置ずれを許容する余空間40が形成されるので、基本的に第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。特に、第2の実施形態では、防水層4の形成を合成樹脂塗装によって施工することも可能であり、施工工程を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態の断熱水槽の断面構造を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成するアンカーピンを示し、(a)は左側面図、(b)は正面図である。
【図3】第1の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成する押え具を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図4】第1の実施形態の押え具を示す軸方向に沿った断面図である。
【図5】第1の実施形態の断熱板取付具による断熱板の取付状況を説明する図である。
【図6】第1の実施形態の断熱板取付具の取付状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】第2の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成するアンカーピンを示し、(a)は左側面図、(b)は正面図である。
【図8】第2の実施形態の断熱水槽の施工に用いる断熱板取付具を構成する押え具を示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図9】第2の実施形態の押え具を示す軸方向に沿った断面図である。
【図10】第2の実施形態の断熱板取付具の取付状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 断熱水槽
2 水槽躯体
3 断熱板
4 防水層
5 防水シート片
10 断熱板取付具
20 アンカーピン
21 軸部
22 雄ねじ部
23 頭部
25 着座面
26 凸部
30 押え具
31 鍔部
32 筒部
33 軸孔
34 頭部収容孔
35 頭部受け部
36 凹部
37 ねじ山部
39 抜け止め部
43 キャップ
D 頭部収容孔の中心軸方向長さ
H アンカーピンの頭部高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の一端に頭部を有し、軸部が断熱水槽の水槽躯体に固定されるアンカーピンと、該アンカーピンを介して、前記水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を押さえ付ける押え具とを備えた断熱板取付具において、
前記押え具が、前記アンカーピンの軸部が貫通する軸孔と、前記アンカーピンの頭部を収容する頭部収容孔とが中心軸方向に連通して形成された筒部を備え、該筒部の前記頭部収容孔側の端部外周に鍔部が張り出している一方、前記軸孔と頭部収容孔の間に、前記頭部収容孔側から前記筒部内に軸部から差し込んだ前記アンカーピンの頭部が当接する頭部受け部が形成されており、しかも前記頭部収容孔の中心軸方向長さが前記アンカーピンの頭部高さより長くなっていることを特徴とする断熱板取付具。
【請求項2】
前記アンカーピンが打ち込み式であって、前記筒部の外周面に抜け止め部が突設されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱板取付具。
【請求項3】
前記アンカーピンがねじ込み式であって、前記筒部の外周面に、アンカーピンのねじと同方向巻きのねじ山部が突設されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱板取付具。
【請求項4】
前記アンカーピンの頭部の着座面と、前記押え具の頭部受け部とに、両者の当接面にそれぞれ前記アンカーピンのねじ込み時に前記押え具を共回り可能とする凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の断熱板取付具。
【請求項5】
断熱水槽の水槽躯体に固定されるアンカーピンと、該アンカーピンを介して、前記水槽躯体の内面に合成樹脂発泡体製の断熱板を押さえ付ける押え具とを備えた断熱板取付具を用いて、前記水槽躯体の内面に前記断熱板が取り付けられた断熱水槽において、
前記断熱板取付具が、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の断熱板取付具であり、前記押え具の頭部収容孔側から前記筒部内に軸部から差し込まれた前記アンカーピンが、前記断熱板を貫通して前記水槽躯体に固定されていると共に、当該アンカーピンの頭部の着座面が前記押え具の頭部受け部に当接している一方、前記押え具の筒部が前記軸孔側から前記断熱板に埋入され、前記押え具の鍔部が水槽躯体との間に前記断熱板を押さえ付けていることを特徴とする断熱水槽。
【請求項6】
前記アンカーピンの前記水槽躯体への固定と、前記押え具の筒部の前記軸孔側からの前記断熱板への埋入とが、前記断熱板の表面を覆って付設された防水層を貫通して行われており、前記押え具の鍔部上を覆って防水シート片が貼着されていることを特徴とする請求項5に記載の断熱水槽。
【請求項7】
前記断熱板取付具の取り付け箇所を含む前記断熱板の表面を覆って防水層が付設されていることを特徴とする請求項5の記載の断熱水槽。
【請求項8】
前記押え具の頭部収容孔側端部に、当該頭部収容孔を塞ぐキャップが取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の断熱水槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−163835(P2010−163835A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8507(P2009−8507)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
【出願人】(000109196)ダウ化工株式会社 (69)
【出願人】(505023571)日本パワーファスニング株式会社 (3)
【Fターム(参考)】