説明

新規キラルリンリガンド

本発明は、式(Ia)及び(Ib)[式中、R〜R及びXは、本明細書に定義のとおりである]で示される一連の新規キラルリンリガンドに関する。本発明はまた、これらのキラルリンリガンドを用いて調製したキラル金属錯体に関する。キラル金属錯体は、不斉水素化を実施するための触媒として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、不斉水素化に適用するための触媒としての一連の新規キラルリンリガンド及びその金属錯体に関する。より詳細には、本発明は、これらの新規ホスフィンリガンドの遷移金属錯体及び不斉水素化における触媒としてのその使用に関する。
【0002】
発明の背景
鏡像異性体的に純粋な医薬、農薬、香味料、及び他のファインケミカルの製造に対する需要の増大は、不斉触媒技術の分野を進歩させた。効率的な不斉金属触媒転換の発展は、不斉触媒の進歩について中心的な役割を果たしてきた(Jacobsen, E. N., Pfaltz, A., Yamamoto, H., Eds., Comprehensive Asymmetric Catalysis, Springer, Berlin, 1999; Ojima, I., Ed, Catalytic Asymmetric Synthesis, VCH, New York, 1993;及びNoyori, R. Asymmetric Catalysis In Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc, New York, 1994)。最も成功した転換には、不斉水素化、不斉エポキシ化及びジヒドロキシル化があり、それらは、その効率性、平易性、実際性により、2001年のノーベル賞を受賞した。キラルリガンドの設計は、新しい効率的な不斉金属触媒反応を開発する上で非常に重要なものとなり、また今後もそうあり続けるであろう。
【0003】
プロキラルオレフィン、ケトン、及びイミンの還元のための分子の水素を利用する不斉水素化は、キラル化合物を構築するための最も効率的な方法の一つとなっている。それはまた、商業的規模での主要な不斉触媒転換の原因でもある。効率的なキラルリンリガンドの開発は、不斉水素化の成功にとって不可欠である。この分野の公知のキラルリンリガンドには、KnowlesのDIPAMP [Knowles, W. S. Acc. Chem. Res. 1983, 16, 106]、KaganのDIOP [Kagan et al, J. Am. Chem. Soc.1972, 94, 6429]、NoyoriのBINAP [Noyori, R. Chem. Soc. Rev. 1989, 18, 187]、BurkのDuphos及びBPE [Burk, M. J. et al, Organometallics 1990, 9, 2653; Burk, M. J. et al, Angew. Chem., Int. Ed. Engl.1990, 29, 1462]、ImamotoのBisP*[Imamoto, T. et al, J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 1799]、ZhangのPennPhos [Zhang, X. et al, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1999, 38, 516]及びTangPhos [US2004/0229846及びZhang, X. et al, Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 1613.]、Pfizerのtrichickenfootphos[WO2005/087370及びHoge, G. et al, J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5966]が含まれる。
【0004】
不斉水素化の分野で多大な進展がなされ、多くの効率的なキラルリガンドが開発されてきたが、様々な種類のプロキラル基質の水素化のための普遍的なリガンドが存在しないために、新しい効率的なリガンドの設計が依然として重要となっている。
【0005】
発明の簡単な概要
我々は、不斉水素化において優れた反応性及びエナンチオ選択性を示す一連の新規かつ効率的なキラルリンリガンドを開発した。α−アリールエナミド、α−デヒドロアミノ酸誘導体、及びβ−デヒドロアミノ酸誘導体の不斉水素化において、高いエナンチオ選択性が達成された。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】Rh[(nbd)((2R,2’R,3R,3’R)−BIBOP)]BF(H原子は省略する)[ここで、原子上の各文字(C、O、P、Rh、B、及びF)は、それぞれ、炭素、酸素、リン、ロジウム、ホウ素及びフッ素を指す]のX線結晶構造を示す。
【0007】
発明の詳細な説明
略語:
DCM=ジクロロメタン
DMF=ジメチルホルムアミド
EtOH=エタノール
EtOAC=酢酸エチル
MeOH=メタノール
MTB=メチルtert−ブチルエーテル
nbd=ノルボルナジエン
PCy=トリ(シクロヘキシル)ホスフィン
THF=テトラヒドロフラン
TfO=トリフルオロメタンスルホナート又はトリフラート
【0008】
その最も広い実施態様において、本発明は、新規ホスフィンリガンド、本発明の新規ホスフィンリガンドを含有する新規金属錯体、及び下記に記載する不斉水素化を実施するための新規金属錯体の使用方法に関する。
【0009】
本発明のホスフィンリガンド
上記のとおり、一つの実施態様において、本発明は、式(Ia)、(Ib):
【化1】


[式中:
Xは、O、S、又は−NRであり;
は、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
は、H、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、−NR、又は−SR(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
は、−PR、−CHPR、−CHOPR、あるいは式(A)又は(B)の基:
【化2】


(ここで、式(A)又は(B)の基のX、R及びRは上記に定義のとおりであり、そして式(A)の基は式(Ia)の化合物にのみ結合し、式(B)の基は式(Ib)の化合物にのみ結合する)であり;
は、H、−(C−C)アルキル、−(C−C)シクロアルキル、−(3〜6員)ヘテロシクロアルキル、フェニル、(5〜6員)ヘテロアリール、又は−SiR(ここで、前記Rの前記−(C−C)アルキルは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)シクロアルキル、フェニル、及び−(5〜6員)ヘテロアリールより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されており、そして前記Rの前記−(C−C)シクロアルキル、−(3〜6員)ヘテロシクロアルキル、フェニル、及び(5〜6員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、又は−(5〜11員)ヘテロアリール(ここで、前記R及びRの各−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、ハロ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)であり;そして
及びRは、それぞれ独立して、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記R及びRの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、それぞれ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)である]で示される化合物、又はその混合物(「本発明のホスフィンリガンド」)に関する。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、XがOである、直前に記載の実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、XがSである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、XがNRである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、Rが、−CH、−CHCH、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH、又は−C(CHCH)(CHより選択される−(C−C)アルキルである、先行する実施態様のいずれかに係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0014】
別の実施態様において、本発明は、Rが、シクロペンチル、シクロヘキシル、及び1−アダマンチルより選択される−(C−C10)カルボシクリルである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、Rが、フェニル、オルト−トリル、パラ−トリル、3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−CF−フェニル、オルト−CF−フェニル、オルト−アニシル、及びナフチルより選択される−(C−C10)アリールである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、Rが、H、−CH又は−OCHである、先行する実施態様のいずれかに係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、Rがフェニルである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0018】
別の実施態様において、本発明は、Rが−Hである、先行する実施態様のいずれかに係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0019】
別の実施態様において、本発明は、Rが、−OCH、−(C−C)シクロアルキル、フェニル、及び−(5〜6員)ヘテロアリールより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている−(C−C)アルキルである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0020】
別の実施態様において、本発明は、Rが、−CH(キラルオキサゾリン)又は−CH(オルト置換ピリジン)である、直前に記載の実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0021】
別の実施態様において、本発明は、Rが、オルト置換ピリジン、オキサゾリン、及びキラルオキサゾリンより選択される−(5〜6員)ヘテロアリールである、上記に記載の最も広い実施態様に係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物に関する。
【0022】
別の実施態様において、本発明は、Rが、−PR又は式(A)の基である、先行する実施態様のいずれかに係る式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物(「本発明のビスホスフィンリガンド」)に関する。
【0023】
別の実施態様において、本発明は、Rが−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり、そしてRが−PRである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0024】
別の実施態様において、本発明は、R及びRが、それぞれ独立して、H、−(C−C)アルキル、又は−(C−C)シクロアルキルである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0025】
別の実施態様において、本発明は、R及びRが、それぞれ、−C(CHである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0026】
別の実施態様において、本発明は、XがSである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、XがOである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、XがNRである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は、XがOであり、Rが−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり、そしてRが−PRである、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、Rが、式(A)又は(B)の基である、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0031】
別の実施態様において、本発明は、Rが−C(CHであり、そしてRが−H、−CH、−OCH、又はフェニルである、直前に記載の実施態様に係る本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0032】
別の実施態様において、本発明は、XがOであり、Rが−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり;そしてRが式(A)又は(B)の基である、本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0033】
別の実施態様において、本発明は、式(IIa)又は(IIb):
【化3】


[式中、
は、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH)(CH、シクロヘキシル、1−アダマンチル、フェニル、オルト−トリル、3,5−キシリル、オルト−アニシル、又はフェロセニルであり;そして
は、H、−OCH、−CH、−CF、フェニル、又は−N(CHである]を有する本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0034】
別の実施態様において、本発明は、式(IIIa)又は(IIIb):
【化4】


[式中、
は、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH)(CH、シクロヘキシル、又は1−アダマンチルであり;
は、H、−OCH、−CH、−CF、フェニル、又は−N(CHであり;そして
及びRは、それぞれ、−C(CHである]を有する本発明のビスホスフィンリガンドに関する。
【0035】
一つの実施態様において、本発明は、以下:
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ−4−メトキシ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、及び
(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール
より選択される本発明のホスフィンリガンドに関する。
【0036】
本発明の金属錯体
上記のとおり、本発明は、遷移金属と本発明のホスフィンリガンドとの間に形成された錯体に関する。したがって、一つの実施態様において、本発明は、式(IVa)、(IVb)、(Va)又は(Vb):
【化5】


[式中、
Mは、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ru、Fe、Rh及びIrより選択される遷移金属であり;
は対アニオンであり;
nは、遷移金属Mの酸化状態であり;
及びLはそれぞれオレフィンであるか、あるいはL及びLは一緒になってジオレフィンを表し;
Xは、O、S、又は−NRであり;
は、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
は、H、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、−NR、又は−SR(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、又は−(5〜11員)ヘテロアリール(ここで、前記R及びRの各−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、ハロ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)であり;そして
及びRは、それぞれ独立して、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記R及びRの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、それぞれ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)である]で示される金属錯体(「本発明の金属錯体」)に関する。
【0037】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、そしてnが1である、本発明の金属錯体に関する。
【0038】
別の実施態様において、本発明は、AがBF、SbF、TfO、B(C、B[3,5−(CF、又はPFである、直前に記載の2つの実施態様のいずれかに係る本発明の金属錯体に関する。
【0039】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、直前に記載の3つの実施態様のいずれかに係る本発明の金属錯体に関する。
【0040】
別の実施態様において、本発明は、Rが−C(CHであり、そしてRが−H、−CH、−OCH、又はフェニルである、直前に記載の4つの実施態様のいずれかに係る本発明の金属錯体に関する。
【0041】
別の実施態様において、本発明は、L及びLが、一緒になって、ノルボルナジエン及びシクロオクタジエンより選択されるジオレフィンを表す、本発明の金属錯体に関する。
【0042】
別の実施態様において、本発明は、金属錯体が式(IVa)の金属錯体である、本発明の金属錯体に関する。
【0043】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0044】
別の実施態様において、本発明は、L及びLが、一緒になって、ノルボルナジエン及びシクロオクタジエンより選択されるジオレフィンを表す、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0045】
別の実施態様において、本発明は、金属錯体が式(Va)の金属錯体である、本発明の金属錯体に関する。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0047】
別の実施態様において、本発明は、L及びLが、一緒になって、ノルボルナジエン及びシクロオクタジエンより選択されるジオレフィンを表す、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0048】
別の実施態様において、本発明は、金属錯体が式(IVb)の金属錯体である、本発明の金属錯体に関する。
【0049】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0050】
別の実施態様において、本発明は、L及びLが、一緒になって、ノルボルナジエン及びシクロオクタジエンより選択されるジオレフィンを表す、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0051】
別の実施態様において、本発明は、金属錯体が式(Vb)の金属錯体である、本発明の金属に関する。
【0052】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0053】
別の実施態様において、本発明は、L及びLが、一緒になって、ノルボルナジエン及びシクロオクタジエンより選択されるジオレフィンを表す、直前の実施態様に係る本発明の金属錯体に関する。
【0054】
一つの実施態様において、本発明は、以下:
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF及び
Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]−オキサホスホール(nbd)]BF
より選択される本発明の金属錯体に関する。
【0055】
不斉水素化
一つの実施態様において、本発明は、炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物の不斉水素化の方法(「本発明の不斉水素化方法」)に関し、その方法は、炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有する前記化合物を、上記実施態様のいずれかに記載の触媒量の本発明の金属錯体の存在下で、水素と反応させることを含む。炭素−ヘテロ原子二重結合の非限定的な例には、炭素と窒素、酸素、又は硫黄との間に形成されるものが含まれる。好ましい実施態様においては、炭素−ヘテロ原子二重結合は、炭素と窒素又は炭素と酸素との間に形成される。
【0056】
別の実施態様においては、本発明は、L及びLが一緒になってノルボルナジエンを表す、直前に記載の実施態様における本発明の不斉水素化方法に関する。
【0057】
別の実施態様においては、本発明は、L及びLが一緒になってオクタジエンを表す、上記に記載の最も広い実施態様における本発明の不斉水素化方法に関する。
【0058】
別の実施態様において、本発明は、MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、上記に記載の実施態様のいずれかにおける本発明の不斉水素化方法に関する。
【0059】
別の実施態様において、本発明は、Rが−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり、そしてR及びRがそれぞれ−C(CHである、上記に記載の実施態様のいずれかにおける本発明の不斉水素化方法に関する。
【0060】
他に述べない限り、用語「本発明の化合物」は、本発明のホスフィンリガンド(本発明のビスホスフィンリガンドを含む)及び本発明の金属錯体を指す。
【0061】
本出願における本明細書の上記に開示された本発明の全ての化合物について、万一命名法が構造と矛盾する場合には、化合物は構造により定義されることが理解されよう。
【0062】
本発明の化合物はまた、その同位体標識形態を包含する。本発明の化合物の同位体標識形態は、本発明の前記化合物の1個以上の原子が、自然界で通常見出される前記原子の原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する1個又は複数の原子により置き換えられているという事実を除けば、本発明の前記化合物と同一である。容易に商業的に入手可能であり、かつ十分確立された手順に従って本発明の組み合わせの活性剤に組み込むことができる同位体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clが含まれる。1個以上の上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物は、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0063】
本発明は、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物ならびに個々のジアステレオマーとして生じうる1個以上の不斉炭素原子を含有する上述の任意の化合物の使用を包含する。異性体は、鏡像異性体及びジアステレオマーと定義されよう。これらの化合物のそのような全ての異性体形態は、明白に、本発明に包含される。各ステレオジェニック(stereogenic)炭素は、R又はS配置、あるいはそれらの配置の組み合わせで存在してよい。
【0064】
本発明の化合物の幾つかは、1個より多い互変異性体形態で存在することができる。本発明は、そのような全ての互変異性体を使用する方法を包含する。
【0065】
本明細書中で使用する全ての用語は、他に述べない限り、当技術分野で公知のその通常の意味で理解されよう。例えば、「C1−6アルコキシ」又は「O(C1−6)アルキル」は、末端に酸素を有する(C1−6)アルキル、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシである。全てのアルキル、アルケニル、及びアルキニル基は、構造的に可能な場合、かつ他に特定しない限り、分岐鎖状又は非分岐鎖状であると理解されよう。他のより具体的な定義は以下のとおりである。
【0066】
用語「アルキル」は、分岐鎖状及び非分岐鎖状アルキル基の両方を指す。「アルキ(alk)」又は「アルキル」の接頭辞を使用する任意の組み合わせの用語は「アルキル」の上記定義に従う類似体を指すことが理解されよう。例えば、「アルコキシ」、「アルキルチオ」などの用語は、酸素又は硫黄原子を介して第二の基に結合しているアルキル基を指す。「アルカノイル」は、カルボニル基(C=O)に結合しているアルキル基を指す。
【0067】
全てのアルキル基又は炭素鎖において、1個以上の炭素原子は、O、S又はNなどのヘテロ原子により場合により置き換えられることができる。Nが置換されていない場合、それはNHであると理解されよう。ヘテロ原子は、分岐鎖状又は非分岐鎖状炭素鎖内の末端の炭素原子又は内部の炭素原子のいずれかと置き換わってよいことも理解されよう。そのような基は、本明細書で上述のとおり、オキソなどの基により置換されることができ、その結果、アルコキシカルボニル、アシル、アミド及びチオキソ(これらに限定されない)などの定義がもたらされる。本明細書で使用されるとき、「窒素」及び「硫黄」には、窒素及び硫黄の任意の酸化形態ならびに任意の塩基性窒素の四級化形態が含まれる。例えば、−S−C1−6アルキルラジカルについては、他に特定しない限り、−S(O)−C1−6アルキル及び−S(O)−C1−6アルキルを包含するものと理解されよう。
【0068】
用語「(C3−10)炭素環」は、非芳香族3〜10員(しかし、好ましくは、3〜6員)単環式炭素環式ラジカル、あるいは非芳香族6〜10員縮合二環式、架橋二環式、又はスピロ環式炭素環式ラジカルを指す。C3−10炭素環は飽和又は部分不飽和のいずれであってもよく、炭素環は環の任意の原子により結合されていてもよく、その結果、安定な構造が生成される。3〜10員単環式炭素環の非限定的な例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロヘプテニル、及びシクロヘキサノンが含まれる。6〜10員縮合二環式炭素環式ラジカルの非限定的な例には、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、及びビシクロ[4.4.0]デカニル(デカヒドロナフタレニル)が含まれる。6〜10員架橋二環式炭素環式ラジカルの非限定的な例には、ビシクロ[2.2.2]ヘプタニル、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、及びビシクロ[3.2.1]オクタニルが含まれる。6〜10員スピロ環式炭素環式ラジカルの非限定的な例には、スピロ[3,3]ヘプタニル、スピロ[3,4]オクタニル及びスピロ[4,4]ヘプタニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
用語「(C6−10)アリール」は、6〜10個の炭素環原子を含有する芳香族炭化水素環を指す。用語C6−10アリールは、環の少なくとも1個が芳香族である単環式環及び二環式環を包含する。C6−10アリールの非限定的な例には、フェニル、インダニル、インデニル、ベンゾシクロブタニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、ベンゾシクロヘプタニル及びベンゾシクロヘプテニルが含まれる。
【0070】
用語「(5〜11員)複素環」は、安定な非芳香族4〜8員単環式複素環式ラジカル又は安定な非芳香族6〜11員縮合二環式、架橋二環式又はスピロ環式複素環式ラジカルを指す。5〜11員複素環は、炭素原子、ならびに窒素、酸素及び硫黄より選択される1個以上、好ましくは1〜4個のヘテロ原子からなる。複素環は、飽和又は部分不飽和のいずれであってもよい。非芳香族4〜8員単環式複素環式ラジカルの非限定的な例には、テトラヒドロフラニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、チオモルホリニル、1,1−ジオキソ−1λ−チオモルホリニル、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、及びアゼピニルが含まれる。非芳香族6〜11員縮合二環式ラジカルの非限定的な例には、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロベンゾフラニル、及びオクタヒドロベンゾチオフェニルが含まれる。非芳香族6〜11員架橋二環式ラジカルの非限定的な例には、2−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、及び3−アザビシクロ[3.2.1]オクタニルが含まれる。非芳香族6〜11員スピロ環式複素環式ラジカルの非限定的な例には、7−アザ−スピロ[3,3]ヘプタニル、7−スピロ[3,4]オクタニル、及び7−アザ−スピロ[3,4]オクタニルが含まれる。
【0071】
用語「(5〜11員)ヘテロアリール」は、環の少なくとも1個が芳香族である、芳香族5〜6員単環式ヘテロアリール又は芳香族7〜11員ヘテロアリール二環式環(ここで、ヘテロアリール環は、N、O及びSなどの1〜4個のヘテロ原子を含有する)を指す。5〜6員単環式ヘテロアリール環の非限定的な例には、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、テトラゾリル、トリアゾリル、チエニル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、及びプリニルが含まれる。7〜11員ヘテロアリール二環式ヘテロアリール環の非限定的な例には、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、ジヒドロ−2H−キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、インダゾリル、チエノ[2,3−d]ピリミジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾオキサゾリル及びベンゾチアゾリルが含まれる。
【0072】
(C3−10)炭素環式環、(5〜11員)複素環式環、二環式アリール環の非芳香族部分、及び二環式ヘテロアリール環の非芳香族部分のそれぞれにおける1〜3個の炭素環部分は、独立して、カルボニル、チオカルボニル、又はイミニル部分、即ち、それぞれ、−C(=O)−、−C(=S)−及び−C(=NR)−(ここで、Rは上記に定義のとおりである)で置き換えられることができることが理解されるであろう。
【0073】
本明細書で使用される用語「ヘテロ原子」は、O、N、及びSなどの炭素以外の原子を意味するものと理解されよう。
【0074】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」は、臭素、塩素、フッ素又はヨウ素を意味するものと理解されよう。定義「ハロゲン化」、「部分又は完全ハロゲン化」、部分又は完全フッ素化、「1個以上のハロゲン原子により置換されている」には、例えば、1個以上の炭素原子上のモノ、ジ又はトリハロ誘導体が含まれる。アルキルについては、非限定的な例は−CHCHF、−CFなどであろう。
【0075】
本明細書に記載の各アルキル、炭素環、複素環又はヘテロアリール、あるいはその類似体は、場合により部分的又は完全にハロゲン化されているものと理解されよう。
【0076】
本明細書で使用される用語「オレフィン」は、二重結合により結合されている炭素原子を含有する不飽和炭化水素(即ち、アルケン)、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、スチレン、ノルボルナジエン、又はシクロオクタジエンを指す。用語「ジオレフィン」は、二重結合により結合されている2対の炭素原子を含有する不飽和炭化水素、例えば、ノルボルナジエン、又はシクロオクタジエンを指す。
【0077】
本発明の化合物は、以下に記載の一般的合成方法を使用して製造してもよく、それらも本発明の一部分を構成する。
【0078】
一般的合成方法
本発明はまた、式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va及びVbの化合物の製造方法を提供する。全ての方法において、他に特定しない限り、下記の式におけるR、R、R、R、R、R、L、L、A、M及びnは、本明細書において上述の本発明の式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va及びVbにおける、R、R、R、R、R、R、L、L、A、M及びnの意味を有するであろう。
【0079】
最適な反応条件及び反応時間は、使用する特定の反応物に応じて変化しうる。他に特定しない限り、溶媒、温度、圧力、及び他の反応条件は、当技術分野で通常の知識を有する者が容易に選択しうる。具体的な手順は実施例部分に与えられている。典型的には、反応の進行は、所望であれば薄層クロマトグラフィー(TLC)により監視し、中間体及び生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー及び/又は再結晶化により精製してもよい。以下の実施例は説明的なものであり、当業者が理解するとおり、個々の化合物について、必要に応じて、過度の実験を行わずに特定の試薬又は条件を改変することが可能である。
【0080】
出発物質及び試薬は市販であっても、化学文献に記載の方法を使用して当業者が調製してもよい。式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va及びVbの初期生成物を、当技術分野で公知の方法により更に改変して、式Ia、Ib、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va及びVbの更なる化合物を製造してもよい。
【0081】
XがOである、式Ia、Ib、IIa及びIIbの化合物は、スキーム1に示すとおり調製しうる。
【0082】
【化6】

【0083】
スキーム1に示すように、ジメトキシフェニルリチウムVIを、好適な溶媒中、アルキルマグネシウムクロリド及び過酸化水素の存在下で、式VIIのジクロロホスフィンと反応させて、式VIIIのホスフィンオキシドを得る。ホスフィンオキシドVIIIを、好適な溶媒中、好適な塩基の存在下でヨード化して、式IXのヨード化中間体を得る。化合物IXのメトキシ基を、三臭化ホウ素(BBr)などの試薬により脱メチル化し、続いて環化して、対応する式Xの環化中間体を得る。中間体Xを、(+)クロロギ酸メンチルなどの分割剤を使用して分割して、対応する式XIaの(R)異性体を得る。化合物XIaのヒドロキシル基を、文献において公知の標準的な反応条件下で、メトキシ、アリールなどの他の基に改変して、式XIIaの化合物を得てもよい。式XIIaの化合物を、好適な溶媒中、好適な塩基及び塩化銅の存在下で反応させて、式XIIIaの対応するビスホスフィンオキシドを得る。ビスホスフィンオキシドXIIIaを還元して、式Ia又はIIaの化合物を得る。
交互に、中間体Xを、(−)クロロギ酸メンチルなどの分割剤を使用して分割して、対応する(S)異性体XIbを得て、それを、上記スキームを使用して、式Ib又はIIbの化合物に変換してもよい。
【0084】
式IIIa及びIIIbの化合物は、スキーム2に示すとおりに調製しうる。
【0085】
【化7】

【0086】
スキーム2に示すとおり、スキーム1により得られた式XIIbの化合物を、好適な塩基及び過酸化水素の存在下で、式XIVの塩化リンと反応させて、式XVbのビスホスフィンオキシドを得る。スキーム1のとおり、ビスホスフィンオキシドXVbを還元して、式IIIbの化合物を得る。
交互に、式XIIaの化合物を、スキーム2で示した方法を使用して、式IIIaの化合物に変換してもよい。
【0087】
式IVa及びIVbの化合物は、スキーム3に従って調製しうる。
【0088】
【化8】

【0089】
スキーム3に示すとおり、式IIaの化合物を、好適な溶媒中で、遷移金属塩[M(L)]n+nAと反応させて、式IVaの化合物を得る。同様に、式IIbの化合物から出発して、対応する式IVbの化合物を得る。
【0090】
式Va及びVbの化合物は、スキーム4に従って調製しうる。
【0091】
【化9】

【0092】
スキーム4に示すとおり、式IIIbの化合物を、好適な溶媒中で、遷移金属塩[M(L)]n+nAと反応させて、式Vbの化合物を得る。同様に、式IIIaの化合物から出発して、対応する式Vaの化合物を得る。
【0093】
式Ia及びIbの化合物はまた、スキーム5に示すとおりに調製しうる。
【0094】
【化10】

【0095】
スキーム5に示すとおり、式XVIの化合物を、好適な溶媒中、アルキルマグネシウムクロリド及び過酸化水素の存在下で、式VIIのジクロロホスフィンと反応させて、式XVIIのホスフィンオキシドを得る。X=O、S又はNRであり、PG及びPGはメチル、ベンジル、メトキシメチルなどの好適な保護基である。ホスフィンオキシドXVIIを、好適な溶媒中、好適な塩基の存在下でヨード化して、式XVIIIのヨード化中間体を得る。化合物XVIIIを脱保護し、続いて環化して、対応する式XIXの環化中間体を得る。化合物XIXを更に脱保護し、続いて中間体ヒドロキシル化合物を、(+)クロロギ酸メンチルなどの分割剤を使用して分割して、対応する式XXaの(R)異性体を得る。化合物XXaのヒドロキシル基を、文献において公知の標準的な反応条件下で、メトキシ、アリールなどの他の基に改変して、式XXIaの化合物を得てもよい。化合物XXIaを、スキーム1に示す方法により、式Iaの化合物に変換してもよい。
交互に、中間体を、(−)クロロギ酸メンチルなどの分割剤を使用して分割して、対応する(S)異性体XXIbを得て、それを、スキーム1に記載の方法により、式Ibの化合物に変換してもよい。
【0096】
本発明の全ての化合物は、上記及び下記の実施例部分に記載の方法により調製しうる。
【0097】
実施例
実施例1〜4
実施例1〜4は、以下に示すとおり、(R)−3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール−4−オールオキシド((R)−3)の調製について記載する。
【0098】
【化11】

【0099】
実施例1 tert−ブチル(2,6−ジメトキシフェニル)(メチル)ホスフィンオキシド(1)の調製。
THF(50mL)中のジクロロメチルホスフィン(6.61g、57mmol、1.0当量)の溶液に、1.0M tBuMgCl(57mL、57mmol、1.0当量)を、反応温度を<−10℃に制御しながら、1時間かけて滴下した。混合物を−10〜0℃で1時間撹拌し、次に1時間かけて25℃に温め、少なくとも1時間25℃で撹拌した。分離フラスコ内のTHF(50mL)中の1,3−ジメトキシベンゼン(9.37g、68mmol、1.2当量)の溶液に、1.6M BuLi(42.4mL、68mmol、1.2当量)を、温度を<0℃に制御しながら、1時間かけて加えた。混合物を、0℃で0.5時間更に撹拌した。ジクロロメチルホスフィンとBuMgClの上記混合物に、反応温度を<25℃に制御しながら、0.5時間かけて、上記で作成した2,6−ジメトキシフェニルリチウム(インサイチューで生成)の混合物を滴下した。得られた混合物を25℃で1時間更に撹拌した。混合物に、30%Hを0℃で10分間かけて滴下し、混合物を25℃で0.5時間更に撹拌し、次に、2N HCl(300mL)及びジクロロメタン(300mL)を加えてクエンチした。ジクロロメタン層をブライン(300mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc〜EtOAc/MeOH 4/1;290nmで監視)により精製して、1を粘稠な油状物として得た(9.5g、37mmol、65%)。1:1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.41 (m, 1H), 6.60 (dd, J = 8.4, 3.8 Hz, 2H), 3.84 (s, 6H), 1.83 (d, J = 13.2 Hz, 3H), 1.18 (d, J = 15.4 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 51.4; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 163.1 (d, J = 1.0 Hz), 133.7 (d, J = 1.0 Hz), 107.3 (d, J = 82 Hz), 104.5 (d, J = 6 Hz), 55.65, 34.6 (d, J = 72 Hz), 24.4 (d, J = 1.6 Hz), 15.8 (d, J = 69 Hz); ESI-MS: m/z 257 [M +H]+.
【0100】
実施例2:tert−ブチル(2,6−ジメトキシフェニル)(ヨードメチル)ホスフィン(2)の調製。
THF(40mL)中の1(7.4g、28.9mmol、1当量)及びTMEDA(6.50mL、43mmol、1.5当量)の溶液に、−78℃で、ヘキサン(13.9mL、35mmol、1.2当量)中の2.5M BuLiを10分間かけて加えた。得られた混合物を−78℃で1時間撹拌した。混合物に、−78℃で、THF(20mL)中のヨウ素(11.0g、43mmol、1.5当量)を、温度を<−70℃に制御しながら加えた。添加後、混合物を−78℃で0.5時間更に撹拌し、次に1時間かけて25℃に温めた。混合物に、10%NaHSO溶液(100mL)及びジクロロメタン(100mL)を加えた。ジクロロメタン層をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc〜EtOAc/MeOH 10/1;290nmで監視)により精製して、2を粘稠な油状物として得た(8.8g、23.0mmol、80%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.40 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 6.56 (dd, J = 8.4, 4.0 Hz, 2H), 3.80 (s, 6H), 3.79 (m, 1H), 3.34 (dd, J = 11.2, 8.3 Hz, 1H), 1.18 (d, J = 15.6 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 50.4; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 163.2, 134.2, 104.9 (d, J = 63 Hz), 104.3 (d, J = 6 Hz), 55.9, 35.3 (d, J = 71 Hz), 25.0, -1.8 (d, J = 59 Hz); ESI-MS: m/z 383 [M +H]+.
【0101】
実施例3:ラセミ体3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールオキシド−4−オール(3)の調製。
1,2−ジクロロエタン(100mL)中の2(8.1g、21.2mmol)の混合物に、0℃で、BBr(21.2g、64.8mmol、4当量)を加えた。混合物を0.5時間かけて60℃に温め、約60℃で2時間撹拌した。混合物に、MeOH(200mL)を、冷却しながら注意深く加え、次に濃縮した。MeOH(200mL×3)を更に加え、3回蒸発させて、残留物を粘稠な油状物として得た。残留物に、KCO(14.6g、105mmol、5当量)及びDMF(100mL)を更に加えた。混合物を60℃で2時間撹拌し、次に0℃に冷却した。水(200mL)、続いて濃HClを加えて、混合物のpHを約〜3に調整した。混合物に、ジクロロメタン(200mL)を加えた。ジクロロメタン層を分離し、水層を2回ジクロロメタン(50mL×2)で更に洗浄した。合わせたジクロロメタン層をブライン(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc/MeOH 4:1、290nmで監視)により精製して、3を白色の固体として得た(4.3g、19.1mmol、収率90%)。1HNMR (400 MHz, CD3OD): δ = 7.33 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.45 (m, 2H), 4.72 (dd, J = 14.3, 3.3 Hz, 1H), 4.30 (dd, J =14.3, 10.7 Hz, 1H), 1.28 (d, J= 16.6 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 68.6; 13CNMR (100 MHz, CD3OD): δ = 168.5 (d, J = 17.2 Hz), 161.4 (d, J= 2.2 Hz), 138.3, 109.0 (d, J = 6.1 Hz), 105.5 (d, J = 5.4 Hz), 101.7 (d, J = 94.3 Hz), 67.0 (d, J = 61 Hz), 34.5 (d, J = 74 Hz), 24.9; ESI-MS: m/z 227 [M +H]+.
【0102】
実施例4:(R)−3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール−4−オールオキシド((R)−3)の調製。
塩化メチレン(40mL)中のラセミ体3(3.1g、13.7mmol)とトリエチルアミン(2.77g、27.4mmol、2当量)の混合物に、(+)−クロロギ酸メンチル(3.6g、16.4mmol、1.2当量)を、0℃で5分間かけて加えた。混合物を0.5時間かけて25℃に温め、25℃で2時間撹拌し、次に水(100mL)を加えてクエンチした。塩化メチレン層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/EtOAc〜EtOAc、約290nmで監視)により精製して、(+)−カルボン酸メンチルジアステレオマーの混合物(5.6g、13.7mmol、100%)を得た。混合物をベンゼン(15mL)で更に処理し、加熱還流して、清澄な溶液を形成した。25℃まで冷却することにより結晶化し、濾過して、光学的に純粋なジアステレオマーを収率42%で得た(>99% de)。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.46 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 7.01 (m, 1H), 6.79 (m, 1H), 4.57 (m, 2H), 4.42 (dd, J = 13.9, 10.7 Hz, 1H), 2.20 (m, 1H), 1.98 (m, 1H), 1.69 (m, 2H), 1.49 (m, 2H), 1.23 (dd, J = 16.4, 1.9 Hz, 9H), 1.95-1.21 (m, 2H), 0.90 (td, J = 8.9, 1.9 Hz, 6H), 0.86 (m, 1H), 0.78 (d, J = 6.9 Hz, 3H); 13PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 62.78; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 166.0 (d, J =16 Hz), 152.2 (d, J = 23 Hz), 135.9, 114.5 (d, J = 5 Hz), 111.0 (d, J = 5 Hz), 106.8 (d, J = 88 Hz), 80.1, 66.1 (d, J = 60 Hz), 46.8, 40.3, 34.0, 33.7 (d, J = 73 Hz), 31.4, 25.9, 24.2, 23.1, 21.9, 20.7, 16.0; ESI-MS: m/z 409 [M +H]+.注:ジアステレオマーの分離のためのキラルHPLC条件:キラルセルOD-H、n−ヘプタン/イソプロパノール 95/5、25℃。
【0103】
EtOH(8mL)中の上記固体(0.4g、0.98mmol)の溶液に、25℃で、水(2mL)中のKOH(0.411g、7.34mmol、20当量)の溶液を加えた。混合物を25℃で2時間撹拌した。LCは、SMの完全な変換を示した。混合物に、0℃で、濃HClを加えて、pHを約4に制御し、続いてジクロロメタン(20mL)を加えた。ジクロロメタン層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤:EtOAc/MeOH 4:1、約290nmで監視)により精製して、((R)−3)を白色の固体として得た(200mg、0.88mmol、収率90%)。キラル分離:キラルパックAD-H、ヘプタン/イソプロパノール(95:5)、2mL/分、定組成、9.60分間(鏡像異性体)、16.60分間(この構成)。
【0104】
実施例5〜8
実施例5〜8は、以下に示すとおり、Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−BIBOP(nbd)]BF(9a)の調製について記載する。
【0105】
【化12】

【0106】
実施例5:(R)−3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(6a)の調製。
CHCl(2mL)中の(R)−3(50mg、0.221mmol)及びトリエチルアミン(89mg、0.88mmol、4当量)の溶液に、0℃で、TfNPh(96mg、0.27mmol、1.2当量)を1分間かけて加えた。混合物を25℃で2時間撹拌し、次に水(2mL)を加えてクエンチした。CHCl層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン〜EtOAc)により精製して、トリフラート生成物(65mg、0.18mmol、82%)を白色の固体として得た。1HNMR (500 MHz, CD2Cl2): δ = 7.58 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 7.03 (dd, J = 8.2, 3.5 Hz, 1H), 7.00 (dd, J = 8.5, 2.4 Hz, 1H), 4.67 (dd, J = 14.2, 2.1 Hz, 1H), 4.46 (dd, J = 14.1, 11.1 Hz, 1H), 1.21 (d, J = 16.8 Hz, 9H); 31PNMR (202 MHz, CD2Cl2): δ = 75.6; 13CNMR (125 MHz, CD2Cl2): δ = 167.1 (d, J = 16.8 Hz), 150.0, 137.1, 120.3, 117.8, 114.7 (d, J = 4.4 Hz), 114.2 (d, J = 4.3 Hz), 66.9 (d, J = 59.3 Hz), 34.7 (d, J = 72.0 Hz), 24.2; ESI-MS: m/z 359 [M +H]+.
【0107】
EtOAc(4mL)中のトリフラート(300mg、0.836mmol、1.0当量)の溶液に、トリエチルアミン(1mL)及び20%Pd(OH)/C(100mg、湿潤)を加えた。混合物を、100psiのH下、25℃で12時間撹拌し、次にセライトで濾過し、濃縮した。残留物をジクロロメタン(4mL)に再溶解し、水(5mL)で洗浄し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc〜EtOAc/MeOH 2:1)により精製して、6a(155mg、0.737mmol、88%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.62 (m, 1H), 7.47 (m,1H), 7.06 (m, 1H), 6.96 (m, 1H), 4.57 (m, 1H), 4.40 (m, 1H), 1.21 (dd, J = 16.0, 3.8 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 63.2; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 165.0, 134.9 (d, J = 1.7 Hz), 129.3 (d, J = 6.5 Hz), 122.0 (d, J = 9.2 Hz), 113.9 (d, J = 5.5 Hz), 112.9, 65.0 (d, J = 59.0 Hz), 33.2 (d, J = 71.3 Hz), 23.6; ESI-MS: m/z 211 [M +H]+.
【0108】
実施例6:(2S,2’S,3R,3’R)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(7a)の調製。
THF(4mL)中の6a(155mg、0.737mmol、1当量)の溶液に、−78℃で、LDA(0.49mL、ヘプタン/THF/クロロベンゼン中の1.8M、0.884mmol、1.2当量)を加えた。混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後無水CuCl(0.299g、2.21mmol、3当量)を一度に加えた。得られた混合物を−78℃で1時間保持し、その後それを1時間かけて25℃に温めた。混合物に、10%NHOH(10mL)及びジクロロメタン(10mL)を加えた。水層をジクロロメタン(10mL×2)で更に抽出した。合わせたジクロロメタン溶液をブライン(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM:THF 3:1〜2:1)により精製して、7a(93mg、0.22mmol、60%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.63 (m, 2H), 7.33 (t, J = 8.4 Hz, 2H), 7.05 (dt, J = 7.4, 2.0 Hz, 2H), 6.47 (dd, J = 8.3, 3.0 Hz, 2H), 5.22 (t, J = 3.5 Hz, 2H), 1.23 (d, J = 16.0 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 61.8 Hz; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 163.9 (m), 134.6, 129.1 (t, J = 3.3 Hz), 122.0 (t, J = 4.7 Hz), 113.5 (t, J = 2.7 Hz), 113.5 (d, J = 94.8 Hz), 72.4 (dd, J = 64.8, 9.0 Hz), 33.5 (dd, J = 37.9, 5.4 Hz), 23.3. ESI-MS: m/z 419 [M +H]+.
【0109】
実施例7:(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(8a)の調製。
トルエン(10mL)中の7a(70mg、0.17mmol、1当量)、トリエチルアミン(169mg、1.7mmol、10当量)の溶液に、25℃で、トリクロロシラン(114mg、0.84mmol、5当量)を加えた。混合物を80℃に加熱し、窒素下で12時間撹拌した。混合物に、0℃で、脱ガスした30%NaOH(10mL)を5分間かけて加えた。得られた混合物を、2つの層が清澄となるまで、60℃で約1時間撹拌した。トルエン層をN下で分離し、水層をトルエンで2回(5mL×2)更に抽出した。合わせたトルエンをNaSOで乾燥させ、N下で濃縮し、中性アルミナプラグ(溶離剤:ヘキサン/エーテル 1/1)を通すことにより精製して、8a(60mg、0.155mmol、93%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.43 (m, 2H), 7.26 (m, 2H), 7.94 (m, 2H), 6.83 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.01 (t, J = 3.2 Hz, 2H), 0.95 (d, J = 12.8 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = -1.5; 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ = 163.9, 131.6 (t, J = 10.4 Hz), 131.5, 122.6 (t, J = 5.1 Hz), 121.4 (t, J = 3.2 Hz), 111.6, 85.8 (dd, J = 70.5, 64.3 Hz), 31.0 (t, J = 9.1 Hz), 26.9 (t, J = 7.5 Hz).
【0110】
実施例8:Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−BIBOP(nbd)]BF(9a)の調製
THF(0.5mL)中のRh(nbd)BF(40.1mg、0.11mmol、0.9当量)の混合物に、0℃で、THF(0.5mL)中の8a(46mg、0.12mmol、1.0当量)の溶液を加えた。混合物を25℃で0.5時間撹拌し、次に約0.5mLに濃縮した。エーテル(10mL)を加え、混合物を25℃で10分間撹拌し、N下で濾過して、9a(70mg、0.104mmol、88%)を赤色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.62 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 7.54 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 7.24 (td, J = 7.5, 1.7 Hz, 2H), 7.04 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.97 (m, 4H), 5.41 (dd, J = 22.9, 1.2 Hz, 2H), 4.25 (br s, 2H), 1.93 (br s, 2H), 0.99 (d, J = 16.1 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 85.8 (dd, J = 152.6, 6.5 Hz); 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ = 161.1 (d, J = 3.0 Hz), 134.8, 130.7 (t, J = 4.7 Hz), 124.2 (t, J = 4.2 Hz), 114.8 (m), 113.8, 92.2 (m), 87.6 (td, J =22.4, 3.3 Hz ), 86.6 (dd, J = 10.3, 5.7 Hz), 73.0 (m), 56.7 (d, J = 1.5 Hz), 35.9 (m), 26.5 (t, J = 2.5 Hz).
【0111】
実施例9〜12
実施例9〜12は、以下に示すとおり、(Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−MeO−BIBOP(nbd)]BF(9b)の調製について記載する。
【0112】
【化13】

【0113】
実施例9:(R)−3−tert−ブチル−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールオキシド(6b)の調製。
DMF(5mL)中の3(170mg、0.752mmol)及び炭酸カリウム(0.519g、3.76mmol、5当量)の懸濁液に、25℃で、MeI(0.32g、2.26mmol、3当量)を加えた。混合物を25℃で12時間撹拌し、次に水(5mL)及びMe−THF(20mL)でクエンチした。水層をMe−THF(10mL)で洗浄した。合わせたMe−THFをブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc/MeOH 4/1)により精製して、6b(150mg、0.625mmol、83%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.38 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.52 (dd, J = 8.3, 3.0 Hz, 1H), 6.46 (dd, J = 8.2, 4.2 Hz, 1H), 4.50 (dd, J = 13.9, 2.3 Hz, 1H), 4.38 (dd, J = 13.9, 10.4 Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 1.26 (d, J = 16.4 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 64.5; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 166.6 (d, J =17.0 Hz), 161.3, 136.5, 106.4 (d, J = 5.0 Hz), 103.1 (d, J = 6.0 Hz), 102.5 (d, J = 92.0 Hz), 66.0 (d, J = 59.0 Hz), 55.6, 33.6 (d, J = 73.0 Hz), 24.5; ESI-MS: m/z 241 [M +H]+.
【0114】
実施例10:(2S,2’S,3R,3’R)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(7b)の調製。
THF(5mL)中の6b(150mg、0.624mmol)の溶液に、−78℃で、1.8M LDA(0.416mL、0.749mmol、1.2当量)を5分間かけて加えた。混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後無水CuCl(253mg、1.87mmol、3当量)を一度に加えた。得られた混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後それを1時間かけて25℃に温めた。混合物に、10%NHOH(10mL)及びジクロロメタン(10mL)を加えた。水層をジクロロメタン(5mL)で更に抽出した。合わせたジクロロメタン溶液をブライン(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc〜EtOAc/MeOH 3/2)により精製して、7b(100mg、0.21mmol、67%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.32 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.53 (dd, J = 8.2, 3.9 Hz, 1H), 6.19 (dd, J = 8.3, 2.6 Hz, 1H), 5.14 (m, 1H), 3.92 (s, 3H), 1.25 (d, J = 16.2 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 60.9; 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ =166.3 (t, J = 7.9 Hz), 161.7, 136.8, 106.5 (t, J = 2.6 Hz), 104.1 (t, J = 2.8 Hz), 102.7 (dd, J = 96.9, 4.9 Hz), 73.31 (m), 56.2, 34.5 (m), 24.5; ESI-MS: m/z 479 [M +H]+.
【0115】
実施例11:(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(8b)。
トルエン(10mL)中の7b(100mg、0.209mmol)及びトリエチルアミン(422mg、4.18mmol、20当量)の溶液に、トリクロロシラン(283mg、2.09mmol、10当量)を加えた。混合物を80℃で12時間加熱し、次に0℃に冷却し、脱ガスした30%NaOH溶液(5mL)を加えて5分間かけてクエンチした。混合物を、2つの層が清澄となるまで、60℃で約1時間更に撹拌した。トルエン層をN下で分離し、水層をトルエンで2回(5mL×2)更に抽出した。合わせたトルエン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、N下で濃縮し、中性アルミナプラグ(溶離剤:ヘキサン/エーテル 5/1)を通すことにより精製して、8b(70mg、0.157mmol、75%)を白色の固体として得た。1HNMR (500 MHz, CD2Cl2): δ = 7.22 (t, J = 8.2 Hz, 2H), 6.50 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.48 (m, 2H), 4.93 (t, J = 3.0 Hz, 2H), 3.83 (s, 6H), 0.98 (d, J = 12.7 Hz, 18H); 31PNMR (202 MHz, CD2Cl2): δ = -5.3; 13CNMR (125 MHz, CD2Cl2): δ = 165.4, 162.3 (t, J = 6.2 Hz), 132.8, 110.0 (t, J = 5.9 Hz), 104.9, 103.3, 86.3 (m), 55.9, 32.6 (m), 27.7 (t, J = 7.3 Hz).
【0116】
実施例12:Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−MeO−BIBOP(nbd)]BF(9b)の調製
THF(0.1mL)中のRh(NBD)BF(37.7mg、0.10mmol、0.9当量)の混合物に、0℃で、THF(0.5mL)中の8b(50mg、0.11mmol、1.0当量)の溶液を加えた。混合物を25℃で0.5時間撹拌し、その後エーテル(10mL)を加えた。25℃で10分間撹拌した後、混合物をN下で濾過して、9b(60mg、0.082mmol、73%)を赤色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.49 (t, J = 8.2 Hz, 2H), 6.74 (dd, J = 7.6, 3.4 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.31 (br s, 2H), 6.07 (br s, 2H), 5.36 (m, 2H), 4.24 (br s, 2H), 4.04 (s, 6H), 1.96 (br s, 2H), 1.04 (d, J = 16.0 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 84.0 (dd, J = 155.2, 4.9 Hz); ESI-MS: m/z 557 [M-BF4-]+; 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ = 162.7, 161.3 (t, J = 3.0 Hz), 136.1, 106.5, 105.4 (t, J = 2.0 Hz), 103.7 (m), 91.7 (dd, J = 11.2, 5.0 Hz), 89.3 (dd, J = 10.2, 4.6 Hz), 88.9 (td, J =23.3, 3.2 Hz), 72.6 (m), 56.4, 56.1, 37.3, 27.0 (t, J = 2.7 Hz).
【0117】
実施例13〜16
実施例13〜16は、以下に示すとおり、Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−BIBOP(nbd)]BF(9c)の調製について記載する。
【0118】
【化14】

【0119】
実施例13:(R)−3−tert−ブチル−4−フェニル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールの調製。
(R)−3キラルトリフラート(2.0g、5.58mmol)(実施例5に記載のとおり調製)、フェニルボロン酸(1.02g、8.37mmol、1.5当量)、Pddba(153mg、0.17mmol、3mol%)、PCy(0.31g、1.12mmol、20mol%)、及びフッ化カリウム(1.30g、23.3mmol、4.0当量)の混合物に、脱ガスしたジオキサン(30mL)を入れた。混合物を、窒素下、100℃で24時間撹拌し、次に濃縮して、大部分のジオキサンを除去した。残留物に、ジクロロメタン(50mL)及び水(50mL)を加え、混合物をセライトパッドで濾過した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン〜EtOAc)により精製して、6cを白色の結晶質固体として得た(1.5g、5.24mmol、94%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.76 (m, 2H), 7.35-7.53 (m, 4H), 7.05 (dd, J = 7.5, 3.6 Hz, 1H), 6.91 (dd, J = 8.3, 3.2 Hz, 1H), 4.56 (dd, J = 13.9, 1.1 Hz, 1H), 4.44 (dd, J = 13.8, 10.5 Hz, 1H), 0.78 (d, J = 16.1 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 65.1; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 165.7 (d, J = 19.0 Hz), 146.7 (d, J = 6.0 Hz), 140.6 (d, J = 2.0 Hz), 134.8 (d, J = 2.0 Hz), 129.6, 128.5, 128.3, 123.5 (d, J = 8.0 Hz), 112.6 (d, J = 6.0 Hz), 112.4 (d, J = 88.0 Hz), 65.3 (d, J = 62.0 Hz), 33.8 (d, J = 70 Hz), 33.9; ESI-MS: m/z 287 [M +H]+.
【0120】
実施例14:(2S,2’S,3R,3’R)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(7c)の調製。
化合物6cを化合物6bの代わりに使用したことを除いては、化合物7bについて実施例10に記載のものと同様の条件下で、化合物7cを白色の固体として調製した(43%)。1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.85 (d, J = 10.9 Hz, 4H), 7.47 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.38 (dd, J = 15.6, 8.0 Hz, 4H), 7.08 (dd, J = 7.4, 2.6 Hz, 2H), 6.58 (dd, J = 8.2, 2.3 Hz, 2H), 5.30 (m, 2H), 0.84 (d, J = 15.9 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 62.9; 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ = 164.9(t, J = 9.0 Hz), 146.2 (t, J = 3.0 Hz), 140.4, 134.6, 129.8, 128.5, 128.3, 123.3 (t, J = 4.0 Hz), 112.3 (t, J = 3.0 Hz), 112.2 (dd, J = 94.0, 4.7 Hz), 71.8 (m), 34.2 (m), 23.6; ESI-MS: m/z 571 [M +H]+.
【0121】
実施例15:(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール((2S,2’S,3S,3’S)−Ph−BIBOP)(8c)の調製。
化合物7cを化合物7bの代わりに使用したことを除いては、化合物8bについて実施例11に記載のものと同様の条件下で、化合物8cを白色の固体として調製した(84%)。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.71 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 7.41 (t, J = 7.0 Hz, 4H), 7.25-7.36 (m, 4H), 6.99 (d, J = 7.6, 2H), 6.79 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.07 (t, J = 3.2 Hz, 2H), 0.70 (d, J = 12.3 Hz, 18H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = -3.3; 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ = 164.6, 146.3, 143.1, 131.8, 129.7 (t, J = 2.0 Hz), 128.9, 128.0, 122.6, 110.5, 86.2 (d, J = 4.0 Hz), 32.8 (t, J = 10.0 Hz), 27.2 (t, J = 7.0 Hz).
【0122】
実施例16:Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−Ph−BIBOP(nbd)]BF(9c)の調製。
化合物8dを化合物8bの代わりに使用したことを除いては、化合物9bについて実施例12に記載のものと同様の条件下で、金属錯体9cを黄赤色の固体として調製した(85%)。:1HNMR (500 MHz, CD2Cl2): δ = 7.68 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 7.59 (dd, J = 13.5, 6.4 Hz, 4H), 7.54 (d, J = 7.8 Hz, 4H), 7.19 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 5.61 (s, 2H), 5.09 (s, 2H), 3.79 (s, 2H), 3.65 (s, 2H), 1.51 (s, 2H), 0.86 (d, J = 15.6 Hz, 18H); 31PNMR (202 MHz, CD2Cl2): δ = 46.8 (d, 2J RhP= 154 Hz); 13CNMR (125 MHz, CD2Cl2): δ = 162.2, 147.9, 142.6, 134.8, 130.1, 139.7, 129.4, 126.7 (d, J = 2.5 Hz), 113.8, 94.1, 86.9 (t, J = 26.8 Hz), 83.4, 71.9, 56.8, 36.9, 26.3.
【0123】
実施例17〜20
実施例17〜20は、以下に示すとおり、Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−Me−BIBOP(nbd)]BF(9d)の調製について記載する。
【0124】
【化15】

【0125】
実施例17:(R)−3−tert−ブチル−4−メチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(6d)の調製。
(R)−3キラルトリフラート(0.5g、1.4mmol)(実施例5に記載のとおり調製)、トリメチルボロキシン(0.21g、1.7mmol、1.2当量)、Pddba(38mg、0.042mmol、3mol%)、PCy(0.078g、0.28mmol、20mol%)、及びフッ化カリウム(0.33g、5.6mmol、4.0当量)の混合物に、脱ガスしたジオキサン(10mL)を入れた。混合物を、窒素下、100℃で24時間撹拌し、次に濃縮して、大部分のジオキサンを除去した。残留物に、ジクロロメタン(15mL)及び水(15mL)を加え、混合物をセライトパッドで濾過した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン〜EtOAc)により精製して、6dを白色の結晶質固体として得た(0.2g、0.89mmol、64%)。1HNMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.32 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 6.83 (dd, J = 7.4, 3.4 Hz, 1H), 6.72 (dd, J = 8.3, 3.4 Hz, 1H), 4.56 (d, J = 13.7 Hz, 1H), 4.33 (dd, J = 13.7, 10.4 Hz, 1H), 2.57 (s, 3H), 1.22 (d, J = 15.9 Hz, 9H); 31PNMR (202 MHz, CDCl3): δ = 65.2; 13CNMR (125 MHz, CDCl3): δ = 165.1 (d, J = 20.0 Hz), 142.0 (d, J = 7.5 Hz),134.7 (d, J = 2.5 Hz), 123.8 (d, J = 8.8 Hz), 112.5 (d, J = 91.3 Hz), 111.0 (d, J = 5.0 Hz), 65.4 (d, J = 60.0 Hz), 34.2 (d, J = 70.0 Hz), 24.2 (d, J = 1.4 Hz), 20.7 (d, J = 2.8 Hz); ESI-MS: m/z 225 [M +H]+.
【0126】
実施例18:(2S,2’S,3R,3’R)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(7d)の調製。
化合物6dを化合物6bの代わりに使用したことを除いては、化合物7bについて実施例10に記載のものと同様の条件下で、化合物7dを白色の固体として調製した(74%)。1HNMR (500 MHz, CDCl3): δ = 7.10 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 6.76 (dd, J = 7.4, 2.4 Hz, 2H), 6.10 (dd, J = 8.2, 2.4 Hz, 2H), 5.14 (m, 2H), 2.56 (s, 6H), 1.20 (d, J = 15.7 Hz, 18H); 31PNMR (202 MHz, CDCl3): δ = 63.2; 13CNMR (125 MHz, CDCl3): δ = 164.1 (t, J = 8.8 Hz), 141.3 (t, J = 2.5 Hz),134.1, 123.6 (t, J = 3.8 Hz), 112.3 (d, J = 93.8 Hz), 110.7 (t, J = 2.5 Hz), 72.6 (m), 34.4 (m), 23.9, 20.5 (t, J = 1.3 Hz); ESI-MS: m/z 447 [M +H]+.
【0127】
実施例19:(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール((2S,2’S,3S,3’S)−Me−BIBOP、8d)の調製。
化合物7dを化合物7bの代わりに使用したことを除いては、化合物8bについて実施例11に記載のものと同様の条件下で、化合物8dを白色の固体として調製した(86%)。HNMR (500 MHz, CD2Cl2): δ = 7.13 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 6.78 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 6.61 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.89 (t, J = 2.5 Hz, 2H), 2.48 (s, 6H), 0.98 (d, J = 12.4 Hz, 18H); 31PNMR (202 MHz, CD2Cl2): δ = -6.2; 13CNMR (125 MHz, CD2Cl2): δ = 164.1, 142.2 (t, J = 8.8 Hz), 131.4, 122.9 (t, J = 1.9 Hz), 122.3 (m), 108.9 (t, J = 0.9 Hz), 85.9 (m), 33.1 (m), 27.8 (t, J = 6.3 Hz), 23.3 (t, J = 3.8 Hz).
【0128】
実施例20:Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−Me−BIBOP(nbd)]BF(9d)の調製。
化合物8dを化合物8bの代わりに使用したことを除いては、化合物9bについて実施例12に記載のものと同様の条件下で、金属錯体9dを黄赤色の固体として調製した(85%)。1HNMR (500 MHz, CD2Cl2): δ = 7.42 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 7.03 (dd, J = 7.1, 2.2 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.96 (s, 2H), 5.93 (s, 2H), 5.21 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 4.29 (s, 2H), 2.69 (s, 6H), 1.98 (s, 2H), 0.96 (d, J = 15.6 Hz, 18H); (202 MHz, CD2Cl2): δ = 71.6 (d, 2J RhP= 152 Hz); 13CNMR (125 MHz, CD2Cl2): δ = 162.3, 141.6 (t, J = 5.0 Hz), 134.9 (d, J = 6.3 Hz), 115.5 (d, J = 32.5 Hz), 111.7 (t, J = 1.8 Hz), 89.9 (m), 88.7 (m), 73.4 (m), 55.9 (d, J = 1.4 Hz), 37.6 (m), 27.2 (d, J = 2.5 Hz), 25.2 (d, J = 4.6 Hz).
【0129】
実施例21〜23
実施例21〜23は、以下に示すとおり、Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF(10c)の調製について記載する。
【0130】
【化16】

【0131】
実施例21:(2S,3S)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(10a)の調製。
THF(3mL)中の実施例4に記載の手順を使用して調製した(S)−3−tert−ブチル−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールオキシド(100mg、0.42mmol)の溶液に、−78℃で、LDA(0.24mL、1.8mol/L、0.46mmol、1.1当量)を加えた。混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後tBuPCl(90mg、0.50mmol、1.2当量)を加えた。得られた混合物を−78℃で1時間更に撹拌し、次に1時間かけて25℃に温めた。混合物に、0℃で、30%H溶液(94mg、0.83mmol、2.0当量)を加えた。得られた混合物を25℃で1時間撹拌し、次に水(5mL)及びジクロロメタン(5mL)でクエンチした。ジクロロメタン層を乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc〜EtOAc/MeOH 3/2)により精製して、10aを粘稠な油状物として得た(120mg、0.30mmol、72%)。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.45 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.57 (m, 2H), 4.90 (dd, J = 9.0, 3.5 Hz, 1H), 3.90 (s, 3H), 1.41 (d, J = 13.5 Hz, 9H), 1.32 (d, J = 7.3 Hz, 9H), 1.28 (d, J = 9.4 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 61.7 (d, 3J PP = 9.8 Hz), 60.9 (d, 3J PP = 9.8 Hz); 13CNMR (100 MHz, CD2Cl2): δ = 171.1, 164.8 (dd, J = 14.4, 5.8 Hz), 161.6 (d, J = 2.3 Hz), 136.7, 106.3 (d, J = 5.2 Hz), 104.1 (d, J = 5.6 Hz), 71.3 (dd, J = 52.4, 43.0 Hz), 56.0, 37.9 (dd, J = 55.7, 3.3 Hz), 37.0 (d, J = 57.0 Hz), 35.0 (d, J = 76.5 Hz), 27.7, 26.5, 25.9; ESI-MS: m/z 401 [M +H]+.
【0132】
実施例22:(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(10b)の調製。
トルエン(10mL)中の10a(0.12g、0.30mmol)の溶液に、窒素下、25℃で、トリエチルアミン(0.61g、5.99mmol、20当量)及びトリクロロシラン(0.41g、2.99mmol)を加えた。混合物を120℃に12時間加熱した。混合物に、0℃で、脱ガスした30%NaOH(10mL)を5分間かけて加えた。得られた混合物を、2つの層が清澄となるまで、60℃で約1時間撹拌した。トルエン層をN下で分離し、水層をトルエンで2回(5mL×2)更に抽出した。合わせたトルエン抽出物をNaSOで乾燥させ、N下で濃縮し、中性アルミナプラグ(溶離剤:ヘキサン/エーテル 5:1)を通すことにより精製して、10b(0.1g、0.27mmol、90%)を白色の固体として得た。31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 52.0 (d, 3J PP = 145.8 Hz), 9.4 (d, 3J PP= 146.7 Hz)
【0133】
実施例23:Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF(10c)の調製。
THF(0.5mL)中のRh(NBD)BF(46mg、0.122mmol)の懸濁液に、THF(0.5mL)中の10b(50mg、0.136mmol、1.1当量)の溶液を加えた。混合物を25℃で0.5時間撹拌し、次に約1mLに濃縮した。脱ガスしたエーテル(10mL)を加え、混合物を25℃で10分間撹拌し、N下で濾過して、10c(60mg、0.092mmol、68%)を黄色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.49 (t, J = 8.2 Hz, 1H), 6.71 (dd, J = 8.3, 4.6 Hz, 1H), 6.64 (m, 2H), 6.10 (m, 1H), 5.97 (m, 1H), 5.83 (m, 1H), 5.74 (m, 1H), 4.27 (m, 2H), 3.98 (s, 3H), 1.77 (m, 2H), 1.50 (d, J = 14.0 Hz, 9H), 1.18 (d, J = 14.8 Hz, 9H), 1.10 (d, J = 16.7 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 27.3 (dd, J = 131.3, 39.2 Hz), 4.6 (dd, J = 144.8, 39.2 Hz).
【0134】
実施例24〜26
実施例24〜26は、以下に示すとおり、Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF(11c)の調製について記載する。
【0135】
【化17】

【0136】
実施例24:(2S,3S)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシド(11a)の調製。
THF(6mL)中の(S)−3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(0.5g、2.38mmol)の溶液に、LDA(1.45mL、1.8M、2.62mol、1.1当量)を−78℃で加えた。混合物を−78℃で1時間撹拌し、その後クロロジ−tert−ブチルホスフィン(0.473g、2.62mmol、1.1当量)を−78℃で加えた。得られた混合物を−78℃で15分間撹拌し、次に1時間かけて25℃に温めた。30%H(0.54g、4.76mmol、2当量)を加え、混合物を25℃で1時間更に撹拌した。10%NaHSO(10mL)を加え、混合物を濃縮して、大部分のTHFを除去した。DCM(20mL)を加え、DCM層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(溶離剤:EtOAc:MeOH=60:40)により精製して、11aを白色の固体として得た(0.85g、2.30mmol、95%):1HNMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.70 (dt, J = 7.3, 1.0 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.12 (dt, J = 7.4, 2.7 Hz, 1H), 6.99 (dd, J = 8.4, 3.2 Hz, 1H), 4.94 (dd, J = 10.1, 3.8 Hz, 1H), 1.44 (d, J = 13.5 Hz, 9H), 1.36 (d, J = 14.6 Hz, 9H), 1.34 (d, J = 16.1 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CDCl3): δ = 60.9 (d, 3J PP = 9.4 Hz), 60.0 (d, 3J PP = 9.3 Hz); 13CNMR (100 MHz, CDCl3): δ =162.9, 134.7 (d, J = 1.7 Hz), 129.8 (d, J = 6.6 Hz), 122.7 (d, J = 9.1 Hz), 114.9 (m), 113.6 (d, J = 5.4 Hz), 70.8 (dd, J = 51.8, 43.4 Hz), 37.6 (dd, J = 55.8, 3.3 Hz), 36.7 (d, J = 56.9 Hz), 34.6 (d, J = 74.6 Hz), 27.3, 26.4, 25.1; ESI-MS: m/z 371 [M +H]+.
【0137】
実施例25:(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(11b)の調製。
トルエン(10mL)中の11a(0.64g、1.73mmol)の溶液に、窒素下、25℃でトリエチルアミン(1.75g、17.3mmol、10当量)及びトリクロロシラン(1.40g、10.4mmol、6当量)を加えた。混合物を110℃に3日間加熱した。混合物に、0℃で、脱ガスした30%NaOH(20mL)を5分間かけて加えた。得られた混合物を、2つの層が清澄となるまで、60℃で約1時間撹拌した。トルエン層をN下で分離し、水層をトルエンで2回(10mL×2)更に抽出した。合わせたトルエン抽出物をNaSOで乾燥させ、N下で濃縮し、中性アルミナプラグ(溶離剤:ヘキサン/エーテル 5:1)を通すことにより精製して、11b(0.5g、1.48mmol、85%)を白色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.39 (m, 1H), 7.23 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.88 (m, 1H), 6.78 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.57 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 1.34 (d, J = 11.0 Hz, 9H), 1.15 (d, J = 11.1 Hz, 9H), 0.93 (d, J = 12.2 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 52.0 (d, 3J PP = 146.1 Hz), 12.2 (d, 3J PP = 146.4 Hz).
【0138】
実施例26:Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF(11c)の調製。
THF(2mL)中のRh(NBD)BF(0.27g、0.718mmol)の懸濁液に、THF(2mL)中の11b(0.27g、0.798mmol、1.1当量)の溶液を加えた。混合物を25℃で0.5時間撹拌し、次に約2mLに濃縮した。脱ガスしたエーテル(20mL)を加え、混合物を25℃で10分間撹拌し、N下で濾過して、11c(0.40g、0.645mmol、90%)を黄色の固体として得た。1HNMR (400 MHz, CD2Cl2): δ = 7.61 (m, 1H), 7.56 (m, 1H), 7.23 (dt, J = 6.6, 3.0 Hz, 1H), 6.71 (dd, J = 6.1, 3.6 Hz, 1H), 5.97 (m, 1H), 5.88 (m, 2H), 5.78 (m,1H), 4.30 (m, 1H), 4.28 (m, 1H), 1.78 (m, 2H), 1.52 (d, J = 14.1 Hz, 9H), 1.18 (d, J = 14.9 Hz, 9H), 1.03 (d, J = 16.6 Hz, 9H); 31PNMR (162 MHz, CD2Cl2): δ = 25.5 (dd, J = 131.3, 40.0 Hz), 5.4 (dd, J = 130.0, 41.1 Hz).
【0139】
実施例27:Rh[(2R,2’R,3R,3’R)−BIBOP(nbd)]BFの調製
(S)−3−tert−ブチル−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール−4−オールオキシド((S)−3)を、(R)−3(実施例5を参照)の代わりに使用したことを除いては、実施例5〜8の化合物9aの調製について記載したものと同様の方法で、標記化合物を調製した。次に、((S)−3)を、実施例6及び7に記載のものと同じ試薬と、同じ溶媒中で反応させて、ビスホスフィンリガンド(2R,2’R,3R,3’R)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホールビスオキシドを得た。次に、ビスホスフィンリガンドを、実施例8に記載のものと同様の方法で、Rh(bbd)BFと反応させて、標記化合物を得た。
Rh[(nbd)((2R,2’R,3R,3’R)−BIBOP)]BF(H原子は省略する)のX線結晶構造を、図1に示す。
【0140】
実施例28
実施例28は、代表的なロジウム錯体Rh[(nbd)((2R,2’R,3R,3’R)−BIBOP)]BF(実施例27から)の、α−アリールエナミド、α−デヒドロアミノ酸誘導体、β−(アセチルアミノ)アクリラート、及びイタコン酸ジメチルの水素化のための使用について記載する。
【0141】
【表1】

【0142】
この研究の結果は、本発明の代表的な金属錯体Rh[(nbd)((2R,2’R,3R,3’R)−BIBOP)]BFが、α−アリールエナミド、α−デヒドロアミノ酸誘導体、β−(アセチルアミノ)アクリラート、及びイタコン酸ジメチルのエナンチオ選択的水素化に対して有効であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)、(Ib):
【化18】


[式中:
Xは、O、S、又は−NRであり;
は、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
は、H、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、−NR、又は−SR(ここで、前記Rの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
は、−PR、−CHPR、−CHOPR、あるいは式(A)又は(B)の基:
【化19】


(ここで、式(A)又は(B)の基のX、R及びRは上記に定義のとおりであり、そして式(A)の基は式(Ia)の化合物にのみ結合し、式(B)の基は式(Ib)の化合物にのみ結合する)であり;
は、H、−(C−C)アルキル、−(C−C)シクロアルキル、−(3〜6員)ヘテロシクロアルキル、フェニル、(5〜6員)ヘテロアリール、又は−SiR(ここで、前記Rの前記−(C−C)アルキルは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)シクロアルキル、フェニル、及び−(5〜6員)ヘテロアリールより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されており、そして前記Rの前記−(C−C)シクロアルキル、−(3〜6員)ヘテロシクロアルキル、フェニル、及び(5〜6員)ヘテロアリールは、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により置換されている)であり;
及びRは、それぞれ独立して、H、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、又は−(5〜11員)ヘテロアリール(ここで、前記R及びRの各−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、ハロ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)であり;そして
及びRは、それぞれ独立して、−(C−C)アルキル、−CF、−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール、−(5〜11員)ヘテロアリール、又はフェロセニル(ここで、前記R及びRの前記−(C−C10)カルボシクリル、−(5〜11員)ヘテロカルボシクリル、−(C−C10)アリール及び−(5〜11員)ヘテロアリールは、それぞれ、−O(C−C)アルキル、−(C−C)アルキル、及び−CFより独立して選択される1〜3個の置換基で場合により独立して置換されている)である]で示される化合物、又はその混合物。
【請求項2】
XがOである、請求項1に記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項3】
が、−CH、−CHCH、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH、又は−C(CHCH)(CHより選択される−(C−C)アルキルである、先行する請求項のいずれかに記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項4】
が、H、−CH又は−OCHである、先行する請求項のいずれかに記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項5】
が−Hである、先行する請求項のいずれかに記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項6】
が、−PR又は式(A)の基である、先行する請求項のいずれかに記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項7】
が−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり、そしてRが−PRである、請求項1に記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項8】
及びRが、それぞれ、−C(CHであり、XがOである、請求項1又は7に記載の式(Ia)、(Ib)の化合物、又はその混合物。
【請求項9】
が−C(CHであり、Rが−H、−CH、−OCH、又はフェニルであり;そしてRが式(A)の基である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(Ia)の化合物。
【請求項10】
式(IIa)、(IIb):
【化20】


[式中、
は、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH)(CH、シクロヘキシル、1−アダマンチル、フェニル、オルト−トリル、3,5−キシリル、オルト−アニシル、又はフェロセニルであり;そして
は、H、−OCH、−CH、−CF、フェニル、又は−N(CHである]を有する、請求項1に記載の化合物、又はその混合物。
【請求項10】
式(IIIa)、(IIIb):
【化21】


[式中、
は、−CH(CH、−C(CH、−C(CHCH)(CH、シクロヘキシル、又は1−アダマンチルであり;
は、H、−OCH、−CH、−CF、フェニル、又は−N(CHであり;そして
及びRは、それぞれ、−C(CHである]を有する、請求項1に記載の化合物、又はその混合物。
【請求項11】
以下:
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、
(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ−4−メトキシ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール、及び
(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール
より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
式(IVa)、(IVb)、(Va)又は(Vb):
【化22】


[式中、
Mは、Co、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ru、Fe、Rh及びIrより選択される遷移金属であり;
は対アニオンであり;
nは、遷移金属Mの酸化状態であり;
及びLはそれぞれオレフィンであるか、あるいはL及びLは一緒になってジオレフィンを表し;そして
X、R、R、R、及びRは、請求項1に定義のとおりである]で示される金属錯体。
【請求項13】
MがRhであり、AがBFであり、そしてnが1である、請求項12に記載の金属錯体。
【請求項14】
以下:
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメトキシ−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジフェニル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,2’S,3S,3’S)−3,3’−ジ−tert−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’,3,3’−テトラヒドロ−2,2’−ビベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF
Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−4−メトキシ−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]オキサホスホール(nbd)]BF及び
Rh[(2S,3R)−3−tert−ブチル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−2,3−ジヒドロベンゾ[d][1,3]−オキサホスホール(nbd)]BF
より選択される、請求項12に記載の金属錯体。
【請求項15】
炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物の不斉水素化の実施方法であって、前記炭素−炭素又は炭素−ヘテロ原子二重結合を有する化合物を、請求項12〜14のいずれか一項に記載の触媒量の金属錯体の存在下で、水素と反応させることを含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510154(P2013−510154A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537924(P2012−537924)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/054912
【国際公開番号】WO2011/056737
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】