説明

有機凝結剤及び排水処理方法並びに汚泥脱水方法

【課題】凝結性能に優れ、排水処理や汚泥脱水処理を良好に行うことができる有機凝結剤、及び該有機凝結剤を用いた排水処理方法並びに汚泥脱水方法を提供する。
【解決手段】一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含有する有機凝結剤とする。前記ジエポキシドの比率は、前記一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーのアミノ基に対し、0.001〜0.1モル%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、半導体工場、食品工場、紙・パルプ工場、印刷工場、自動車工場等の一般工場から排出される排水や、し尿処理場、下水処理場から排出される生物処理水の処理及び該処理等で生じる汚泥の処理などで用いる有機凝結剤、汚泥脱水組成物、及び排水処理方法並びに汚泥脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護、人の健康確保の面から、年々排水処理に係わる規制が地球規模で厳しくなってきている。特に、河川放流、閉鎖水域への放流については、水質管理項目の規制値の見直しなど、国および各地方自治体での動きが活発になってきている。また、排水処理では濁質の凝集沈殿物である汚泥が生じるが、運搬費用や処分地の確保の点から、汚泥の減容化が求められている。
【0003】
ここで、例えば、工場などから排出される排水の処理の場合、有機系の排水に対しては通常活性汚泥などの生物処理が行われ、その後、河川等への放流前に、濁質除去を目的に凝集沈殿処理や加圧浮上処理などが行われる。
【0004】
一般的な凝集沈澱処理や加圧浮上処理の方法は、排水に、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、ポリ鉄、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等の無機凝集剤を添加し、次に有機高分子凝集剤を添加することにより微細な濁質を凝集させる。その後、シックナーや加圧浮上装置にて固液分離処理することにより、濁度の低い処理水を得ることができる。無機凝集剤を添加する目的は濁質の荷電で、微細な濁質を一次凝集させ、次に添加する高分子量の有機高分子凝集剤により、微細な濁質の一次凝集体をさらに大きくフロック(凝集物)化して、凝集沈殿処理では沈降しやすく、また、加圧浮上処理では浮上しやすくする。
【0005】
この無機凝集剤と有機高分子凝集剤による処理の適正な凝集条件は、pHが中性付近であるため、無機凝集剤由来の金属水酸化物が生じる。したがって、金属水酸化物も汚泥となるため、上記排水処理方法では、汚泥量が多くなるという問題点を有している。
【0006】
また、最近の排水は、工場での製造物の多様化に伴い、排水成分の変動が大きくなり、また、ノニオン性成分等の凝集し難い成分が含まれることが多くなってきている。
【0007】
したがって、工場排水の排水処理において、近年特に無機凝集剤の使用量低減、凝集効果の安定化や向上が望まれている。なお、このような問題は、工場から排出される排水に限らず、し尿処理場や下水処理場から排出されるその他の排水においても、同様に存在する。
【0008】
このような要望に対して、無機凝集剤にジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)系ポリマーを併用する方法(特許文献1参照)や、無機凝集剤にポリアミンやジアルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物を併用する方法(特許文献2参照)、が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、排水成分の変動によって効果が変動し安定した処理効果が得られないという問題や、無機凝集剤の低減効果が排水の種類によって異なるという問題がある。
【0010】
また、排水処理の際、上述したように汚泥が生じ、運搬費用や処分地の確保の点から汚泥の減容化が求められているが、汚泥の減容化では、汚泥の機械的脱水後の脱水ケーキの含水率を如何に下げるかがポイントとなる。含水率を下げることにより、ケーキの重量、体積が低減するため、処分地不足の問題が軽減される。また、ケーキを焼却処理する場合は、含水率を下げることにより重油使用量が大幅に削減でき、コスト低減、省エネになるばかりでなく、CO排出削減効果も期待でき、地球温暖化防止にもつながる。
【0011】
しかしながら、工場での製造物の多様化により、有機物の比率が高いなど以前よりも脱水しにくい汚泥性状になりつつあり、また、汚泥性状の変動も大きくなり、安定した汚泥処理を行いにくくなってきている。また、食生活の多様化から、し尿処理場や下水処理場から排出される汚泥も脱水しにくくかつ性状変動も大きく、安定した汚泥処理を行いにくくなってきている。
【0012】
ここで、汚泥の脱水処理には、一般的に高分子量のカチオン性ポリマーが使用されているが、充分な処理量が得られないことや、低含水率のケーキが得られにくいことから最近では見直され、例えば、無機凝集剤を添加した後、両性ポリマーを添加して、汚泥を脱水する方法(特許文献3参照)、ポリアルキレンイミンを汚泥脱水に用いる方法(特許文献4参照)が提案されている。
【0013】
しかしながら、汚泥性状の変動、特にVSS(揮発性浮遊固形分)の増加や繊維分の減少により、上記方法では低含水率のケーキが得られにくいことや、最近の高効率脱水機に適用できる高フロック強度が得られにくくなっていることなど、汚泥脱水方法について改善が求められている。
【0014】
【特許文献1】特開平6−126286号公報
【特許文献2】特開2002−346572号公報
【特許文献3】特開平7−256299号公報
【特許文献4】特開2003−53400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上述した事情に鑑み、凝結性能に優れ、排水処理や汚泥脱水処理を良好に行うことができる有機凝結剤、及び該有機凝結剤を用いた排水処理方法並びに汚泥脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含有する有機凝結剤により、上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成させた。
【0017】
即ち、本発明の有機凝結剤は、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0018】
また、前記ジエポキシドの比率は、前記一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーのアミノ基に対し、0.001〜0.1モル%であってもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、上記有機凝結剤、無機凝集剤、及び、高分子凝集剤を排水に添加し、固液分離処理を行うことを特徴とする排水処理方法にある。
【0020】
本発明の他の態様は、上記有機凝結剤、及び、高分子凝集剤を汚泥に添加した後、脱水することを特徴とする汚泥脱水方法にある。
【0021】
また、前記汚泥に無機凝集剤を添加することが好ましい。
【0022】
そして、上記有機凝結剤、及び、高分子凝集剤を含有する汚泥脱水組成物としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含むことにより、凝結性能に優れた有機凝結剤を提供することができる。そして、この有機凝結剤を排水処理に用いると、凝集効果が安定し向上するため、清澄な処理水が得られ、また、無機凝集剤の使用量を低減して汚泥発生量を抑制することができる。また、この有機凝結剤を汚泥脱水処理に用いると、フロック強度が高くなり、低含水率のケーキを得ることができる。さらに、この有機凝結剤及び高分子凝集剤等を含有した泥脱水組成物は、良好に汚泥脱水処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明の有機凝結剤は、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含有するものである。
【0026】
一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーは、一級アミノ基を有するポリマー、二級アミノ基を有するポリマー、一級アミノ基及び二級アミノ基の両方を有するポリマー、又は、これらの混合物である。一級アミノ基を有するポリマーとしては、例えば、N−ビニルホルムアミドやN−ビニルアセトアミドをモノマー単位として含むポリマーの加水分解によって得られるビニルアミン構造を有するカチオン性ポリマー、ビニルアニリン単位を有するカチオン性ポリマー、ポリアクリルアミドのホフマン分解物、アリルアミン構造を有するカチオン性ポリマー、ポリビニルアミジン、及びこれらの混合物があげられるが、これらに限定されるものではない。また、二級アミノ基を有するポリマーも特に限定はなく、二級アミノ基をポリマーの側鎖に有していても主鎖に有していてもよい。二級アミノ基を有するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、エチレンイミンとエチレンオキサイド単位を有するカチオン性ポリマー、及びこれらの混合物があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
ジエポキシド化合物としては、例えば、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,7−オクタジエンジエポキシド、ブタジエンジエポキシド、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ポリエチレングリコールの重合度:2〜30)、グリセリン・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、エチレングリコール・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、及びこれらの混合物があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマー、及び、ジエポキシド化合物を反応させる方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で反応させることができる。まず、上記一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーの5〜50質量%水溶液を撹拌しながら、室温以下で、ジエポキシド化合物をそのままもしくはアセトンやアルコール溶液として添加する。そして、室温でも反応は起こるが未反応物をできだけ低減するため、好ましくは50℃以上に加温して、2〜3時間反応させることで、カチオン性ポリマーを得ることができる。
【0029】
ジエポキシド化合物の添加量は、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーのアミノ基に対し、0.001〜0.1モル%が好ましくは、さらに好ましくは0.003〜0.05モル%である。ジエポキシド化合物は架橋剤であるため、多すぎると得られるカチオン性ポリマーがゲル化して水不溶になり、低すぎると架橋構造による効果が現れにくくなるからである。水溶液粘度で架橋度の過不足が判断できる。上記のモル%の範囲で得られるカチオン性ポリマーは、30質量%水溶液(蒸発残分換算)を25℃、30rpmでB型粘度計にて測定した回転粘度が600〜10000mPa・sである。
【0030】
例えば、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーが下記式(i)で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、ジエポキシド化合物が、下記式(ii)である場合、得られるカチオン性ポリマーの構造は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する。なお、各式中、R及びRはそれぞれ独立に、単結合、フェニレン基、フェニレン基含有アルキレン基、−(CH−又は−(CHCHO)−(nは1〜18である。)を表し、Rは水素、炭素数1〜4のアルキル基又はベンジル基を表す。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
また、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーが下記式(iii)で表される繰り返し単位を有するポリマーであり、ジエポキシド化合物が、上記式(ii)である場合、得られるカチオン性ポリマーの構造は、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する。
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
上記式に示すように、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーは、該一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーをジエポキシド化合物が架橋した構造を有する。
【0038】
このように、一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーは、高カチオン密度で架橋構造を有するためか、凝結性能に優れ、密度の高いフロックを形成することができる。したがって、該カチオン性ポリマーを用いると、排水処理や、汚泥脱水処理を良好に行うことができる。
【0039】
具体的には、本発明の排水処理方法は、上記本発明の有機凝結剤と、無機凝集剤、及び、高分子凝集剤を排水に添加して、固液分離処理を行うものである。
【0040】
本発明の排水処理方法においては、まず、無機凝集剤及び本発明の有機凝結剤を排水に添加して、排水に含まれる濁質と反応させる。
【0041】
排水としては、化学工場、半導体工場、食品工場、紙・パルプ工場、印刷工場、自動車工場などの一般工場から排出される排水や、し尿処理場、下水処理場から排出される生物処理水を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。最近の排水は、工場での製造物の多様化に伴い、排水成分の変動が大きくなり、また、ノニオン性成分等の凝集し難い成分が含まれることが多くなってきているため、従来の方法では処理し難いが、本発明の排水処理方法においては、上記所定の有機凝結剤を用いるため、良好に処理することができる。なお、本発明の有機凝結剤の添加量は特に限定はなく、排水の性状に応じて調整すればよいが、排水に対して、1〜100mg/L程度(蒸発残分換算)である。
【0042】
無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、及びこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機凝集剤の添加量も特に限定はなく、排水の性状に応じて調整すればよいが、処理する排水に対して、通常の市販製品で概ね100〜5000mg/L程度である。
【0043】
本発明の有機凝結剤及び無機凝集剤を排水に添加する順序に特に限定はなく、無機凝集剤を添加した後に本発明の有機凝結剤を添加してもよく、また、排水に本発明の有機凝結剤を添加した後無機凝集剤を添加してもよく、さらに、本発明の有機凝結剤及び無機凝集剤を同時に添加してもよい。
【0044】
次に、本発明の有機凝結剤及び無機凝集剤を添加した排水を必要に応じて、pHを5〜7程度に調整する。
【0045】
次に、排水に高分子凝集剤を添加する。高分子凝集剤に特に限定はなく、排水処理で通常使用される有機高分子凝集剤を用いることができる。例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及び、それらのアルカリ金属塩等のアニオン系有機高分子凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド等のノニオン系有機高分子凝集剤、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、及び、それらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系有機高分子凝集剤が挙げられる。また、高分子凝集剤の添加量にも特に限定はなく、排水の性状に応じて調整すればよいが、処理する排水に対して概ね固形分で1〜100mg/Lである。
【0046】
高分子凝集剤を添加し、撹拌などして反応させて排水中の濁質を凝集させた後は、生成した凝集フロックを、凝集沈殿処理、加圧浮上処理、ろ過、膜分離処理などで固液分離処理することで、排水から濁質を除去することができる。
【0047】
なお、本発明の有機凝結剤、無機凝集剤、及び、高分子凝集剤に加えて、さらに、一般的な有機凝結剤を併用することもできる。一般的な有機凝結剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、及びこれらの混合物など、通常の排水処理で使用されるカチオン性有機系ポリマーが挙げられる。添加量に特に限定はなく、排水の性状に応じて調整すればよいが、処理する排水に対して、概ね固形分で1〜100mg/L添加すればよい。
【0048】
さらに、必要に応じて、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤なども任意に併用してもよい。
【0049】
このような排水処理方法では、高カチオン密度で架橋構造を有するカチオン性ポリマーを含有し凝結性能に優れた本発明の有機凝結剤を用いるため、無機凝集剤によって生成する微凝集フロックをさらに高密度化して密度の高いフロックを形成することができる。したがって、凝集効果が安定し向上するので、清澄な処理水が得られ、また、無機凝集剤の使用量が低減できるので汚泥発生量を抑制することができる。なお、凝集状態は、フロック形成時間、フロック系や沈降速度を評価することで確認できる。また、処理水の清澄性については、濁度、色度、場合によってはTOCやCODを測定することで確認できる。
【0050】
また、本発明の汚泥脱水方法は、上記本発明の有機凝結剤及び高分子凝集剤を汚泥に添加した後、脱水するものである。具体的には、まず、本発明の有機凝結剤を排水に添加して、排水に含まれる濁質と反応させる。
【0051】
汚泥としては、化学工場、半導体工場、食品工場、紙・パルプ工場、印刷工場、自動車工場などの一般工場排水の凝集沈殿や加圧浮上処理にて生成する有機性汚泥や生物処理により生成する余剰汚泥、し尿処理場、下水処理場における凝集沈殿や生物処理により生成する有機性汚泥が主に挙げられるが、これらに限定されるものではない。近年工場での製造物の多様化により、有機物の比率が高いなど以前よりも脱水しにくい汚泥性状になりつつあり、また、汚泥性状の変動も大きくなり、安定した汚泥処理を行いにくくなってきている。さらに、食生活の多様化から、し尿処理場や下水処理場から排出される汚泥も脱水しにくくかつ性状変動も大きく、安定した汚泥処理を行いにくくなってきている。したがって、従来の方法では低含水率のケーキを得難いが、本発明の汚泥脱水方法においては、上記所定の有機凝結剤を用いるため、良好に処理することができる。なお、本発明の有機凝結剤の添加量は特に限定はなく、汚泥の性状に応じて調整すればよいが、汚泥スラリーに対して5〜200mg/L程度(蒸発残分換算)である。
【0052】
ここで、本発明の有機凝結剤を汚泥に添加するに際して、無機凝集剤も併用してもよい。無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、及びこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機凝集剤の添加量も特に限定はなく、汚泥の性状に応じて調整すればよいが、処理する汚泥スラリーに対して、通常の市販製品で概ね100〜5000mg/L程度である。
【0053】
なお、本発明の有機凝結剤及び無機凝集剤を汚泥に添加する順序に特に限定はなく、無機凝集剤を添加した後に本発明の有機凝結剤を添加してもよく、また、汚泥に本発明の有機凝結剤を添加した後無機凝集剤を添加してもよく、さらに、本発明の有機凝結剤及び無機凝集剤を同時に添加してもよい。
【0054】
本発明の有機凝結剤及び必要に応じて無機凝集剤を汚泥に添加した後、汚泥を必要に応じて、pHを3〜7程度に調整する。
【0055】
次いで、汚泥に高分子凝集剤を添加する。高分子凝集剤に特に限定はなく、汚泥処理で通常使用される有機高分子凝集剤を用いることができる。例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの三級塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、あるいはそれらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系高分子凝集剤が挙げられる。また、ポリビニルアミンやポリアクリルアミドのホフマン分解物やマンニッヒ変性物、ポリアミジンなども挙げられる。また、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの三級塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの三級塩もしくはその4級アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性モノマーと(メタ)アクリル酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸等のアニオン性モノマーとの共重合体等の両性高分子凝集剤でもよい。なお、この時、(メタ)アクリルアミド等の共重合可能なノニオン性モノマーを共重合させてもよい。さらに、N−ビニルホルムアミドやアセトアミドとアニオン性モノマーを共重合させて加水分解した両性ポリマーも挙げられる。そして、(メタ)アクリル酸ソーダのホモポリマーや(メタ)アクリル酸ソーダと(メタ)アクリルアミドとの共重合体や、これらに、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸やビニルスルホン酸等のスルホン系モノマーを共重合させたアニオン性高分子凝集剤が挙げられる。なお、高分子凝集剤の添加量に特に限定はなく、汚泥の性状に応じて調整すればよいが、処理する汚泥スラリーに対して概ね固形分で10〜2000mg/L程度である。
【0056】
高分子凝集剤を添加し、撹拌などして反応させて汚泥の凝集フロックを形成させた後、該凝集フロックを形成した汚泥を汚泥脱水機にかける等して脱水する。汚泥脱水機に特に制限はなく、例えば、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円盤型など任意に選定できる。
【0057】
なお、本発明の有機凝結剤や、高分子凝集剤に加えて、さらに、一般的な有機凝結剤を併用することもできる。一般的な有機凝結剤としては、例えば、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、及びこれらの混合物など、通常の汚泥脱水処理で使用されるカチオン性有機系ポリマーが挙げられる。添加量に特に限定はなく、汚泥の性状に応じて調整すればよいが、処理する汚泥スラリーに対して、概ね固形分で1〜100mg/L添加すればよい。
【0058】
さらに、必要に応じて、殺菌剤、消臭剤、防食剤なども任意に併用してもよい。
【0059】
このような汚泥脱水方法では、高カチオン密度で架橋構造を有するポリアルキレンポリアミンを含有し凝結性能に優れた本発明の有機凝結剤を用いるため、密度の高いフロックを形成することができる。したがって、脱水機による機械的脱水によって汚泥が粉砕され難くなり、汚泥内部から水分が抜け易くなる。よって、低含水率のケーキが得られる。なお、汚泥の凝集状態は、フロック径、重力ろ過性、ろ液の濁度を評価することで確認できる。また、脱水効果は、圧搾ケーキの含水率を測定することで確認できる。
【0060】
上記では、有機凝結剤を汚泥に添加した後に、高分子凝集剤を添加する方法について説明したが、本発明の汚泥脱水方法においては、有機凝結剤及び高分子凝集剤を同時に汚泥に添加してもよい。なお、同時に添加する場合、有機凝結剤及び高分子凝集剤並びに必要に応じて添加する無機凝集剤や上記殺菌剤等を予め混合した汚泥脱水組成物とし、この汚泥脱水組成物を汚泥に添加するようにしてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
固形分濃度30%のポリエチレンイミン(日本触媒製)100gを撹拌羽根、冷却管を備えた3つ口の300mLのセパラブルフラスコに入れた。次いで、撹拌下5℃以下に氷冷し、市販試薬である1,7−オクタジエンジエポキシドの10質量%アセトン溶液を0.5mL添加して30分撹拌した。次に60℃の恒温水槽につけて2時間撹拌を続けた。得られた溶液を実施例1の有機凝結剤とした。なお、得られた溶液を30質量%水溶液(蒸発残分換算)とし、25℃、30rpmでB型粘度計にて測定した回転粘度は8600(mPa・s)であった。
【0063】
(実施例2)
ジエポキシドをポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日油製、エピオールE−400)とし、10%アセトン溶液を0.7mL加えた以外は実施例1と同じ条件、操作にて合成した。得られた溶液を実施例2の有機凝結剤とした。また、得られた溶液を実施例1と同様の方法で測定した回転粘度は、1020(mPa・s)であった。
【0064】
(実施例3)
ジエポキシドをビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、JER828)とし、10%アセトン溶液を1.3mL加えた以外は実施例1と同じ条件、操作にて合成した。得られた溶液を実施例3の有機凝結剤とした。また、得られた溶液を実施例1と同様の方法で測定した回転粘度は、2500(mPa・s)であった。
【0065】
(実施例4)
固形分濃度を10%に調製したポリビニルアミン(三菱化学製)100gを撹拌羽根、冷却管を備えた3つ口の300mlのセパラブルフラスコに入れた。次いで、撹拌下5℃以下に氷冷し、市販試薬である1,7−オクタジエンジエポキシドの10質量%アセトン溶液を0.2mL添加して30分撹拌した。次に60℃の恒温水槽につけて2時間撹拌を続けた。得られた溶液を実施例4の有機凝結剤とした。また、得られた溶液を実施例1と同様の方法で測定した回転粘度は、1260(mPa・s)であった。
【0066】
(比較例1)
ポリエチレンイミン(固有粘度(1N・NaCl,30℃で測定)=0.4dL/g)を比較例1の有機凝結剤とした。
【0067】
(比較例2)
ポリ−ジアリルジメチルアンモウニウムクロライド(固有粘度(1N・NaCl,30℃で測定)=0.8dL/g)を比較例2の有機凝結剤とした。
【0068】
(比較例3)
ポリビニルアミン(固有粘度(1N・NaCl,30℃で測定)=0.6dL/g)を比較例3の有機凝結剤とした。
【0069】
(比較例4〜6)
紙パルプ工場総合排水(SS(濁質)濃度=3130mg/L、原水濁度=860NTU)500mLを入れた500mLビーカー3個をジャーテスターに設置して、各ビーカーに硫酸バンド(18重量%のAl23水溶液)を200mg/L(比較例4)、400mg/L(比較例5)、600mg/L(比較例6)となるように添加し、150rpmで1分間撹拌した。次に5%NaOHでpHを5.5に調整し、150rpmで1分間撹拌した後、高分子凝集剤P1(アクリル酸ソーダ:アクリルアミド=20:80(モル%)の共重合体、1N−NaCl,30℃で測定した固有粘度dL/g=22)を各ビーカーに1mg/Lずつ添加し、まず150rpmにて1分、次いで50rpmにて3分撹拌して、SSを凝集させた。そして、撹拌停止3分後、各上澄み液の濁度及びフロック径を測定した結果を表1に示す。なお、フロック径は目視にて測定した。この結果、濁度が1桁と清澄になる硫酸バンドの最適量は600mg/Lであった。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施例5)
比較例4で用いた紙パルプ工場総合排水500mLを、500mLビーカーに入れジャーテスターに設置して、ビーカーに硫酸バンド(18重量%のAl23水溶液)を400mg/L添加し、150rpmで1分撹拌した。次に、実施例1の有機凝結剤を、排水に対して蒸発残分換算で0.5mg/Lとなるように添加し、150rpmで1分間撹拌した。次いで、5%NaOHでpHを5.5に調整し、150rpmで1分間撹拌した。その後、高分子凝集剤P1を1mg/Lずつ添加し、まず150rpmにて1分、次いで50rpmにて3分撹拌して、SSを凝集させた。そして、撹拌停止3分後、上澄み液の濁度及びフロック径を測定した結果を表2に示す。
【0072】
(実施例6〜13及び比較例7〜13)
有機凝結剤の種類及び添加率を表2で示すようにした以外は実施例5と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0073】
この結果、本発明の有機凝結剤を用いた実施例5〜13では、通常の未架橋の有機凝結剤を用いた比較例7〜13に比べて清澄な処理水が得られ、また、無機凝集剤の添加量の多い比較例6と比較して同程度の清澄な処理水が得られており、無機凝集剤の低減効果、除濁効果とも優れることが確認できた。
【0074】
【表2】

【0075】
(比較例14)
ジメチルアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られたポリアミン(1N・NaCl,30℃で測定)=0.5dL/g)を比較例14の有機凝結剤とした。
【0076】
(実施例14)
汚泥I食品工場余剰汚泥(SS濃度=1.8質量%、VSS/SS=87質量%、pH6.5、繊維分/SS=1.25質量%)200mLを入れた300mLポリビーカーに、無機凝集剤として38度ボーメの塩化第二鉄を2000mg/Lを添加し、プロペラ羽根の撹拌機にて250rpmで20秒撹拌した。次に、実施例1の有機凝結剤を、汚泥スラリーに対して蒸発残分換算で20mg/Lとなるように添加し、プロペラ羽根の撹拌機にて250rpmで20秒撹拌した。次いで、高分子凝集剤として下記表3に示すP3を150mg/L添加し、スパーテルにて180rpmで30秒撹拌を行い、汚泥を凝集させた。その時のフロック径を目視にて測定した。次に、40メッシュのナイロンろ布を敷いたブフナーロートに塩ビの円筒を置き、その中に凝集汚泥を一気に注ぎ、10秒後のろ液量、分離したろ液の清澄性を測定した。続いて、ロート上に残った汚泥を少量取り、面圧1kg/cm2にて60秒圧搾し、そのケーキを105℃で一晩乾燥させて、ケーキ含水率を求めた。結果を表4に示す。なお、ろ液の清澄性は、目視により観察し、ほとんどSS(懸濁物質)がなく透明な場合を○、わずかにSSが存在する場合を△、SSが多く濁っていた場合を×とした。
【0077】
【表3】

【0078】
(実施例15〜33及び比較例15〜37)
汚泥、無機凝集剤、有機凝結剤及び高分子凝集剤の種類や添加率を表4や表5で示すようにした以外は実施例14と同様の操作を行った。なお、表中、実施例を「実」と、比較例を「比」と表記した。また、汚泥IIは紙パルプ工場加圧浮上汚泥(SS濃度=2.6質量%、VSS/SS=73質量%、pH5.5、繊維分/SS=36質量%)、硫酸バンドは18重量%のAl23水溶液を用いた。結果を表4及び表5に示す。
【0079】
この結果、本発明の有機凝結剤を用いた実施例14〜33では、通常の有機凝結剤を用いた比較例15〜37に比べて、フロック強度が高くなり、低含水率のケーキを得ることができることが確認できた。
【0080】
【表4】

【0081】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーに、ジエポキシド化合物を反応させて得られるカチオン性ポリマーを含有することを特徴とする有機凝結剤。
【請求項2】
前記ジエポキシドの比率は、前記一級アミノ基又は二級アミノ基を有するポリマーのアミノ基に対し、0.001〜0.1モル%であることを特徴とする請求項1に記載の有機凝結剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機凝結剤、無機凝集剤及び高分子凝集剤を排水に添加し、固液分離処理を行うことを特徴とする排水処理方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の有機凝結剤、及び、高分子凝集剤を汚泥に添加した後、脱水することを特徴とする汚泥脱水方法。
【請求項5】
前記汚泥に無機凝集剤を添加することを特徴とする請求項4に記載の汚泥脱水方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の有機凝結剤、及び、高分子凝集剤を含有することを特徴とする汚泥脱水組成物。

【公開番号】特開2010−75802(P2010−75802A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245030(P2008−245030)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】