説明

書画カメラ、書画カメラの制御方法、プログラムおよび表示処理システム

【課題】3次元画像を表示させることのできる書画カメラ、書画カメラの制御方法、プログラムおよび表示処理システムを提供する。
【解決手段】表示装置(プロジェクター10)に接続されて用いられる書画カメラ1であって、複数の撮像部(カメラ2,3)と、複数の撮像部のうち、2つの撮像部により同一の撮像対象を異なる撮像位置から撮像した2つの画像データを生成する画像処理部14と、表示装置により表示される2つの画像データの画像間距離を決定するためのパラメータを取得するパラメータ取得部(カメラ位置取得部16)と、表示装置に対して、2つの画像データ、並びにパラメータまたは画像間距離を出力する出力部15と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮像部を備えた書画カメラ、書画カメラの制御方法、プログラムおよび表示処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の書画カメラとして、2つの撮像部により同一の撮像対象を撮像し、ユーザーに対して様々な画像を提供するものが提案されている。特許文献1に記載の書画カメラでは、2つの撮像部により撮像した画像データから撮像対象の3次元情報を取得して、擬似的に撮像視点を変化させた画像データを生成し、ユーザー所望の角度からの画像を表示させたり、2つの画像データを重ねて、より高精細な画像を表示させたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−215298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、観察者側から立体的に見える3次元映像を表示する映画館やテレビジョン装置が増加している。そこで、書画カメラにおいて3次元画像データを生成し、表示装置により3次元画像を表示することができれば、当該書画カメラを使用する学校での授業やプレゼンテーション等において、より臨場感のある画像を観察者に提供することができる。しかし、上記の書画カメラでは、いずれも2次元画像データの質を向上させているのに過ぎず、3次元画像データを生成することはできない。
【0005】
本発明は、3次元画像を表示させることのできる書画カメラ、書画カメラの制御方法、プログラムおよび表示処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の書画カメラは、表示装置に接続されて用いられる書画カメラであって、複数の撮像部と、複数の撮像部のうち、2つの撮像部により同一の撮像対象を異なる撮像位置から撮像した2つの画像データを生成する画像処理部と、表示装置により表示される2つの画像データの画像間距離を決定するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、表示装置に対して、2つの画像データ、並びにパラメータまたは画像間距離を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の書画カメラの制御方法は、複数の撮像部を備え、表示装置に接続されて用いられる書画カメラの制御方法であって、複数の撮像部のうち、2つの撮像部により同一の撮像対象を異なる撮像位置から撮像する撮像ステップと、2つの撮像部により撮像した2つの画像データを生成する画像処理ステップと、表示装置により表示される2つの画像データの画像間距離を決定するためのパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、表示装置に対して、2つの画像データ、並びにパラメータまたは画像間距離を出力する出力ステップと、を実行することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、複数の撮像部のうち2つの撮像部により撮像した2つの画像データを、画像間距離を存して表示させることができる。よって、一方の画像データを右目用画像データ、他方の画像データを左目用画像データとすれば、観察者から立体的に見える3次元画像を提供することができる。この場合、本書画カメラから画像間距離または画像間距離を決定するためのパラメータを出力するため、当該パラメータに基づいて表示装置が右目用画像データと左目用画像データをずらすことができるため、3次元画像を表示させることができる。
なお、表示装置に対して2つの画像データと共に画像間距離を出力する場合は、パラメータから画像間距離を算出する距離算出部を備えていることが望ましい。また、表示装置に対して2つの画像データと共に画像間距離を決定するためのパラメータを出力する場合は、表示装置がパラメータから画像間距離を算出する距離算出部を備えていることが望ましい。
【0009】
この場合、表示装置に画像間距離を存して2つの画像データを表示させる3次元モードと、表示装置に画像間距離を存さずに1つ以上の画像データを表示させる2次元モードと、のいずれかに切り替えるモード切替部をさらに備え、モード切替部により3次元モードに切替られた場合に、パラメータ取得部は、パラメータを取得し、出力部は、パラメータまたは画像間距離を出力することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、3次元画像を表示させる3次元モードに加えて、2次元画像を表示させる通常の2次元モードも備えているため、使用用途によって、または撮像対象が立体物か平面物かによって、2つのモードを選択することができる。なお、このモードの切替は、ユーザーの操作によって行ってもよいし、例えば撮像部による撮像対象の認識によって、自動的に切り替えても良い。
【0011】
この場合、モード切替部により3次元モードに切替られた場合に、出力部は、2つの画像データを所定の周波数で交互に出力することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、2つの画像データが出力される所定の周波数に同期したシャッター式の眼鏡を用いる、または、2つの画像データに異なる偏光を与えて偏光式の眼鏡を用いれば、観察者に対して3次元画像を提供することができる。
【0013】
この場合、2つの撮像部は、設置面に対して水平に配設され、パラメータ取得部は、パラメータとして、2つの撮像部の離間距離、2つの撮像部と設置面との距離、および2つの撮像部の光軸が設置面に対して成す角度を取得することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、実際の撮像部の配置に基づいて画像間距離を決定することができる。よって、実際に撮像した画像データに最適な画像間距離、または画像間距離を算出するためのパラメータを表示装置に出力することができる。
【0015】
この場合、2つの撮像部は、当該2つの撮像部の光軸が設置面に対して成す角度が同一であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、画像を表示する表示面(例えば、スクリーンやディスプレイ)に対して正面方向に立体となる3次元画像を表示させることができる。
【0017】
この場合、2つの撮像部の離間距離を可変する離間距離可変部、2つの撮像部と設置面との距離を可変する設置距離可変部、および2つの撮像部の光軸が設置面に対して成す角度を可変する角度可変部のうち、少なくとも1つをさらに備えていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、2つの撮像部の配置を調節することができるため、所望の撮像位置から撮像した画像データによる3次元画像を提供することができる。
【0019】
この場合、3つ以上の撮像部を備え、3つ以上の撮像部のうち、2つの撮像部を選択する選択部をさらに備えていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、3つ以上の撮像部のうち、ユーザーの所望の2つの撮像部を選択して画像データを得ることができる。また、異なる撮像部のペアにより撮像した複数ペアの画像データを合成して、より精度の良い3次元画像を提供することができる。
【0021】
本発明のプログラムは、コンピューターに、上記の書画カメラの制御方法における各ステップを実行させることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、3次元画像を提供することのできる書画カメラを実現させることができる。
【0023】
本発明の表示処理システムは、上記の書画カメラと、表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、3次元画像を提供することのできる表示処理システムを実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る書画カメラの斜視図である。
【図2】書画カメラおよび表示処理システムの制御ブロック図である。
【図3】「3次元モード」におけるカメラおよび撮像対象の配置を示す図である。
【図4】(a)は「3次元モード」における表示例を示す図であり、(b)は観察者から肉眼視で観察される画像データを表した図である。
【図5】「3次元モード」における観察者から3次元画像が観察される様子を示した模式図である。
【図6】「2次元モード」における表示例であり、(a)は「通常形態」における表示例を示す図、(b)は「比較形態」における表示例を示す図、(c)は「同時表示形態」における表示例を示す図、(d)は「個別切替形態」における表示例を示す図、(e)は「複合切替形態」における表示例を示す図である。
【図7】書画カメラの画像データ出力処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照し、本発明の書画カメラについて説明する。本発明の書画カメラは、2つのカメラを備え、当該2つのカメラによって得た2つの画像データを表示装置に出力し、表示装置は2つの画像データを表示する。なお、以下に説明する実施形態の書画カメラは、上記の2つの画像データを所定の画像間距離を存して投写させる「3次元モード」、2つの画像データを重ね合わせる、並列配置する、または個別に切り替えて投写させる「2次元モード」、の2つの表示モードに切替可能となっている。
【0027】
図1に示すのは、本発明の一実施形態にかかる書画カメラ1の外観斜視図である。図1および図2に示すように、書画カメラ1は、表示装置であるプロジェクター10に接続され、第1カメラ2および第2カメラ3(撮像部)と、第1カメラ2および第2カメラ3をそれぞれ支持するカメラスタンド4と、カメラスタンド4が立設された支持台5と、支持台5上に配設された操作部6と、を備えている。さらに書画カメラ1は、その内部に、フレームメモリー11と、カメラ位置取得部16(パラメータ取得部)と、制御部13と、画像処理部14と、出力部15と、を備えている。
【0028】
書画カメラ1は、第1カメラ2および第2カメラ3により撮像対象Aを撮像して、2つの画像データを得る。なお、本実施形態では、後述の表示モードが「3次元モード」である場合、同一の撮像対象A1を撮像する。また、同モードの場合、撮像対象A1は立体物であることが望ましい。一方、表示モードが「2次元モード」である場合、第1カメラ2が撮像対象A2を撮像し、第2カメラ3が撮像対象A3を撮像するものとする。なお、「2次元モード」において、第1カメラ2および第2カメラ3は、同一の撮像対象を別の角度で撮像してもよいし、同一の撮像対象の異なる領域を撮像対象A2および撮像対象A3として撮像してもよい。
【0029】
カメラスタンド4は、第1カメラ2および第2カメラ3を、位置変更可能且つ角度変更可能に支持するものであって、支持台5に立設されると共に鉛直方向に延在する鉛直支持軸21と、接合部24を介して鉛直支持軸21の先端部に支持されると共に、水平方向に延在する一対の水平支持軸22、22と、各係合部25、25を介して各水平支持軸22、22の先端部に対し2次元内で回動自在に支持されると共に、その先端部に各カメラ2、3を取り付けた一対の支持フレーム23、23と、を備えている。
【0030】
鉛直支持軸21および一対の水平支持軸22、22は、基端側の円筒形の太軸と、先端側の円柱形の細軸とから成る入り子構造を有しており、先端方向に伸縮自在且つ先端側を回転自在に構成している。一対の支持フレーム23、23は、水平方向に延在し、その先端部の鉛直方向下部に各カメラ2、3を配設している。また、一対の支持フレーム23、23の先端は、内蔵したカメラ2、3の撮像方向(光軸)を水平支持軸22、22に沿う方向に変化可能なように回動自在に構成されている。このように、鉛直支持軸21および各水平支持軸22、22の伸縮、鉛直支持軸21および各水平支持軸22の先端側の回転、並びに各支持フレーム23、23の回動によって、各カメラ2、3と設置面Gとの距離、各カメラ2、3の離間距離、および各カメラ2、3の撮像角度(各カメラ2、3の光軸が設置面Gに対して成す角度)をそれぞれ変更可能に構成している。
【0031】
なお、請求項にいう「設置距離可変部」とは鉛直支持軸21を指し、「角度可変部」とは、支持フレーム23、23を指し、「離間距離可変部」とは、水平支持軸22および支持フレーム23、23を指す。
【0032】
操作部6は、第1電源スイッチ29と、第2電源スイッチ30と、表示モード切替スイッチ31と、表示形態切替スイッチ32と、を有している。第1電源スイッチ29は、第1カメラ2のON/OFFを切り替えるためのスイッチである。第2電源スイッチ30は、第2カメラ3のON/OFFを切り替えるためのスイッチである。表示モード切替スイッチ31は、表示モードを「2次元モード」および「3次元モード」のいずれかに切り替えるためのスイッチである。表示形態切替スイッチ32は、表示モードが「2次元モード」に切り替えられた場合に、さらに、後述の表示形態を切り替えるためのスイッチである。
【0033】
フレームメモリー11は、各カメラ2、3によって撮像した撮像画像データを一時的に記憶する記憶手段である。具体的には、2つのカメラ2、3のうち、一方または両方のカメラ2、3により撮像された2つの画像データを一時的に記憶する。フレームメモリー11は、各カメラ2、3に対しそれぞれ専用のデータ記憶領域を有し、各データ記憶領域に、撮像画像データを格納する。
【0034】
カメラ位置取得部16は、表示モードが「3次元モード」である場合、各カメラ2、3の位置情報(パラメータ)を取得する。具体的には、鉛直支持軸21の伸縮量、水平支持軸22の伸縮量、および支持フレーム23の水平方向、鉛直方向の回動量に基づいて、各カメラ2、3と設置面Gとの距離、各カメラ2、3の離間距離、および各カメラ2、3の光軸が設置面Gに対して成す角度を位置情報として取得する。
【0035】
制御部13は、表示モード切替スイッチ31の操作信号に基づいて、「3次元モード」または「2次元モード」を決定し、決定した表示モードを示すモード設定信号を、画像処理部14および出力部15に出力する。また、表示モードが「3次元モード」に切り替えられた場合、カメラ位置取得部16により取得した位置情報から、表示される2つの画像データの画像間距離Wを算出する。なお、表示モードが「2次元モード」に切り替えられた場合、表示形態切替スイッチ32の操作信号に基づいたモード設定信号を、画像処理部14および出力部15に出力する。なお、請求項にいう「モード切替部」は、制御部13および表示モード切替スイッチ31により実現される。
【0036】
画像処理部14は、制御部13のモード設定信号に基づき、フレームメモリー11に記憶された撮像画像データに基づいて、出力用の画像データを生成する。
【0037】
出力部15は、制御部13のモード設定信号に基づいて、生成された画像データをプロジェクター10に対して出力する。また、「3次元モード」においては、算出した画像間距離Wを2つの画像データに関連付けて出力する。なお、同モードにおいて、出力部15は、2つの画像データを所定の周波数で交互に出力する。
【0038】
なお、出力部15は、画像出力端子やUSB端子等を有する共通の端子部17(図1参照)によって構成されており、ケーブル18を介して、プロジェクター10に接続されている。
【0039】
一方、プロジェクター10は、出力部15により出力された2つの画像データをスクリーンSCに投写する。
【0040】
ここで、図3ないし図5を参照して、本実施形態の表示モードについて説明する。図3は、カメラスタンド4の逆方向から見た「3次元モード」における各カメラ2、3と撮像対象A1との配置を示す図である。図示のように同モードでは、2つのカメラ2、3が同一の撮像対象A1に向けられた状態で撮像を行う。すなわち、第1カメラ2および第2カメラ3の光軸の交差点、いわゆる輻輳点Cが、撮像対象A1の略中央となるように、各カメラ2、3の撮像角度、2つのカメラ2、3の離間距離、2つのカメラ2、3の設置距離(設置面Gからの距離)、が調節されている。そして、各カメラ2、3の位置を示すこれらの位置情報から、プロジェクター10により表示させる2つの画像データの画像間距離Wが算出される。画像間距離Wとは、3次元画像を表示するための2つの画像データのズレ量であり、2つの画像データをどの程度ずらして表示するか(例えば、画素数など)を示すものである。具体的には、図3に示すように、2つのカメラ2、3の離間距離をD、2つのカメラ2、3と設置面Gとの距離をR、2つのカメラ2、3を結ぶ仮想線50と輻輳点Cを通り設置面Gに直交する仮想線51との交点52から輻輳点Cまでの距離をrとすると、画像間距離Wは、W=(R/r−1)Dにより算出することができる。
【0041】
なお、「3次元モード」では、画像処理部14により、フレームメモリー11に記憶された2つの画像データに対し、各画像データの表示サイズをスクリーンSCの投写領域全体に表示するためのサイズ調整処理を施す。その他、データ形式の変換等の標準の画像処理を行って、2個の画像データを生成する。
【0042】
図4は、「3次元モード」における2つの画像データの表示例である。第1カメラ2により撮像されたものが第1画像データであり、第2カメラ3により撮像されたものが第2画像データである。同図(a)に示すように2つの画像データは、所定の周波数で交互に投写される。なお、当該2つの画像データは、算出された画像間距離Wだけ位置ずれしてそれぞれ投写される。そして、同図(b)に示すように、2つの画像データは、観察者から肉眼視において画像間距離Wの分だけ水平方向に位置ずれして観察される。すなわち、プロジェクター10が、一方の画像データに対して他方の画像データを相対的に画像間距離Wだけシフトさせて投写している。
【0043】
図5は、「3次元モード」における観察者から3次元画像が観察される様子を示した模式図である。観察者は、当該周波数に同期して片眼ずつシャッターが開閉するシャッター式の眼鏡を装着し(眼鏡は図示省略)、第1画像データを右目、第2画像データを左目でそれぞれ観察する。このように各画像データをそれぞれ片眼で観察することにより、視線の輻輳点がスクリーンの手前に形成され、観察者が脳内で立体画像を形成する。この場合、書画カメラまたはプロジェクターから当該眼鏡に対して同期信号を出力することが望ましい。なお、画像間距離Wは、人間の一般的な両眼間隔である略65mmに設定することが望ましい。また、2つのカメラ位置を変化させることによって、輻輳点Cの位置を変化させ立体度を変化させることも可能である。
【0044】
なお、各画像データに異なる方向の偏光を与えて表示し、観察者が片眼ずつに画像データに対応した偏光フィルムを備えた眼鏡を装着するようにしてもよい。この偏光式の眼鏡を用いる場合、2つの画像データの表示方法として、上記したように2つの画像データを交互に出力することで時間的に分割表示させても良いし、スクリーンSC内に例えばストライプ状に2つの画像データを配置することで空間的に分割表示させても良い。後者の場合、画像処理部14が2つの撮像画像データをストライプ状に合成する合成処理を行って出力する画像データを生成する。
【0045】
図6は、「2次元モード」における2つの画像データの表示例である。「2次元モード」は、さらに表示形態として、「通常形態」、「比較形態」、「同時表示形態」、「個別切替形態」および「複合切替形態」と、に分類される。図6(a)に示すように、「通常形態」は、フレームメモリー11に記憶された1つの画像データのみを表示するモードである。同形態では、画像処理部14により、1つの画像データに対し、スクリーンSCの表示領域全体に表示するためのサイズ調整処理、データ形式の変換等の標準の画像処理を行って、1つの画像データを生成する。なお、図6(a)では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とのいずれか一方を表示している。また、ON状態のカメラが1つであった場合に、制御部13により強制的に決定される表示形態である。すなわち、ON状態のカメラが1つであった場合、「3次元モード」および「2次元モード」における「比較形態」、「同時表示形態」、「個別切替形態」および「複合切替形態」は選択不可となる。
【0046】
図6(b)に示すように、「比較形態」は、フレームメモリー11に記憶された2つの画像データを重畳させて表示するモードである。同形態では、画像処理部14により、2つの画像データのうち1つの画像データに対して透過処理すると共に、透過処理済みの画像データを、透過処理していない画像データの上に重ね合わせる(重畳する)合成処理を施す。その後、上記のサイズ調整処理および標準の画像処理を施して、1つの画像データを生成する。なお、図6(b)では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)を透過処理して、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)の上に重ね合わせたものを表示している。
【0047】
図6(c)に示すように、「同時表示形態」は、フレームメモリー11に記憶された2つの画像データを隣接させて表示するモードである。同形態では、画像処理部14により、2つの画像データが隣接して表示されるように、当該2つの画像データに対し縮小処理および合成処理を施す。その後、上記標準の画像処理を施して、1の画像データを生成する。なお、図6(c)の表示例では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とを、それぞれ横方向に縮小しつつ隣接させたものを表示している。
【0048】
図6(d)に示すように、「切替表示形態」は、フレームメモリー11に記憶された2つの画像データを切り替えて表示するモードである。同形態では、画像処理部14により、2つの画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、2つの画像データを生成する。図6(d)では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)とを切り替えて表示している。
【0049】
図6(e)に示すように、「複合切替形態」は、フレームメモリー11に記憶された2つの画像データと、これらを合成した画像データとを切り替えて表示するモードである。同形態では、画像処理部14により、2つの画像データに対し、当該2つの画像データが隣接して表示されるように、縮小処理および合成処理を施して、1つの画像データ(第1の画像データ)を生成すると共に、2つの画像データのそれぞれに対し、個別に「通常モード」と同様の画像処理を施して、2つの画像データ(第2の画像データ)を生成する。これにより、切替対象となる、合成した画像データとカメラ別の画像データと、の合計3つの画像データが生成される。図6(e)では、正方形の図形の画像データ(第1カメラ2の画像データ)と、円形の図形の画像データ(第2カメラ3の画像データ)と、それらを縮小して隣接させた画像データと、を切り替えて表示している。
【0050】
なお、2つの撮像部の離間距離、2つの撮像部と設置面との距離、および2つの撮像部の光軸が前記設置面に対して成す角度を2次元表示において分割表示するためのデータとして使用しても良い。
【0051】
次に、図7のフローチャートを参照し、書画カメラ1の画像データ出力処理について説明する。なお、本画像データ出力処理では、第1カメラ2および第2カメラ3がいずれもON状態であり、両カメラ2、3によって撮像を行うことを前提として説明を進める。図示のように、まず、書画カメラ1(制御部13)は、第1カメラ2および第2カメラ3によって撮像対象A(撮像対象A1、または撮像対象A2およびA3)を撮像する(S01:撮像ステップ)。そして、撮像した2つの撮像画像データをフレームメモリー11により、一時的に記憶する(S02)。そして、表示モード切替スイッチ31の操作信号に基づいて、表示モードを決定する(S03)。
【0052】
表示モードを「3次元モード」に決定した場合(S03:3次元モード)、一時記憶した2つの撮像画像データに対して上記した画像処理を施して、2つの画像データを生成する(S04:画像処理ステップ)。そして、カメラ位置取得部16により、位置情報を取得して(S05:パラメータ取得ステップ)、取得した位置情報からプロジェクター10に表示させる2つの画像データの画像間距離Wを算出する(S06)。そして、生成した2つの画像データを所定の周波数で交互に出力すると共に、算出した画像間距離Wを当該2つの画像データに関連付けてプロジェクター10に出力する(S07:出力ステップ)。なお、プロジェクター10は、画像間距離Wと、プロジェクター10およびスクリーンSCの距離と、を考慮して、2つの画像データを表示させることが望ましい。
【0053】
一方、表示モードを「2次元モード」に決定した場合(S03:2次元モード)、さらに、表示形態切替スイッチ32の操作信号に基づいて、表示形態を決定する(S08)。そして、画像処理部14により、一時記憶した2つの撮像画像データに対して、決定した表示形態に応じた上記の所定の画像処理を施して、画像データを生成する(S09)。上記したように、「比較形態」および「同時表示形態」の場合、1個の画像データを生成し、「個別切替形態」の場合、2個の画像データを生成し、「複合切替形態」の場合、3個の画像データを生成する。そして、出力部15は、画像処理部14により1個の画像データが生成された場合(「比較モード」および「同時表示モード」の場合)は、それを出力し、複数の画像データが生成された場合(「個別切替モード」および「複合切替モード」の場合)は、不図示の操作子による表示切替信号の取得に伴って、出力対象となる画像データを切り替えて、プロジェクター10に出力する(S10)。なお、書画カメラ1は、ON状態のカメラが1つである場合、強制的に「2次元モード」における「通常形態」の処理を行う。
【0054】
なお、表示モードが「3次元モード」に決定された場合(S03:3次元モード)、2つのカメラ2、3の位置情報を取得した後、当該2つのカメラ2,3の位置(各カメラ2、3の撮像角度、2つのカメラ2、3の離間距離、2つのカメラ2、3の設置距離(設置面Gからの距離))が合致しているか否かを判別して、合致していない場合は、カメラ位置を修正する旨を示すメッセージ画像を出力する構成としてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態の書画カメラ1によれば、上記の「3次元モード」において、2つのカメラ2、3によって撮像した視差のある2つの画像データを、プロジェクター10に出力し表示させることによって、観察者からみて立体的な3次元画像を提供することができる。また、本実施形態においては、2つの画像データの画像間距離Wをプロジェクター10に出力すると共に、2つの画像データを交互に出力することによって、プロジェクター10に3次元画像を表示する機能が備わっていない場合でも、観察者に3次元画像を提供することができる。
【0056】
なお、「3次元モード」において、カメラ位置取得部16により取得した位置情報(各カメラ2、3と設置面Gとの距離、各カメラ2、3の離間距離、および各カメラ2、3の光軸が設置面Gに対して成す角度:パラメータ)を2つの画像データに関連付けてプロジェクター10に出力する構成としても良い。この場合、これらの位置情報を受け取ったプロジェクター10が、当該位置情報から画像間距離Wを算出する距離算出部を備えていることが望ましい。
【0057】
また、本書画カメラ1は、「2次元モード」および「3次元モード」のいずれかを選択可能であるため、撮像対象Aが平面物であるか立体物であるかによって、また、書画カメラの1の用途によって、両モードを使い分けることができる。例えば、学校の授業において、文章や平面図等を表示させる場合に、「2次元モード」を選択し、立体模型等を表示させる場合に、「3次元モード」を選択すれれば、より臨場感のある画像を観察者に提供し、より有効な授業を実施することができる。
【0058】
なお、本実施形態の書画カメラ1は、2つのカメラ2、3を備え、最大2つの画像データを表示させる構成であったが、3つ以上のカメラを備えた構成であっても良い。この場合、「3次元モード」において、3つ以上のカメラから同時に同一の撮像対象A1を撮像する2つのカメラを選択する選択部を備えていることが望ましい。この場合、選択部は、スイッチ方式でユーザーが都度カメラを選択できる構成としてもよいし、予め特定の2つのカメラを3次元用として設定しておく構成としてもよい。また、3つ以上のカメラから複数ペアのカメラを選択し、当該複数ペアのカメラにより順次撮像された複数ペアの画像データを合成することも可能である。この場合、複数ペアのカメラがそれぞれ異なる角度から同一の撮像対象A1を撮像すれば、より精巧な3次元画像を観察者に提供することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、書画カメラ1が、ケーブル18を介した有線接続によって、プロジェクター10に接続して、画像データを出力する構成であったが、無線接続によって、プロジェクター10に接続して、画像データを出力する構成であっても良い。かかる場合、書画カメラ1にはバッテリーを内蔵する。また、PC(Personal
Computer)を経由して、プロジェクター10に接続する構成であっても良い。また、書画カメラ1が撮像した2つの画像データを表示できるものであれば、表示装置はプロジェクター10に限られるものではなく、その他の表示装置も使用可能である。
【0060】
なお、本実施形態においては記載を省略したが、画像データは、静止画データでも良いし、動画データでも良い。また、本実施形態においては、生成した画像データを、出力部15によって随時出力する構成であったが、これと共に、生成した画像データを記録媒体(USBメモリーやSDメモリーカード)に保存する構成としても良い。かかる場合、画像データを保存することができるため、画像データを別のタイミングで使うことができると共に、画像データの移動や保管を行うことができる。なお、画像データを保存する際、静止画データとして画像データを保存しても良いし、連続する複数の画像データを動画データとして保存する構成であっても良い。
【0061】
なお、2つ画像データの出力方法は、上記した交互出力ではなく、右目用画像データおよび左目用画像データをそれぞれ個別に出力してもよい。この場合、2つの画像データを取得した表示装置が当該2つの画像データを同時(時間的または空間的分割表示)に表示させる表示処理を行うことが望ましい。
【0062】
なお、書画カメラ1は、上記のカメラスタンド4に替えて、各カメラ2,3に対してアーム型の支持軸が備えられた構成でもよい。この場合、支持軸の角度を検出する角度センサ等から2つのカメラ2,3の位置情報を取得することが望ましい。
【0063】
なお、本実施形態においては、選択可能な表示モードとして、「3次元モード」および「2次元モード」を含む構成であったが、必ずしも両方のモードを含む必要はなく、少なくとも「3次元モード」が表示可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0064】
1:書画カメラ 2:第1カメラ 3:第2カメラ 4:カメラスタンド 10:プロジェクター 13:制御部 15:ビデオ出力部 16:カメラ位置取得部(パラメーター取得部) 21:鉛直支持軸 22:水平支持軸 23:支持フレーム 31:表示モード切替スイッチ A1:撮像対象 SC:スクリーン W:画像間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置に接続されて用いられる書画カメラであって、
複数の撮像部と、
前記複数の撮像部のうち、2つの撮像部により同一の撮像対象を異なる撮像位置から撮像した2つの画像データを生成する画像処理部と、
前記表示装置により表示される前記2つの画像データの画像間距離を決定するためのパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記表示装置に対して、前記2つの画像データ、並びに前記パラメータまたは前記画像間距離を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする書画カメラ。
【請求項2】
前記表示装置に前記画像間距離を存して2つの画像データを表示させる3次元モードと、前記表示装置に前記画像間距離を存さずに1つ以上の画像データを表示させる2次元モードと、のいずれかに切り替えるモード切替部をさらに備え、
前記モード切替部により前記3次元モードに切替られた場合に、
前記パラメータ取得部は、前記パラメータを取得し、
前記出力部は、前記パラメータまたは前記画像間距離を出力することを特徴とする請求項1に記載の書画カメラ。
【請求項3】
前記モード切替部により前記3次元モードに切替られた場合に、
前記出力部は、前記2つの画像データを所定の周波数で交互に出力することを特徴とする請求項2に記載の書画カメラ。
【請求項4】
前記2つの撮像部は、設置面に対して水平に配設され、
前記パラメータ取得部は、
前記パラメータとして、前記2つの撮像部の離間距離、前記2つの撮像部と前記設置面との距離、および前記2つの撮像部の光軸が前記設置面に対して成す角度を取得することを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の書画カメラ。
【請求項5】
前記2つの撮像部は、当該2つの撮像部の光軸が前記設置面に対して成す角度が同一であることを特徴とする請求項4のいずれかに記載の書画カメラ。
【請求項6】
前記2つの撮像部の離間距離を可変する離間距離可変部、前記2つの撮像部と前記設置面との距離を可変する設置距離可変部、および前記2つの撮像部の光軸が前記設置面に対して成す角度を可変する角度可変部のうち、少なくとも1つをさらに備えたことを特徴とする請求項4または5に記載の書画カメラ。
【請求項7】
3つ以上の撮像部を備え、
前記3つ以上の撮像部のうち、前記2つの撮像部を選択する選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の書画カメラ。
【請求項8】
複数の撮像部を備え、表示装置に接続されて用いられる書画カメラの制御方法であって、
前記複数の撮像部のうち、2つの撮像部により同一の撮像対象を異なる撮像位置から撮像する撮像ステップと、
前記2つの撮像部により撮像した2つの画像データを生成する画像処理ステップと、
前記表示装置により表示される前記2つの画像データの画像間距離を決定するためのパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、
前記表示装置に対して、前記2つの画像データ、並びに前記パラメータまたは前記画像間距離を出力する出力ステップと、を実行することを特徴とする書画カメラの制御方法。
【請求項9】
コンピューターに、請求項8に記載の書画カメラの制御方法における各ステップを実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれかに記載の書画カメラと、
前記表示装置と、を備えたことを特徴とする表示処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−129768(P2012−129768A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278924(P2010−278924)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】