説明

月経困難症の治療のためのα−アドレナリン遮断剤の使用

原発性月経困難症を患う人間の女性への治療上有効な量のα−アドレナリン遮断剤投与を含む、原発性月経困難症の治療方法。例示的なα−アドレナリン遮断剤はフェノキシベンザミン、アルフゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン及びタムスロシン、又はその薬学的に許容される塩又はエステルである。タムスロシンHC1は好ましい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、2004年12月13日提出の米国仮出願番号60/635,925及び2005年10月13日提出の米国仮出願番号60/726,506に対して優先権を主張する。
(発明の背景)
1. 技術分野
本発明は、α−アドレナリン遮断剤を投与する月経困難症の治療のための方法に関する。
【0002】
2. 背景情報
月経困難症とは、月経に伴う周期的な骨盤痛又は筋痙攣を特徴とする症状である。強度及び慢性度(chronicity)は変化しやすく、痛みは腹部及び骨盤部に渡って広がる。時々吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、疲労、神経質、眩暈及び失神といった全身症状を伴う。原発性月経困難症とは、基本病理学(underlying pathology)によれば、続発性月経困難症が除外されたときに存在すると言われている。
【0003】
原発性月経困難症は、月経時に発生する、子宮を覆う粘膜である子宮内膜におけるプロスタグランジンE-2及びF-2αのレベル向上に直接起因すると信じられている。プロスタグランジンのレベルの上昇は、子宮壁における小血管(small vessels)の血管収縮を招き、同様に律動性子宮収縮を招く。不快(discomfort)の原因が血管収縮あるいは筋肉の収縮、又は両方であるかはこれまで不明である。
【0004】
少なくとも一つの資料は、成人女性のおよそ40%が月経痛を持ち、10%が毎月1〜3日間無能力になると報告している。原発性月経困難症は、30歳未満の女性にとって職場を常習的に欠勤する主要な理由であると報告されている。従って、月経困難症が、多くの女性が治療を請け負う(warrant)重要な医療問題であることは明らかである。
【0005】
月経困難症は、最も一般的にはプロスタグランジンの効果と拮抗する非ステロイド性抗炎症剤、及びプロスタグランジンレベルの上昇に相関する長期月経(chronic menstrual)を妨げるホルモン避妊薬により治療されている。残念なことに、これら双方の治療は胃腸、腎臓、肝臓及び心臓血管を含む有害事象(adverse event)の著しい発生率を伴う。より最近では、月経困難症における種々のCox-2阻害剤及びメロキシカムの効能及び耐性を評価する研究が行われている。現在まで、月経困難症に対するより好ましい耐性及び有害事象プロフィールを有する有効な薬剤の確認は示されていない。
【0006】
数名の先行研究者が、妊娠による子宮収縮の緩和(moderating)[Herbert GM et al;Am.J.Obst & Gyn.139:767-80,1981]及び早産の処置[Zupko, I et al; Life Sciences. 61(11):PL159-163, 1997 and Mihalyi A, et al: Clinical and experimental Pharmacology and Physiology.30:164-167,2003]のためのα−アドレナリン遮断剤の使用を調査しているが、月経困難症治療のためのα−アドレナリン遮断剤の使用がこれまでに提案されたことがないのは明らかである。
(発明の簡単な要約)
本発明は、原発性月経困難症を患う女性にα−アドレナリン遮断剤を投与する、原発性月経困難症の治療のための方法を提供する。
【0007】
(発明の詳細な説明)
当該発明に従って、原発性月経困難症はα−アドレナリン遮断剤(α-受容体拮抗薬)の投与によって治療される。
α-1選択性でない薬剤は、有害な副作用(起立性低血圧、頻拍、鼻詰まり及び縮瞳等)の原因となりやすく、またα-1 選択性遮断剤(alpha-1 selective blockade)は月経困難症を治療するために十分であるという理由から、使用される薬剤はα-1選択性(選択性α−1受容体拮抗薬)が好ましい。
従って、発明の実施に好適な薬剤は、例えば、非選択性剤であるフェノキシベンザミン、部分的α-1選択性剤であるアルフゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン、及び高選択性剤であるタムスロシンが挙げられ、α-1選択性剤と併用することが好ましい。これらの薬剤の薬学的に許容される塩又はエステルもまた使用される。当該発明の実施に最も好ましい薬剤は、タムスロシン及びその塩酸塩である。
本発明の実施のために、α遮断剤は経口経路を経て投与されることが好ましい。前述の薬剤の経口投与に好適な薬学的組成物は、それ自体既知である。
【0008】
タムスロシンの調製、タムスロシン、特に塩酸塩を含むその薬学的に許容される塩、及びその薬学的な調製は、米国特許US4,703,063及びUS4,772,475に記載されている。
タムスロシン又はその薬学的に許容される塩の投与には、米国特許6436441及びWO0110466の教示に従い、ハイドロゲル型徐放性薬学的組成物が好ましい。
リストされたα遮断剤の好適な投与量を表1に示す。
(表1)

本発明に従い、α遮断剤は任意に非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と共に投与してもよい。好適なNSAIDは、例えば、ジクロフェナック、ジフルニサル、エトドラック、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメイト、メフェナミック酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、サリンダック、テノキシカム、チアプロフェン酸及びトルメチンである。これら月経困難症の治療に好適なNSAIDの投与量は、医学の当業者によく知られている。当該NSAIDは分離投与形態で投与してもよく、又はα遮断剤と組み合わせて、一定投与量の組み合わせとしてもよい。
【0009】
また、本発明に従い、α遮断剤は任意に既知の鎮痙薬ヒオシン-N-ブチルブロミド(hyosine-N-butylbromide)と共に投与してもよい。月経困難症の治療に好適なヒオシン-N-ブチルブロミドの投与量は、医学の当業者によく知られている。当該ヒオシン-N-ブチルブロミドは分離投与形態で投与してもよく、又はα遮断剤と組み合わせて、一定投与量の組み合わせとしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発性月経困難症を患う人間の女性への治療上有効な量のα−アドレナリン遮断剤投与を含む、原発性月経困難症の治療方法。
【請求項2】
α−アドレナリン遮断剤が、フェノキシベンザミン、アルフゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン及びタムスロシン、又はその薬学的に許容される塩又はエステルから成る群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
α−アドレナリン遮断剤がタムスロシン又はその薬学的に許容される塩又はエステルである請求項1記載の方法。
【請求項4】
α−アドレナリン遮断剤がタムスロシン塩酸塩である請求項3記載の方法。
【請求項5】
タムスロシン塩酸塩が一日につき一回0.2〜3.0mgの投与量で経口投与される請求項4記載の方法。
【請求項6】
タムスロシン塩酸塩が一日につき一回0.8〜1.2mgの投与量で経口投与される請求項5記載の方法。
【請求項7】
人間の女性における原発性月経困難症の治療のための薬剤の調製を目的とする、α−アドレナリン遮断剤の使用。
【請求項8】
α−アドレナリン遮断剤が、フェノキシベンザミン、アルフゾシン、ドキサゾシン、テラゾシン、プラゾシン及びタムスロシン、又はその薬学的に許容される塩又はエステルから成る群から選択される請求項7記載の使用。
【請求項9】
α−アドレナリン遮断剤がタムスロシン、又はその薬学的に許容される塩又はエステルである請求項7記載の使用。
【請求項10】
α−アドレナリン遮断剤がタムスロシン塩酸塩である請求項9記載の使用。
【請求項11】
タムスロシン塩酸塩が、一日につき一回0.4〜1.6mgの投与量で経口投与される請求項10記載の使用。
【請求項12】
タムスロシン塩酸塩が、一日につき一回0.8〜1.2mgの投与量で経口投与される請求項10記載の使用。

【公表番号】特表2008−523143(P2008−523143A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546726(P2007−546726)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/043657
【国際公開番号】WO2006/065555
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(500091335)ベーリンガー インゲルハイム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (55)
【Fターム(参考)】