説明

映像データ録画再生装置、システム及び方法

【課題】MPEG2のデコーダ1にH.264の半二重方式のトランスコーダ2を付加したシステムにおいて、録画と再生が同時に並行して行えるようにすることを目的とする。
【解決手段】第1の方式(MPEG2)映像データをデコードするデコーダ1と、デコーダからのMPEG2映像データを第2の方式(H.264)映像データにエンコードしてデコーダ1に出力すると共に、デコーダからのH.264映像データをデコードしてデコーダに出力する半二重方式のトランスコーダ2と、を備え、デコーダが、MPEG2及びH.264映像データの入出力を行う映像データ録画再生装置であって、デコーダ1は、H.264映像データを入力または出力する場合に、MPEG2映像データを並列に入力または出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG2方式で符号化(エンコード)されたデジタル放送信号など外部から供給される映像データを、ハードディスクドライブ(HDD)装置やデジタルビデオディスク(DVD)装置などに記憶する録画を行うと共に、記憶した映像データを再生(復号化(デコード))して出力するハードディスクレコーダなどの映像データ録画再生システムに関し、特にMPEG2方式より高効率のエンコードが可能なH.264方式でのエンコード及びデコードを行うトランスコーダを付加した映像データ録画再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送信号をMPEG2方式でエンコードしたデジタル放送が行われている。また、HDD装置やDVD装置などの記憶装置の高性能化に伴い、記憶装置にエンコードされた映像データを記憶する録画を行うと共にデコードして再生する映像データ録画再生システムが家庭にも普及し始めている。このようなパーソナルユースの映像データ録画再生システムは、生産量は大きいが、低価格であることが要求されるので、主要部分をLSI化して低コスト化が図られている。従って、映像データ録画再生システムの主要回路は、MPEG2方式のデコーダ用標準LSIを利用して実現している。一般に、放送信号は、画像データと音声データに分離して処理されるが、ここでは、映像データには画像データと音声データが含まれ、映像データ処理には画像データ処理と音声データ処理が含まれるものとして説明を行う。
【0003】
現在使用されているデコーダ用標準LSIは、MPEG2映像データを復号(デコード)して再生する機能、HDD装置などの記憶装置とのインターフェース機能、及びビデオ信号の生成機能などを、実現すると共に、録画中の映像データを最初から再生する追いかけ再生機能や、記憶装置に記憶されている映像データを再生している場合に外部から供給される他の映像データを記憶する同時録画再生機能などを実現することが可能である。
【0004】
図1の(A)は、MPEG2デコーダ用標準LSIを使用して記憶装置にMPEG2映像データを記憶するシステムにおける追いかけ再生機能時の動作を、図1の(B)は同時録画再生機能時の動作を説明する図である。
【0005】
図1の(A)に示すように、ユーザによりMPEG2映像データの録画処理の途中で追いかけ再生処理を指示する操作が行われる。それに応じて、MPEG2デコーダは、MPEG2映像データの録画を続行しながら、既に録画したMPEG2映像データを記憶装置から読み出して再生し、出力信号に変換する。
【0006】
図1の(B)に示すように、ユーザによりMPEG2映像データの再生処理の途中で入力されるMPEG2映像データを録画する同時録画再生処理を指示する操作が行われる。それに応じて、MPEG2デコーダは、MPEG2映像データの再生を続行しながら、新たなMPEG2映像データを記憶装置に記憶する。
【0007】
一方、MPEG2より高い圧縮率を有し、より高品質の画像を再生できる新しい符号化方式が検討されており、例えばH.264方式などが提案されている。この方式で符号化(エンコード)すれば、同じ映像を少ないデータ量に符号化できるので、同じ記憶容量の記憶装置であればより長時間の映像を記憶できることになる。そこで、新しい符号化方式を採用することが考えられるが、放送信号はMPEG2方式でエンコードされており、新しい符号化方式の処理を行うLSIは回路規模が大きく高価であるという問題がある。また、上記のようにMPEG2デコーダ用標準LSIが広く普及しており、MPEG2デコーダ用標準LSIは比較的低価格である。そこで、高効率の方式で符号化された映像データを記憶する映像データ録画再生システムを低価格で実現するために、図2に示すような基本構成を有する映像データ録画再生システムが考えられている。
【0008】
図2の映像データ録画再生システムは、MPEG2デコーダ1と、H.264方式の符号化(エンコード)及び復号化(デコード)を行うH.264トランスコーダ2と、HDD装置やDVD装置などの記憶装置3と、システムの制御を行うCPU4と、を有する。なお、MPEG2デコーダ1が、CPU4の機能を有する場合もある。MPEG2デコーダ1は、標準LSIで構成される。外部からMPEG2デコーダ1に供給される入力映像信号は、デジタル放送信号や他のデジタル映像機器から供給されるデジタル映像信号であり、MPEG2方式で符号化(エンコード)されているMPEG2映像データである。H.264トランスコーダ2は、低コストで実現することを考慮して、H.264エンコード機能とH.264デコード機能が同時には動作しない半二重方式である。
【0009】
入力映像データを録画する場合には、MPEG2デコーダ1は、入力映像データをH.264トランスコーダ2に供給する。H.264トランスコーダ2は、MPEG2デコード機能を利用して入力映像データを再生した後、H.264エンコード機能を利用してH.264エンコード機能を利用して符号化し、H.264映像データをMPEG2デコーダ1に出力する。MPEG2デコーダ1は、H.264トランスコーダ2から供給されたH.264映像データを記憶装置3に記憶する。録画した映像データを再生する場合には、MPEG2デコーダ1は、記憶装置3からH.264映像データを読み出してH.264トランスコーダ2に供給する。H.264トランスコーダ2は、H.264映像データをH.264デコード機能を利用して再生し、再生映像データをMPEG2デコーダ1に出力する。MPEG2デコーダ1は、H.264トランスコーダ2から供給された再生映像データをアナログビデオ出力やデジタルHDビデオ出力(HDMI)に変換して出力する。
【0010】
上記のように、図2の映像データ録画再生システムは、圧縮率の高いH.264映像データのみを、記憶装置3に記憶する。これにより、記憶装置3の記憶容量を有効に使用することができ、長時間録画が可能である。
【0011】
【特許文献1】特開2001−36844号公報
【特許文献2】特開2001−45436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、MPEG2デコーダ1に半二重方式のトランスコーダ2を付加した図2のシステムでも、通常の録画及び再生動作を行う上では問題はない。しかし、前述のように、MPEG2デコーダ用標準LSIは、追いかけ再生機能や同時録画再生機能などを実現することが可能であり、この標準LSIを使用して記憶装置にMPEG2映像データを記憶するシステムは、追いかけ再生機能や同時録画再生機能などを有するのが一般的であった。そのため、図2の記憶装置にH.264映像データを記憶する映像データ録画再生システムにも同様の機能を実現することが要求される。
【0013】
しかし、図1の(A)及び(B)に示すように、追いかけ再生や同時録画再生を行うには、録画と再生を同時に平行して行う必要がある。図2のシステムでは、H.264映像データが記憶装置3へ入出力されるため、H.264映像データの録画と再生を同時に平行して行う必要があるが、トランスコーダ2は半二重方式であるため、これらの処理を同時に平行して行うことはできない。そのため、図2のシステムでは、追いかけ再生機能や同時録画再生機能を実現できないという問題があった。
【0014】
このように、第1の符号化方式のデコーダに、第1の符号化方式より圧縮率の高い第2の符号化方式の半二重方式のトランスコーダを付加したシステムでは、トランスコーダが半二重方式であるために、録画と再生が同時に並行して行えないという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解決するもので、このような第1の符号化方式のデコーダに第2の符号化方式の半二重方式のトランスコーダを付加したシステムにおいて、録画と再生が同時に並行して行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を実現するため、本発明の映像データ録画再生装置(システム)では、記憶装置を第1の方式で符号化(エンコード)された映像データを録画または再生するためのバッファとして利用し、デコーダは、第1の方式でエンコードされた映像データを録画または再生する、すなわち記憶装置との間で第2の方式でエンコードされた映像データを入出力するのと並行して、第1の方式でエンコードされた映像データを録画または再生する、すなわち記憶装置との間で第1の方式でエンコードされた映像データを入出力する。第1及び第2の方式は、どのような方式でもよいが、例えば、第1の方式はMPEG2方式であり、第2の方式はH.264方式であり、以下第1の方式はMPEG2方式であり、第2の方式はH.264方式であるとして説明を行うが、これに限定されるものではない。
【0017】
前述のように、図2のシステムでは、記憶装置3の記憶容量を有効に利用するために、記憶装置3に記憶する映像データは第2の方式でエンコードされた映像データ(H.264映像データ)のみであった。前述のように、(MPEG2)デコーダは、(MPEG2)映像データの録画と再生を並行して行う機能を有しており、(H.264)映像データの符号化(エンコード)処理及び復号化(デコード)処理はトランスコーダで行われるので、デコーダは(MPEG2)映像データの録画と再生を行うことが可能である。この(MPEG2)映像データの録画と再生を利用すれば、追いかけ再生機能や同時録画再生機能などを実現可能である。記憶装置は(MPEG2)映像データのバッファとして利用するので、これらの機能による動作が終了した場合には、記憶装置に記憶された(MPEG2)映像データは消去や無効化される。
【0018】
録画時には、外部から供給される(MPEG)映像データをトランスコーダにおいて(H.264)映像データにエンコードし、デコーダは、この(H.264)映像データと共に外部から供給される(MPEG)映像データを記憶装置に記憶する。そして、操作指示に応じて追いかけ再生処理を行う場合には、デコーダは、(H.264)映像データ及び(MPEG2)映像データを記憶装置に記憶している時に、記憶装置に記憶された(MPEG2)映像データを再生する。デコーダは、追いかけ再生処理が終了した場合、追いかけ再生処理のために記憶装置に記憶した(MPEG2)映像データを消去または無効化する。この処理は自動的に起動されることが望ましい。これにより、記憶装置に記憶されるのは(H.264)映像データのみとなり、記憶装置の記憶容量の利用効率が悪化することはない。
【0019】
(H.264)映像データの再生中に、録画が指示されて同時録画再生処理を行う場合には、デコーダは、外部から供給される前記第1の方式でエンコードされた(MPEG2)映像データを記憶装置に一旦記憶し、トランスコーダが待機中になったら、記憶した(MPEG2)映像データを記憶装置から読み出してトランスコーダで(H.264)映像データにエンコードした後、デコーダが記憶装置に(H.264)映像データを記憶する再録画処理を行う。再録画処理は、トランスコーダの待機中に行われることが望ましく、再録画処理後に不要になった(MPEG2)映像データは、消去するか無効化する。この処理は自動的に起動されることが望ましい。
【0020】
トランスデコーダは、供給される(MPEG2)映像データを再生した後(H.264)エンコードするので、(MPEG2)映像データをデコードするデコーダを備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1の符号化方式のデコーダに第2の符号化方式の半二重方式のトランスコーダを組み合わせたシステムにおいて、ハードウエアを変更せずに録画と再生が同時に並行して行えるようになる。これにより、高機能の映像データ録画再生システムが低コストで実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図3は、本発明の実施例の映像データ録画再生システム(映像データ録画再生装置)の概略構成を示すブロック図である。図示のように実施例の映像データ録画再生システムは、図2のシステムと同様に、MPEG2デコーダ1と、半二重方式H.264トランスコーダ2と、HDD装置やDVD装置などの記憶装置3と、制御用CPU4と、を有する。言い換えれば、実施例の映像データ録画再生システムは、図2のシステムと同じハードウエア構成を有する。MPEG2デコーダ1は標準LSIで構成され、H.264トランスコーダ2もLSIで構成される。
【0023】
図示のように、MPEG2デコーダ1は、出力する映像データを選択するトランスポートストリーム(TS)デマルチプレクサ41と、TSデマルチプレクサ41から出力されるMPEG2映像データのビデオデータを通常ビデオデータに再生(デコード)するMPEG2ビデオデコーダ51と、MPEG2ビデオデコーダ51の出力する通常映像データとトランスコーダ2の出力する通常映像データの一方を選択するマルチプレクサ52と、マルチプレクサ52の出力する通常映像データの倍率(スケール)を変換するスケーラ(scaler:SCL)53と、マルチプレクサ52の出力する通常映像データの倍率(スケール)変換及びインターレースデータからプログレッシブデータへの(Interlace-Progressive)変換を行うスケーラ/I−P(SCL/I-P)54と、SCL53の出力からアナログビデオ出力を生成するビデオエンコーダ55と、SCL/I−P54の出力とグラフィックス(GFX)57の出力を合わせてデジタルハイビジョンビデオ出力(HDMI)を生成する加算回路56と、TSデマルチプレクサ41から出力される音声データを再生(デコード)して音声出力を生成する音声デコーダ58と、音声デコーダ58からの音声出力とトランスコーダ2からの音声出力の一方を選択して音声出力として出力するマルチプレクサ59と、HDD3とTSデマルチプレクサ41との間で、記憶データを入出力するHDD/IF(インターフェース)60と、バス5を介してCPU4と通信するためのCPUインタフェース71と、CPUインタフェース71からの信号に基づいてデコーダ全体の制御を行う制御部72と、を有する。HDD/IF60は、HDD3にMPEG2映像データ及びH.264映像データを記憶させ、HDD3から記憶してあるMPEG2映像データ及びH.264映像データを読み出すことが可能であり、それらを並列に行うことも可能である。
【0024】
TSデマルチプレクサ41は、外部から入力されるMPEG2映像データとHDD/IF60から出力される(MPEG2またはH.264)映像データの一方を選択するマルチプレクサ42と、マルチプレクサ42の映像データからビデオデータと音声データを分離するデマルチプレクサ43と、外部から入力されるMPEG2映像データとHDD/IF60から出力される(MPEG2またはH.264)映像データの一方を選択するマルチプレクサ44と、外部から入力されるMPEG2映像データとトランスコーダ2から出力されるH.264映像データの一方を選択するマルチプレクサ45と、を有する。
【0025】
以上説明したMPEG2デコーダは、従来から使用されているものと同じであり、これ以上の説明は省略する。
【0026】
トランスコーダ2は、マルチプレクサ44から出力される(MPEG2またはH.264)映像データからビデオデータと音声データを分離するA/Vデマルチプレクサ61と、A/Vデマルチプレクサ61から出力されるMPEG2映像データのうちのビデオデータをデコードして通常ビデオデータを生成するMPEG2ビデオデコーダ62と、MPEG2ビデオデコーダ62の出力する通常ビデオデータをH.264方式で符号化(エンコード)してH.264映像データ(のうちのビデオデータ)を生成するH.264ビデオエンコーダ63と、A/Vデマルチプレクサ61から出力される音声データをデコードまたはエンコードする音声デコーダ/エンコーダ64と、A/Vデマルチプレクサ61から出力されるH.264映像データ(のうちのビデオデータ)をデコードするH.264ビデオデコーダ65と、A/Vデマルチプレクサ61から出力される処理情報、H.264ビデオエンコーダ63の出力するH.264映像データ(のうちのビデオデータ)及び音声デコーダ/エンコーダ64の出力する音声データを統合してH.264映像データを生成してマルチプレクサ45に出力するマルチプレクサ66と、バス5を介してCPU4と通信するためのCPUインタフェース73と、CPUインタフェース73からの信号に基づいてトランスコーダ全体の制御を行う制御部74と、
を有する。トランスコーダ2は、前述のように、H.264エンコード機能とH.264デコード機能は同時には動作しない半二重方式である。トランスコーダ2の構成も知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0027】
図4は、実施例のシステムにおける処理動作を説明する図である。一連の処理動作はCPU4により制御される。
【0028】
図4の(A)は、追いかけ再生の場合を示す。図4の(A)に示すように、外部映像データの録画を指示する操作が行われると、H.264映像データ及びMPEG2がHDD3に記憶される。
【0029】
詳細には、デコーダ1は、マルチプレクサ44を外部からのMPEG2映像データを選択するように設定する。これによりA/Vデマルチプレクサ61に外部からのMPEG2映像データが供給される。A/Vデマルチプレクサ61は、MPEG2映像データのうちのMPEG2ビデオデータをMPEG2ビデオデコーダ62に供給し、MPEG2映像データのうちの音声データを音声デコーダ/エンコーダ64に供給する。MPEG2ビデオデコーダ62は、MPEG2ビデオデータを通常のビデオデータに変換してH.264ビデオエンコーダ63に供給する。H.264ビデオエンコーダ63は、通常のビデオデータをH.264ビデオデータに符号化(エンコード)する。音声デコーダ/エンコーダ64は、通常の音声データに変換した後符号化する。マルチプレクサ66は、H.264ビデオエンコーダ63からのH.264ビデオデータと音声デコーダ/エンコーダ64からの符号化(エンコード)された音声データを合わせてH.264映像データを生成してマルチプレクサ45に供給する。
【0030】
マルチプレクサ45は、外部からのMPEG2映像データとマルチプレクサ66からのH.264映像データを時分割でHDDI/F60に供給し、HDDI/F60は、外部からのMPEG2映像データとH.264映像データの両方を、HDD3に記憶する。以下、指示された録画時間の間この処理を行う。
【0031】
以上のように、本実施例では、録画時には外部からのMPEG2映像データとH.264映像データの両方がHDD3に記憶される。この処理において、トランスコーダ2は、外部からのMPEG2映像データの通常の映像データへのデコード処理とH.264映像データへのエンコード処理を行うが、デコーダ1は、外部からのMPEG2映像データをそのままHDD3に記憶する処理を行うだけであり、MPEG2ビデオデコーダ51及び音声デコーダ58は、録画のためのエンコード処理は行わない。
【0032】
上記の録画処理の途中で、ユーザが録画中の番組を録画の最初から再生するように指示する操作を行うと、追いかけ再生が開始される。追いかけ再生では、上記の録画処理と並行して、HDD3に記憶されているMPEG2映像データを読み出して再生する。
【0033】
詳細には、HDDI/F60は、録画のためのHDD3への記憶処理と並行して、録画中の番組のMPEG2映像データを最初から読み出して、デマルチプレクサ43に供給する。デマルチプレクサ43は、MPEG2映像データのうちのMPEG2ビデオデータをMPEG2ビデオデコーダ51に、音声データを音声デコーダ58に供給する。MPEG2ビデオデコーダ51は、MPEG2ビデオデータを通常のビデオデータに変換(デコード)し、マルチプレクサ52に供給する。マルチプレクサ52はこのビデオデータをSCL53及びSCL/I−P54に供給する。以下、ビデオデータは出力の形態に合わせて変換されて出力される。音声デコーダ58は通常の音声データに変換(デコード)し、マルチプレクサ59に供給する。マルチプレクサ59はこの音声データを出力する。以下、録画した番組が終了するまでこの処理を行う。従って、この処理が終了するのは、早送りなどが行われない限り、番組の録画が終了した後、番組の録画から追いかけ再生が開始されるまでの時間だけ経過した時である。
【0034】
以上のように、追いかけ再生処理は、デコーダ1の処理のみであり、トランスコーダ2は関与しない。HDD/I−F60は、外部からのMPEG2映像データ及びH.264映像データのHDD3への書込みと、HDD3からのMPEG2映像データの読み出しを並列に行う。前述のように、デコーダ用標準LSIは、HDD3への書込みとHDD3からの読み出しを並列に行うことが可能であり、このような処理を行うことが可能である。
【0035】
追いかけ再生が終了すると、HDD3のMPEG2映像データは消去または後で上書き可能なように無効化される。
【0036】
図5の(A)は、録画及び追いかけ再生時のHDD3の記憶データの変化を説明する図である。最初HDD3には、H.264映像データのみが記憶されている。新しい番組の録画が開始されると、それまで記憶されているH.264データに加えて、新しい番組のH.264映像データとMPEG2映像データの記憶が行われる。録画が終了するまで追いかけ再生を指示する操作が行われない場合には、録画が終了した時にMPEG2映像データを消去または無効化する。録画の途中で追いかけ再生を指示する操作が行われるとMPEG2映像データの記憶と並行して読み出しが行われる。追いかけ再生が終了すると、MPEG2映像データを消去または無効化する。このようにして、録画及び追いかけ再生が終了した後は、HDD3に記憶されている有効なデータはH.264映像データのみとなり、MPEG2映像データは記憶されない。
【0037】
図4の(B)及び(C)は、同時録画再生の場合の処理動作を示し、図4の(B)は、H.264映像データの番組の再生が先に終了し、その後にMPEG2映像データの番組の録画が終了する場合を示し、図4の(C)は、後から開始したMPEG2映像データの番組の録画が先に終了し、その後にH.264映像データの番組の再生が終了する場合を示す。図4の(B)及び(C)に示すように、HDD3に記憶されたH.264映像データの再生を指示する操作が行われると、H.264映像データがHDD3から読み出されて再生される。
【0038】
詳細には、HDDI/F60は、HDD3から再生するH.264映像データを読み出しマルチプレクサ44に供給する。マルチプレクサ44は、このH.264映像データを選択してA/Vデマルチプレクサ61に供給する。A/Vデマルチプレクサ61は、H.264映像データのうちのH.264ビデオデータをH.264ビデオデコーダ65に供給し、H.264映像データのうちの音声データを音声デコーダ/エンコーダ64に供給する。H.264ビデオデコーダ65は、H.264ビデオデータを通常のビデオデータに変換してマルチプレクサ52に供給する。音声デコーダ/エンコーダ64は、音声データを通常の音声データに変換してマルチプレクサ59に供給する。以下、追いかけ再生時と同様に出力が生成され、指示された番組の再生が終了するまでこの処理を行う。
【0039】
上記の再生処理の途中で、ユーザが別の番組を録画するように指示する操作を行うと、同時録画再生が開始される。同時録画再生では、HDD3に記憶されたH.264映像データの再生に並行して、HDD3に外部からのMPEG2映像データを記憶し、H.264映像データの再生とMPEG2映像データの録画の両方が終了してトランスコーダ2が待機中になったら、記憶したMPEG2映像データをHDD3から読み出してトランスコーダ2でH.264映像データに符号化した後、デコーダ1が再びHDD3に記憶する再録画処理を行う。
【0040】
詳細には、デコーダ1は、マルチプレクサ45を外部からのMPEG2映像データを選択するように設定する。HDDI/F60は、上記のHDD3からのH.264映像データの読み出し処理と並行して、外部からのMPEG2映像データを記憶する処理を開始する。以下指示されたH.264映像データの番組の再生および外部からのMPEG2映像データの番組の録画の両方が終了するまでこの処理を行う。
【0041】
上記の再生及び録画処理で、トランスコーダ2はH.264映像データのデコードのみを行い、符号化(エンコード)処理は行わない。また、デコーダ1は、HDD3からのH.264映像データの読み出しと、HDD3へのMPEG2映像データの記憶と、を行うだけで、デコード処理は行わない。
【0042】
両方の処理が終了した時、すなわち、図4の(B)であればMPEG2映像データの番組の録画が終了した時、図4の(C)であればH.264映像データの番組の再生が終了した時に、HDDI/F60は、HDD3からMPEG2映像データを読み出し、マルチプレクサ44を介してA/Vデマルチプレクサ61に供給する。A/Vデマルチプレクサ61は、MPEG2映像データのうちのMPEG2ビデオデータをMPEG2ビデオデコーダ62に供給し、MPEG2映像データのうちの音声データを音声デコーダ/エンコーダ64に供給する。MPEG2ビデオデコーダ62は、MPEG2ビデオデータを通常のビデオデータに変換してH.264ビデオエンコーダ63に供給する。H.264ビデオエンコーダ63は、通常のビデオデータをH.264ビデオデータに符号化(エンコード)する。音声デコーダ/エンコーダ64は、通常の音声データに変換した後音声データを符号化する。マルチプレクサ66は、H.264ビデオエンコーダ63からのH.264ビデオデータと音声デコーダ/エンコーダ64からのエンコードされた音声データを合わせてH.264映像データを生成して、マルチプレクサ45を介してHDDI・F60に供給する。HDDI・F60は、供給されたH.264映像データをHDD3に記憶する。以下、指示された録画時間の間この処理を行う。この間、HDD3からのMPEG2映像データの読み出し及びH.264映像データの記憶は並行して行われる。H.264映像データの記憶が終了すると、HDD3のMPEG2映像データは消去または後で上書き可能なように無効化される。
【0043】
上記の処理で、トランスコーダ2はH.264映像データの符号化(エンコード)処理のみを行い、デコーダ1は、HDD3からのMPEG2映像データの読み出しと、HDD3へのH.264映像データの記憶と、を行うだけで、デコード処理は行わない。
【0044】
図5の(B)は、同時録画再生時のHDD3の記憶データの変化を説明する図である。最初HDD3には、H.264映像データのみが記憶されており、再生指示に従ってH.264映像データの読み出しが行われる。次に、同時録画が指示されると、それまで記憶されているH.264データに加えて、新しい番組のMPEG2映像データの記憶が行われる。再生及び録画が終了すると、記憶したMPEG2映像データを読み出し、それから新たなH.264映像データを生成して、HDD3に記憶される。この時、図示のように、HDD3には元々のH.264映像データとMPEG2映像データと、新しいH.264映像データが記憶されている。再録画が終了すると、MPEG2映像データが消去または無効化される。
【0045】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、第1の符号化方式のデコーダに第2の符号化方式の半二重方式のトランスコーダを組み合わせた映像データ録画再生システムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来のトランスコーダを有さない映像データ録画再生システムにおける処理例を説明する図である。
【図2】トランスコーダを有する映像データ録画再生システムの基本構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例の映像データ録画再生システムの構成を示す図である。
【図4】実施例における処理例を説明する図である。
【図5】実施例の処理例に応じた記憶装置(HDD)における記憶内容の変化を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1 (MPEG2)デコーダ
2 (H.264)トランスコーダ
3 記憶装置(HDD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方式でエンコードされた映像データをデコードするデコーダと、
前記デコーダから供給される前記第1の方式でエンコードされた映像データを、前記第1の方式より圧縮率の高い第2の方式でエンコードして前記デコーダに出力すると共に、前記デコーダから供給される前記第2の方式でエンコードされた映像データをデコードして前記デコーダに出力し、エンコード処理とデコード処理の一方のみを同時に行うことが可能な半二重方式のトランスコーダと、を備え、
前記デコーダが、前記第1及び第2の方式でエンコードされた映像データの入出力を行う、映像データ録画再生装置であって、
前記デコーダは、前記第2の方式でエンコードされた映像データを入力または出力する場合に、前記第1の方式でエンコードされた映像データを並列に入力または出力することを特徴とする映像データ録画再生装置。
【請求項2】
前記デコーダは、外部から供給され前記トランスコーダにおいて前記第2の方式でエンコードされた映像データを出力する場合に、外部から供給される前記第1の方式でエンコードされた映像データを出力することを特徴とする請求項1に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項3】
操作指示に応じて、前記デコーダが、外部から供給され前記トランスコーダにおいて前記第2の方式でエンコードされた映像データを出力している場合に、外部から供給されて出力された前記第1の方式でエンコードされた映像データを再生する追いかけ再生処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項4】
前記デコーダは、前記追いかけ再生処理が終了した後、外部から供給されて出力された前記第1の方式でエンコードされた映像データを消去または無効化することを特徴とする請求項3に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項5】
前記デコーダが出力された前記第2の方式でエンコードされた映像データを読み出して前記トランスコーダに供給し、前記トランスコーダが供給された前記第2の方式でエンコードされた映像データを再生している場合に、操作指示に応じて、前記デコーダは、外部から供給される前記第1の方式でエンコードされた映像データを出力することを特徴とする請求項1に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項6】
前記デコーダは、前記トランスコーダの待機中に、前記第2の方式でエンコードされた映像データの再生と並行して出力した前記第1の方式でエンコードされた映像データを、入力して前記トランスコーダに供給し、
前記トランスコーダは、供給された前記第1の方式でエンコードされた映像データを前記第2の方式でエンコードして前記デコーダに供給し、
前記デコーダは、供給された前記第2の方式でエンコードされた映像データを出力する、再録画処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項7】
前記デコーダは、前記再録画処理中または前記再録画処理が終了した後、前記第2の方式でエンコードされた映像データの再生と並行して出力した前記第1の方式でエンコードされた映像データを消去または無効化することを特徴とする請求項6に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項8】
前記トランスコーダは、前記第1の方式でエンコードされた映像データをデコードするデコーダを備え、再生された前記映像データを前記第2の方式でエンコードすることを特徴とする請求項1に記載の映像データ録画再生装置。
【請求項9】
第1の方式でエンコードされた映像データをデコードするデコーダと、
前記デコーダから供給される前記第1の方式でエンコードされた映像データを、前記第1の方式より圧縮率の高い第2の方式でエンコードして前記デコーダに出力すると共に、前記デコーダから供給される前記第2の方式でエンコードされた映像データをデコードして前記デコーダに出力するトランスコーダと、
前記映像データを記憶する記憶装置であって、前記デコーダを介して前記映像データが入力及び出力される記憶装置と、を備え、
前記デコーダは、前記第1及び第2の方式でエンコードされた映像データの前記記憶装置との間の入出力を行い、
前記トランスコーダは、前記第1の方式でエンコードされた映像データを前記第2の方式でエンコードする処理と、前記第2の方式でエンコードされた映像データをデコードする処理の一方のみを同時に行うことが可能な半二重方式である映像データ録画再生システムであって、
前記デコーダは、前記記憶装置との間で、前記第2の方式で符号化された映像データを入力または出力する時に、前記第1の方式でエンコードされた映像データを並列に入力または出力することを特徴とする映像データ録画再生システム。
【請求項10】
第1の方式でエンコードされた映像データをデコードするデコーダと、
前記デコーダから供給される前記第1の方式でエンコードされた映像データを、前記第1の方式より圧縮率の高い第2の方式でエンコードして前記デコーダに出力すると共に、前記デコーダから供給される前記第2の方式でエンコードされた映像データをデコードして前記デコーダに出力し、エンコード処理とデコード処理の一方のみを同時に行うことが可能な半二重方式のトランスコーダと、を使用して、前記第1及び第2の方式でエンコードされた映像データの記憶装置との間の入出力を、前記デコーダを介して行う、映像データ録画再生方法であって、
前記デコーダと前記記憶装置との間で、前記第2の方式でエンコードされた映像データを入力または出力する場合に、前記第1の方式でエンコードされた映像データを並列に入力または出力することを特徴とする映像データ録画再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−277880(P2008−277880A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115573(P2007−115573)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】