説明

新規ナトリウムチャネル

新規ナトリウムチャネルの核酸およびポリペプチドを本明細書にて開示する。その新規核酸およびポリペプチドの使用方法もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願についての相互参照)
本出願は、2003年12月12日に出願された米国仮出願番号60/529,404について優先権を主張し、その内容は出典明示により明示的に本明細書の一部とされる。
【0002】
本文中で引用される各々の出願および特許、並びに出願および特許それぞれで引用される書類または文献(訴訟中の各々の発行された特許を含む;「出願で引用される書類」)、各々のPCTおよび外国の出願および特許、並びに各々の出願により引用された書類において引用もしくは参照された各々の書類は、出典明示により明示的に本明細書の一部とされ、本発明の実施にあたって用いることができる。より一般的には、書類または文献は本文中において、特許請求の範囲の前に記載の「文献一覧」または本文それ自体において引用され;これらの書類または文献(「本明細書中で引用される文献」)のそれぞれ、並びに本明細書中で引用される文献中のそれぞれにより引用される各々の書類または文献(いずれかの製造業者の仕様書、説明書などを含む)は、出典明示により明示的に本明細書の一部とされる。出典明示により本文の一部とされる書類、またはそこで教示されるものは、本発明の実施にあたって使用することができる。
【0003】
(背景)
全ての細胞は、細胞膜を通過する調節された無機イオンの流動に依存して、重要な生理学的機能を果たす。電気的興奮、シナプスの可塑性およびシグナル伝達は、イオン濃度の変化が重要な役割を果たす例示的な過程である。一般に、これらの変化を引き起こすイオンチャネルは、それぞれが2つまたはそれ以上の膜貫通ドメインを有する1つまたは複数のサブユニットからなる、蛋白質性の穴である。ほとんどのイオンチャネルは、大きさや電荷についての物理的な優先傾向により、特定のイオン、主にNa、K、Ca2+またはClに対する選択性を有している。能動輸送というよりは、電気化学的な力によりイオンは膜を通過するため、単一のチャネルにおいて1秒あたり何百万のイオンの通過が可能となり得る。チャネルの開放または「ゲーティング」は、チャネルのサブクラスに応じた、電圧の変化によりまたはリガンドの結合により厳密に制御されている。イオンチャネルは、多くの生理学的機構に関与するため魅力的な治療標的であるが、特定の組織型の特定のチャネルに特異的な薬物の作製は依然として大きな難題である。
【0004】
電圧ゲート式イオンチャネルは、膜電位変化に応答して開く。例えば、ニューロンなどの興奮細胞の脱分極により、Naイオンの瞬間的な流入が生じ、神経インパルスが伝達される。このNa濃度変化は電圧ゲート式Kチャネルにより感知され、次いでKイオンを流出させる。このKイオンの流出により膜は再分極する。他の細胞型は電圧ゲート式Ca2+に依存し、活動電位を形成する。電圧ゲート式イオンチャネルもまた、非興奮性細胞において、分泌、ホメオスタシスおよび有糸分裂機構の調節などの重要な機能を示す。リガンドゲート式イオンチャネルは、神経伝達物質(例えば、グルタミン酸、セロトニン、アセチルコリン)などの細胞外刺激または細胞内刺激(例えば、cAMP、Ca2+およびリン酸化)によって開放され得る。
【0005】
ナトリウム(Na)チャネルには、電圧ゲート式および非電圧ゲート式のクラスが含まれる。電圧ゲート式Naチャネルは、ニューロンにおいて活動電位の再生に必要とされる一過性のNaの内部流入を媒介する。電圧ゲート式Naチャネルはサブタイプにさらに再分類され;少なくとも9種の特有な電圧ゲート式Naチャネルサブユニット(Na1.1−1.9)がクローニングされ、少なくとも3種の関連するβサブユニットがクローニングされている。電圧ゲート式Naチャネルのαサブユニットは、電圧ゲート式Ca2+チャネルのαサブユニットと類似しており、4つの繰り返し領域を有し、それぞれ6個の膜貫通ドメインを有している。電圧ゲート式Naチャネルは、脳、筋肉、心臓、脊髄、子宮および感覚ニューロンに発現している。アルファサブユニットは、例えばαサブユニットのゲーティングを修飾することによって、チャネルの機能を調節する補助サブユニットと関連する。
【0006】
イオンチャネル機能における遺伝的または薬理学的摂動は、劇的な臨床結果を伴う場合がある。QT延長症候群、癲癇、濾胞性繊維症および一過性運動失調は、イオンチャネルのサブユニットにおける突然変異によって生じる遺伝性疾患の一例である。特定の薬物によって引き起こされる、有害な副作用、例えば不整脈および発作などは、イオンチャネル機能を妨害することで生じる(Sirois and Atchison, Neurotoxicology, 17(1):63-84, 1996; Keating, M.T., Science 272:681-685, 1996))。イオンチャネル活性を調節する薬物は、疼痛、高血圧、狭心症、心筋虚血、喘息、膀胱過活動、脱毛症、疼痛、心臓麻痺、月経困難症、II型糖尿病、不整脈、移植片拒絶、発作、痙攣、癲癇、脳卒中、胃部運動亢進症、精神病、癌、筋ジストロフィーおよび睡眠発作病を含む、多くの病的状態の処置に適用される(Coghlan, M.Jら、J. Med. Chem. 44:1627-1653, 2001; Ackerman. M.J.およびClapham, D.E., N. Eng. J. Med. 336:1575-1586, 1997)。同定されるイオンチャネルの数の増加、さらにそれらの複雑性を理解することは、イオンチャネル機能をモジュレートする治療において将来の試みの助けとなるであろう。
【0007】
(要約)
新規Naチャネルサブユニットポリペプチド、核酸並びにそのポリペプチドおよび核酸の断片が、本明細書により提供される。また、該新規サブユニットポリペプチド、核酸およびそれらの断片の使用方法も提供される。
【0008】
1つの態様において、本発明は単離されたナトリウムチャネルIII型αサブユニット(mNa1.3αサブユニット)ポリペプチドに関し、該ポリペプチドは配列番号:2記載のアミノ酸配列を含む。1つの実施形態において、ポリペプチドは本質的に配列番号:2記載のアミノ酸配列からなる。
【0009】
別の態様において、本発明は、配列番号:2記載の少なくとも10個の隣接したアミノ酸を含む単離されたmNa1.3αサブユニットポリペプチドであって、該ポリペプチドが以下のアミノ酸:イソロイシン289、プロリン518、セリン728、セリン1355、アスパラギン1909、スレオニン1910およびバリン1921を、1つまたはそれ以上含むポリペプチドに関する。
【0010】
他の態様において、本発明は本明細書に記載のポリペプチド、例えば配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むナトリウムチャネルIII型αサブユニット(mNa1.3αサブユニット)ポリペプチドをコードする、単離されたmNa1.3αサブユニット核酸分子に関する。1つの実施形態において、核酸は配列番号:1記載の核酸配列を含む。1つの実施形態において、核酸分子は、本質的に配列番号:1記載のヌクレオチド配列からなる。1つの実施形態において、核酸は、配列番号:1記載の核酸配列の対立遺伝子である。
【0011】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むナトリウムチャネルIII型αサブユニット(mNa1.3αサブユニット)ポリペプチドをコードする、mNa1.3αサブユニット核酸分子の断片に関する。1つの実施形態において、断片は、以下のアミノ酸:イソロイシン289、プロリン518、セリン728、セリン1355、アスパラギン1909、スレオニン1910およびバリン1921の1つまたはそれ以上をコードする。
【0012】
他の態様において、本発明はプロモーターと操作可能に連結された、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットまたはその断片をコードする核酸を含む発現ベクターに関する。
【0013】
他の態様において、本発明は、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットまたはその断片をコードする核酸を含む宿主細胞に関する。
【0014】
他の態様において、本発明は、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドと優先的に結合する物質に関する。
【0015】
他の態様において、本発明は、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドに選択的に結合する物質であって、ナトリウムチャネルI型またはII型αサブユニットポリペプチドと結合しない物質に関する。1つの実施形態において、物質は小分子、核酸または蛋白質である。1つの実施形態において、物質は、抗体またはその抗原結合断片である。1つの実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。
【0016】
他の態様において、本発明は、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドと選択的に結合する物質;および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。
【0017】
他の態様において、本発明は、細胞においてmNa1.3αサブユニットポリペプチドの活性をモジュレートする方法であって、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルを提供する工程;そのチャネルを、mNa1.3αサブユニットポリペプチドの活性をモジュレートするのに有効な量のmNa1.3αサブユニットポリペプチドモジュレータと接触させる工程を含む方法に関する。1つの実施形態において、モジュレータは小分子、核酸または蛋白質である。
【0018】
他の態様において、本発明は、mNa1.3αサブユニットポリペプチドの活性をモジュレートする物質を同定する方法であって、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含む第一のナトリウムチャネルを提供する工程;そのチャネルを被験化合物と接触させる工程;および基準値と比較した活性の変化を、その化合物が該チャネルをモジュレートする物質であるかの指標とする、該ナトリウムチャネルの活性の評価工程、を含む方法に関する。
【0019】
1つの実施形態において、被験化合物は、小分子、ペプチドまたは核酸である。1つの実施形態において、ナトリウムチャネルは生物試料中に含まれる。1つの実施形態において、該チャネルを複数の被験化合物と接触させる。
【0020】
1つの実施形態において、試料は細胞膜を含む。1つの実施形態において、試料は細胞を含む。1つの実施形態において、細胞は真核細胞である。1つの実施形態において、細胞はアフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞である。1つの実施形態において、細胞は哺乳動物の細胞である。
【0021】
1つの実施形態において、活性はナトリウム濃度の調節を含む。1つの実施形態において、評価はナトリウム流動の検出を含む。1つの実施形態において、接触は、被験化合物非存在下において、第一の量のナトリウム流動が生じる条件下で行う。1つの実施形態において、評価はNa流動アッセイの使用を含む。1つの実施形態において、アッセイはパッチクランプ電気生理学(patch-clamp electrophysiology)を用いる。1つの実施形態において、アッセイは、2電極電圧クランプ電気生理学(two electrode vaotage clmap electrophysiology)を用いる。1つの実施形態において、アッセイはナトリウム感受性色素の使用を含む。1つの実施形態において、アッセイはハイスループット・アッセイである。
【0022】
1つの実施形態において、本方法は、第一のmNa1.3αサブユニットポリペプチドと異なるmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含む第二のナトリウムイオンチャネル(例えば、第二のナトリウムチャネルは、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチド以外のものである)を提供する工程;その第二のナトリウムチャネルを被験化合物と接触させる工程;その第二のナトリウムチャネルの活性を評価する工程、をさらに含む。
【0023】
本方法は、被験化合物存在下の第一のナトリウムチャネルの活性を、被験化合物存在下の第二のナトリウムチャネルの活性と比較することをさらに含む。1つの実施形態において、複数のナトリウムチャネルが提供される。
【0024】
他の形態において、本発明は、ナトリウム電流モジュレーションと関連する障害を処置するのに有用な物質を同定する方法であって、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルを提供する工程;そのチャネルを被験化合物と接触させる工程;および基準値と比較した活性の変化を、その被検化合物がナトリウム電流と関連する障害に有用な物質であるかの指標とする、該チャネルの活性を評価する工程、を含む方法に関する。1つの実施形態において、障害は、疼痛、感覚異常、脳卒中、頭部外傷、神経変性障害または神経の過興奮と関連する障害である。
【0025】
本方法は、化合物をインビボ投与すること(例えば動物モデルを用いて)をさらに含んでいてもよい。本方法は、インビボでの使用のために化合物を修飾することをさらに含んでいてもよい。本方法は、化合物により関連するヒトmNa1.3αサブユニットポリペプチドのモジュレータを評価することをさらに含んでいてもよい。
【0026】
他の態様において、本発明は、ナトリウムチャネル電流と関連する障害を有する対象を処置する方法であって、mNa1.3αサブユニットポリペプチドと選択的に結合する物質を同定する工程;およびそのような処置を必要とする対象に、mNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルに選択的な薬理物質を投与する工程、を含む方法に関する。
【0027】
1つの実施形態において、障害は、疼痛、感覚異常、脳卒中、頭部外傷、神経変性障害または神経の過興奮と関連する障害である。
【0028】
(詳細な説明)
本発明は、一部に、新規NaチャネルIII型α(Na1.3)サブユニットの同定に基づく。この新規cDNAはマウスの脳組織から単離された。そのcDNAのコード配列(配列番号:1)は、表1に示すヌクレオチド8番からヌクレオチド5947番までに相当する。予想される新規サブユニットのアミノ酸配列を配列番号:2に示す。関連するヒトおよびラットサブユニットのヌクレオチド配列は、ジーンバンク(登録商標)において受入番号NM_006922、AF225986およびNM_013119(配列番号:4、配列番号:6および配列番号:8)のもとで見出すことができる。関連するマウスNaチャネルcDNAの断片はクローニングされ、ジーンバンク(登録商標)受入番号NM_018732(配列番号:10)のもとで見出される。配列番号:2とその配列とのアライメントを図2に示す。
【0029】
新規のマウス核酸配列は、関連するヒトおよびラット配列と比較すると差異がある。それらの差異は独特のポリペプチド配列をコードすると予想される。予想される新規マウスNaチャネルαサブユニットのアミノ酸配列と関連するラットおよびヒトサブユニットとのアライメントを図1に示す。
【0030】
電圧ゲート式Naチャネル
電圧ゲート式Naチャネルは、およそ260キロダルトン(kD)のαサブユニット、およそ35kDのβ1サブユニット、およびおよそ35kDのβ2サブユニットを有するマルチサブユニット膜貫通蛋白質である。これらのチャネルは、細胞内へのナトリウムイオンの流入を媒介する。αサブユニットは、電圧感受性のチャネルの穴を形成する部分を形成し、βサブユニットはαサブユニットのゲーティングおよび細胞−細胞の相互作用を調節する。Naチャネルのαサブユニットは、4つの繰り返しドメイン(I−IV)を有する。それぞれの繰り返しドメインは、6つの膜貫通部分(S1−S6)を有する(Reviewed in Baker, MD, and Wood, JN. Trends in Pharm Sci. 22(1):27-31, 2001)。
【0031】
電圧ゲート式Naチャネルは、膜電位変化に応答して休止(極性;閉鎖チャネル;活性化可能)、開放(脱分極;開放チャネル;活性化)および閉鎖(脱分極;閉鎖チャネル;不活性化)の状態のサイクルを受ける。ほとんどの電圧ゲート式Naチャネルは開放することで迅速に(即ちミリ秒以内)閉鎖する。イオン伝導性αサブユニットの荷電領域は膜電位の変化に感受性である。
【0032】
Naチャネルは興奮細胞における電気インパルスの発生および伝達が可能である。例えば、一次感覚ニューロン(例えば、後根神経節(DRG)ニューロン、三叉神経ニューロン)に発現しているNaチャネルには、感覚情報の順次の伝達に必要な、刺激に応答した脱分極の立ち上がりが生じる。
【0033】
Naチャネルのサブタイプは、フグ(Puffer fish)によって産生されるテトロドトキシン(TTX)、グアニジントキシンによる阻害に対する感受性に基づいて区別することができる。TTXは、Na1.1、Na1.2およびNa1.3αサブユニットチャネルの活性をナノモーラーの範囲の濃度で阻害する。チャネルの3つの型のいずれも脳で発現している。損傷に応答するNaチャネルレベルの脱調節は、ニューロンのNaチャネルの過興奮を引き起こすことがある。この種の脱調節は、慢性疼痛の一因であると考えられている。例えば、軸索横断により特定のNaチャネルの下方調節およびNa1.3αサブユニットチャネルの上方調節が生じ(Waxman, S.G., Nature Rev. 2:652-659, 2001にて概説される)、それによりニューロンに不適当な繰り返しのファイアリングが生じる。
【0034】
本明細書中にて用いられる「ナトリウムチャネルαサブユニット」または「Naチャネルαサブユニット」は、神経細胞、例えば、後根神経節などの細胞内においてシグナルを受け取り、指揮し、そして伝達することに関与する蛋白質を意味する。「マウスNa1.3αサブユニット」または「mNa1.3αサブユニット」は、本明細書中に記載のマウスIII型αサブユニットを意味する。
【0035】
本明細書中にて用いられる「Naチャネル媒介活性」は、Naチャネル、例えば、脳細胞のまたは筋肉細胞のNaチャネルに関与する活性、機能または応答を意味する。Naチャネル媒介活性は、神経系(例えば中枢神経系および末梢神経系)、筋肉組織、心臓組織、並びに他の細胞および組織におけるシグナルを受け取り、指揮、および伝達に関与する活性である。Naチャネル媒介活性には、例えば細胞内へのNaの流入の調節および感覚刺激の伝達が含まれる。また、本明細書中に変換可能に用いられる「Naチャネルαサブユニット活性」、「mNa1.3αサブユニット活性」、「Naチャネルαサブユニットの生物学的活性」または「Naチャネルαサブユニットの機能的な活性」は、Naチャネルαサブユニット蛋白質、ポリペプチドまたは核酸分子の活性、機能または応答を意味する。
【0036】
本発明の単離された蛋白質、例えば、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニット蛋白質は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列と実質的に相同なアミノ酸配列を有するか、または配列番号:1と実質的に相同なヌクレオチド配列によってコードされている。本明細書中にて用いられる用語「実質的に相同」は、十分な若しくは最小となる数の同一の若しくは同等のアミノ酸残基(例えば、類似の側鎖を有するアミノ酸残基)またはヌクレオチドを含む第一のアミノ酸またはヌクレオチド配列、第一および第二のアミノ酸またはヌクレオチド配列が、共通の構造ドメインまたはモチーフあるいは共通の機能活性を共有するような第二のアミノ酸またはヌクレオチド配列を意味する。配列番号:2をコードする配列番号:1記載のヌクレオチド配列の全ての縮重変異体は、配列番号:1と「実質的に相同」であると考えられる。
【0037】
従って、本発明の他の実施形態は、単離されたmNa1.3αサブユニット蛋白質およびポリペプチド、mNa1.3αサブユニット活性を有するその断片および変異体に関する。
【0038】
およそ5940ヌクレオチド長の新規mNa1.3αサブユニットのコード配列(配列番号:1)は、およそ1980アミノ酸残基長の蛋白質をコードする。この新規サブユニットをコードする遺伝子は、脳内で発現される。Na1.3チャネルは、例えば脳、心臓および骨格筋において発現される。Na1.3チャネルは所定の組織において低レベルまたは高レベルで発現される場合がある。ニューロンで発現されるNa1.3チャネルのいくつかは、神経損傷に続いて上方調節される(Waxman, SGら、Brain Res. 8886:5-14, 2000; Kim, CHら、Mol. Brain Res. 95:153-161, 2001)。
【0039】
本発明のいくつかの態様を、以下の段落でさらに詳細に記載する。
【0040】
単離されたヌクレオチド分子
本発明の1つの態様は、mNa1.3αサブユニットポリペプチドまたは生物学的に活性なその一部をコードする単離された核酸分子、並びに本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットの関連アイソフォームをコードする核酸分子を同定するハイブリダイゼーションプローブとして用いるのに十分な核酸断片、およびmNa1.3αサブユニット核酸分子の増幅もしくは変異導入のためのPCRプライマーとして用いる核酸断片に関する。本明細書中にて用いられる用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)およびヌクレオチド類似体を用いて形成されたDNAまたはRNAの相同体を含むものである。核酸分子は一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0041】
「単離された」核酸分子は、核酸の天然源中に存在する他の核酸分子から分離されたものである。「単離された」核酸は、核酸が誘導される生物体のゲノムDNAにおいて天然状態で核酸の側面に位置する配列(即ち、核酸の5’および3’端に配置される配列)を有さない。例えば、種々の実施形態において、単離されたmNa1.3αサブユニット核酸分子は、核酸が誘導される細胞のゲノムDNAにおいて天然状態で核酸分子の側面に位置する約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kbのヌクレオチド配列を含み得ない。さらに、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、他の細胞性物質、あるいは組換え技術により作製された場合には培地、または化学合成の場合には化学前駆体もしくは他の化合物を実質的に含まないであろう。
【0042】
本発明の核酸分子、例えば配列番号:1記載のヌクレオチド配列またはその一部を有する核酸分子は、標準的な分子生物学的技術および本明細書にて提供される配列情報を用いて単離することができる。mNa1.3αサブユニット核酸分子は、ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号:1記載の核酸配列の全部もしくは一部を使用した、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニング技術を用いて、単離することができる(例えば、Sambrook, J., Fritsh, E. FおよびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989に記載のように)。
【0043】
さらに、配列番号:1の全部もしくは一部を包含する核酸分子は、配列番号:1記載の配列に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。
【0044】
本発明の核酸は、鋳型としてのcDNA、mRNAあるいはゲノムDNAと適当なオリゴヌクレオチドプライマーとを用いた標準的なPCR増幅技術によって増幅することができる。そのように増幅された核酸は、適当なベクター中にクローニングして、DNA配列分析により特徴決定することができる。さらには、Naチャネルαサブユニットヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術、例えば自動DNA合成装置を用いて調製することができる。
【0045】
他の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:1に示すヌクレオチド配列またはそのヌクレオチド配列の一部と相補的なmNa1.3αサブユニット核酸分子を含む。配列番号:1に示すヌクレオチド配列と相補的な核酸分子とは、配列番号:1に示すヌクレオチド配列とハイブリダイズできる程度に、配列番号:1に示すヌクレオチド配列と実質的に相補的である配列である。
【0046】
さらに他の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:1に示す核酸配列の全長またはその核酸配列の一部と少なくとも約75%、85%、95%若しくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含む。
【0047】
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号:1に示す核酸配列の一部、例えば、プローブ若しくはプライマーとして用いることができる断片、またはmNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的に活性な一部をコードする断片を含むことがある。mNa1.3αサブユニットcDNAのクローニングから決定されたヌクレオチド配列により、他の種から関連するアイソフォーム並びに相同体の同定および/またはクローニングに使用するために設計されるプローブおよびプライマーを作製することができる。典型的には、プローブ/プライマーには、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドが含まれる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、配列番号:1記載のセンス配列、配列番号:1記載のアンチセンス配列、あるいは配列番号:1記載の天然対立遺伝子多型または変異体の少なくとも12または15、好ましくは約20または25、より好ましくは約30、35、40、45、50、55、60、65または75個の連続するヌクレオチドと、厳格な条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
【0048】
mNa1.3αサブユニットヌクレオチド配列に基づくプローブは、関連するアイソフォームをコードする転写物を検出するのに用いることができる。プローブは、それに結合する標識群(例えば、標識群は放射性同位体、蛍光化合物、酵素、酵素の補因子である)をさらに含んでいてもよい。そのようなプローブは、対象の細胞試料中のmNa1.3αサブユニットをコードする核酸のレベルを測定することによって、例えば、mNa1.3αサブユニットmRNAレベルを検出することによって、mNa1.3αサブユニット蛋白質を発現している又は誤って発現している細胞もしくは組織を同定するための診断試験キットの一部、あるいはゲノムmNa1.3αサブユニット遺伝子がmNa1.3αサブユニットアイソフォームの発現に影響を及ぼす領域に突然変異もしくは欠失を有するがどうかを決定するための診断試験キットの一部として用いることができる。
【0049】
「生物学的に活性のあるmNa1.3αサブユニット蛋白質の一部」をコードする核酸断片は、mNa1.3αサブユニットの生物学的活性(mNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的な活性は本明細書中に記載される)を有するポリペプチドをコードする配列番号:1記載のヌクレオチド配列の一部を単離し、コードされたmNa1.3αサブユニット蛋白質の一部を(例えば、インビトロ(in vitro)組換え発現により)発現させ、そしてコードされたmNa1.3αサブユニット蛋白質の一部の活性を評価することによって、調製することができる。
【0050】
本発明は、遺伝コードの縮重のため、配列番号:1に示すヌクレオチド配列と異なるが、配列番号:1に示すヌクレオチド配列によりコードされるmNa1.3αサブユニット蛋白質と同一の蛋白質をコードする、核酸分子をさらに包含する。他の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0051】
配列番号:1に示すmNa1.3αサブユニットヌクレオチド配列に加えて、当業者であれば、mNa1.3αサブユニット蛋白質のアミノ酸配列に変化を生じるDNA配列の多型をある集団内で存在させ得ることは理解されよう。そのようなmNa1.3αサブユニット遺伝子の遺伝的多型は、天然の対立遺伝子多型のため、ある集団内で個々に存在する場合がある。本明細書にて用いられる用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」は、mNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする読み取り枠を含む核酸分子を意味する。典型的には、そのような天然の対立遺伝子多型の結果、mNa1.3αサブユニット遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の分散が生じる得る。天然の対立遺伝子多型の結果であり、mNa1.3αサブユニット蛋白質の機能的な活性を変更しない、ヌクレオチド変異および結果生じるmNa1.3αサブユニット遺伝子のアミノ酸多型のいずれか又は全ては、本発明の範囲内にあるものとする。
【0052】
さらに、他のmNa1.3αサブユニットチャネルファミリーメンバーをコードするため、配列番号:1記載のmNa1.3αサブユニット配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内にあるものとする。例えば、他のmNa1.3αサブユニットcDNAは、mNa1.3αサブユニットのヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1)に基づいて同定することができる。さらに、異なる種由来のmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードするため、配列番号:1記載のmNa1.3αサブユニット配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内にあるものとする。
【0053】
本発明のmNa1.3αサブユニットcDNAの天然対立遺伝子多型および相同体に相当する核酸分子は、厳格なハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術に従って、ハイブリダイゼーションプローブとして本明細書中に開示されるcDNAまたはその一部を用いて、本明細書中に開示されるmNa1.3αサブユニット核酸に対する相同性に基づいて単離することができる。
【0054】
従って、他の実施形態において、本発明の単離された核酸分子は、少なくとも15、20、25、30またはそれ以上のヌクレオチド長であり、配列番号:1記載のヌクレオチド配列を含む核酸分子と厳格な条件下でハイブリダイズする。好ましくは、その分子は、非常に厳格な条件下でハイブリダイズする。他の実施形態において、核酸は少なくとも30、300、500、700、850、950または2000ヌクレオチド長である。本明細書にて用いられる用語「厳格な条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションの条件を記載するものであり、互いに少なくとも60%、85%または95%相同であるヌクレオチド配列が典型的には互いにハイブリダイズしたままの条件で洗浄することである。ハイブリダイゼーション条件は当業者には既知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 6.3 α subunit.1-6.3 α subunit.6, 1991に見出すことができる。適度なハイブリダイゼーション条件は、30℃の2×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズさせ、次いで50℃の1×SSC、0.1%SDS中で洗浄することに相当するものとして定義される。非常に厳格な条件は、45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズさせ、次いで65℃の0.2×SSC、0.1%SDS中で洗浄することに相当するものとして定義される。
【0055】
配列番号:1記載の配列と適度な若しくは非常に厳格な条件下でハイブリダイズする、本発明の単離された核酸分子は、天然の核酸分子に対応し得る。本明細書中で用いられる「天然の」核酸分子は、自然に生じるヌクレオチド配列を有する(例えば、天然蛋白質をコードする)RNAまたはDNA分子を意味する。
【0056】
集団中に存在し得るmNa1.3αサブユニット配列の天然の対立遺伝子多型に加えて、当業者であれば、配列番号:1記載のヌクレオチド配列中への変異により変更が導入され、それによりmNa1.3αサブユニット蛋白質の機能的活性を改変することなく、コードされるmNa1.3αサブユニット蛋白質のアミノ酸配列に変更を導入し得ることは、さらに認められよう。例えば、「非−必須」アミノ酸残基にアミノ酸置換を導入するヌクレオチド置換は、配列番号:1記載の配列において生じ得る。「非−必須」アミノ酸残基は、その生物学的な活性を改変することなくmNa1.3αサブユニットの野生型配列から改変し得る残基であるのに対し、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性に必要な残基である。例えば、本発明のmNa1.3αサブユニット蛋白質間で変換されるアミノ酸残基は、特に改変の影響を受けにくいと予想される。さらに、本発明のmNa1.3αサブユニット蛋白質と他のmNa1.3αサブユニットチャネルサブユニットとの間で変換される更なるアミノ酸残基は、改変の影響を受けにくいであろう。
【0057】
従って、本発明の他の形態は、活性について本質的でないアミノ酸残基に変更を含むmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする核酸分子に関する。そのようなmNa1.3αサブユニット蛋白質は、配列番号:2のアミノ酸配列と異なっているが、生物学的活性は維持している。生物学的活性は、本明細書中に記載のアッセイ、例えば、Naチャネル活性アッセイ、例えばNa流入アッセイにより測定することができる。1つの実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号:2と少なくとも約60%、75%、85%、95%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0058】
配列番号:2の蛋白質と相同なmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする単離された核酸分子は、コードされる蛋白質中に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加もしくは欠失を導入するヌクレオチド置換、付加もしくは欠失を、配列番号:1記載のヌクレオチド配列中に導入することによって作製することができる。変異を、例えば部位特異的変異導入およびPCRによる変異導入などの標準的な技術により、配列番号:1中に導入することができる。保存アミノ酸置換は、1つまたはそれ以上の予想される非−必須アミノ酸残基にて行うことができる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。このように、mNa1.3αサブユニット蛋白質において予想される非必須アミノ酸残基は、同一の側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換されていることが好ましい。配列番号:1の変異導入に続いて、コードされた蛋白質を発現させ、その蛋白質の活性を決定することができる。
【0059】
変異体mNa1.3αサブユニット蛋白質を、(1)mNa1.3αサブユニット蛋白質でない分子、例えばNaチャネルβ1もしくはβ2サブユニット、またはTTXと相互作用する能力、あるいは(2)膜興奮性をモジュレートする能力について、アッセイすることができる。
【0060】
上記のmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする核酸分子に加えて、本発明の他の態様は、それに対してアンチセンスである単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸は、蛋白質をコードする「センス」核酸と相補的なヌクレオチド配列、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的またはmRNA配列と相補的なヌクレオチド配列を含む。従って、アンチセンス核酸は、センス核酸と水素結合し得る。アンチセンス核酸は、完全なmNa1.3αサブユニットコード鎖と相補的であるか、またはその一部とのみ相補的であってもよい。1つの実施形態において、アンチセンス核酸分子は、mNa1.3αサブユニットをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。用語「コード領域」はアミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域(例えば、配列番号:1に相当するmNa1.3αサブユニットのコード領域)を意味する。他の実施形態において、アンチセンス核酸分子は、mNa1.3αサブユニットをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。用語「非コード領域」は、アミノ酸に翻訳されない、コード領域の側面に配置される5’および3’配列を意味する(即ち、5’および3’非翻訳領域とも称される)。
【0061】
本明細書中に開示されるmNa1.3αサブユニットをコードするコード鎖配列(例えば、配列番号:1)を考慮して、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソンとクリックの塩基対合のルールに従って設計することができる。アンチセンス核酸分子は、mNa1.3αサブユニットmRNAの完全なコード領域と相補的であっても良いが、mNa1.3αサブユニットmRNAのコード領域または非コード領域の一部のみのアンチセンスであるオリゴヌクレオチドがより好ましい。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mNa1.3αサブユニットmRNAの翻訳開始部位周辺の領域と相補的であっても良い。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチド長であって良い。本発明のアンチセンス核酸は、当分野で既知の手順を用いた化学合成または酵素ライゲーション反応を用いて構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、天然のヌクレオチド、あるいは分子の生物学的安定性を増加させるよう、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二本鎖の物理的な安定性を増大させるよう(例えば、ホスホロチオネート酸誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いることができる)設計された種々の修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成することができる。アンチセンス核酸を生成するのに用いることができる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン(xantine)、4-アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシ1,5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキュェオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキュェオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v),ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル(pseudouracil)、キュェオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシルおよび2,6−ジアミノプリンが含まれる。別には、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされた発現ベクターを用いて生物学的に産生することができる(即ち、挿入された核酸から転写されたRNAが興味ある標的の核酸に対してアンチセンス方向となる、以下の段落でさらに記載する)。
【0062】
本発明のアンチセンス核酸分子は、mNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする細胞性mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするか又は結合し、それにより、即ち転写および/または翻訳を阻害することにより、該蛋白質の発現を阻害するように、対象に典型的に投与されるか又はインシトゥ(in situ)形成される。ハイブリダイゼーションは、安定な二本鎖を形成する通常のヌクレオチド相補性によって、または、例えばDNA二本鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合には、二重らせんの主溝での特異的な相互作用を通じて行われる。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例としては、組織部位に直接注入することが含まれる。あるいは、アンチセンス核酸分子を選択された細胞を標的とするよう修飾し、次いで全身投与することができる。例えば、全身投与について、アンチセンス分子は、選択された細胞表面に発現される受容体または抗原と特異的に結合するように、例えば、細胞表面に受容体または抗原と結合するペプチドまたは抗体とアンチセンス核酸分子とを連結することによって、修飾することができる。アンチセンス核酸分子は、本明細書中に記載のベクターを用いて細胞に導入することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が強力なpolIIまたはpolIIIプロモーターの制御下に配置されたベクター構築物が想定される。
【0063】
さらに他の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマー核酸分子である。α−アノマー核酸分子は、通常のβユニットと反対に、そのストランドが互いに並行となる、相補的なRNAと特異的な二本鎖混成体を形成する(Gaultierら、Nucleic Acids. Res. 15:6625-6641, 1987)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら、(1987) Nucleic Acids Res. 15:6131-6148)またはキメラRNA−DNA類似体(Inoueら、FEBS Lett. 215:327-330, 1987)を含んでいてもよい。
【0064】
さらなる他の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、相補的な領域を有する一本鎖核酸、例えばmRNAを切断できるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。従って、リボザイム(例えば、ハンマーヘッド型リボザイム(HaselhoffおよびGerlach Nature 334:585-591, 1988に記載されている))を用いることで、mNa1.3αサブユニットmRNA転写物を触媒作用により切断し、それによりmNa1.3αサブユニットmRNAの翻訳を阻害することができる。mNa1.3αサブユニットをコードする核酸に対して特異性を有するリボザイムは、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットcDNAのヌクレオチド配列(即ち、配列番号:1)に基づいて設計することができる。例えば、テトラヒメナL−19 IVS RNAの派生体は、その活性部位のヌクレオチド配列がmNa1.3αサブユニットをコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列と相補的となるよう、構築することができる。例えば、Cechら、米国特許第4,987,071号;およびCechら、米国特許第5,116,742号を参照のこと。別には、mNa1.3αサブユニットmRNAは、特異的なリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを、RNA分子のプールから選択するのに用いることができる。例えば、Bartel, DおよびSzostak, J. W. Science 261:1411-1418, 1993を参照のこと。
【0065】
本発明の他の実施形態において、RNA干渉(RNAi)はmNa1.3αサブユニット蛋白質の発現を阻害するのに用いることができる。種々の阻害性RNAi分子を同定することができ、mNa1.3αサブユニットの発現を阻害するRNAi分子は医薬組成物として製剤化し、本明細書に記載の処置方法において投与することができる。
【0066】
RNAiは、特定のmRNAが宿主細胞内で分解される機構に関するものとして用いられる用語である。mRNAを阻害するために、サイレントされる遺伝子(例えば、mNa1.3αサブユニットポリペプチドをコードする遺伝子)の一部と相同な二本鎖RNA(dsRNA)が細胞内に導入される。dsRNAはショート干渉RNA(またはsiRNA)と呼ばれる21−25のヌクレオチド長の二本鎖に分解され、それがヌクレアーゼ複合体と結合し、RNA誘導型サイレンシング複合体(またはRISC)として知られる複合体を形成する。RISCはsiRNA鎖の一方と内因性のmRNAとの間の塩基対合相互作用により相同な転写物を標的する。次いで、mRNAは、siRNAの3’末端から約12ヌクレオチドに切断する(Sharpら、Genes Dev. 15:485-490, 2001、およびHammondら、Nature Rev. Gen. 2:110-119, 2001を参照のこと)。RNAiは、ヒト胎児腎臓およびヒーラ(HeLa)細胞を含むヒト細胞において成功することが証明された(例えば、Elbashirら、Nature 411:494-498, 2001を参照のこと)。遺伝子サイレンシングは、RNAヘアピンの内因性発現を行わせることによって(Paddisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:1443-1448, 2002を参照のこと)、または短い(21−23nt)dsRNAのトランスフェクションによって(Caplen, Trends in Biotech. 20:49-51, 2002にて概説される)、哺乳動物細胞に導入することができる。
【0067】
RNAi技術は、標準的な分子生物学的方法を利用する。dsRNA(例えば、本明細書中では、mNa1.3αサブユニットポリペプチドをコードする配列に対応するもの)は、標準的な方法により作製することができる(例えば、mNa1.3αサブユニット配列に対応する鋳型DNAの両方の鎖をT7 RNAポリメラーゼを用いて同時に転写することによって;RNAは化学的に合成することもでき、または組換え技術により作製することもできる)。dsRNAを生成するためのキットは、商業的に(例えば、New England Biolabs, Incから)入手可能である。RNAiを媒介するのに用いられるRNAには、合成または修飾ヌクレオチド、例えばホスホロチオネートヌクレオチドが含まれ得る。dsRNAまたはdsRNAを生成するために作製されたプラスミドを用いて細胞をトランスフェクトするする方法もまた、当分野では慣例である。
【0068】
RNAiを用いて観察される遺伝子サイレンシング効果と類似の効果が、mRNA−cDNA混成構築物を用いてトランスフェクトした哺乳動物細胞においても報告された(Linら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 281:639-644, 2001)。従って、mNa1.3αサブユニット配列を有するmRNA−cDNA混成体、およびmNa1.3αサブユニット配列を含む二本鎖(例えば、21−23bpモノマーを含む二本鎖)は、本発明の範囲内である。混成体および二本鎖は、本明細書中に記載のアッセイに従って活性を試験することができ(即ち、被検物質として供することができる)、そして阻害活性を示す物質を、mNa1.3αサブユニット活性と関連する疾病または症状、例えば神経因性疼痛に罹患している、または進行し得る患者を処置するのに用いることができる。
【0069】
本発明のdsRNA分子(mNa1.3αサブユニット遺伝子の一部に相当する二本鎖RNA分子)は種々の様式に変更することができる。例えば、それらは3’ヒドロキシル基を含んでいても良く、21、22若しくは23個の連続するヌクレオチド鎖を含んでいても良い。さらに、それらは平滑末端であっても良く、または3’端、5’端若しくは両端のいずれかで突出端を含んでいても良い。例えば、RNA分子の少なくとも1つのストランドは、鎖長から約1〜約6ヌクレオチド(例えば、1〜5、1〜3、2〜4または3〜5ヌクレオチド(ピリミジンまたはプリンヌクレオチド))の3’突出を有していても良い。両鎖が突出端を有する場合に、突出の長さは、それぞれの鎖で同じであるか、または異なっていても良い。RNA二本鎖の安定性をさらに向上させるために、3’突出端を分解に対して安定にすることができる(例えば、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含ませることによって、あるいは修飾類似体によりピリミジンヌクレオチドに置換することによって(例えば、ウリジン2ヌクレオチド3’突出の2’−デオキシチミジンによる置換は許容され、RNAiの効率に影響を与えない)。二本鎖もしくは混成阻害体を形成する、あるいはアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドとして単純に作用する一本鎖mNa1.3αサブユニットRNA分子もまた、本発明の範囲内にある。RNAiを媒介するために、興味ある標的遺伝子、例えばmNa1.3αサブユニット遺伝子に対して十分な相同性を有する場合、いずれのdsRNAも本発明の方法に使用することができる。21−23ヌクレオチドを有する二本鎖を上記するが、本発明はそのように制限されるものではなく;使用できるdsRNAの長さに上限はない(例えば、dsRNAは遺伝子の約21塩基対から遺伝子の全長もしくはそれ以上の範囲であって良い(例えば、50〜100、100〜250、250〜500、500〜1000もしくは1000塩基対以上)。
【0070】
これらの核酸をヒトに投与する場合、mNa1.3αサブユニットmRNAレベルを減少させ、それにより、mNa1.3αサブユニットの発現を阻害することができる。細胞または生物体を、mNa1.3αサブユニットmRNAが分解され、それにより細胞または生物体内でRNAiを媒介する条件下で維持する。あるいは、細胞を個体から取得し、エックスビボ(ex vivo)で処理し、再び個体中に導入することができる。
【0071】
さらに他の実施形態において、本発明のmNa1.3αサブユニット核酸分子は、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格に、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは可溶性を向上させるために修飾することができる。例えば、核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格は、ペプチド核酸を生成するよう修飾することができる(Hyrup B. ら、Bioorganic & Medicinal Chemistry 4 (1): 5-23, 1996を参照のこと)。本明細書中で用いられる用語「ペプチド核酸」または「PNA」は、核酸模倣体、例えば、デオキシリボースリン酸骨格が偽ペプチド骨格により置換されているが、4種の天然の核酸塩基だけが維持されているDNA模倣体を意味する。PNAの中性の骨格は、低イオン強度条件下でDNAおよびRNAと特異的なハイブリダイゼーションを可能にすることが示された。PNAオリゴマーの合成は、Hyrup Bら、前掲; Perry-O'Keefeら、Proc. Natl. Acad. Sci. 93: 14670-675, 1996において記載されるように、標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて実施することができる。
【0072】
mNa1.3αサブユニット核酸分子のPNAは、治療および診断応用に用いることができる。例えば、PNAは、例えば転写もしくは翻訳抑制を含む、または複製を阻害することにより、遺伝子発現の配列特異的なモジュレータのためのアンチセンスまたは抗原物質として用いることができる。mNa1.3αサブユニット核酸分子のPNAはまた、遺伝子中の単一塩基対変異の分析(例えば、PNA−ダイレクトPCRクランピング)において、他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ(Hyrup B、前掲))と組み合わせて用いられる場合「人工の制限酵素」として;またはDNA配列決定もしくはハイブリダイゼーションのプローブもしくはプライマーとして(Hyrup Bら、前掲;Perry-O'Keefe、前掲)用いることもできる。
【0073】
他の実施形態において、mNa1.3αサブユニットのPNAは、(例えば、その安定性または細胞内への取り込みを向上させるために)親油性または他の補助基(helper group)をPNAに結合させることによって、PNA−DNAキメラの形成によって、あるいはリポソームまたは当分野で既知の他の薬物輸送技術の使用によって、修飾することができる。
【0074】
他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ペプチドのような他の添加基(appended group)(例えば、インビボで宿主細胞の受容体を標的とするための)、細胞膜の通過を容易にする物質(例えば、Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. US. 86:6553-6556, 1989; Lemaitreら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:648-652, 1987; 国際公開第88/09810号パンフレットを参照のこと)または血液脳関門の通過を容易にする物質(国際公開第89/10134号パンフレットを参照のこと)を含んでも良い。加えて、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘導型切断物質(例えば、Krolら、Bio-Techniques 6:958-976, 1988を参照のこと)または挿入剤(例えば、Zon Pharm. Res. 5:539-549, 1988を参照のこと)を用いて修飾することができる。この目的のために、オリゴヌクレオチドは他の物質(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘導型架橋結合物質、輸送物質またはハイブリダイゼーション誘導型切断物質)と連結することができる。
【0075】
単離されたmNa1.3蛋白質および抗−mNa1.3抗体
本発明の1つの態様は、単離されたmNa1.3αサブユニット蛋白質、およびその生物学的に活性な一部、並びに抗−mNa1.3αサブユニット抗体を産生する免疫原として使用するのに適切なポリペプチド断片に関する。1つの実施形態において、天然のmNa1.3αサブユニット蛋白質は、標準的な蛋白質精製技術を用いた適当な精製スキームによって細胞もしくは組織源から単離することができる。他の実施形態において、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、組換えDNA技術により産生される。組換え発現の別法として、mNa1.3αサブユニット蛋白質またはポリペプチドは標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる。
【0076】
「単離された」または「精製された」蛋白質または生物学的に活性なその一部は、細胞物質またはmNa1.3αサブユニット蛋白質が誘導される細胞もしくは組織源の他の夾雑蛋白質を実質的に含まない、あるいは化学合成の場合には化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。用語「細胞物質を実質的に含まない」は、mNa1.3αサブユニット蛋白質が単離され、または組換え技術により産生される細胞の細胞画分から分離されるmNa1.3αサブユニットの調製を含む。1つの実施形態において、用語「細胞物質を実質的に含まない」は、非−mNa1.3αサブユニット蛋白質(本明細書中「夾雑蛋白質」とも称される)を約30%(乾燥重量あたり)未満、より好ましくは非−mNa1.3αサブユニット蛋白質を約20%、10%もしくは5%未満で含有する、mNa1.3αサブユニット蛋白質の調製を含む。mNa1.3αサブユニット蛋白質または生物学的に活性なその一部が組換え技術により産生される場合、培養培地を実質的に含まないことが更に好ましく、即ち、培養培地が蛋白質調製物の容量あたり約20%、10%もしくは5%未満であることを意味する。
【0077】
用語「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」は、mNa1.3αサブユニット蛋白質の合成に関連する化学前駆体または他の化学物質から分離される、mNa1.3αサブユニット蛋白質の調製が含まれる。1つの実施形態において、用語「化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」は、化学前駆体または非−mNa1.3αサブユニット化学物質を約30%、20%、10%もしくは5%(乾燥重量あたり)未満で含有するmNa1.3αサブユニット蛋白質の調製が含まれる。
【0078】
本明細書中で用いられるmNa1.3αサブユニット蛋白質の「生物学的に活性な一部」は、mNa1.3αサブユニット分子と非mNa1.3αサブユニット分子との間の相互作用に関係するmNa1.3αサブユニット蛋白質の断片を含む。mNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的に活性な一部は、mNa1.3αサブユニット蛋白質のアミノ酸配列、例えば配列番号:2に示されるアミノ酸配列と十分に相同な、またはそのアミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、全長のmNa1.3αサブユニット蛋白質よりも少ないアミノ酸を有し、mNa1.3αサブユニット蛋白質の少なくとも1つの活性を示すアミノ酸配列を含む。典型的には、生物学的に活性な一部は、mNa1.3αサブユニット蛋白質の少なくとも1つの活性、例えばβ1もしくはβ2Naチャネルサブユニットの結合性を有するドメインまたはモチーフを含む。mNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的に活性な一部は、Naチャネル媒介活性をモジュレートする物質を開発するための標的として用いることができる。
【0079】
1つの実施形態において、mNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的に活性な一部は、少なくとも1つの膜貫通ドメインを有する。mNa1.3αサブユニット蛋白質の生物学的に活性な一部は、mNa1.3αサブユニット活性を媒介し、1つまたはそれ以上のmNa1.3αサブユニット蛋白質の特徴を有する。その蛋白質の他の領域の生物学的に活性な一部は、組換え技術により調製することができ、天然のmNa1.3αサブユニット蛋白質の1つまたはそれ以上の機能活性を評価することができる。
【0080】
1つの実施形態において、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するか、または配列番号:2と実質的に相同であり、配列番号:2記載の蛋白質の機能活性を保持しているが、ヌクレオチドの部分で詳細に記載されるように、天然の対立遺伝子多型もしくは変異体であるためアミノ酸配列は異なっている。
【0081】
従って、他の実施形態において、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、配列番号:2と少なくとも約50%、75%、85%、95%、99%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を有する蛋白質である。
【0082】
2つのアミノ酸配列の又は2つの核酸の相同性パーセントを決定するため、最適比較目的(optimal comparison purpose)について、配列をアライメントする(例えば、ギャップを、第2のアミノ酸もしくは核酸配列を用いた最適なアライメントのために、第1のアミノ酸もしくは核酸配列中に導入し、非−相同配列を比較目的のために無視することができる)。比較目的のために整列された参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも50%、さらには70%、80%または90%であってもよい。次いで、アミノ酸部位またはヌクレオチド部位と対応するアミノ酸残基またはヌクレオチドとを比較する。第1の配列のある部位が、第2の配列の対応する部位と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドである場合には、その分子はその部位において相同である(即ち、本明細書で用いられるように、アミノ酸または核酸が「相同」であることは、アミノ酸または核酸が「同一」であること等しい)。2つの配列間の相同性パーセントは、同一の部位数を配列数で割り算した関数である(即ち、%相同性=同一部位の数/全ての部位の数×100)。
【0083】
配列の比較および2つの配列間の相同性パーセントの決定は、数理解析を用いて実施することができる。配列比較に利用される数理解析の非制限的な例としては、KarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズム、KarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77, 1993の変法がある。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTヌクレオチド調査は、本発明のmNa1.3αサブユニット核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコアー=100、語長=12を用いて実施することができる。BLAST蛋白質調査は、本発明のmNa1.3αサブユニット蛋白質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコアー=50、語長=3を用いて実施することができる。比較目的についてギャップのあるアライメントを得るため、ギャップ(Gapped)BLASTを、Altschulら、Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402, 1997に記載のように利用することができる。BLASTおよびギャップBLASTプラグラムを利用する場合、それぞれのプラグラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期設定パラメーターを用いることができる。バイオテクノロジー情報のナショナルセンター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトを参照のこと。配列比較に利用される数理解析の他の非制限的な例としては、MyersおよびMiller, CABlOS (1989)のアルゴリズムがある。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アライメント・ソフトウェアーパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれている。アミノ酸比較のためのALIGNプログラムを利用する場合、PAMI120重み残鎖表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いることができる。
【0084】
本発明はmNa1.3αサブユニットキメラまたは融合蛋白質もまた提供する。本明細書中にて用いられるように、mNa1.3αサブユニット「キメラ蛋白質」または「融合蛋白質」は、非−mNa1.3αサブユニットポリペプチドと操作可能に連結されたmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含む。「mNa1.3αサブユニットポリペプチド」は、mNa1.3αサブユニットに相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味するのに対し、「非−mNa1.3αサブユニットポリペプチド」は、mNa1.3αサブユニット蛋白質と実質的に相同でない蛋白質、例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質と異なり、同一もしくは異なる生物体から誘導された蛋白質、または本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニット蛋白質の1つまたはそれ以上の特徴を有さない蛋白質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。mNa1.3αサブユニット融合蛋白質の範囲では、mNa1.3αサブユニットポリペプチドは、mNa1.3αサブユニット蛋白質の全部または一部に対応し得る。特定の実施形態において、mNa1.3αサブユニット融合蛋白質は、mNa1.3αサブユニット蛋白質の少なくとも1つの生物学的に活性な一部を含む。他の特定の実施形態において、mNa1.3αサブユニット融合蛋白質は、少なくとも2つの生物学的に活性なmNa1.3αサブユニット蛋白質の一部を含む。融合蛋白質の範囲内で、用語「操作可能に連結された」は、mNa1.3αサブユニットポリペプチドと非−mNa1.3αサブユニットポリペプチドとが、相互にイン−フレームで融合されていることを意味するものである。非−mNa1.3αサブユニットポリペプチドは、mNa1.3αサブユニットポリペプチドのN末端またはC末端に連結することができる。
【0085】
例えば、1つの実施形態において、融合蛋白質は、mNa1.3αサブユニット配列がGST配列のC末端と融合されている、GST−mNa1.3αサブユニット融合蛋白質である。そのような融合蛋白質は、組換えmNa1.3αサブユニットの精製を容易に行うことができる。
【0086】
他の実施形態において、融合蛋白質は、そのN末端に異種のシグナル配列を含むmNa1.3αサブユニット蛋白質である。特定の宿主細胞(例えば、哺乳動物の宿主細胞)において、mNa1.3αサブユニットの発現は異種のシグナル配列の使用を通じて増大させることができる。
【0087】
本発明のmNa1.3αサブユニット融合蛋白質は、医薬組成物中に含ませることができ、インビボにて対象に投与することができる。mNa1.3αサブユニット融合蛋白質は、mNa1.3αサブユニット基質の生体有用性を有効にするために用いることができる。mNa1.3αサブユニット融合蛋白質の使用は、Naチャネル活性に関連する障害、例えば、神経因性疼痛の処置について治療上有効であり得る。
【0088】
さらに、本発明のmNa1.3αサブユニット融合蛋白質は、対象において抗−mNa1.3αサブユニット抗体を産生するための、mNa1.3αサブユニットリガンドを精製するための、およびスクリーニングアッセイにおいてはmNa1.3αサブユニットとmNa1.3αサブユニット基質との相互作用を阻害する物質を同定するための、免疫原として用いることができる。
【0089】
本発明のmNa1.3αサブユニットキメラまたは融合蛋白質は、標準的な組換えDNA技術により作製することができる。例えば、異なるポリペプチド配列をコードするDNA断片は、慣用技術に従って、例えば、ライゲーションのための平滑末端化もしくは突出末端化(stagger-ended)、適当な末端を得るための制限酵素消化、必要に応じて付着端を埋めること、望ましくない結合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを行うことによって、イン−フレームで一緒に連結される。融合遺伝子は、自動DNA合成装置を含む慣用技術により合成することができる。別法では、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続する遺伝子断片に相補的な突出部を生成するアンカープライマーを用いて実施することができ、次いでアニーリングさせ、再び増幅してキメラ遺伝子を作製することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, eds. Ausubelら、John WileyおよびSons: 1992を参照のこと)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)を既にコードする多くの発現ベクターは、商業的に入手できる。mNa1.3αサブユニット−コード核酸は、融合部分がmNa1.3αサブユニット蛋白質とインフレームで連結されるように発現ベクターなどにクローニングすることができる。
【0090】
また、本発明は、mNa1.3αサブユニットアゴニスト(模倣体)として、またはmNa1.3αサブユニットアンタゴニストとして機能するmNa1.3αサブユニット蛋白質の変異型にも関する。mNa1.3αサブユニット蛋白質の変異型は、変異導入、例えば不連続点突然変異(discrete point mutation)またはmNa1.3αサブユニット蛋白質の切断により作製することができる。mNa1.3αサブユニット蛋白質のアゴニストは、mNa1.3αサブユニット蛋白質の天然型の生物活性と実質的に同一または部分的な活性を保持し得る。mNa1.3αサブユニット蛋白質のアンタゴニストは、例えばmNa1.3αサブユニット蛋白質のNaチャネル媒介活性を拮抗的にモジュレートすることによって、mNa1.3αサブユニット蛋白質の天然型の活性の1つまたはそれ以上を阻害することができる。従って、特異的な生物学的効果は、限定された機能の変異型を用いて処置することにより、顕在化され得る。1つの実施形態において、該蛋白質の天然型の生物学的活性の一部を有する変異型で対象者を処置すると、mNa1.3αサブユニット蛋白質の天然型で処置した場合と比べて、対象における副作用が軽減される。
【0091】
1つの実施形態において、mNa1.3αサブユニットアゴニスト(模倣体)として又はmNa1.3αサブユニットアンタゴニストとして機能するmNa1.3αサブユニット蛋白質の変異型は、例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質アゴニストまたはアンタゴニスト活性について、mNa1.3αサブユニット蛋白質の切断変異体などの変異体の組み合わせライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。1つの実施形態において、mNa1.3αサブユニット変異型の多様なライブラリーは、核酸レベルでの組み合わせ変異により作製され、多様な遺伝子ライブラリーによりコードされる。mNa1.3αサブユニット変異型の多様なライブラリーは、例えば、潜在的なmNa1.3αサブユニット配列の縮重セットが個々のポリペプチドとして、あるいは、そこにmNa1.3αサブユニット配列のセットを含む大きな融合蛋白質(例えば、ファージディスプレイのため)のセットとして発現可能となるように、合成オリゴヌクレオチド混合物を、ある遺伝子配列と酵素的に連結することによって作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なmNa1.3αサブユニット変異型のライブラリーを作製するのに使用できる種々の方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置において実施することができ、次いで、その化学合成遺伝子を適当な発現ベクター中に連結することができる。遺伝子の縮重セットの使用により、1つの混合物で、潜在的なmNa1.3αサブユニット配列の所望のセットをコードする配列全ての供給が可能となる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当分野では既知である(例えば、Narang, S. A. Tetrahedron 39:3, 1983; Itakuraら、Annu. Rev. Biochem. 53:323, 1984; Itakuraら、Science 198:1056, 1984; Ike ら、Nucleic Acid Res. 11:477, 1983を参照のこと)。
【0092】
加えて、mNa1.3αサブユニット蛋白質コード配列の断片のライブラリーは、続いてのmNa1.3αサブユニット蛋白質の変異型のスクリーニングおよび次の選択のための、mNa1.3αサブユニット断片の多様な集合物を形成するために用いることができる。
【0093】
本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニット蛋白質は、結合または非結合の結合物質の検出を容易にするため、検出可能な物質で直接または間接的に標識化されていても良い。適切な検出物質には、種々の酵素、補欠分子群、蛍光物質、発光物質および放射性物質が含まれる。
【0094】
単離されたmNa1.3αサブユニット蛋白質、またはその一部もしくは断片は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を用いて、mNa1.3αサブユニットに結合する抗体を産生する免疫原として用いることができる。全長のmNa1.3αサブユニット蛋白質を用いることができ、あるいは、本発明は免疫原として使用するためのmNa1.3αサブユニットの抗原ペプチド断片を提供する。mNa1.3αサブユニットの抗原ペプチドは、配列番号:2記載のアミノ酸配列または配列番号:2記載のアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含み、そして該ペプチドに対して産生される抗体がmNa1.3αサブユニットと特異的な免疫複合体を形成するような、mNa1.3αサブユニットのエピトープを包含する。好ましくは、抗原ペプチドは、少なくとも10、15、20または30個のアミノ酸残基を含む。
【0095】
mNa1.3αサブユニット免疫原は、その免疫原を用いて適切な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)に免疫することにより抗体を調製するのに典型的に用いられる。適当な免疫原調製には、例えば、組換え技術により発現されたmNa1.3αサブユニット蛋白質または化学合成されたmNa1.3αサブユニットポリペプチドが含まれる。この調製は、フロイト完全もしくは不完全アジュバントなどの補助剤、または類似の免疫賦活剤をさらに含んでいてもよい。適切な対象の免疫原mNa1.3αサブユニット調製物を用いた免疫化は、ポリクローナル抗−mNa1.3αサブユニット抗体応答を含む。
【0096】
従って、本発明の他の態様は、抗−mNa1.3αサブユニット抗体に関する。用語「抗体」は、本明細書中で用いられるように、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性部分、即ち、mNa1.3αサブユニットなどの抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を有する分子を意味する。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性部分の例としては、ペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって作製することができる、F(ab)およびF(ab’)断片が含まれる。本発明は、mNa1.3αサブユニットと結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書にて用いられるように、mNa1.3αサブユニットの特定のエピトープと免疫反応できる抗原結合部位を1種類のみ有する抗体分子の集合を意味する。従って、モノクローナル抗体組成物は、典型的に、免疫反応により特定のmNa1.3αサブユニット蛋白質に対して単一の結合親和性を示す。
【0097】
ポリクローナル抗−mNa1.3αサブユニット抗体は、上記のように、適切な対象をmNa1.3αサブユニット免疫原で免疫することにより調製することができる。免疫された被検体における抗−mNa1.3αサブユニット抗体の力価は、標準技術、例えば固定化されたmNa1.3αサブユニットを用いる酵素結合免疫吸着測定(ELISA)を用いることにより時間を追ってモニターすることができる。所望により、mNa1.3αサブユニットに対する抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離することができ、既知の技術、例えば、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーによりさらに精製することができる。免疫後の適当な時間に、例えば、抗−mNa1.3αサブユニット抗体の力価が最も高い時に、抗体−産生細胞を、対象から得ることができ、そして標準技術、例えばKohlerおよびMilstein (1975) Nature 256:495-497)により最初に記載されたハイブリドーマ技術(Brownら、J. Immunol. 127:539-46, 1981; Brownら、J. Biol. Chem. 255:4980-83, 1980; Yehら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:2927-31, 1976;およびYehら、Int. J. Cancer 29:269-75, 1982も参照のこと)、さらに最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunol Today 4:72, 1983)、EBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96, 1985)またはトリーマ技術により、モノクローナル抗体を調製するために用いることができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマ調製技術は、周知である(一般的にR. H. Kenneth, in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, N.Y. (1980); E. A. Lerner Yale J. Biol. Med., 54:387-402, 1981; M. L. Gefterら、Somatic Cell Genet. 3:231-36, 1977を参照のこと)。簡潔には、不死細胞系(典型的には骨髄腫)を、上記のようにmNa1.3αサブユニット免疫原で免疫化した哺乳動物のリンパ球(典型的には球状赤血球)に融合させ、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングし、mNa1.3αサブユニットと結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0098】
リンパ球と不死細胞系とを融合するのに用いられる周知のプロトコルのいずれも、mNa1.3αサブユニット・モノクローナル抗体を産生する目的に応用することができる(例えば、G. Galfreら、Nature 266:55052, 1977; Gefterら、Somatic Cell Genet、前掲; Lemer, Yale J. Biol. Med、前掲; Kenneth, Monoclonal Antibodiesを参照のこと)。さらに、当業者であれば、そのような方法の種々の変法もまた有用であると認められよう。
【0099】
モノクローナル抗体−分泌ハイブリドーマ調製法の代替法としては、モノクローナル抗−mNa1.3αサブユニット抗体を同定し、mNa1.3αサブユニットを有する組み換え組合せ免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングし、それによりmNa1.3αサブユニットと結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することができる。ファージディスプレイを作製しスクリーニングするキットは、商業的に入手可能である(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01)。さらに、特に抗体ディスプレイライブラリーを作製しスクリーニングするのに使用できる方法および試薬の例は、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、国際公開第92/18619号パンフレット;およびMcCaffertyら、Nature 348:552-554, 1990において見出すことができる。
【0100】
さらに、標準的な組換えDNA技術を用いて作製することができる、ヒトおよび非ヒト蛋白質を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗−mNa1.3αサブユニット抗体は、本発明の範囲内にある。そのようなキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当分野で既知の組換えDNA技術、例えば、Robinsonら、国際出願番号PCT/US86/02269;Akiraら、欧州特許出願公開第184,187号;Taniguchi, M., 欧州特許出願公開第171,496号;Morrisonら、欧州特許出願公開第173,494号;Neubergerら、国際公開第86/01533号パンフレット;Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Cabillyら、欧州特許出願公開第125,023号;Betterら、Science 240:1041-1043, 1988;Liuら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443, 1987;Liuら、J. Immunol. 139:3521-3526, 1987; Sunら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218, 1987;Nishimuraら、Canc. Res. 47:999-1005, 1987;Woodら、Nature 314:446-449, 1985;およびShawら、J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559, 1988);Morrison, S. L. Science 229:1202-1207, 1985;Oiら、BioTechniques 4:214, 1986;Winter米国特許第5,225,539号;Jonesら、Nature 321:552-525, 1986;Verhoeyanら、Science 239:1534, 1988;およびBeidlerら、J. Immunol. 141:4053-4060, 1988に記載されている方法を用いて、作製することができる。
【0101】
抗−mNa1.3αサブユニット抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、クロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的な技術によりmNa1.3αサブユニットを単離するために用いることができる。抗−mNa1.3αサブユニット抗体は、細胞から天然のmNa1.3αサブユニット、および宿主細胞中で発現される組換え技術により産生されたmNa1.3αサブユニットの精製を容易にすることができる。さらに、mNa1.3αサブユニット蛋白質の量および発現様式を評価するために、抗−mNa1.3αサブユニット抗体を用いて、mNa1.3αサブユニット(例えば、細胞溶解液または細胞上清)を検出することができる。抗−mNa1.3αサブユニット抗体は、例えば所定の処置計画の効率を決定する臨床試験手順の一部として、組織での蛋白質レベルをモニターするのに用いることができる。検出は、抗体を検出可能な物質とカップリング(即ち、物理的な連結)により容易に行うことができる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子群、蛍光物質、免疫物質、生物発光物質、および放射性物質が含まれる。適切な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適切な補欠分子群の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチアシネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが含まれ;発光物質の例としては、ルミノールが含まれ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼおよびエクオリンが含まれ;適切な放射性物質の例としては、125I、35SまたはHが含まれる。
【0102】
組換え発現ベクターおよび宿主細胞
本発明の他の態様は、mNa1.3αサブユニット蛋白質(またはその一部)をコードする核酸を含む、ベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書中で用いられる用語「ベクター」は、それと連結される他の核酸を運搬することができる核酸分子を意味する。ベクターの1つの形式は、「プラスミド」であり、それに付加的なDNA切片を連結することができる環状の二本鎖DNAループを意味する。ベクターの他の形式は、ウイルスベクターであり、付加的なDNA切片をウイルスゲノム中に連結することができる。特定のベクターは、導入された宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。ベクターの他の形式(例えば、非−エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、特定のベクターは、操作可能に連結された遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書中では「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA技術に有用な発現ベクターは、しばしばプラスミド形式である。ここで、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に用いられる形式であるため、変換可能に用いることができる。しかしながら、本発明は、そのような他の発現ベクターの形式、例えば、同様の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルスベクター、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルス)を含むものである。
【0103】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中での核酸の発現に適切な形式で本発明の核酸を含み、該組換え発現ベクターが、発現されるべき核酸配列と操作可能に連結される、発現のために使用される宿主細胞を基準に選択される1つまたはそれ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいて、「操作可能に連結された」は、興味核酸配列が、その核酸配列の発現を可能とする様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞中に導入される場合は宿主細胞において)、調節配列(群)と連結されていることを意味するものである。用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものである。そのような調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。調節配列には、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的な発現を指令するもの、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば、組織−特異的な調節配列)が含まれる。当業者であれば、発現ベクターの設計は、トランスフォームされる宿主細胞の選択、所望の蛋白質の発現レベルなどの要素に依存し得ることは理解されよう。本発明の発現ベクターは、宿主細胞に導入することができ、それにより、本明細書に記載のように核酸にコードされた融合蛋白質またはペプチド(例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質、mNa1.3αサブユニット蛋白質の変異型、融合蛋白質など)を含む、蛋白質またはペプチドを産生することができる。
【0104】
本発明の組換え発現ベクターは、原核または真核細胞におけるmNa1.3αサブユニット蛋白質の発現用に設計することができる。例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、大腸菌(E. coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞、両生類細胞または哺乳動物細胞において発現させることができる。適切な宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)において詳細に記載されている。別には、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写および翻訳を行うことができる。
【0105】
原核生物における蛋白質発現は、融合もしくは非−融合蛋白質いずれかの発現を指令する構成型プロモーターまたは誘導型プロモーターを含むベクターを用いて、大腸菌において頻繁に実施される。
【0106】
精製された融合蛋白質は、mNa1.3αサブユニット活性アッセイ(例えば、以下に詳細に記載する直接アッセイまたは競合アッセイ)に利用でき、あるいは、例えばmNa1.3αサブユニットに特異的な抗体を産生するのに利用することができる。
【0107】
他の実施形態において、mNa1.3αサブユニット発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母エス.セルビシエ(S.cerivisae)における発現用のベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら、(1987) EMBO J. 6:229-234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz, Cell 30:933-943, 1982)、pJRY88(Schultzら、Gene 54:113-123, 1987)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)およびpicZ(InVitrogen Corp, San Diego, Calif.)が含まれる。
【0108】
あるいは、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞において発現させることができる。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)における蛋白質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smithら、Mol. Cell Biol. 3:2156-2165, 1983)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers Virol. 170:31-39, 1989)が含まれる。
【0109】
さらに別の実施形態において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8(Seed, B. Nature 329:840, 1987)およびpMT2PC(Kaufmanら、EMBO J. 6:187-195, 1987)が含まれる。哺乳動物細胞を用いた場合、発現ベクターの制御機構は、しばしばウイルスの調節因子により提供される。例えば、一般に用いられるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40から導入される。原核および真核細胞の両方に適切な他の発現系については、Sambrook, J., Fritsh, E. FおよびManiatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989の第16章および17章を参照のこと。
【0110】
他の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、優先的に特定の細胞型にて核酸の発現を指令することができる(例えば、核酸を発現させるために、組織−特異的な調節因子を用いる)。組織−特異的な調節因子は当分野で既知である。適切な組織−特異的なプロモーターの非制限的な例としては、アルブミンプロモーター(肝臓−特異的;Pinkertら、Genes Dev. 1:268-277, 1987)、リンパ球−特異的プロモーター(CalameおよびEaton Adv. Immunol. 43:235-275, 1988)、特に、T細胞受容体プロモーター(WinotoおよびBaltimore EMBO J. 8:729-733, 1989)および免疫グロブリン(Banerjiら、Cell 33:729-740, 1983; QueenおよびBaltimore Cell 33:741-748, 1983)、ニューロン−特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター; ByrneおよびRuddle Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477, 1989)、膵臓−特異的プロモーター(Edlundら、Science 230:912-916, 1985)、および乳腺−特異的プロモーター(例えば、乳奨プロモーター; 米国特許第4,873,316号および欧州特許出願公開第264,166号)が挙げられる。発生学的に調節されるプロモーター、例えば、ネズミHoxプロモーター(KesselおよびGruss Science 249:374-379, 1990)およびα−フェトプロテインプロモーター(CampesおよびTilghman Genes Dev. 3:537-546, 1989)もまた含まれる。
【0111】
本発明は、発現ベクター中にアンチセンス方向にクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、DNA分子は、mNa1.3αサブユニットmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現が可能となる様式で(DNA分子の転写によって)、調節配列と操作可能に連結されている。アンチセンス方向でクローニングされた核酸と操作可能に連結される調節配列は、種々の細胞型においてアンチセンスRNA分子の構成的発現を指令するもの、例えば、ウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択することができ、あるいは、アンチセンスRNAの組織特異的または細胞型特異的な発現を指令する調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、その活性がベクターが導入される細胞型によって決定される高効率な調節領域の制御下でアンチセンス核酸が生成される、組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形式であってもよい。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の調節に関する記載については、Weintraub, Hら、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis, Trends in Genet., Vol. 1(1) 1986を参照のこと。
【0112】
本発明の他の態様は、核酸、例えばmNa1.3αサブユニットmRNA、または本発明の組換え発現ベクターが導入される、宿主細胞に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中では変換可能に用いられる。この用語は、特定の被検細胞だけでなく、その子孫細胞または子孫の潜在的な子孫細胞を意味するものと理解される。突然変異もしくは環境の影響により、特定の修飾が継代を重ねることで生じ得るため、子孫細胞は実際には親細胞と同一ではないが、本明細書中で用いられる用語の範囲になおも含まれている。
【0113】
宿主細胞は、原核細胞または真核細胞のいずれであってもよい。例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、アフリカツメガエル細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞、または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞)において発現させることができる。他の適切な宿主細胞は、当業者には既知である。
【0114】
ベクターDNAは、一般的な形質転換またはトランスフェクション技術を介して、原核または真核細胞に導入することができる。本明細書で用いられる用語「形質転換」または「トランスフェクション」は、宿主細胞中に外来の核酸(例えば、DNA)を導入するための当分野で認められる種々の技術を意味し、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共−沈殿、DEAE−デキストラン−媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションが含まれる。細胞を形質転換またはトランスフェクションする適切な方法は、Sambrookら、(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)または他の研究室マニュアルにて見出すことができる。核酸を顕微注射により導入することもできる。
【0115】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションについては、用いられる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に依存するが、細胞の小分画のみが、そのゲノム中に外来DNAを組み込み得ることが知られている。組み込みを同定し選択するために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子は、興味遺伝子と一緒に宿主細胞中に遺伝的に導入される。選択可能なマーカーは、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与えるものを含む。選択可能なマーカーをコードする核酸は、mNa1.3αサブユニット蛋白質をコードするベクターと同一のベクター上に存在して、宿主細胞に導入されてもよく、または別々のベクター上に存在して導入されてもよい。導入された核酸を安定に発現する細胞を、薬剤選択により同定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込まれた細胞は生存し、そうでない細胞は死滅する)。
【0116】
本発明の宿主細胞、例えば培養液中の原核または真核宿主細胞は、mNa1.3αサブユニット蛋白質を産生(即ち、発現)するのに用いることができる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を用いたmNa1.3αサブユニット蛋白質の産生方法を提供する。
【0117】
本発明の核酸分子は、ベクター中に挿入することができ、遺伝子治療用ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈注射、局所投与により(米国特許第5,328,470号を参照のこと)、または定位注射(stereotactic injection)により(例えば、Chenら、Proc. Natl. Acad Sci. USA 91:3054-3057, 1994を参照のこと)、対象に輸送することができる。遺伝子治療ベクターの医薬品は、許容される希釈液中に遺伝子治療ベクターを含んでいても良く、または遺伝子輸送賦形剤が包埋される徐放基質を含んでいても良い。別には、完全な遺伝子輸送ベクター、例えばレトロウイルスベクターは、組換え細胞から完全に生成されることができ、医薬品は、遺伝子輸送系を生成する1つまたはそれ以上の細胞を含んでいても良い。
【0118】
本発明の使用および方法
本明細書中に記載される核酸分子、蛋白質、蛋白質相同体および抗体は、1つまたはそれ以上の以下の方法:a)スクリーニングアッセイ;b)予防薬(例えば、診断アッセイ、予後アッセイ、臨床試験のモニタリングおよび薬理遺伝);およびc)処置方法(例えば、治療および予防)において用いることができる。
【0119】
本発明の単離された核酸分子は、本明細書中、以下にさらに詳述するように、例えば、mNa1.3αサブユニット蛋白質を発現するために(例えば、遺伝子治療応用において宿主細胞中の組換え発現ベクターを介して)、mNa1.3αサブユニットmRNA(生物試料中の)またはmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする遺伝子中の遺伝子変化を検出するために、並びにmNa1.3αサブユニット活性をモジュレートするために用いることができる。mNa1.3αサブユニット蛋白質は、mNa1.3αサブユニット基質の不十分または過剰な産生、あるいはmNa1.3αサブユニット阻害物質の生産により特徴付けられる障害を処置するのに用いることができる。加えて、mNa1.3αサブユニット蛋白質は、天然のmNa1.3αサブユニット基質をスクリーニングするために、mNa1.3αサブユニット活性をモジュレートする薬物または化合物をスクリーニングするために、並びにmNa1.3αサブユニット蛋白質の不十分な又は過剰な産生、あるいはmNa1.3αサブユニットの野生型蛋白質と比較して低下した若しくは異常な活性を有するmNa1.3αサブユニット蛋白質型の産生により特徴付けられる障害を処置するために用いることができる。さらに、本発明の抗−mNa1.3αサブユニット抗体は、mNa1.3αサブユニット蛋白質を検出および単離するために、並びにmNa1.3αサブユニット活性をモジュレートするために用いることができる。
【0120】
スクリーニングアッセイ
本発明は、モジュレータ、即ち本明細書中で記載されるmNa1.3αサブユニットを含むNaチャネルと結合する候補物質または被験化合物もしくは薬物(例えば、蛋白質、ペプチド、ペプチド模倣体(peptidomimetic)、ペプトイド、小分子または他の薬物)を同定する方法を提供する。このように同定された化合物は、例えば治療プロトコルにおいて、これらのNaチャネルの活性をモジュレートするために用いることができる。
【0121】
1つの実施形態において、本発明は、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットまたはそのサブユニットの生物学的に活性な一部を含むNaチャネルの基質である被験化合物をスクリーニングするアッセイ法を提供する。他の実施形式において、本発明は、これらのNaチャネルに結合し、または、その活性をモジュレートする候補化合物または被験化合物をスクリーニングするアッセイ法を提供する。
【0122】
イオンチャネル−モジュレート化合物は、インビトロ(例えば、細胞および無細胞に基づく)およびインビボ方法の両方を通じて同定することができる。1つの実施形態において、イオン流動アッセイはNaチャネル活性を測定するために用いることができる。
【0123】
イオンチャネル活性を測定するアッセイは、流動アッセイ、パッチクランプ電気生理学および2電極電圧クランプ電気生理学を含む(例えば、Linら、Neuron 18:153-166, 1997を参照のこと)。パッチクランプ生理学は、以下のように実施することができる。簡単には、小さな電極を有するピペットチップを細胞膜に押し付け、ピペットと膜との間に密着したシールを形成させる。電極は、ピペットチップ端により画定される膜を通じて流れる電流を補足する。細胞内または膜の一区画あるいは細胞全体に及ぶ電流を測定するために、様々に配置することができる。
【0124】
2電極電圧−クランプ(TEVC)生理学は、以下のように実施することができる。簡単には、2つの鋭利な電極を細胞膜を通じて押し付ける。1つの電極は、膜電位をモニターし、他方の電極は電流を流して、所定のレベルに膜電位を保つ。パッチ−クランプおよびTEVC技術の両方は、イオンチャネル電流のキネティクスおよび強度の両方に関する情報を提供する。
【0125】
ハイスループット電気生理学は、例えば、米国特許第6,268,168号および米国特許第6,048,722号に記載されるように実施することができ、それらの内容は出典明示により本明細書の一部とされる。
【0126】
イオン濃度の変化を測定するアッセイを用いることができる。例えば、試験系は、検出可能なNa(放射標識されたNa)を用いることができる。Naの検出は、Na濃度変化の指標を与え得る。1つの実施形態において、アッセイには試験系(例えば、細胞または封入された膜調製物)への電圧印加による刺激後のNa検出が含まれる。また、ナトリウム感受性の色素、例えばナトリウムグリーンまたはコロナレッドを、イオン濃度変化を測定するのにも用いることができる。
【0127】
1つの実施形態において、Naチャネルモジュレータは、アフリカツメガエル卵母細胞系を用いてアッセイされる。イオンチャネルの一過性発現およびアフリカツメガエル卵母細胞からの記録についての詳細な記載は、例えば、XuおよびLipscombe, J. Neurosci. 21(16):5944-5951, 2001; Linら、前掲)を参照のこと。他の実施形態において、アッセイには、例えば、ヒトまたはマウス細胞を用いた、哺乳動物細胞に基づいたアッセイがある。特定のNaチャネル、例えばmNa1.3αサブユニットチャネルは、他のNaチャネルを発現していない細胞型へのトランスフェクションにより分離して研究することができる。
【0128】
化合物
本発明の被検化合物は、単独で、あるいは以下のライブラリー:生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(生物活性を保持するにも関わらず、酵素的分解に対して耐性である新規の非ペプチド骨格を含む、ペプチドの機能性を有する分子のライブラリー;例えばZuckermann, R.Nら、J. Med. Chem. 37:2678-85, 1994を参照のこと);空間的なアドレス指定が可能な並行固相もしくは液相ライブラリー;デコンボリューションを要求する合成ライブラリー法;「ワン−ビーズ・ワン−コンパウンド(one-bead one-compound)」ライブラリー法;および親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー方法を含む、当分野で既知の組み合わせライブラリー法における種々のアプローチのいずれかを用いて、得ることができる。生物学的ライブラリーおよびペプトイドライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチはペプチド、非−ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子のライブラリーに応用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。
【0129】
分子ライブラリーの合成のための方法の実例は、当分野において、例えば:DeWittら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:6909, 1993; Erbら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994; Zuckermannら、J. Med. Chem. 37:2678, 1994; Choら、Science 261:1303, 1993; Carrellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994; Carellら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061, 1994; およびGallopら、J. Med. Chem. 37:1233, 1994において見い出すことができる。
【0130】
化合物ライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten, Biotechniques 13:412-421, 1992)、またはビーズ上 (Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ (Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌 (Ladner, 米国特許第5,223,409号)、胞子 (Ladner 米国特許第5,223,409号)、プラスミド (Cullら、Proc Natl Acad Sci USA 89:1865-1869, 1992)またはファージ上(ScottおよびSmith, Science 249:386-390, 1990; Devlin, Science 249:404-406, 1990; Cwirlaら、Proc. Natl. Acad. Sci. 87:6378-6382, 1990; Felici, J. Mol. Biol. 222:301-310, 1991; Ladner 前掲)に存在させることができる。
【0131】
被検化合物として用いられる化学物質(即ち、潜在的な阻害剤、アンタゴニスト、アゴニスト)は、商業的に入手可能であり、または容易に入手できる出発物質から、標準的な合成技術および当業者に既知の方法論を用いて合成することができる。本明細書に記載の方法により同定される化合物を合成するのに有用な、合成化学トランスフォーメーションおよび保護基方法論(保護および脱保護)は、当分野で既知であり、例えばR. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 第2版., John Wiley and Sons (1991); L. FieserおよびM. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);およびL. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John WileyおよびSons (1995), 並びにその後続版に記載されるものが含まれる。
【0132】
1つの態様において、化合物は有機小分子、即ち分子量が1000amu以下の化合物、あるいは350〜750amuの化合物である。他の態様において、化合物は、(i)非−ペプチドである化合物;(ii)1ないし5個のヘテロシクリルまたはヘテロアリール環基を有し、更なる置換基を有していてもよい化合物(iii)それぞれの医薬上許容される塩型である化合物;または(iv)ペプチド化合物である。
【0133】
用語「ヘテロシクリル」は、単環式の場合はO、NまたはSから選択される1〜3個のヘテロ原子、二環式の場合には1〜6個のヘテロ原子、三環式の場合には1〜9個のヘテロ原子を有する、非芳香族3〜8員単環式、8〜12員二環式または11〜14員三環式環系であって(例えば、炭素原子および単環式、二環式または三環式の場合には各々1〜3個、1〜6個または1〜9個のN、OまたはSのヘテロ原子)、それぞれの環の0、1、2または3個の原子は置換基により置換されていても良い、非芳香族環式環系を意味する。
【0134】
用語「ヘテロアリール」は、単環式の場合は1〜3個のO、NまたはSから選択されるヘテロ原子、二環式の場合は1〜6個のヘテロ原子または三環式の場合は1〜9個のへテロ原子を有する、芳香族5〜8員単環式、8〜12員二環式または11〜14員三環式環系であって(例えば、炭素原子および単環式、二環式または三環式の場合には各々1〜3個、1〜6個または1〜9個のN、OまたはSのヘテロ原子)、それぞれの環の0、1、2、3または4個の原子は置換基により置換されていても良い、芳香族環式環系を意味する。
【0135】
用語「置換基」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基のいずれかの原子にて「置換される」基を意味する。適切な置換基には、限定するものではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、SOH、ペルフルオロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、カルボキシル、オキソ、チオキソ、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)アルキル(ここに、nは0〜2である)、S(O)アリール(ここに、nは0〜2である)、S(O)ヘテロアリール(ここに、nは0〜2である)、S(O)nヘテロシクリル(ここに、nは0〜2である)、アミン(モノ−、ジ−、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルおよびそれらの組み合わせ)、エステル(アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル)、アミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルおよびそれらの組み合わせ)、スルホンアミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキルおよびそれらの組み合わせ)、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換ヘテロシクリルおよび非置換シクロアルキルが含まれる。1つの態様において、ある基における置換基は、独立して、上記の置換基のいずれか1つ、またはいずれかの組である。
【0136】
本発明により考えられる化合物における置換基の組み合わせ及び変量は、安定な化合物を形成することとなるものだけである。用語「安定」は、本明細書中にて用いられるように、製造を可能とするのに十分な安定性を有し、本明細書にて詳述される目的のために(例えば、輸送、保存、アッセイ、対象への治療上の投与)実用的に十分な期間化合物の完全性を保持する化合物を意味する。
【0137】
本明細書中の化合物の医薬上許容される塩には、医薬上許容される無機および有機酸および塩基から誘導されるものが含まれる。適切な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジパート、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ジグルコネート、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミスルフェート(hemisulfate)、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。
【0138】
本明細書中に記載される化合物は、1つまたはそれ以上の不斉中心を含んでいても良く、従って、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物が生じる。本化合物のそのような全ての異性体型は、明示的に本発明に含まれる。本明細書中に記載の化合物は、複数の互変異性型に存在していてもよく、それらは全て本発明に含まれる。本化合物は、シス−もしくはトランスまたはE−もしくはZ−二重結合異性体型に生じることもある。本化合物のそのような異性体型は全て、明示的に本発明に含まれる。
【0139】
結合アッセイ
mNa1.3αサブユニットを含むNaチャネルと結合する被験化合物の能力もまた評価することができる。Naチャネル結合がチャネル調節活性の必要条件ではないが、Naチャネルと結合する化合物はチャネルの活性をモジュレートするのに有用であろう。これは、例えば、基質などの化合物のNaチャネルへの結合を、複合体中において標識化された基質などの化合物を検出することにより決定することができるように、放射性同位体または酵素標識を用いて、基質などの化合物をカップリングすることによって、達成することができる。別には、本明細書中に記載にmNa1.3αサブユニットを含むNaチャネルを放射性同位体または酵素標識とカップリングし、複合体をモジュレートする被験化合物の能力をモニターすることができる。例えば、化合物は、125I、35S、14CまたはHを用いて、直接的もしくは間接的のいずれかにより標識化することができ、その放射性同位体は、放射放出を直接的に計数することによって、またはシンチレーション計数によって検出される。別には、化合物は、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはルシフェラーゼを用いて酵素的に標識化することができ、その酵素標識は、適当な基質の生成物への変換を決定することによって検出される。
【0140】
mNa1.3αサブユニットを含むNaチャネルと相互作用する被検化合物の能力を、いずれの反応体を標識化することなく、評価することができる。例えば、マイクロフィジオメーター(microphysiometer)を用いることで、化合物またはNaチャネルのいずれも標識化することなく、化合物とNaチャネルとの相互作用を検出することができる(McConnell, H. M.ら、Science 257:1906-1912, 1992)。本明細書中に用いられるように、「マイクロフィジオメーター」(例えば、サイトセンサー(Cytosensor))は、光−アドレス指定可能な電位差感知装置(LAPS)を用いて、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析装置である。この酸性化速度の変化は、化合物とNaチャネルとの相互作用の指標として用いることができる。
【0141】
更なる別の実施形態について、本明細書中に記載のNaチャネルまたは生物学的に活性なその一部を被検化合物と接触させ、該チャネルまたは生物学的に活性なその一部と結合する被検化合物の能力を評価する無細胞アッセイが提供される。好ましくは、無細胞アッセイは膜を含む。無細胞アッセイは、標的遺伝子の蛋白質と被検化合物との反応混合液を条件下で調製し、十分な時間2つの化合物を相互作用させて結合させ、次いで、取り出しおよび/または検出が可能な複合体を形成させることを含む。
【0142】
2つの分子の相互作用は、例えば、蛍光エネルギー移動(FRET)(例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号; Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号を参照のこと)を用いて検出することもできる。第一の「ドナー」分子における蛍光団標識は、その放出される蛍光エネルギーが、第二の「アクセプター」分子における蛍光標識によって吸収され、次いで吸収されたエネルギーのため蛍光を発することができるように選択される。あるいは、「ドナー」蛋白質分子は、トリプトファン残基の天然の蛍光エネルギーを簡潔に利用することができる。標識は、「アクセプター」分子の標識が「ドナー」の標識から区別できるように、異なるの波長の光を発する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率は、分離している分子間距離と関係があるため、分子間の空間的な関係を評価することができる。分子間で結合が生じる状況では、アッセイにおいて「アクセプター」分子の標識の蛍光発光は、最大となるであろう。FET結合事象は、当分野で周知の標準的な蛍光検出方法を通じて(例えば、蛍光計を用いて)慣例的に測定することができる。
【0143】
他の実施形態において、本明細書中に記載のNaチャネルと結合する被検化合物の能力の決定は、実時間バイオモレキュラー・インターラクション・アナリシス(BIA)(例えば、Sjolander, SおよびUrbaniczky, C., Anal. Chem. 63:2338-2345, 1991; およびSzaboら、Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705, 1995を参照のこと)を用いて実施することができる。「表面プラスモン共鳴」または「BIA」は、いずれの反応体も標識化することなく、生物特異的な相互作用を実時間で検出する(例えば、BIAcore)。結合表面の重量変化(結合事象の指標)により、表面付近の光の屈折率が変化し(表面プラスモン共鳴(SPR)による光の現象)、生体分子間の実時間相互作用の指標として用いることができる検出可能な信号となる。
【0144】
1つの実施形態において、Naチャネルまたは被検化合物を含む試料は、固相上に固着される。固相上に固着されたチャネル/被検化合物複合体は、反応の最後に検出することができる。
【0145】
1つまたは両方の蛋白質の非複合体型から複合体型の分離を容易にするために、並びに、アッセイの自動化を達成するために、Naチャネル、抗−Naチャネル抗体またはその標的分子のいずれかを固定化することが望ましいであろう。被検化合物のNaチャネルへの結合、または候補化合物の存在下もしくは非存在下での標的分子とNaチャネルとの相互作用は、反応体を含ませるのに適切な容器において実施することができる。そのような容器の例としては、マイクロタイタープレート、試験管および微小遠心管が含まれる。1つの実施形態において、1つまたは両方の蛋白質がマトリックスと結合できるドメインを付加する融合蛋白質が、提供され得る。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/mNa1.3αサブユニット融合蛋白質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/標的融合蛋白質は、グルタチオンセファロースビーズ(シグマ・ケミカル、ミズーリ州セントルイス)またはグルタチオン誘導マイクロタイタープレートに吸着させることができ、次いで被検化合物、または被検化合物とGST−タグ付きサブユニットを含むNaチャネルを有する試料と組み合わせ、その混合物を、複合体の形成が可能な条件下で(例えば、塩およびpHについて生理条件にて)インキュベートする。インキュベートに続いて、ビーズまたはマクロタイタープレートウェルを非結合成分を取り除くために洗浄し、ビーズの場合にはマトリクスを固定化し、複合体を、例えば上記のように直接的または間接的のいずれかにより決定する。
【0146】
マトリクス上にNaチャネルサブユニットの複合体を固定化する他の技術としては、ビオチンとストレプトアビジンの結合を用いることが含まれる。例えば、ビオチン化したmNa1.3αサブユニット蛋白質は、当分野で既知の技術(例えば、ビオチン化キット、ピアーケミカルズ、イリノイ州ロックフォード)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製することができ、そしてストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(ピアースケミカルズ)のウェルに固定化することができる。
【0147】
アッセイを実施するために、固定化されない成分を、固着された成分を含む被覆された表面に添加する。反応が完了した後に、未反応成分を、形成された複合体が固体表面上に固定され続けるような条件下で取り除く(例えば、洗浄によって)。固体表面上に固着された複合体の検出は、多くの方法によって実施することができる。先の固定化されていない成分が予め標識化されている場合、表面上に固定化された標識の検出が、複合体形成の指標となる。先の固定化されない成分が予め標識化されていない場合、表面上に固着された複合体を検出するために、例えば、固定化された成分に特異的な標識化抗体を用いる(次いで、抗体を、直接標識化する、または、例えば標識化抗IgG抗体を用いて間接的に標識化することができる)、間接標識法を使用できる。
【0148】
1つの実施形態において、このアッセイは、Naチャネルの標的分子への結合を妨げない、該チャネルのエピトープと抗体との反応性を利用して実施される。そのような抗体をプレートのウェルに導入し、非結合標的またはNaチャネルを、抗体結合によりウェルに補足することができる。そのような複合体検出方法は、GST−固定化複合体について上記した方法に加えて、Naチャネル成分と抗体との反応性を用いた複合体の免疫検出、並びにチャネルと関連した酵素活性を検出することに依存した酵素結合アッセイを含む。
【0149】
別には、無細胞アッセイは、液相で行うことができる。そのようなアッセイにおいて、反応産物は、多くの標準技術:限定するものではないが、分画遠心法(例えば、Rivas, GおよびMinton, A.P., Trends Biochem Sci 18:284-7, 1993を参照のこと);クロマトグラフィー(ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー);電気泳動および免疫沈降(例えば、Ausubel, F.ら、eds. (1999) Current Protocols in Molecular Biology, J. Wiley: New Yorkを参照のこと)を含む技術のいずれかにより未反応成分から分離される。そのような樹脂およびクロマトグラフ技術は、当業者には既知である(例えば、Heegaard, N.H., J Mol Recognit 11:141-8, 1998; Hage, D.SおよびTweed, S.A., J Chromatogr B Biomed Sci Appl. 699:499-525, 1997を参照のこと)。さらに、蛍光エネルギー移動もまた、本明細書中で記載されるように、溶液から複合体をさらに精製することなく、結合を検出するために慣用的に利用することもできる。無細胞アッセイは、例えば、膜成分または合成膜成分を含むことによって、Naチャネル複合体の構造を保護するのに好ましい。
【0150】
特定の実施形態において、アッセイは、アッセイ混合物を形成させるために、NaチャネルまたはmNa1.3αサブユニットの生物学的に活性な部分を含むチャネルを、該チャネルと結合する既知の化合物と接触させること、アッセイ混合物を被検化合物と接触させること、およびNaチャネルと相互作用する被検化合物の能力を決定することを含み、該Naチャネルと相互作用する被検化合物の能力の決定は、既知の化合物と比較して、優先的にNaチャネルと結合する、または該チャネルの活性をモジュレートする、被検化合物の能力を決定することを含む。
【0151】
本明細書中に記載のNaチャネルは、インビボで、1つまたはそれ以上の細胞性もしくは細胞外性高分子、例えば蛋白質と相互作用し得る。この議論の目的のために、そのような細胞性および細胞外性高分子は、本明細書中では「結合パートナー」と称する。相互作用を乱す化合物は、標的遺伝子産物の活性を調節するのに有用であり得る。そのような化合物は、限定するものではないが、抗体、ペプチドおよび小分子などの分子が含まれ得る。
【0152】
Naチャネルと細胞外結合パートナー(群)との相互作用を妨害する化合物を同定するために、標的遺伝子産物および結合パートナーを含む反応混合物は、2つの産物が複合体を形成するのに十分な条件下および時間のもとで調製される。阻害物質を試験するために、反応混合物は、被検化合物存在下または非存在下で提供される。被検化合物は、反応混合溶液中に最初から含ませても良いし、またはNaチャネルおよびその細胞性または細胞外性結合パートナーの添加に続けて加えるても良い。対照反応混合物は、被検化合物を含ませずに、もしくはプラセボと一緒にインキュベートされる。次いで、Naチャネルとその細胞性または細胞外性の結合パートナーのいずれかとの複合体の形成を、検出する。被検化合物を含む反応混合液中でない、対照反応中の複合体の形成は、その化合物が、標的遺伝子産物と相互作用する結合パートナーとの相互作用を妨害することを示す。さらに、被検化合物および通常の標的遺伝子産物を含む反応混合液中の複合体形成もまた、被検化合物および1つまたはそれ以上の変異サブユニットを有するNaチャネルを含む反応混合液中の複合体形成と比較することができる。この比較は、通常の標的遺伝子産物ではなく、変異体の相互作用を乱す化合物を同定することが望ましい場合には重要であろう。
【0153】
これらのアッセイは、不均一形式または均一形式にて実施することができる。不均一アッセイには、Naチャネルまたは結合パートナーの固相上への固着、および反応の最後に固相上に固着された複合体の検出を含む。均一アッセイにおいて、全反応は液相中で行われる。いずれもアプローチにおいても、反応体を添加する順序を変更することで、試験される化合物についての種々の情報を得ることができる。例えば、標的遺伝子産物と結合パートナーとの相互作用を、例えば競合により妨害する被験化合物は、被検物質の存在下で反応を行わせることによって同定することができる。別には、作られた複合体を乱す化合物、例えば、高い結合定数を有し、複合体からその成分の1つと置き換わる化合物は、複合体が形成された後に、反応混合物中に被検化合物を反応混合物中に添加することによって試験することができる。種々の形式を以下に簡潔に記載する。
【0154】
不均一アッセイ系において、標的遺伝子産物または相互作用する細胞性もしくは細胞外性結合パートナーのいずれかを、固体表面(例えば、マイクロタイタープレート)上に固着し、一方で固着されない分子種は、直接もしくは間接的のいずれかにより標識化される。固着された分子種は、非共有結合または共有結合固着により固定化され得る。別には、固着されるべき分子種に特異的な固定化された抗体は、固体表面にその分子種を固着させるために用いることができる。
【0155】
このアッセイを行うために、固定化された分子種のパートナーは、被検化合物と共に若しくは用いずに被覆された表面上に曝される。この反応が完了した後、未反応成分を取り除き(例えば、洗浄により)、形成された全ての複合体が、固体表面上に固定化された状態に維持する。固定化されない分子種が予め標識化されている場合、表面上に固定された標識の検出が、複合体形成の指標となる。固定化されない分子種が予め標識化されていない場合、表面上に固着された複合体を検出するために、例えば、最初に固定化されない分子種に特異的な標識化抗体を用いる(次いで、抗体を直接標識化する、または例えば標識化された抗−Ig抗体を用いて間接的に標識化することができる)、間接標識法を用いることができる。反応体成分を加える順序に応じて、複合体形成を阻害する又は作られた複合体を乱す化合物を、検出することができる。
【0156】
別法として、反応は、被検化合物の存在下または非存在下の液相中で実施することができ、その反応産物は未反応成分から分離され、例えば、溶液中で形成された複合体のいずれかを固着するため、結合成分の1つと特異的な固定化された抗体、および他のパートナーに特異的な標識化抗体を用いて、固着された複合体を検出することができる。さらに、液相に反応体を添加する順序に応じて、複合体を阻害する又は作られた複合体を乱す化合物を同定することができる。
【0157】
本発明の他の実施形態において、均一アッセイを用いることができる。例えば、標的遺伝子産物と相互作用する細胞性若しくは細胞外性結合パートナー産物とで作られた複合体は、Naチャネルサブユニットまたはその結合パートナーのいずれかが標識化されているが、その標識から得られるシグナルが複合体形成により消失するよう、調製される(例えば、免疫アッセイについて、このアプローチを利用する米国特許第4,109,496号を参照のこと)。作られた複合体の分子種の1つと競合し置き換わる被検基質の添加により、バックグラウンド以上のシグナルが生じることとなる。この方法により、標的遺伝子産物−結合パートナー相互作用を乱す被検基質が同定され得る。
【0158】
さらに他の態様において、Naチャネル蛋白質またはその断片は、Naチャネル蛋白質と結合もしくは相互作用し(「Naチャネル結合蛋白質」または「Naチャネル−bp」)、Naチャネル活性に関与する他の蛋白質を同定するために、ツー・ハイブリッドアッセイまたはスリー・ハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号; Zervosら、Cell 72:223-232, 1993; Maduraら、J. Biol. Chem. 268:12046-12054, 1993; Bartelら、Biotechniques 14:920-924, 1993; Iwabuchiら、Oncogene 8:1693-1696, 1993;およびBrent WO94/10300を参照のこと)におて、「バイト(bait)蛋白質」として用いることができる。このようなNaチャネル−bpは、NaチャネルまたはNa感受性標的によるシグナルの活性物質または阻害物質であり得る。
【0159】
ツー・ハイブリッド系は、分離したDNA結合および活性化ドメインからなる、最大の転写因子のモジュレータの性質に依存している。簡単には、このアッセイは、2つの異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物においては、Naチャネルサブユニット蛋白質またはその一部(例えば、該サブユニットの細胞外ドメインの可溶性部分に対応する)をコードする遺伝子は、既知の転写因子(例えば、GAL4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子と融合されている。他方の構築物においては、DNA配列のライブラリーからの、未知蛋白質(「プレイ(prey)」または「試料」)をコードするDNA配列が、既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子と融合されている(あるいは、Naチャネルサブユニットが、活性化ドメインに融合されていてもよい)。「バイト」および「プレイ」蛋白質がインビボで相互作用して、Naチャネルサブユニット−依存性複合体を形成すると、転写因子のDNA結合ドメインと活性化ドメインは近接した状態になる。この接近により、転写因子に応答して転写調節部位に操作可能に連結されたレポーター遺伝子(例えば、lacZ)の転写が可能になる。レポーター遺伝子の発現は、検出することができ、そして機能的な転写因子を有する細胞クローンは、単離することができ、そしてNaチャネルサブユニットと相互作用する蛋白質をコードするクローン化された遺伝子を得るために用いることができる。
【0160】
他の実施形態において、Naチャネルサブユニット発現のモジュレータが同定される。例えば、細胞または無細胞混合物を候補化合物と接触させ、mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質の発現を、候補化合物の非存在下でのmNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質の発現レベルと比較して評価する。mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質の発現が、候補化合物の非存在下よりも存在下で大きい場合、その候補化合物は、mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質発現の刺激物質として同定される。他方、mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質の発現が、候補化合物の非存在下よりも存在下で小さい(統計学的に有意に小さい)場合、その候補化合物は、mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質発現の阻害物質として同定される。mNa1.3αサブユニットmRNAまたは蛋白質発現のレベルは、本明細書に記載のmNa1.3αサブユニットまたは蛋白質を検出する方法により決定することができる。
【0161】
他の態様において、本発明は、本明細書に記載の2つまたはそれ以上のアッセイの組み合わせに関する。例えば、モジュレータは細胞に基づくアッセイまたは無細胞アッセイを用いて同定することができ、Naチャネルの活性をモジュレートする物質の能力は、インビボにて、例えば、疼痛疾患または脳卒中もしくは頭部外傷性の脳損傷と関連する障害についての動物モデルなどの動物において、確認することができる。
【0162】
さらに、本発明は、上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規物質に関する。従って、本明細書に記載されるように同定される物質(例えば、mNa1.3αサブユニットチャネルモジュレータ、本明細書中に記載のmNa1.3αサブユニットの1つまたはそれ以上に対応するアンチセンス核酸分子、チャネル特異的抗体、またはmNa1.3αサブユニット結合パートナー)を適当な動物モデルにさらに用いて、該物質を用いた処置の、有効性、毒性、副作用または作用機構を決定することも、本発明の範囲内にある。さらに、上記のスクリーニングアッセイにより同定される新規物質は、本明細書中に記載の処置に用いることができる。
【0163】
本発明の診断および予後アッセイは、mNa1.3αサブユニットの発現レベルを評価する方法、およびmNa1.3αサブユニット分子のヌクレオチドまたはアミノ酸配列中の多型および変異を同定する方法を含む。
【0164】
発現のモニタリングおよびプロファイリング 生物学的試料中のmNa1.3αサブユニット蛋白質または核酸の存在、レベルまたは不存在は、被検対象から生物学的試料を得て、その生物学的試料を、mNa1.3αサブユニット蛋白質または核酸の存在が生物試料中にて検出されるように、mNa1.3αサブユニット蛋白質またはmNa1.3αサブユニット蛋白質をコードする核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検出することができる化合物または物質と接触させることによって評価することができる。用語「生物学的試料」は、対象から単離された組織、細胞および体液、並びに被検者内の組織、細胞および体液を含む。好ましい生物学的試料は、脳組織である。mNa1.3αサブユニット遺伝子の発現レベルは、多くの方法:限定するものではないが、mNa1.3αサブユニット遺伝子によってコードされるmRNAを測定すること;mNa1.3αサブユニット遺伝子によってコードされる蛋白質量を測定すること;またはmNa1.3αサブユニットによってコードされる蛋白質の活性を測定することを含む方法により、測定することができる。
【0165】
細胞内のmNa1.3αサブユニット遺伝子に対応するmRNAのレベルは、インシトゥ(in situ)およびインビトロ形式のいずれでも決定することができる。
【0166】
単離されたmRNAは、限定するものではないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアレイを含む、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイにて用いることができる。mRNAレベルの検出のための診断方法の1つに、単離されたmRNAを検出される遺伝子によりコードされるmRNAとハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)を接触させることが含まれる。核酸プローブは、例えば、本明細書に記載の核酸のように、全長のmNa1.3αサブユニット核酸、または例えば、少なくとも7、15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長であり、厳格な条件下でNaチャネルサブユニットRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするのに十分なその一部のような核酸であってもよい。プローブは、アレイ、例えば以下に記載のアレイのアドレス上に配置することができる。診断アッセイに使用するのに適切な他のプローブを、本明細書中に記載する。
【0167】
1つの形式において、mRNA(またはcDNA)を表面上に固定化し、例えば、アガロースゲル上で単離されたmRNAを流し、そのゲルからニトロセルロースなどのメンブレンにmRNAを移すことによって、プローブと接触させる。別の形式において、プローブを表面上に固定化し、mRNA(またはcDNA)を、例えば、以下に記載する2次元遺伝子チップアレイにてプローブと接触させる。当業者であれば、既知のmRNA検出方法を、mNa1.3αサブユニット遺伝子によりコードされるmRNAレベルの検出に使用するために適用可能である。
【0168】
試料中のmNa1.3αサブユニット遺伝子によりコードされるmRNAレベルは、例えば、rtPCR(Mullis (1987) 米国特許第4,683,202号)、ライゲース連鎖反応(Barany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189-193, 1991)、自己持続配列複製(self sustained sequence replication)(Guatelliら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878, 1990)、転写増幅系(Kwohら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177, 1989)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardiら、Bio/Technology 6:1197, 1988)、ローリング・サークル複製(Lizardiら、米国特許第5,854,033号)または他の核酸増幅方法を用いて核酸増幅し、次いで増幅された分子を当分野で既知の技術を用いて検出することにより、評価することができる。本明細書中で用いられるように、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域(それぞれプラス鎖およびマイナス鎖、またはその逆)とアニールすることができ、短い領域をその間に含む核酸分子の一組として定義される。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域の側面に位置する。適当な条件下で、適当な試薬を用いて、そのようなプライマーは、プライマーの横に位置するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能となる。
【0169】
インシトゥ方法について、細胞または組織試料を調製/処理し、支持体上、典型的にはガラススライド上に固定化することができ、次いで、分析されるmNa1.3αサブユニット遺伝子をコードするmRNAとハイブリダイズし得るプローブと接触させることができる。
【0170】
他の実施形態において、本方法は、対照試料を、mNa1.3αサブユニットmRNAまたはゲノムDNAを検出することができる化合物または試薬と接触させ、対照試料中のmNa1.3αサブユニットmRNAまたはゲノムDNAの存在を、被検試料中のmNa1.3αサブユニットmRNAまたはゲノムDNAの存在と比較することをさらに含む。さらに別の実施形態において、米国特許第5,695,937号に記載されるように、遺伝子発現の一連の分析が、mNa1.3αサブユニット転写レベルを検出するのに用いられる。
【0171】
種々の方法は、mNa1.3αサブユニットによりコードされる蛋白質レベルを決定するのに用いることができる。一般に、それらの方法は、蛋白質に選択的に結合する物質、例えば抗体を試料と接触させ、試料中の蛋白質レベルを評価することを含む。特定の実施形態において、抗体は、検出可能な標識を有する。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルであり得る。完全抗体、またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’))を用いることができる。プローブまたは抗体に関する用語「標識化」は、プローブまたは抗体に検出可能な物質をカップリング(即ち、物理的な連結)による直接標識化、あるいは検出可能な物質との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化を含むものである。検出可能な物質の例を、本明細書にて提供する。
【0172】
検出方法は、インビトロ及びインビボにおける生物学的試料中のmNa1.3αサブユニット蛋白質を検出するのに用いることができる。蛋白質検出のためのインビトロ技術は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光、酵素免疫測定(EIA)、放射免疫測定(RIA)およびウェスタンブロット分析を含む。蛋白質検出のためのインビボ技術は、被検体中に標識化抗−mNa1.3αサブユニット抗体を導入することを含む。例えば、抗体は、放射性マーカーで標識化することができ、被検体中でのその存在および局在を、標準的なイメージング技術により検出することができる。他の実施形態において、試料を標識化し、例えばビオチン化し、次いで抗体、例えば、抗−mNa1.3αサブユニット抗体と接触させ、抗体アレイ上に配置する(以下に記載するように)。試料は、例えば蛍光標識とカップリングされたアビジンを用いて検出することができる。
【0173】
他の実施形態において、本方法は、対照試料をmNa1.3αサブユニット蛋白質を検出することができる化合物または試薬と接触させ、対照試料中の該蛋白質の存在を被検試料中の該蛋白質の存在と比較することをさらに含む。
【0174】
本発明はまた、生物学的な試料中のmNa1.3αサブユニット蛋白質の存在を検出するキットを含む。例えば、本キットは、生物学的試料中のmNa1.3αサブユニット蛋白質またはmRNAを検出することができる化合物または試薬;および標準物質を含む。化合物または試薬は、適切な容器内に梱包されていても良い。本キットは、mNa1.3αサブユニット蛋白質または核酸を検出するために、キットを使用するための説明書をさらに含んでいても良い。
【0175】
抗体に基づくキットの場合、キットは:(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドと結合する、第1の抗体(例えば、固体支持体に結合されている)、および場合により(2)該ポリペプチドまたは第1の抗体のいずれかと結合し、検出可能な試薬と結合された、第2の異なる抗体、を含んでいてもよい。
【0176】
オリゴヌクレオチドに基づくキットの場合、キットは:(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド、例えば、検出可能に標識化されたオリゴヌクレオチド、または(2)本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するのに有用なプライマーの組みを含んでいてもよい。また、キットは、緩衝試薬、防腐剤または蛋白質安定化剤を含んでいても良い。また、キットは、検出可能な物質を検出するのに必要な構成成分(例えば、酵素または基質)を含んでいても良い。また、キットは、対照試料またはアッセイすることができ、含まれる被検試料をアッセイし比較することができる対照試料または一連の対照試料を含んでいても良い。キットのそれぞれの成分は、個々の容器内に含ませることができ、種々の容器の全てを、そのキットを用いて実施されるアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、単一の容器内に収めることができる。
【0177】
本明細書中に記載の診断方法は、Naチャネル発現または活性に関連する疾病または障害に罹患している、または進行する危険のある対象を同定することができる。本明細書中で用いられる用語「望ましくない」は、神経障害疼痛などの生体反応に関連する望ましくない現象を含む。
【0178】
1つの実施形態において、Naチャネルの発現または活性に関連する疾病または障害を規定する。被検試料は、対象から得られ、1つまたはそれ以上のNaチャネル蛋白質または核酸(例えばmRNAまたはゲノムDNA)を評価して、そのレベル、例えば、Naチャネル蛋白質または核酸の存在または非存在により、対象がNaチャネル発現または活性に関連する疾病または障害に罹患しているか、または進行する危険性があるかを診断する。本明細書中で用いられる「被検試料」は、興味ある被検体から得られた生物学的試料を意味し、体液(例えば、血清)、細胞試料または組織、例えば、脳組織が含まれる。
【0179】
本明細書中に記載の予後アッセイは、mNa1.3αサブユニット発現または活性と関連する疾病または障害を処置するために、対象に試薬(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣体、蛋白質、ペプチド、核酸、小分子または他の薬物候補物質)を投与することができるかを決定するために用いることができる。例えば、そのような方法は、対象が疼痛障害または外因性脳損傷について試薬を用いて効果的に処置され得るかどうかを決定するために用いることができる。
【0180】
他の態様において、本発明は、多数のデジタル式にコードされたデータ記録を有するコンピューター媒体に関する。それぞれのデータ記録は、試料中のmNa1.3αサブユニットチャネルの発現または活性のレベルを表す値、および試料の記述子を含む。試料の記述子は、試料、試料と共に処置された化合物、試料が採られた対象(例えば、患者)、診断または処置(例えば、好ましい処置)の識別子であり得る。特定の実施形態において、データ記録は、mNa1.3αサブユニットチャネル以外の遺伝子(mNa1.3αサブユニットチャネルの活性に関連する障害と関連する他の遺伝子、またはアレイにおける他の遺伝子)の発現レベルを表す値を含む。データ記録は、例えば、関連するデータベースなどのデータベースの一部である表として、構成され得る(例えば、オラクルまたはサイベース・データベース環境のSQLデータベース)。
【0181】
また、試料を評価する方法にも関する。本方法は、例えば、対象からの試料を提供すること、およびmNa1.3αサブユニットチャネル発現または活性のレベルを表す値を含む、試料の遺伝子発現プロフィールを決定することを含む。本方法は、さらに、値またはプロフィール(即ち、複数の値)を参照値または参照プロフィールと比較することを含む。試料の遺伝子発現プロフィールは、本明細書に記載のいずれかの方法によって(例えば、試料からの核酸を提供し、核酸をアレイに接触させることによって、または試料中のmNa1.3αサブユニットチャネルの活性をアッセイすることによって)得ることができる。本方法は、mNa1.3αサブユニット発現の変化が、対象が障害を有すること、または罹患しやすいことの指標となり、対象の障害を診断するのに用いることができる。本方法は、例えば、対象の疼痛についての処置をモニターするのに用いることができる。例えば、処置を受けている対象からの試料について、遺伝子発現プロフィールを決定することができる。そのプロフィールは、参照プロフィールまたは処置前もしくは障害発生前の対象から得られたプロフィールと比較することができる(例えば、Golubら、Science 286:531, 1999を参照のこと)
【0182】
さらに他の態様において、本発明は、被検化合物を評価する方法に関する(上記の「スクリーニングアッセイ」もまた参照のこと)。本方法は、細胞および被検化合物を提供すること;被検化合物を細胞に接触させること;接触後の細胞の被検体発現プロフィールを得ること;および被検体発現プロフィールを1つまたはそれ以上の参照プロフィールと比較することを含む。プロフィールは、mNa1.3αサブユニット活性または発現のレベルを示す値を含む。特定の実施形態において、被検体活性または発現プロフィールは、標的プロフィール、例えば、通常の細胞の又は所望の状態の細胞のプロフィールと比較される。被検化合物は、被検体発現プロフィールが、未接触細胞から得られた発現プロフィールよりも標的プロフィールに良く類似している場合、好都合に評価される。
【0183】
他の態様において、本発明は、対象を評価する方法に関する。本方法は:a)対象から、例えば介護者、例えば対象から試料を得る介護者から試料を得ること;b)試料について対象の発現プロフィールを決定することを含む。場合によっては、本方法は、以下のいずれか若しくは両方の工程:c)被検者発現プロフィールを1つまたはそれ以上の参照発現プロフィールと比較すること;およびd)被検者参照プロフィールと最も類似する参照ファイルを選択することを、さらに含む。被検者発現プロフィールおよび参照プロフィールは、mNa1.3αサブユニット活性または発現のレベルを表す値を含む。種々の慣用の統計学的測定を、2つの参照プロフィールを比較するために用いることができる。1つの可能な測定基準は、2つのプロフィールの違いである距離ベクトルの長さである。被検者プロフィールおよび参照プロフィールの各々は、それぞれの次元がプロフィールの値である多次元ベクターとして表される。
【0184】
本方法は、結果を介護者に伝えることを含む。その結果は、対象発現プロフィール、対象発現プロフィールを他のプロフィールと比較した結果、最も類似する参照プロフィール、または前述のいずれかの記述子であり得る。結果は、コンピューターネットワークを通じて伝えることができ、例えば、結果は、コンピューター伝送の形式、例えば、搬送波中に埋め込まれたコンピューターデータ信号であって良い。
【0185】
また、以下の工程:対象発現プロフィール(例えば、本明細書に記載のいずれかの対象発現プロフィール)を受信する;参照発現プロフィールのデータベースにアクセスする;そして、i)対象発現プロフィールと最も類似する一致参照プロフィールを選択するか、またはii)少なくとも1つの参照プロフィールに対して対象発現プロフィールの類似性について少なくとも1つの比較スコアーを決定することのいずれか、を効果的にするための実行可能コードを有するコンピューター媒体に関する。対象発現プロフィール、および参照発現プロフィールのそれぞれは、mNa1.3αサブユニット活性または発現レベルを表す値を含む。
【0186】
これらのアッセイおよび使用
他の態様において、本方法は、複数のアドレスを有する基板を含むアレイに関する。複数のアドレスの少なくとも1つは、Naチャネルサブユニット、例えばmNa1.3αサブユニット核酸またはポリペプチドに対応する分子に特異的に結合するコンピュータープローブを含む。アレイは、少なくとも10、100、1,000または10,000もしくはそれ以上のアドレス/cmおよび範囲の間の密度を含み得る。基板は、ガラススライド、ウエハー(wafer)(例えば、シリカまたはプラスチック)、質量分光プレートなどの2次元基板、またはジェルパッドのような3次元基板であっても良い。複数のアドレスに加えてアドレスは、アレイに配置され得る。
【0187】
特定の実施形態において、複数のアドレスの少なくとも1つは、mNa1.3αサブユニット核酸と特異的にハイブリダイズする核酸コンピュータープローブ、例えば、センスもしくはアンチセンス鎖を含む。複数のアドレスの部分集合アドレスは、mNa1.3αサブユニットをコードするNaチャネル遺伝子についての核酸コンピュータープローブであって良い。部分集合の各アドレスは、mNa1.3αサブユニット核酸の異なる領域とハイブリダイズするコンピュータープローブを含むことがある。アレイは、ハイブリダイゼーションによる遺伝子の配列決定に用いることができる(例えば、米国特許第5,695,940号を参照のこと)。
【0188】
アレイは、種々の方法、例えば、フォトリソグラフィー法(例えば、米国特許第5,143,854号;第5,510,270号;および第5,527,681号)、機械的方法(mechanical methods)(例えば、米国特許第5,384,261号に記載のような、直接−フロウ法(directed-flow methods))、ピンに基づく方法(例えば、米国特許第5,288,514号に記載のように)、およびビーズに基づく技術(例えば、PCT US/93/04145に記載のように)により作製することができる。
【0189】
他の実施形態において、複数のアドレスの少なくとも1つは、mNa1.3αサブユニットポリペプチドまたはその断片に特異的に結合するポリペプチドコンピュータープローブを含む。ポリペプチドは、mNa1.3αサブユニットポリペプチドの天然の相互作用パートナーであり得る。ポリペプチドは、抗体、例えば、本明細書中に記載の抗体(「抗−mNa1.3αサブユニット抗体」を参照のこと)、例えば、モノクローナル抗体または一本鎖抗体であることが好ましい。
【0190】
他の態様において、本発明は、mNa1.3αサブユニットの発現を分析する方法に関する。本方法は、上記のアレイを提供すること;アレイを試料と接触させること、およびアレイに対するmNa1.3αサブユニット分子(例えば、核酸またはポリペプチド)の結合を検出することを含む。場合により、本方法は、アレイとの接触の前にもしくは接触中に、試料から核酸を増幅することをさらに含む。
【0191】
他の実施形態において、アレイは、アレイにおいて遺伝子の組織特異性、特にmNa1.3αサブユニットの発現を確かめるために、組織中の遺伝子発現をアッセイするために用いることができる。十分な数の多様な試料を分析する場合、クラスタリング(例えば、階層的クラスタリング、k平均クラスタリング、ベイズクラスタリングなど)を用いて、mNa1.3αサブユニットを同時調節する他の遺伝子を同定することができる。例えば、アレイは、複数の遺伝子の発現の定量化のために用いることができる。従って、組織特性だけでなく、組織中の一群の遺伝子の発現レベルも探知することができる。また、定量データを用いて、組織発現それ自体および組織中の発現レベルに基づいて遺伝子を分類することができる(例えば、クラスター)。
【0192】
例えば、遺伝子発現のアレイ分析は、mNa1.3αサブユニット発現についての細胞−細胞の相互作用の効果を評価するのに用いることができる。第1の組織が不安定であっても良く、第1の組織と相互作用する第2の組織からの核酸を分析することができる。これに関連して、生物学的刺激に応答する他の細胞型における1つの細胞型の効果は、例えば、遺伝子発現レベルにおける細胞−細胞相互作用の効果をモニターして、決定することができる。
【0193】
他の実施形態において、細胞を治療物質と接触させる。細胞の発現プロフィールは、アレイを用いて決定され、発現プロフィールは、試薬と接触していない同様の細胞のプロフィールと比較される。例えば、アッセイは治療試薬の望ましくない効果の分子の基礎を決定または分析するために用いることができる。試薬が治療目的で投与され、ある細胞型を処置するが、他の細胞型では望ましくない効果を有する場合、本発明は、望ましくない効果の分子基礎を決定するためのアレイを提供し、それにより、中和試薬を同時投与するか、そうでなければ望ましくない効果を処置する機会が提供される。同様に、単一の細胞型内でさえ、望ましくない生物学的効果を、分子レベルで決定することができる。従って、標的遺伝子以外の発現における試薬の効果を確かめることができ、また中和することができる。
【0194】
他の実施形態において、アレイは、アレイにて1つまたはそれ以上の遺伝子の発現を時間に関してモニターするのに用いることができる。例えば、異なる時間で得られた試料を、アレイを用いて厳密に調べることができる。そのような分析は、Naチャネル活性に関連した疾病または障害の進行を同定および/または特徴付けることができる。本方法はまた、Naチャネル関連疾病または障害の処置および/または経過を評価することができる。
【0195】
アレイはまた、正常および異常な細胞の1つまたはそれ以上の遺伝子の異なる発現様式を確かめるのに有用である。これにより、診断または治療介入についての分子標的として役立つ一群の遺伝子(例えば、mNa1.3αサブユニットをコードする遺伝子を含む)が提供される。
【0196】
他の態様において、本発明は、複数のアドレスを有するアレイに関する。複数のアドレスのそれぞれは、独自のポリペプチドを含む。複数のアドレスの少なくとも1つは、mNa1.3αサブユニットポリペプチドまたはその断片にて配置されている。ポリペプチドアレイを製造する方法は、当分野で、例えば、De Wildtら、Nature Biotech. 18: 989-994, 2000;Luekingら、Anal. Biochem. 270:103-111, 1999; Ge, H., Nucleic Acids Res. 28:e3, I-VII, 2000;MacBeath, G., and Schreiber, S.L., Science 289:1760-1763, 2000;および WO 99/51773A1において記載されている。特定の実施形態において、複数のアドレスのそれぞれは、mNa1.3αサブユニットポリペプチドまたはその断片と少なくとも60%〜99%同一であるポリペプチドにて配置されている。例えば、mNa1.3αサブユニットポリペプチドの複数の多型(例えば、対立遺伝子多型、部位特異的変異、ランダム変異、または組み合わせ変異)は、複数のアドレスそれぞれにて配置され得る。
【0197】
ポリペプチドアレイは、Na結合化合物、例えば、mNa1.3αサブユニットポリペプチドに対する特異性を有する、被検体からの試料中の抗体、またはNaチャネル結合蛋白質またはリガンドの存在を検出するために、用いることができる。
【0198】
他の態様において、本発明は、複数のプローブを分析する方法に関する。本方法は、例えば、遺伝子発現を分析するのに有用である。本方法は:複数のアドレスのそれぞれが、独自のキャプチャープローブ(例えば、そのキャプチャープローブは、mNa1.3αサブユニットを含むNaチャネルを発現する細胞もしくは対象からのものであるか、あるいは例えば、細胞をNaチャネルmNa1.3αサブユニット核酸もしくは蛋白質と接触させることによって、または細胞もしくは対象にNaチャネルmNa1.3αサブユニット核酸もしくは蛋白質を投与することによって、Naチャネル媒介応答が誘発されている細胞もしくは対象からのものである)を有するため、複数の他のアドレスのそれぞれから位置において識別することができる、複数のアドレスを有する2次元アレイを提供すること;複数のアドレスのそれぞれが、独自のキャプチャープローブ(例えば、そのキャプチャープローブがNaチャネルmNa1.3αサブユニットを発現しない(またはNaチャネルmNa1.3αサブユニット−陽性の複数のキャプチャープローブの場合と同程度に発現していない)細胞もしくは対象からのものであるか、あるいはNaチャネル媒介応答が誘発されていない(または、最初の試料よりも狭い範囲で誘発されている))を有するため、複数の他のアドレスのそれぞれから位置において識別することができる、複数のアドレスを有する2次元アレイを提供すること;アレイを、1つまたはそれ以上の紹介(inquiry)プローブ(NaチャネルmNa1.3αサブユニット核酸、ポリペプチドまたは抗体以外のものであることが好ましい)と接触させ、それにより、複数のキャプチャープローブを評価することを含む。例えば、核酸の場合における結合、複数のアドレスでのキャプチャープローブを用いたハイブリダイゼーションは、核酸、ポリペプチドまたは抗体に結合された標識から発せられるシグナルにより検出される。
【0199】
他の態様において、本発明は、mNa1.3αサブユニットを分析する方法、例えば、構造、機能または他の核酸もしくはアミノ酸配列との関係を分析する方法に関する。本方法は、mNa1.3αサブユニット核酸またはアミノ酸配列を提供すること;配列の集合、例えば、核酸もしくはアミノ酸データベースからの1つまたはそれ以上の好ましい複数の配列と本配列(群)とを比較し;それによりmNa1.3αサブユニットを分析することを含む。
【0200】
検出アッセイ
本明細書中で特定されるcDNA配列(および対応する相補遺伝子配列)の一部または断片は、ポリヌクレオチド試薬など多くの方法で用いることができる。
【0201】
例えば、ポリヌクレオチド試薬は、診断アッセイ、予後アッセイに用いることができ、臨床試験のモニタリングは、予後(予測)の目的で使用され、それにより個々の予防策を処理する。従って、本発明の1つの態様は、生物試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)に関して、mNa1.3αサブユニット蛋白質および/または核酸の発現、並びにmNa1.3αサブユニット活性を決定し、それにより、個人が異常な若しくは望ましくないmNa1.3αサブユニット発現または活性に関連する疾病もしくは障害に罹患しているか、または進行する危険性を有するかどうかを決定する診断アッセイに関する。また、本発明は、個人がmNa1.3αサブユニット蛋白質、核酸発現または活性に関連する障害に進行する危険性を有するかどうかを決定する予後(または予測)アッセイも提供する。例えば、mNa1.3αサブユニットをコードする遺伝子上の突然変異を生物試料においてアッセイすることができ、予後もしくは予測の目的で用いることができる。
【0202】
本発明の他の態様は、インビボでのmNa1.3αサブユニットの発現もしくは活性についての試薬(例えば、薬物、化合物)の影響のモニタリングに関する。
【0203】
mNa1.3αサブユニット蛋白質の発現または活性における試薬(例えば、薬物)の影響(例えば、膜興奮性の変調)のモニタリングは、基本的な試薬のスクリーニングだけでなく、臨床試験に応用することができる。例えば、本明細書中に記載のスクリーニングアッセイにより決定される、mNa1.3αサブユニット遺伝子発現、蛋白質レベルを増加させる、またはmNa1.3αサブユニット活性を下方調節する試薬の有効性は、低減もしくは増大されたmNa1.3αサブユニット遺伝子発現、蛋白質レベル、または下方調節されたmNa1.3αサブユニットを示す対象の臨床試験をモニターすることができる。例えば、Naチャネルに関連する障害において示される他の遺伝子は、特定の細胞の表現型のマーカーに用いることができる。
【0204】
治療方法
本発明の他の態様は、治療目的のためのmNa1.3αサブユニット発現または活性をモジュレートする方法に関する。従って、例示的な実施形態において、本発明の調節方法は、細胞を、mNa1.3αサブユニットまたは細胞と関連するmNa1.3αサブユニット蛋白質活性の1つまたはそれ以上の活性をモジュレートする試薬と接触させることを含む。mNa1.3αサブユニット蛋白質活性をモジュレートする試薬は、本明細書に記載のような試薬、例えば、核酸もしくは蛋白質、mNa1.3αサブユニット蛋白質の天然の標的分子(例えば、mNa1.3αサブユニット基質)、mNa1.3αサブユニット抗体、mNa1.3αサブユニットアゴニストもしくはアンタゴニスト、mNa1.3αサブユニットアゴニストもしくはアンタゴニストのペプチド模倣体、または他の小分子であってもよい。1つの実施形態において、試薬は、1つまたはそれ以上のmNa1.3αサブユニット活性を刺激する。そのような刺激薬の例としては、mNa1.3αサブユニット蛋白質、または細胞中に導入されたmNa1.3αサブユニットをコードする核酸分子が含まれる。他の実施形態において、試薬は、1つまたはそれ以上のmNa1.3αサブユニット活性を阻害する。そのような阻害薬の例としては、アンチセンスmNa1.3αサブユニット核酸分子、抗−mNa1.3αサブユニット抗体およびmNa1.3αサブユニット阻害物質が含まれる。これらの調節方法は、インビトロにおいて(例えば、細胞を試薬と一緒に培養することによって)、あるいは、インビボにおいて(例えば、試薬を対象に投与することによって)実施することができる。このように、本発明は、mNa1.3αサブユニット蛋白質または核酸分子の異常な若しくは望ましくない発現もしくは活性により特徴付けられる疾病または障害に罹患している個人を処置する方法を提供する。1つの実施形態において、本方法は、mNa1.3αサブユニット発現または活性をモジュレート(例えば、上方調節もしくは下方調節)する薬物(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイにより同定される試薬)、または薬物の組み合わせを投与することを含む。他の実施形態において、本発明は、低下した若しくは異常なmNa1.3αサブユニット発現または活性を補うために、mNa1.3αサブユニット蛋白質または核酸分子を治療として投与するこを含む。
【0205】
mNa1.3αサブユニット活性の刺激は、mNa1.3αサブユニットが異常に下方調節されてい場合、および/または増大されるmNa1.3αサブユニット活性が有利な効果を与えそうな場合に、望ましい。活性のアンタゴニストもまた、望ましいであろう。例えば、モジュレータは、疼痛、例えば、神経障害疼痛、頭部外傷および神経変性障害の処置に望ましいであろう。神経変性障害は、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、または痴呆の他の形態、筋萎縮性側索硬化症、ダウン症候群、ハンチントン舞踏病および脊柱小脳変性症(spinal cerebellar degeneration)を含む。mNa1.3チャネルのモジュレータは、例えば、高血圧性脳内出血およびクモ膜下出血などの脳内出血、一過脳虚血発作、脳動脈硬化症およびこれらの後遺症を含む脳血管損傷または外傷、並びに心停止後の蘇生時での脳のダメージ、脳外科前もしくは後の脳機能不全、低酸素、低血糖による神経系の障害、脳または脊髄のダメージ、薬物もしくはガス中毒、真性糖尿病、抗癌剤の投与、アルコールなどに関連する種々の障害の処置に有用であり得る。
【0206】
医薬組成物
本明細書中にて用いるように、本発明の化合物、例えば、本明細書中に記載の方法により同定されるNa+チャネル調節物質は、医薬上許容される誘導体またはそのプロドラッグを含んで定義される。「医薬上許容される誘導体またはプロドラッグ」は、医薬上許容される塩、エステル、エステルの塩、または受容者に投与する際に本発明の化合物を(直接または間接的に)提供可能な本発明の化合物の他の誘導体を意味する。特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、化合物を哺乳動物に投与した場合に(例えば、血液により早く吸収させるために化合物の経口投与により)、本発明の化合物の生体有用性を増大させるものであるか、または元の化合物種と比較して生物学的区分(例えば、脳またはリンパ系)への元の化合物の送達を向上させるものである。プロドラッグには、水溶度または腸膜を通じた能動輸送を強化する基が本明細書中に記載の式の構造に付加されている誘導体が含まれる。
【0207】
本発明の化合物は、選択的生物学的性質を強化するために適当な機能性を付加することにより修飾することができる。そのような修飾は当分野で既知であり、所定の生物学的区分(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的透過性を増加させ、経口利用を増加させ、注射により投与が可能となる溶解性を増加させ、代謝を変更し、そして排泄速度を変更することが含まれる。
【0208】
本発明の化合物の医薬上許容される塩は、医薬上許容される無機および有機の酸および塩基から誘導される塩を含む。適切な酸性塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコネート、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリコール酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、 臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、燐酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、琥珀酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。他の酸は、例えばシュウ酸は、それ自体は医薬上許容されるものではないが、本発明の化合物およびそれらの医薬上許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に用いることができる。適当な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN−(アルキル)塩が含まれる。本発明はまた、本明細書中に記載の化合物のすべての塩基性窒素含有基の4級化も想定する。水または油溶解性あるいは分散産物(dispersible products)は、そのような4級化により得ることができる。本明細書中のいずれかの式で示される化合物の塩型は、カルボキシ基(例えば、L−アルギニン、−リジン、−ヒスチジン塩)のアミノ酸塩であって良い。
【0209】
本明細書中に記載の式の化合物は、体重1kgあたり約0.5〜約100mgの範囲の投与量を、別法として1mg〜1000mg/kgの投与量にて4から120時間毎に、あるいは特定の薬剤の必要性に応じて、例えば、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射、腹膜内注射、筋肉内注射もしくは皮下注射、または経口、経口内、経鼻、経粘膜、局所的に、眼科製剤にて、あるいは吸入することにより投与することができる。本明細書中の方法は、所望のまたは前記の効果を達成するための化合物または化合物の組成物の有効量の投与するものである。典型的には、本発明の医薬組成物は、一日に約1〜約6回投与されるか、または別法として連続注入により投与される。そのような投与は、慢性または急性治療として使用できる。単位投与型を形成するために担体物質と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される受容者および投与の特定の様式に応じて変更されるであろう。典型的な調剤は、約5%〜約95%の活性化合物(重量/重量)を含むであろう。別法として、このような調剤は約20%〜約80%の活性化合物を含む。
【0210】
上記の投与量より少なくまたは多く必要とされることがある。いずれかの患者のための特定の投与量および処置計画は、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、通常の健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄の頻度、薬物の組み合わせ、疾患、病態または症状の重篤度および経過、患者の疾患、病態または症状の素因および担当医の判断を含む種々の要因に依存するであろう。
【0211】
患者の病状が改善すると、本発明の化合物、組成物または組み合わせの継続的用量は、必要があれば投与しても良い。その後、症状が所望のレベルにまで緩和された場合、症状に対応させて、改善された状態が維持されるレベルにまで投与量または投与頻度、あるいはその両方を減じてもよい。しかしながら、患者は、疾病の症状が再発するまで、長期の断続的処置を要求することができる。
【0212】
本明細書中に記載の組成物は、イオンチャネルにより媒介される障害またはその症状を含む、疾患または疾患症状の調整を達成する有効量で、本明細書中に記載した式で示される化合物、ならびに要すれば付加的な治療剤を含む。
【0213】
用語「医薬上許容される担体または補助剤」は、本発明の化合物と一緒に患者に投与することができる担体または補助剤であって、その薬理活性を破壊することなく、化合物の治療上の量を運搬するのに十分な量にて投与する場合に毒性のない担体または補助剤を意味する。
【0214】
本発明の医薬組成物中にて使用可能な医薬上許容される担体、補助剤、および媒質は、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナートなどの自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、ツィーン(Tween)または他の類似する重合送達マトリクスなどの医薬剤型にて用いられる界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清蛋白質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、カリウム吸収剤、飽和植物性脂肪酸の一部グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニールピロリドン、セルロース性物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂である。α−、β−およびγ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、または化学的に修飾された誘導体、例えば2−および3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリン、または他の溶解された誘導体は、本明細書中に記載の式にて示される化合物の送達を促進するために有利に使用してもよい。
【0215】
本発明の医薬組成物は、局所的、経直腸的、経鼻的、経口内、経膣的または移植受容者を介して吸入噴霧器により、好ましくは経口投与または注射による投与により、経口的に、非経口的に投与してもよい。本発明の医薬組成物は、毒性のない医薬上許容される担体、補助剤または賦形剤を含んでいても良い。幾つかの場合において、製剤のpHは、製剤化合物の安定性または送達型を増強するために、医薬上許容される酸、塩基またはバッファーで調節され得る。本明細書にて用いる用語「非経口投与」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内, 動脈内、滑液包内、胸骨下、鞘内、病変内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0216】
医薬組成物は、注射可能な滅菌製剤の形状、例えば注射可能な水性または油性の滅菌懸濁液であって良い。懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(例えば、ツィーン80)および懸濁化剤を用いて、当分野にて既知の技術に従って製剤化することができる。注射可能な滅菌製剤は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液などの毒性のない非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容される媒質および溶媒は、マンニトール、水、リンゲル液および等張性の塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌、不揮発性油は、溶媒または懸濁媒質として通常使用される。この目的のために、すべての無菌性不揮発性油は、合成モノ−またはジグリセリドを含んで使用され得る。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射可能物質の調製に有用であり、オリーブ油またはヒマシ油などの天然の医薬上許容される油、特にそれらのポリオキシエチル化された種類において同様である。これらの油溶液または懸濁液もまた、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースもしくはエマルジョンおよび/または懸濁液などの医薬上許容される単位投与型の製剤化に一般に用いられる類似の分散剤を含んでいてもよい。他の一般に使用されるツィーンもしくはスパン(Span)などの界面活性剤および/または他の類似する乳化剤、または医薬上許容される固体、液体、または他の単位投与型の製造において一般に用いられる生体有用性促進剤もまた、製剤化の目的に使用してもよい。
【0217】
本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、カプセル剤、錠剤、エマルジョンならびに水性懸濁液、分散液および溶液を含むすべての経口的に許容される単位投与型にて経口的に投与することができる。経口用錠剤の場合、一般に用いられる担体には、ラクトースおよびトウモロコシ澱粉が含まれる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤もまた通例添加される。カプセル型での経口投与の場合、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥トウモロコシ澱粉が含まれる。水性懸濁液および/またはエマルジョンが経口的に投与される場合、有効成分は乳化剤および/または懸濁化剤と組み合わせて、油性相に懸濁または溶解されてもよい。要すれば、特定の甘味剤および/または芳香剤および/または着色剤が添加されても良い。
【0218】
本発明の医薬組成物はまた、直腸投与用の坐剤形にて投与されてもよい。これらの組成物は、本発明の化合物を、室温で固体であるが直腸温度では液体となり、それにより、直腸で溶けて有効成分を放出することとなる、適切な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。そのような物質には、限定するものではないが、カカオ脂、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0219】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の処置が、局所適用により容易に接近可能な領域または臓器を含む場合に、有用である。皮膚への局所的な適用の場合、医薬組成物は、担体中に懸濁または溶解された有効成分を含んだ適切な軟膏と共に製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与用担体は、限定するものではないが、鉱物油、液化石油ガス(liquid petroleum)、白色ワセリン(white petroleum)、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水を含む。別法として、医薬組成物は、適切な乳化剤と一緒に担体中に懸濁または溶解された活性化合物を含んだ外用水薬またはクリームと共に製剤化することもできる。適切な担体には、限定するものではないが、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれる。本発明の医薬組成物は、直腸坐剤製剤または適切な浣腸製剤により下部腸管に局所的に適用することもできる。局所−経皮パッチもまた、本発明に含まれる。
【0220】
本発明の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入剤により投与投与しても良い。このような組成物は、医薬製剤処方の分野にて周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、生体有用性を強化する吸収増強剤、フルオロカーボン、および/または当分野にて既知の他の溶解剤もしくは分散剤を使用した、塩類溶液中の溶液として調製されても良い。
【0221】
本明細書中の式で示される化合物および添加剤(例えば、治療剤)を含む化合物は、移植可能な装置を用いて投与することができる。移植可能な装置および関連技術は当分野で既知であり、本明細書中に記載の化合物または組成物の継続的、徐放性送達が要求される場合に送達系として有用である。加えて、移植可能な装置の送達系は、化合物または組成物送達の特定のポイント(例えば、局所的部位、臓器)を標的とするのに有用である。Negrinら、Biomaterials, 22(6):563 (2001)。別の送達方法を含む徐放技術を本発明にて使用することも可能である。例えば、ポリマー技術、持効性技術およびカプセル化技術に基づく徐放性製剤(例えば、重合体、リポソーム)を本明細書中に記載の化合物および組成物の送達に使用することも可能である。
【0222】
また、本明細書中の活性化学治療剤の組み合わせを送達するパッチは、本明細書の範囲内に含まれる。パッチには、物質層(例えば、重合、布、ガーゼ、包帯)および本明細書中に記載のように本明細書中の式で示される化合物が含まれる。物質層側には、化合物または組成物の通過を阻止するための保護層を付着することができる。パッチはさらに患部にパッチを保持するために接着剤を含むことができる。接着剤は、天然または合成起源いずれの接着剤も含む組成物であり、対象の皮膚に接触する際に一時的に皮膚に接着するものである。それは、耐水であってもよい。接着剤は、対象の皮膚と接触してそれを長時間維持するためにパッチに付着することができる。接着剤は、粘着剤から作られ、または付随的接着により装置を適所に保持するような接着強度を有して作られるが、積極的行為(例えば、引き裂き、剥皮または他の意図的な除去)に対して、接着剤は、その装置または接着剤それ自身にかけられた外圧によりはずれ、接着接触が解消される。その接着は、加圧感受的であってよく、すなわち接着剤または装置への圧力(例えば、押付け、摩擦)により皮膚に対して接着剤(および皮膚に接着されるべき装置)を配置することができる。
【0223】
本発明の組成物が、本明細書中に記載の式で示される化合物と1つまたはそれ以上の治療剤または予防剤との組み合わせを含む場合、化合物および添加剤のいずれも、単独の処置計画において通常投与される投与量の約1〜100%、より好ましくは約5〜95%の間の投与レベルで含まれるべきである。添加剤は、多回投与投薬計画の一部として本発明の化合物と別に投与してもよい。別法として、これらの薬剤は、単位投与型の一部であっても、単一組成物中で本発明の化合物と一緒に混合させていてもよい。
【0224】
前記の化合物および方法は、Naチャネル機能の治療上のモジュレーションに使用することもできる。
【0225】
本発明の特定の実施形態は、以下の非制限的な実施例としてさらに記載する:
【0226】
実施例1:新規Naチャネルαサブユニットの同定
1. 最初に、RT−PCR用のスーパースクリプト・ファーストストランド・シンセシスシステム(SuperScript First-Strand Synthesis System)(インビトロジェン)を用いて、cDNAをマウス脳polyA RNA(ストラタジーンおよびクロンテック)から作製した。プライマーは、マウスNa1.3αサブユニットの増幅のために設計した。マウスNa1.3αサブユニット(ジーンバンク(登録商標)受入番号NM_018732)の一部の配列に相当するcDNAは、公開されたラットcDNA配列の中心にて(NM_013119;開始コドンからヌクレオチド2461で)アライメントする。マウスNa1.3αサブユニットの全長の配列を同定するため、ラット配列(NM_013199)をBLAST(登録商標)(Blake JAら、MGD: The Mouse Genome Database. Nucleic Acids Res 31: 193-195, 2003)を用いてマウスゲノムと比較した。
【0227】
2. 5’プライマーは、推定される開始コドンの上流7ヌクレオチドとアニールするよう設計され、3’プライマーは、推定される終止コドンの下流123ヌクレオチドとアニールするよう設計された。それぞれのプライマーの端にNotI制限酵素部位を含ませた。プライマーは、非翻訳領域とアニールするよう設計された。非翻訳領域とアニールするプライマーは、非−Na1.3αサブユニット遺伝子、即ちマウスNa1.1およびNa1.2αサブユニット遺伝子を増幅することはないであろう。mNa1.3αサブユニットを増幅するために用いられた3’プライマーは、特異的にmNa1.3αを増やすために、ラットNa1.1、Na1.2とNa1.3αサブユニット3’非翻訳領域との間の変化に富んだ領域に対応する非翻訳領域でアニールするよう設計された。ラットNa1αサブユニット遺伝子のその領域において、ラットNa1.1は、ラットNa1.2と32ヌクレオチド中17ヌクレオチドまで異なっており、ラットNa1.2は、ラット1.3と32ヌクレオチド中13ヌクレオチドまで異なっている。また、この非翻訳領域は、ラットとマウス配列との間で高い割合の相同性を有している;32ヌクレオチド中29のみが保存されている。
【0228】
3. マウスNa1.3αサブユニットをコードするマウスNa1.3αサブユニットcDNAのクローニングは、ヘラクレース・ホットスタートDNAポリメラーゼ(ストラタジーン;30サイクル)を用いて、マウス脳cDNAから増幅した。そのPCR産物を、アガロースゲル電気泳動により分離し、キアクイック・ゲルエクストラクション・キット(キアゲン)を用いてゲルから抽出した。抽出された産物を、TOPO XL PCRクローニングキット(インビトロジェン)を用いて、pCR−XL−TOPOベクター中にサブクローニングした。得られたベクターを、XL10ゴールド・ウルトラコンピテントセル(ストラタジーン)に形質転換した。形質転換された細菌を培養した。DNAを、アウルム・ミニプレップ(バイオラッド)を用いて形質転換された細菌から単離した。
【0229】
マウスNa1.3αサブユニット挿入物を有するクローンを、非切断DNAおよびNotI(ニュー・イングランド・バイオラボ)消化されたDNAをアガロースゲル分析することで同定した。2つのクローンの5’および3’端の配列分析(AおよびB;シークライト(SeqWright))を、マウスNa1.3αサブユニット挿入物の存在を確かめるために行った。
【0230】
クローンAおよびBを含む細菌を培養し、マキシプレップ(キアゲン)により大量のDNAを調製した。
【0231】
4. クローンAおよびBの全長配列決定(シークライト)を行った。PCRエラーがクローンAおよびB中に存在するかどうかを決定するために、2つのクローンのヌクレオチド配列を互いに、マウスNa1.3αサブユニットのゲノム配列と、ラットNa1.3αサブユニットcDNA(NM_0133199)と、さらに2つのヒトNa1.3αサブユニットcDNA(NM_006922およびAF225986)とを比較した。加えて、クローンAおよびBのヌクレオチド配列によりコードされる予想されるアミノ酸配列を作製し、ラットおよびヒトNa1.3αサブユニット蛋白質配列と比較した。
【0232】
クローンAは、ネズミゲノム配列およびヒトNa1.3αサブユニット配列と比較して1つのヌクレオチド変化を有していた。また、クローンAは、クローンBと比較して83個のヌクレオチド欠失を有していた。
【0233】
クローンAおよびクローンBの両方共が、PCRエラーにより導入された可能性が高い6個の一続きのA中に余分なAを含んでいた。コード配列中のこのヌクレオチドの存在により、読み取り枠がずれ、1504アミノ酸の蛋白質をコードする(既知のNAvαサブユニットポリペプチドでは約1940アミノ酸であるのに対して)。また、余分なAは、ネズミのゲノム配列中には存在しない。ラットおよびヒト配列もまた、この部位に余分なヌクレオチドを欠いている。
【0234】
クローンBは、クローンAまたはネズミ、ラットおよびヒトゲノム配列中の対応するゲノム領域に存在しない2つのヌクレオチド変化を有していたことから、エラーが存在すると決定された。クローンBもまた、クローンAに、またはネズミ、ラットおよびヒトゲノム配列中の対応する部位に存在しない余分なヌクレオチドを有しており、エラーが存在すると決定された。
【0235】
5. マウスNAv1.3αサブユニットクローン中に見出された変異の修復は、以下の工程で行った。修復の工程1について、クローンAにおける変異および83ヌクレオチド欠失は、以下のようにクローンBの対応する断片を用いて変異断片を置換することによって校正した。クローンAおよびBを、XcmI(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いて消化した。クローンAの大きな断片(変異および欠失を含まない)およびクローンBの小さな断片(クローンAの断片を置換するため)を分離して、キアクイック・ゲルエクストラクション・キットを用いてアガロースゲルから抽出した。消化された断片は、T4 DNA ライゲース(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いてライゲーションした。ライゲーション産物を、MAXエフィシエンシィStb12コンピテントセル(インビトロジェン)中に形質転換した。細菌を培養し、DNAを、アウルム・ミニプレップを用いて単離した。適当なXcmI断片を含むクローンを、非切断DNA、およびSmaIとNarI(ニュー・イングランド・バイオラボ)とを用いて消化したDNAのアガロースゲル分析により同定した。
【0236】
変異と83ヌクレオチド欠失が修復されたDNAを同定し、2個の余分なヌクレオチド(1個はクローンA中に存在し、もう1個はクローンBのXcmI断片からの持ち込み)が存在することを確認するために、幾つかのクローンの配列分析(シークライト)を実施した。
【0237】
6. 単離されたマウスNa1.3αサブユニットcDNAの修復の工程2について、変異および83ヌクレオチド欠失が修復されたクローンを用いた。このクローン中の1個の余分なヌクレオチドは、クイックチェンジXLサイトダイレクト・ミュータージェネシス・キット(ストラタジーン)を用いて校正した。部位特異的変異導入用のプライマーを設計した。変異導入反応を行い、反応産物をXL10ゴールド・ウルトラコンピテントセル(ストラタジーン)中に形質転換した。形質転換された細菌を培養し、DNAをアウルム・ミニプレップにより単離した。クローンを、DNAのSmaI消化により分析した。余分なヌクレオチドが修復されたDNAを同定するために、幾つかのクローンの配列分析を行った。1個の校正されたクローンから細菌を再び増殖させ、余分なヌクレオチドを含む挿入物をpcDNA6Bに移し、修復した。
【0238】
7. 1個の余分なヌクレオチドを含むマウスNa1.3αサブユニットcDNAをpCR−XL−TOPOからpcDNA6Bに移すために、クローンをEcoRVおよびSpeI(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いて消化した。pcDNA6Bを、EcoRVおよびXbaI(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いて消化した。消化された断片を分離し、キアクイック・ゲルエクストラクション・キットを用いてアガロースゲルから抽出し、T4 DNAライゲースを用いてライゲーションした。ライゲーション産物をXL10ゴールド・ウルトラコンピテントセル中に形質転換した。細菌を培養し、DNAを、アウルム・ミニプレップを用いて単離した。マウスNa1.3αサブユニットを含むクローンは、非切断DNAおよびSmaI消化DNAのアガロースゲル分析により同定した。1つのクローンを修復の最終工程のために再び増殖させた。
【0239】
8. 修復手順の工程3について、pcDNA6B中のマウスNa1.3αサブユニットにおける余分なヌクレオチドを含む断片は、以下のように新たに増幅された断片を用いて修復した。プライマーは、マウスNa1.3αサブユニットの内部の断片(開始コドンからヌクレオチド3950〜4675)を増幅するために設計した。断片は、PfuTurboホットスタートDNAポリメラーゼ(ストラタジーン)を用いてマウス脳cDNA(工程1において作製された)から増幅し、アガロースゲル電気泳動により分離し、そしてキアクイック・ゲルエクストラクション・キットを用いてアガロースゲルから抽出した。その断片を、pCR−XL−TOPOベクターにサブクローニングし、ワンショットTOP10コンピテントセル(インビトロジェン)中に形質転換した。形質転換された細菌を培養し、DNAを、アウルム・ミニプレップにより単離した。マウスNa1.3αサブユニット断片を有するクローンは、EcoRIを用いて消化されたDNA、およびScaIとBglI(ニュー・イングランド・バイオラボ)とを用いて2重消化されたDNAのアガロースゲル分析により同定された。変異を欠くDNAクローンを同定するために、幾つかのクローンの配列分析を行った。1つのクローンを再び増殖させた。
【0240】
pcDNA6B中のマウスNa1.3αサブユニットにおける余分なヌクレオチドを含む断片の、pCR−XL−TOPOからの補正された断片を用いた修復は、以下のように行った。2つのクローンを、HpaIおよびBstEII(ニュー・イングランド・バイオラボ)を用いて消化した。消化された断片を分離し、キアクイック・ゲルエクストラクション・キットを用いてアガロースゲルから抽出した。その断片を、T4 DNAライゲースを用いてライゲーションし、ライゲーション産物をMAXエフィシエンシィStb12コンピテントセル中に形質転換した。細菌を培養し、DNAを、アウルム・ミニプレップを用いて単離した。クローンは、HpaI、BstEIIおよびSmaIを用いて制限酵素消化により分析した。余分なヌクレオチドが修復されたクローンを同定するために、幾つかのクローンの「交換された」断片の配列決定(シークライト)を行った。単一クローンの全長配列決定は、新たな変異が、部位特異的な変異導入手順(修復の工程2)の間に生じていないことを確認するために行った。
【0241】
実施例2:コード配列の決定
表1.はマウスNa1.3αサブユニットのコード配列を示す。cDNAのコード配列は、表1で示される配列のヌクレオチド8〜ヌクレオチド5947に相当する。配列番号:1は、表1で示される配列のコード配列の一部に対応する。配列番号:1から予想されるアミノ酸配列は、配列番号:2および表2において示される。太文字で下線されたヌクレオチド8〜10のATG配列、および下線されたヌクレオチド5945〜5947のTGA配列は、それぞれコード配列の開始コドンおよび終止コドンを表す。
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】

【0242】
【表2−1】

【表2−2】

【0243】
実施例3:新規Naチャネルαサブユニットの発現
実施例1で単離されたマウスNa1.3αサブユニットの機能的特徴は、2電極電圧クランプ技術を用いて、アフリカツメガエル卵母細胞発現系において分析した。Na1.3αサブユニットcDNAを増幅し、pcDNA6ベクター(インビトロジェン)中に標準的なクローニング法によりサブクローニングした。マウスNa1.3αサブユニット(2ng/μl)cDNAの約46ナノリッターを脱濾胞性のアフリカツメガエル卵母細胞に導入し、5日後に電流を測定した。6個の細胞からのナトリウム電流を、1.8mM CaCl、5mM HEPES−Na、2mM KCl、1mM MgClおよび96mM NaAc、pH7.5の溶液中で0.5〜1.0MΩ抵抗(3M KCl)の電極を用いて記録した。この卵母細胞を〜100mVで保持し、80mV〜50mVの範囲の電圧に対して脱分極させた。データは、P/4リーク減算プロトコルを用いて得た。図3は、種々の脱分極電圧での代表的なナトリウム電流を示す。6個の細胞の、正規化し、平均化したピーク電流−電圧の関係を図4に示す。チャネルは、〜40mVで開放し始め、最大電流で0mVに達する。これらのデータは、Na1.3αcDNAによりコードされるチャネルが機能的であること、およびこの種のチャネルに期待される生物物理な特徴を示すことを表す。
【0244】
本明細書中で引用される全ての文献、限定するものではないが、要約、論説、目録、刊行物、本文、論文、インターネットウェブサイト、データベース、ソフトウェアーパッケージ、特許および特許出願を含めて、印刷物、電子形式、コンピューター解読できる保存媒体もしくは他の形式を問わず、その全てを出典明示により明示的に一部とされる。本発明の多くの実施形態を記載した。それでも、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行い得ることは理解されよう。従って、他の実施形態も添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】図1は、新規マウスNa1.3αサブユニットアミノ酸配列と、2つのヒトNa1.3αサブユニット配列およびラットNa1.3αサブユニット配列とのアミノ酸配列のアライメントを示す。
【図2】図2は、新規マウスNa1.3αサブユニットアミノ酸配列とジーンバンク(登録商標)Acc.No.NM_018732のもとで見出される一部分のヌクレオチド配列によりコードされているアミノ酸配列とのアライメントを示す。クローンmNa1.3野生型から予想されるアミノ酸配列を、公開された一部分のマウスNa1.3蛋白質(受入番号NM_018732)とアライメントする。同一の残基を強調し、終止コドンは灰色で示す。一部のマウスmNa1.3蛋白質は、アミノ酸853〜1115のクローンmNa1.3蛋白質とアライメントする。264−289の領域は、mNa1.3の選択的スプライス領域を表すであろう。
【図3】図3は、新規マウスNa1.3αサブユニットでトランスフェクトしたアフリカツメガエルの卵母細胞におけるナトリウム電流、および電圧範囲での脱分極を表すグラフである。
【図4】図4は、電圧範囲で脱分極する、新規マウスNa1.3αサブユニットをトランスフェクトされたアフリカツメガエルの卵母細胞における平均電流/電圧の関係を表すグラフである。
【図5】図5は、配列番号:1〜11を示す。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】

【図1−7】

【図2−1】

【図2−2】

【図2−3】

【図2−4】

【図2−5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2記載のアミノ酸配列を含む、単離されたナトリウムチャネルIII型αサブユニット(mNa1.3αサブユニット)ポリペプチド。
【請求項2】
本質的に配列番号:2記載のアミノ酸配列からなるところの、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
少なくとも10個の隣接した配列番号:2記載のアミノ酸を含む単離されたmNa1.3αサブユニットポリペプチドであって、以下のアミノ酸:イソロイシン289、プロリン518、セリン728、セリン1355、アスパラギン1909、スレオニン1910およびバリン1921を、1つまたはそれ以上含むポリペプチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、単離されたmNa1.3αサブユニット核酸分子。
【請求項5】
配列番号:1記載のヌクレオチド配列を含むところの、請求項4記載の核酸分子。
【請求項6】
本質的に配列番号:1記載のヌクレオチド配列からなるところの、請求項5記載の核酸分子。
【請求項7】
配列番号:1記載の核酸配列の対立遺伝子であるところの、請求項4記載の核酸分子。
【請求項8】
以下のアミノ酸:イソロイシン289、プロリン518、セリン728、セリン1355、アスパラギン1909、スレオニン1910およびバリン1921を1つまたはそれ以上コードするところの、請求項4記載のmNa1.3αサブユニット核酸分子の断片。
【請求項9】
プロモーターに操作可能に連結された請求項4記載のmNa1.3αサブユニット核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項10】
請求項4記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチドに優先的に結合する物質。
【請求項12】
請求項1記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチドに選択的に結合するが、ナトリウムチャネルI型またはII型のサブユニットポリペプチドとは結合しない、物質。
【請求項13】
小分子、核酸または蛋白質であるところの、請求項12記載の物質。
【請求項14】
mNa1.3αサブユニットポリペプチド活性をモジュレートするところの、請求項12記載の物質。
【請求項15】
その抗体または抗原結合断片であるところの、請求項13記載の物質。
【請求項16】
抗体がポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であるところの、請求項15記載の物質。
【請求項17】
請求項12記載の物質および医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項18】
細胞におけるmNa1.3αサブユニットポリペプチド活性をモジュレートする方法であって、以下の工程:
請求項1〜3のいずれかに記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルを提供する工程;
そのチャネルを、mNa1.3αサブユニットポリペプチドの活性をモジュレートするのに有効な量のmNa1.3αサブユニットポリペプチドモジュレータと接触させる工程、を含む方法。
【請求項19】
モジュレータが小分子、核酸または蛋白質であるところの、請求項18記載の方法。
【請求項20】
mNa1.3αサブユニットポリペプチドの活性をモジュレートする物質を同定する方法であって、以下の工程:
請求項1〜3のいずれかに記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含む第一のナトリウムチャネルを提供する工程;
そのチャネルを被験化合物と接触させる工程;および
基準値と比較した活性の変化を、その化合物が該チャネルをモジュレートする物質であるかの指標とする、該ナトリウムチャネルの活性の評価工程、を含む方法。
【請求項21】
被験化合物が小分子、ペプチドまたは核酸であるところの、請求項20記載の方法。
【請求項22】
該ナトリウムチャネルが生物試料中に含まれるところの、請求項20記載の方法。
【請求項23】
該チャネルを複数の被験化合物と接触させるところの、請求項20記載の方法。
【請求項24】
試料が細胞膜を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項25】
試料が細胞を含むところの、請求項24記載の方法。
【請求項26】
細胞が真核細胞であるところの、請求項25記載の方法。
【請求項27】
細胞がアフリカツメガエルの卵母細胞であるところの、請求項26記載の方法。
【請求項28】
細胞が哺乳動物の細胞であるところの、請求項26記載の方法。
【請求項29】
活性がナトリウム濃度の調節を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項30】
評価がナトリウム流動の検出を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項31】
接触を、被験化合物の存在しない下で、第一の量のナトリウム流動が生じる条件下で行うところの、請求項20記載の方法。
【請求項32】
評価がNa流動アッセイの使用を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項33】
アッセイがパッチクランプ電気生理学を用いるところの、請求項20記載の方法。
【請求項34】
アッセイが、2電極電圧クランプ電気生理学を用いるところの、請求項20記載の方法。
【請求項35】
アッセイが、ナトリウム感受性色素の使用を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項36】
アッセイがハイスループットアッセイであるところの、請求項20記載の方法。
【請求項37】
以下の工程:
請求項1〜3記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチド以外のmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含む第二のナトリウムチャネルを提供する工程;
第二のナトリウムチャネルを被験化合物と接触させる工程;
第二のナトリウムチャネルの活性を評価する工程をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項38】
被験化合物存在下の第一のナトリウムチャネルの活性を、被験化合物存在下の第二のナトリウムチャネルの活性と比較することをさらに含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
複数のナトリウムチャネルが提供されるところの、請求項37記載の方法。
【請求項40】
mNa1.3αサブユニットポリペプチドが配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項20記載の方法。
【請求項41】
ナトリウム電流モジュレーションと関連のある障害を処置するのに有用な物質を同定する方法であって、以下の工程:
請求項1〜3のいずれかに記載のmNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルを提供する工程;
そのチャネルを被験化合物と接触させる工程;および
基準値と比較した活性の変化を、その化合物がナトリウム電流と関連のある障害に有用な物質であるかの指標とする、該チャネルの活性の評価工程を含む方法。
【請求項42】
障害が、疼痛、感覚異常、脳卒中、頭部外傷、神経変性障害または神経の過興奮と関連する障害であるところの、請求項41記載の方法。
【請求項43】
インビボにて化合物を投与することをさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
インビボでの使用のために化合物をモジュレートすることをさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項45】
化合物による関連するヒトNa1.3αサブユニットポリペプチドのモジュレーションを評価することをさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項46】
ナトリウムチャネル電流と関連する障害を有する対象を処置する方法であって、以下の工程:
mNa1.3αサブユニットポリペプチドと選択的に結合する物質を同定する工程;
処置を必要とする対象に、mNa1.3αサブユニットポリペプチドを含むナトリウムチャネルに選択的な薬理物質を投与する工程、を含む方法。
【請求項47】
障害が、疼痛、感覚異常、脳卒中、頭部外傷、神経変性障害または神経の過興奮と関連する障害であるところの、請求項46記載の方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図5−4】
image rotate

【図5−5】
image rotate

【図5−6】
image rotate

【図5−7】
image rotate

【図5−8】
image rotate

【図5−9】
image rotate

【図5−10】
image rotate

【図5−11】
image rotate

【図5−12】
image rotate

【図5−13】
image rotate

【図5−14】
image rotate

【図5−15】
image rotate

【図5−16】
image rotate

【図5−17】
image rotate

【図5−18】
image rotate

【図5−19】
image rotate

【図5−20】
image rotate

【図5−21】
image rotate

【図5−22】
image rotate

【図5−23】
image rotate

【図5−24】
image rotate

【図5−25】
image rotate

【図5−26】
image rotate


【公表番号】特表2007−524406(P2007−524406A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544075(P2006−544075)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041668
【国際公開番号】WO2005/059101
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】