説明

暗視野検査装置校正用基準ウエハ、暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法、暗視野検査装置の校正方法、暗視野検査装置およびウエハ検査方法

【課題】暗視野検査装置の測定結果を微小領域まで保証できる技術を提供する。
【解決手段】表面に不規則な凹凸パターンのマイクロラフネスが精度よく形成され、その表面のマイクロラフネスの粗さが保証されたバルクウエハを基準ウエハとして暗視野検査装置の校正を行う。マイクロラフネスは、薬液による化学処理により精度よく形成することができる。このようなマイクロラフネスをAFMを用いて測定し、測定値を基にヘイズ期待値を求める。その後、校正する暗視野検査装置で基準ウエハの表面のヘイズを測定してヘイズ実測値を求め、ヘイズ期待値とヘイズ実測値との差を求める。この差を基にヘイズ実測値がヘイズ期待値と合致するように暗視野検査装置のヘイズ測定パラメータを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野検査装置校正用基準ウエハ、暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造技術、暗視野検査装置の校正技術、暗視野検査装置およびウエハ検査技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2002−134581号公報(特許文献1)は、シリコンウエハの表面の微小凹凸を測定する時の基準となる基準ウエハについて言及し、その基準ウエハの製造に当たっては、局部エッチングの相対走査により表面に微小凹凸を形成する技術を開示している。また、前記局部エッチングでは、活性種ガスであるNF、CFまたはSFを使用することを開示している。
【0003】
特開2000−183017号公報(特許文献2、対応米国特許第6,463,941号明細書)は、ウエハのエッチングおよび洗浄等に用いる薬液の濃度を制御する薬液濃度制御装置を開示し、薬液の例としてアンモニアと過酸化水素水との混合液を開示している。
【0004】
特開平10−172940号公報(特許文献3)は、シリコンウエハ洗浄に用いる薬液の濃度が最適となるように調整を行うシリコンウエハ洗浄装置を開示し、薬液の例としてアンモニアと過酸化水素水との混合液を開示している。
【0005】
米国特許第6,830,943号明細書(特許文献4)は、半導体計測用の校正標準を含むウエハを開示し、そのウエハの表面の粗さが1Å未満であること、およびそのウエハの表面に形成された校正層は金属酸化物等から形成されていることを開示している。
【特許文献1】特開2002−134581号公報
【特許文献2】特開2000−183017号公報
【特許文献3】特開平10−172940号公報
【特許文献4】米国特許第6,830,943号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの基板材料となる単結晶シリコンウエハ(以下、単にウエハと記す)は、チョクラルスキー法(CZ法)等によって引き上げられた単結晶シリコンインゴットをワイヤソー切断等によってスライス加工し、その後、研削、エッチング、表面の鏡面研磨加工およびウエット洗浄処理等を経て鏡面ウエハとして作成される。
【0007】
近年、半導体デバイスの微細化および高性能化に伴って、基板材料となるウエハに対しては、表面の高品質化が要求されてきている。ここで、ウエハの表面品質とは、結晶欠陥、平坦度、ナノトポグラフィ、パーティクル、金属不純物、有機物、マイクロラフネスおよび自然酸化膜等が指標となっている。
【0008】
半導体デバイスでは、ウエハ表面のマイクロラフネスが微小に変化するだけで特性の劣化を招く虞がある。そこで、本発明者らは、上記のウエハの表面品質の指標のうち、マイクロラフネスを暗視野検査装置を用いて測定する技術について検討している。暗視野検査装置によるマイクロラフネスの測定は、鏡面ウエハに照明を照射し、ヘイズを光学式に測定することで実施している。ヘイズとは、鏡面ウエハに光を照射した時に、ウエハ表面の粗さ(凹凸)に起因して全周方向に光が散乱されるウエハの表面状態を言い、その散乱光を受光することで、ヘイズの粗さの平均値を算出することができる。本発明者らは、暗視野検査装置におけるそのヘイズ測定機能を校正するに当たって、以下の課題が存在することを見出した。
【0009】
すなわち、上記暗視野検査装置におけるそのヘイズ測定機能を高精度で校正するに当たっては、校正に用いる基準用ウエハの表面に、たとえば半導体デバイス製造で用いられる薄膜のうちの最も微小な粗さである0.1nm〜0.2nm程度の極微小なマイクロラフネスが再現されていることが求められる。そのため、そのような極微小なマイクロラフネスを基準用ウエハの表面に高精度で形成することが課題となっている。
【0010】
本発明の目的の一つは、表面に極微小なマイクロラフネスが形成された校正用基準ウエハを作成できる技術を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的の他の一つは、同一機種の暗視野検査装置間での測定能力差を低減できる技術を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的の他の一つは、暗視野検査装置の測定結果を微小領域まで保証できる技術を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的の他の一つは、暗視野検査装置の測定能力の経時変化を検出して調整できる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
(1)本発明では、薬液を用いてウエハのマイクロラフネスを制御する。
【0017】
(2)本発明では、薬液を用いてマイクロラフネスを制御されたウエハ(以下、暗視野検査装置校正用基準ウエハと称す。)を用いて、暗視野検査装置を校正する。
【0018】
(3)本発明では、暗視野検査装置校正用基準ウエハを用いた暗視野検査装置の校正に、走査型プローブ顕微鏡を用いる。
【0019】
(4)本発明では、暗視野検査装置校正用基準ウエハを用いて校正された暗視野検査装置を用いて、ウエハの検査を行う。
【0020】
(5)本発明による暗視野検査装置校正用基準ウエハは、
表面に薄膜の形成されていないバルクウエハから形成され、
前記表面には、不規則パターンのマイクロラフネスに起因するヘイズが形成され、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものであり、
前記ヘイズを計測することで暗視野検査装置の校正が行われるものである。
【0021】
(6)本発明による暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法は、
(a)表面に薄膜の形成されていないバルクウエハを用意する工程、
(b)前記バルクウエハの前記表面と薬液とを化学反応させ、前記バルクウエハの前記表面に不規則パターンのマイクロラフネスを形成する工程、
を含み、
前記マイクロラフネスは、ヘイズを形成し、
前記ヘイズを計測することで暗視野検査装置の校正が行われるものである。
【0022】
(7)本発明による暗視野検査装置の校正方法は、
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値との差を分析する工程、
(e)前記差を基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含み、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていないバルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものである。
【0023】
(8)本発明による暗視野検査装置は、表面に薄膜、素子または配線のパターンが形成されていない第1バルクウエハの表面の異物の有無または粗さを検査する暗視野検査装置であって、
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値との差を分析する工程、
(e)前記差を基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含む工程によって校正され、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていない第2バルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものである。
【0024】
(9)本発明によるウエハ検査方法は、暗視野検査装置を用い、表面に薄膜、素子または配線のパターンが形成されていない検査対象の第1バルクウエハを検査するウエハ検査方法であって、
前記暗視野検査装置は、
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に前記暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値との差を分析する工程、
(e)前記差を基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含む工程によって校正され、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていない第2バルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものである。
【発明の効果】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0026】
(1)表面に極微小なマイクロラフネスが形成された校正用基準ウエハを作成することができる。
【0027】
(2)同一機種の暗視野検査装置間での測定能力差を低減できるようになる。
【0028】
(3)暗視野検査装置の測定能力を微小領域まで保証できるようになる。
【0029】
(4)暗視野検査装置の測定能力の経時変化を検出して調整できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本願発明を詳細に説明する前に、本願における用語の意味を説明すると次の通りである。
【0031】
暗視野検査装置とは、試料表面上の凹凸に光を照射すると凹凸面から光が散乱することを利用し、その散乱した光を受光することでその試料表面の微小な凹凸を検出する検査装置を言う。ウエハの表面検査においては、表面の微細な傷(数10Å程度)、凹凸、段差および異物等の有無の判定に用いられる。
【0032】
バルクウエハとは、半導体素子の部材となる表面層がまだ形成されていないウエハを言う。
【0033】
鏡面ウエハとは、研磨工程により鏡面仕上げが施されたウエハを言い、一方の表面のみを鏡面仕上げした片面鏡面ウエハと、両方の表面を鏡面仕上げした両面鏡面ウエハとがある。
【0034】
ヘイズまたはマイクロヘイズとは、鏡面ウエハに光を照射した時に、ウエハ表面の粗さ(凹凸)に起因して全周方向に光が散乱されるウエハの表面状態を言い、その散乱光を受光することで、ヘイズの粗さの平均値を算出することができる。
【0035】
マイクロラフネスとは、ウエハ表面においての凹凸間隔(空間波長レンジλ)が約100μm未満の表面粗さ成分を言う。
【0036】
APM(Ammonia-Hydrogen Peroxide Mixture)液またはSC−1(RCA Standard Clean 1(RCA社標準洗浄第1液))液とは、アンモニア水:過酸化水素水:水(純水(DIW:De-Ionized Water))の容積配合比が1:1:5〜1:1:50のシリコンウエハの洗浄液を言う。約40℃〜90℃のAPM液にシリコンウエハを浸漬することで、シリコンウエハ表面の有機性汚れおよび付着粒子を除去できる。APM液は、キレート剤および界面活性剤の一方または両方を添加して用いられることもある。
【0037】
ここで、アンモニアはウエハをエッチングする(削る)性質を有し、過酸化水素水はシリコンウエハを酸化する(エッチングを抑制する性質)性質を有する。このように、本実施の形態で用いる薬液の一つの側面としては、薬液がウエハをエッチングする性質と、ウエハのエッチングを抑制する性質とを有していることにある。
【0038】
HPM(Hydrochloric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)液またはSC−2(RCA Standard Clean 2(RCA社標準洗浄第2液))液とは、塩酸:過酸化水素水:水(純水(DIW))の容積配合比が1:1〜2:5〜7のシリコンウエハの洗浄液を言う。シリコンウエハを浸漬することで、シリコンウエハ表面の金属不純物を除去できる。
【0039】
SPM(Sulfuric acid-Hydrogen Peroxide Mixture)液とは、濃硫酸と過酸化水素水とを配合したシリコンウエハの洗浄液を言う。SPM液は、界面活性剤およびフッ酸の一方または両方を添加して用いられることもある。
【0040】
DHF(Diluted Hydrofluoric acid)液とは、約1:100で希釈したフッ酸水溶液からなるシリコンウエハの洗浄液を言う。室温のDHF液にシリコンウエハを浸漬することで、シリコンウエハ表面の酸化シリコン被膜を除去できる。DHF液は、界面活性剤、過酸化水素水、塩酸およびイソプロピルアルコールのうちの1つ以上を添加して用いられることもある。
【0041】
BHF(Buffered Hydrofluoric acid)液とは、フッ化アンモニウム液、フッ酸および水素結合水(HO)が混合されたシリコンウエハの洗浄液を言う。BHF液にシリコンウエハを浸漬することで、シリコンウエハ表面の酸化シリコン被膜を除去できる。BHF液は、界面活性剤、過酸化水素水、塩酸およびイソプロピルアルコールのうちの1つ以上を添加して用いられることもある。
【0042】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)とは、接近する2つの物体間には引力や斥力が働く現象を利用して、試料に近接させた微細な探針を機械的に走査させながら、これらの力を検出し、試料表面の原子分子レベルの凹凸を画像化する顕微鏡を言う。なお、AFMは走査型プローブ顕微鏡の一種である。
【0043】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0044】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0045】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0046】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0047】
また、材料等について言及するときは、特にそうでない旨明記したとき、または、原理的または状況的にそうでないときを除き、特定した材料は主要な材料であって、副次的要素、添加物、付加要素等を排除するものではない。たとえば、シリコン部材は特に明示した場合等を除き、純粋なシリコンの場合だけでなく、添加不純物、シリコンを主要な要素とする2元、3元等の合金(たとえばSiGe)等を含むものとする。
【0048】
また、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0049】
また、本実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0050】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0051】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るウエハの表面を検査する暗視野検査装置の説明図である。
【0052】
図1に示すように、本実施の形態の暗視野検査装置は、試料ステージ1、ステージ駆動部2、照明光源3、散乱光検出部4、信号合成部5、全体制御部6、機械制御部7、情報表示部8、入力操作部9および記憶部10等を備えた構造となっている。
【0053】
試料ステージ1は、その上に載置された検査対象の試料であるウエハ11を保持する。ステージ駆動部2は、照明光源3から定点(スポット)に照射される照明光12がウエハ11上を走査するように試料ステージ1を駆動させる。
【0054】
ステージ駆動部2は、回転軸13を中心に試料ステージ1を回転させる回転駆動部14、試料ステージ1をウエハ11の径方向に移動させるスライド駆動部15を備えている。照明光源3によって試料ステージ1上のウエハ11に照明光12を照射している時には、試料ステージ1を回転駆動部14により回転させつつスライド駆動部15によってウエハ1の径方向に移動させることで、照明光12がウエハ11上に渦巻状に走査される構成となっている。
【0055】
散乱光検出部4は、照明光12のスポットに対する位置が異なる複数の検出器16A〜16Dを有している。図1では、低角度位置に配設した検出器16A、16Bと、高角度位置に配設した検出器16C、16Dとの計4つの検出器を図示したが、検出器の数は限定するものではなく、それぞれ照明光スポットからの方位角および仰角の少なくとも一方が異なるように2つ以上の検出器が配置されていればよい。各検出器16A〜16Dは、照明光源3から照明光12が照射されることでウエハ11の表面から発生する散乱光17をそれぞれ検出する。検出器16A〜16Dの出力には、高周波成分である欠陥の検出信号(欠陥信号)と低周波成分であるヘイズ信号が含まれる。
【0056】
また、散乱光検出部4において、各検出器16A〜16Dには、それぞれ増幅器18A〜18D、およびA/D変換器19A〜19Dが接続されている。各検出器16A〜16Dからの検出信号は、増幅器18A〜18Dを介してそれぞれ増幅され、A/D変換器19A〜19Dを介してディジタル信号化される。
【0057】
信号合成部5は、ディジタル信号化された検出器16A〜16Dからの検出信号を指定された演算条件(プログラム)に従って合成する。信号合成部5における合成信号の演算条件は、事前に定められた固定的な条件ではなく、入力操作部9によりオペレータが適宜指定変更可能なものである。信号合成部5で合成された合成信号のデータは、合成信号の基になった検出器16A〜16D毎の検出信号のデータとともに記憶部10に出力されて記録される。これらデータとしては、たとえば検出した欠陥の個々の位置(検査対象の試料であるウエハ11面内のXY座標)および大きさ等である。また、たとえば電子顕微鏡を用いた検査装置等、他の検査装置や製造装置等にもネットワークを介して接続し、それらのデータを出力可能な構成としてもよい。
【0058】
全体制御部6は、作業の工程(検査条件設定、結果表示、解析および演算式指定)に合わせた情報の表示および入出力に関する信号を処理し、装置の全体制御を行う。たとえば、入力操作部9からの操作信号や記憶部10に格納された対応のプログラムを基に、機械制御部7に指令信号を出力したり、信号合成部5における合成信号の演算条件を変更したりする役割を果たす。機械制御部7は、全体制御部6からの指令信号を受けて回転駆動部14およびスライド駆動部15等の駆動機構を制御する。その他、全体制御部6は、信号合成部5を介して入力される合成信号および各検出器16A〜16Dからの検出信号を記憶部10に出力して記録させたり、それら信号を基に情報表示部8への表示信号を生成し情報表示部8に画像を表示させたりする役割も果たす。
【0059】
入力操作部9は、上記のように信号合成部5による検出信号の合成条件の入力操作および各装置の動作等を指示するためのものである。
【0060】
情報表示部8は、入力操作部9により指定された条件に従って信号合成部5により合成された合成信号を基に構築された試料像(以下、合成試料像と記す)、対応の検出器からの検出信号を基にそれぞれ構築された個々の検出器に対応する複数の試料像(以下、個別試料像と記す)、検出データ、および検出条件(レシピ)等を表示する。たとえば、検査終了後は検査結果を表示し、解析時は合成試料像と個別試料像を同一画面上に表示する。合成試料像と個別試料像は切り替え表示されるようにしてもよい。
【0061】
記憶部10は、各種制御および演算処理に必要なプログラム、定数、検査結果(合成試料像および個別試料像のデータ)、および入力操作部9により設定された合成条件等を格納している。個別試料像のデータは、検出器16A〜16D毎に、検出器のアドレス情報とともに記憶される。
【0062】
前述したように、信号合成部5による検出信号の合成は、入力操作部9にてオペレータが設定した条件に従って実行される。この設定は、入力操作部9の入力操作によって随時変更可能である。
【0063】
上記のような本実施の形態の暗視野検査装置によって表面が検査されるのは、いわゆるバルクウエハ(第1バルクウエハ)であり、単結晶シリコンのバルクウエハを例示することができる。たとえば、表面にエピタキシャル層等の薄膜層が形成されている場合には、表面に規則的な凹凸が形成されてしまい、前述の照射光12がウエハ11を照射した際に、所望のヘイズではなく、凹凸状態とは関係のない結晶方位等に起因する薄膜干渉によって光学的な特異模様が出現してしまい、正確な測定結果が得られなくなってしまうからである。そのため、本実施の形態の暗視野検査装置によって表面を検査するのはバルクウエハが好ましい。
【0064】
図2は、情報表示部8に表示された解析画面の一例を表した説明図である。
【0065】
図2に示すように、解析画面20には、計8つの個別マップ21A〜21Hの表示領域21、および個別マップ21A〜21Hのうちから選択されたものを拡大表示する拡大マップ22Aの表示領域22が配置されている。図2に示した例では、散乱光検出部4(図1参照)が、4方位に配置された低角度の検出器L1〜L4と4方位に配置された高角度の検出器H1〜H4の計8つの検出器を備えているものとする。
【0066】
個別マップ21Aには、対応する低角度の検出器L1により検出された欠陥が、ウェハマップ上に重ねて表示された個別試料像の形で表示されている。個別マップ21B〜21Hも同様に、それぞれ対応の検出器L2〜L4、H1〜H4による個別試料像が表示されている。個別マップ21A〜21Hは、実際の検出器L1〜L4、H1〜H4のレイアウトに対応した配置で表示するようにしてもよい。
【0067】
拡大マップ22Aには、入力操作部9(図1参照)による入力操作または個別マップ21A〜21Hのタッチ操作により選択された、個別マップ21A〜21Hのいずれか1つが拡大表示される。また、解析画面20中の拡大マップ22Aの下方領域には、拡大マップ22Aに表示された欠陥の寸法のヒストグラムが表示される。
【0068】
これにより、各個別マップ21A〜21Hのそれぞれについて、拡大マップ22Aおよびヒストグラムを順次確認し、寸法別の欠陥分布の確認、ノイズレベルのレンジの差異を判断することができる。また、個別マップ21A〜21Hを解析画面20上に一覧表示することにより、欠陥の分布の検出器方位への依存傾向も見定めることができる。
【0069】
ところで、上記欠陥分布を精度よく検出するためには、予め暗視野検査装置が精度よく校正され、測定結果が保証されていることが求められる。特に、半導体デバイスの製造に当たっては、ウエハ表面のマイクロラフネスが微小に変化するだけで特性の劣化を招く虞があることから、微小なウエハ表面の欠陥を検出してウエハの表面の品質を保証する必要がある。
【0070】
そこで、本実施の形態では、まず表面に不規則(ランダム)な凹凸パターンのマイクロラフネスが精度よく形成され、その表面のマイクロラフネスの粗さが保証されたバルクウエハ(第2バルクウエハ)を基準ウエハとして暗視野検査装置の校正を行う。ここで、図3は、その基準ウエハとなるバルクウエハを用意してから暗視野検査装置の校正を行うまでの概略を説明するフローチャートである。
【0071】
上記基準ウエハとなるバルクウエハは、鏡面ウエハである。このような鏡面ウエハの表面に対し、薬液による化学(ケミカル)処理を施し、その表面にマイクロラフネスを精度よく形成する(工程P1)。この時、バルクウエハが単結晶シリコンより形成されている場合には、その薬液としては、APM液(SC−1液)、HPM液(SC−2液)、SPM液、DHF液、BHF液、およびフッ酸とオゾン水との混合水溶液(フッ酸濃度1%程度)等のシリコンウエハ洗浄液のうちの1つ以上を選択して用いることを例示できる。たとえば、APM液を用いた場合には、APM液中のアンモニアの濃度、鏡面ウエハとAPM液との接触時間、もしくはそれらの両方を制御することにより、鏡面ウエハの表面に不規則な凹凸パターンのマイクロラフネスを所望の粗さで精度よく形成することができる。すなわち、そのマイクロラフネスに対応した所望のヘイズを精度よく作り出すことができる(図4参照)。その所望のマイクロラフネスの粗さは、たとえば半導体デバイス製造で問題視される約0.1nmである。このように形成したマイクロラフネス(ヘイズ)は、経時的な形状変化が起こり難く、表面状態を保つことができる。
【0072】
また、上記薬液としてフッ酸とオゾン水との混合水溶液を用いた場合には、オゾン水による鏡面ウエハの表面での酸化層の形成と、フッ酸によるその酸化層のエッチングとが同時に起こることでマイクロラフネスが形成されていく。ここで、オゾン水による酸化層形成処理と、希フッ酸による酸化層のエッチング処理を別々に行うと、酸化とエッチングとを別々に制御できることになる。これを利用することにより、マイクロラフネスの荒さを精度よく制御することが可能となる。
【0073】
次に、AFMを用いて上記工程P1で形成したマイクロラフネスの粗さ(大きさ)を測定する(工程P2)。この時、AFMによる測定領域としては、AFMのビーム径相当以上の範囲とし、測定座標の誤差も考慮して、数mmの領域で急激な変化が見られない領域(局所的なピークが存在しない個所)を選択し、後述するヒストグラム、断面波形および検出量の分布がわかるようにする。AFMによる測定後には、測定されたプロファイルにおいて、鏡面ウエハの表面の傷や異物に起因するスパイク状の凹凸が存在しないことを確認する。そのようなスパイク状の凹凸は、次工程のシミュレーションの前提に外れるため、暗視野検査装置による検出量と一致しなくなってしまうからである。
【0074】
次に、工程P2で測定されたマイクロラフネスの粗さを基にシミュレーションを行い、鏡面ウエハの表面に作り出されたヘイズのシミュレーション値、すなわちヘイズ期待値を求める(工程P3)。この時、工程P2で測定されたマイクロラフネスの粗さを基にBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)値を算出する。BRDF値は、散乱光17(Iin)と照明光12(Idet)との比(Idet/Iin)である。このBRDF値と暗視野検査装置の諸パラメータからヘイズ期待値を算出する。
【0075】
ここで、上記BRDF値の算出についてさらに詳しく説明する。
【0076】
工程P2におけるAFMによるマイクロラフネスの粗さの測定は、測定領域内でX方向およびX方向と直行するY方向を規定して行われる。工程P3では、工程P2で測定されたマイクロラフネスの粗さの各値について、各Y位置に対するX方向のマイクロラフネスの粗さの変化を一次元フーリエ変換する。そして、この一次元フーリエ変換の結果をY方向で平均化し、空間周波数fの関数であるPSD(Power Spectrum Density)関数S(f)にフィッティングし、PSD関数S(f)の各パラメータ(定数)を決定する。これは、マイクロラフネスに光を照射した際の散乱光の強度と空間周波数との関係は、一次元フーリエ変換により求められたPSD関数S(f)と同じとなるからである。このように各パラメータが決定されたPSD関数S(f)を基に、AFMにより測定されたマイクロラフネスの粗さをPSD光量(単位はW)に変換する。次いで、このPSD光量を基に、検出器(16A〜16D)、すなわち光電子増倍管(Photomultiplier Tube;PMT)に入射する光量に相当するパワー密度を電気信号に変換する。次いで、電気信号に変換されたそのパワー密度を基に、光電子増倍管へ印加される電圧から求められるゲインを加味して出力電流に換算する。その後、増幅器(18A〜18D)によって電流値から電圧値へ変換され、さらにその電圧値がA/D変換器(19A〜19D)の出力するディジタル値へと変換され、その後合成されることによって、前述のヘイズ期待値となる。次に、校正する暗視野検査装置でマイクロラフネスが形成された上記基準ウエハの表面のヘイズを測定し、ヘイズ実測値を求める(工程P4)。ヘイズの実測に当たっては、基準ウエハの表面に照明光源3から照明光12を照射し、基準ウエハの表面から発生する散乱光を検出することで行われる。検出器(16A〜16D)はその散乱光を受光して電流を出力し、増幅器(18A〜18D)は検出器(16A〜16D)から出力された電流値に対応する出力電圧を出力する。さらにその電圧値がA/D変換器(19A〜19D)によってディジタル値へと変換され、さらに信号合成部5でそのディジタル値が合成されることによって、ヘイズ実測値として出力される。次いで、工程P3で求めたヘイズ期待値と工程P4で求めたヘイズ実測値との差を求め(工程P5)、この差を基にヘイズ実測値がヘイズ期待値と合致するように暗視野検査装置のヘイズ測定パラメータを調整する(工程P6)。
【0077】
以下、上記工程P1〜P4を個別にさらに詳細に説明する。
【0078】
暗視野検査装置を校正するに当たっては、ある一点、たとえば前述の約0.1nmのマイクロラフネス(ヘイズ)だけの検出精度を校正するだけではなく、幅広い所定の数値範囲、たとえば約0.1nm〜1.0nmのマイクロラフネス(ヘイズ)の検出精度も校正する。そこで、工程P1では、複数枚の鏡面ウエハを用意し、それぞれに異なる粗さのマイクロラフネスを形成する。本実施の形態では、3枚以上の鏡面ウエハを用意し、約0.1nm〜1.0nmの間で一定値おきに鏡面ウエハの枚数分だけマイクロラフネスの粗さを設定し、その粗さのマイクロラフネスを鏡面ウエハの各々に形成することを例示できる。すなわち、鏡面ウエハ毎に異なるマイクロラフネス(ヘイズ)が形成されることになる。従って、工程P2では、鏡面ウエハ毎にAFMを用いたマイクロラフネスの粗さ(大きさ)の測定が行われ、工程P3では、鏡面ウエハ毎にヘイズ期待値を求め、工程P4では、鏡面ウエハ毎にヘイズ実測値を求め、工程P5では、鏡面ウエハ毎にヘイズ期待値とヘイズ実測値との差を求めることになる。このような複数枚の鏡面ウエハを用いる場合については、図5を用いてさらに後述する。
【0079】
また、複数枚の鏡面ウエハを用い、鏡面ウエハ毎に異なる粗さのマイクロラフネスを形成する代わりに、1枚の鏡面ウエハの表面を複数の領域(ヘイズ領域)に区画し、それら領域毎に上記一定値おきに設定した粗さのマイクロラフネスを形成することも例示できる。すなわち、1枚の鏡面ウエハの表面で区画された領域毎に異なるマイクロラフネス(ヘイズ)が形成されることになる。従って、工程P2では、区画された領域毎にAFMを用いたマイクロラフネスの粗さ(大きさ)の測定が行われ、工程P3では、区画された領域毎にヘイズ期待値を求め、工程P4では、区画された領域毎にヘイズ実測値を求め、工程P5では、区画された領域毎にヘイズ期待値とヘイズ実測値との差を求めることになる。このような複数の領域が表面に区画された鏡面ウエハを用いる場合については、図6を用いてさらに後述する。
【0080】
ここで、上記工程P4の暗視野検査装置によるヘイズの実測について図5および図6を用いてさらに詳しく説明する。
【0081】
前述したように、図5では、複数枚の基準ウエハを用いて暗視野検査装置によるヘイズの実測を行う場合を示したものであり、3枚の基準ウエハ23A〜23Cを用いた場合を図示している。これら基準ウエハ23A〜23Cは、それぞれ暗視野検査装置が有するスロット1〜3に個別に収容されている。また、基準ウエハ23A〜23Cの表面に形成されたマイクロラフネスの粗さは、たとえば基準ウエハ23A、23B、23Cの順で小さくなっている。
【0082】
ヘイズの実測に当たっては、基準ウエハ23A〜23Cのそれぞれの表面にターゲット領域を設定し、そのターゲット領域内の複数個所で出力電圧の測定を行う。この時、出力される出力電圧値は、信号合成部5で合成された数値である。そして、取得した出力電圧値からヒストグラムを作成し、最頻値となった出力電圧値を検出電圧値とし、この検出電圧値をヘイズ値に変換する。なお、図5では、これら検出電圧値およびヘイズ値以外に、ヘイズ期待値(変換前の電圧値)も図示している。
【0083】
一方、図6では、表面に複数の領域(ヘイズ領域)が区画された1枚の基準ウエハ23Dを用いて暗視野検査装置によるヘイズの実測を行う場合を示したものである。
【0084】
表面に複数の領域(ヘイズ領域)を区画する場合には、互いに平行な帯状に区画する場合(図6の左側の基準ウエハ23Dの場合)と、基準ウエハ23Dの中心から同心円状に区画する場合(図6の右側の基準ウエハ23Dの場合)とを例示できる。同心円状に区画する場合には、各領域の境界でのマイクロラフネスの粗さの明確な差はなくなるが、その理由については基準ウエハ23Dの作成方法と共に後述する。図6に示す例では、基準ウエハ23Dの表面にはマイクロラフネスの粗さが異なる3つの領域(ヘイズ領域)が規定され、各領域には、それぞれヘイズ測定が行われるターゲット領域24A〜24Cが設定され、マイクロラフネスの粗さは、たとえばターゲット領域24A、24B、24Cの順で小さくなっている。
【0085】
図5に示した複数枚の基準ウエハ23A〜23Cを用いた場合でも説明したが、ヘイズの実測に当たっては、ターゲット領域24A〜24C毎に複数個所で出力電圧の測定を行う。この時、出力される出力電圧値は、信号合成部5で合成された数値である。そして、ターゲット領域24A〜24C毎に取得した出力電圧値からヒストグラムを作成し、最頻値となった出力電圧値を検出電圧値とし、この検出電圧値をヘイズ値に変換する。なお、図6では、これら検出電圧値およびヘイズ値以外に、ヘイズ期待値(変換前の電圧値)も図示している。このように、表面に複数の領域(ヘイズ領域)が区画された1枚の基準ウエハ23Dを用いた場合には、複数枚の基準ウエハ23A〜23Cを用いた場合に比べて、基準ウエハの暗視野検査装置へのロードおよびアンロードに要する時間と、ヘイズの実測に要する時間とを短縮できるので、定期的に暗視野検査装置の校正を行う場合には、特に校正時間の短縮効果を奏することができる。
【0086】
ここで、図6に示した基準ウエハ23Dの作成方法について図7および図8を用いて説明する。図7は、複数の領域(ヘイズ領域)が互いに平行な帯状で区画される場合であり、図8は、複数の領域(ヘイズ領域)が基準ウエハ23Dの中心から同心円状に区画される場合である。
【0087】
図7に示すように、複数の領域(ヘイズ領域)が互いに平行な帯状で区画される場合には、まず、基準ウエハ23Dの表面にマイクロラフネスを形成する前述の薬液25に、基準ウエハ23Dのうちのターゲット領域24Aが設定される領域(第1ヘイズ領域)のみを所定時間浸漬し、ターゲット領域24Aが設定される領域のみにマイクロラフネスを形成する。ただし、この時点でターゲット領域24Aが設定される領域に形成されるマイクロラフネスの粗さは、最終的にターゲット領域24Aが設定される領域に形成されるマイクロラフネスの粗さとはならない。次いで、薬液25に基準ウエハ23Dのうちのターゲット領域24A、24Bが設定される領域のみを所定時間浸漬し、ターゲット領域24Bが設定される領域(第2ヘイズ領域)にマイクロラフネスを形成し、ターゲット領域24Aが設定される領域に形成されるマイクロラフネスをさらに粗くする。次いで、基準ウエハ23D全体を薬液25に所定時間浸漬し、ターゲット領域24Cが設定される領域にマイクロラフネスを形成し、ターゲット領域24A、24Bが設定される領域に形成されるマイクロラフネスをさらに粗くする。ここまでの工程により、ターゲット領域24A〜24Cのそれぞれが含まれる複数の領域(ヘイズ領域)の各々に所望の粗さのマイクロラフネスを形成することができる。ここでは、基準ウエハ23Dに3つの領域(ヘイズ領域)が区画される場合のマイクロラフネスの形成方法について例示したが、さらに多くの領域(ヘイズ領域)が区画される場合でも、同様の工程でさらに多段階で薬液25に基準ウエハ23Dを浸漬させていけばよい。
【0088】
複数の領域(ヘイズ領域)が基準ウエハ23Dの中心から同心円状に区画される場合には、図8に示すように、ターンテーブル(回転ステージ)26上に基準ウエハ23Dを載置する。次いで、ターンテーブル26を回転させ、ターンテーブル26が回転している状況下で基準ウエハ23Dの中心に薬液25を滴下する。すると、薬液25は、遠心力によって基準ウエハ23Dの外周方向へ向かって広がる。遠心力は、基準ウエハ23Dの外周に近いほど大きく作用することから、薬液25は、基準ウエハ23Dの外周に近いほど基準ウエハ上に長く止まっていられなくなる。そのため、基準ウエハ23Dの中心に近いほど薬液25と基準ウエハ23Dとの化学反応が進み、基準ウエハ23Dの中心に近いほど粗いマイクロラフネスが形成され、各領域(ヘイズ領域)の境界ではマイクロラフネスの粗さの明確な差はなくなる。すなわち、このようなターンテーブル26の回転と薬液25の滴下とを所定時間続けることにより、ターゲット領域24A〜24Cのそれぞれが含まれる複数の領域(ヘイズ領域)の各々に所望の粗さのマイクロラフネスを形成することができる。
【0089】
上記のように、複数枚の基準ウエハ23A〜23Cもしくは1枚の基準ウエハ23Dのターゲット領域24A〜24Cの実測により取得した複数の測定点での検出電圧値およびヘイズ期待値(変換前の電圧値)から、検出電圧値の正規化を行う(図9参照)。この正規化工程は、前述の工程P5に相当する。
【0090】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、前記実施の形態1において図3を用いて説明した工程P4の暗視野検査装置によるヘイズの実測から工程P6の暗視野検査装置のヘイズ測定パラメータの調整までについて図11〜図16を用いてさらに詳しく説明する。
【0091】
まず、校正を行うために暗視野検査装置に必要な機能および情報である、AFM測定領域に対応するヘイズ値を抽出および確認するための機能、校正を行うために必要な情報、およびヘイズ値の出力単位について説明する。
【0092】
AFM測定領域に対応するヘイズ値を抽出および確認するための機能としては、前述のターゲット領域24A〜24C(図6参照)のようなターゲット領域の指定機能と、そのターゲット領域内の統計量の出力機能とがある。ターゲット領域の指定機能は、たとえば前述の基準ウエハ23A〜23Dと同様の基準ウエハ23に対して、ターゲット領域24の外形の指定および基準ウエハ23内での設定数の指定を行う(図10参照)。図10では、5つの矩形のターゲット領域24が基準ウエハ23の中心を含むように十字形で設定された例を図示しているが、各々のターゲット領域24は円形等の他の形であってもよい。ターゲット領域内の統計量の出力機能は、たとえば検出電圧値の最大値、最小値、標準偏差、ヒストグラム、ヒストグラムの最頻値(ピーク値)および検出電圧値の分布を出力する。
【0093】
校正を行うために必要な情報としては、信号合成部5から出力されるディジタル変換値の校正を行うための基準値および領域情報がある。領域情報は、基準ウエハのロット情報および基準ウエハが収容される暗視野検査装置内のスロット情報を含む基準ウエハ情報と、ヘイズ期待値とヘイズ実測値との比較を行う複数のターゲット領域の座標情報とを含む。基準値は、該当するターゲット領域におけるヘイズ期待値とヘイズ実測値(BRDF値とRMS(Root Mean Square)値との相関テーブル)とを含む。
【0094】
ヘイズ値は、前述のように検出器16A〜16Dによる検出電圧値を変換することで出力される。また、BRDF値は、ヘイズ値の出力形式であり、上記ヘイズ期待値と暗視野検査装置の構成とのシミュレーションからBRDF値を算出し、前記検出電圧値との変換テーブルを持つことでヘイズ値として出力が可能となる。また、BRDF値とRMS値との相関が得られれば、検出電圧値とRMS値との相関が取れるようになる。
【0095】
図11は、前記実施の形態1において図3を用いて説明した工程P4の暗視野検査装置によるヘイズの実測工程から工程P6の暗視野検査装置のヘイズ測定パラメータの調整工程までをさらに詳細に示したフローチャートであり、図12は、その際の暗視野検査装置の情報表示部8の表示内容を示す説明図である。
【0096】
工程P4では、まず、基準ウエハの表面に設定されたターゲット領域を照射光12でスキャンし(工程P41)、散乱光17を検出器16A〜16Dで検出することによって、そのターゲット領域での検出電圧値を抽出し、結果を出力する(工程P42)。
【0097】
上記工程P42の結果出力の際には、測定した基準ウエハ(スロット番号またはロット番号)、ターゲット領域、検出電圧値、ヘイズ期待値(変換された電圧値)、および検出電圧値とヘイズ期待値との誤差を表示し、さらにこれら表示された検出結果から、暗視野検査装置のヘイズ信号検出回路のゲイン成分およびオフセット成分に対する補正値を示す。暗視野検査装置のユーザーは、この段階で各出力データが基準ウエハ上の傷や異物に起因する異常値を示していないことを確認した上で、暗視野検査装置の更新ボタンを押すと、暗視野検査装置は、そのゲイン成分およびオフセット成分に対する補正値を暗視野検査装置の固有情報として保存する。また、ユーザーは図12に示すような暗視野検査装置の情報表示部8でターゲット領域内の検出電圧値のヒストグラムおよび種々の統計情報を確認することができるので、この段階において基準ウエハ上の傷や異物に起因する異常値を見つけた場合には、ターゲット領域を再設定して測定をやり直すことができる。また、異常値が見つかったターゲット領域におけるゲイン成分およびオフセット成分に対する補正値が既に暗視野検査装置の固有情報として保存されてしまっている場合でも、そのゲイン領域を選択して暗視野検査装置の削除ボタンを押すことで削除することができる。
【0098】
上記のように、本実施の形態によれば、基準ウエハ上の傷や異物に起因する異常値を見つけた場合には、ターゲット領域を再設定して測定をやり直すことができるので、傷や異物以外でも、表面に所望の粗さのマイクロラフネスが実現されていない場合でもターゲット領域を再設定して測定をやり直すことができるようになる。
【0099】
次に、全ターゲット領域についてヘイズ実測値を含む結果が得られたか否かの判定を行う(工程P43)。全ターゲット領域で結果が得られると、ヘイズ実測値とヘイズ期待値との誤差が調整基準値内に収束しているか否かを判定する(工程P51)。ここで、検出電圧値とヘイズ期待値との誤差が調整基準値内に収束していない場合には、暗視野検査装置のヘイズ信号検出回路のゲイン成分およびオフセット成分に対する補正値を基に校正を行い(工程P61)、その後、再び工程P41〜P51の工程を繰り返して、検出電圧値とヘイズ期待値との誤差が調整基準値内に収束すると電圧値に対する校正は完了となる。
【0100】
以上のような工程を経て、本実施の形態の暗視野検査装置の校正が完了する。
【0101】
上記の本実施の形態によれば、表面に不規則な凹凸パターンのマイクロラフネスを所望の粗さで精度よく形成された基準ウエハを用い、上記のような工程で暗視野検査装置の校正を行うことにより、暗視野検査装置の測定能力を微小領域まで保証できるようになる。その結果、半導体デバイス製造用のウエハの表面検査を行う際に、検査結果を微小な値まで保証できるようになる。
【0102】
また、上記の本実施の形態によれば、暗視野検査装置の測定能力を微小領域まで保証できるようになるので、定期的に暗視野検査装置の校正を行うことにより、測定能力の微小な経時変化を検出して調整できるようになる。
【0103】
また、上記の本実施の形態によれば、暗視野検査装置の校正に使用する検量線は、AFMによる基準ウエハの表面のマイクロラフネスの粗さの測定結果を基に求められ、この検量線を基に出力電圧値の調整を行うことで暗視野検査装置の校正が行われている。すなわち、同じ基準ウエハを用いて校正を行われた状態であれば、複数の暗視野検査装置間で出力電圧値は一致する。それにより、同一機種の暗視野検査装置間での測定能力差を低減できるようになる。
【0104】
(実施の形態3)
本実施の形態3では、前記実施の形態1、2で説明した暗視野検査装置の校正用の基準ウエハおよび校正工程によって校正された暗視野検査装置を用い、半導体デバイス製造用のウエハの表面検査を行う工程について図13〜図16を用いて説明する。
【0105】
図13は、本実施の形態のウエハの表面検査工程を説明するフローチャートである。
【0106】
まず、検査対象のウエハの選択、ヘイズ領域の選択、照射光12の強度および検出器16A〜16Dによる散乱光17の強度の測定可能範囲などの測定条件の選択(工程P41A)が行われると、その選択された測定条件に相当するウエハが暗視野検査装置にロードされる(工程P41B)。
【0107】
次いで、散乱光17を検出器16A〜16Dで検出することによって、そのターゲット領域での検出電圧値を抽出する(工程P42A)。
【0108】
ここで、その検出電圧値のヒストグラムに検出限界または飽和が生じていないか(暗視野検査装置の検出可能範囲内か否か)を確認し(工程P42B)、工程P41Aで選択した測定条件の妥当性について判定する(工程P42C)。図14は、検出電圧値が暗視野検査装置の検出可能範囲内に収まっている場合のヒストグラムを示し、図15は、検出電圧値が暗視野検査装置の検出限界となっている場合のヒストグラムを示し、図16は、検出電圧値が飽和している場合のヒストグラムを示している。本実施の形態では、検出限界とはフルスケールの約3%以下となる検出電圧値が全体の約50%を超えることを例示し、飽和とはフルスケールの約97%以上となる検出電圧値が全体の約50%を超えることを例示するが、これら3%および97%といった設定は、暗視野検査装置の最小検出分解能に依存して決定される数値であるので、適宜変更は可能である。判定の結果、測定条件に矛盾が生じている場合には、警告を発して自動的に検出限界または飽和が生じないように測定条件を変更する(工程P42D)。この時、変更する測定条件としては、検出器16A〜16Dのゲイン、照射光12の強度およびアンプゲイン等を例示することができる。検出器16A〜16Dのゲインは、出力電圧値と印加電圧値との比の約7.2乗倍に変化する。検出器16A〜16Dによって検出される検出電圧値は、照射光12の強度、すなわちレーザー出力と、アンプゲインとに比例する。
【0109】
その後、再度基準ウエハの表面に設定されたターゲット領域を照射光12でスキャンし散乱光17を検出器16A〜16Dで検出することによって、そのターゲット領域での検出電圧値を抽出し(工程P42E)、その検出電圧値の正規化によって検出電圧値をヘイズ実測値に変換(工程P42F)し、結果を出力する(工程P42G)。図17は、その出力されたヘイズ実測値の一例を示す説明図であり、ヘイズ実測値に対応して色分けして示されている。なお、図17に示されるヘイズ実測値は、たとえばRMS値である。
【0110】
なお、本実施の形態では、RMS値を用いる場合を示したが、RMS値の他に、Ra値、Rmax値、またはRz値等を用いてもよい。このように、ヘイズ実測値を、RMS値またはRa値等、作業者の良く知る粗さの形式(JIS等の産業界において規格化された単位)とすることで、作業者はヘイズの状態を直感的に知ることができる。
【0111】
また、あるヘイズ実測値がウエハ面においてどの程度存在するのかという情報を%等の相対値で表してもよいし、AD値を用いて表してもよい。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0113】
前記実施の形態では、暗視野検査装置によって表面を検査するバルクウエハとして単結晶シリコンのバルクウエハを例示したが、他のウエハであっても表面にエピタキシャル層等の薄膜層が形成されていなければよく、たとえば2枚の単結晶シリコンウエハを酸化シリコン層を介して貼り合わせることで形成したSOI(Silicon On Insulator)ウエハであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の暗視野検査装置校正用基準ウエハ、暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法、暗視野検査装置の校正方法、暗視野検査装置およびウエハ検査方法は、ヘイズを測定することによって検査対象のバルクウエハの表面の異物の有無または粗さを検査する暗視野検査装置の校正、その校正に用いられる暗視野検査装置校正用基準ウエハ、その暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造工程、その暗視野検査装置、およびその暗視野検査装置を用いたウエハの表面検査工程に適用することができる。
【0115】
たとえば、検出器の数は前記実施の形態中の暗視野検査装置と異なってもよいし、積分球を用いて散乱光を集光する方式のような暗視野検査装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置の説明図である。
【図2】図1に示した暗視野検査装置の情報表示部に表示された解析画面の一例を表した説明図である。
【図3】図1に示した暗視野検査装置の校正に用いる基準ウエハとなるバルクウエハを用意してから暗視野検査装置の校正を行うまでの概略を説明するフローチャートである。
【図4】APM液中のアンモニアの濃度と鏡面ウエハに形成されるヘイズとの関係を示す説明図である。
【図5】それぞれ異なる粗さのマイクロラフネスが形成された複数枚の基準ウエハを用いた場合のヘイズ測定を示す説明図である。
【図6】それぞれ異なる粗さのマイクロラフネスが形成された複数の領域が区画された1枚の基準ウエハを用いた場合のヘイズ測定を示す説明図である。
【図7】基準ウエハに区画された複数の領域毎に異なる粗さのマイクロラフネスを形成する一手段を示す説明図である。
【図8】基準ウエハに区画された複数の領域毎に異なる粗さのマイクロラフネスを形成する一手段を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置の校正に用いる基準ウエハについての検出電圧値とヘイズ期待値との関係の正規化を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置の校正に用いる基準ウエハにおけるターゲット領域を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置の校正工程の要部を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置の校正工程時における暗視野検査装置の情報表示部の表示内容を示す説明図である。
【図13】本発明の一実施の形態であるウエハの表面検査工程を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の一実施の形態であるウエハの表面検査工程における暗視野検査装置の検出電圧値の頻度の理想形を示す説明図である。
【図15】本発明の一実施の形態であるウエハの表面検査工程における暗視野検査装置の検出電圧値の頻度の検出限界を示す説明図である。
【図16】本発明の一実施の形態であるウエハの表面検査工程における暗視野検査装置の検出電圧値の頻度の飽和を示す説明図である。
【図17】本発明の一実施の形態であるウエハの表面を検査する暗視野検査装置が出力するヘイズ実測値の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0117】
1 試料ステージ
2 ステージ駆動部
3 照明光源
4 散乱光検出部
5 信号合成部
6 全体制御部
7 機械制御部
8 情報表示部
9 入力操作部
10 記憶部
11 ウエハ
12 照明光
13 回転軸
14 回転駆動部
15 スライド駆動部
16A〜16D 検出器
17 散乱光
18A〜18D 増幅器
19A〜19D A/D変換器
20 解析画面
21 表示領域
21A〜21H 個別マップ
22 表示領域
22A 拡大マップ
23 基準ウエハ
23A〜23D 基準ウエハ
24 ターゲット領域
24A〜24C ターゲット領域
25 薬液
26 ターンテーブル(回転ステージ)
H1〜H4 検出器
L1〜L4 検出器
P1 工程
P2 工程
P3 工程
P4 工程
P5 工程
P6 工程
P41、P41A〜P41B 工程
P41A 工程
P42、P42A〜P42G 工程
P43 工程
P51 工程
P61 工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視野検査装置校正用基準ウエハであって、
表面に薄膜の形成されていないバルクウエハから形成され、
前記表面には、不規則パターンのマイクロラフネスに起因するヘイズが形成され、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものであり、
前記ヘイズを計測することで暗視野検査装置の校正が行われることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハ。
【請求項2】
請求項1記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハにおいて、
1枚の前記バルクウエハの前記表面には、複数のヘイズ領域が規定され、
前記複数のヘイズ領域間で、前記マイクロラフネスの粗さが異なることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハ。
【請求項3】
請求項1記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハにおいて、
暗視野検査装置の校正時には、前記表面の前記マイクロラフネスの粗さが異なる複数枚で用いられることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハ。
【請求項4】
請求項1記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハにおいて、
前記マイクロラフネスの前記粗さは、0.1nm〜1.0nmの間の規定値であることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハ。
【請求項5】
請求項1記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハにおいて、
前記バルクウエハは、単結晶シリコンから形成されていることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハ。
【請求項6】
(a)表面に薄膜の形成されていないバルクウエハを用意する工程、
(b)前記バルクウエハの前記表面と薬液とを化学反応させ、前記バルクウエハの前記表面に不規則パターンのマイクロラフネスを形成する工程、
を含み、
前記マイクロラフネスは、ヘイズを形成し、
前記ヘイズを計測することで暗視野検査装置の校正が行われることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
1枚の前記バルクウエハの前記表面に複数のヘイズ領域を規定し、
前記ヘイズ領域毎に異なる粗さの前記マイクロラフネスを形成することを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
前記(b)工程は、回転ステージによって前記1枚のバルクウエハを保持した状況下で前記回転ステージを回転させ、前記回転ステージの回転下において前記1枚のバルクウエハに前記薬液を滴下することで行うことを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
前記(b)工程は、
(b1)前記複数のヘイズ領域のうちの第1ヘイズ領域を前記薬液中に浸漬して保持する工程、
(b2)前記(b1)工程後、前記第1ヘイズ領域および前記複数のヘイズ領域のうちの第2ヘイズ領域を前記薬液中に浸漬して保持する工程、
を含むことを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項10】
請求項6記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
前記(a)工程では、複数枚の前記バルクウエハを用意し、
前記バルクウエハ毎に異なる粗さの前記マイクロラフネスを形成することを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項11】
請求項6記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
前記マイクロラフネスの前記粗さは、0.1nm〜1.0nmの間の規定値であることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項12】
請求項6記載の暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法において、
前記バルクウエハは、単結晶シリコンから形成され、
前記薬液は、APM液、HPM液、SPM液、DHF液、BHF液、およびフッ酸とオゾン水との混合水溶液のうちの選択された1つ以上であることを特徴とする暗視野検査装置校正用基準ウエハの製造方法。
【請求項13】
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析する工程、
(e)前記ギャップを基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含み、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていないバルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものであることを特徴とする暗視野検査装置の校正方法。
【請求項14】
請求項13記載の暗視野検査装置の校正方法において、
1枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面には、複数のヘイズ領域が規定され、
前記複数のヘイズ領域間で、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なり、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数のヘイズ領域の各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズを実測し、前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数のヘイズ領域の各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とする暗視野検査装置の校正方法。
【請求項15】
請求項13記載の暗視野検査装置の校正方法において、
前記(a)工程では、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なる複数枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意し、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズを実測し、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とする暗視野検査装置の校正方法。
【請求項16】
請求項13記載の暗視野検査装置の校正方法において、
前記マイクロラフネスの前記粗さは、0.1nm〜1.0nmの間の規定値であることを特徴とする暗視野検査装置の校正方法。
【請求項17】
請求項13記載の暗視野検査装置の校正方法において、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、単結晶シリコンから形成されていることを特徴とする暗視野検査装置の校正方法。
【請求項18】
表面に薄膜、素子または配線のパターンが形成されていない第1バルクウエハの表面の異物の有無または粗さを検査する暗視野検査装置であって、
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析する工程、
(e)前記ギャップを基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含む工程によって校正され、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていない第2バルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものであることを特徴とする暗視野検査装置。
【請求項19】
請求項18記載の暗視野検査装置において、
1枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面には、複数のヘイズ領域が規定され、
前記複数のヘイズ領域間で、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なり、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数のヘイズ領域の各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズを実測し、前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数のヘイズ領域の各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とする暗視野検査装置。
【請求項20】
請求項18記載の暗視野検査装置において、
前記(a)工程では、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なる複数枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意し、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズを実測し、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とする暗視野検査装置。
【請求項21】
請求項18記載の暗視野検査装置において、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面の前記マイクロラフネスの前記粗さは、0.1nm〜1.0nmの間の規定値であることを特徴とする暗視野検査装置。
【請求項22】
請求項18記載の暗視野検査装置において、
前記第1バルクウエハおよび前記第2バルクウエハは、単結晶シリコンから形成されていることを特徴とする暗視野検査装置。
【請求項23】
暗視野検査装置を用い、表面に薄膜、素子または配線のパターンが形成されていない検査対象の第1バルクウエハの表面を検査するウエハ検査方法であって、
前記暗視野検査装置は、
(a)表面にヘイズが形成された暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意する工程、
(b)原子レベルの凹凸を測定して画像化できる顕微鏡により、前記ヘイズが形成された前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面のマイクロラフネスの粗さを計測し、計測された前記粗さを基に前記暗視野検査装置による前記ヘイズの計測をシミュレーションし、前記シミュレーションによるヘイズ期待値を求める工程、
(c)前記暗視野検査装置により前記ヘイズを実測し、実測によるヘイズ実測値を求める工程、
(d)前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析する工程、
(e)前記ギャップを基に前記暗視野検査装置を校正する工程、
を含む工程によって校正され、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハは、表面に薄膜の形成されていない第2バルクウエハから形成され、
前記ヘイズは、不規則パターンの前記マイクロラフネスに起因して形成されたものであり、
前記マイクロラフネスは、薬液を用いた化学反応によって形成されたものであることを特徴とするウエハ検査方法。
【請求項24】
請求項23記載のウエハ検査方法において、
1枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面には、複数のヘイズ領域が規定され、
前記複数のヘイズ領域間で、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なり、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数のヘイズ領域の各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズを実測し、前記複数のヘイズ領域の各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数のヘイズ領域の各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とするウエハ検査方法。
【請求項25】
請求項23記載のウエハ検査方法において、
前記(a)工程では、前記マイクロラフネスの前記粗さが異なる複数枚の前記暗視野検査装置校正用基準ウエハを用意し、
前記(b)工程では、前記顕微鏡により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記マイクロラフネスの前記粗さを測定し、前記シミュレーションにより前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ期待値を求め、
前記(c)工程では、前記暗視野検査装置により前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズを実測し、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々における前記ヘイズ実測値を求め、
前記(e)工程では、前記複数枚の暗視野検査装置校正用基準ウエハの各々について前記ヘイズ期待値と前記ヘイズ実測値とのギャップを分析することを特徴とするウエハ検査方法。
【請求項26】
請求項23記載のウエハ検査方法において、
前記暗視野検査装置校正用基準ウエハの前記表面の前記マイクロラフネスの前記粗さは、0.1nm〜1.0nmの間の規定値であることを特徴とするウエハ検査方法。
【請求項27】
請求項23記載のウエハ検査方法において、
前記第1バルクウエハおよび前記第2バルクウエハは、単結晶シリコンから形成されていることを特徴とするウエハ検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−109257(P2010−109257A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281498(P2008−281498)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】