説明

新規なサリチル酸塩

アセチルサリチル酸の新規なベタイン塩、すなわち4−トリメチルアンモニオブタノエートアセチルサリシレート、L−カルニチンアセチルサリシレート及び3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート。血小板の凝集により誘導される種々の疾患を治療するための抗血小板剤、抗炎症剤及び抗脂質血症剤としてのメルドニウムアセチルサリシレートの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、サリチル酸塩、そして特に新規な且つ有用な水溶性サリチル酸塩及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセチルサリチル酸は、主としてその鎮痛性のために最も広く使用されている医薬である。その用途範囲は、その低い水溶性(約0.3%)のために大きく制限されている。Li、Na、Mg及びCa塩のほかに、塩基性アミノ酸との多数の塩が開示されている(米国特許4,625,888)。これらの塩のそれぞれは幾つかの利点及び欠点を有し、したがって、潜在的に更に有利な性質を有する、アセチルサリチル酸の新規な塩を得るのに有利である。
【0003】
アセチルサリチル酸の前記新規な塩に導入されるベタイン型化合物はそれ自体、種々の薬理学的活性を有するので、サリチル酸の新規な塩は、サリチル酸又はベタインの性質に加えて追加の有利な性質、例えば新規な薬理学的活性、を有するであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、幾つかのベタイン型化合物との、新規な型のサリチル酸塩の発見である。それ自体が吸湿性物質であるある種のベタインとのサリチル酸塩が安定な、水溶性の結晶塩を生じさせることは予想外でありそして驚くべきことであった。
したがって、本発明の目的は、高度に水溶性であり、しかも顕著な安定性と寿命を有するサリチル酸塩を提供することである。
【0005】
本発明の更なる目的は、上記の塩の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、医薬として使用するために、メルドニウムアセチルサリチル酸塩(meldonium acetylsaicylate)(3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート)を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、抗炎症性、鎮痛性、抗リウマチ性、抗多脂質血症性、抗アテローム性動脈硬化症性、抗凝集性及び抗血栓性を有する医薬物質、即ち3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレートを提供することである。本発明の他の目的は、抗炎症、鎮痛、抗リウマチ、抗多脂質血症、抗アテローム性動脈硬化症、抗凝集及び抗血栓療法を必要とする対象の治療方法を提供することである。本発明の更なる目的は、上記の目的のために、MASAを含んで成る医薬組成物を提供することである。本発明の他の目的は、後ほど明らかとなり、他の目的は当業者にとって自明であろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の種々の塩及び方法並びにそれらの性質の例を記載する。
【実施例】
【0008】
実施例1. 4−トリメチルアンモニオブタノエートアセチルサリシレート
γ−ブチロベタイン2水和物(1.81g、10mmol)及びアセチルサリチル酸(1.80g、10mmol)をエタノール(20mL)に溶解した。この溶液を真空中で40℃にて、冷却により結晶化するシロップ状に濃縮した。結晶塊をアセトン(50mL)と共にすりつぶし、濾過し、アセトンで洗浄し、そして真空中、室温にて乾燥した。融点120〜122℃の無色結晶の収量は3.04g(93.5%)であった。この物質は水溶性であり、周囲条件で安定であった。
【0009】
1H NMRスペクトル(D2O, TMS)δ:1.93-2.12(2H,m,CH2CH2CH2); 2.33(3H,s,COCH3); 2.40(2H,t,J=7.0Hz,CH2COO-); 3.09(9H,s,Me3N); 3.24-3.37(2H,m,CH2N); 7.16(1H,dd,J=1.1 and 8.1Hz,H-3; 7.38(1H,ddd,J=1.1, 7.6 and 7.6 Hz,H-3) 7.56(1H,ddd,J=1.8, 7.6 and 8.1Hz,H-3); 7.79ppm(1H,dd,J=1.8 and 7.6Hz,H-6)。
C16H23NO6 計算値% C 59.07; H 7.13; N 4.30
測定値% C 59.17; H 7.20; N 4.23。
【0010】
この新規な塩は、2H値5.10、13.58、13.83、15.02、15.17、17.89、19.33、19.87、21.85、22.05、23.32、23.56、23.92、24.75、25.55、25.80、27.05、27.91、30.25±0.2°にピークを有するX線パウダーパターンにより特徴付けられる。
この新規な塩の構造は、X線−結晶構造解析(下記)により特徴付けられる。結晶は単斜晶系であり、実験温度T=−85℃でのセルパラメータは、a=13.2154(6)Å, b=7.5092(3)Å, c=17.6451(9)Å, β=104.728(2)Å, セル体積V=1693.5(1)Å3, スペースグループP21/a
【0011】
4−トリメチルアンモニオブタノエートアセチルサリシレート結晶構造のフラグメント:
【化1】

【0012】
実施例2. L−カルニチンアセチルサリシレート
L−カルニチン(1.61g、10mmol)及びアセチルサリチル酸(1.80g、10mmol)をエタノール(20mL)に溶解した。この溶液を真空中で40℃にて、冷却により結晶化するシロップ状に濃縮した。結晶塊をアセトン(50mL)と共にすりつぶし、濾過し、アセトンで洗浄し、そして真空中、室温にて乾燥した。融点90〜94℃の無色結晶の収量は3.17g(93%)であった。この物質は水溶性であり、周囲条件で安定であった。
【0013】
1H NMRスペクトル(D2O, TMS)δ:2.23(3H,s,COCH3); 2.53(2H,d,J=6.6Hz,CH2COO-); 3.18(9H,s,Me3N); 3.38-3.45(2H,m,CH2N); 4.59(1H,quint,J=6.1Hz,CHOH); 7.15(1H,dd,J=1.1 and 8.1 Hz,H-3); 7.37(1H,ddd,J=1.1, 7.6 and 7.6Hz,H-3); 7.56(1H,ddd,J=1.8 7.8 and 7.8Hz,H-4); 7.79ppm(1H,dd,J=1.8 and 7.8Hz,H-6)。
C16H23NO7 計算値% C 56.30; H 6.79; N 4.10
測定値% C 55.67; H 6.85; N 4.12。
【0014】
この新規な塩は、2H値5.09、12.62、13.48、13,84、15.04、17.82、19.15、19.77、21.84、22.56、23.33、23.92、24.40、25.17、25.43、26.14、27.24、29.50、30.36±0.2°にピークを有するX線パターンにより特徴付けられる。
この新規な塩の構造は、X線−結晶構造解析(下記)により特徴付けられる。結晶は単斜晶系であり、実験温度T=−85℃でのセルパラメータは、a=13.1342(6)Å, b=7.6396(3)Å, c=17.737(1)Å, β=104.535(2)Å, セル体積V=1722.8(2)Å3, スペースグループP2。
【0015】
L−カルニチンアセチルサリシレート結晶構造のフラグメント:
【化2】

【0016】
実施例3. 3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート(メルドニウムアセチルサリシレート)
3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート2水和物(INN-メルドニウム)(3.64g、20mmol)及びアセチルサリチル酸(3.60g、20mmol)を熱プロパノール−2(30mL)に溶解し、そして50〜55℃にて20分間加熱した。加熱を停止し、そして溶液を室温にて3時間撹拌した。スラリーを0℃にて更に3時間撹拌した。沈殿を濾過し、そして冷プロパノール−2(2×15mL)により洗浄した。融点104〜106℃の無色結晶の収量は4.21g(63%)であった。
【0017】
1H NMRスペクトル(D2O, TMS)δ:2.34(3H,s,COCH3); 2.51(2H,t,J=6.4Hz,CH2COO-); 3.26(2H,t,J=6.4Hz,CH2N); 3.33(9H,s,Me3N); 7.17(1H,dd,J=1.1 and 7.8 Hz,H-3); 7.39(1H,ddd,J=1.1, 7.6 and 7.6Hz,H-5); 7.58(1H,ddd,J=1.7, 7.6 and 7.8Hz,H-4); 7.81ppm(1H,dd,J=1.7 and 7.6Hz,H-6)。
C15H22NO6 計算値% C 55.21; H 6.79; N 8.58
測定値% C 55.25; H 6.79; N 8.53。
【0018】
この新規な塩は、2H値5.19、13.22、13.82、14.20、14.95、15.36、15.93、18.11、18.97、19.74、21.02、22.15、23.15、23.65、24.31、25.28、26.18、26.58、27.73、28.36±0.2°にピークを有するX線パターンにより特徴付けられる。
この新規な塩の構造は、X線−結晶構造解析(下記)により特徴付けられる。結晶は単斜晶系であり、実験温度T=−85℃でのセルパラメータは、a=19.3399(8)Å, b=7.2400(3)Å, c=35.237(2)Å, β=90.758(2)Å, セル体積V=4933.5(4)Å3, スペースグループP21/n
【0019】
3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート(メルドニウムアセチルサリシレート)結晶構造のフラグメント:
【化3】

【0020】
3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート(メルドニウムアセチルサリシレート)の薬理学的性質
本明細書において開示される新規な物質は、類似の生物学的性質を有する多形結晶形及び溶媒和物、好ましくは水和物として存在することができ、そしてそれ故に、記載される化合物の変形体として本発明に含まれると理解される。
本発明者らは、ナイアシンにより惹起される皮膚血管拡張を除去し、そして実質的に減少させることを初めて確認した。更に、実験は、メルドニウムアセチルサリシレートの驚くべき改良された薬理学的活性を示した。
【0021】
使用される略号
本明細書において、手短にするため、下記の略号が使用される。
AdA: アジュバント関節炎
ASA: アセチルサリチル酸
C: コレステロール
CHD: 冠心臓疾患
CIC: 循環する免疫複合体
CL: クロピドグレル(clopidogrel)
CRP: C−反応性蛋白質
DI: デュピリダモル(dipyridamole)
HDL: 高密度リポプロテイン−コレステロール
LA: ラロピプラント(laropiprant)
LDL: 低密度リポプロテイン−コレステロール
MASA: メルドニウムアセチルサリシレート(化学的には、3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエートアセチルサリシレート)
MD: メルドニウム(meldonium;INN)
NA: ニコチン酸、ナイアシン
RA: リウマチ性関節炎
TG: トリグリセリド
TR: トリトンWR1339
WBC: 白血球細胞
【0022】
物質の入手先
NA(Acros Chemicals)、MD(Grindex)、ASA(Acros Chemicals)、LA(MK 0524、Cayman Chemicals)、イン−ビトロ試験用CLビサルフェート(Molcan Corporation)、イン−ビボ試験用CL(PlavixTM;Sanofi-Aventis)、DI(Sigma-Aldrich)。
【0023】
背景
アセチルサリチル酸は、最も広く使用されている薬物であり、その抗凝固性、鎮痛性、抗発熱性、及び抗リウマチ性のために最もよく知られている。このものはまた、心臓血管系リスク患者のために小日用量で使用される(Eidelman RSら、Arch Intern Med., 2003; 163: 2006-2010)。血液血小板は、冠心臓疾患の過程でアテローム性動脈硬化及び致命的血栓形成の発達において中心的役割を演ずる。抗血小板剤は、心臓血管系、脳血管系、及び末梢動脈系を含む種々の疾患の予防及び管理において主要なものとなっている(Meadows TAら、Circ Res 2007; 100 (9): 1161-75)。
【0024】
長年にわたり抗血小板剤(antiplatelet agent)として知られているが、ASAは今や、心臓学において、その抗炎症性のために益々認識されてきている(Ridker PMら、N Engl J Med 1997; 336: 973-979)。したがって、C−反応性蛋白質(CRP)のごとき炎症マーカーの臨床的測定はアテローム性動脈硬化(atherosclerosis)の指標を一部反映するであろう(Buckley DIら、Ann Intern Med 2009; 151: 483-495)。現在の証拠は、CRPレベルの低下がCHD事象を予防することを指摘する(Ridker PMら、Lancet 2009; 373: 1175-82)。Rossは、アテローム性動脈硬化は炎症性疾患であると提案している(Ross R, N, Engl J Med 1999; 340: 115-126)。ASAはアテローム性動脈硬化の炎症的観点に関連するのみならず、低脂質血症(hypolipidemia)を誘導することにより直接貢献するであろう(Kourounakis APら、Experimental and Molecular Pathology 2002, 73: 135-138)。
【0025】
NAは、アテローム性動脈硬化を予防しそして心臓血管事象を減少させる効果的な脂質改変剤である。NAは、様々なリポ蛋白質を有し、そして内皮機能を改良し、炎症を減少させ、プラークの安定性を増加し、そして血栓を減少させる抗−アテローム性血栓症効果を有する(Rosenson RSら、Atherosclerosis 2003; 171: 87-96)。
【0026】
NAは、トロンボプラスチン(thromboplasitin)及びピツイトリン(pituitrin)により誘導される血管内クロットを殆ど全て予防し、それが血栓溶解効果を有することが示される(Baluda VPら、Probl Gematol Pereliv Krovi, 1977; 22(8): 29-35、Chekalina SIら、Sov Med 1982(5): 105-8)。ナイアシンは、血餅形成の危険性を低下させる(Chesney CMら、Am Heart J, 2000; 140: 631-36)。
【0027】
NAは、血小板凝集(platelet aggregation)を阻害する(Lakin KM, Farmakol Tokskol, 1980; 43(5): 581-5)。NAはイン−ビトロで、凝集を穏和に阻害しそして殆どインタクトな主要血小板受容体発現を伴って有意なプロスタグランジン放出を刺激することにより、血小板活性に影響を与える。NAの効果はユニークであり、他の既知の抗血小板剤と異なり、そして療法的組合せのための潜在的な機会を示唆する(Sereburuany VLら、Thrombosis and Haemostasis, 2010(印刷中))。
【0028】
NAは、アテローム性動脈硬化を予防しそして心臓血管事象を減少させる効果的な脂質改変剤である(Drexel H, European Heart Journal Supplements, 2006; Vol.8, Suppl F: F23-F29、Savel'ev AA, Shershevuski MG, Klin Med (Rus) 1996; 74: 48-52)。
NAは3種類の剤形[即放出性(immediate release)、持続放出性(extended release)又は長期放出性(long acting)]で得られる。即放出性NAは、不所望の皮膚充血及び血中グルコースレベルの上昇と関連する。長期放出性NAは、減少した皮膚充血と関連するが、しかし肝毒性効果とも関連する。持続放出性は、少ない潮紅又は皮膚充血(flushing)及び低い肝毒性リスクと関連する(McKenney J, Arch Intern Med 2004; 164(7): 697-705)。
【0029】
NAの臨床的使用は潮紅又は皮膚充血(flushing)により制限されてきている。持続放出性ナイアシンは、潮紅又は皮膚充血(flushing)事象のコントロールを助けることができる(Guyton JRら、J Clin Lipidol, 2009; 3: 101-108)。ASA及び他のNSAIDは、NAの投与の前のNSAIDの投与を確保するために他の医薬組成物について、潮紅又は皮膚充血(flushing)のコントロールのために提案されている(WO 9632942、WO 9906052、WO 2009142731)。
【0030】
最近、プラスタグランジンD2(Guyton JRら、J Clin Lipidol, 2009; 3: 101-108)受容体サブタイプ1に対する特異的アンタゴニスト、ラロピプラント(laropiprant)が、NA誘発潮紅又は皮膚充血(flushing)低下剤として提案されている(Lai Eら、Clin Pharm Ther 2007; 81: 89-857)、Davidson MH, Am J Cardial 2008; 101 [supp]: 14B-19B)。ラロピプラントは潮紅又は皮膚充血(flushing)の頻度を低下させるであろうが、この副作用を完全には除去しない。ラロピプラントは、脂質に対するナイアシンの効果及びナイアシンの他の副作用を変化させない。したがって、ナイアシンとラロピプラントとの組合せは、抗投与量でのナイアシンの投与を可能にし、そしてそれ故に当該薬物の完全な能力を引き出すであろう(Parhofer KG, Vascular Health and Risk Management 2009; 5: 901-908、Olsson AG, Expert Opinion on Pharmacotherapy 2010; 11(10): 1715-1726)。
【0031】
MDは、心臓及び血管にある種の有利な効果を有する医薬である。MDのある種の有利な活性がアテローム性動脈硬化症の動物モデルにおいて発見され(Veveris M, Smilsaraja B, Baltic J Lab Anim Sci 2000; 10, 194-199、Veveris Mら、Eksp Ter 2002; (2): 24-7)、そして臨床で観察された(Karpov RSら、Ter Arkh 1991; 63(4): 90-3)。更に、MDが血小板凝集を阻害することが注目された(Tsrkin VI, Ros Kardiol Zh 2002; 1: 45-52)。実験的動脈硬化後のラビット及びイヌにおけるMDの経口投与の2週間の長い療法的使用は、血栓溶解効果を示した(Logunova Lら、Experim Clin Phamacoter 1991; 19: 91-98 (Rus))。血栓症の限定又は予防に対するMDの予防的効果についてのデータは知られていない。
【0032】
実施例4. MASAの急性毒性の決定
MASAの急性毒性をp.o.導入により、Wisterラット及びICRマウスにおいて決定した。
方法
体重20〜22gの雄性IRCマウス及び体重200〜230gのWisterラットを用いた。急性毒性を決定するため、各投与量を6匹の動物に与え、各次の投与量を500 mg/kg増加した。LD50は、Karberに従って、投与量間隔(dose confidential interval)を決定するための改変を伴うAkhilaらCurrent Sci 2007; 93: 917-920の方法(Turner R In Screening Methods in Pharamacology, Acad. Press, New York, 1965, 61-63)により計算した。
【0033】
LD50は下記のようにして計算した。
LD50=群における全てに対して致命的な最少投与量−Σ(a x b)/N
N: 各群における動物数
a: 投与量差
b: 平均死亡数(隣接する2群における死亡数/2)
【0034】
MASAを0.2%寒天に即座に溶解し、そしてカテーテルを通して口から胃に導入した。こうして導入された液体の体積はマウスについては0.5mLを超えず、ラットについては2mLを超えなかった。導入後10日まで動物を観察した。
結果
マウスに対するMASAの急性毒性についての結果を表1及び表3に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
MASAの導入の後、毒性効果は最初の数時間で現れ、そして動物の一部は最初の2日間で死亡した。生存した動物の毒性症状は次第におさまり、そして5〜8日後、これらの動物は同じ投与量の対照と変わらなかった。したがって、マウスについてのp.o LD50は2167(1642−2860)mg/kgであることが見出された。
ラットについてのMASAの急性毒性p.o.を表2及び表3に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
1500mg/kgでのMASAのラットへのp.o.導入は、摂食挙動及び動きに一過性の混乱を惹起したが、全ての動物が生存した。したがって、ラットp.o.についてのMASAのLD50は2250(1720−2944)mg/kgであった。
【0039】
要約
急性毒性研究が示すところによれば、MASAは低毒性の物質である(マウス及びラットについて、LD50>2000mg/kg p.o.)。MASAの急性毒性は、Boeheringer Ingelheim Pharamaceuticals, Inc.、Acros Chemicals 及びBayer-Aldrichのより、マウスについて250mg/kg、ラットについて200mg/kgとして与えられており、他方Bayer AGはラットp.o.のLD50が>1100mg/kgであるとしており、従ってMASAはASAに較べて毒性が低い。
【0040】
【表3】

【0041】
実施例5. ASA及びMDの比較実験におけるMASAの鎮痛、抗発熱及び抗−炎症効果の研究
MASAの鎮痛、抗発熱及び抗−炎症効果の研究において、NSAIDの評価に広く使用されている方法を用いた。Mongrel white研究室マウス及びWisterラットを実験において使用した。動物を、22±1℃、相対湿度60±5%、及び12/12明/暗サイクル、飼料及び水に自由に接触可能の環境調節室において飼育した。
経口経路においてMASAの効果をASA及びMDの効果と比較するため、下記の群を形成した。
【0042】
群 処理
ASA50 ASAを50mg/kg投与
ASA100 ASAを100mg/kg投与
MD100 MDを100mg/kg投与
MASA75 MASAを75mg/kg投与
MASA150 MASAを150mg/kg投与
MASA300 MASAを300mg/kg投与
被験物質の水溶液を即座に調製した。各実験シリーズにおいて、同じ体積の水をp.o.投与した対照群を用いた。
【0043】
統計処理
データをマイクロソフトエクセル2007ソフトウエアーにより解析し、そして結果を平均±SEMとして表した。異なる群の平均結果を、反復比較を用いるANOVAに従って単係数解析(Turkeyテスト)により比較した。P<0.05を有意と考えた。
【0044】
5.1. 鎮痛活性の研究
5.1.1. マウス苦悶テストによる鎮痛活性の評価
方法
有害受容反応を、化学的刺激法−苦悶テスト(Charaborty Aら、Indian J of Pharmacology 2004; 36(3): 148-150)により評価した。動物に、0.25mLの0.75%酢酸水溶液をi.p.投与した。注射の後、動物を別々に特殊な箱にいれ、そして10分間観察した。腹部収縮の数を記録した。鎮痛効果は、10分間における腹部修飾の数により表される。被験物質は、刺激物質の30分前に導入した。鎮痛のレベルは、下記のように計算される鎮痛係数として表した。
【0045】
A=(Cc−Ct)/(Cc)・100%
A: 鎮痛係数
Cc: 対照群における収縮の数
Ct: 試験群における収縮の数。
結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
MASAは投与量依存的に陽性の効果を示した。試験結果はASA50及びMASA300(P<0.0005)で観察され、他方MDは陰性であった。MASAの鎮痛係数は7.3であった(8動物中5動物のみが痛反応を有した)。
5.1.2. ホットプレートテストによる鎮痛効果の評価
方法
ホットプレート実験は、文献(Belyakov VA, Solov'ev IK. Narcotic Analgesics, Nizhny Novgorod, 2001 (Rus))に記載されているようにして、17〜26gの体重を有する52匹のマウスにおいて行った。ホットプレートテストは、中枢作用鎮痛剤をスクリーニングするために行われる(Osterberg Aら、J Pharmacol Exper Ther 1958; 122: 59)。被験物質の水溶液を試験の前30分又は60分にp.o.導入した。足のなめるまでの時間を記録した。鎮痛活性の指標は熱刺激に対する反応の遅れであった。
結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
実験データが示すところによれば、MASA150及びMASA300並びにMD群は30分及び60分後に有意な鎮痛効果を示す。ASAは60分後のみに痛み閾値を上昇せしめ、効果の開始が遅いことが示された(表5)。
【0050】
6. 被験物質の抗発熱活性の比較評価
6.1. 発熱剤の注射により、ラットに対する予防的抗発熱効果の評価
方法
実験は、100μgの投与量での発熱剤(pyrogenal)(Gamalei State Research Institution Moscow, ロシア)の胃内注射により、体重165〜182gのラットに対して行った(Shwarz GY, Syubaev RD, Vedomosti NCEG lekarstvennyh sredstv MZ RF 2000; 1: 44-50 (Rus))。発熱剤の注射の1時間前に被験物質をp.o.投与した。直腸温度を、発熱剤の注射の前(ベースライン)及び注射の3時間後に、電気式温度計(TERMO)により測定した。抗発熱活性は、発熱剤の注射後2時間での過熱反応(hyperthermic reaction)の低下によって評価した。これは、反応のピーク付近での公表されたデータ(10)(表6)とよく相関する。周囲温度は20〜21℃に維持された。
データによれば、対照群動物の体温は徐々に上昇し、2時間で最高に達しそして更に1時間、正常より高くあり続けた。
【0051】
【表6】

【0052】
被験物質は、動物の正常な体温に実質的な影響を与えなかったが、発熱剤により誘導された高熱を実質的に低下させた。
【0053】
【表7】

【0054】
高熱モデルにおいて、発熱剤の注射により誘導された体温の上昇はASA50群及びMASA300群において完全に予防された(表7)。MD100群、MASA75群及びMASA150群において、抗高熱効果は顕著でなかった。
【0055】
6.2 発熱剤の注射によるラットに対する予防的抗発熱活性の評価(治療態様)
方法
療法的(治療)態様における被験物質の抗発熱効果を、投与量100μgの発熱剤を注射することによる高温誘導を伴う、体重182〜205gの48匹のラットに対して研究した(Shwarz GY, Syubaev RD, Vedomosti NCEG lekarstvennnyh sredstv MZ RF 2000; 1: 44-50 (Rus))。上昇した体温の記録の直後の発熱剤の注射の2時間後、被験物質をp.o.投与した。発熱剤のi.m.注射の前(ベースライン温度)、高温のピーク(発熱剤対照)において、被験物質による処理の30分後に、すなわち発熱剤の注射の2.5時間後に、電気温度計(TERMO)により直腸温度を測定した。実験室の周囲温度は20〜22℃であった。
結果を表9に示す。
【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
発熱剤は実験に使用された全ての動物において、体温の有意な且つ類似の上昇を惹起した(発熱剤対照とベースラインとの比較、表9)。MD以外の被験物質による処理は、ベースライン及び発熱剤対照に較べて体温の低下を惹起した。体温の低下が対照及びMD100に較べて有意であり、比較的大きな体温低下がMASA300群及びASA50群において観察された。ASA50とは異なり、MASA300群において、体温の低下は発熱剤対照に対しても有意であったことに注目すべきである。これは、MASAのかなりのそして迅速な抗発熱効果を示し、臨床的に価値があるかもそれない。
【0059】
7. 被験物質の抗−炎症活性の比較評価
7.1. 急性炎症浮腫モデルに対する研究
方法
実験はカラゲネン(carrageneen)試験(Winter Cら、Prec Soc Exptl Biol and Med 1962; III(3): 544-547; Wei Jiaら、Journal of Ethnoparmacology 2003(89): 139-141; Sutharson Lingaduraiら、African Journal of Traditional, Complementary and Alternative Medicines, 2007, 4(4): 411-416)を用いて、体重226〜274gの42匹のラットに対して行った。食塩水(0.1mL)中カラゲネン(Sigma)溶液の1回の注射をラットの後ろ足に導入した。カラゲネンの注射の30分後、被験物質をp.o.導入した(カテーテルを通してラットの胃に)。ベースライン及びカラゲネンの注射の4時間後に、足の体積をオンコメーターにより測定した。
【0060】
予防のパーセント(浮腫の阻害)を下記の式に従って計算した。
P(%)=(1−Vo/Vc)×100
P: 予防%(浮腫の阻害)
Vo: ベースラインの足体積と実験条件での足体積との差
Vc: 対照群における同様の差
結果を表10に示す。
【0061】
【表10】

【0062】
急性炎症性浮腫モデルにおいて、対照群における影響された足の体積は約1.6倍増加した。炎症過程に対する最も顕著な効果がMASA150群において観察され、対照群に対する予防係数は93%であった。MASA300群において、活性はわずかに低く、浮腫は91%で低下した。浮腫の低下はまた、MD100群及びASA50群でも観察された。
【0063】
7.2. 予防モデルにおけるカラゲネン浮腫に対する被験物質の抗−炎症活性の研究
方法
体重178〜220gの42匹のラットにおいて確立された方法(Okunevich IV, Ryzhenkov VE, Patol Fiziol Eksp Ter, 2002(2): 24-7 (Rus))によりカラゲネン浮腫を研究した。被験物質は5日間p.o.導入した。被験物質の導入の直後の6日目に、ラットの後足に1%のカラゲネン溶液0.1mLを注射した。ベースライン及びカラゲネンの注射の4時間後に足の体積を測定した。予防係数を前項に示したようにして計算した。被験物質の6回の予防的導入が、未処理の動物に較べて浮腫の減少を惹起した(表11)。
【0064】
【表11】

【0065】
MASA150群及びMASA300群において有意な予防活性(94%)が観察され、この炎症モデルにおけるMD100(34%)及びASA50(70%)よりも高い(表11)。
炎症過程の強度を評価するため、実験の最後(カラゲネンの注射後5時間)に、アナライザー(INTEGRA 400+)での標準的方法によりCRPレベルを決定した。血中CRPの決定の結果を表12に示す。
【0066】
【表12】

【0067】
このデータに従えば、カラゲネンはラットの血液中のCRPの増加を惹起した。ASA100群において、CRPレベルの上昇は50%減少した(表12)。予想外にも、MASA150群においてCRPレベルの上昇は有意の少なかった(対照に対して僅かに33%)。これは、MASAが臨床的炎症過程に正の効果を有しうるという意見を支持する。
【0068】
実施例8. ASA及びMDとの比較におけるMASAの抗リウマチ活性の研究
臨床的証拠が示すところによれば、関節リウマチを有する患者はアテローム性動脈硬化症及び心臓血管系疾患に傾く(Nasonov EL、Vestn Ross Akad Nauk 2003(7): 6-10)。長期間の関節リウマチを有する患者は、最近疾患に罹った同じ年代の患者に較べて多くがアテローム性動脈硬化を有する。全身性炎症は、心臓血管系疾患の年齢−関連リスクを増幅する可能性がある(Del Rincon Iら、Atherosclerosis 2007; 196(2): 354-360)。
【0069】
関節リウマチは、リウマチ状態の中でトップの位置を占める。ヒト関節リウマチの最も適当な実験動物モデルは、ラットの後足パッドへのFreund'sアジュバントの注射により誘導されるアジュバント関節炎のモデルである。これは、抗リウマチ剤のスクリーニングにおいて広く使用されている(Wei Jiaら、Journal of Ethnopharmacology 2003(89): 139-141; Sutharson Lingaduraiら、African Journal of Traditional Complementary and Alternative Medicines, 2007, 4(4): 411-416)。
【0070】
方法
本発明者らの実験は、MD及びASAとの比較においてMASAのアジュバント関節炎の進行に対する影響を試験するために計画された。実験は最初の体重153〜185gを有するWisterラットにおいて行われた。ラットは、空調室中で22±1℃、相対湿度60±5%、及び明/暗サイクル12/12にて飼育した。各標準的ケージに7匹のラットを、飲用水及び粒状標準飼料に自由にアクセスできるようにして収容した。全ての実験は1987年11月24日のEuropean Community Council's Directive(86/609/EEC)に従って行われた。動物の犠牲を最少にし、そして使用する動物の数を減らすようにあらゆる努力が行われた。
【0071】
慢性アジュバント関節炎の進行を誘導及び評価するための改変された標準的手順が使用された(Bellavite P, Ortolani R, Conforti A, Immunology and Homeopaty, 3. Experimental Studies on Animal Models, Advance Access Publication 2. 05. 2006, 171-186)。完全Freund'sアジュバントの溶液を、ラットの後足パッドに0.1mL、腹腔内に0.05mL注射した。
被験物質の溶液は即座に調製された。ASAは0.1%及び1%水溶液として、MDは1%水溶液として、そしてMASAは0.25%、1%及び2%水溶液として使用された。
【0072】
下記の動物群を形成した(N=7)。
処理
群1 そのままの動物、対照として使用(対照)
群2 アジュバント関節炎が誘導された動物(AdA)
群3 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日10mg/kgのASAを
投与した動物(ASA10)
群4 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日100mg/kgのASAを
投与した動物(ASA100)
群5 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日100mg/kgのMDを
投与した動物(MD100)
群6 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日25mg/kgのMASAを
投与した動物(MASA25)
群7 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日100mg/kgのMASAを
投与した動物(MASA100)
群8 アジュバント関節炎の導入の後28日間にわたり毎日200mg/kgのMASAを
投与した動物(MASA200)
対照群の動物及びAdA群の動物には、試験群と同じ実験計画で、被験物質ではなく水をp.o.投与した。
【0073】
統計処理
データをマイクロソフトエクセル2007ソフトウエアにより解析し、そして結果を平均±SEMとして表した。異なる群の平均結果を、反復比較を用いてANOVAによる単因子解析(Tukeyテスト)を用いて解析した。P<0.05は有意性ありと考えた。
【0074】
結果
関節炎の臨床的症状の動態を14日目及び28日目に調べた。被験物質の効果を下記の指標により評価した。
1.関節炎の局所症状の評価−足の体積及び足首関節の回転
2.血球数(WBC)の評価
3.生化学試験(CRP)の評価
4.免疫学的指標(CICのレベル)の評価
【0075】
浮腫、すなわち後足の体積をオンコメーターで測定した。予防のパーセンテージ(浮腫の阻害)を、式:P(%) = (Vc - VtyVc x 100に従って計算した。
Vc: 対照群Vtの足の体積
Vt: 試験群の足の体積
P: 阻害%(浮腫の阻害)。
【0076】
血液学的指標は、血液学的分析機《PENTRA 120》において標準的方法により決定し、CRPは《INTEGRA 400+》により決定した。血液血漿中のCIPのレベルは、エチレングリコールを用いて分光光度計により決定した。
【0077】
Freundのアジュバントの注射の後、試験群の全ての動物は慢性炎症を生じさせ、ラットは取り扱いの際に非常に攻撃的であり、混乱した。しかしながら、全ての群の摂食挙動は対照とかわらなかった。全ての群において、体重の増加は対照群と実質的に変わらなかった。
表13及び表14において、関節炎の局所症状のデータは、14日目及び28日目の足の体積(軟組織の浮腫を特徴付ける)及び足首関節のサーキット/体積であった。
【0078】
【表13】

【0079】
表13のデータに従えば、14日目に試験群の全ての動物が軟組織の顕著な浮腫を生じさせた。14日間にわたる処理は、浮腫の発達に比較的少なく影響した。しかしながら、群MASA100及びMASA200の動物はASA10群の動物に較べて有意に少ない顕著な浮腫を有していた。14日目のASA10及びMDは浮腫の発達を予防しなかったが、しかしAdA群に較べて一層大きな体積を有した(負の保護−7%)。28日目の全ての投与量のMASA及びasa100は、浮腫の発達から有意に保護した(保護%がそれぞれ、41、45、24及び32 %)。MASA100が、ASA10、asa100及びMDに較べて有意によい保護を示したことは注目すべきである。
【0080】
【表14】

【0081】
足首関節データの解析(表14)が示すところによれば、14日目にMASA200のみが関節炎障害の進行に対して有意に保護した。28日目に、MASA25、MASAlOO及びASAlOOにより有意な保護が示された。この実験設定においてMASA100により比較的最高の保護が示された。本発明者らは、28日目に浮腫のレベル(表13)及び足首関節における関節炎障害(表14)が少なくなることを確立した。MASA100は、ASA又はMDに較べて有意に一層効果的であった。WBCの評価により、Freundアジュバントの影響の下に増加(白血球)を示した(表15)。白血球は炎症過程の特徴的な性質を有する。
【0082】
【表15】

【0083】
試験物質の使用は、AdA群に較べてWBCの低下を惹起し、抗炎症活性が示された。白血球レベルに対する被験物質の効果の間に統計的に有意な差は無いが、14日目にMASA100により比較的高い活性が示されたが、しかしMASA200によっては28日目に示された(表15)。炎症過程の評価のため、14日目及び28日目のCRPのレベルが決定された。CRPのレベルは炎症過程の間に増加することが知られている。
【0084】
【表16】

【0085】
表16のデータに従えば、14日目に、全ての試験群が炎症過程の表示としてCRPの上昇したレベルを示した。本発明者らの実験設定において、MASA200のみが、14日目にCRPの増加からの有意な保護を示した。14日目において、MASA200がMASA100に較べて実質的に良好な効果を有したことは注目すべきである。28日目に、MASA25及びMASA100により有意に良好な保護が示され、これはASA10より良好である(表16)。
CICfレベルが、標準的な分光光度法(Baranovskii PV, Rudyk BI, Laboratomoe delo 1982; 12: 35-39 (Rus))により決定された(表17)。
【0086】
【表17】

【0087】
14日目及び28日目に、試験群のCICレベルは対照群より高かった。14日目に、CICレベルはAdA群に較べてASA10群及びMASA25群のみにおいて低かった。被験物質を投与された動物における28日目のCICは、ASA100を除き、対照に近かった。
【0088】
実験の間、14日目のCICレベルの増加ASA100、並びにMASA100及びMASA200群において観察された。28日目に、MASA100群及びMASA200群においてCIAレベルが標準化された。血清中のCICレベルは種々の病的免疫条件下で観察することができる。CICの実質的な増加が、全身的状態を含む免疫過程において観察され、CICレベルは病的過程の強度を示す(Bier O ら, Fundamentals of immunology, New York, Heidelberg, Berlin, p. 442)。種々の投与量におけるMASAによる長期間治療は、CICレベルを正常まで低下させた。十分に活性な免疫においてCICの主要部がKupferの細胞により除去され、そしてCICレベルの低下が陽性効果として認められる。MASA100及びMASA200におけるMASAの使用が28日目におけるCICに対する効果の正常化を示すという事実は、種々の投与量におけるMASAの長期間使用が、ASAの増加した投与量に較べて、臨床的に一層有望であろうことを示す。
【0089】
実施例9. 抗−高脂質血症特性の研究
アテローム性動脈硬化は、増加する冠心臓疾患症状を伴う増加する臨床的インパクトと共に多要素的過程である(Berliner JA ら、Circulation 1995; 91: 2488-2495)。アテローム動脈硬化症過程における実質的な役割は、炎症及びそれに対する生体の反応により演じられる(Ross R, Am Heart J 1999;138;S419-S420)。臨床的観察が示すところによれば、抗−炎症療法がアテローム性動脈硬化の現れを低下せしめる(Stoller DK ら、J Surg Res 1993; 54: 7-11)。実験データは、少なくともCOX-1阻害物質の間で、抗−炎症活性と脂質低下活性との間のかなりの相関を確認する(Kourounakis AP ら、Exper MoI Pathol 2002; 73: 135-138)。本発明者らは、同じ投与量においてASA及びMASAの脂質低下活性を比較した。
【0090】
9.1. ラットの急性高脂質血症モデルにおける脂質レベルに対する被験物質の比較効果
方法
250〜270gの体重を有する雄性Wistarラットを使用した。動物を、22±1℃、60±5%の相対湿度、12/12の明/暗サイクルで、水と飼料に自由にアクセスできるようにした空気調節された室に6〜8群として飼育した。Kourounakis AP ら、Exper MoI Pathol 2002; 73: 135-138に記載されているTriton WR1339 (TR)により、急性実験高脂質血症/高コレステロール血症を誘導した。一晩絶食させた後のラットに、等張食塩水に溶解したTRを250 mg/kgの投与量でi.p.投与した。被験物質の溶液及び水を、下記のようにTRの導入前1時間及び導入後20時間に、対照動物及びTR群動物に導入した。
【0091】
生化学的分析のための血液を、次の日(TRの導入後24時間)に、エーテル麻酔下での心臓穿刺により集めた。遠心分離により血清を分離しそして総コレステロール、HDL、LDL及びTGのレベルを市販のキットにより分析した。
3シリーズの実験を行った。
【0092】
統計処理
データをマイクロソフトエクセルソフトエアーにより解析し、そして結果を平均±平均の平均標準誤差として表した。異なる群の平均結果を、ANOVA及びt-Studentテストに従う単因子解析を用いて比較した。P<0.05を有意差と考えた。
【0093】
Iシリーズ−ASA、MD及びMASAの比較
処理 動物数
対照 6
TR TR 250 mg/kg 8
ASA45 TR 250 mg/kg+ASA 45 mg/mg 6
ASA90 TR 250 mg/kg+ASA 90 mg/mg 8
MD150 TR 250 mg/kg+MD 150 mg/kg 8
MASA75 TR 250 mg/kg+MASA 75 mg/kg 6
MASA150 TR 250 mg/kg+MASA 150 mg/kg 8
MASA300 TR 250 mg/kg+MASA 300 mg/kg 8
【0094】
結果
TRを投与されたラットは顕著な高コレステロール血症及び高脂質血症を生じさせ、総コレステロール、LDL及ぶTGのレベルは対照群のそれらとは有意に異なった(総コレステロールは6〜7倍増加、TGは30倍及びそれ以上)(表18を参照のこと)。ASA療法は、特に90 mg/kgの投与量において、総コレステロール、LDL及びTGの増加を限定したが、HDLのレベルを有意に変化させなかった。本発明者らの実験セッティングにおいてMDは、TRにより惹起された脂質レベルの変化から有意に保護しなかった。MASAによる処理は、TRにより誘導された高脂質血症/高コレステロール血症からの投与量依存的保護を生じさせた。
【0095】
投与量75 mg/kgでのMASAはASA45と異ならなかったが、MASA150は、TR効果からの保護において、ASA45及びMD150よりかなり効果的であった。MASA300はASA45に較べてかなり良好であり、そしてASA90は総コレステロール、LDL及びTGのレベルを低下させた。このことが示すところによれば、MASAは高コレステロール血症及び高脂質血症を予防及び/又は治療するのに有用である可能性があり、そしてその抗−炎症活性を考慮すれば、アテローマ性動脈硬化及び脂質代謝の混乱及び炎症により生ずる他の状態の予防及び/又は治療に有用である可能性がある。
【0096】
【表18】

【0097】
II シリーズ−ASA、MASA、NA及び組合せASA+NA、MASA+NAの比較
処理 動物数
対照 6
TR TR 250 mg/kg 8
ASA45 TR 250 mg/kg+ASA 45 mg/mg 6
MASA TR 250 mg/kg+MASA 150 mg/kg 6
NA TR 250 mg/kg+NA 50 mg/kg 7
ASA+NA TR 250 mg/kg+ASA 45 mg/kg+NA 50 mg/mg 7
MASA+NA TR 250 mg/kg+MASA 150 mg/kg+NA 50 mg/kg 7
【0098】
結果
本発明者らの実験セッティングにおいて、TRに誘導された脂質(コレステロール、LDL及びTG)の変化に対して有意な保護を示した(表19を参照のこと)。ASAとNAの組合せは、脂質のレベルに対するNAの効果を有意に変化させなかった。驚くべきことのは、MASAとNAの組み合わせはNA50の効果をかなり増強し、そしてTRにより惹起されたTGレベルの上昇に対するMASAの保護効果を抑制した(表19)。MASAとNAとの組合せ使用はまた、LDLレベル及びTGレベルに対するASA45+NA50の正常化効果よりも有意に一層効果的であった。
【0099】
【表19】

【0100】
III シリーズ−SI、MD、MASA及び組合せSI+MD、SI+MASAの比較
処理 動物数
対照 6
TR TR 250 mg/kg 8
ASA45 TR 250 mg/kg+ASA 45 mg/mg 6
SI TR 250 mg/kg+SI 5 mg/kg 7
MD TR 250 mg/kg+MD 150 mg/kg 6
MASA TR 250 mg/kg+MASA 150 mg/kg 6
SI+MD TR 250 mg/kg+SI 5 mg/kg+MD 150 mg/kg 7
SI+MASA TR 250 mg/kg+SI 5 mg/kg+MASA 150 mg/kg 7
結果
本発明者らの実験セッティングにおいて、投与量5 mg/kgのSIは、TRにより誘導された脂質(コレステロール、LDL及びTG)のレベルの変化に対する有意な保護を提供した(表20を参照のこと)。SIと被験物質との組合せは、脂質レベルに対する正常化効果を増強した。SIと組み合わされたMASAは、TRにより惹起されたLDL及びTGレベルの上昇に対する反作用においてMD+SIに較べて有意に一層効果的であった(表20)。MDとスタチン類との組合せがWO 2006/099244に何らのデータを伴わないで提案されている。スタチン類とASAとの組合せ使用は、これらが薬理学的及び化学的に不適合であるので、特別な医薬組成を必要とし(米国特許第6,235,311)、したがって相乗性は得られない。
【0101】
【表20】

【0102】
要約
上記の結果は、高コレステロール血症及び高脂質血症の予防及び治療におけるMASAの可能性を示している。MASAの抗−炎症活性を考慮すれば、MASAはASA及びMDに較べて、アテローム性動脈硬化及び炎症により生ずる他の状態の予防及び治療において効果的である可能性がある。MASAとNAとの組合せ使用は、ASA+NAに較べて、実験的に上昇させた脂質レベルに対する別々の物質の陽性効果を増強する。SIと組合されたMASAは、TRにより惹起されたLDL及びTGのレベルの増加に対する反作用において、SA単独に較べて効果的であるのみならず、MD+SIに較べて有意の一層効果的である。
【0103】
9.2. ラット慢性高脂質血症モデルにおける脂質レベルに対するNA及びMASAの別々の及び組合せの影響
方法
雄性Wistarラットを使用した。動物を、22±1℃、相対湿度60±5%、及び12/12明/暗サイクルで、水及び飼料に自由にアクセスできるようにした空気調節した部屋で飼育した。動物の最初の体重は220〜240gであった。Levine及びSaltzman(Levine S, Saltzman A, J Pharmacol Toxicol Meth 2007; 55: 224-226)により記載された方法を用いて、TRにより慢性(半慢性)高脂質血症/高コレステロール血症を誘導した。動物に250 mg/kg のTR溶液を、尾部静脈を通して1週間に3回3週間わたって投与した。対照群及びTR群のための被験物質の溶液及び水を、TR溶液の注射の1時間前に1日1回p.o.導入し、あるいは下記のスキームに従って血液サンプルを採取した。
【0104】
処理 動物数
対照 10
TR TR 250 mg/kg 14
TR+NA TR 250 mg/kg+NA 50 mg/kg/d 14
TR+MASA Triton 250 mg/kg+150 mg/kg/d 14
TR+NA+MASA Triton 250 mg/kg+NA 50 mg/kg+MASA 150 mg/kg/d 14
【0105】
生化学分析のための血液を、1、2及び3週間後(TR注射の次の日)に、エーテル麻酔下での心臓穿刺により得た。遠心分離により血清を分離し、そして市販のキットにより総これステロール、HDL、LDL及びTGのレベルについて分析した。
統計処理
データをマイクロソフトエクセルソフトエアーにより解析し、そして結果を平均±平均標準誤差として表した。異なる群の平均結果を、ANOVA及びt-Studentテストに従う単因子解析を用いて比較した。P<0.05を有意差と考えた。
【0106】
結果
TRの反復注射が、対照と比較しての総コレステロール、LDL及びTGレベルの有意な増加により特徴付けられる顕著な且つ安定した高コレステロール血症及び高脂質血症を生じさせた(表12)。NA療法は、特に第1週において有意に、総コレステロール、LDL及びTGの増加を制限し、しかし第2週及び第3週においてのみHDLレベルを上昇させた。MASAはNAと殆ど同様に総コレステロール及びLDLのレベルを低下させそしたHDLのレベルを上昇させたが、TRにより誘導されたTGの増加をNAより少なく回避した(表21を参照のこと)。予想外なことには、NA+MASAの組合せ使用は、3週間後のNA又はMASAの単独に較べて実質的に良好であり、総コレステロール、LDL及びTGのレベルを低下させそしてHDLのレベルを上昇させた。したがって、NA+MASAの組合せは、高コレステロール血症及び高脂質血症の予防及び/又は治療のために有用であると予想される。
【0107】
【表21】

MASAとNAとの組合せ使用は、物質の単独の作用に較べて有意に一層効果的である。
【0108】
実施例10. 血小板凝集及び血栓の形成に対する被験物質の影響
10.1. 血小板凝集
ASAは最も広く使用されている抗血小板剤の1つである(Miner J ら、Tex Heart Inst J 2007; 34(2): 179-186)。ASAは、抗炎症剤としてNAと組合されており(米国特許第3,312,593号)、そして抗血小板剤として組み合わされている(WO 9632942)。多くの他の剤及びそれらの組合せが知られている。MDが心臓の調子を正常にし、血小板の凝集を阻害し、そして脂肪酸を酸化し、そして心筋虚血の間に酸素消費を最適化するじことは確立されている(Tsirkin VI, Ros Kardiol Zh 2002; 1 :45-52)。
【0109】
NAはまた、血小板凝集をわずかに阻害する(Lakin KM ら、Farmakol Toksikol, 1980, 43(5): 581-5 (Rus))。典型的な抗血小板剤でるクロピドグレル(clopidogrel)は単独で(米国特許第4,529,596号、第4,847,265号、第5,576328号)又はスタチンと組合せて(WO 9804259)又はASAと組合せて(WO 9729753)使用される。更に、抗血小板剤ジピリダモル(dipyridamole)は、ASAと組合せることができる(Halkes PH ら、Lancet 2006, 367(9523): 1665-73)。臨床的経験は、種々の剤の組見合せのより高い多彩性を指摘している。
【0110】
方法
血小板凝集を、マルチプレート上での全血インピーダンスアグロメトリー(impedance aggregometry)により研究した(Multiple Platelet Function Analyzer, Dynabyte Medical, ドイツ) (Toth O ら、Thromb Haemost 2006; 96: 781-788; Velik-Salchner C ら、Anesth Analg 2008; 107: 1798-1806)。イン−ビトロ実験のための血液サンプルを、ASA又は他のいずれの抗血小板剤も投与されたこのない健常な提供者B(37歳)から、ヒルジンにより被覆されたプラスチックチュウブ(Dynabyte Medical, ドイツ)に集め、そして収集ご30分〜4時間における測定に使用した。エクス−ビボ実験において、血液を、先行する3日間に被験物質によりp.o.処理された麻酔されたラットから、ヒルジンで被覆されたプラスチックチューブ(Dynabyte Medical,ドイツ)に集めた。
【0111】
測定は、改変されたDynabyte Medicalのプロトコールに従って行った。等張塩化ナトリウム溶液(0.3 ml、又は試験される化合物を伴う食塩水(それぞれにつき最終濃度10-4 mmol/ml))を37℃に前加熱し、そしてピペットで試験セルに移し、そしてヒルジンにより抗凝固処理された全血サンプル0.3mLを加えた。37℃にて5分間のインキュベーションの後、適当なアゴニスト溶液(Dynabyte Medical, ドイツから入手)を添加することにより測定を開始した。
【0112】
アゴニスト溶液
1)アデノシン二リン酸(ADP)−ADP-テスト:ADPは、ADP受容体(P2Y12及びその他)による血小板の活性化を刺激する。
2)アラキドン酸(AA)−ASPI-テスト:AAによる活性化−シクロオキシゲナーゼの基質が、強力な血小板アゴニッストであるトロンボキサンA2を生成する。
3)ADP HS テスト(ADPとの組合わせにおけるプロスタグランジンEi)。内因性PGEiの添加が、ADP-テストに較べてADP HSテストをクロピドグレル及び関連する物質に対して一層感受性にする。
【0113】
凝集曲線を6分間記録し、そしてDynabyte Medicalのソフトウエアを用いて解析した。本発明者らは、血小板凝集の下記のパラメーターを計算した:
1)Amax:任意単位(AU)で表現される血小板凝集の最高値;
2)AUC:凝集曲線下の合計面積(AU*min)。これは、凝集曲線の合計高さ及びその傾斜により影響され、そして血小板全活性を最も良く表現する。
【0114】
統計処理
結果を平均及び平均の標準誤差(平均±SEM)で示した。差の有意性を予測するため、単因子ANOVAを用いた。無効(null)の仮定が拒絶された場合、post-hoc Student-Newman-Keulsを用いた。
結果
表22に示されるとおり、濃度10-4molのMASAはADPに対して、そして特にAA及びADP+PGEiにより誘導された血小板凝集に対して、有意な保護をもたらした(AUC及びAmaxの有意な低下、表22)。AN(10-4,mmol/ml群)もまたADPにより融合された凝集を低下させた(Amax、表22)。両物質の組合せの作用は、ADP又はPGEiによる惹起されて血小板凝集の有意に高いそして顕著な低下を提供し、これはAUC及びAmexのデータにより示される(表22)。
【0115】
【表22】

【0116】
MASAハASA又はMDに較べて、AAにより誘導される血小板凝集から保護した(表22)。MASA+NAの組合せは、各物質単独、並びにASA+NA及びMD+NAを凌駕して、AAにより誘導される凝集に対して有意に高い活性を示した(表22)。
血小板実験は、ADA又はAAにより惹起される血小板凝集に対して、ジピリダモル(DI)及びDIとASA又はMASAとの組合せを用いて行われた(表23)。DIは抗−血栓及び抗−凝集活性を示す(Mammen EF, Thrombosis Research Supplement 1990 XII, 1-3)。アスピリン単独に対してジピリダモル+アスピリンは、動脈由来の脳虚血後に一層効果的である(Halkes PH ら、Lancet 2006, 367(9523): 1665-73)。
【0117】
【表23】

【0118】
このシリーズにおいて、MASA+DIにより最も高い活性が示され、それはASA+DIのそれに較べて有意高かった(表23)。
【0119】
10.2. 血栓症
実験的動脈血栓症後のラビット及びイヌにおけるMD経口投与の療法的使用は、血栓溶解効果を示した(Logunova L ら、Experim CHn Pharmacoter 1991 ;19: 91-98 (Rus))。血栓症の限定又は予防に対するMDの予防的効果のデータは知られていない種々のメカニズムを介してNAは血栓を減少させる(Rosenson RS ら、Atherosclerosis 1998; 140: 271-80)。
【0120】
方法
本発明者らは、FeCl3により誘導されるラット動脈血栓に基づく実験血栓モデル(Kurz K ら、Thromb Res 1990, 60: 269-280; Wang X, Xu L, Thromb Res 2005, 115: 95-100)を選択した。鉄により介在される化学酸化により開始される組織の損傷は、損傷された領域を血小板付着形は凝集に導き、これに続き凝固の活性化及びフィブリンの付着が生ずる。体重350〜420gの雄性Wisterラットを実験に使用した。動物を、22±1℃、相対湿度60±5%及び12/12の明/暗サイクルにおいて、飼料及び水に自由のアクセスできるようにした空気調節した室内の適切なケージ中で飼育した。
【0121】
全ての実験は、実験動物ケアーに関する1986年11月24日のEuropean Community Council's Directive of 24 November 1986 (86/609/EEC) に従って行われた。動物の苦悶を最小にし、そして使用する動物の数を最小にするように全ての努力が払われた。ラットを無作為に種々の実験群に分け、全ての群は7匹以上の動物を含むようにした。担体又は被験化合物 MD (25 mg/kg)、NA (25 mg/kg)、MASA (10 mg/kg)、ASA (5 mg/kg) 並びに組合せ MD+NA (25+25 mg/kg)、MASA+NA (10+25 mg/kg) 及びand ASA+NA (5+25 mg/kg) を、血栓症の開始の2時間前に経口経路で投与いた。被験物質の1回投与(血栓症の開始の2時間前)と反復投与(1日1回、3日間)とを比較するため並行試験をおこなった。
【0122】
7〜8匹の動物の群に、次の物質を与えた:MASA (10 mg/kg)、クロピドグレル(clopidogrel; CL)(5 mg/kg)、ASA (5 mg/kg) 及び組合せ MASA+CL (10+5 mg/kg) 又は ASA+CL (5+5 mg/kg)。ラットをペントバルブタールナトリウム(50 mg/kg, Ip. 及び 10 mg/kg/h)により麻酔し、そして熱制御された運転テーブル上に置き、実験期間中37℃の体温を維持した。頚動脈の1本を頚部切開により露出し、付着した組織、迷走神経から分離し、そして流れプローブ(電磁的血流メータMFV 1200, Nicon Kohden, 日本)を共通頚動脈の暴露された部分に置き、血流を記録した。
【0123】
15分間の安定化期間の後、FeCl3の15%溶液に浸漬した2片のWhatman濾紙(2×1mm)を局所適用する(血管の外膜表面胃接触)ことにより血栓を誘導した。頚動脈の血栓時間を流血の完全な停止として記録し、そして閉止までの時間(time till occlusion; TTO)として報告する。活性処理群において流血は90分以内の止まらなければ、TTOは>90 分として記録する。
【0124】
更に、血栓実験中にラットの尾部出血時間を測定した。尾を先端から5mmの所で横に切開し、そして当該尾部を即座に37℃の温等張食塩水に浸し、出血が止まるまで観察した。出血の停止を、次の30秒間に出血が再開しない出血の完全停止の時間として定義する。
血栓実験の後、被験物質を3日間投与され麻酔された動物を、エクス−ビボでの血小板凝集テストのために使用した。腹部を開き、大静脈下位からの血液を、ヒルジンで被覆されたプラスチックチューブ(Dynabyte Medical, ドイツ)に集めた。
血液サンプルは収集ぼ30分〜4時間の間に測定に使用した。測定は、改変されたDynabyte Medicalプロトコール(上記、血小板凝固の項を参照のこと)に従って行った。
【0125】
統計処理
結果をマイクロソフトエクセル2007ソフトウエアにより解析した。データは平均±SEMとして表す。実験群間の相違は、反復比較を用いる単因子ANOVA(Tukeyテスト)に従って比較した。P<0.05を有意と考えた。
【0126】
結果
対照群における、FeCl3により惹起される血管血栓の平均時間及び得られる動脈流停止は24.4分であった(表24)。
【0127】
【表24】

【0128】
MASAによる予防的処理はTTOの有意な延長をもたらしたが、しかしASAとは異なり、出血試験においては効果的ではなかった(対照に対してP<0.005)。MASA + NA (10+25 mg/kg) は、MD+NA or ASA+NA を凌駕して、血栓のかなり長い遅れを生じさせた(表24)。ASA及び ASA+NAを用いる場合、TTOの増加は出血時間のそれと平行であるが、MASA又はMASA+NAを使用した場合のTTOの増加は出血時間のそれに較べてかなり多かったことに注目すべきである(表24)。
【0129】
共通の対照との平行実験において、血栓症に対する影響をASA、MASA及びCL並びにこれらの組合せについて試験した。被験物質を、1回投与(試験前2時間)として、又は1日1回、3日間投与した。血栓試験の前2時間に導入されたASA又はCLは、水を投与した対照群と比較して、TTOを有意に延長した(表25)。
【0130】
【表25】

【0131】
MASAの単一投与はCLに較べてTTOの一層有意な増加をもたらした。CLと共に投与されたMASAはTTOを有意に増加させたが、出血時間を僅かにのみ変化させた(表25)。MASA+CLの組合せは、別々の物質及びASA+CLの組合せに較べて、TTOの有意な増加を生じさせたことは注目すべきである。被験物質による反復処理はTTO及び出血時間の更なる増加を生じさせた(表26)。
【0132】
【表26】

【0133】
MASA又はCLによる反復処理は、ASAに較べてTTOに対して有意に高い影響を与えた(162%に対して191%及び194%)が、MASAはCL又はASAとは異なり、出血時間を増加させなかった(表26)。MASA+CL又はASA+CLのよる処理はTTOのかなりのそしてむしろ類似の増加を生成したが、しかしMASA+CLはASA+CLに較べて尾部出血時間に対する影響は少なかった(表26)。
【0134】
エクス−ビボ実験
血栓実験の後、動物の血液を集め、そして凝固パラメータを測定した。10mg/kgの投与量におけるMASAによる3日間の処理は、試験した全ての凝集誘導剤による血小板凝集の有意な減少を生じさせた(表27)。
【0135】
【表27】

【0136】
5 mg/kg/日の投与量で3日間のCLによる処理が、ADP及びPGEi+ADPにより誘導される凝集に対するかなりの保護を生じささるが、AAにより誘導される凝集に対して保護しなかった。ASAは、AAによる誘導に対する有意な保護をもたらしたが、ADPに対して効果的ではなかった(表27)。MASA及びCLの組合せ(10+5 mg/kg/日×3)は、種々の剤により惹起される凝集から比較的最大の保護を提供した(表27)。
【0137】
要約
類似のモル濃度においてMD又はASAかなり良好なMASAは、AAにより誘導される血小板凝集に対して保護する。MASA+NAによる保護は、凝集の全ての誘導剤に対してMD、NA及びASA並びにMD+NAのそれを有意の凌駕し、AAにより誘導される凝集に対してMA+NAのそれを凌駕する。
【0138】
Iイン−ビボでのTTOの延長及び血小板凝集に対するMASA及び組合せMASA+NAの陽性効果を考慮して、MASA又は組合せMASA+NAは、顕著なアテローム性動脈硬化、潜在的心筋梗塞及び損傷並びに末梢循環の混乱を有する患者にける血小板凝集及び血栓の危険を減らすために使用することができる。MASA及び組合せMASA+NAが尾部出血時間を延長しないという事実は、手術前及び手術後の出血の増加の危険を有する患者のためのこの組合せが使用できることを示す。
【0139】
ASA+DIよりかなり良好なMASA+DIは、ADP及びAAにより誘導された凝集に対して保護する。
MASA+CL.血栓実験において、MASA+CLの一回投与は、ASA+CLに較べて、FeCl3により誘導された血栓に対してよりよい保護を提供する。MASA+CLはASA+CLより少なく、尾部出血時間を延長する。エクス−ビボ実験において、MASA+CLは、CL、ASA又はMASAに較べて、血小板凝集に対してかなり一層顕著な保護を与える。MASA+CLは、ASA+CLに較べて、ADP及びPGD+CLにより誘導された血小板凝集に対して保護する。
これらの事実は、MASA+CLが、血小板凝集リスクの上昇、切迫したまたは進行中の血栓症に対する迅速な保護のために臨床的に利用可能であることを示す。
【0140】
実施例11. NAにより誘導された皮膚充血の低下のためのMASA/NA、MD/NA及びLA/NAの組合せ適用の比較研究
ニコチン酸(ナイアシン、NA)は、血清コレステロール、LDL及びトリグリセリドを効果的に低下させるが、HDLを上昇させる。しかしながら、即放出性又は持続放出性ナイアシンを投与された患者における限定的不所望効果は、有意な皮膚温覚及び血管拡張(潮紅、皮膚充血、flushとも称され、深刻な不連続(discontinuation)を導く)の急速な発生である(Gupta EK, Ito MK, Heart Dis 2002; 4: 124-137)。ラロピラント(Laropiprant)(MK-0524)(LA)は、NA潮紅を減少させるための最も効果的且つ将来性のある剤の一つである(Cheng K ら、PNAS 2006; 103: 6682-6687)。
【0141】
11.1. ニコチン酸により惹起される皮膚血管拡張に対する拮抗
モデル
雄性Wistarラットをペンタバルビタールナトリウム(50 mg/kg Ip.)により麻酔し、そして1時間当り(10 mg/kg)の追加の麻酔剤により麻酔を維持した。左頚動脈において血圧を測定し、標準的IIリードによりECGを記録した。右耳動脈中の血流をレーザードプラー流量計(OXYFLOW 2000, 米国)により測定した。血流、ECG及び動脈血圧をAD Instruments PowerLabシステムにより登録し、そして更なる処理のためにコンピュータに貯蔵した。10分後、ベースライン被験物質の長い登録をウイザー(withers)領域にs.c.注射し、そして登録を30分間続けた。各動物の平均血流データを、平均血圧を考慮しながら計算し、そして最初及び対照と比較した。結果は5〜8の別個の実験から計算し、そしてベースラインに対する血流の最大変化%として表した(Carballo-Jane E ら、J Pharmacol Toxicol Methods 2007; 56(3): 308-316)。
【0142】
統計処理
結果は、各群につき平均±SEMとして示す。群内の統計解析はStudent t-テストにより行った。実験群間の相違は、反復比較を用いる単因子ANOVA(Tukeyテスト)に従って比較した。P<0.05を有意と考えた。
【0143】
結果
投与量15 mg/kgのニコチン酸(NA)は、この動物モデルにおいて、耳動脈の流速の有意な増加を生じさせた(表28)。MASAは、対象(緩衝化された0.9% NaCl溶液)と同様に、血流の有意な変更を生じさせなかった。MASAと一緒にしたNAは、NAのみとの比較において、血流の遅れた(徐々に増加する)且つ統計的に有意な顕著でない絶対的増加を生じさせた(表28)。
【0144】
【表28】

【0145】
結論
本発明者らは、予想外にも、NAにより惹起された血管拡張がMASAにより減少することを見出した。
本発明者らの目的は、NAにより惹起される潮紅(皮膚温度の変化)に対するMASA、MD及びLAの効果を比較することであった。
【0146】
方法
雄性Wistarラット((280-330 g)を使用した。動物を、22±1℃、相対湿度60±5%、及び12/12明/暗サイクルで、水及び飼料(R3 - Lactamin AB, スエーデン)に自由にアクセスできるようにした空気調節した部屋で飼育した。無傷のラットの皮膚温度を登録するため、非接触温度記録法を使用した(Papaliodis D ら、Br J Pharmacol 2008; 153: 1382-1387)。温度の測定は、手持ち式赤外線温度計(モデル Proscan 510, TFA-Dostman)を用いて行った。動物は、使用の前3日間、取り扱い及び赤外線プローブに慣らした。各耳の裏側からの温度の読みを、実験の前及び実験中に、麻酔すること無く記録した。耳の温度は、60分までの期間に、5分間隔で測定した。実験と実験との間、動物はそれらのケージに戻した。
【0147】
NA、MD及びMASAを食塩水に溶解し、そして使用の直前にpHを調整した。LA (MK 0524, Cayman Chemicals)は、先ずDMSOに溶解し、そして0.9% NaClにより、各実験日に新たに希釈した。NAとLAとの組合せの比率は、Summary of Product Characteristics for TredaptiveTM (ニコチン酸/ラロピプラント(laropiprant)1000 mg/20 mg 改変された放出表)に基づいて。
【0148】
統計処理
6個の耳温度測定値(各耳から3個)を各時点について平均した。データをマイクロソフトエクセルソフトウエアにより解析し、そして結果を平均±SEMにより表した。異なる群の平均結果を、反復比較を用いる単因子ANOVA(Tukeyテスト)に従って比較した。P<0.05を有意と考えた。
【0149】
11.2. 皮膚温度の対する時間及び溶剤の影響の試験
処理 動物数
SoIvLA LAのための溶剤 6
SoIvNA NAのための溶剤 6
NA NA 15 mg/kg sc 6
【0150】
11.3. s.c.投与と同時[0]又は30分前[30]における皮膚温度に対する別々の被験物質の研究
皮膚温度に対するLA、MD又はMASA単独の効果をチェックした。各被験化合物をNAと同時にLA+NAとして[0]又はNAに30分先立ってLA+NAとして[30]s.c.導入した。
処理 動物数
対照/溶剤 6
NA NA 15 mg/kg 6
LA LA 0.3 mg/kg 6
LA+NA LA 0.3 mg/kg+NA 15 mg/kg 6
MD MD 45 mg/kg 6
MD+NA MD 45 mg/kg+NA 15 mg/kg 6
MASA MASA 45 mg/kg 6
MASA+NA MASA 45mg/kg+NA 15 mg/kg 6
【0151】
11.4. s.c.投与と同時[0]又は45分前[45]における皮膚温度に対するMASA/NA及びMD/NA効果の試験
処理 動物数
対照/溶剤 6
NA NA 40 mg/kg 8
MD MD 100 mg/kg 6
MD+NA MD 100 mg/kg+NA40 mg/kg 6
MASA150 MASA 150 mg/kg 6
MASA75+NA MASA 75mg/kg+NA 40 mg/kg 6
MASA150+NA MASA 150 mg/kg+NA 40 mg/kg 6
【0152】
結果
R11.2. 皮膚温度に対する時間及び溶剤の影響の試験
午前10時〜午後2時に記録したベースライン平均耳温度は28.4〜30.6℃であった。NA(15 mg/kg s.c.)についての時間応答研究は、10分(下記)において、ベースラインから2.32±0.37℃及び溶剤群に較べて2.57±0.43℃の最高温度上昇を示した。下記のことが確立された:注射後最初の5分間において、耳温度に対するLA溶剤の効果は、NA、MASA及びMD溶剤のみのそれに較べて実質的に異なり、従って、10分における温度の計算においては1個の対照群のみを使用した。
【0153】
【表29】

【0154】
R11.3. s.c.投与と同時[0]又は30分前[30]における皮膚温度に対する別々の被験物質の試験
MASA、MD又はLAの皮下注射はラットの耳の皮膚温度の有意な変化を惹起しなかった(表30)。MDがNAと同時に添加された場合のMD+NA[0]とMDがNAの30分前に投与された場合のMD+NA[30]との間に温度の対する差は無かった。
【0155】
【表30】

【0156】
NAとMASAの同時投与(NA+MASA[0]群; 先行時間=0)は、NA潮紅を惹起し、これはNAとLA又はNAとMDの同時投与により惹起されるそれに類似していた。NAにより惹起される温度の上昇は、それぞれ100%(NAの効果)から62%、67%及び69%に低下した(表30)。本発明者らの実験において、MASA+NA及びLA+NAの投与(NAに30分先立ってs.c.投与された場合)は、NAにより誘導される皮膚温度の上昇に対して有意の且つ類似の保護を生じさせた(表30)。
【0157】
R11.4. 経口投与における皮膚温度に対するNA/MASA及びNA/MD組合せの効果の研究
投与量40 mg/kgでの経口(p.o.)NA導入は、ラットの耳皮膚温度の実質的且つ延長された(60分まで)上昇を生じさせ、最高は15分と45分の間であった(表31)。
【0158】
【表31】

【0159】
MASA又はMDの経口投与は皮膚温度に実質的な変化を生じさせなかった。投与量75 mg/kgでのMASA及びNAの同時p.o.導入は、NAにより誘導された皮膚温度の上昇からの小さい保護を生じさせたが、しかし150 mg/kgの投与量において実質的な保護を生じさせた(表31)。MD(100 mg/kg)はNAと同時に導入された場合、15分間温度の上昇から保護したが、しかしNAにより誘導された皮膚温度の最高の上昇からの実質的な保護を提供しなかった(表31の30分及び45分の温度を参照のこと)。
【0160】
結果の解析が示すところによれば、 NAと同時に150 mg/kg の投与量で導入されたMASAは、皮膚温度の上昇を70%に低下させ、NA+MDによる低下(96%)より実質的に良好であった。NAのみによる上昇を100%とする。予防モード−NAの前45分−での物質の導入により、MASAI 50+NA[45]の温度低下作用は上昇し、そしてMD+NA[45]又はMASA75+NA[45]に較べて有意に良好であった(表31)。
【0161】
MASAは、p.o.又はs.c投与された場合、NAにより誘導される皮膚温度の上昇を減少させる。MASAはラロピプラントと同様に、NAにより誘導される皮膚温度の上昇を、同時使用及び予防的使用の両方において、低下させた。NAと一緒に又は予防モードで導入されたMASAの抗−潮紅(flushing)活性は、NAによる不所望の皮膚効果(潮紅(flushing))の低下のためのMASAの潜在的有用性を示す。
【0162】
要約
MASAは、抗炎症、抗−抗多脂質血症、及び抗−血小板効果を有するので、血小板凝集により誘導される種々の疾患の治療のための新規な療法剤として考えることができる。
【0163】
発明を実施するための形態
本発明は、抗炎症、鎮痛、抗リウマチ、抗多脂質血症、抗アテローム性動脈硬化症、抗凝集及び抗血栓剤として使用するための、MASAを含んで成る医薬製品を提供する。本発明の医薬製品は、医薬組成物の形で投与することができる。この観点に従って、医薬として許容される希釈剤又は担体と共にMASAを含んで成る医薬組成物が提供される。
【0164】
医薬製品の抗炎症、鎮痛、抗リウマチ、抗多脂質血症、抗アテローム性動脈硬化症、抗凝集及び抗血栓的使用は長期の使用が予想されるので、最も好ましい実施の態様は、経口用に適する形態、例えば錠剤又はカプセルにより提供される。
【0165】
本発明の更なる観点に従えば、前に記載した医薬製品の使用、前に記載した医薬組成物の使用、抗炎症、鎮痛、抗リウマチ、抗多脂質血症、抗アテローム性動脈硬化症、抗凝集及び抗血栓状態の治療のための医薬の製造のための使用、が提供される。
本発明の更なる観点は、MASA、及びNA、スタチン類、CL及びDIの群から選択される他の医薬を含んでなる組合せ医薬製品が提供される。これらの製品は、MASA自体のために開発された医薬組成物を基礎とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−トリメチルアンモニオブタノエートアセチルサリシレート。
【請求項2】
2H値5.10、13.58、13.83、15.02、15.17、17.89、19.33、19.87、21.85、22.05、23.32、23.56、23.92、24.75、25.55、25.80、27.05、27.91、30.25±0.2°にピークを有するX線パターンにより特徴付けられる、請求項1に記載の4−トリメチルアンモニオブタノエートアセチルサリシレート。
【請求項3】
L−カルニチンアセチルサリシレート。
【請求項4】
2H値5.09、12.62、13.48、13,84、15.04、17.82、19.15、19.77、21.84、22.56、23.33、23.92、24.40、25.17、25.43、26.14、27.24、29.50、30.36±0.2°にピークを有するX線パターンにより特徴付けられる、請求項3に記載のL−カルニチンアセチルサリシレート。
【請求項5】
3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート。
【請求項6】
2H値5.19、13.22、13.82、14.20、14.95、15.36、15.93、18.11、18.97、19.74、21.02、22.15、23.15、23.65、24.31、25.28、26.18、26.58、27.73、28.36±0.2°にピークを有するX線パターンにより特徴付けられる、請求項5に記載の3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート。
【請求項7】
医薬として使用するための溶媒和物又は多形体である、請求項5に記載の3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート。
【請求項8】
請求項5に記載の3−(トリメチルアンモニオアミノ)プロパノエート(メルドニウム)アセチルサリシレート及び医薬として許容されるキャリヤーを含んで成る医薬組成物。
【請求項9】
即放出性、持続放出性又は長期放出性の剤形である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
経口投与のための、請求項8の記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレート又は請求項8に記載の医薬組成物を患者に投与することを含んで成る、炎症、痛み、熱、リウマチ状態、高脂質血症状態、アテローム性動脈硬化症状態、血小板凝集により生ずる症状又は血栓形成により生ずる症状を予防又は治療する方法。
【請求項12】
炎症、痛み、熱、リウマチ状態、高脂質血症状態、アテローム性動脈硬化症状態、血小板凝集により生ずる疾患又は血栓形成により生ずる疾患を予防又は治療するための医薬の製造における、請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレート又は請求項8に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
前記血小板凝集により生ずる症状が、虚血状態、例えば心筋梗塞若しくは発作、血栓症又は血栓塞栓症を含む、請求項12に記載のメルドニウムアセチルサリシレートの使用。
【請求項14】
血小板凝集により生ずる疾患の予防又は治療のための、請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレートの有効量及びジピリダモルの有効量を含んで成る組合せ医薬品。
【請求項15】
血小板凝集により生ずる疾患の予防又は治療のための、請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレートの有効量及びクロピドグレル又はその医薬として許容される塩の有効量を含んで成る組合せ医薬品。
【請求項16】
前記血小板凝集により生ずる疾患が、虚血状態、例えば心筋梗塞若しくは発作、血栓症若しくは血栓塞栓症、急性冠症候群、突然心臓死、及び冠アンギオパシー若しくは冠動脈バイパス後の合併症を含む、請求項15に記載の組合せ医薬品の使用。
【請求項17】
請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレートの有効量及びニコチン酸又はその医薬として許容される塩の有効量を含んで成る、末梢血管拡張(皮膚充血)の副作用の低下を伴う組合せ医薬品。
【請求項18】
前記ニコチン酸又はその医薬として許容される塩が、即放出性、持続放出性又は長期放出性の形態である、請求項17に記載の医薬品。
【請求項19】
前記メルドニウムアセチルサリシレートが、即放出性、持続放出性又は長期放出性の形態である、請求項17に記載の医薬品。
【請求項20】
血小板凝集により生ずる症状の予防又は治療のための、請求項17に記載の組合せ医薬品の使用。
【請求項21】
前記血小板凝集により生ずる症状が、虚血状態、例えば心筋梗塞若しくは発作、血栓症又は血栓塞栓症を含む、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
代謝関連障害の予防又は治療のための、請求項17に記載の組合せ医薬品の使用。
【請求項23】
前記障害が、低脂質血症、高脂質血症、アテローム性動脈硬化症からなる群から選択される、請求項22に記載の組合せ医薬品の使用。
【請求項24】
有効量の請求項5に記載のメルドニウムアセチルサリシレート並びにアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン及びシンバスタチンから成る群から選択されるスタチンを含んで成る組合せ医薬品。
【請求項25】
低脂質血症、高脂質血症及びアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される障害の予防又は治療のための、請求項24に記載の組合せ医薬品の使用。

【公表番号】特表2012−531408(P2012−531408A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517421(P2012−517421)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/LV2010/000007
【国際公開番号】WO2010/151095
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511311255)
【Fターム(参考)】