説明

新規なピペリジン誘導体

【課題】本発明は、一般式(I)の新規なピペリジン誘導体および関連化合物並びにそれらの医薬組成物の調製における活性成分としての使用を提供する。
【解決手段】一般式(I)の新規なピペリジン誘導体および関連化合物並びにそれらの医薬組成物の調製における活性成分としての使用により達成される。また、それら化合物の製造方法、これらの化合物を一種または一種以上含有する医薬組成物および特にそれらの神経ホルモン拮抗剤としての使用により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式1の新規な3-(ピペリジニル-アルキル-ウレイド)-キノリン誘導体およびそれらの医薬組成物の調製における活性成分としての使用に関するものである。本発明はまた、それら化合物の製造方法、一般式1の化合物を一種または一種以上含有する医薬組成物および特にそれらの神経ホルモン拮抗剤としての使用を含む関連諸相に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
ウロテンシンIIは、既知のもっとも強力で、エンドセリン−1より28倍までも強力な血管収縮因子であると考えられる、11個のアミノ酸からなる環状ペプチド神経分泌ホルモンである。ウロテンシンIIの作用は、GPR14またはSENRとしても知られているUT受容体であるG蛋白質共役型受容体の活性によって伝達される(例えば、非特許文献1、2および3参照。)。ウロテンシンIIおよびその受容体は、進化論的に遠隔の諸種にわたって保存されており、その系の重要な生理学的役割を示唆している(例えば、非特許文献4参照。)。広塩性魚類においては、ウロテンシンIIは浸透調節の役割をもち、哺乳動物では、ウロテンシンIIは、強力で複雑な血行力学的作用を呈する。ウロテンシンIIに対する応答は、研究対象組織の解剖学的起源および種に依存する(例えば、非特許文献5および6参照。)。
【0003】
【非特許文献1】RS エイムズ(Ames)ら、「ヒトウロテンシンIIは強力な血管収縮因子であり、オーファン受容体GPR14に対するアゴニストである」ネイチャー(Nature)(1999年)401、282−6
【非特許文献2】M モリ、T スゴー、M アベ、Y シモムラ、M クリハラ、C キタダ、K キクチ、Y シンタニ、T クロカワ、H オンダ、O ニシムラ、M フジノ、「ウロテンシンIIは、G蛋白質共役型オーファン受容体、SENR(GPR14)の内因性リガンドである」バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)(1999年)265、123−9
【非特許文献3】Q リウ(Liu)、SS ポン(Pong)、Z ゼン(Zeng)ら、「G蛋白質共役型オーファン受容体GPR14に対する内因性リガンドとしてのウロテンシンIIの同定」バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(1999年)266、174−178
【非特許文献4】HA バーン(Bern)、D ピアソン(Pearson)、BA ラーソン(Larson)、RS ニシオカ、「魚類尾部からの神経分泌ホルモン:尾部神経分泌系。I.魚類の泌尿器生理学および尾部神経分泌系」リーセント・プログレス・イン・ホルモン・リサーチ(Recent Prog.Horm.Res.)(1985年)41、533−552
【非特許文献5】SA ダグラス(Douglas)、AC スルピツィオ(Sulpizio)、V ピアシー(Piercy)、HM サラウ(Sarau)、RS エイムズ(Ames)、NV アイヤー(Aiyar)、EH オールスタイン(Ohlstein)、RN ウィレット(Willette)、「ラット、マウス、イヌ、ブタ、マーモセットおよびカニクイザルから摘出した血管組織におけるヒトウロテンシン−IIの差異のある血管収縮活性」ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Brit.J.Pharmacol.)(2000年)131、1262−1274
【非特許文献6】SA ダグラス(Douglas)、DJ アッシュトン(Ashton)、CF ザウエルメルヒ(Sauermelch)、RW コートニー(Coatney)、DH オールスタイン(Ohlstein)、MR ルッフォロ(Ruffolo)、EH オールスタイン(Ohlstein)、NV アイヤー(Aiyar)、R ウィレット(Willette)、「ヒトウロテンシン−IIは強力な血管作動性ペプチドである:ラット、マウス、イヌおよび霊長類における薬理学的特性確認」ジャーナル・オブ・カーディオヴァスキュラー・ファーマコロジー(J.Cardiovasc.Pharmacol.)(2000年)36、補遺1:S163−6
【0004】
他の神経分泌ホルモン類と同様、ウロテンシンIIは、その血管作動性に加えて、成長刺激作用およびプロフィブロティック(profibrotic)作用を有する。ウロテンシンIIは、平滑筋細胞増殖を増進し、コラーゲン合成を刺激する(例えば、非特許文献7および8参照。)。ウロテンシンIIはホルモン放出を制御する(例えば、非特許文献9参照。)。ウロテンシンIIは、心房および心室の筋細胞に直接作用する(例えば、非特許文献10参照。)。ウロテンシンIIは癌細胞株によって産生され、その受容体もこれらの細胞中で発現される(例えば、非特許文献11、12および13参照。)。ウロテンシンIIおよびその受容体は脊髄および脳組織中に見出され、ウロテンシンIIのマウス脳室内注入は行動変化を惹起する(例えば、非特許文献14参照。)。
【0005】
【非特許文献7】A ツァンディス(Tzandis)ら、「ウロテンシンIIは、心線維芽細胞によるコラーゲン合成およびG(アルファ)qおよびRas依存性経路を介した心筋細胞における肥大シグナル伝達を刺激する」ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー(J.Am.Coll.Cardiol.)(2001年)37、164A
【非特許文献8】Y ゾウ(Zou)、R ナガイおよびT ヤマザキ、「ウロテンシンIIは、新生仔ラット由来培養心筋細胞における肥大反応を惹起する」FEBS レターズ(FEBS Lett.)(2001年)508、57−60
【非特許文献9】RA シルヴェスター(Silvestre)ら、「ウロテンシンIIによるインスリン放出の阻害−灌流ラット膵臓での研究」ホルモン・アンド・メタボリズム・リサーチ(Horm.Metab.Res.)(2001年)33、379−81
【非特許文献10】FD ラッセル(Russell)、P モレナール(Molenaar)およびDM オブライエン(O’Brien)「ガラス器内ヒト心におけるウロテンシンIIの心刺激作用」ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Br.J.Pharmacol.)(2001年)132、5−9
【非特許文献11】K.タカハシら、「種々のヒト腫瘍細胞株におけるウロテンシンIIおよびウロテンシンII受容体mRNAの発現およびSW−13副腎皮質癌細胞によるウロテンシンII様免疫反応物質の分泌」ペプタイズ(Peptides)(2001年)22、1175−9
【非特許文献12】K.タカハシら、「副腎腫瘍におけるウロテンシンIIおよびその受容体の発現およびウロテンシンIIによる培養腫腫細胞の増殖刺激作用」ペプタイズ(Peptides)(2003年)24、301−306
【非特許文献13】S シェノーダ(Shenouda)ら、「正常なヒト腎および腎臓癌におけるウロテンシン−II免疫反応性の局在」ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(J Histochem and Cytochem)(2002年)50、885−889
【非特許文献14】J ガートロン(Gartlon)ら、「ラットへのICV投与に続くウロテンシンIIの中枢作用」サイコファーマコロジー(Psychopharmacology)(ベルリン)(2001年)155、426−33
【0006】
ウロテンシンIIの制御不全は、ヒトの疾患と関連している。高血圧症患者、心不全患者、糖尿病患者および腎移植待機患者において、高い循環血中ウロテンシンII濃度が検出される(例えば、非特許文献15、16および17参照。)。
【非特許文献15】K トツネら、「透析患者におけるウロテンシンIIの役割」ランセット(Lancet)(2001年)358、810−1
【非特許文献16】K トツネら、「糖尿病患者における血漿中の増加したウロテンシンII濃度」クリニカル サイエンス(Clin Sci)(2003年)104、1−5
【非特許文献17】J ヘラー(Heller)ら、「肝硬変および門脈圧亢進患者における血漿中の増加したウロテンシンII濃度」ジャーナル・オブ・ヘパトロジー(Journal of Hepatology)(2002年)37、767−772
【0007】
ウロテンシンIIの作用を阻害する能力をもつ物質は、種々の疾患の治療において有用であることが証明されると期待される。国際公開第2001/45694号(特許文献1)、国際公開第2002/78641号(特許文献2)、国際公開第2002/78707号(特許文献3)、国際公開第2002/79155号(特許文献4)、国際公開第2002/79188号(特許文献5)、国際公開第2002/89740号(特許文献6)、国際公開第2002−89785号(特許文献7)、国際公開第2002−89792号(特許文献8)、国際公開第2002/89793号(特許文献9)、国際公開第2002/90337号(特許文献10)、国際公開第2002/90348号(特許文献11)、および国際公開第2002/90353号(特許文献12)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質としてのある種のスルホンアミド類およびウロテンシンII不均衡関連疾患処置のためのそれらの使用を開示している。国際公開第2001/45700号(特許文献13)および国際公開第2001/45711号(特許文献14)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質としてのある種のピロリジン類またはピペリジン類およびウロテンシンII不均衡関連疾患処置のためのそれらの使用を開示している。これらの誘導体は4-ピリジニル様部分をもつ尿素誘導体を含まない点で本発明の化合物と異なる。国際公開第2002/047456号(特許文献15)および国際公開第2002/47687号(特許文献16)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質としてのある種の2-アミノキノロン類およびウロテンシンII不均衡関連疾患処置のためのそれらの使用を開示している。国際公開第2002/058702号(特許文献17)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質としてのある種の2-アミノキノリン類およびウロテンシンII不均衡関連疾患処置のためのそれらの使用を開示している。これらの誘導体は、キノリン環の4位に置換尿素官能基をもっていない点で本発明の化合物と異なる。国際公開第2001/66143号(特許文献18)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質として有用なある種の2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-b]キノリン-4-イルアミン誘導体を開示しており、国際公開第2002/00606号(特許文献19)は、ウロテンシンII受容体拮抗物質として有用なある種のビフェニル化合物類を開示しており、国際公開第2002/02530号(特許文献20)も、ウロテンシンII受容体拮抗物質として有用なある種の化合物を開示している。国際公開第02/076979号(特許文献21)および国際公開第03/048154号(特許文献22)はウロテンシンII受容体拮抗物質としてのある種のキノリン誘導体およびウロテンシンII不均衡関連疾患処置のためのそれらの使用を開示している。
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/45694号
【特許文献2】国際公開第2002/78641号
【特許文献3】国際公開第2002/78707号
【特許文献4】国際公開第2002/79155号
【特許文献5】国際公開第2002/79188号
【特許文献6】国際公開第2002/89740号
【特許文献7】国際公開第2002/89785号
【特許文献8】国際公開第2002/89792号
【特許文献9】国際公開第2002/89793号
【特許文献10】国際公開第2002/90337号
【特許文献11】国際公開第2002/90348号
【特許文献12】国際公開第2002/90353号
【特許文献13】国際公開第2001/45700号
【特許文献14】国際公開第2001/45711号
【特許文献15】国際公開第2002/047456号
【特許文献16】国際公開第2002/47687号
【特許文献17】国際公開第2002/058702号
【特許文献18】国際公開第2001/66143号
【特許文献19】国際公開第2002/00606号
【特許文献20】国際公開第2002/02530号
【特許文献21】国際公開第02/076979号
【特許文献22】国際公開第03/048154号
【0009】
欧州特許出願公開第428434号(特許文献23)は、ニューロキニンおよびサブスタンスPに対する拮抗物質としてのある種のアルキルウレイドピリジン類を開示している。国際公開第99/21835号(特許文献24)は、H−ATPアーゼおよび骨吸収の阻害物質としてのある種のウレイドキノリン類を開示している。国際公開第01/009088号(特許文献25)は、CCR−3受容体阻害物質としてのある種の置換ヘテロアリール尿素類を開示している。これらのウレイドピリジン誘導体は、いずれも、それらの組成上、本発明の化合物類とは異なる。本発明は、新規物質の組成物であって、ウロテンシンII受容体拮抗物質として有用なN-(2-(3-置換ピペリジン-1-イル-エチル)-N’-ピリジン-4-イル尿素誘導体を包含する。
【0010】
【特許文献23】欧州特許出願公開第428434号
【特許文献24】国際公開第99/21835号
【特許文献25】国際公開第01/009088号
【発明の開示】
【0011】
本発明は一般式1の化合物に関する。
【化2】

式中:

Pyは、2位が-NRでモノ置換されたピリジン-4-イル; 2位が-NRで、6位が低級アルキルまたはアリール-低級アルキルでジ置換されたピリジン-4-イル; 未置換 キノリン-4-イル; 2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イル; 2位が低級アルキルで、6、7、または8位がハロゲン、低級アルキル、またはアリール-低級アルキルでジ置換されたキノリン-4-イルを表す;

XはRNCO-を表す。

およびR は水素;低級アルキル;またはアリール-低級アルキルを独立して表す;

およびR は水素; 低級アルキル; アリール; アリール-低級アルキル;アリールでジ置換された低級アルキルを独立して表し;または環原子としてRおよび R が結合している窒素原子と共にピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックス、および形態学的な形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマー、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、およびジアステレオマーラセミ体混合物。
【0012】
一般式1の定義において、用語の「アリール」は、置換または未置換の芳香族炭素環系または複素環系を意味し、これらは、5-員または6-員芳香族環、または縮合5-6または6-6芳香族環系を含む。好ましいアリール基は、例えば、2-フリル; 2-チエニル; フェニル; 2-メチルフェニル; 2-ビフェニル; 2-メトキシフェニル; 2-フェノキシフェニル; 2-クロロフェニル; 2-ブロモフェニル; 2-iso-プロピルフェニル; 2-フルオロフェニル; 2-メチルスルフォニルフェニル; 2-シアノフェニル; 2-トリフルオロメチルフェニル; 3-メチルフェニル; 3-ビフェニル; 3-フェノキシフェニル; 3-メトキシフェニル; 3-クロロフェニル; 3-ブロモフェニル; 3-フルオロフェニル; 3-シアノフェニル; 3-トリフルオロメチルフェニル; 3-カルボキシフェニル; 4-メチルフェニル; 4-エチルフェニル; 4-iso-プロピルフェニル; 4-フェニルオキシフェニル; 4-トリフルオロメチルフェニル; 4-トリフルオロメトキシフェニル; 4-フェノキシフェニル; 4-メトキシフェニル;4-シアノフェニル; 4-ヒドロキシフェニル; 4-アセチルアミノフェニル; 4-メタンスルホニルフェニル; 4-n-プロピルフェニル; 4-iso-プロピルフェニル; 4-tert-ブチルフェニル; 4-n-ペンチルフェニル; 4-ビフェニル; 4-クロロフェニル; 4-ブロモフェニル; 4-ブロモ-2-エチルフェニル; 4-フルオロフェニル; 2,4-ジフルオロフェニル; 4-n-ブトキシフェニル; 2,6-ジメトキシフェニル; 3,5-ビス-トリフルオロメチルフェニル; 2-ピリジル; 3-ピリジル; 4-ピリジル; 1-ナフチル; 2-ナフチル; 4-(ピロール-1-イル)フェニル; 4-ベンゾイルフェニル; 5-ジメチルアミノナフチ-1-イル; 5-クロロ-3-メチルチオフェン-2-イル; 5-クロロ-3-メチル-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル; 3-(フェニルスルホニル)-チオフェン-2-イル; 2-(2,2,2-トリフルオロアセチル)-1-2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-イル; 4-(3-クロロ-2-シアノフェニルオキシ)フェニル; 2-(5-ベンズアミドメチル)チオフェニル; 4,5-ジクロロチエニ-2-イル; 5-キノリル-; 6-キノリル; 7-キノリル; 8-キノリル; (2-アセチルアミノ-4-メチル)チアゾール-5-イル; または1-メチルイミダゾール-4-イルである。
【0013】
一般式1の定義において、用語の「低級アルキル」は、炭素が1乃至8個からなる飽和の直鎖、分岐鎖または環式置換基を意味し、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ−ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル等である。好ましい低級アルキル基はメチル、エチルおよびn-プロピルである。
【0014】
用語の「アリールでジ置換された低級アルキル」は、上記で定義したものと同じ低級アルキルであって、2個の水素原子が上記で定義したものと同じアリール基で置き換えられたものを意味する。「アリールでジ置換された低級アルキル」の好ましい例はジフェニルメチル、2,2-ジフェニルエチルおよび1-ベンジル-2-フェニル-エチルである。
【0015】
用語の「アリール-低級アルキル」は、上記で定義したものと同じ低級アルキル基であって、水素原子の1つが上記で定義したと同じアリール基で置き換えられているものを意味する。アリール-低級アルキル基の好ましい例はベンジル、フェネチルおよび3-フェニルプロピルである。
【0016】
用語の「ハロゲン」は、フッ素、 塩素、 臭素または沃素を包含する。
【0017】
本発明は一般式1の化合物の医薬品として許容可能な塩を包含する。このことはハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭化水素酸、硫酸、燐酸、硝酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、マレイン酸、酒石酸、メチルスルホン酸、p−トリルスルホン酸等の無機酸または有機酸との塩を包含し、または一般式1の化合物の場合には、アルカリまたは土類アルカリ塩基のような無機塩基との酸、例えばナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩等、として存在する。一般式1の化合物はまた双性イオン化合物の形態でも存在できる。
【0018】
本発明は一般式1の化合物の様々な溶媒和コンプレックスを包含する。溶媒和は製造工程の段階で生じることができ、または、例えば、一般式1の最初は無水化合物の吸湿性の結果として別に生じることができる。
【0019】
本発明はさらに様々な形態学上の形状、例えば、一般式1の化合物の結晶形、それらの塩、および溶媒和コンプレックスを包含する。特定の異形体はそれぞれ異なった溶解性、安定度プロフィール等を示し、これらはすべて本発明の範囲内に包含される。
【0020】
一般式1の化合物は1個または1個以上の不斉炭素原子を有していてもよく、光学的に純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマー、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、およびジアステレオマーラセミ体混合物の形でつくることが可能である。本発明はこれらの形のすべてを包含する。これらは立体選択的合成により、またはそれ自体既知の方法、すなわちカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、HPLC、結晶化等による混合物の分離により調製される。
【0021】
一般式1の好ましい化合物のグループは、Xがアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、RおよびPyが一般式1で記載した意味を有する化合物である。
【0022】
一般式1の好ましい化合物の別のグループは、Pyが未置換キノリン-4-イルまたは2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イルを表し、Xが一般式1で記載した意味を有する化合物である。
【0023】
一般式1の好ましい化合物の別のグループは、Pyは2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、ここで、R は、アリール-低級アルキルを表し、R は低級アルキルを表し、Xは一般式1で定義された意味を有する化合物である。
【0024】
一般式1の好ましい化合物の別のグループは、Pyが、2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、ここで、R は水素を表し、R およびX は一般式1で定義された意味を有する化合物である。
【0025】
一般式1の特に好ましい化合物のグループは、Xが、アリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyが未置換キノリン-4-イルまたは2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イルを表し、 R が一般式1で定義された意味を有する化合物である。
【0026】
一般式1の特に好ましい化合物の別のグループは、Xがアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyは、2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表す化合物である。ここで、R はアリール-低級アルキルを表し、R は低級アルキルを表し、R は一般式1で定義された意味を有する。
【0027】
一般式1の特に好ましい化合物の別のグループは、Xがアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyは2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表す化合物である。ここで、R は水素を表し、R およびR は一般式1で定義された意味を有する。
【0028】
一般式1の好ましい化合物の例は下記のリストから選ばれる;
【表1】

【表2】

【0029】
ここに記載した化合物は、ウロテンシンIIの作用を阻害できるゆえに、ウロテンシンIIの作用に関連した血管収縮、増殖の増大に関連する諸疾患、その他の疾患状態を治療するために使用できる。かかる疾患の例は、高血圧、アテローム性動脈硬化、アンギナまたは心筋虚血、うっ血性心不全、心不全、心不整脈、腎虚血、慢性腎疾患、腎不全、卒中、脳血管痙攣、脳虚血、痴呆、偏頭痛、くも膜下出血、糖尿病、糖尿病性動脈症、糖尿病性腎症、結合組織疾患、肝硬変、喘息、慢性閉塞性肺疾患、高地肺水腫、レイノー症候群、門脈圧亢進、甲状腺機能不全、肺水腫、肺高血圧、または肺線維症である。それらは、バルーンまたはステント血管形成術後の再狭窄の予防、癌、前立腺肥大、勃起障害、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、グラム陰性菌敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球急性胸部症候群、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障の治療、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術の合併症、または臓器移植後の合併症、シクロスポリン処置の合併症、疼痛、嗜癖、精神分裂病、アルツハイマー病、不安、強迫行動、てんかん発作、ストレス、うつ病、痴呆、神経筋異常、神経変性疾患ならびにその他のウロテンシンIIまたはウロテインシII受容体の調節不全に関連した諸疾患の療法・治療および予防にも使用できる。
【0030】
これらの組成物は、経腸または経口形態で、たとえば錠剤、糖衣錠、ゼラチンカプセル、乳剤、液剤または懸濁剤として、噴霧剤などの経鼻形態で、あるいは坐剤などの経直腸形態で投与できる。これらの化合物は、筋肉内、非経口的または静脈内投与形態で、たとえば注射液の形で投与してもよい。
【0031】
これらの医薬組成物は、式1の化合物ならびにそれらの医薬として許容しうる塩を、医薬
品産業において通常用いられている無機および/または有機賦形剤、たとえばラクトース、トウモロコシ(でんぷん)またはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはこれらの物質の塩類との組合せで含有することができる。
【0032】
ゼラチンカプセルには、植物油、ワックス類、脂肪、液状または半液状のポリオール類などを使用できる。液剤およびシロップ剤の調製には、たとえば、水、ポリオール類、サッカロース(蔗糖)、グルコースなどが用いられる。注射剤は、たとえば、水、ポリオール類、アルコール類、グリセリン、植物油、レシチン、リポソームなどを用いて調製される。坐剤は、天然油類または水素添加油類、ワックス類、脂肪酸類(脂肪類)、液状または半液状のポリオール類などを用いて調製される。
【0033】
それらの組成物は、さらに、保存剤、安定化向上物質、粘度向上または調節物質、溶解性向上物質、甘味料、色素、味覚改善化合物、浸透圧を変化させる塩類、緩衝剤、酸化防止剤などを含有することができる。
【0034】
一般式1の化合物は、一種または一種以上の他の治療上有用な物質、たとえば、フェントラミン、フェノキシベンザミン、アテノロール、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、カルテオロール、カルベジロールなどのα−およびβ−遮断薬;ヒドララジン、ミノキシジル、ジアゾキシド、フロセキナンなどの血管拡張薬;ジルチアゼム、ニカルジピン、ニモジピン、ベラパミル、ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬、シラザプリル、カプトプリル、エナラプリル、リジノプリルなどのアンギオテンシン変換酵素阻害薬;ピナシジル、クロマカリムなどのカリウムチャンネル活性化薬;ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、エプロサルタン、テルミサルタン、タソサルタンなどのアンギオテンシン受容体拮抗薬;ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、アセトールアミド、ブメタニド、フロセミド、メトラゾン、クロルタリドンなどの利尿薬;メチルドパ、クロニジン、グアナベンズ、レセルピンなどの交感神経遮断薬;ボセンタン、テゾセンタン、ダルセンタン、アトラセンタン、エンラセンタン、シタキシセンタンなどのエンドセリン受容体拮抗薬;ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、シンバスタチンなどの抗高脂血症薬;および高血圧、血管疾患または上に列挙したその他の諸疾患の治療に役立つその他の治療薬と併用してもよい。
【0035】
用量は、広い範囲内で変動しうるが、特定の状況に適合したものであるべきである。一般に、経口形態での1日用量は、体重約70kgの成人1人当り約1mg〜約3gの間、好ましくは約3mg〜約1gの間、とくに好ましくは5mg〜300mgの間とすべきである。該用量を、1日当り等重量の1〜3回量に分けて投与するのが好ましい。通例通り、小児は、体重および年齢に適合したより低い用量を摂取すべきである。
【0036】
本発明の化合物の一般的な製造
一般式1の化合物は、当業者に一般的に知られている諸方法を用い、下記に概略を示した一般的反応順序に従って調製できる。簡単明瞭にするために、ときには、一般式1の化合物に導く可能な合成ルートのうちの若干のみを記載する。
【0037】
一般式1の化合物の合成は、スキームA〜Eに図示した一般合成経路を採用できる。スキームA〜Eで用いた一般的な基X、Py、R、R、R、およびRは、上記一般式1で示された定義を有する。用いられているその他の略語は実験項で定義されている。一般的な基Xは、ある例では、スキームA〜Eに図示された集団(アセンブリー)と相入れないかもしれない、従って、保護基の使用を必要とするであろう。保護基の使用は当業界において周知である(たとえば、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、T.W. Greene, P.G.M. Wuts, Wiley-Interscience, 1999 参照)。この論述のため、このような保護基が代わりに使用できるものと想定されたい。
【0038】
一般式1の化合物
これらの化合物はスキームAに図示した方法に従って製造される。

スキーム A
【化3】

【0039】
スキームAにおける一般構造式Iの3-置換-ピペリジンは、ラセミ体または光学活性体の形で市場から入手できるか、当業者によく知られた方法によりラセミ体または光学活性体の形で調製される。スキームAの一般構造式IIのハロアルキル尿素は、以下に示すスキームEに従って調製される。一般構造式IIのハロアルキル尿素による一般構造式IのピペリジンのN-アルキル化を、テトラヒドロフランなどの極性溶媒中にNaIなどの沃化塩を化学量論量よりやや少ない量、さらにNaHCOなどの酸スカベンジャーを化学量論量よりやや過剰の量で存在させて行なうことにより、一般式1のターゲット化合物が得られる。
【0040】
一般式Iの化合物は、スキームBに従って択一的に製造される。

スキームB
【化4】

一般構造式IIIのアミンを一般構造式Vのイソシアネートと反応させると一般式1の最終化合物が得られる。あるいは一般構造式IIIのアミンを一般構造式IVの尿素と反応させると一般式1の最終化合物が得られる。一般構造式Vのイソシアネートおよび一般構造式VIの尿素の製造は、以下のスキームDに記載される。一般構造式IIIのアミンの製造は以下のスキームEに記載される。
【0041】
一般式1の化合物はスキームCに図示される方法に従って択一的に製造される。
【化5】

一般構造式VIのラセミ体または光学活性体のピペリジン-3-カルボン酸アルキルは、市場で入手できるか、あるいは当業者によく知られている方法で容易に製造される。一般構造式IIのハロアルキル尿素は、以下のスキームEに従って製造される。一般構造式VIのピペリジン-3-カルボン酸アルキルは、テトラヒドロフランなどの極性溶媒中にNaIなどの沃化塩を化学量論量よりやや少ない量、さらにNaHCOなどの酸スカベンジャーを化学量論量よりやや過剰の量存在させて、一般構造式IIのハロアルキル尿素と反応させ、ついで酸性条件下でエステルを加水分解する、例えば、HCl水溶液で反応させる。その結果得られる一般構造式VIIの化合物を、例えばDMFなどの極性溶媒にカルボジイミドなどのカップリング剤を化学量論量よりやや過剰の量存在させて、市場で入手できる、あるいはよく知られたアミンVIIIと反応させると一般式1の最終化合物に変換される。
【0042】
スキームA、B、Cで用いられる合成中間体. 上記一般式1で定義されたと同じ基Pyを含む合成中間体は、スキームDで図示された方法で得られる。
【化6】

【0043】
一般構造式IXのカルボン酸は市場で入手できるか、よく知られた方法でつくられる。ジフェニルホスホリルアジドとの反応はアシルアジドを与え、このものはクルチウス転位を経て一般構造式Vのイソシアネート(このものはその場で用いられる)を与える。一般式Vのイソシアネートを一般式Xのアミンと反応させると一般式IVの尿素が得られる。一般構造式VのイソシアネートをDIPEAなどの酸スカベンジャーの存在下でハロエチルアミン塩酸塩と反応させると一般構造式IIの尿素が得られる。一般構造式Vのイソシアネートをtert-ブタノールと反応させると対応するカルバモイルエステルが得られ、このものはHClなどの酸水溶液で加水分解されて一般構造式Xのアミンを与える。一般構造式Xのアミンをテトラヒドロフランなどの極性非プロトン性溶媒中で市場で入手できるクロロエチルイソシアネートと反応させると一般構造式IIの尿素が得られる。
【0044】
一般構造式IIIの合成中間体は、 スキームEに図示された方法で得られる。
【化7】

スキームAの一般構造式Iの3-置換-ピペリジン類は、ラセミ体または光学活性体の形で市場で入手できるか、あるいは、当業者によく知られた方法でラセミ体または光学活性の形でつくられる。スキームEの一般構造式XIのハロアルキルカルバメートは、市場で入手できるか、当業者によく知られた方法でつくられる。一般構造式XIのハロアルキルカルバメートによる一般構造式IのピペリジンのN-アルキル化は、THFなどの極性溶媒中にDIPEAなどの酸スカベンジャーを化学量論量よりやや過剰に存在させることにより達成され、一般構造式XIIの化合物が得られる。得られたカルバメートを当業者によく知られた方法、例えばCHClなどの溶媒中にTFAを用いて開裂させると一般構造式IIIの中間体、第1アミン誘導体が得られる。
【0045】
本発明の上述した一般記載をさらに多数の実施例により述べるが本発明はこれらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
実施例

略号リスト:
BSA 牛血清アルブミン
CDI N,N-カルボニルジイミダゾール
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
EDC N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩
EDTA エチレンジアミンテトラ酢酸
ESI エレクトロスプレーイオン化
EtOAc 酢酸エチル
Hex ヘキサン
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
AcOH 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC−MS 液体クロマトグラフィー−質量分析
LDA リチウムジイソプロピルアミド
MeOH メタノール
min 分
MHz メガヘルツ
MS 質量分析法
NMR 核磁気共鳴
ppm 100万分の1
PBS リン酸緩衝化食塩水
sat. 飽和
P 1-プロピルホスホン酸環無水物
TBTU 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3−テトラメチルウ ロニウム ブロマイド
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
保持時間
【0047】
諸反応は、通例どおり、風乾した容器中、窒素ガスなどの不活性雰囲気下で実施する。溶媒は販売者から受け取ったままで使用する。蒸発は、減圧下、温浴50℃でロータリーエバポレーターを用いて実施する。LC−MSキャラクタリゼーションは、Finnigan HP1100プラットフォームを用い、ESIイオン化モードで、Navigator AQK検出器による陽イオンを検出するようにして、実施する。分析のための液体クロマトグラフィー分離は、方法Aまたはここに示した方法Bで実施する。方法Aは寸法30×4.6mmのC18カラムで、(0.04%のTFAを含有する)水中で1分間に2〜95%の勾配を示すCHCN(0.013TFAを含有する)からなる移動相を用い、流速0.45mL/分で実施する。方法Bは寸法30×4.6mmのC18カラムで、1%のギ酸を含有するCHCN-水(1:9)からなるアイソクラティック移動相を用いる。保持時間(t)は分で表わす。TLCは、予め塗布したシリカゲル60F254ガラス支持プレート(メルク)を用いて実施する。分取HPLCは、バリアン/ギルソン(Varian/Gilson)プラットホーム上で、寸法60×21mmのC18カラムを用い、0.05%のギ酸を含有する水中で2〜95%のCHCN勾配からなる移動相を用いて実施する。
【0048】
実施例1
1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸メチル-フェニル-アミド

1A. 1-(2-クロロ-エチル)-3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-尿素
【化8】

4-アミノ-2-メチルキノリン (12.6 g, 80 mmol)をTHF(480 mL)中に溶解した溶液に2-クロロエチルイソシアネート(10.2 mL, 120 mmol)を室温で添加する。反応混合物を40時間室温で撹拌する。MeOH(100 mL)を加え、撹拌をさらに1時間続ける。この反応混合物を蒸発させ残留物をCHClに入れる。有機層を1N HCl(250 mL)と一緒に振り、得られた沈殿物を濾過して集める。固形物をCHCl (100 mL)、飽和NaHCO (2×100 mL)、水(4×100 mL)で洗浄する。得られた固形物を高真空下室温で14時間乾燥して表題化合物を得る。

1B. 1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸エチル エステル
【化9】

ニペコチン酸エチル(10 mmol)、1-(2-クロロ-エチル)-3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-尿素 (10 mmol)、NaHCO (20 mmol)、NaI(0.5 mmol)、およびTHF(70 mL)の混合物を密封容器内で70℃にて6日間撹拌する。この反応混合物を濾過し、蒸発乾固し、残留物を分取HPLCで精製し表題化合物を得る。

1C. 1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸
【化10】

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸エチル エステル(5.5 mmol)を6N-HCl水(20 mL)中に溶解した溶液を50℃で15時間撹拌する。この混合物を蒸発し、残留物を乾燥し、表題化合物を二塩酸塩として得る。

1D. 1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸メチル-フェニル-アミド
【化11】

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸二塩酸塩 (64.25 mg, 0.15 mmol)、TEA(0.07 mL,0.5 mmol)およびN-メチルアニリン(11 mg, 0.1 mmol)をDMF(0.6 mL)中に縣濁した縣濁物に、TP(EtOAc中に50%,0.07 mL,0.12 mmol)を室温で添加する。この混合物を15時間撹拌し、飽和NaCO (5 mL)で反応を停止させCHCl (3×10 mL)で抽出する。有機相を乾燥(NaSO)し、濾過し、 蒸発し残留物を分取HPLCで精製して表題化合物を得る。
【0049】
次の化合物を類似の方法で製造する。カッコ内の値は上記実験項で記載したと同じ分析方法Bにより得られる。
【表3】

【表4】

【0050】
実施例17 試験管内生物学的特性決定

ウロテンシンIIの作用に対する一般式Iの化合物の阻害活性は下記の試験法を用いて証明できる。
【0051】
1)ヒト[125I]-ウロテンシンIIの横紋筋肉腫細胞株への結合の阻害

ヒト由来TE-671横紋筋肉腫細胞(ドイツ微生物・細胞培養コレクション、細胞株#ACC-263)を用い、全細胞エンドセリン結合アッセイ(V Breuら、R-46-2005の試験管内特性決定、新規合成非ペプチドETおよびET受容体の拮抗剤、FEBS Lett.1993,334.210−214)を改変する方法により、ヒト[125I]ウロテンシンIIの全細胞結合を行なう。
【0052】
アッセイはポリプロピレン製マイクロタイタープレート(Nunc、カタログ番号442587)上、25mMのHEPES(Fluka、カタログ番号05473)、1.0%のDMSO(Fluka、カタログ番号41644)および0.5%(w/v)のフラクションV BSA(Fluka、カタログ番号05473)を含有するダルベッコ(Dulbecco)の改良イーグル培地、pH7.4(GIBCO BRL、カタログ番号31885-023)、250μL中で実施する。縣濁させた30万個の細胞を、20pMヒト[125I]ウロテンシンII(Anawa Trading SA、ヴァンゲン、スイス、2130Ci/mmol)および種々濃度の無標識拮抗物質とともに、20℃で4時間ゆるやかに振りながらインキュベートする。それぞれ100nMの無標識U-IIを含むおよび含まない試料から、極小および極大結合を導く。4時間のインキュベーションの後、細胞をGF/Cフィルタープレート(Packard、カタログ番号6005174)で濾過する。フィルタープレートを乾燥し、次にシンチレーションカクテル(Packard、MicroScint 20 カタログ番号6013621)50μLを各ウエルに加える。マイクロプレートカウンター(Packard Bioscience、TopCount NXT)でフィルタープレートの計数を行なう。
【0053】
試験化合物はすべて100%のDMSOに溶解させ、希釈する。アッセイへの添加に先立ち、アッセイ緩衝液への10倍希釈を行なう。アッセイにおけるDMSOの最終濃度は1.0%であり、この濃度は当該結合を妨害しないことが見出されている。[125I]ヒトU-IIの特異的結合を50%阻害する拮抗物質の濃度をIC50値と定義する。特異的結合は、上記極大結合と極小結合との差である。無標識ヒトU-IIについて、0.206nMというIC50値が見出される。本発明の化合物は、このアッセイで10〜1000nMの範囲内のIC50値をもつことが見出される。
【0054】
2)摘出ラット大動脈弓のヒトウロテンシンII誘発収縮の阻害:

成獣ウィスターラットを麻酔し、放血する。大動脈弓を摘出し、切開し、3〜5mmのリングを切り取る。内膜表面を穏やかに擦って内皮を除去する。リングを37℃に保ったクレブス-ヘンゼライト(Krebs-Henseleit)液(mM単位で;NaCl 115、KCl 4.7、MgSO1.2、KHPO 1.5、NaHCO 25、CaCl 2.5、グルコース 10)を満たした10mLの摘出臓器浴中に縣濁させ、95%のOと5%のCOを通気する。クレブス-ヘンゼライト液にインドメタシン(10-5M)を加えて、エイコサノイドの産生を防止する。リングを静止張力1gまで牽引する。力トランスデューサ(EMKA Technologies SA、パリ、フランス)を用いて、等尺性張力の変化を記録する。平衡状態後に、リングを
KCl(60mM)で短時間収縮させる。試験化合物またはそのベヒクルとともに10分間インキュベートしたのち、累積量のヒトウロテンシンII(10-12M〜10-6M)を加える。機能拮抗作用をウロテンシンIIに対する極大収縮の阻害として記録する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1の化合物、
【化1】

式中:
Pyは、2位が-NRでモノ置換されたピリジン-4-イル;2位が-NRで、および6位が低級アルキルまたはアリール-低級アルキルでジ置換されたピリジン-4-イル;未置換キノリン-4-イル;2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イル;2位が低級アルキルで、および6、7、または8位がハロゲン、低級アルキル、またはアリール-低級アルキルでジ置換されたキノリン-4-イルを表す;

Xは、RNCO-を表す。

およびR は、水素;低級アルキル;またはアリール-低級アルキルを独立して表す;

およびR は、水素; 低級アルキル; アリール; アリール-低級アルキル;またはアリールでジ置換された低級アルキルを独立して表し、または環原子としてR およびRが結合している窒素原子と共にピロリジン、ピペリジンまたはモルホリン環を形成する;

および医薬品として許容可能な塩類、溶媒コンプレックス、および形態学的な形状と同様に、光学的に純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマー、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物、ジアステレオマーラセミ体、およびジアステレオマーラセミ体混合物。
【請求項2】
一般式1において、Xはアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、RおよびPyは一般式1で記載した意味を有する一般式1の化合物。
【請求項3】
一般式1において、Pyは未置換キノリン-4-イルまたは2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イルを表し、Xは一般式1で記載した意味を有する一般式1の化合物。
【請求項4】
一般式1において、Pyは、2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、ここで、R は、アリール-低級アルキルを表し、R は低級アルキルを表し、Xは一般式1で定義された意味を有する一般式1の化合物。
【請求項5】
一般式1において、Pyは、2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、ここで、R は水素を表し、 R およびXは一般式1で定義された意味を有する一般式1の化合物。
【請求項6】
一般式1において、Xは、アリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyは未置換キノリン-4-イルまたは2位が低級アルキルでモノ置換されたキノリン-4-イルを表し、R は一般式1で定義された意味を有する一般式1の化合物。
【請求項7】
一般式1において、Xはアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyは2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、ここでR はアリール-低級アルキルを表し、R は低級アルキルを表し、R は一般式1で定義された意味を有する一般式1の化合物。
【請求項8】
一般式1において、Xはアリール-NRCO-またはアリール-低級アルキル-NRCO-を表し、Pyは2位がRN-で置換されたピリジン-4-イルを表し、 ここで、R は水素を表し、R およびR は一般式1で定義された意味を有する一般式1の化合物。
【請求項9】
下記のグループから選ばれる請求項1乃至8のいずれか一つに記載の化合物:

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸メチル-フェニル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ナフタレン-2-イルアミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ナフタレン-1-イルアミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ベンジルアミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸フェネチル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ベンジル-メチル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸メチル-フェネチル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸(4-フェニル-ブチル)-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ベンジル-フェニル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸(3-クロロ-フェニル)-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸(2-クロロ-フェニル)-メチル-アミド

1-{2-[3-(4-ベンジル-ピペリジン-1-カルボニル)-ピペリジン-1-イル]-エチル}-3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-尿素

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸ベンジル-フェネチル-アミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸4-ブロモ-ベンジルアミド

1-{2-[3-(2-メチル-キノリン-4-イル)-ウレイド]-エチル}-ピペリジン-3-カルボン酸(3-フェニル-プロピル)-アミド

1-[2-(3-キノリン-4-イル-ウレイド)-エチル]-ピペリジン-3-カルボン酸ジエチルアミド
【請求項10】
ウロテンシンIIまたはウロテンシンII受容体の調節不全に関連する疾患、または高血圧、アテローム性動脈硬化、アンギナまたは心筋虚血、うっ血性心不全、心不全、心不整脈、腎虚血、慢性腎疾患、腎不全、卒中、脳血管痙攣、脳虚血、痴呆、偏頭痛、くも膜下出血、糖尿病、糖尿病性動脈症、糖尿病性腎症、結合組織疾患、肝硬変、喘息、慢性閉塞性肺疾患、高地肺水腫、レイノー症候群、門脈圧亢進、甲状腺機能不全、肺水腫、肺高血圧、または肺線維症を含む血管または心筋機能不全に関連する疾患の治療のための請求項1乃至9のいずれか一つの化合物および通常のキャリア物質および補助剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
バルーンまたはステント血管形成術後の再狭窄を含む疾患の治療のため、癌、前立腺肥大、勃起障害、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、グラム陰性菌敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球急性胸部症候群、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障の治療、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術の合併症または臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、嗜癖、精神分裂病、アルツハイマー病、不安、強迫行動、てんかん発作、ストレス、うつ病、痴呆、神経筋異常、または神経変性疾患の治療および予防のための請求項1乃至9のいずれか一つの化合物および通常のキャリアー物質および補助剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
高血圧、アテローム性動脈硬化、アンギナまたは心筋虚血、うっ血性心不全、心不全、心不整脈、腎虚血、慢性腎疾患、腎不全、卒中、脳血管痙攣、脳虚血、痴呆、偏頭痛、くも膜下出血、糖尿病、糖尿病性動脈症、糖尿病性腎症、結合組織疾患、肝硬変、喘息、慢性閉塞性肺疾患、高地肺水腫、レイノー症候群、門脈圧亢進、甲状腺機能不全、肺水腫、肺高血圧、または肺線維症、バルーンまたはステント血管形成術後の再狭窄、癌、前立腺肥大、勃起障害、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、グラム陰性菌敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、鎌状赤血球急性胸部症候群、糸球体腎炎、腎仙痛、緑内障の治療、糖尿病合併症、血管または心臓外科手術の合併症、または臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、嗜癖、精神分裂病、アルツハイマー病、不安、強迫行動、てんかん性発作、ストレス、うつ病、痴呆、神経筋障害または神経変性疾患の治療および予防のために他の薬理学的に活性な化合物と組み合わせた請求項1乃至9のいずれか一つまたは一つ以上の化合物の使用。
【請求項13】
ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、エンドセリン受容体拮抗薬、バソプレシン拮抗薬、β−アドレナリン拮抗薬、α−アドレナリン拮抗薬、バソプレシン拮抗薬、TNFアルファ拮抗薬、またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体モジュレータを含む他の薬理学的に活性な化合物と組み合わせた請求項1乃至9のいずれか一つに記載の一つまたは一つ以上の化合物の使用。
【請求項14】
請求項10および11のいずれか一つの医薬組成物を投与することにより請求項10乃至13のいずれか一つに記載の疾患を患う患者の治療方法。






【公表番号】特表2006−525274(P2006−525274A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505366(P2006−505366)
【出願日】平成16年5月4日(2004.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004717
【国際公開番号】WO2004/099180
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】