説明

新規なアセチレン化合物、組成物、硬化物、及び硬化物の作製方法

【課題】有機溶媒に可溶で利用し易い硬化性樹脂組成物、およびその硬化性樹脂組成物を硬化してなり、耐熱性や耐薬品性、耐溶剤性に優れた樹脂硬化物の提供。
【解決手段】溶解性を付与するため、複数の芳香環又はヘテロ環の一部または全てがケタール構造の連結基によって結合され、その構造の末端に架橋基が結合した化合物、または複数の芳香環又はヘテロ環が単結合、エーテル結合、ケトン結合などの2価の連結基で結合され、その末端に架橋性基としてケトン付加体等で保護されたアセチレンが結合する化合物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐薬品性、機械的特性の優れた合成樹脂組成物において、さらに使用し得る成型方法の種類を増やし、汎用性を高めた合成樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルエーテルケトンは耐熱性や耐薬品性、機械的特性に優れたエンジニアリングプラスチックとして知られているが、ほとんどの有機溶剤に溶解させることができない。そのため、このポリマーの利用方法の製品化には、押出成型や圧縮成型、ポリマー粉末を融解させるなどの限られた方法であった。そのなかで、有機溶剤への溶解性が高いものも開発されており、例えばアルキル置換芳香族ポリエーテルケトンが知られている。このような可溶型のアルキル置換芳香族ポリエーテルケトンは種々の有機溶剤に溶かすことができ、利用分野の拡大へと繋げることができた。
【0003】
しかしながら、主鎖にアルキル基が導入された置換芳香族ポリエーテルケトンは、耐薬品性、耐溶剤性に劣り、それらの特性の要求される製品には使用し得ないという欠点があった。主鎖芳香環上へアルキル基を導入することなく、溶解性を向上させて硬化物を得る方法として、アセチレン末端可溶性ポリエーテルケトンが開示されている(例えば、特許文献1など)。また、芳香環の結合位置をメタ位またはオルト位にすることで分子構造を屈曲させて溶解性を向上させる方法、架橋性低分子量成分を添加する方法も開示されている(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
これらのアセチレン末端可溶性ポリエーテルケトンは、それ自体は有機溶媒に対して良好な可溶性を示すが、架橋反応を起こすことにより、架橋基が架橋して硬化した樹脂硬化物となり、有機溶媒に不溶となり、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性が向上するものである。したがって、有機溶媒に可溶な状態時に、各種のマトリックス樹脂として、様々な成形手段で多くの成形物の成形に適用することが可能で、汎用性が高く、成形後に架橋硬化させることにより、非常に高い耐溶剤性、耐薬品性、機械的強度を発揮することができるもので、優れた樹脂材料として活用されるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−73548号明細書
【特許文献2】特開平9−188757号明細書
【特許文献3】特開平10−310619号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法で得られるアセチレン末端可溶型ポリエーテルケトンの各種有機溶剤への溶解性は十分と言えなかった。 特に芳香環上にアルキル基が置換されない化合物や、屈曲構造を入れない直鎖状の化合物の各種有機溶剤への溶解性はさらに悪化してしまい、いずれの場合においてもさらなる溶解性の向上が求められていた。
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、有機溶媒に可溶で、利用し易い硬化性樹脂組成物、およびその硬化性樹脂組成物を硬化してなり、耐熱性や耐薬品性、耐溶剤性に優れる化合物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の事情に艦み鋭意研究した結果、溶解性を付与するため、複数の芳香環又はヘテロ環の一部または全てがケタール構造の連結基によって結合され、その構造の末端に架橋基が結合した化合物、または複数の芳香環又はヘテロ環がエーテル結合、ケトン結合などの2価の連結基で結合され、その末端に架橋性基としてケトン付加体等で保護されたアセチレン基が結合する化合物とすることを見出し、本発明至ったものである。即ち本発明の上記目的は下記の手段により解決された。
【0009】
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化1】


(一般式(1)中、Aは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表す。Bは芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。m、nは整数を表す。m、nがそれぞれ2以上の場合、複数存在するA、Bはそれぞれ同一であっても異なっても良い。ただし一般式(1)中に、一般式(2)で表されるケタール構造を1つ以上含む。)
【0010】
【化2】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でも良く,互いに連結して環を形成してもよい。)
【0011】
<2> 前記一般式(1)の化合物が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする<1>の項に記載の化合物である。
【化3】


(AおよびAは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表し、BおよびBは、それぞれ独立に芳香環又はヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でも良く,互いに連結して環を形成してもよい。n、nは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるA,Aは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
<3> 前記一般式(3)におけるBおよび Bが−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−、単結合または前記一般式(2)で示されるケタールにより連結された複数の芳香環構造であることを特徴とする<2>の項に記載の化合物である。
【0013】
<4> 下記一般式(4)で表されることを特徴とする化合物である。
【化4】


(一般式(4)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。これらは各々独立でもよく,RとRは互いに連結して環を形成してもよい。Bは芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。m、nは整数を表す。m、nがそれぞれ2以上の場合、複数あるR,R、R、Bはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
【0014】
<5> 前記一般式(4)の化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする<4>の項に記載の化合物である。
【化5】


(式中、Dは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R11〜R16は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,R11とR12、R14とR15は互いに連結して環を形成してもよい。n、nは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるR11〜R16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
<6> 前記一般式(5)におけるDが−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−または単結合によって連結された芳香環構造であることを特徴とする<5>の項に記載の化合物である。
<7> 前記一般式(5)において、R13及びR16が水素原子であることを特徴とする<6>の項に記載の化合物である。
<8> 前記一般式(4)中に、下記一般式(2)で表されるケタール構造を1つ以上含むことを特徴とする<4>の項に記載の化合物である。
【化6】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,互いに連結して環を形成してもよい)
【0016】
<9> 前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される構造であることを特徴とする<5>の項に記載の化合物である。
【化7】


(B、Bは、それぞれ独立に芳香環又はヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R、Rは、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,RとRは互いに連結して環を形成してもよい。R11〜R16、n、nは、前記一般式(5)と同義である。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるR11〜R16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0017】
<10> 前記一般式(6)におけるB、Bがそれぞれ独立に−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−、単結合または一般式(2)で示されるケタールにより連結された複数の芳香環構造であることを特徴とする<9>の項に記載の化合物である。
【化8】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,互いに連結して環を形成してもよい。)
<11> 前記一般式(6)において、R13及びR16が水素原子であることを特徴とする<10>の項に記載の化合物である。
<12> 少なくとも<1>の項〜<11>の項のいずれか1項に記載の化合物を含んでなる組成物である。
<13> 更に溶剤を含有することを特徴とする<12>の項に記載の組成物である。
<14> 更にフィラーを含有することを特徴とする<12>の項に記載の組成物である。
【0018】
<15> 少なくとも<1>の項〜<11>の項のいずれか1項に記載の化合物または<12>の項〜<14>の項に記載の組成物を硬化させることにより得られる硬化物である。
<16> 少なくとも前記<1>〜前記<11>のいずれか1項に記載の化合物または前記<12>〜前記<14>に記載の組成物を160℃から450℃の範囲の温度で処理することを特徴とする硬化方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特に各種有機溶媒へ高い溶解性を有する硬化性樹脂組成物、およびその硬化性樹脂組成物を硬化してなり、耐熱性や耐薬品性、耐溶剤性に優れた樹脂硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の硬化性樹脂化合物は、それ自体は有機溶媒に対して良好な可溶性を示すが、架橋反応を起こすことにより、有機溶剤に対して不溶な樹脂硬化物となることを特徴とするものである。
【0021】
本発明における化合物は、芳香環又はヘテロ環の一部または全てがケタール構造の連結基(エーテル結合、メチレンオキシド結合、ケトン結合、スルホニル結合のうちのいずれか1種以上)によって結合された化学構造の末端に架橋基が結合したものである。そのようなものとしては、例えば下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
【0022】
【化9】


一般式(1)中、Aは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表す。該炭化水素基は、置換されていてもよい。無置換の炭化水素基としては炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、シクロヘキシル等)、炭素数6〜10のアリ−ル基(例えばフェニル、ナフチル、インデニル等)、任意に置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ、ブトキシ、デシルオキシ)、フェニル、ナフチル、インデニル等のアリール基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が挙げられる。
【0023】
無置換の炭化水素基としては炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、シクロヘキシル等)、炭素数6〜9のアリ−ル基(例えばフェニル、インドール等)が好ましく、特に炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−アミル等)、フェニルが好ましい。
【0024】
置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、オクチルオキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましく、特にハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子など)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましい。
【0025】
置換ケイ素基としては、炭素数1〜10のアルキルシリル基(例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、ジメチルシクロヘキシルシリルなど)、アルコシキシシリル基(例えばトリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジメメトキシエトキシシリルなど)、アルキルアルコシキシシリル基(例えばジメチルメトキシシリル、ジメチルエトキシシリル、ジメメトキシエチルシリルなど)などが挙げられる。置換ケイ素基としては、炭素数1〜6のアルキルシリル基(例えばトリメチルシリル、トリエチルシリルなど)、アルコシキシシリル基(例えばトリメトキシシリル、トリエトキシシリルなど)などが好ましく、特にトリアルキルシリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル等)が好ましくい。
【0026】
は芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。ここで芳香環またはヘテロ環構造とは、式で表される残基が結合された骨格が、芳香環またはヘテロ環であることを示す。芳香環としては、ベンゼン、インデン、インダン、ナフタリン、テトラリンなどが、ヘテロ環としてはフラン、チオフェン、ピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、プリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、カルバゾールなどが挙げられる。
【0027】
これらの中でも、芳香環としては、ベンゼン、インデン、インダン、ナフタリンが、ヘテロ環としては、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、プリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノキサリン、カルバゾールなどが好ましく、芳香環としては、ベンゼン、ナフタリンが、ヘテロ環としては、ピリジン、トリアジン、インドール、キノリンがより好ましい。特に、ベンゼンがこのましい。
【0028】
芳香環またはヘテロ環構造は他の置換基によって置換されていてもよい。その置換基としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、アルキルアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、モノアリールホスフォノ基、ジアルキルホスフォノオキシ基、ジアリールホスフォノオキシ基、アルキルアリールホスフォノオキシ基、モノアルキルホスフォノオキシ基、モノアリールホスフォノオキシ基、モルホリノ基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0029】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。アラルキル基としては、上記のアルキル基に上記のアリール基が置換したものを挙げることができる。
【0030】
これら置換基のうち、好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl)、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、シアノ基が挙げられる。
【0031】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Cl)、アルキル基(メチル基、トリフロロメチル基、エチル基、トリフロロエチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基)、アリール基(フェニル基、トリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリーロキシ基(フェノキシ基)、アシルオキシ基(アセトキシ基、プロピオニルオキシ基)、アセチル基、アセトキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、アシルアミノ基(アセチルアミノ基)が挙げられる。
【0032】
前記2価の連結基としては、−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−、単結合または下記一般式(2)で示されるケタールが挙げられる。
【0033】
【化10】


一般式(2)において、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,互いに連結して環を形成してもよい。R、Rの炭化水素基は、置換されていてもよい。 無置換の炭化水素基としては炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、シクロヘキシル等)、炭素数6〜10のアリ−ル基(例えばフェニル、ナフチル、インデニル等)、任意に置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ、ブトキシ、デシルオキシ)、フェニル、ナフチル、インデニル等のアリール基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が挙げられる。また、互いに連結したメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。無置換の炭化水素基としては炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、シクロヘキシル等)、炭素数6〜9のアリ−ル基(例えばフェニル、インドール等)、互いに連結したメチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましく、特に炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−アミル等)、フェニル、エチレン基が好ましい。
【0034】
置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、オクチルオキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましく、特にハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子など)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましい。
【0035】
前記2価の連結基としては、これらの中でも、−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−COO−、−OCONH−、単結合または前記一般式(2)で示されるケタールが好ましく、更には、−O−、−CO−、−SO2−、−OCONH−、単結合または前記一般式(2)でR、Rが、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、シクロヘキシル等)、炭素数1〜8のアラルキル基(例えばベンジル、フェネチル)で示されるケタールが好ましい。特に−O−、−CO−、−SO2−、単結合または前記一般式(2)でR、Rが、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、オクチル、シクロヘキシル等)、炭素数6〜8のアラルキル基(例えばベンジル、フェネチル)、又は互いに連結したメチレン基、エチレン基で示されるケタールが好ましい。
【0036】
m、nは整数を表す。m、nがそれぞれ2以上の場合、複数存在するA、Bはそれぞれ同一であっても異なってもよい。ただし前記一般式(1)中に、前記一般式(2)で表されるケタール構造を1つ以上含む。mは1以上、nは2以上の整数が好ましく、mは1〜10、nは2〜1000が好ましく、更にmは1〜5、nは2〜100が好ましい。特にmは1〜2、nは2〜20が好ましい。
【0037】
本発明の別の態様として前記一般式(1)の化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であってもよい。
【化11】


およびAは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表し、具体的にはそれぞれ前記Aについて記載したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。BおよびBは、それぞれ独立に芳香環又はヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表し、具体的にはそれぞれ前記B、Dについて記載したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。R、Rは前記一般式(2)のR、Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0038】
、nは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるA,Aは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。n、nは、それぞれ1〜4が好ましく、特に1〜2が好ましい。
【0039】
本発明の別の態様としては、下記一般式(4)で表されることを特徴とする化合物である。
【化12】


一般式(4)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。これらは各々独立でもよく,RとRは互いに連結して環を形成してもよい。Bは芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。B、Dは具体的にはそれぞれ前記一般式(1)におけるB、Dついて記載したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0040】
〜Rの炭化水素基は、置換されていてもよい。無置換の炭化水素基としては炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、シクロヘキシル等)、置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ、ブトキシ、デシルオキシ)、フェニル、ナフチル、インデニル等のアリール基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が挙げられる。
【0041】
無置換の炭化水素基としては炭素数1〜8のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、オクチル、シクロヘキシル等)が好ましく、更に、炭素数1〜5のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、t−アミル等)が好ましい。
【0042】
置換された炭化水素基としてはハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、オクチルオキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましく、特にハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子など)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えばメトキシ、イソプロポキシ、ブトキシ)、フェニル基、ヒドロキシル基等で置換された炭化水素基が好ましい。
【0043】
また、RとRが互いに連結して環を形成したものとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタン、オキセタン、オキソラン、チオラン、ピロリジン、オキサン、チアン、ピペリジンなどが挙げられ、好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタン、オキソラン、オキサンであり、より好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタンである。中でもRとしては炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、等)および水素原子が特に好ましい。m、nは、一般式(1)におけるm、nと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0044】
本発明の別の態様においては、前記一般式(4)の化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする化合物である。
【化13】

【0045】
一般式(5)中、Dは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。その芳香環またはヘテロ環構造としては、一般式(4)におけるDの芳香環またはヘテロ環構造と同義であり好ましい範囲も同様である。Dにおける2価の連結基としては、一般式(1)におけるD,Bにおける2価の連結基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
11〜R16は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,R11とR12、R14とR15は互いに連結して環を形成してもよい。R11〜R13、R14〜R16は、それぞれ一般式(4)におけるR〜Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。n、nは、一般式(3)におけるn、nと同義であり、好ましい範囲も同様である。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるR11〜R16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0047】
本発明の別の態様においては、前記一般式(5)の化合物が下記一般式(6)で表される構造である化合物である。
【化14】


一般式(6)中、B、B、R、R、n、nは、一般式(3)におけるB、B、R、R、n、nとそれぞれ同義であり、それぞれの好ましい範囲もそれらと同様である。 R11〜R16は一般式(5)におけるR11〜R16とそれぞれ同義であり、それぞれの好ましい範囲もそれらと同様である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されている酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、可塑剤、離形剤、発泡剤、滑剤、ブロッキング防止剤、染料、顔料、着色剤、香料、紫外線吸収剤、加工助剤、耐衝撃助剤等の各種添加剤や炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、マイカ、ケイ酸カルシウムなどの無機充填材、有機充填材、熱可塑性樹脂、各種樹脂等を配合してもよい。本発明の硬化性樹脂組成物であると、汎用の溶媒に対する溶解性に優れているので、塗布、コーティングなどを含めた、種々の成形技術により多用な成形物に成形することができる。溶媒としては、例えば、クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、N,N’−ジメチルホルムアシド(DMF)、N−メチル2−ピロリドン、トリグライム等が挙げられる(p42にも「溶剤例」を記載)。成形技術としては、例えば、中空成形法、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法のごとき成形方法を適用することができる。
【0048】
本発明の樹脂硬化物は、上述の硬化性樹脂組成物の架橋基を架橋反応させてなるもので、架橋硬化させることにより、有機溶剤に不溶となり、耐熱性、耐薬品性、機械的特性に優れたものとなる。
【0049】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。 前記一般式(1)で表される具体的な化合物としては、例えば次に掲げる化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。 具体的例中のm、nは2〜数千の任意の整数の単数又はそれらの混合を表す。
【0050】
【化15】

【0051】
【化16】

【0052】
【化17】


前記一般式(3)で表される具体的な化合物としては、例えば次に掲げる化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0053】
【化18】

【0054】
【化19】



【0055】
【化20】




前記一般式(4)で表される具体的な化合物としては、例えば次に掲げる化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0056】
【化21】

【0057】
【化22】


【0058】
【化23】


【0059】
【化24】



前記一般式(5)で表される具体的な化合物としては、例えば次に掲げる化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0060】
【化25】



【0061】
【化26】


【0062】
【化27】


【0063】
【化28】




<溶剤>
【0064】
本発明における溶剤は特に限定されるものではなく、例えば水、アミド系溶剤(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶剤(例えばスルホラン)スルホキシド系溶剤(例えばジメチルスルホキシド)、エーテル系溶剤(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、ケトン系溶剤(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、炭化水素系溶剤(例えばトルエン、キシレン)、ハロゲン系溶剤(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン)、アルコール系溶剤(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール)、ピリジン系溶剤(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)などがあり、これらが単独或いは混合したものでも良い。<フィラー>
【0065】
上記フィラーは、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善等の役割を有する。上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、窒化珪素等の無機フィラー等が挙げられる。
【0066】
これらフィラーは、シラン化合物によって表面処理されたものを使用しても良い。例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は2種以上を混合して用いても良い。
【0067】
上記フィラーの粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は10μmである。その配合量としては、上記硬化性樹脂100重量部に対して好ましい下限は1重量部、好ましい上限は40重量部である。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。<溶解性の判定>それぞれ合成した化合物1gに各種溶剤20ml入れ、室温にて静置した。24時間後、ミクロフィルタ−でろ過を行うことにより、結晶残存の有無を判定した。
【0069】
<実施例1> 化合物(C3−1)の合成
【化29】



窒素気流下、還流冷却管を取り付けたDean−Stark水分定量管を備えた2Lの3つ口フラスコへ、室温にて4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(42g)、炭酸カリウム(63.8g)、トルエン1L、NMP300mlを加え、3−ヒドロキシフェニルアセチレン(50.0g)を加えた。窒素気流下、トルエンにより共沸される水分を除去しながら外温140℃にて2時間還流を行った。次に外温を170℃に変更し、NMPを200ml加え、トルエンを排出しながら加熱を2時間続けた。
【0070】
反応液を冷却し、酢酸エチル1L、水1Lを加えて抽出を行った。さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮した。これを酢酸エチル及びヘキサンで晶析操作を行うことにより化合物D−1(56.6g)が得られた(収率71%)。
【0071】
次に、窒素気流下、還流冷却管を取り付けたDean−Stark水分定量管を備えた1L3つ口フラスコに化合物D−1(10g)、パラトルエンスルホン酸0.4g、オルトギ酸トリメチル200ml、メタノール200ml、AMBERLYST 7gを入れ、水分を留去し、溶媒を適宜添加しながら8時間還流した。溶媒を減圧留去後、酢酸エチル300ml、水300ml加え、分液操作によって有機層を3回水洗した。有機層を濃縮することで、目的物C3−1(10.0g)を得た。(収率90%) 得られた化合物の溶解性試験を行ったところ、NMP及びトルエンに対する溶解性は良好であった。
【0072】
<実施例2> 化合物(CP3−2)の合成
【化30】



100ml3つ口フラスコに、窒素気流下、NMP200ml、化合物D−2(9.6g)、ハイドロキノン(1.48g)、化合物D−3(2.37g)炭酸セシウム(7.3g)、塩化銅(I)(2g)を加え、130℃にて6時間攪拌を行ない、次に25%水酸化ナトリウム水溶液10mlを加えて130℃で6時間の攪拌を行った。内温を40℃まで冷却後、水300mlと酢酸エチル300mlを加えて抽出を行った。 さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮することでCP3−2(4.5g)が得られた(収率55%)。得られた化合物の溶解性試験を行ったところ、NMP及びトルエンに対する溶解性は良好であった。
【0073】
<実施例3> 化合物(C5−5)の合成
【化31】



窒素気流下、還流冷却管を取り付けたDean−Stark水分定量管を備えた、1Lの3つ口フラスコに、化合物D−4(10.00g)、D−3(8.7g)、炭酸カリウム(9.8g)N,N−ジメチルホルムアミド200ml、トルエン300mlを加えた。水分を除去しながら外温140℃にて2時間還流を行った。次に外温を170℃に変更し、トルエンを排出しながら加熱を2時間続けた。
【0074】
反応液を冷却し、酢酸エチル1L、水1Lを加えて抽出を行った。さらに分液操作によって有機層を3回水洗し、有機層を濃縮した。これを酢酸エチル及びヘキサンで晶析操作を行うことにより化合物C5−5(12.1g)が得られた(収率75%)。得られた化合物の溶解性試験を行ったところ、NMP及びトルエンに対する溶解性は良好であった。
【0075】
<実施例4 〜 実施例12>以下の化合物を合成し、得られた化合物の溶解性試験を行った。溶解性試験の結果は<表1>に示す。
【0076】
実施例4〜10に掲げる化合物については、特に指定しないが、実施例1〜3に示した方法や、例えば特開平8−73548、特開平9−188757、特開平10−310619、文献Macromolecules 1990,23,926〜930やJournal of Polymer Science;Part A:Polymer Chemistry, Vol.35,371〜376(1997)、 Journal of Polymer Science;Part A:Polymer Chemistry, Vol.35,271〜277(1997)、Synthetic Communications,36,2195〜2201,2006、Tetrahedron Asymmetry 11 (2000)4885−4893、Macromolecules,Vol,20,No.6、1987などに記載されている方法を利用することで合成可能である。
【表1】

【0077】
<比較例1〜4>比較例1〜4に記載の化合物も実施例と同様の方法の合成可能である。
【0078】
【化32】


溶解性の結果を<表2>に示す
【0079】
<表2>
【表2】

<硬化物の作成>
【0080】
<実施例11〜20> <実施例1〜10>で合成した化合物を1gをDMAc20mlに溶解させてガラス上に塗布し、250℃にて3時間加熱を行った。塗布には300μmブレードを使用した。
【0081】
<発熱ピーク温度、耐薬品性試験>得られた硬化物フィルムについて、熱重量減少の測定及び耐薬品性試験を行った。耐薬品性を示す指標として各種溶剤に5時間浸透を行い、重量減少を測定した。5%以下の重量減少であるものを可とした。耐熱性の評価についてはTg/DTAを使用し、得られたフィルムの400℃での重量減少を測定した。10分間のホールドを行い、10wt%以上の減少が認められるものを×、3wt%以上〜10wt%未満のものを△、3wt%未満の重量減少のものを○と判定した。
【0082】
<表3>
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の硬化性樹脂組成物は、それ自体は有機溶剤に対して良好な可溶性を示すので、各種のマトリックス樹脂として、またコーティング材料、接着剤等に適用でき、様々な成形手段で多くの成形物の成形に適用することが可能となり、汎用性が非常に高くなる。即ち、圧縮成形や押出成形以外の手段で利用することが可能となる。また、この硬化性樹脂組成物を架橋硬化させてなる樹脂硬化物は、有機溶剤に不溶で、耐溶剤性や、耐薬品性、耐熱性、保存性、機械的性能に優れているものである。したがって、成形後に架橋硬化させることにより、これらの諸特性に優れた各種の成形物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化1】


(一般式(1)中、Aは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表す。Bは芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。m、nは整数を表す。m、nがそれぞれ2以上の場合、複数存在するA、Bはそれぞれ同一であっても異なっても良い。ただし一般式(1)中に、一般式(2)で表されるケタール構造を1つ以上含む。)
【化2】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でも良く,互いに連結して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)の化合物が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1の化合物。
【化3】


(AおよびAは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基または置換ケイ素基を表し、BおよびBは、それぞれ独立に芳香環又はヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でも良く,互いに連結して環を形成してもよい。n、nは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるA,Aは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(3)におけるBおよび Bが−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−、単結合または前記一般式(2)で示されるケタールにより連結された複数の芳香環構造であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする化合物。
【化4】


(一般式(4)中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。これらは各々独立でもよく,RとRは互いに連結して環を形成してもよい。Bは芳香環またはヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。Dは芳香環またはヘテロ環構造、2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造、或いは単結合又は2価の連結基を表す。m、nは整数を表す。m、nがそれぞれ2以上の場合、複数あるR,R、R、Bはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
【請求項5】
前記一般式(4)の化合物が、下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項4の化合物。
【化5】


(式中、Dは2価の連結基または単結合により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R11〜R16は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,R11とR12、R14とR15は互いに連結して環を形成してもよい。n、nは、それぞれ独立に1〜10の整数を表す。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるR11〜R16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】
前記一般式(5)におけるDが−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−または単結合によって連結された芳香環構造であることを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記一般式(5)において、R13及びR16が水素原子であることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記一般式(4)中に、下記一般式(2)で表されるケタール構造を1つ以上含むことを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【化6】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,互いに連結して環を形成してもよい)
【請求項9】
前記一般式(5)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される構造であることを特徴とする請求項5の化合物。
【化7】


(B、Bは、それぞれ独立に芳香環又はヘテロ環構造、或いは2価の連結基により連結された2つ以上の芳香環またはヘテロ環構造を表す。R、Rは、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,RとRは互いに連結して環を形成してもよい。R11〜R16、n、nは、前記一般式(5)と同義である。n、nが、それぞれ2以上の時、複数あるR11〜R16は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
前記一般式(6)におけるB、Bがそれぞれ独立に−O−、−CO−、−SO2−、−NHCO−、−NH−、−S−、−COO−、−OCOO−、−OCONH−、−NHCONH−、単結合または一般式(2)で示されるケタールにより連結された複数の芳香環構造であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【化8】


(一般式(2)において、R、Rは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を表し、これらは各々独立でもよく,互いに連結して環を形成してもよい)
【請求項11】
前記一般式(6)において、R13及びR16が水素原子であることを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
少なくとも請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の化合物を含んでなる組成物。
【請求項13】
更に溶剤を含有することを特徴とする請求項12の組成物。
【請求項14】
更にフィラーを含有することを特徴とする請求項12の組成物。
【請求項15】
少なくとも請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の化合物または請求項12〜14に記載の組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【請求項16】
少なくとも請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の化合物または請求項12〜14に記載の組成物を160℃から450℃の範囲の温度で処理することを特徴とする硬化方法。

【公開番号】特開2009−191109(P2009−191109A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31020(P2008−31020)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】