説明

映像伝送システム

【課題】多重無線回線にてパケット欠損の少ない映像情報伝送を可能とする。
【解決手段】多重無線回線7による経路にてMPEG2で送信を行っている場合には、全ての送信パケットを伝送できず、IP対応デコーダ4−1、4−2では、受信パケットに欠損が生じ、センタ装置10へ通知する。センタ装置10はIP対応エンコーダとIP対応デコーダから通知を受け取って、パケットロスが所定以上に生じていることを検出し、IP対応エンコーダ2−1〜2−nに対しデータ圧縮方式をMPEG4へ変更し数百Kbpsから数Mbps程度の送信レートにて送信するように制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震などの災害時に、迂回伝送路を介して映像を伝送する映像伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においてはコストや利便性を考慮して、テレビカメラにより撮像された監視映像をIPネットワークを介して監視端末へ送るようにしたシステムが用いられるようになっている。このようなシステムにおいて、地震などの災害時に経路迂回する構成については、ネットワーク側において考慮されているだけであり、ネットワークを用いて映像監視を行うユーザ側が備えるものではない。
【0003】
このため、現状のシステムにあっては、伝送するデータの圧縮効率をできる限り上げて通信帯域を効率良く利用しようとする考えに基づく構成を採用しているものが多い。例えば、特許文献1に示されている監視システムにあっては、通信回線の情報量を低減させてシステム全体の通信回線における負担軽減を図っている。
【特許文献1】特開2004−156081号公報
【0004】
そして、IPネットワークを用いた映像伝送システムにおいては、IPネットワークの障害時における迂回経路に関しても光ファイバケーブルを用いて大容量通信を行うように構成されている。ただし、防災用のIPネットワークでは、災害時には光ファイバケーブルが断線するという事態を想定し、最終的な迂回路としては殆どの場合に多重無線回線を採用する構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光ファイバケーブルと多重無線回線とを比較すると、多重無線回線においては伝送容量が少なく、光ファイバケーブルによる場合と同程度の映像情報伝送が行えないという問題があった。
【0006】
本発明は上記のようなIPネットワークを用いた映像伝送における現状に鑑みてなされたもので、その目的は伝送容量に差がある伝送路を用いており、障害発生時などに伝送路を切り換える場合にも、適切に映像情報を伝送可能な映像伝送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る映像伝送システムは、被写体を撮像するテレビカメラと、前記テレビカメラにより得られる映像信号を少なくとも2種類のいずれかの圧縮方式・送信レートによりIPパケットとして送出するエンコーダと、受信したIPパケットを前記少なくとも2種類の圧縮方式・送信レートに対応して伸長して映像信号を復元してモニタへ送出するデコーダと、前記エンコーダと前記デコーダにそれぞれ接続され、少なくとも二系統の伝送路のいずれかを選択するルーティングを行うLANスイッチと、前記エンコーダに接続されたLANスイッチと前記デコーダに接続されたLANスイッチとの間を接続する少なくとも二系統の伝送路とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る映像伝送システムでは、圧縮方式として、MPEG2とMPEG4とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る映像伝送システムでは、伝送路として光ファイバケーブルによる第1の伝送路と、該第1の伝送路より伝送容量の少ない多重無線による第2の伝送路を備え、前記LANスイッチは、第1の伝送路が正常であれば当該第1の伝送路を用いてIPパケットを送受し、第1の伝送路が異常であれば第2の伝送路を用いてIPパケットを送受することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る映像伝送システムでは、前記エンコーダと前記デコーダにおけるパケットロスを検出し、パケットロスの検出結果に基づき前記エンコーダと前記デコーダにおける圧縮方式と送信レートを制御する管理手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、少なくとも2種類のいずれかの圧縮方式・送信レートによりIPパケットとして送出するエンコーダと、受信したIPパケットを前記少なくとも2種類の圧縮方式・送信レートに対応して伸長して映像信号を復元してモニタへ送出するデコーダとを備え、少なくとも二系統の伝送路のいずれかを選択するルーティングにより伝送されるので、選択された伝送路に応じて少なくとも2種類の圧縮方式・送信レートのいずれかを選択するようにでき、伝送容量が少ない伝送路が用いられる場合に対応させることが可能となる。
【0012】
本発明では、圧縮方式として、MPEG2とMPEG4とを備えるので、伝送容量に対応させていずれかの圧縮方式により圧縮した映像を伝送することが可能である。
【0013】
本発明では、光ファイバケーブルによる第1の伝送路が正常であれば当該第1の伝送路を用いてIPパケットを送受し、第1の伝送路が異常であれば伝送容量の少ない多重無線による第2の伝送路を用いてIPパケットを送受するので、これに対応させていずれかの圧縮方式を採用することが可能である。
【0014】
本発明では、エンコーダとデコーダにおけるパケットロスを検出し、パケットロスの検出結果に基づきエンコーダとデコーダにおける圧縮方式と送信レートを制御するので、ルーティングにより伝送容量の少ない伝送路へ切り換えが起こった場合を検出でき、これに対応する適切な圧縮方式と送信レートによる伝送が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明に係る映像伝送システムの実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一符号を付して重複する説明を省略する。図1には、本発明に係る映像伝送システムの実施例の構成図が示されている。このシステムでは、監視位置にテレビカメラ1−1〜1−nが設置されており、監視対象を撮像して映像信号(例えば、NTSC信号)を得る。
【0016】
テレビカメラ1−1〜1−nには、IP対応エンコーダ2−1〜2−nが接続されている。IP対応エンコーダ2−1〜2−nは、テレビカメラ1−1〜1−nにより得られる映像信号を少なくとも2種類のいずれかの圧縮方式・送信レートによりIPパケットとして送出するものである。この例では、少なくとも2種類のいずれかの圧縮方式としては、MPEG2とMPEG4を採用し、MPEG2で圧縮した場合には数Mbpsから10Mbps程度の送信レートで送信を行い、MPEG4で圧縮した場合には数百Kbpsから数Mbps程度の送信レートで送信を行うように構成されている。
【0017】
一方、監視を行う側には、CRTやLCDなどにより構成されNTSC信号による映像信号を受けて画像表示を行うモニタ3−1、3−2が設けられている。モニタの台数は一例に過ぎない。モニタ3−1、3−2には、IP対応デコーダ4−1、4−2が接続されている。IP対応デコーダ4−1、4−2は、IP対応エンコーダ2−1〜2−nにより送られるIPパケットを受信し、受信したIPパケットを上記少なくとも2種類の圧縮方式・送信レートに対応して伸長して映像信号を復元してモニタへ送出するものである。ここでは、少なくとも2種類の圧縮方式として、IP対応エンコーダ2−1〜2−nに対応してMPEG2とMPEG4を採用し、MPEG2で圧縮された数Mbpsから10Mbps程度のレートで受信を行い、MPEG4で圧縮された場合には数百Kbpsから数Mbps程度のレートで受信を行うように構成されている。
【0018】
IP対応エンコーダ2−1〜2−nにはLANスイッチ5Aが接続され、IP対応デコーダ4−1、4−2にはLANスイッチ5Bが接続されている。LANスイッチ5A、5Bは、同一の構成を有し、少なくとも二系統の伝送路のいずれかを選択するルーティングを行うものである。この実施例では、LANスイッチ5A、5Bは、レイヤ3のスイッチであり、光ファイバケーブル6による伝送路に接続されていると共に、多重無線回線7による伝送路に対しIP対応多重無線装置8A、8Bを介して接続されており、IPパケットのルーティングを行うものである。
【0019】
IP対応多重無線装置8A、8Bは、多重無線装置にIPネットワークとのインタフェースを付加する等により構成され、IPパケットを多重無線回線7により送受信するものである。IPネットワーク(この例では、LANスイッチ5B)には、センタ装置10が接続されている。センタ装置10は、テレビカメラ1−1〜1−nの設置位置等の識別情報と、テレビカメラ1−1〜1−nとIP対応エンコーダ2−1〜2−nとの接続関係情報、IP対応エンコーダ2−1〜2−nのアドレス、IP対応デコーダ4−1、4−2のアドレスなどの情報を備える。また、センタ装置10は、IP対応エンコーダ2−1〜2−nがいずれのIP対応デコーダへ映像を配信しているかに関する情報、IP対応デコーダ4−1、4−2がいずれのIP対応エンコーダから映像を得ているかに関する情報を備えている。
【0020】
更に図2に示すように、センタ装置10は管理手段として、IP対応エンコーダ2−1〜2−nにおけるデータ送信状態の監視、また、IP対応デコーダ4−1、4−2におけるデータ受信状態の監視を、例えば多重無線回線7または他の回線を用いて行うと共に、IP対応エンコーダ2−1〜2−nに対しデータ圧縮方式と送信レートの変更制御を行うと共に、IP対応デコーダ4−1、4−2にデータ圧縮方式と送信レートの変更を通知する。
【0021】
図2に示すように、IP対応エンコーダ2−1〜2−nは、データ送信状態(データ圧縮方式と送信レート)の通知を行うと共にセンタ装置10からデータ圧縮方式と送信レートの変更指示を受けてデータ圧縮方式と送信レートの変更を実行する。また、IP対応デコーダ4−1、4−2は、データ受信状態(パケットの欠損率等)をセンタ装置10へ通知すると共にセンタ装置10からデータ圧縮方式と送信レートの変更指示を受けて受信パケットに対しデータ伸長する手法と受信レートの変更を実行する。
【0022】
以上の通りに構成された映像伝送システムでは、通常状態(当初から)において、LANスイッチ5A、5Bは、光ファイバケーブル6を介してデータ伝送を行っている。そして、この通常状態において、IP対応エンコーダ2−1〜2−nは、映像信号をMPEG2で圧縮を行い、数Mbpsから10Mbps程度の送信レートで送信を行っている。IP対応デコーダ4−1、4−2は、MPEG2で圧縮された映像信号を伸長して元の映像信号へ戻しモニタ3−1、3−2へ送って映像を表示する。
【0023】
上記のような映像伝送システムにおいて光ファイバケーブル6が断となる等の障害が発生すると、これをLANスイッチ5A、5Bが検出してIP対応多重無線装置8A、8B及び多重無線回線7による経路への迂回を開始する。多重無線回線7による経路は、最大でも50Mbps程度の帯域であるため、IP対応エンコーダ2−1〜2−nが映像信号をMPEG2で圧縮を行い、数Mbpsから10Mbps程度の送信レートで送信を行っている場合には、全ての送信パケットを伝送できる状態ではない。これにより、IP対応デコーダ4−1、4−2では、受信パケットに欠損が生じ、センタ装置10へ通知するデータ受信状態情報では、パケットの欠損率等が通常状態に比べて遥かに大きな値へと変化する。
【0024】
このときセンタ装置10は図3に示されるように動作を行う。IP対応エンコーダとIP対応デコーダから通知を受け取って(S11)、パケットロスが所定以上に生じているかを検出している(S12)。光ファイバケーブル6が伝送路に選択されている場合には、このステップS12においてNOへ分岐するが、多重無線回線7が迂回路として選択された場合には、ステップS12においてYESへ分岐し、IP対応エンコーダ2−1〜2−nに対しデータ圧縮方式をMPEG4へ変更し数百Kbpsから数Mbps程度の送信レートにて送信するように制御を行う(S13)。また、IP対応デコーダ4−1、4−2にデータ圧縮方式をMPEG4とし数百Kbpsから数Mbps程度の送信レートへ変更される旨を通知する(S14)。
【0025】
上記ステップS13による変更制御を受けたIP対応エンコーダ2−1〜2−nは、データ圧縮方式をMPEG4とし、送信レートを数百Kbpsから数Mbps程度に低下させて映像信号の送信を実行する。これにより、最大でも50Mbps程度の帯域である多重無線回線7による経路においても、IP対応エンコーダ2−1〜2−nが映像信号をMPEG4で圧縮を行い、送信レートが数百Kbpsから数Mbps程度に低下されることから、パケットロスなく映像の伝送が行われる。
【0026】
一方、上記ステップS14による通知を受けたIP対応デコーダ4−1、4−2は、圧縮方式MPEG4と送信レート数百Kbpsから数Mbps程度に対応してパケットの受信と映像信号の伸長を行って、もとの映像信号をモニタ3−1、3−2へ送って映像を表示する。斯して、通常に使用されている伝送路と伝送容量に差がある迂回時の伝送路へ切り換えた場合にも、適切に映像情報の伝送が可能となるものである。なお、圧縮方式は一例に過ぎず、また、3以上の圧縮方式・送信レートを用意して対応しても良い。また伝送路の系統を三系統以上としても良い。
【0027】
また、光ファイバケーブル6が復旧した場合には、例えば、オペレータがセンタ装置10へ指示入力を行い、これに基づきセンタ装置10からIP対応エンコーダ2−1〜2−nとIP対応デコーダ4−1、4−2へ、MPEG2で圧縮を行い、数Mbpsから10Mbps程度の送信レートで送信を行う指示を送出するようにする。また、IP対応デコーダ4−1、4−2がIP対応エンコーダ2−1〜2−nから映像情報を得るようにしたが、IP対応エンコーダ2−1〜2−nから少なくとも二系統の伝送路を介してデータベースサーバに映像情報を送るようにし、IP対応デコーダ4−1、4−2がデータベースサーバにアクセスして所望のテレビカメラに対応する映像情報を得るように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る映像伝送システムの実施例を示すブロック図。
【図2】本発明に係る映像伝送システムの実施例の要部に関する機能を説明するための図。
【図3】本発明に係る映像伝送システムにおけるセンタ装置の動作を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
1−1〜1−n テレビカメラ
2−1〜2−n IP対応エンコーダ
3−1、3−2 モニタ
4−1、4−2 IP対応でコーダ
5A、5B LANスイッチ
6 光ファイバケーブル
7 多重無線回線
8A、8B IP対応多重無線装置
10 センタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像するテレビカメラと、
前記テレビカメラにより得られる映像信号を少なくとも2種類のいずれかの圧縮方式・送信レートによりIPパケットとして送出するエンコーダと、
受信したIPパケットを前記少なくとも2種類の圧縮方式・送信レートに対応して伸長して映像信号を復元してモニタへ送出するデコーダと、
前記エンコーダと前記デコーダにそれぞれ接続され、少なくとも二系統の伝送路のいずれかを選択するルーティングを行うLANスイッチと、
前記エンコーダに接続されたLANスイッチと前記デコーダに接続されたLANスイッチとの間を接続する少なくとも二系統の伝送路と
を具備することを特徴とする映像伝送システム。
【請求項2】
圧縮方式として、MPEG2とMPEG4とを備えることを特徴とする請求項1に記載の映像伝送システム。
【請求項3】
伝送路として光ファイバケーブルによる第1の伝送路と、該第1の伝送路より伝送容量の少ない多重無線による第2の伝送路を備え、
前記LANスイッチは、第1の伝送路が正常であれば当該第1の伝送路を用いてIPパケットを送受し、第1の伝送路が異常であれば第2の伝送路を用いてIPパケットを送受することを特徴とする請求項1または2に記載の映像伝送システム。
【請求項4】
前記エンコーダと前記デコーダにおけるパケットロスを検出し、パケットロスの検出結果に基づき前記エンコーダと前記デコーダにおける圧縮方式と送信レートを制御する管理手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の映像伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−172542(P2008−172542A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3890(P2007−3890)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】