説明

曲げ変形を受ける梁を有するマイクロエレクトロメカニカルシステム

【課題】製造するのが容易で、かつ高い変形率を有するマイクロエレクトロメカニカルシステムを提案する。
【解決手段】マイクロエレクトロメカニカルシステムは梁1と、静電相互作用によって梁に結合された電極10とを有する。梁は、弾性曲げ変形を受けるように構成され、概ね一定の断面を有している。梁1は、梁の全長Lにわたり延び、各々が断面の外側寸法w、tよりも小さい厚さを有する4つの平坦な面P1〜P4からなっている。これによって、梁1の曲げ振動周波数が、同じ外側寸法のソリッドな梁と比較して大きくなる。このようなマイクロエレクトロメカニカルシステムは、非常に短い遷移時間を必要とする用途、すなわち高周波発振器および共振器を製造するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ変形を受けるように作られた梁(beam)を有するマイクロエレクトロメカニカルシステム、すなわちMEMSに関する。本発明は、このようなマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置に組み込まれることが意図された種々のマイクロエレクトロメカニカルシステムが公知である。例えば、非特許文献1は、種々の構成のマイクロエレクトロメカニカルシステムを記載している。これらのマイクロエレクトロメカニカルシステムの中で、あるものは、弾性曲げ変形を受けることが意図された梁を有し、他のものは、弾性輪郭変化(elastic contour variations)と称される変化を示すことが意図されたボリューム(volume)を有している。体積輪郭変化を受けているマイクロエレクトロメカニカルシステムは、特に高い変形周波数を示し、これらは多くの用途に適している。しかし、それらは製造するのが困難で、したがってコストが高い。
【0003】
曲げ変形を受けることが意図された梁を有するマイクロエレクトロメカニカルシステムは製造するのが比較的容易であり、高価ではない。しかし、梁の曲げ変形周波数は特定の用途には非常に低過ぎる。
【0004】
図1aおよび図1bは、このような曲げ梁を用いたマイクロエレクトロメカニカルシステムを示している。図1aはマイクロエレクトロメカニカルシステムの斜視図であり、図1bは梁の中央面の横断面図である。梁1は、長手方向Dに沿って所定の長さLを有し、方向Dに垂直な面に、長さLの少なくとも主要部分にわたり概ね一定の断面を有している。梁は、弾性曲げ変形を受けるように作られている。
【0005】
図示の特定の例では、梁1の厚さtはその幅wよりも小さいので、断面は細長い長方形をしている。梁1は、この薄い厚さtのために、梁1の基本部分が、厚さtの方向に平行な方向Nの振動によって変位するように弾性曲げ変形を受けるように作られている。梁1は、梁の両端に設けられ、参照番号2および3で示された2つのリンクによって、マイクロエレクトロメカニカルシステムの基板100に機械的に連結されている。図1bの破線Vは、梁1が曲げ振動を受けたときに、梁1の長手方向の線の考えられる1つの変形を示している。
【0006】
このような梁は、各モードが梁の全長に沿って位置する多くの振動ノードを有する種々のモードの曲げ変形を受けることがあることが知られている。梁は種々の断面、例えばその厚さおよび幅を変えた断面を有することがあることも知られている。最後に、マイクロエレクトロメカニカルシステムは、梁が種々の方向に、特に基板100に対して曲げ変形を受けることにある。
【0007】
マイクロエレクトロメカニカルシステムは、静電相互作用によって梁と電気的に連結された少なくとも1つの電極10をさらに含んでいる。このために、梁1は、電極10の一部Pに概ね向き合って位置する梁の一部分が電極と共にコンデンサを形成するように、導電材料で作られるかまたは導電被膜を有していてもよい。次に、電圧Uを梁1と電極10の間に印加することができる。電圧Uは、電極10によって梁1に作用する、方向Nに平行な静電力を発生する。これによって、梁1は曲げ変形を受ける。
【非特許文献1】2001年7月4〜6日にシンガポールで開催された2000年、国際MEMSワークショップ(iMEMS’01)の会報、21〜34頁に記載されているクラーク T.、C.グエンによる「低消費電力無線通信用振動高周波MEMS」という表題の論文(the article entitled ”Vibrating RF MEMS for low power wireless communications” by Clark T.−C. Nguyen, Proceedings, 2000 Int. MEMS Workshop (iMEMS’01), Singapore,July4−6,2001,pp.21−34)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
梁と電極の非常に多くの構成が用いられてきたが、それらの構成は、マイクロエレクトロメカニカルシステムの特定の用途に対しては低すぎる梁変形率に対応している。
【0009】
したがって、本発明の目的は、製造するのが容易で、かつ高い変形率を有するマイクロエレクトロメカニカルシステムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は、長手方向に所定の長さを有する梁と、静電相互作用によって梁に連結された少なくとも1つの固定電極とを有し、梁が、弾性曲げ変形を受けるように作られており、かつ長手方向に垂直な平坦な平面内に、梁の全長の少なくとも主要部分にわたって概ね一定の断面を有するマイクロエレクトロメカニカルシステムを提案する。梁は、該梁の全長の主要部分にわたって延びる数個の平坦な面を有し、数個の平坦な面は長手方向に平行な複数の線に沿って互いに接続されており、各平坦な面は断面の少なくとも1つの外側寸法よりも小さい厚さを有している。すなわち、本マイクロエレクトロメカニカルシステムの梁は、切り抜かれた断面を有するか、または中空の梁である。
【0011】
このような断面のおかげで、梁はより高速に曲げ変形を受けることができるので、本マイクロエレクトロメカニカルシステムを、高速な遷移または高い発振周波数を必要とする用途に使用することができる。特に、本マイクロシステムはスイッチまたは発振器に組み込むことができ、あるいは、加速度計または共振器として使用してもよい。
【0012】
平坦な面の少なくとも1つの面の厚さは、断面の外側寸法よりも、例えば少なくとも4倍小さくてもよい。このような梁は比較的軽量で、その結果、変形しても、梁は慣性をほとんど示さないが、高い剛性をなお保持している。したがって、その変形は高速である。
【0013】
任意に、電極を本マイクロエレクトロメカニカルシステムの基板と梁の間に配置してもよい。したがって、本マイクロエレクトロメカニカルシステムは非常にコンパクトな構成を有している。
【0014】
本発明によるマイクロエレクトロメカニカルシステムの1つの利点は、梁が曲げ変形を受けるということから生じる。その理由は、梁の曲げ変形が大きな振幅を有すると仮定した場合、梁と電極を、梁と電極のそれぞれの寸法および位置が高精度であることを必要とすることなく、容易に製造することができるからである。
【0015】
本発明は、上記の種類の曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法をも提供する。このような方法は、
a)第2の材料に対して選択的にエッチング可能な第1の材料で作られた部分を剛体の基板上に形成する工程と、
b)第1の材料の部分の、基板とは反対側に第2の材料で作られ、かつ長手方向に沿った所定の長さにわたって第1の材料の前記部分の上を延びる梁を形成する工程と、
c)基板と梁の間に第1の空き空間を形成するように、第1の材料を第2の材料に対して選択的にエッチングする工程と、
を有している。
【0016】
この方法は、静電相互作用によって梁に連結されるように作られた少なくとも1つの電極を基板上に形成する工程をさらに含む。
【0017】
本発明によれば、方法の工程b)は、梁の全長の少なくとも主要部分にわたって延び、かつ長手方向に垂直な平面内に、梁の全長の主要部分にわたって概ね一定の断面を形成する数個の平坦な面であって、長手方向に平行な線に沿って一緒に接続され、断面の少なくとも1つの外側寸法よりも小さい厚さを有する数個の平坦な面を形成することを含む。
【0018】
このような方法は、梁の断面が、正方形または長方形の外形を有し、組になって直交する4つの平坦な面によって形成されている、閉じた断面である場合、または断面がU字形またはH形である場合には、非常に容易に実施することができる。その理由は、本マイクロエレクトロメカニカルシステムの指定された部分をマスクするマスキング工程と、材料を堆積する工程と、簡単で制御が良好なエッチング工程とを組み合わせることによって梁を製造できるからである。このような工程は、例えば、集積電子回路を製造するのに用いられる技術から借用してもよい。特に、梁は、シリコンまたはシリコン−ゲルマニウム合金をベースにしているのが有利である。これは、これらの材料に対して、非常によく制御された選択的エッチングプロセスが存在し、したがって定められた断面を正確に生成できるからである。
【0019】
したがって、本マイクロエレクトロメカニカルシステムは集積回路の製造ラインで製造することができる。本マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造するのに使用される材料を適切に選択することによって、特に、集積回路の製造ラインのフロントエンドにおいて製造することができる。この場合、本マイクロエレクトロメカニカルシステムは、電子回路も載せるように意図された基板上に製造することができる。これによって、所定の複合機能を実行するために本マイクロエレクトロメカニカルシステムと電子回路の両方を組み込んだ、非常にコンパクトで廉価な1つの装置を得ることができる。本マイクロエレクトロメカニカルシステムと電子回路は、同じ製造ライン上でも製造してもよい。
【0020】
梁の平坦な面は種々の方法を使用して製造してもよい。
【0021】
第1の方法によれば、梁は、その梁が最初にいくつかの平坦な面を有するように直接形成される。これによって、梁は、その形状から直接、最終的な断面を有する。
【0022】
第2の方法によれば、細長い構造が先ず形成され、次に、平坦な面が細長い構造の残り部分からなるようにエッチングされてもよい。本製造方法は、梁の少なくとも2つの平坦な面の間に第2の空き空間を形成する工程d)をさらに含んでいてもよい。この場合、工程c)と工程d)は、特に、本マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法における工程の数を減らすために、同時に行われるのが好ましい。
【0023】
梁を製造するこの第2の方法を実施する1つの特別の方法によれば、梁は、断面が梁の全長の主要部分にわたって延びる一時的な材料のコアを少なくとも部分的に囲むように、工程b)において形成されてもよい。これによって、工程d)は、第2の空き空間を形成するように、コアの選択的に除去することを含む。
【0024】
任意に、電極は、工程a)の前に基板上に形成されてもよい。これによって、電極は、本マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する最終状態では、基板と梁の間に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照してなされる、限定されない実施形態に関する以下の説明において明白になるであろう。
【0026】
説明を分かりやすくするために、図に示す種々の要素は、一定の縮尺では描かれていない。図1、および図2aから図2fは、上で本発明のマイクロエレクトロメカニカルシステムが製造される実質的に平坦な基板の透視図である。基板は各図の下部にあり、Nは基板の表面に垂直な方向を表し、各図では上方を向いている。以降の説明では、用語「上」、「下」、「下方」、および「上方」は、この向きを基準として使用する。さらに、すべての図において、同一の参照番号は同一の構成要素に対応している。
【0027】
次に、本発明によるマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法を、図2aから図2fを参照して説明する。この説明では、集積電子回路の製造から知られている方法の基本的工程は、詳細には説明しない。ここでは、マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する個々の工程の順序のみを説明する。
【0028】
図2aによれば、基板は、例えばシリカ(SiO2)の層101で被覆された単結晶シリコン(Si)で作られた基板ベース100を有している。層101は電気的に絶縁である。ストリップ10が層101上の中央部に配置されている。ストリップ10は、電気的に伝導性のシリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)合金で作られていてもよい。ストリップ10は、上面がCMP(化学的機械的研磨)によって平坦化されたシリコンのボリューム102によって覆われている。ボリューム102はそれ自体、同じく上面が平坦化されたシリコン−ゲルマニウム合金のボリューム103によって覆われている。最後に、ボリューム103はシリコン層104で覆われる。このような構造は、シリコンまたはシリコン−ゲルマニウム合金のエピタキシアルデポジション、マスキング、およびエッチングの各工程を組み合わせることによって、集積回路の設計および製造の専門家によって容易に作られる。特に、基板ベース100、層101、およびボリューム102の少なくとも一部は、集積電子回路を製造するためのSOI(シリコンオンインシュレータ)技術で用いられる基板から得ることができ、市販されている。したがって、ストリップ10の材料、ボリューム102および103の材料、および層104の材料も、実質的に単結晶の材料である。
【0029】
ストリップ10、ボリューム102、ボリューム103、および層104のそれぞれのN方向の厚さはh1、h2、h3、およびh4で示され、h1はh2より小さく、h2自身はh3よりも小さい。例えば、次の近似値、すなわち、h1は0.02マイクロメータ(ミクロン)に等しく、h2は1.0マイクロメータに等しく、h3は1.1マイクロメータに等しく、h4は0.8マイクロメータに等しい、を取ることができる。ストリップ10、ボリューム102、およびボリューム103はそれぞれこの順序に大きい、方向Dの幅を有している。
【0030】
層104は次に、約0.8マイクロメータに等しい幅vを持ち、方向Dに平行なストリップの形状をしたマスク(不図示)によって覆われる。層104は次に、シリコンをシリコン−ゲルマニウム合金上で優先的にエッチングする、例えば選択エッチングプロセスを用いて、マスクされた以外の部分がエッチングされる。このような選択エッチングプロセスは当業者に良く知られているのでここでは説明しない。以下の説明では、このエッチングを第1のエッチング工程と呼ぶ。このようにして、方向Dに平行で、幅v、厚さh4を有するシリコンストリップ11が、ボリューム103上に形成される(図2b)。次に、マスクが取り除かれる。
【0031】
次に、シリコン−ゲルマニウム合金がエピタキシャル成長によって、ボリューム103およびストリップ11上に堆積される。したがって、ボリューム103上のストリップ11の起伏(relief)に対してコンフォーマル(conformal)な合金層103aが形成される。層103aの堆積は、層103aの厚さyが約0.1マイクロメータになるまで、続けられる(図2c)。
【0032】
図2dにおいて参照記号Mで示される第2のマスクが、ストリップ11の真上になるように層103a上に形成される。マスクMは、基板ベース100の表面に平行で、かつ方向Dに垂直な方向に沿って、vより大きな、例えば1.0 マイクロメータに等しい幅を有している。さらに、マスクMは、ボリューム102の幅と103の幅の中間の大きさの、方向Dに沿った長さLを有している。マスクMは、ストリップ11とボリューム102の両方に対して中心に位置するように、基板基板100の表面に平行な面内で、層103a上に配置される。
【0033】
次に、第2のエッチング工程が、方向Nに沿って加速された微粒子の流れ(flux)Fを使用して、それと逆方向に行われる。流れFは層103aの上面を向いている(図2d)。この第2のエッチング動作は、層103aの露出部が完全に除去されるまで続けられる。任意に、第2のエッチング工程は、ボリューム103、そして102のそれぞれの上部をも除去するように継続してもよい(図2e)。したがって、ボリューム102および103はそれぞれ、図2dおよび図2eにおいてh’3で示された、N方向の概ね等しい厚さを有している。例えば、h’3は約0.8マイクロメータに等しい。同時に、異方性エッチング工程が、方向Dに沿ってストリップ11の各側に位置する2つの端面E1およびE2を形成する。
【0034】
マスクMが除去され、異方性タイプの第3のエッチング工程が、シリカ層101上に残った実質的にゲルマニウムのないこれらのシリコン部分を選択的に除去するために行われる。第1のエッチング工程において用いたものと同一の選択的エッチング液を、この第3のエッチング工程で使用してもよい。このようにして、ボリューム102の残部は、流れFによる異方性エッチング中に露出されたボリューム102の表面を介して除去される。こうして、第1の空き空間V1が、層101と、層103の残された上部との間に形成される(図2f)。空き空間V1は、梁1とストリップ10との間に、方向Nに沿った、h2−h1の厚さを有している。
【0035】
このようにして、構造の、方向Dに沿った対向する端部に位置する2つの機械的なリンク2、3を介して層101に接続されたブリッジ構造が得られる。リンク2、3は、ボリューム103の残りの側面部分によって形成されている。ブリッジ構造は電気的に伝導性のシリコン−ゲルマニウム合金で作られている。ブリッジ構造は、ストリップ10の上方に水平に配置された梁の形状をなし、なおかつストリップ10から電気的に分離されている。この梁は、図2fにおいて参照番号1で示されている。梁1は、方向Dに沿って、マスクMの長さに等しい長さ、つまり長さLを有している。Lは、例えば10マイクロメータに等しくてもよい。したがって、Dは梁1の長手方向である。
【0036】
シリコンストリップ11は、この第3のエッチング動作中に、ボリューム102の残部として同時に除去される。シリコンストリップ11は、第2の空き空間V2が層103の残部と103aの間に形成されるように、端面E1およびE2を介して除去される。図2fにおいて、湾曲した矢印は、エッチング液が、除去されることになっているゲルマニウムを含まないシリコン部分に近づく方向を示している。
【0037】
梁1はこのように中空の梁になり、空き空間V2は、ストリップ11ではなく梁1のコアに位置する。このため、ストリップ11は、次に除去される一時的に使用される材料で作られている、梁1のコアと呼ばれる。
【0038】
梁1は、外側の幅w(=v+2y)が1.0マイクロメータである断面を有している(図3a)。この断面の4つの側面は、対になって直交する平坦な面P1、P2、P3、およびP4によって形成されており、かつ方向Dに平行なそれらの面の縁によって接続されている。平坦な面P1は、e1=h3−h2の厚さ、ここに記載する例においては0.1マイクロメータに等しい厚さのボリューム103の上部によって形成されている。平坦な面P2、P3、およびP4は、第2のエッチング工程中マスクMによって保護されていた、層103aの残部に対応する。それらは各々、図3aでe2、e3、およびe4で示されている、yに概ね等しい厚さ、すなわち約0.1マイクロメータの厚さを有している。厚さe1〜e4は外側の幅wよりも小さい。
【0039】
tで示された、梁1の方向Nの外側厚さは、h4とyとh3−h2の合計に概ね等しい。これは約1.0マイクロメータに等しい。したがって、厚さe1〜e4もtより小さい。その結果、梁1は正方形の断面を有している(図3a)。
【0040】
多くの変形例を、たった今説明した梁製造工程に取り入れてもよい。これらの変形例の中で、次のようなものを挙げることができる。
−梁の大きさ、すなわちその長さL、その内側の幅v、その内部の高さh4、その外側の幅w、およびその外側の厚さtを変えてもよい。
−梁は、方向Nに対する向きが可変の、長方形(図3b)、U字形(図3c)、またはH形(図3d)の断面を有してもよい。
−梁はシリコンで作られていてもよい。この場合、本マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する工程中に選択的にエッチングされる層部分およびボリューム部分は、シリコン−ゲルマニウム合金で作られていてもよい。該合金を、ゲルマニウムを含まないシリコン部分に対して選択的にエッチングする選択エッチング工程も当業者にもよく知られており、既に詳細に説明した方法と同様にして用いることができる。
−梁は、電気的に絶縁性の材料で作られていてもよく、また電気的に伝導性の材料の層で少なくとも一部が覆われていてもよい。
−最後に、支持体2および3は、方向Dに沿った梁の両端以外の、梁1の長さ方向に沿った地点に位置していてもよい。特に、梁は、梁の曲げ振動固有モードのノードに対応する、梁の長さ方向に沿った地点に位置する少なくとも1つのリンクを介して、基板100に機械的に接続されていてもよい。
【0041】
下記の表1は、上で詳細に説明した製造方法から生じる梁の曲げ振動の周波数を比較したものである。これらの周波数が梁の最初の5つの振動固有モードに対して与えられ、同じ長さ(10マイクロメータ)であるが、1.0マイクロメータの側面を有するソリッド(solid:中実)の正方形の断面を有する梁の周波数と比較されている。それらはメガヘルツ(MHz)で表されている。
【0042】
【表1】

【0043】
これは、本発明が、梁の曲げ振動周波数を、第1の固有モードの場合に、同一の外側寸法を有するソリッドな梁に対して約12%大きくできることを示している。同様に、第2の固有モードの曲げ振動周波数は約9%大きくなる。次の固有モードについては、本発明の梁の振動周波数は小さくなり、その結果振動数を本マイクロエレクトロメカニカルシステムの用途にしたがって調整することが可能になる。
【0044】
本発明者は、本発明の補足的な実施例として、外側の寸法が60マイクロメータ×60マイクロメータの正方形の断面を持ち、長さが500マイクロメータで、厚さが各々10マイクロメータの4つの平坦な面から形成された第2の中空の梁を製作した。このような梁の第1の曲げ振動固有モードは2.1MHzの周波数を有している。比較のために、同じ長さで、かつ同じ外側寸法のソリッドな梁は、1.80と1.85MHzの間の第1の曲げ振動固有モード周波数を有している。
【0045】
最後に、外側寸法が8マイクロメータ×8マイクロメータの正方形の断面を持ち、長さが50マイクロメータの第3の中空の梁を製作した。この第3の梁は、厚さが各々1.4マイクロメータの4つの平坦な面から構成されている。第3の梁は、24.5MHzの第1の曲げ振動固有モード周波数を有しているが、同じ外側寸法のソリッドな梁は約23MHzの対応する周波数を有している。
【0046】
ストリップ10は、マイクロエレクトロメカニカルシステムの電極を構成し、かつ静電相互作用によって梁1に連結されている。すなわち、電圧が梁1とストリップ10間に印加されているとき、梁1とストリップ10の間に存在する分離空間に電界が存在する。この電界は、梁1に方向Nに平行な力を及ぼす。あるいは、電極は、MOSトランジスタのゲートを有していてもよい。
【0047】
任意に、マイクロエレクトロメカニカルシステムは、静電相互作用によって梁1に連結された第2の電極をさらに含んでいてもよい。このような第2の電極は、本発明による曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを組み込んでいる特定の装置にとって必要かもしれない。この場合、2つの電極は、それぞれ、梁1の振動を励起する電極と、前記振動を検出する電極であってもよい。検出電極がMOSトランジスタのゲートからなる場合、梁1の振動によって引き起こされた電気信号が検出され、この電気信号は、該トランジスタのソース−ドレイン間を流れる主電流の形で直接増幅される。この主電流は、梁1の曲げによって生じる、ゲートの電位の振動によって変調される。
【0048】
上記した、曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムは、種々のエレクトロメカニカル装置に組み込むことができる。該装置がマイクロスイッチの場合には、梁が速く変形することによって電気回路を著しく高速に開くことが可能になる。該装置が加速度計の場合、本発明の曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムは、フレキシブルな薄板の形状をした曲げ梁を備えた加速度計の飽和または場合によっては破損につながるであろう大きな加速度を測定するのに適している。
【0049】
本発明によるマイクロエレクトロメカニカルシステムを組み込んだ該装置が発振器または共振器の場合、発振固有周波数またはその第1の共振周波数は非常に高く、非常に多くの用途に適している。さらに、梁が、結晶質材料または単結晶材料で作られている場合、このような共振器の品質係数が著しく高くなることがある。これは、梁がシリコンで作られ、ゲルマニウムを含んでいない場合に、結晶材料の格子欠陥は非常に少ないので、特に当てはまるであろう。
【0050】
最後に、詳細に説明したマイクロエレクトロメカニカルシステムは、集積回路の製造ラインのフロントエンドにおいて製造されるのに適している。本発明によるこのようなマイクロエレクトロメカニカルシステムを、集積回路の製造ラインのバックエンドにおいて製造してもよい。この場合、梁1は窒化物タイプの材料で作られてもよく、電極10は金で作られてもよく、ボリューム102は樹脂または重合体で作られていてもよい。その際、梁1が電気的に絶縁性であるとすると、梁1は、金で作られていてもよいカウンタ電極を備えている必要がある。このカウンタ電極は、電極10と協働するように電極10に向き合った梁1上に配置される。さらに、製造ラインのバックエンドにおいて製造されたマイクロエレクトロメカニカルシステムは、回路とマイクロシステムの組立て体に対して得られる集積度より大きくなるように、基板上に生成された集積回路の上方に配置してもよい。このような構成は、「IC(ICは「集積回路」を表す)上の集積化」と呼ばれている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】従来技術から知られているマイクロエレクトロメカニカルシステムを示す図である。
【図1b】従来技術から知られているマイクロエレクトロメカニカルシステムを図である。
【図2a】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図2b】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図2c】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図2d】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図2e】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図2f】本発明による、キャビティ化された正方形断面を有する曲げ梁のマイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法の工程を示す図である。
【図3a】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図3b】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図3c】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図3d】本発明の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 梁
2、3 梁1の端
10 ストリップ
11 シリコンストリップ
100 基板ベース
101 シリカ層
102、103 ボリューム
103a 合金層
104 シリコン層
L 梁1の長さ
t 梁1の厚さ
w 梁1の幅
1〜e4 厚さ
1〜P4 平坦な面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(D)に所定の長さ(L)を有する梁(1)と、静電相互作用によって前記梁に連結された少なくとも1つの固定電極(10)とを有し、前記梁は、弾性曲げ変形を受けるように作られており、かつ前記長手方向に垂直な平面内に、前記梁の全長の少なくとも主要部分にわたって概ね一定の断面を有するマイクロエレクトロメカニカルシステムにおいて、
前記梁(1)は、該梁の全長の前記主要部分にわたって延びる数個の平坦な面(P1〜P4)を有し、前記数個の平坦な面は前記長手方向(D)に平行な複数の線に沿って互いに接続されており、各面は前記断面の少なくとも1つの外側寸法(w、t)よりも小さい厚さ(e1〜e4)を有することを特徴とするマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項2】
前記梁の複数の面のうちの少なくとも1つの面の厚さ(e1〜e4)が、前記断面の外側寸法(w、t)よりも少なくとも4倍小さい、請求項1に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項3】
前記断面は、正方形または長方形の外形を有し、組になって直交する4つの平坦な面(P1〜P4)によって構成されている、閉じた断面である、請求項1または2に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項4】
前記断面はU字形またはH形である、請求項1または2に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項5】
前記梁(1)は、実質的にシリコンまたはシリコン−ゲルマニウム合金をベースにしている、請求項1から4のいずれかの1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項6】
前記梁(1)は、該梁の一端にある少なくとも1つのリンク(2、3)を介して、または前記梁の曲げ振動固有モードのノードに対応する、該梁の全長に沿った点において、前記電極(10)を載せた基板(100)に機械的に連結されている、請求項1から5のいずれかの1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項7】
前記電極(10)がMOSトランジスタのゲートを含む、請求項1から6のいずれかの1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項8】
励起電極と検出電極を有しており、各電極は静電相互作用によって前記梁(1)に連結されている、請求項1から7のいずれかの1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステム。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステムを有するスイッチ。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステムを有する加速度計。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステムを有する発振器。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロエレクトロメカニカルシステムを有する共振器。
【請求項13】
a)第2の材料に対して選択的にエッチング可能な第1の材料で作られた部分(102)を剛性のある基板(100)上に形成する工程と、
b)前記第1の材料の前記部分の、前記基板(100)とは反対側に第2の材料で作られ、かつ長手方向(D)に沿った所定の長さ(L)にわたって前記第1の材料の前記部分(102)の上を延びる梁(1)を形成する工程と、
c)前記基板(100)と前記梁(1)の間に第1の空き空間(V1)を形成するように、前記第1の材料(102)を前記第2の材料に対して選択的にエッチングする工程と、
を有し、
静電相互作用によって前記梁(1)に連結されるように作られた少なくとも1つの電極(10)を前記基板(100)上に形成する工程をさらに含む、マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法において、
前記工程b)は、前記梁(L)の全長の少なくとも主要部分にわたって延び、かつ前記長手方向(D)に垂直な平面内に、前記梁の全長の前記主要部分にわたって概ね一定の断面を形成する数個の平坦な面(P1〜P4)であって、前記長手方向(D)に平行な複数の線に沿って互いに接続され、前記断面の少なくとも1つの外側寸法(w、t)よりも小さい厚さ(e1〜e4)を有する数個の平坦な面(P1〜P4)を形成することを含むことを特徴とする、マイクロエレクトロメカニカルシステムを製造する方法。
【請求項14】
前記梁の複数の平坦な面(P1〜P4)の少なくとも2つの間に第2の空き空間(V2)を形成する工程d)をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記梁(1)は、前記断面が前記梁(1)の全長(L)の前記主要部分にわたって延びる一時的な材料のコア(11)を少なくとも部分的に囲むように前記工程b)において形成され、前記工程d)が、前記第2の空き空間(V2)を形成するように、前記コアを選択的に除去することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)と前記工程d)が同時に行われる、請求項14または15に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公開番号】特開2006−263905(P2006−263905A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336886(P2005−336886)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(501257923)エステーミクロエレクトロニクス ソシエテ アノニム (1)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】