説明

有効な動作範囲を自己較正するための方法および手段

【課題】 複雑な較正処理を必要とせずに、操縦デバイスを自己較正する制御方法を提供する。
【解決手段】 この制御方法は、有効な動作範囲を較正するものである。そのために、この制御方法は、デフォルト較正範囲をロードするステップと、その後、入力デバイスから供給される、新しい較正範囲に関する入力を監視するステップとを含んでいる。次に、演算手段によって、新しい較正範囲が障害を与えるか否かが判定される。演算手段は、障害を与えないと判定すると、有効な動作範囲を拡大するために、新しい較正範囲に基づいて出力を再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、較正処理のための方法および手段に関する。より詳細には、本発明は、ミニジョイスティック、または、その他同様のものの正確な制御に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスが、相互に公差の異なる、交換可能な部品を有していると、電気的および機械的な較正が必要になる。多くの場合、これらの部品を交換するときに用いられる較正処理は、多大の時間を浪費し、また面倒なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に鑑み、本発明は、自己較正する、改良された制御システムを提供することを、主要な目的としている。
【0004】
本発明は、また、複雑な較正処理を必要としない較正方法を提供することを、さらなる目的としている。
【0005】
本発明のこれらの、および他の目的、特徴、または利点は、明細書および請求項から明白になると思う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明は、有効な動作範囲を較正する方法を提供するもので、この方法は、デフォルト較正範囲をロードするステップと、その後、演算手段を用いて、入力デバイスからの、新しい較正範囲に関する入力を監視するステップとを含んでいる。演算手段は、新しい較正範囲を受け取ると、新しい較正範囲が障害を与えるか否かを判定する。演算手段は、障害を与えないと判定すると、有効な動作範囲を拡大するために、新しい較正範囲に基づいて出力を再設定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、較正を必要とするデバイスのための制御システム10の概要図である。好適な一実施形態において、制御システム10は、交換可能なミニジョイスティックを備えた、トラクタローダのバックホーのジョイスティックに対するものである。制御システム10は、出力18を発生させ、かつ、センサ20から情報を受け取る演算手段16に入力を供給する、中立位置14を備えた入力デバイス12を有している。
【0008】
図2は、演算手段16による演算処理のフローチャートである。その演算処理は、演算手段が、入力デバイスの軸を初期化するステップ22で開始する。次に、ステップ24において、較正がクリアされて、デフォルト較正範囲がロードされる。次いで、ステップ26において、入力デバイス12を中立位置に戻す必要があるか否かを決定するために、インクリメント較正障害タイマが用いられる。その後、ステップ28において、上に説明したように、入力デバイス12からサンプル・アナログ信号が供給され、その結果、演算手段16から出力18が供給される。
【0009】
ステップ30において、障害チェックが行なわれる。まず、ステップ32において、演算手段によって、障害が進行中か否かについての判定が行われる。ステップ32において、障害が進行中であると判定された場合には、演算手段は、ステップ34において、直近の有効出力を回復させる。その後、ステップ36において、この情報が、インクリメント較正障害タイマに入力される。このとき、ステップ38において、アクティブな障害が存在するか否かについての判定がなされる。
【0010】
アクティブな障害が存在すると判定された場合には、ステップ40において、較正はクリアされる。ステップ38において、アクティブな障害が存在しないと判定された場合には、または、ステップ40において、較正がクリアされた場合には、ステップ42において、出力が、適宜に再設定される。
【0011】
障害が進行中か否かについてのステップ32において、演算手段によって、障害が進行中ではないと判定された場合には、ステップ44において、インクリメント較正障害タイマのカウントが0より大きいか否かについての判定がなされる。0であると判定された場合には、ステップ46において、学習する必要のある、新しい較正範囲が存在するか否かについての判定がなされる。
【0012】
学習する必要のある、新しい較正範囲が存在しないと判定された場合には、ステップ42において、その情報が、出力を再設定するために用いられる。しかしながら、存在すると判定された場合には、次に、ステップ48において、演算手段が、この新しい較正範囲を学習する。この場合には、ステップ50において、演算手段が、出力を再計算して、再設定する。ついで、演算処理はステップ42に進んで、その情報が渡される。
【0013】
ステップ44において、演算手段によって、インクリメント較正障害タイマのカウントが0より大きいと判定された場合には、次に、ステップ52において、軸が中立位置にあるか否かについての判定がなされる。ステップ52において、軸が中立位置にないと判定された場合には、次に、ステップ42において、この情報が、出力を再設定するために用いられる。
【0014】
しかし、ステップ52において、軸が中立位置にあると判定された場合には、次に、ステップ54において、インクリメント較正障害タイマがリセットされる。それによって、ステップ56において、デフォルト較正範囲がリセットされ、ステップ58において、較正がセットされる。この場合には、ステップ50において、出力が、再計算されて、再設定される。ついで、演算処理はステップ42に進んで、この情報が渡される。
【0015】
ステップ42において、出力の再設定が生じると、ステップ60において、演算手段16によって、出力が較正されているか否かについての判定がなされる。出力が較正されていないと判定されると、ステップ62において、障害状態が検出されて、計算される。次に、ステップ64において、障害状態に関する出力が、もとのサンプル・アナログ信号に送られて、演算処理はステップ28に戻る。したがって、演算手段16を用いることによって、制御システム10は、較正手順を網羅的に行う必要なしに、較正範囲を学習することができる。
【0016】
動作においては、開始に当たって、デフォルト較正範囲がロードされる。動作中に、演算手段16は、設定される動作範囲を拡大するような、新しい較正範囲に関する入力を監視している。新しい有効な較正範囲を獲得すると、演算手段は、その値を見つけ出して、すなわち「学習して」、この新しい較正範囲に基づいて、出力を再設定する。演算手段16は、障害を検出すると、直近の有効な出力を保持しておき、そして、入力が有効な較正範囲内に戻るか、または、インクリメント較正障害タイマが終了するまで、学習することを不能にする。
【0017】
インクリメント較正障害タイマが終了すると、障害が発生して、出力は、入力デバイス12が中立位置14に戻るまで、障害を指示している。入力デバイス12が中立位置14に達すると、障害がクリアされて、デフォルト較正範囲が再ロードされる。
【0018】
インクリメント較正障害タイマが終了していなければ、演算手段は、その時点における学習値のセットで動作している。しかしながら、入力デバイス12が、中立位置14に達すると、デフォルト較正範囲が再ロードされて、演算手段は、新しい較正範囲に関する入力を監視し始める。これは、誤った値が学習されていないことを確実にするためである。
【0019】
当業者には容易に理解されるように、演算手段に対して用いられる較正範囲を、電圧、電流、パーセンテージ、または、その他同様のものに基づいて設定することができる。好適な一実施形態においては、演算手段に対して用いられる較正範囲は、電圧に基づいて設定される。
【0020】
動作の一例として、例えば(−1000〜1000)の出力範囲のような、任意の出力範囲で、演算手段の出力を設定することができる。その場合には、演算手段に対して用いられる較正範囲が、電圧に基づいて設定されていると、デフォルト最小較正電圧によって、センサ出力がカウント(−1000)に達する下限が規定される。演算手段16は、最小較正電圧を監視しており、演算手段16が、その時点における最小較正電圧より低い電圧を検出すると、演算手段16は、新しい電圧を学習する。そして、出力18は、この新しく学習された電圧に再設定される。
【0021】
デフォルト最小中立較正電圧によって、センサ出力がカウント(−1)に達する極限が規定される。このデフォルト最小中立較正電圧は、演算手段16によって監視されず、そして、最小中立較正電圧と最大中立較正電圧との間が、中立帯として定められる。同様に、デフォルト最大中立較正電圧によって、センサ出力がカウント(1)に達する極限が規定される。最小中立較正電圧と最大中立較正電圧との間が、中立帯として定められているから、このデフォルト最大中立較正電圧も、演算手段16によって監視されない。
【0022】
最大較正電圧に関して言及すると、デフォルト最大較正電圧によって、センサ出力がカウント(1000)に達する極限が規定される。演算手段16は、この最大較正電圧を監視しており、そして、演算手段16が、その時点における最大較正電圧より大きい電圧を検出したとき、演算手段16は、この新しい電圧を学習する。このとき、出力は、この新しく学習された電圧に再設定される。
【0023】
インクリメント較正障害タイマには、出力に障害状態を検出する前に、インクリメント較正障害タイマが費やす、あらかじめ定められた量の時間が設定されている。一実施形態において、あらかじめ定められた量の時間は、数ミリ秒である。ステップ62において、障害状態の発生が検出されると、入力デバイス12は、中立位置14に戻ることを強制されて、その後、有効な出力が生成される。
【0024】
電圧を較正する一実施形態において、非常に高い電圧状態、非常に低い電圧状態、および冗長タイプの状態に対して別々の、複数のインクリメント較正障害タイマが存在する。具体的には、インクリメント較正障害タイマは、軸ごとではなくて、システムごとに特定されている。
【0025】
上述のように、本明細書は、制御システム10が演算手段16を用いて自己較正する較正方法を開示している。具体的には、演算手段16が、新しい較正範囲のための新しい入力を監視していて、出力を再設定することによって、有効な動作範囲を増加させることができる。さらに、演算手段は、正しくない出力を最小限にするために、システムごとに障害を決定することができるように設定されている。したがって、少なくとも上述の目的の全てが、達成される。
【0026】
当業者には容易に認識されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明のデバイスに、種々の変更および変形をなすことができる。そのような変更および変形はすべて、請求項の範囲内にあり、請求項によってカバーされるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】操縦デバイスのための制御システムの概要図である。
【図2】操縦デバイスを較正するための演算手段の機能を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 制御システム
12 入力デバイス
14 中立位置
16 演算手段
18 出力
20 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デフォルト較正範囲をロードするステップと、
入力デバイスからの、新しい較正範囲に関する入力を監視するステップと、
前記新しい較正範囲が、障害を与えるか否かを判定するステップと、
有効な動作範囲を拡大するために、前記新しい較正範囲に基づいて、演算手段による出力を再設定するステップとを含んでなる、
有効な動作範囲の較正方法。
【請求項2】
障害が検出されたときに、直近の有効出力を保持しておくステップをさらに含む、
請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
あらかじめ定められた量の時間内に、障害が検出されたときに、障害タイマにより、前記入力デバイスを中立位置に戻す、請求項1に記載の較正方法。
【請求項4】
前記入力デバイスが前記中立位置に戻されたとき、前記デフォルト較正範囲を再ロードする、請求項3に記載の較正方法。
【請求項5】
前記新しい較正範囲は、電圧に基づいて設定される、請求項1に記載の較正方法。
【請求項6】
前記新しい較正範囲は、電流に基づいて設定される、請求項1に記載の較正方法。
【請求項7】
前記デフォルト較正範囲は、バックホーのジョイスティックに対するものである、請求項1に記載の較正方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−305380(P2008−305380A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−61029(P2008−61029)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(501004464)サウアー ダンフォス インコーポレイテッド (31)
【Fターム(参考)】