説明

有機ルテニウム錯体及び当該錯体を用いた金属ルテニウム含有薄膜の製造法

【課題】酸化ルテニウムの混入がない、化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、X及びYは直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6のアルキル基、Zは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。Lは、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエンのいずれかを示す。)で示されるβ-ジケトナトとジエンとを配位子とする有機Ru錯体又はその溶媒溶液を供給源として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition法;以下、CVD法と称する))による金属ルテニウム含有薄膜の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAM等の半導体デバイスの薄膜電極材料として、例えば、金属ルテニウムの比抵抗値等の電気特性が優れていることを利用した、金属ルテニウムの使用が検討されている。これらのルテニウム含有薄膜の製造法としては、例えば、均一な薄膜を製造し易いCVD法による成膜が最も盛んに採用されており、それに適した原料化合物が求められている。
【0003】
ところで、CVD法によるルテニウム原子を含有する薄膜製造用原料としては、例えば、β-ジケトナトやシクロペンタジエニル誘導体を配位子とするルテニウム錯体が幅広く使用されつつある。これらの配位子を有するルテニウム錯体は、安定性や昇華性に優れており、CVD法におけるルテニウム源としては有用である。
【0004】
その中でも、特に、ジエン化合物を配位子として有するβ-ジケトナトルテニウム錯体と酸素ガスとを高温下で反応させて、CVD法により、金属ルテニウム薄膜と酸化ルテニウム薄膜の混合膜を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、酸素ガスを使用することにより、抵抗値が金属ルテニウムに比べて極端に大きい酸化ルテニウムの混入が避けられない上に、成膜温度が高いため、ルテニウム薄膜中に炭素原子などの不純物原子の混入が起こることで、比抵抗値を悪化させている。
【特許文献1】特開2003-306472号公報
【非特許文献1】J.Phys.IV France,11,Pr3-325(2001)
【0005】
更に、β-ジケトナトとカルボニルとを配位子とするルテニウム錯体と水素とを高温下で反応させて、CVD法により、金属ルテニウム薄膜とを得る方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法でさえ、水素ガスを使用しているにも関わらず、比抵抗値を低下させる酸化ルテニウムが混入している(薄膜中の酸素含量が2〜3%である)。
【特許文献2】米国特許第6,303,809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、酸化ルテニウムの混入がない、化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法を提供するものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、X及びYは、直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Zは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。Lは、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエンのいずれかを示す。)
で示されるβ-ジケトナトとジエンとを配位子とする有機ルテニウム錯体によって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、酸化ルテニウムの混入がない、化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のβ-ジケトナト及び少なくともふたつの二重結合をもつ不飽和炭化水素化合物を配位子とする有機ルテニウム錯体は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、X及びYは、直鎖又は分枝状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素原子数1〜6の直鎖又は分枝状のアルキル基を示すが、XとYに含まれる炭素原子数の合計は2〜10である。又、Lは、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエンのいずれかを示す。
【0012】
本発明の有機ルテニウム錯体の配位子であるβ-ジケトナトの元となるβ-ジケトンは、公知の方法により容易に合成が可能な化合物である。
【0013】
本発明のβ-ジケトナト及び少なくともふたつの二重結合をもつ不飽和炭化水素化合物を配位子とする有機ルテニウム錯体の具体例としては、例えば、式(2)から式(31)で示される。
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
なお、CVD法においては、薄膜形成のために当該有機ルテニウム錯体を気化させる必要があるが、本発明の有機ルテニウム錯体を気化させる方法としては、例えば、有機ルテニウム錯体自体を気化室に充填又は搬送して気化させる方法だけでなく、有機ルテニウム錯体を適当な溶媒(例えば、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。)に希釈した溶液を液体搬送用ポンプで気化室に導入して気化させる方法(溶液法)も使用出来る。
【0017】
基板上へのそれぞれの金属の蒸着方法としては、公知のCVD法で行うことが出来、例えば、常圧又は減圧下にて、好ましくは水素源、酸素源又は不活性ガスとともに、実質的に同時に、当該有機ルテニウム錯体を加熱した基板上に送り込んで、ルテニウム薄膜を蒸着させる方法が使用出来る。又、プラズマCVD法でルテニウム薄膜を蒸着させる方法も使用出来る。
【0018】
当該有機ルテニウム錯体を用いて金属ルテニウム膜を蒸着させる際、反応系内の圧力は、好ましくは1Pa〜200kPa、更に好ましくは10Pa〜110kPaであり、成膜対象物の温度は、好ましくは30〜500℃、更に好ましくは70〜450℃である。又、水素源又は酸素源による金属薄膜を蒸着させる際の全ガス量に対するそれらの含有割合は、好ましくは0.05〜95容量%、更に好ましくは0.1〜90容量%である(残りは不活性ガスである)。
【実施例】
【0019】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0020】
実施例1(ビス(アセチルアセトナト)(1,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)(以下、[Ru(acac)2(1,4hd)]と称する)の合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容量100mlのフラスコに、塩化ルテニウム三水和物3.08g(11.8mmol)、1,4-ヘキサジエン2.13g(25.9mmol)及び1-プロピルアルコール22mlを加え、攪拌しながら80℃で3時間反応させた後、95℃にした。ここにアセチルアセトン4.0g(40mmol)及び水酸化ナトリウム1.47g(36.8mmol)を混合した水溶液を滴下し、攪拌しながら5分反応させた。反応後、ヘキサン50ml及び水50mlを加え、有機層を分液した後に、シリカゲルを加えた。有機層を濾過して濃縮後、濃縮物を減圧下で蒸留(140℃、41Pa)し、黄褐色粘性液体として、ビス(アセチルアセトナト)(1,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)1.73gを得た(単離収率:38.5%)。
【0021】
なお、ビス(アセチルアセトナト)(1,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0022】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.19(2H,m)、1.50(3H,m)、1.73〜2.16(12.5H,m)、2.72(0.5H,m)、3.26(1.1H,m)、3.67(0.9H,m)、3.99(1.1H,m)、4.79(0.9H,m)、5.20〜5.51(2H,m)
元素分析(C16H24O4Ru);炭素:50.2%、水素:6.45%、ルテニウム:26.3%
(理論値;炭素:50.4%、水素:6.34%、ルテニウム:26.5%)
MS(m/e);382、300、43
【0023】
実施例2(ビス(アセチルアセトナト)(1,3-ヘキサジエン)ルテニウム(II)(以下、[Ru(acac)2(1,3hd)]と称する)の合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容量100mlのフラスコに、塩化ルテニウム三水和物3.09g(11.8mmol)、1,3-ヘキサジエン2.14g(26.1mmol)及び1-プロピルアルコール22mlを加え、攪拌しながら80℃で3時間反応させた後、95℃にした。ここにアセチルアセトン4.1g(40.9mmol)及び水酸化ナトリウム1.46g(36.5mmol)を混合した水溶液を滴下し、攪拌しながら8分反応させた。反応後、ヘキサン50ml及び水50mlを加え、有機層を分液した後に、シリカゲルを加えた。有機層を濾過して濃縮後、濃縮物を減圧下で蒸留(140℃、16Pa)し、黄褐色粘性液体として、ビス(アセチルアセトナト)(1,3-ヘキサジエン)ルテニウム(II)1.79gを得た(単離収率:39.7%)。
【0024】
なお、ビス(アセチルアセトナト)(1,3-ヘキサジエン)ルテニウム(II)は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0025】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.07(3H,m)、1.39〜1.47(2H,m)、1.82〜2.16(12H,m)、3.14〜4.11(4.7H,m)、4.61(0.3H,m)、5.14〜5.45(2H,m)
元素分析(C16H24O4Ru);炭素:50.2%、水素:6.45%、ルテニウム:26.3%
(理論値;炭素:50.4%、水素:6.34%、ルテニウム:26.5%)
MS(m/e);382、300、43
【0026】
実施例3(ビス(アセチルアセトナト)(2,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)(以下、[Ru(acac)2(2,4hd)]と称する)の合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容量100mlのフラスコに、塩化ルテニウム三水和物2.54g(10.7mmol)、2,4-ヘキサジエン1.72g(20.9mmol)及び2-プロピルアルコール20mlを加え、攪拌しながら70℃で3時間反応させた後、85℃にした。アセチルアセトン3.7g(37.0mmol)及び水酸化ナトリウム1.29g(32.3mmol)を混合した水溶液を滴下し、攪拌しながら0.5時間反応させた。反応後、メチルシクロヘキサン20ml及び水20mlを加え、有機層を分液した後に、有機層を濃縮後、濃縮物を減圧下で蒸留(145℃、39Pa)し、黄色固体として、ビス(アセチルアセトナト)(2,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)2.70gを得た(単離収率:66.0%)。
【0027】
なお、ビス(アセチルアセトナト)(2,4-ヘキサジエン)ルテニウム(II)は、以下の物性値で示される化合物である。
【0028】
融点;95℃
IR(KBr(cm-1));3006、2966、2908、2848、1568、1518、1431、1400、1367、1266、1204、1025、969、934、908、771、684、661、636、624、612、550、440
(β-ジケトン特有のピーク(1622cm-1)が消失し、β-ジケトナト特有のピーク(1568cm-1)が観測された。
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.39(1.6H,d)、1.46(4.4H,d)、1.75(1.4H,s)、1.84(4.6H,s)、2.14(6H,m)、3.10(0.5H,m)、3.33(1.5H,m)、3.72(1.5H,m)、4.59(0.5H,m)、5.16(0.5H,s)、5.42(1.5H,s)
元素分析(C16H24O4Ru);炭素:50.2%、水素:6.45%、ルテニウム:26.3%
(理論値;炭素:50.4%、水素:6.34%、ルテニウム:26.5%)
MS(m/e);382、300、43
【0029】
実施例4(ビス(アセチルアセトナト)(3-メチル-1,3-ペンタジエン)ルテニウム(II)
(以下、[Ru(acac)2(1,3pd3m)]と称する)の合成
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容量100mlのフラスコに、塩化ルテニウム三水和物3.21g(12.3mmol)、3-メチル-1,3-ペンタジエン2.92g(35.6mmol)及び1-プロピルアルコール22mlを加え、攪拌しながら80℃で3.5時間反応させた後、アセチルアセトン4.1g(41.3mmol)及び水酸化ナトリウム1.57g(39.3mmol)を混合した水溶液を滴下し、攪拌しながら5分反応させた。反応後、ヘキサン60ml及び水50mlを加え、有機層を分液した後に、有機層を濃縮後、濃縮物を減圧下で蒸留(145℃、23Pa)し、黄褐色粘性液体として、ビス(アセチルアセトナト)(3-メチル-1,3-ペンタジエン)ルテニウム(II)2.90gを得た(単離収率:61.2%)。
【0030】
なお、ビス(アセチルアセトナト)(3-メチル-1,3-ペンタジエン)ルテニウム(II)は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0031】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.05(0.9H,s)、1.25(2.1H,s)、1.36(3H,m)、1.77〜2.15(12H,m)、2.93(0.31H,m)、3.36(1.3H,m)、3.57(0.75H,m)、3.78(0.7H,m)、3.84(0.38H,m)、4.07(0.31H,m)、4.36(0.25H,m)、5.11〜5.61(2H,m)
元素分析(C16H24O4Ru);炭素:50.2%、水素:6.45%、ルテニウム:26.3%
(理論値;炭素:50.4%、水素:6.34%、ルテニウム:26.5%)
MS(m/e);382、300、43
【0032】
実施例5(ビス(アセチルアセトナト)(2-メチル-1,4-ペンタジエン)ルテニウム(II)(以下、[Ru(acac)2(1,4pd2m)]と称する)の合成)
攪拌装置、温度計及び滴下漏斗を備えた内容量100mlのフラスコに、塩化ルテニウム三水和物3.20g(12.2mmol)、2-メチル-1,4-ペンタジエン2.76g(33.6mmol)及び1-プロピルアルコール22mlを加え、攪拌しながら65℃で3時間反応させた後、アセチルアセトン4.0g(40.0mmol)及び水酸化ナトリウム1.47g(36.8mmol)を混合した水溶液を滴下し、攪拌しながら5分反応させた。反応後、ヘキサン50ml及び水50mlを加え、有機層を分液した後に、シリカゲルを加えた。有機層を濾過して濃縮後、濃縮物を減圧下で蒸留(140℃、35Pa)し、黄褐色粘性液体として、ビス(アセチルアセトナト)(2-メチル-1,4-ペンタジエン)ルテニウム(II)1.21gを得た(単離収率:25.9%)。
【0033】
なお、ビス(アセチルアセトナト)(2-メチル-1,4-ペンタジエン)ルテニウム(II)は、以下の物性値で示される新規な化合物である。
【0034】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));1.16(2H,m)、1.35(1H,m)、1.82〜2.16(13.4H,m)、2.54(0.6H,m)、2.92〜4.29(5H,m)、5.10〜5.58(2H,m)
元素分析(C16H24O4Ru);炭素:50.2%、水素:6.45%、ルテニウム:26.3%
(理論値;炭素:50.4%、水素:6.34%、ルテニウム:26.5%)
MS(m/e);382、300、43
【0035】
実施例6(蒸着実験;金属ルテニウム薄膜の製造)
実施例1〜5で得られた有機ルテニウム錯体を用いて、CVD法による蒸着実験を行い、成膜特性を評価した。
評価には、図1に示す装置を使用した。気化器3(ガラス製アンプル)にあるルテニウム錯体20は、ヒーター10Bで加熱され気化し、マスフローコントローラー1Aを経て予熱器10Aで予熱後導入されたヘリウムガスに同伴し、気化器3を出る。気化器3を出たガスは、マスフローコントローラー1B、ストップバルブ2を経て導入された水素ガスと共に反応器4に導入される。また反応系内圧力は真空ポンプ前のバルブ6の開閉により、所定圧力にコントロールされ、圧力計5によってモニターされる。ガラス製反応器の中央部はヒーターで加熱可能な構造となっている。反応器に導入されたルテニウム錯体は、反応器内中央部にセットされ、ヒーター10Cで所定の温度に加熱された被蒸着基板21の表面上で還元し、基板21上に金属ルテニウム薄膜が析出する。反応器4を出たガスは、トラップ7、真空ポンプを経て、大気中に排気される構造となっている。
【0036】
なお、成膜条件は以下の通りである。
ルテニウム錯体気化温度;90℃
ヘリウムキャリアー流量;30ml/min.
水素流量;120ml/min.
基板材料;SiO2/Si(7mm×40mmサイズの短形)
基板温度;250℃
反応系内圧力;3990Pa
蒸着時間;30分
【0037】
その結果、いずれのルテニウム錯体においても、膜厚110nmの金属ルテニウム膜(XPS分析)が観察された。
【0038】
実施例7(蒸着実験;金属ルテニウム薄膜の製造)
実施例6において、水素ガスの代りに酸素ガスを用いて、下記の成膜条件にて金属ルテニウム薄膜の製造を行った。
【0039】
ルテニウム錯体気化温度;80℃
ヘリウムキャリアー流量;40ml/min.
酸素流量;1ml/min.
希釈ヘリウム流量;160ml/min.(バルブ1から流した)
基板材料;SiO2/Si(7mm×40mmサイズの短形)
基板温度;300℃
反応系内圧力;1750Pa
蒸着時間;10分
【0040】
その結果、いずれのルテニウム錯体においても、膜厚100nmの金属ルテニウム膜(XPS分析)が観察された。
【0041】
実施例8(蒸着実験;金属ルテニウム薄膜の製造)
実施例6において、水素ガスを流通せずに(バルブ2を閉じる)、下記の成膜条件にて金属ルテニウム薄膜の製造を行った。
【0042】
ルテニウム錯体気化温度;100℃
ヘリウムキャリアー流量;40ml/min.
希釈ヘリウム流量;30ml/min.(バルブ1から流した)
基板材料;SiO2/Si(7mm×40mmサイズの短形)
基板温度;350℃
反応系内圧力;990Pa
蒸着時間;5分
【0043】
その結果、いずれのルテニウム錯体においても、膜厚500nmの金属ルテニウム膜(XPS分析)が観察された。
【0044】
該結果より、当該有機ルテニウム錯体が、水素ガス還元雰囲気、酸素ガス雰囲気不活性ガス雰囲気にて優れた金属ルテニウム成膜性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、当該有機ルテニウム錯体を用いた化学気相蒸着法(Chemical Vapor Deposition法;以下、CVD法と称する)による金属ルテニウム含有薄膜の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】蒸着装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
3 気化器
4 反応器
10B 気化器ヒータ
10C 反応器ヒータ
20 原料有機ルテニウム錯体融液
21 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、X及びYは、直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Zは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。Lは、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエンのいずれかを示す。)
で示されるβ-ジケトナトとジエンとを配位子とする有機ルテニウム錯体又はその溶媒溶液をルテニウム供給源として用いることを特徴とする、化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法。
【請求項2】
化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造を、水素源、酸素源又は不活性ガスの存在下で行う請求項1記載の金属ルテニウム含有薄膜の製造法。
【請求項3】
水素源が水素ガスである請求項2記載の化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法。
【請求項4】
酸素源が酸素ガスである請求項3記載の化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法。
【請求項5】
使用する溶媒が、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である、請求項1記載の化学気相蒸着法による金属ルテニウム含有薄膜の製造法。
【請求項6】
一般式(1)
【化2】

(式中、X及びYは、直鎖又は分枝状の炭素原子数1〜6のアルキル基であり、Zは、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。Lは、1,4-ヘキサジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエンのいずれかを示す。但し、Lが2,4-ヘキサジエンであり、且つX及びYがメチル基、Zが水素原子の場合を除く。)
で示されるβ-ジケトナトとジエンとを配位子とする有機ルテニウム錯体。
【請求項7】
β-ジケトナトがアセチルアセトナトである請求項1又は6にいずれかに記載の有機ルテニウム錯体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−127082(P2009−127082A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302554(P2007−302554)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】