説明

暖房装置

【課題】電磁誘導を利用する暖房装置において、誘導コイルと発熱体との距離が一定でなくても、設備や機器の表面を均等に加熱することを目的とする。
【解決手段】便座1の表面材の裏面側に発熱体Dを配置し、底板状に誘導コイルCを配置する。誘導コイルCは複数個を直列に接続し、発熱体Dとの距離に応じて導線の捲き数及び/又は断面積を調整して、発熱体Dの発熱量を全域にわたり出来るだけ均等化する。また導線の巻き方を、隣接する誘導コイルC間で、磁束の方向が互いに反対方向を向くよう設定することにより、磁束が隣接する誘導コイルCへ収束し、発熱体Dの全域にわたる均一加熱が可能になっている。外部への磁束漏洩が少なくなり、人体や電子機器への悪影響も抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備や機器の表面を電磁誘導を利用して暖めるための装置に関し、誘導コイルと発熱体との距離が一定でなくても、均等な加熱状態あるいは所望に調節された加熱状態が得られるようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2に、設備や機器の表面を誘導加熱方式で暖房する技術が開示されている。特許文献1は、暖房便座に関するものであって、便座の表面材の表面にアルミ箔より成る発熱体を配置し、表面材の裏面側に誘導コイルを配置する。そして、誘導コイルに通電することで発熱体を誘導加熱することにより、便座表面を短時間で暖めることが記載されている。特許文献2は、床暖房装置に関するものであって、床材の下面に鉄や銅等の金属板より成る加熱板を配置し、さらにその下側に誘導コイルを内蔵したケースを配置し、誘導コイルに通電することで加熱板を誘導加熱することにより、床材表面を暖めることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−8859号公報
【特許文献2】特開平7−145952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される暖房便座は、便座の表面材が湾曲した形状であるため、その裏面に誘導コイルを配置する際、表面材の湾曲形状に合わせて誘導コイルの形態を製作する必要があり、製作が難しいという欠点がある。そこで、便座の底板上に誘導コイルを平面的に配置することが考えられるが、この場合は、便座表面が湾曲形状であるため、発熱体と誘導コイルとの距離が一定にはならない。それ故、発熱体の発熱量が部位によって異なり、便座の表面温度が不均一になる。つまり部位によって熱くなりすぎたり冷たかったりして、使用者に不快感を与えるおそれあるという問題を招く。
【0005】
特許文献2に記載される床暖房装置は、床材表面が平坦である場合だけ想定しており、この場合は床面の均一な加熱が可能である。しかし段差などの凹凸を有しているときは、部位によって誘導コイルと加熱板との距離が相違するため、床面温度を均一にできないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、誘導加熱式の暖房装置において、誘導コイルと発熱体との距離が部位によって異なる場合でも、発熱体の発熱量をなるべく一定にできる手段を提供する。本発明の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、設備又は機器の表面又は表面材の裏面に導電性材料より成る発熱体が配置され、該発熱体から所定距離を置いて誘導コイルが配置され、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになされた暖房装置において、複数の誘導コイルを直列に接続し、各誘導コイルと発熱体との間の距離又は透磁率が異なる部位が存在する場合に、当該距離又は透磁率の違いに応じ誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を調整して、発熱体の発熱量を均等化することである。
【0007】
前記において、設備とは床や壁を構成する内装材などが挙げられ、機器とは便座・いす・浴槽等が挙げられ、いずれも使用者が直接触れることが想定されるものである。また、透磁率が異なるとは、誘導コイルと発熱体との間が透磁率の異なる物質で充填される場合や、同じ物質でも充填量(磁束方向の厚み)が異なっている場合を指している。またコイルの断面積とは、通電時に生成する磁束の方向に対し、垂直な方向にコイルを断面したときの面積である。
【0008】
前記の如く構成された本発明は、例えば、誘導コイルを配置する領域を発熱体との距離又は透磁率の違いに応じて複数に分割し、分割領域ごとに誘導コイルを配置し、各誘導コイルを直列に接続する態様が想定される。誘導コイルは、導線の捲き数を増やすと磁束密度が増加する。従って、誘導コイルと発熱体との距離が大きいほど又は透磁率が小さいほど、誘導コイルの捲き数を増加させて、磁束密度を高める。また断面積を大きくすると磁束密度は減少するから、断面積の大きい誘導コイルを用いるときには、捲き数を増やして磁束密度の低下を補うようにすればよい。
【0009】
本発明を暖房便座の暖房装置に適用する場合は、請求項2に記載する如く、便座の表面材の裏面に導電性材料より成る発熱体を配置し、便座の底板上に誘導コイルを配置し、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになした暖房装置において、複数の誘導コイルを直列に接続し、各誘導コイルと発熱体との間の距離の違いに応じ誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を調整して、発熱体の発熱量を均等化するように構成すればよい。
【0010】
本発明に係る暖房装置において、誘導加熱効率を向上させるため、請求項3に記載する如く、隣接する誘導コイルを、通電時に生成する磁束の方向が互いに反対を向くように設定することが望ましい。
【0011】
また、本発明に係る暖房装置の誘導コイルへ電力を供給するための手段として、請求項4に記載する如く、電源部から電力の供給を受ける一次コイルを備えた受電部と、誘電コイルへ通電可能な二次コイルを備えた送電部とを有する給電手段を設け、受電部の一次コイルへ通電することにより、相互誘導作用によって、送電部の二次コイルを通じて誘導コイルへ電力を供給するように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る暖房装置によれば、直列に接続した誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を、各誘導コイルと発熱体との間の距離又は透磁率の違いに応じて調整することにより、発熱体の発熱量を均等化するので、発熱体が設けられる設備や機器の表面形状が平坦でなくても、表面温度を均一にすることができる。また、複数の誘導コイルに対し個別に通電状態を制御するのではなく、複数の誘導コイルを直列に接続し、各誘導コイルの捲き数や断面積を調整することにより発熱体の発熱量を均等化する構成としたから、通電制御が簡単である。
【0013】
請求項2に記載するように、本発明を暖房便座に適用した場合は、表面材の裏面に配置した発熱体と底板上に配置した誘導コイルとの間の距離が部位によって異なっていても、距離の違いに応じ誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を調整して発熱体の発熱量を均等化できるから、便座の表面温度が均一になる。よって、熱くなりすぎたり冷たかったりする部位が形成されるのが防止され、使用者に不快感を与えるおそれがなくなる。また誘導コイルを平坦な底板上に配置するから、コイルの配置作業が容易である。
【0014】
請求項3に記載するように、隣接する誘導コイルに生成する磁束の方向が互いに反対を向くように設定すれば、任意の誘導コイルから発生した磁束が、隣接する誘導コイルへ収束するような磁界が形成される。そのため、磁束が外部へ漏洩するのが抑制され、隣接する誘導コイルの境界部分でも、効率良く発熱体に電磁誘導を引き起こすことができる。その結果、発熱体の全域にわたり誘導加熱効率が向上すると共に、外部へ放射される電磁ノイズが低減するので、人体や電子機器等に悪影響を及ぼすのを防止できる。
【0015】
請求項4に記載するように、一次コイルと二次コイルとの相互誘導作用を利用した給電手段を設けて誘導コイルへ電力を供給するように構成した場合は、電源部と誘導コイルとの間の配線を無くすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1に、本発明に係る暖房装置Hを、便座1に適用して構成した暖房便座装置Sの一例を示す。但し図面には、暖房便座装置Sの内部構造のうち、本発明に関連する部分だけを概略的に示す。暖房便座装置Sは、便座1と、便器(図示省略)の上面に設置される便座支持体10とから構成される。本例では、便座1の後端部の左右に所定間隔を置いて後方へ突出するように取付腕部2,2を設け、該取付腕部2,2の間に、便座支持体10の前面部に設けた膨出部11を挟持するように構成してある。そして、便座支持体10における膨出部11の左右側面から突出させた支持軸20で、左右の取付腕部2,2を支持することにより、便座1を揺動可能としている。なお、支持軸10を抜き出すなどの方法で分離することにより、便座1を便座支持体10から取り外し可能に構成することが可能である。
【0017】
便座支持体10は、例えば箱状の形態を有し、その内部に、電源Wに接続されて電力の供給を受ける制御回路13が設けられる。制御回路13には、便座支持体10の側面に設けたスイッチ基板14が接続される。該スイッチ基板14の表面に設けたスイッチボタン(図示せず)を押すことにより、制御回路13を通じ、後述する暖房装置Hへの通電量を制御して、便座保温温度を調節し、もしくは暖房装置Hへの通電を停止させるようになされている。なお図示は省略するが、便座支持体2が、人体検出手段・便蓋の自動開閉装置・音楽再生装置・温水洗浄装置・便器自動洗浄装置・脱臭装置などを備える場合は、前記制御回路13に、人体検出手段の人体検知信号や前記スイッチボタンの操作に基づいて、上記各装置の動作を制御する機能を持たせることができる。
【0018】
便座1の内部には、誘導コイルCと発熱体Dとから成る暖房装置H、調整回路4、及び温度センサ(図示せず)が設けられる。調整回路4は、後述する給電装置30から相互誘導方式により電力の供給を受け、この電力から誘導コイルCへ与える高周波電流を生成するための整流器及びインバータを備える。また温度センサの検知温度信号に基づき、暖房装置Hへの通電状態を調整し、あるいは異常昇温を検知したときに送電を停止させる機能を有している。
【0019】
図2に示す如く、便座1の表面材1aの裏面側に発熱体Dが配置され、発熱体Dの下方側で底板1b上に誘導コイルCが配置される。誘導コイルCと発熱体Dとの間の空間は、所望により適宜の断熱材Eで充填してもよい。発熱体Dは、鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料を、板状・シート状・箔状の形態としたものであり、表面材1aの裏面に密接するよう設けられる。
【0020】
誘導コイルCは、図3に示す如く、複数個を直列に接続したものである。本例では、誘導コイルCの配置領域(便座1の底板1b上面)を、発熱体Dとの距離G(図2参照)に応じて複数の領域に区画し、複数の誘導コイルC1〜7・C11〜17における導線の捲き数及び/又は断面積を、各区画ごとに所定の値に設定したところを第1の特色とする。また各誘導コイルC1〜7・C11〜17における導線の巻き方を、隣接するものどうしでは、通電時に生成する磁束の方向が互いに反対方向を向くよう設定したところを第2の特色としている。
【0021】
各誘導コイルC1〜7・C11〜17における導線の捲き数及び断面積は、通電時に電磁誘導で加熱される発熱体Dの発熱量が全域にわたり出来るだけ均等化されるよう設定される。
例えば、便座1の左半分について説明すると、誘導コイルCの配置領域を発熱体Dとの距離Gに基づいて、X1〜X5の5つの領域に区画する。先端側X5が距離Gの最も短い領域であり、次いで後端側領域X1の距離Gが短く、中間部領域はX4<X3<X2の順で距離が大きくなっているものとする。そして領域X1及びX5には、比較的断面積の小さい誘導コイルを2個ずつ配置し(C1,C2及びC6,C7)、領域X2〜X4には比較的断面積の大きい誘導コイルC3〜C5を配置する。各誘導コイルC1〜C7の断面積をそれぞれM1〜M7とすると、それらの関係は図面から分かるように、ほぼM6=M7<M1=M2<M5<M4<M3となっている。
このような条件で、発熱体Dを誘導加熱したときの発熱量を均等化するには、発熱体Dに作用する磁界の強さを均一にすればよいが、そのためには、発熱体Dとの距離Gが大きい誘導コイル又は断面積の大きい誘導コイルは、導線の捲き数を増やして磁束密度を高める必要がある。反対に距離Gが短い誘導コイル又は断面積の小さい誘導コイルは、磁束密度が小さくでもよいから、導線の捲き数を少なくすることができる。従って、図3に示す例では、各誘導コイルC1〜C7の巻き数をN1〜N7とすると、N6=N7<N1=N2<N5<N4<N3となるように設定しなくてはならない。(なお、便座1の右半分の誘導コイルC11〜C17についても、上記と同様である。)
【0022】
なお、暖房便座を製作する際の構造上の制約あるいはデザイン上の必要性等から、誘導コイルCの断面積M、誘導コイルCと発熱体Dとの距離G、及び、誘導コイルCそれぞれが受け持つ発熱体Dの誘導加熱領域の平面積Xs等は、あらかじめ製作時に規定され、変更の自由度が少ないと考えられる。しかるに、誘導コイルCの捲き数Nについては、比較的容易に変更できる。従って、上記各要素(M,G,Xs)を勘案して、誘導コイルCの捲き数Nを適宜設定することにより、発熱体Dの発熱量を所定値に設定することが可能である。
【0023】
ところで本例では、全ての誘導コイルについて、隣接する誘導コイルは導線の巻き方が反対となるように形成し、通電時に生成する磁束の方向が反対方向を向くように設定している。このためには、直列に接続する誘導コイルCの個数を偶数個にする。すなわち図3に示すように、14個の誘導コイルのうちC1,C3,C5,C7,C16,C14,C12は導線の巻き方を反時計回りとし、誘導コイルC2,C4,C6,C17,C15,C13,C11は導線の巻き方を時計回りとした。
【0024】
かかる構成を採用すると、次のような効果が得られる。図4(A)に示す如く、隣接する誘導コイルC1,C2の導線の捲き方向が反対であり、それらに矢印で示す方向に電流Iが流れた瞬間を考える。このとき生成される磁束Φ1,Φ2は、右ネジの法則により、誘導コイルC1では図面から手前側へ向かう方向(同図(B)においては上方)、誘導コイルC2では図面から奥側へ向かう方向(同図(B)においては下方)となる。そして同図(B)に示すように、誘導コイルC1から生成する磁束Φ1が隣接する誘導コイルC2へ収束し、誘導コイルC2から生成する磁束Φ1が誘導コイルC2へ収束するような磁界が形成される。その結果、外部への磁束漏洩が少なくなり、発熱体Dを効率よく誘導加熱することができる。また、人体や電子機器への悪影響も抑えられる。さらに、磁束Φ1,Φ2が誘導コイルC1,C2の境界部Rを通過するので、発熱体Dにおける誘導コイルCの直上部位だけでなく、境界部Rに対応する部位をも確実に誘導加熱することができ、よって発熱体Dの全域にわたる均一加熱が可能になっている。
【0025】
本例では、制御回路13から暖房装置Hへ通電するための給電装置30を次のように構成した。図1に示す如く、便座支持体10の膨出部11に、一次コイルL1を外周に巻き付けた一次側コアK1を配置する。一次コイルL1は制御回路13に接続され、電力の供給を受ける。他方、二次コイルL2を巻き付けた二次側コアK2は、便座1の後端部であって、便座1が伏倒位置(使用者が着座可能である位置)に在るとき、前記一次側コアK1と近接して対向する位置に配置する。二次コイルL2は調整回路4と接続される。コアK1,K2はコ字状とし、その中間部にコイルL1,L2を巻き付ける。コアK1,K2の材質は、フェライト・電磁軟鉄・ケイ素鋼・炭素鋼・その他の鉄合金など、磁芯材料として用いられる強磁性体材料である。
【0026】
前記の如く構成された給電装置30は、便座1が伏倒位置に在るとき、便座支持体11側の一次側コアK1の端面と、便座1側の二次側コアK2の端面とが近接して対向する。そして、制御回路13から一次コイルL1へ適当な周波数の交流電力を与えると、相互誘導作用により、二次コイルL2に起電力が発生する。さらに、この電力が調整回路4で高周波電流に変換されて暖房装置Hの誘導コイルCへ供給され、誘導コイルCの電磁誘導作用により発熱体Dが加熱されて、便座1表面を所望温度に昇温させる。
【0027】
本発明では、直列に接続した各誘導コイルC1〜C7・C11〜17の巻き数及び断面積を、発熱体Dとの距離に応じて調整し、発熱体Dの発熱量が全域でなるべく均等化されるように設定した。それ故、暖房装置Hに通電すれば、便座1の表面が均一にむらなく暖められるから、熱すぎたり冷たかったりする部位を生じさせて使用者に不快感を与えるおそれがない。また誘導加熱による発熱体Dの昇温は短時間になされるから、通電を始めれば、すぐに便座1が暖かくなる。従って、例えば便座支持体10に人体検知センサーを設け、不使用時は通電を停止しておき、使用者を検知したときに暖房装置Hに通電するように構成すれば、節電効果を得ることが可能である。
【0028】
なお図示は省略したが、便座1を揺動可能に支持する支持軸20を、一次コイル及び二次コイルを巻き付けるコアに利用して給電装置30を構成することも可能である。
【0029】
[第2の実施形態]
図5は、本発明に係る暖房装置Hを、浴室Y及び脱衣室Zの床暖房装置に応用した実施形態を示すものである。同図(A)に示す如く、本例では、浴室Yに設置される浴槽21の縁部22表面及び洗い場23表面、並びに、浴室Yに隣接し扉24で仕切られた脱衣室Zの床25表面に発熱体D1〜D3を配置し、各発熱体D1〜D3の下側領域における躯体床F上に、誘導コイルC21〜C23を配置した。なお図示は省略したが、洗い場23や脱衣室床25を構成する防水パン23aと、各誘導コイルC21〜C23との間の空間に、適宜の断熱材を配置してもよい。
【0030】
図5(B)に、一部(二点鎖線で囲んだ部分h)を拡大して示す如く、導電性材料から成る発熱体D1〜D3を、浴槽縁部22の上面、洗い場23の上面、脱衣室床25の上面に配置した場合、その上を樹脂シート23bなどで被覆する構成とするのが望ましい。また発熱体D1〜D3が表面近くに位置するから、誘導加熱により、浴槽縁部22・洗い場23・脱衣室床25の昇温が迅速に感得される。但し施工状況に応じ、発熱体D1〜D3を、浴槽縁部22の下面側や、洗い場23及び脱衣室床25を構成する防水パン23aの下面側に配置することも妨げない。また誘導コイルC21〜C23それぞれを、一枚又は数枚の支持盤26上に固定してユニット化すれば、施工が容易になる。
【0031】
図5(A)に示す如く、躯体床F上に配置される各誘導コイルC21〜C23と、浴槽縁部22・洗い場23・脱衣室床25の上面に配置される各発熱体D1〜D3との距離G1〜G3はそれぞれ異なっている。従って、これら距離G1〜G3の違いに応じ、各誘導コイルC21〜C23の巻き数及び断面積を調整して、通電時に発熱体D1〜D3を通過する磁束密度がほぼ等しくなるように設定する。それにより、直列に接続した各誘導コイルC21〜C23に通電するだけで、浴槽縁部22・洗い場23・脱衣室床25をほぼ等しい温度に暖めることが可能である。
【0032】
なお、浴槽縁部22と洗い場23と脱衣室床25とで、暖房温度を変えたいときには、
誘導コイルC21〜C23の巻き数を調整することにより、部位によって温度の異なる暖房温度Sを提供することもできる。
【0033】
[第3の実施形態]
図6は、本発明に係る暖房装置Hを、階段30等の段差構造に適用した実施形態を示すものである。階段30の各段を構成する板材31〜34の表面に、発熱体D11〜D14を配置し、各発熱体D11〜D14の下方であって躯体床F上に、誘導コイルC31〜C34を配置する。各誘導コイルC31〜C34の捲き数は、発熱体D11〜D14との距離に応じて調整する。なお、誘導コイルC31〜C34は、支持盤26上に固定してユニット化したものを施工してもよい。
【0034】
本例では、直列に接続した各誘導コイルC21〜C23に通電すると、発熱体からの距離が大きいほど、誘導コイルが生成する磁界が強くなるように設定されている。従って、躯体床F上に平面的に配置した誘導コイルC31〜C34で、階段30の各段上に配置した発熱体D11〜D14の発熱量がほぼ等しくなるように誘導加熱することができる。
【0035】
[第4の実施形態]
図7に、本発明に係る暖房装置Hを、タイル床40に適用した実施形態を示す。タイル床40を構成するタイル41〜43の表面に発熱体D21〜D23を配置し、各発熱体D11〜D14の下方であって躯体床F上に誘導コイルC41〜C43を配置する。誘導コイルC31〜C34は、支持盤26上に固定してユニット化してもよい。またタイル41〜43と誘導コイルC41〜C43との間に、適宜の断熱材46を充填してもよい。
【0036】
タイル床40が、厚みの薄いタイル41,42と、厚みの大きいタイル43とで構成されているとする。タイル41〜43はセラミック製なので、厚みの違いにより、発熱体D21〜D23と誘導コイルC41〜C43との間の空間透磁率が変化する。そこで本例では、誘導コイルC41〜C43の捲き数を、タイル41〜43の厚みに応じて設定した。すなわち、厚みの薄いタイル41,42の下方の誘導コイルC41,C42は捲き数を少なくし、厚みの大きいタイル43下方の誘導コイルC43は、捲き数を多くする。
【0037】
かかる構成により、直列に接続した誘導コイルC21〜C23に通電すると、タイル厚みに応じた強さの磁界が生成されるから、タイル41〜43上に配置した発熱体D11〜D14を均等に発熱させることができる。
【0038】
図示は省略するが、タイル床40を寸法の異なるタイルで構成し、その下方に配置する誘導コイルの断面積を、タイル寸法に合わせて変える場合が考えられる。この場合は、断面積の小さい誘導コイルは捲き数を少なくし、断面積の大きい誘導コイルは捲き数を多くすればよい。
【0039】
なお、各タイル41〜43間を目地44,45で絶縁すれば、各発熱体D21〜D23の誘導加熱を独立させることができる。従って、誘導コイルC21〜C23の捲き数を適宜調整することにより、タイル41〜43ごとに異なる加熱状態を設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るものであって、暖房便座装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るものであって、暖房便座装置における便座の要部を断面して示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るものであって、誘導コイルの巻き方を説明する概略平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るものであって、図(A)は誘導コイルが生成する磁束の状況を説明するため平面図、図(B)は同正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るものであって、図(A)は浴室及び脱衣室に適用した暖房装置の概略構成を示す断面図、図(B)は図(A)において二点鎖線で囲んだ部分hの拡大断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るものであって、階段に適用した暖房装置を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るものであって、タイル床に適用した暖房装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
C…誘導コイル D…発熱体 G…誘導コイルと発熱体との距離 H…暖房装置 S…暖房便座装置 W…電源 1…便座 1a…表面材 1b…底板 2…取付腕部 4…調整回路 10…便座支持体 11…膨出部 13…制御回路 14…スイッチ基板 20…支持軸 30…給電装置 K1…一次側コア K2…二次側コア L1…一次コイル L2…二次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備又は機器の表面又は表面材の裏面に導電性材料より成る発熱体が配置され、該発熱体から所定距離を置いて誘導コイルが配置され、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになされた暖房装置において、複数の誘導コイルが直列に接続され、各誘導コイルと発熱体との間の距離又は透磁率が異なる部位が存在し、当該距離又は透磁率の違いに応じ誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を調整して、発熱体の発熱量を均等化したことを特徴とする暖房装置。
【請求項2】
便座の表面材の裏面に導電性材料より成る発熱体が配置され、便座の底板上に誘導コイルが配置され、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになされた暖房装置において、複数の誘導コイルが直列に接続され、各誘導コイルと発熱体との間の距離の違いに応じ誘導コイルの捲き数及び/又は断面積を調整して、発熱体の発熱量を均等化したことを特徴とする便座の暖房装置。
【請求項3】
隣接する誘導コイルは、通電時に生成する磁束の方向が互いに反対を向くように設定されている請求項1又は2に記載の暖房装置。
【請求項4】
電源部から電力の供給を受ける一次コイルを備えた受電部と、誘電コイルへ通電可能な二次コイルを備えた送電部とを有する給電手段が設けられ、受電部の一次コイルへ通電することにより、相互誘導作用によって、送電部の二次コイルを通じて誘導コイルへ電力を供給するように構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−236410(P2009−236410A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83643(P2008−83643)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】