説明

有機半導体としてのキノイド系

式(I)〔式中、Xは、O、S又はNRを意味し、R、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素及び有機残基から選択されるか、又はその2つ以上が一緒になって、置換若しくは非置換、炭素環式若しくは複素環式、芳香族、キノイド若しくは脂肪族であってもよい1つ以上の縮合環を形成する〕の非ポリマーキノイドヘテロアセン化合物を含む半導体層を、たとえば、ダイオード、有機電界効果トランジスター、有機薄膜トランジスター、又はダイオード及び/若しくは有機電界効果トランジスター及び/若しくは機薄膜トランジスターを含むデバイスの製造のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体としてキノイドヘテロアセンを含む半導体デバイス、前記デバイスの製造方法、とりわけ前記方法に有用な新規キノイドヘテロアセン、並びに対応する使用に関する。
【0002】
有機半導体デバイス、たとえば、有機ダイオード又は特に有機電界効果トランジスター(OFET)は、伝統的な無機半導体に対して、低コスト製造や可撓性のある基板への適合性のような数多くの利点を期待させる。(たとえば、Chem. Rev. 1997, 97, 173-205に記載されているのような)特定のポリマーの他に、ペンタセンのような多数の縮合芳香族化合物、特定の縮合芳香族複素環式化合物又はそれの付加化合物が、とりわけ、高電荷担体(電界効果)移動度、高オン/オフ電流比、低閾値下電圧により特徴付けられる有用な半導体特性を示すことが見出されている。しかし、これらの有益な特徴は、多くの場合に、薄膜デバイスの調製のための蒸着を使用する必要性等の要因、あるいは再結晶、相転移、温度等の影響に起因する安定性の欠如、又は酸化条件のような環境の影響により損なわれる。
【0003】
有機半導体の特性を改善するために、構造の改造が縮合芳香族化合物に導入されているか又は付加化合物が提案されている(たとえば、JP-A-2000-231987;WO 02/068431;ヨーロッパ特許出願第05104009.5号を参照すること)。
【0004】
安定性があり、再現性のある電子特性を提供することができ、良好な電荷担体移動度を示し、同時に低コスト製造を可能にする有機半導体の必要性が存在する。
【0005】
現在、特定の、通常は、キノイド1,5−ジヘテロ−アントラセンに基づく非ポリマーヘテロアセンそれ自体が、驚くべきことに、良好な半導体特性と適用可能な特性を組み合わせ、したがって、ダイオード又は有機発光ダイオード(OLED)のみならず、薄膜トランジスター(OTFT)及び対応するデバイスとして有利に調製される、有機電界効果トランジスター(OFET)において有機半導体として有利に使用できることが見出されている。
【0006】
したがって、本発明の半導体は、
■集積回路の構成要素としての電界効果トランジスター;
■ディスプレーバックプレーンのフレキシブル回路支持体;
■大面積デバイス、たとえば大面積イメージセンサー及び電子ペーパー(Eペーパー);
■低価格超小型電子機器の集積回路論理素子、たとえばスマートカード、無線IC(RFID)タグ及びメモリー/記憶デバイス;
■光起電性デバイス(太陽電池);
■物理的及び化学的センサーデバイス
における使用を見出すことができる。
【0007】
したがって、本発明の主題は、一般に、有機半導体として非ポリマー化合物を含み、前記化合物が、式I:
【0008】
【化5】

【0009】
〔式中、Xは、O、S又はNRを意味し、R、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ、一般に水素及び有機残基から選択され、一方、Rは水素と異なるか、又はその2つ以上が一緒になって、置換若しくは非置換、炭素環式若しくは複素環式、芳香族、キノイド若しくは脂肪族であってもよい1つ以上の縮合環を形成する〕
で示されるキノイドジヘテロアセンであることを特徴とする、半導体デバイスに関する。
【0010】
式Iの化合物は、通常、1200g/mol未満の分子量であり、対称性群C又は特にC2hに属する。
【0011】
残基が置換されている場合、置換基は、通常、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、アリール、たとえばフェニル及びナフチルから選択され、特に、結合している二重結合に対してアルファ以外の位置にある飽和炭素(キノイド系の互変異性「再芳香族化」を避けるため)も、オキソ(=O)により置換されていてもよく、隣接置換基は、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物若しくはイミド、又は炭素環を形成してもよい。好ましい置換基は、アルキル又はアルコキシであり、特定の技術的に興味深いものは、4個以上、特に5個以上の炭素原子を含有するもの(下記を参照すること)又はハロゲンである。好ましい化合物において、存在する場合、任意の置換基は、一価置換基(単結合で結合している)である。
【0012】
半導体効果は、本発明の式Iのキノイドジヘテロアセンと錯体を形成する化合物のような更なる構成要素(たとえば、金属又はホウ素化合物)を必要とすることなく、本発明のキノイド環系により達成され、したがって本発明の半導体デバイスは、通常、同じ環境下で本発明の化合物と組み合わされるそのような構成要素を含まない。本発明の化合物は、通常、別の化学実態との付加物の形態で使用されない。
【0013】
前記デバイスにおいて、特に薄層又は多数の薄層の形態で使用される少なくとも1つの半導体材料は、好ましくは、
Rが、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換アリールから選択され;
、R、R、R、R、R、R、Rが、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換アリール、ハロゲン、置換シリル、XR12から選択されるか、又は1つ以上のR、R、R、R、R、R、R、R、Rが、それらが結合している炭素若しくは窒素原子と一緒になって、飽和若しくは不飽和、非置換若しくは置換、炭素環式若しくは複素環式の縮合環を形成し;
12が、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、置換シリル、アシル、非置換又は置換アリールである
式Iの化合物である。
【0014】
式Iの好ましい化合物は、アルキルが、それぞれ、O、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10で中断されていてもよいC〜C22アルキルから選択され、ここでR10が、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり、アリールが、それぞれ、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有してもよいC〜C18芳香族部分から選択され、好ましいアリールが、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
存在する場合、縮合環が、2つ以上の残基R、R、R、R、R、Rにより形成され、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の5員又は6員環であり;
存在する場合、置換基が、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、Si(R11)、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基が、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい
ものであり、
特に、式Iの化合物は、式II:
【0015】
【化6】

【0016】
〔式中、
Xは、O、S又はNRを意味し、
Rは、非置換又は置換C〜C18アルキル、非置換又は置換C〜C18アルケニル、非置換又は置換C〜C18アルキニル、非置換又は置換C〜C18アリールから選択され;
、R、R、Rは、互いに独立して、H;それぞれO、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C22アルキル若しくはC〜C22アルケニル;置換C〜C18アルキニル;非置換又は置換C〜C18アリール;ハロゲン;シリル;XR12から選択され;
、R’、R”、R'''は、独立してRで定義されたとおりであるか、或いは隣接するRとR’、及び/又は隣接するR”とR'''若しくはRとR'''、及び/若しくはRとR’は、一緒になって縮合環を形成し;
R10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
シリルは、それぞれ、SiH(R11)又はSi(R11)であり、ここでR11は、C〜C20−アルキル又は−アルコキシであり;
12は、シリル、アシル、非置換又は置換C〜C22アルキル、非置換又は置換C〜C18アリールであり;
アリールは、それぞれ、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有してもよいC〜C18芳香族部分から選択され、好ましいアリールは、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
存在する場合、縮合環は、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の6員環であり;そして
存在する場合、置換基は、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基は、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい〕
に一致する。
【0017】
式IIの化合物の例において、
Xは、O、S又はNRを意味し、
Rは、C〜C18アルキル、又は非置換若しくは置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
、R、R、Rは、それぞれ独立して、H;それぞれO、S又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C18アルキル若しくはC〜C18アルコキシ;置換エチニル;非置換又は置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニル;ハロゲン;Si(R11)から選択され;
、R’、R”、R'''は、独立して、Rで定義されたとおりであるか、又は隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''は、一緒になって縮合環を形成するか、又は非置換若しくは置換フェニルとしてのRはR'''に結合して及び/若しくは非置換若しくは置換フェニルとしてのRはR’に結合して、6員環構造を形成し、ここでR'''及び/又はR’はX又はCHであり;
R10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
R11は、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシであり;
存在する場合、縮合環は、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の5員又は6員環であり;そして
存在する場合、置換基は、炭素原子に結合しており、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基は、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよく;
好ましくは、XはOであり;
、R、R、Rは、それぞれ独立して、H;非置換又は置換のC〜C18アルキル若しくはC〜C18アルコキシ;置換エチニル;非置換又は置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、キノリル;ハロゲン;Si(R11)から選択され;
、R’、R”、R'''は、独立して、Rで定義されたとおりであるか、又は隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''は、結合炭素原子と一緒になって縮合フェニル、ナフチル若しくはピリジル環を形成するか、又は非置換若しくは置換フェニルとしてのRはR'''に結合して及び/若しくは非置換若しくは置換フェニルとしてのRはR’に結合して、6員環構造を形成し、ここでR'''及び/又はR’はXであり;
R11は、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシであり;そして
存在する場合、置換基は、炭素原子に結合し、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシル、シクロペンチル、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)で置換されていてもよい。
【0018】
アルキルは、任意の非環式飽和一価ヒドロカルビル基を意味し、アルケニルはそのような基を示すが、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有し(たとえば、アリル)、同様に、アルキニルは、そのような基を示すが、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する(たとえば、プロパルギル)。アルケニル又はアルキニル基が2つ以上の二重結合を含有する場合、これらの結合は、通常、累積しておらず、−〔CH=CH−〕又は−〔CH=C(CH)−〕のように交互に配置していることができ、ここでnは、たとえば、2〜50の範囲であることができる。好ましいアルキルは、1〜22個の炭素原子を含み、好ましいアルケニル及びアルキニルは、それぞれ、2〜22個の炭素原子、特に3〜22個の炭素原子を含む。
【0019】
1つを超える、特に2つを超える炭素原子の任意のアルキル部分、又は別の部分の一部であるそのようなアルキル若しくはアルキレン部分は、O、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10のようなヘテロ官能基により中断されていてもよく、ここでR10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、フェニルである。これらは、1つ以上のこれらのスペーサー基により中断されていることができ、それぞれの場合において、1つの基が一般に1つの炭素−炭素結合に挿入され、ヘテロ−ヘテロ結合では、たとえばO−O、S−S、NH−NHなどは生じず、中断されたアルキルが追加的に置換される場合、置換基は一般にヘテロ原子に対してαではない。2つ以上の−O−、−NR10−、−S−型中断基が1つのラジカルに生じる場合、これらは多くの場合に同一である。
【0020】
したがって、使用されるとき、アルキルという用語は、主に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルブチル、n−ペンチル、イソペンチル、1−メチルペンチル、1,3−ジメチルブチル、n−ヘキシル、1−メチルヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、1−メチルヘプチル、3−メチルヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、1,1,3−トリメチルヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1−メチルウンデシル、ドデシル、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル又はオクタデシルのような、特に非中断であり、適切な場合は置換されているC〜C18アルキルを包含する。アルコキシは、アルキル−O−であり、アルキルチオは、アルキル−S−である。
【0021】
したがって、使用されるとき、アルケニルという用語は、主に、ビニル、アリルなどのような、特に非中断であり、適切な場合は置換されているC〜C22アルキルを包含する。
【0022】
アリールが使用される場合(たとえば、C〜C14−アリール)、これは、好ましくはフェニル、ナフチル、アントラキニル、アントラセニル又はフルオレニルのような、可能な最大数の二重結合を有する単環又は多環系を好ましくは含む。アリールという用語は、主にO、N及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を環構造の一部として含有する複素環(ヘテロアリールとも示される)であってもよいC〜C18芳香族部分を主に包含し、炭化水素アリールの例は、主に、フェニル、ナフチル、アントラキニル、アントラセニル、フルオレニルを含むC〜C18であり、複素環(C〜C18)の例には、以下の表のもの:
【0023】
【表1】



【0024】
並びに、アザナフチル、フェナントリル、トリアジニル、テトラヒドロナフチル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、下記式:
【0025】
【化7】

【0026】
が挙げられる。好ましいものは、たとえばフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択される、C〜C18アリールであり、最も好ましいものは、フェニル、ナフチル、チエニルである。
【0027】
アシルは、通常、炭素原子1〜30個の有機酸−CO−R’の脂肪族又は芳香族残基を意味し、ここでR’は、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルを包含し、それぞれ特にアルキル残基について他に記載されているように置換又は非置換及び/又は中断されていてもよいか、或いはR’は、Hであってもよい(すなわち、COR’は、ホルミルである)。したがって選択肢は、アリール、アルキルなどについて記載されたとおりであり、最も好ましいアシル残基は、置換若しくは非置換ベンゾイル、置換若しくは非置換C〜C17アルカノイル、又はアセチル若しくはプロピオニル若しくはブタノイル若しくはペンタノイル若しくはヘキサノイルのようなアルケノイル、シクロヘキシルカルボニルのような置換若しくは非置換C〜C12シクロアルキルカルボニルである。
【0028】
ハロゲンは、I、Br、Cl、F、好ましくはCl、F、特にFを示す。また、特に技術的に興味深いものは、ペルフルオロアルキルのようなペルハロゲン化残基、たとえば、CFのような炭素原子1〜12個のものである。
【0029】
置換シリルは、好ましくは、上記で定義されている非置換若しくは置換のヒドロカルビル若しくはヒドロカルビルオキシ(置換基が好ましくは置換シリル以外のもの)から選択される2つ又は好ましくは3つの部分により、又は非置換若しくは置換ヘテロアリールにより置換されているSiである。Siが2つの置換基しか有さない場合、シリル基は、−SiH(R)型のものであり、ここでRは、好ましくはヒドロカルビル又はヒドロカルビルオキシである。より好ましくは、3つのC〜C20−アルキル又は−アルコキシ置換基であり、すなわち置換シリルは、Si(R11)であり、ここでR11は、C〜C20−アルキル又は−アルコキシであり、特に3つのC〜Cアルキル置換基であり、たとえばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル又はイソブチルである。
【0030】
記述されるそれぞれの場合において、「不飽和」は、好ましくは最大限可能な数の結合二重結合を有することを意味する。
【0031】
好ましいアルキニル残基は、置換エチニル、すなわち、水素が上記に記述された置換基の1つで置換されているエチニル(−C≡C−H))であり、一般的な表現を、好ましくは、以下に提示したより詳細な定義に代えることができる。
【0032】
〜C12シクロアルキルのようなシクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルが含まれ、これらの残基のうちで好ましいものは、C〜Cシクロアルキル、並びにシクロドデシル、特にシクロヘキシルである。
【0033】
置換エチニルとしては、非置換若しくは置換C〜C20−アルキル(第一級、第二級若しくは第三級であることができる)、非置換若しくは置換フェニル、非置換若しくは置換(たとえば、1−若しくは2−)ナフチル、非置換若しくは置換(たとえば、1−、2−若しくは9−)アントラセニル、非置換若しくは置換ヘテロアリール部分、又は以下の表に提示されたものから選択される置換シリル部分−それぞれの部分は、適切には、非置換エチニルにおける水素の代わりにエチニル部分に任意の環原子を介して、好ましくは星印を付けたもののうちの1つにより結合することができる−により置換されているエチニルが特に好ましい。
【0034】
置換エチニル(上記に記載されたように、置換されていることができるか、又は好ましくは非置換であることができる)の幾つかの好ましい置換基の表:
【0035】
【表2】



【0036】
表において、Qは、式Iの化合物について上記で定義されたとおりであり、水素、アリール、特にC〜C14−アリール、アリール−アルキル、特にフェニル−又はナフチル−C〜C20−アルキル、ヘテロアリール、特に環原子14個までのもの、及びアルキル、特にC〜C20−アルキルから選択される。
【0037】
一般に、結合剤及び/若しくはドーパントなどが本発明の半導体デバイスに存在することができるが、好ましくは、たとえば下記により詳細に記載される薄膜トランジスターの薄膜において5%未満の量である。可能なバインダーは、たとえば、WO2005/055248に記載されており、これは結合剤及び組成物に関して参照として本明細書に組み込まれ、ここで式Aのポリアセンは、本発明の文書において、式I、好ましくはIA、より好ましくはIB又はICの化合物に代えられる。
【0038】
本明細書に記述されるアルキル、アルケニル又はアルキニル部分は、直鎖であるか、又は1回以上分岐されていることができる(炭素原子の数が許容する場合)。好ましくは、これらは20個までの炭素原子を有し、別の好ましい実施態様では、8個までの炭素原子を有する。
【0039】
本発明の特定の化合物は、有機溶媒において可溶性が良好であり、したがって付着の加工方法における経済的な解決策のより優れた候補である。そうであっても、本発明の構造は、効率的な積み重ね及び結晶化を可能にし(良好なπ−π相互作用で充填する)、したがって、電荷担体の高度な分子間流動性をもたらす。
【0040】
本発明の化合物は、熱及び/又は酸化分解に対して高度な安定性を示し、これらは、電荷輸送材料、染料、蛍光染料又は赤外線吸収材料としても有用である。
【0041】
調製
一般に、式Iの化合物は、Liebermann et al., Liebigs Ann. Chem. (1934), 38に記載されているような、当該技術において既知の方法に従って、又はそれと類似の方法で得ることができる。
【0042】
たとえば、式Iの好ましい化合物の調製は、スキームに従って都合良く実施することができる。
【0043】
【化8】

【0044】
反応は、たとえば必要に応じて不活性溶媒、器具及び温度を使用して、従来の方法で実施することができる。このスキームにおける工程1及び4は、酸触媒(たとえば、HCl)を用いて有利に実施され、当然のことながら、エチルビニルエーテル以外の他の適切な保護基を使用することもできる(たとえば、ジヒドロピラン)。工程2のLi−アルキル(たとえば、n−ブチルリチウム)による反応は、中程度の温度で都合良く行うことができる(たとえば、ジエチルエーテルのようなエーテル溶媒を室温(15〜25℃)で使用し、場合により、触媒として塩基(たとえば、テトラメチルエチレンジアミンTMEDAのような第三級アミン)を用いる)。工程5の閉環は、酸触媒及び/又は加熱により、たとえば、ニトロベンゼンのような低揮発性の有機溶媒中、たとえば触媒として硫酸を使用し、加熱して(たとえば、200℃)実施することができる。
【0045】
たとえば、XがS若しくはNRであるか、又は特に、代替的縮合環R/R及びR/R、並びに代替的残基R及びRのために異なる置換基である式I又はIIの代替的構造は、たとえば、上記のスキームで使用したヒドロキノンを対応するジチオ化合物に、又は1,4−ジアミノベンゼンに、又は対応する2,5−二置換化合物に代えた後、適切な抽出物を使用して得ることができる。工程3のベンゾフェノン試薬を、キサントン、チオキサントンのような別の適切なカルボニル化合物に代えることができる。
【0046】
別の手順は、2,5−ジヒドロ−テレフタル酸の適切な誘導体(たとえば、そのエステル)から出発し、それを対応するキノンに都合良く変換する。前記キノンをXH置換アリールと反応させると、構造:アリール−X−キノン−X−アリールの中間体を生じ、このカルボキシ(エステル)部分を閉環反応に付すことができ(たとえば、酸触媒/加熱を用いる)、残りのケト基は、たとえば式IIの本発明の生成物から容易に還元され、これを更に誘導体化することができ、その例を以下のスキームに提示する。
【0047】
【化9】

【0048】
ここで、Lは離脱基(たとえば、ハロゲン)を意味し、Halはハロゲンであり、
Rは、独立して、たとえばR〜Rで提示された定義に一致するアルキル又は置換アルキルであり、
Arは、アリール部分、たとえば、フェニル、置換フェニル又は縮合フェニル、たとえばナフチルを意味し、他の符号は、上記で定義されたとおりである。
【0049】
同様に、本発明の化合物は、2Ar−X−Hと反応させた適切な1,4−ジケト−ベンゼンから出発し、続いて閉環する、Freund et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33, 2424 (1994)に提示されている合成方法と類似の方法で調製することもできる。得られた生成物を、たとえば硫黄又はセレンの存在下、ピリジン、キノリンなどのような高沸点溶媒の存在下で加熱する及び/又は加圧する、当該技術に既知の方法に従った脱水素化により、或いはたとえば支持体上のIr又はPtを使用する接触脱水素化により、或いはクロラニル若しくはDDQ(ジクロロ−ジシアノ−ベンゾキノン)のようなキノンを用いる、又は過塩素酸トリチリウム若しくはフルオロ酢酸トリチリウムのようなヒドリド受容体を使用する脱水素化により、キノイド形態に都合良く変換することができる。
【0050】
特に式IIの化合物の合成は、Liebermann et al., Liebigs Ann. Chem. 513, 156 (1934)により提示された方法と類似の方法で実施することができる。
【0051】
上記で定義された、式Iの化合物、並びに式II又はIIIの好ましい化合物は、エーテル化、チオエーテル化又はアミノ化などのような当該技術で既知の方法を使用して、更に誘導体化することができる。適切な官能基、たとえばブロモ、ボロン酸、ビニルなどを有する本発明の式I又はIIの化合物は、特にアリールコアに結合している場合、当該技術で既知の方法によりポリマー構造に変換することもできる。本発明の化合物のポリマーは、一般に、式I又はIIの化合物として比較的有利な特性を有する。したがって本発明は、更に、.....に関する。
【0052】
式III:
【0053】
【化10】

【0054】
で示される前駆体を、浸漬、印刷、型押などのような従来の技術により特に薄膜として基板に塗布することもできる。したがって、式I又はIIの化合物の半導体層は、式IIIの前駆体の予め調製した層(潜在性半導体)の適切な熱処理により調製することができる。
【0055】
したがって、式IIIの前駆体の薄膜の固体変換により、式I又はIIの化合物の薄半導体層を調製することが、本発明の更なる目的である。約60℃〜約300℃で前駆体を半導体化合物に低温から中温変換することにより調製されるTFTデバイスの組み立てのために、式I又はIIの化合物の膜を提供することが、本発明の更なる別の目的である。
【0056】
式IIIの可溶性前駆体の薄膜を、たとえば有機溶媒から選択される適切な溶媒を使用して調製することが、本発明の別の目的である。
【0057】
本発明の式I若しくはIIの化合物の薄膜又は式IIIの前駆体の膜層は、化合物の溶液を基板に塗布し、その後、溶媒を除去することによって形成することができるか、或いは蒸着のような当該技術で既知の方法に従って形成することができる。
【0058】
p型又はn型半導体チャンネルとして、ダイオード又はトランジスター、たとえば薄膜トランジスターにおいて式I又はIIの化合物の薄膜を使用することが、本発明のなお別の目的である。
【0059】
新規化合物
本発明の半導体化合物の幾つかは新規である。したがって本発明は、また、式II’又はIV:
【0060】
【化11】

【0061】
〔式中、
X’は、S又はNRを意味し、
X及びX”は、O、S又はNRを意味し、そして
他の符号及び好ましい意味は、上記の式IIで定義されたとおりである〕
で示される化合物に関する。
【0062】
式IVの化合物は、多くの場合、下記式:
【0063】
【化12】

【0064】
に一致する。
【0065】
半導体デバイス
本発明の化合物は、半導体デバイスにおいて半導体層として使用することができる。多くの種類の半導体デバイスがある。全てに共通なことは、1つ以上の半導体材料の存在である。半導体デバイスは、たとえば、S. M. Sze in Physics of Semiconductor Devices, 2.nd edition, John Wiley and Sons, New York (1981)に記載されている。そのようなデバイスには、整流管、トランジスター(これには、p−n−p、n−p−n及び薄膜トランジスターを含む多くの種類がある)、発光半導体デバイス(たとえば、有機発光ダイオード)、光導電体、電流リミッター、サーミスター、p−n接合、電界効果ダイオード、ショットキーダイオードなどが含まれる。それぞれの半導体デバイスにおいて、半導体材料を1つ以上の金属又は絶縁体と組み合わせてデバイスを形成する。半導体デバイスは、たとえば、Peter Van Zant in Microchip Fabrication, Fourth Edition, McGraw-Hill, New York (2000)に記載されているような既知の方法によって調製又は製造することができる。
【0066】
特に有用な種類のトランジスターデバイスである薄膜トランジスター(TFT)は、一般に、ゲート電極、ゲート電極上のゲート誘電体、ソース電極及びゲート誘電体に隣接するドレイン電極、並びに、ゲート誘電体に隣接し、ソース及びドレイン電極に隣接する半導体層を含む(たとえば、S. M. Sze, Physics of Semiconductor Devices, 2.sup.nd edition, John Wiley and Sons, page 492, New York (1981)を参照すること)。これらの構成要素を多様な配置で組み立てることができる。より詳細には、有機薄膜トランジスター(OTFT)は、有機半導体層を有する。
【0067】
典型的には、基板は、製造、試験及び/又は使用の際にOTFTを支持する。場合により、基板は、OTFTに電気的機能を提供することができる。有用な基板材料には、有機及び無機材料が含まれる。たとえば、基板は、無機ガラス、セラミックホイル、ポリマー材料(たとえば、アクリル、エポキシ、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンカルボニル−1,4−フェニレン)(時々、ポリ(エーテルエーテルケトン)又はPEEKと呼ばれる)、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキシド、ポリ(エチレンナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(フェニレンスルフィド)(PPS))、充填ポリマー材料(たとえば、繊維強化プラスチック(FRP))、及び被覆金属ホイルを含むことができる。
【0068】
ゲート電極は、あらゆる有用な導電性物質であることができる。たとえば、ゲート電極は、ドープしたケイ素、又はアルミニウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、タンタル及びチタンのような金属を含むことができる。導電性ポリマー、たとえば、ポリアニリン又はポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)を使用することもできる。加えて、これらの材料の合金、組み合わせ及び多層も有用であることができる。幾つかのOTFTにおいて、同じ材料が、ゲート電極機能を提供し、基板の支持機能も提供することができる。たとえば、ドープしたケイ素が、デート電極として機能し、OTFTを支持することができる。
【0069】
ゲート誘電体は、一般にゲート電極上で提供される。このゲート誘電体は、ゲート電極をOTFTデバイスの平衡から電気的に絶縁する。ゲート誘電体に有用な材料は、たとえば、無機の電気的に絶縁する材料を含むことができる。
【0070】
ゲート誘電体に有用な材料の特定の例には、ストロンチウム酸塩、タンタル酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムバリウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、セレン化亜鉛及び硫化亜鉛が挙げられる。加えて、これらの材料の合金、組み合わせ及び多層をゲート誘電体に使用することができる。ポリ(アリーレンエーテル)、ビスベンゾシクロブテン、フッ化ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、パリレン、ポリキノリンなどのような有機ポリマーも、ゲート誘電体に有用である。
【0071】
ソース電極及びドレイン電極は、ゲート誘電体によりゲート電極から離隔され、一方、有機半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の上側又は下側にあることができる。ソース電極及びドレイン電極は、あらゆる有用な導電性物質であることができる。有用な材料には、ゲート電極について上記に記載された材料のほとんどが含まれ、たとえば、アルミニウム、バリウム、カルシウム、クロム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、ポリアニリン、PEDOT:PSS、他の導電性ポリマー、それらの合金、それらの組み合わせ、及びそれらの多層である。これらの材料のうちの幾つかは、n型半導体材料での使用に適切であり、他は、p型半導体材料での使用に適切であり、これは当該技術で知られている。
【0072】
薄膜電極(すなわち、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極)を、物理的な蒸着(たとえば、熱蒸着若しくはスパッタリング)又はインクジェット印刷のような任意の有用な方法により提供することができる。これらの電極のパターン形成は、シャドーマスキング、アディティブフォトリソグラフィー、サブトラクティブフォトリソグラフィー、印刷、ミクロ接触印刷、及びパターンコーティングのような既知の方法により達成することができる。
【0073】
本発明は、更に、下記:
基材に配置された複数の導電性ゲート電極;
前記導電性ゲート電極に配置されたゲート絶縁体層;
前記ゲート電極を実質的に覆う前記絶縁体層に配置された有機半導体層;及び
それぞれのセットがそれぞれの前記ゲート電極と一直線になるように、前記有機半導体層に配置された導電性ソース及びドレイン電極の複数のセット;
を含み、
前記有機半導体層が、式I又はIIのキノイド1,5−ジへテロアントラセン化合物である
薄膜トランジスターデバイスを提供する。
【0074】
本発明は、更に、
複数の導電性ゲート電極を基材に付着する工程;
ゲート絶縁体層を前記導電性ゲート電極に付着する工程;
式I若しくはIIのキノイド1,5−ジへテロアントラセン化合物又は式IIIの前駆体の層を、前記層が前記ゲート電極を実質的に覆うように前記絶縁体層に付着する工程;
それぞれのセットがそれぞれの前記ゲート電極と一直線になるように、導電性ソース及びドレイン電極の複数のセットを前記層に付着し、式IIIの前駆体が使用される場合は、加熱して前記前駆体を式I又はIIのキノイド1,5−ジヘテロアントラセン化合物に変換し、それによって薄膜トランジスターデバイスを製造する工程
を含む、薄膜トランジスターデバイスを調製するプロセスを提供する。
【0075】
任意の適切な基板を、本発明のキノイド1,5−ジヘテロアントラセン化合物の薄膜、並びにその前駆体の薄膜の調製に使用することができる。好ましくは、上記の薄膜の調製に使用される基板は、金属、ケイ素、プラスチック、紙、被覆紙、繊維、ガラス又は被覆ガラスである。
【0076】
あるいは、TFTは、たとえば、熱成長させた酸化物層で被覆されている高度にドープされたケイ素基板にキノイド1,5−ジヘテロアントラセン又はその前駆体を溶液付着すること、続いてソース及びドレイン電極を蒸着及びパターン形成することより作製される。後半の工程において、デバイスは場合により加熱され、それにより前駆体がキノイド1,5−ジヘテロアントラセン膜に変換される。
【0077】
なお別の手法において、TFTは、熱成長させた酸化物層で被覆されている高度にドープされたケイ素基板にソース及びドレイン電極を付着すること、次にキノイド1,5−ジヘテロアントラセン又はその前駆体を溶液付着して薄膜を形成すること、最後に前駆体が使用される場合はデバイスを加熱して、それをキノイド1,5−ジヘテロアントラセンに変換することによって、作製される。
【0078】
ゲート電極は、また、基板上のパターン形成金属ゲート電極又は導電性ポリマーのような導電性材料であることができ、次にこれはパターン形成ゲート電極に溶液被覆若しくは蒸着のいずれかにより塗布された絶縁体で被覆される。絶縁体は、酸化物、窒化物のような材料であることができるか、又はPbZrTi1−x(PZT)、BiTi12、BaMgF、Ba(Zr1−xTi)O(BZT)が含まれるが、これらに限定されない強誘電性絶縁体のファミリーから選択される材料であることできるか、又は有機ポリマー絶縁体であることができる。
【0079】
不活性であり、材料の少なくとも一部を溶解することができ、従来の乾燥方法(たとえば、熱、減圧、空気流の適用など)により基板から除去することができる限り、あらゆる適切な溶媒を前駆体又は本発明の1,5−ジヘテロアントラセン化合物を溶解するのに使用することができる。本発明の半導体を加工するのに適した有機溶媒には、芳香族又は脂肪族炭化水素、塩素化のようなハロゲン化炭化水素、エステル、エーテル、アミド、例えばクロロホルム、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジクロロベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。次に溶液を、スピンコーティング、ディップコーティング、スクリーン印刷、ミクロ接触印刷、ドクターブレーディング又は当該技術に既知の他の溶液塗布技術のような方法により、基板に塗布して、半導体材料又はその前駆体の薄膜を得る。
【0080】
好ましくは、有機半導体層の厚さは約5〜200nmの範囲であり、特に、厚さは約10〜約30nmの範囲である。
【0081】
本発明のキノイド1,5−ジヘテロアントラセン化合物を、半導体デバイスの有機半導体層として単独で又は組み合わせて使用することができる。層を、たとえば、蒸着及び印刷技術のような任意の有用な方法により提供することができる。本発明の化合物の幾つか(たとえば、2つのドデシル、ノニル又はヘキシル置換基のような十分に大きいアルキル基を有するもの、特に非中断の非分岐鎖のもの、又はヘテロ官能基に対してα位置で分岐しているアルキルのような分岐鎖若しくは非分岐鎖の中断されている基)は、有機溶媒において十分に可溶性があり、溶液付着することができる(たとえば、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェット印刷、流延、又は他の既知の技術により)。
【0082】
キラル側鎖の場合、半導体層の調製のためにジアステレオ異性的に純粋な分子を選択することが好ましい。
【0083】
本発明のキノイド1,5−ジヘテロアントラセン化合物を、複数のOTFTを含む集積回路、並びに多様な電子部品に使用することができる。そのような部品には、たとえば、無線ID(RFID)タグ、フレキシブルディスプレーのバックプレーン(たとえば、パーソナルコンピューター、携帯電話又は携帯用デバイスにおいて使用される)、スマートカード、記憶デバイスなどが含まれる。
【0084】
下記の実施例は、説明の目的のみであり、本発明をいかようにも限定すると解釈するべきではない。室温/周囲温度は、20〜25℃の範囲の温度を表し、一晩は、12〜16時間の範囲の時間を示す。百分率は、特に指示のない限り重量に基づく。
実施例又は他で使用される略語:
M 1リットルあたりのモル濃度
n−BuLi n−ブチルリチウム
OTS オクタデシルトリクロロシラン
MS 質量分析
μ 非接触修正飽和電界効果移動度〔cm/Vs〕
on 開始電圧
閾値電圧
off オフ電流〔A〕
on/Ioff オン・オフ電流比
【0085】
実施例1:2,5−ビス−(ヒドロキシ−ジフェニル−メチル)−ベンゼン−1,4−ジオールの調製
【0086】
【化13】

【0087】
250mlのシュレンクフラスコに、1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン(10.16g、40mmol)を投入し、窒素でフラッシュした。次に、ジエチルエーテル(50ml)、n−BuLi(ヘプタン中2.7N溶液29.6ml、80mmol)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(9.3g、80mmol)を加えた。温度が僅かに上昇し、混合物が曇った。一晩撹拌した後、混合物は濃厚なスラリーになり、それに、ジエチルエーテル(合計50ml)中のベンゾフェノン(14.58g、80mmol)の溶液を滴加した。僅かに発熱性の反応において、緑色を帯びた青色溶液が形成され、それを更に45分間撹拌した。次に、溶媒をrotavaporで除去し、残渣を、エーテル(約150ml)と塩化アンモニウム溶液(10%溶液約100ml)の混合物で処理した。明澄な有機層を分離し、溶媒をrotavaporで除去すると、油状物26.3gが残った。これをメタノール(約200ml)に再溶解し、36%HCl約0.5mlを混合物に加えた。一晩放置した後、無色の固体が形成され、それを濾取し、乾燥した(10.55g)。
【0088】
実施例2:7,14−ジフェニル−クロメノ〔2,3−b〕キサンテンの調製
【0089】
【化14】

【0090】
フラスコに、2,5−ビス−(ヒドロキシ−ジフェニル−メチル)−ベンゼン−1,4−ジオール(実施例1)(9.5g)及びニトロベンゼン(50g)を投入した。得られた懸濁液を約45分間加熱還流し、次に一晩かけて冷ました。形成された結晶を濾取し、エタノールで数回洗浄し、10−3mbar/190℃で2時間乾燥して(いくらかの昇華が生じた)、緑色を帯びた赤色の結晶4.47g、融点=419℃(DSC)を得た。元素分析:C計算値88.05%、C実測値87.62%及び87.78%;H計算値4.62%、H実測値4.29%及び4.65%。提案された構造をX線結晶構造により確認し、単斜晶系空間群C2/c、a=18.961(5)、b=6.058(2)、c=20.229(5);アルファ=90.00、ベータ=116.351(9)、ガンマ=90.00;Z=4であった。
【0091】
実施例3
a)2,5−ビス−〔ビス−(4−クロロ−フェニル)−メトキシ−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオール
【0092】
【化15】

【0093】
250mlのシュレンクフラスコに、1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン(10.16g、40mmol)を投入し、窒素でフラッシュした。次に、ジエチルエーテル(50ml)、n−BuLi(ヘプタン中2.7N溶液29.6ml、80mmol)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(9.3g、80mmol)を加えた。混合物を一晩撹拌し、次に、温(60℃)THF(50ml)中の4,4’−ジクロロベンゾフェノン(20.1g、80mmol)の溶液を5分以内に滴加した。僅かな発熱があり、20分間撹拌した後、明褐色の溶液を得た。この溶液を水(約200ml)に注ぎ、混合した後、水層を除去した。ジエチルエーテル(約100ml)を加え、有機層を再び水(2回、約200ml)及び10%塩化アンモニウム溶液(約100ml)で洗浄した。次に、溶媒をrotavaporで除去し、残渣をメタノール(約200ml)に再溶解した。無色の固体が形成され、それは、32%HCl(2ml)を添加した後で溶解して、深褐色の溶液を形成し、それを周囲温度で2時間放置した。溶媒をrotavaporで除去し、残渣を再びメタノール(200ml)に溶解し、32%HCl(2ml)を加えた。混合物を周囲温度で更に1時間放置し、溶媒をrotavaporで除去した。残渣を少量のメタノールで処理し、残渣を濾取し、少量の冷却メタノールで洗浄し、乾燥すると、生成物14.6g(56.9%)が無色の結晶として残った。H−NMR(300MHz,CDCl)δ2.87(s,3H,OCH);7.01(s,1H,CH);7.34(s,8H,Ar CH);8.66(s,1H,OH)。13C−NMR(75MHz,CDCl)δ52.28(OCH);84.86(COMe);116.54(Ar CH);128.05(Ar CH);129.30(q C);130.80(Ar CH);132.17(q C);141.70(Ar CCl);146.99(Ar COH)。
【0094】
b)3,10−ジクロロ−7,14−ビス−(4−クロロ−フェニル)−クロメノ〔2,3−b〕キサンテン
【0095】
【化16】

【0096】
実施例aの生成物(2,5−ビス−〔ビス−(4−クロロ−フェニル)−メトキシ−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオール、1.0g、1.56mmol)の溶液を、ニトロベンゼン(5ml)に溶解し、溶液を加熱還流した。最初は無色の溶液が赤色になり、後に深紫色になった。1時間環流した後、混合物を冷まし、次に濾過した。生成物(紫色針状物)を大量のメタノールで洗浄し、乾燥した。MSは、4つの塩素の正確な質量及び同位体パターンを示した。
【0097】
実施例4:単結晶電界効果トランジスター
単結晶を、不活性担体ガス(アルゴン)中で、横型オーブンにより物理的蒸気輸送で成長させた。温度勾配が存在し、295℃での実施例2の7,14−ジフェニル−クロメノ〔2,3−b〕キサンテンの蒸発と、270℃〜240℃での結晶化をもたらした。結晶を赤褐色の薄いプレートとして得た。
結晶を、濃厚にドープしたシリコンウエハー、熱成長させた300nmのSiO及びシャドウマスクを介して付着された18nm厚の金接点から構成される予め組立てた基板上に設置した。SiO表面を、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)により、OTS蒸気に120℃、真空下で1時間暴露することによって処理した。
FETは、ゲート電圧Vで掃引し、ドレイン電圧Vを一定に保持する(及びその逆をする)ことにより、HP 4155A(登録商標)半導体パラメーター分析器を使用して特徴決定した(図1を参照すること)。出力と伝達の両方の特性は、僅かなヒステリシスしか含まなかった。
この試料のデータは、μsat=μlin=0.16cm/Vs、V=1V、S=1.5V/dec及びIon/Ioff=10であった。ヘリウム雰囲気下で10週間保存した後、線形及び飽和移動度、並びにIon/Ioffには変化がなかった。
【0098】
実施例5:薄膜トランジスター
A)精製及び薄膜調製
実施例2の化合物を、3ゾーンのオーブンにおいて、担体ガスとしてアルゴンを使用する連続昇華により精製した。精製した試料を、真空蒸着装置(Balzers)に投入し、成長速度0.1nm/秒で昇華させた。チャンバ圧は、典型的に、付着の開始時及び終了時には6×10−6Torrであった。膜厚を水晶振動子モニターにより測定して、総厚の50nmを得た。
【0099】
B)電界効果トランジスター
p−Siゲート(10Ωcm)を有するボトムゲート型薄膜トランジスター(TFT)を、全ての実験で使用した。300nm厚の高品質の熱成長SiO層は、単位面積あたりC=11nF/cmの静電容量のゲート絶縁体として作用した。ソース電極及びドレイン電極を、フォトリソグラフィーによりゲート酸化物に直接パターン形成した(ボトム接触配置)。幅W=2mm及び長さL=50μmでチャンネルを画定する金ソース/ドレイン電極を使用した。有機半導体の付着の前に、SiO表面を、飽和シラン蒸気に160℃で2時間暴露することにより、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で誘導体化した。
【0100】
トランジスターの性能:
薄膜トランジスターは、明確なp型トランジスターの挙動を示した。飽和伝達特性の線形適合から平方根まで、高い電界効果移動度が決定された(IEEE標準1620)。単位面積あたり11nF/cmの静電容量の300nmゲート酸化物によって、トランジスターは、約−20Vの閾値電圧を示した。
このトランジスターは、10〜10の良好なオン/オフ電流比を示した。
【0101】
実施例5a:実施例2の生成物の真空蒸着による薄膜トランジスター
300nmの熱成長SiOで高度にドープしたシリコンウエハーを切断し、高温のアセトン及び高温のイソプロパンで清浄した。試料をピラニア溶液(70%硫酸中の30%過酸化水素)に10分間浸漬し、超純水(18.2MΩcm)で十分に洗浄した。続いて、SiO表面を、蒸気プライム法によりオクタデシルトリクロロシラン(OTS)で処理した。このプロセスでは、試料及び約0.3mlのOTSを真空下、125℃で3時間加熱した。実施例2の生成物を、高真空下(ベース圧力2×10−6mbar)、シャドウマスクを介して試料に蒸着した。基板を、付着の間、75℃の温度で保持した。付着率及び膜厚を、チャンバ内の水冷水晶振動子により測定した。実施例2の生成物50nmを0.5A/sの速度で付着した。金接点を、別のチャンバにおいて、形成された薄膜上に真空蒸着して、チャンネルの長さが100μmであり、チャンネルの幅が500μmである試料上に多層薄膜トランジスター試験構造を得た。
【0102】
デバイス特性は、HP4155A半導体パラメーター分析器を使用して無水He雰囲気下で測定した。伝達特性では、ゲート電極Vを−60Vで掃引し、0.5Vの段階で戻し、一方、ドレイン電圧をV=−50Vで保持した。伝達特性を、非接触修正飽和電界効果移動度、開始電圧、閾値電圧、オフ電流及びオン−オフ比に関して分析した。加えて、同じデバイスの出力特性を測定した。
【0103】
図2の左側の部分は、線形目盛と対数目盛の両方による伝達特性を含む。移動度は、μ=1.7×10−3cm/Vsであった。デバイスの開始電圧は小さく、負性であり(Von=−1.3V)、閾値電圧は、V=−2.5Vであった。オフ電流Ioffは約1×10−11Aであり、オン−オフ電流比Ion/Ioffは1×10であった。図2の右側は、出力特性を表し、デバイスのp型稼働を明確に表した。
【0104】
実施例6:TFTに対する基板温度の影響
薄膜トランジスターを、実施例5に記載されたように実施例2の生成物から作製した。基板を、薄膜付着の際に多様な基板温度で保持した。およそ3つのデバイスを、実施例5の記載に従ってそれぞれの試料において特徴決定した。
【0105】
表は、それぞれの試料の平均のトランジスターパラメーターをまとめ、移動度は、付着過程の際に低温で保持した試料において高いことを示す。平均電界効果移動度の1.3×10−2cm/Vsが、T=0℃で付着された実施例2の生成物の薄膜において可能であった。
【0106】
表1:温度Tで付着した膜のトランジスターパラメーター
【表3】

【0107】
実施例7:OTS表面処理の効果
実施例2の生成物の薄膜トランジスターは、OTSを有する試料及び参照試料により実施例5に記載されたとおりに調製した。参照試料を同じウエハーから取り、通常の試料と共に清浄した。清浄した後、参照試料は、OTSによる表面処理に付さなかった。参照試料を付着チャンバ内でOTSを有する試料に近接して設置し、実施例2の生成物を、同じ付着実施により固定基板温度T=0℃で両方の試料に蒸着した。
【0108】
図3は、OTSを有する試料及び参照試料(OTSなし)の伝達特性を示す。表面処理は、デバイス品質において大きな利益をもたらした。表は、両方のデバイスの伝達特性を含む。OTSありの移動度は1.0×10−2cm/Vsであり、参照試料の移動度は、2.0×10−5cm/Vsであり、(表2を参照すること)、すなわち500倍低かった。
【0109】
表2:基板表面処理あり及びなしのトランジスターパラメーター
【表4】

【0110】
実施例8:ペンタセントランジスターと比較した実施例2の生成物から作製されたデバイスの安定性
ペンタセン薄膜トランジスターは、OTSに対するペンタセンの場合、高温基板温度が、より高い電界効果移動度をもたらすという事実によって(K. P. Pernstich et al., J. Appl. Phys. 96, 6431 (2004))、80℃で保持した試料にペンタセンを付着することにより、同様の様式で作製した。図4は、ペンタセンデバイスと実施例5のトランジスター(実施例2の半導体生成物を使用して調製)を比較する。両方のデバイスを無水He雰囲気下で測定した。実施例2の物質で作製されたトランジスターは、ペンタセントランジスターのものと比較して小さい電流ヒステリシスを示した。ペンタセンデバイスでは、5Vを超える電流では、開始電圧(すなわち、V=−14V)は、I=−5.4×10−9Aであった。デバイスは続く測定の工程により影響を受け、逆方向掃引では、同じ大きさの電流を、V=−17.3Vで得た。シフトは、ΔV=−3.3Vであった。実施例2の生成物で作製されたトランジスターの場合、5Vを超える電流では、開始(V=−5.5V)は、I=−1.5×10−9Aであった。逆方向掃引からの対応するシフトは、ΔV=−1.1Vであり、すなわち、3倍以上低く、所望の反転性と一致した。
【0111】
実施例9:3,10−ジメトキシ−7,14−ビス−(4−メトキシ−フェニル)−クロメノ〔2,3−b〕キサンテン
【0112】
【化17】

【0113】
a)前駆体2,5−ビス−〔メトキシ−ビス−(4−クロロ−フェニル)−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオールの合成:
250mlのシュレンクフラスコに、1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン(10.16g、40mmol)を投入し、窒素でフラッシュした。次に、ジエチルエーテル(50ml)、n−BuLi(ヘプタン中2.7N溶液29.6ml、80mmol)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(9.3g、80mmol)を加えた。温度が35℃に上昇し、混合物が曇った。一晩撹拌した後、混合物は濃厚なスラリーになった。これに、高温THF(150ml)中のビス−(4−メトキシ−フェニル)−メタノン(19.4g、80mmol)の溶液を滴加した。ケトンの添加が完了した後、混合物を1時間加熱還流した。次に溶媒を除去し、残渣をメタノール(約150ml)に加え、蒸発させた。これを再び繰り返し、次に残渣をメタノール(約150ml)でスラリー化した。塩酸(32%酸14ml)を加え、形成された懸濁液を周囲温度で45分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を再びメタノールでスラリー化した。塩酸の別の部分(32%酸2ml)を加え、混合物を周囲温度で2時間撹拌し続け、次に濾過した。固体をメタノール(毎回約30ml)で3回洗浄し、乾燥して、ピンク色の結晶19.9gを得た。
【0114】
b)フラスコに、2,5−ビス−〔メトキシ−ビス−(4−メトキシ−フェニル)−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオール(18.06g、29mmol)及びニトロベンゼン(35ml)を投入し、195℃(浴温度)で2時間加熱した。次に暗紫色の混合物を周囲温度に冷まし、3時間撹拌した。次に生成物を濾取し、トルエン(毎回約10mlの部分)で3回洗浄し、最後に真空下で乾燥して、生成物5.45g(32%)を暗紫色の結晶として得た。この物質のDSCは、255℃で変換を示し、338℃の融点を示した。構造をX線結晶学により確認し、空間群P−1、a=9.424(4);b=11.815(5);c=12.571(5);セル角度:α=110.315(16);β97.897(19);γ=93.76(2)であった。
【0115】
実施例10:
【0116】
【化18】

【0117】
500mlのシュレンクフラスコに、1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン(10.16g、40mmol)を投入し、窒素でフラッシュした。次に、ジエチルエーテル(50ml)、n−BuLi(ヘキサン中1.6N溶液55ml、88mmol)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(9.3g、80mmol)を加えた。僅かな温度上昇が観察され、混合物が曇った。一晩撹拌した後、混合物は濃厚なスラリーになり、それに、温THF(約150ml)中のキサントン(15.3g、80mmol)の溶液を10分間以内に滴加した。僅かに発熱する反応において、一時的に褐色の溶液が形成され、無色の固体が沈殿した。この懸濁液を更に1時間撹拌し、次に溶液をrotavaporで除去した。残渣をメタノール(約500ml)に再溶解し、32%HCl約20mlを混合物に加えた。約1時間撹拌した後、無色の沈殿物を濾取し、乾燥した(12.4g)。この物質を続く反応に直接使用した。
【0118】
100mlのフラスコに、上記に記載したようにして得られた生成物12.0g及びニトロベンゼン(70ml)を投入した。混合物を最初に180℃で加熱すると、無色の物質が溶解し、深青色の溶液が形成された。180℃での加熱を約1時間維持し、次に混合物を更に1時間環流すると、固体の懸濁液が形成された。混合物を周囲温度で一晩冷まし、次に濾過した。固体(緑色の光沢を有する深紫青色の結晶)を多量のエタノールで洗浄してニトロベンゼンを除去し、乾燥して、生成物6.89g、融点=436.8℃(DSC)、ms(M/z、相対存在度(%))、ピーク>5%:466(7.18),465(34.5),464(100),435(5.9),232(25.4),203(5.3),55(5.9)を得た。
【0119】
実施例11:
【0120】
【化19】

【0121】
500mlのシュレンクフラスコに、1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン(10.16g、40mmol)を投入し、窒素でフラッシュした。次に、ジエチルエーテル(50ml)、n−BuLi(ヘキサン中1.6N溶液55ml、88mmol)及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(9.3g、80mmol)を加えた。一晩撹拌した後、混合物は濃厚なスラリーになり、それに、温THF(約200ml)中のチオキサントン(17.38g、80mmol)の溶液を10分間以内に滴加した。僅かに発熱する反応において、褐色の溶液が形成された。この懸濁液を更に30分間還流し、次に溶液をrotavaporで除去した。残渣をメタノール(約500ml)に再溶解し、32%HCl約20mlを混合物に加えた。ピンク色の固体が沈殿し、濾取し、乾燥した(17.4g)。この物質を次の反応に直接使用した。
【0122】
100mlのフラスコに、上記に記載したようにして得られた生成物17.4g及びニトロベンゼン(70ml)を投入した。混合物を180℃に加熱した後、深青色の溶液を得た。180℃での加熱を約1時間維持し、次に混合物を更に1時間環流して、青色溶液中の青色を帯びた黒色の固体の濃厚な懸濁液を得た。混合物を周囲温度で一晩冷まし、次に濾過した。固体(緑色の光沢を有する紫青色の結晶)を、多量のエタノールで洗浄してニトロベンゼンを除去し、乾燥した(8.9g)。この物質をSoxleth抽出器によりトルエンで約60時間抽出した。抽出シンブルに残っている物質をエタノールですすぎ落とし、フィルターで収集して、乾燥した後、深紫色の固体(顕微鏡下で半透明な緑色)、融点=437.3℃(DSC)、ms(M/z、相対存在度(%))、ピーク>5%:499(7.62),498(24.7),497(43.2),496(100),464(10.70),432(9.1),248(23.5),232(8.4),216(8.9)を得た。
【0123】
実施例12:3,10−ジエトキシ−7,14−ビス−(4−エトキシフェニル)−クロメノ〔2,3−b〕キサンテン
【0124】
【化20】

【0125】
a)前駆体2,5−ビス−〔ビス−(4−エトキシ−フェニル)−メトキシ−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオールの合成:この化合物は、実施例9に記載されたものと類似の方法により調製した。1,4−ビス−(1−エトキシ−エトキシ)−ベンゼン10.16g(40mmol)及びビス−(4−エトキシ−フェニル)−メタノン(21.6g、80mmol)から、生成物17.95g(66%)を得た。
【0126】
b)フラスコに、2,5−ビス−〔ビス−(4−エトキシ−フェニル)−メトキシ−メチル〕−ベンゼン−1,4−ジオール(16.97g、25mmol)及びニトロベンゼン(30ml)を投入し、195℃(浴温度)で2時間加熱した。次に暗紫色の混合物を周囲温度に冷ました。次に生成物を濾取し、ニトロベンゼン(毎回約7mlの部分)で3回、トルエン(毎回約8ml)で3回洗浄し、最後に真空下で乾燥して、生成物6.03g(32%)を暗紫色の結晶として得た。この物質のDSCは、融点320℃を示した。この物質の構造をX線結晶学により確認し、空間群:P−1;a=7.483(6);b=8.710(7);c=12.618(7);α91.22(5);β92.43(5);γ110.35(5)であった。
【0127】
実施例13:7,14−ジフェニル−5,12−ジチア−ペンタセン
【0128】
【化21】

【0129】
前駆体7,14−ジフェニル−7,14−ジヒドロ−5,12−ジチア−ペンタセンの合成は、Freund, T. et al., Angew. Chem. 1994, 106, 2547と類似の方法で実施した(下記のスキームを参照すること)。
【0130】
【化22】

【0131】
7,14−ジフェニル−7,14−ジヒドロ−5,12−ジチア−ペンタセン8.0g及びクロラニル3.1グラムの混合物を、オルト−ジクロロベンゼン70ml中、150℃で1時間加熱した。22℃に冷却した後、生成物を濾取し、オルト−ジクロロベンゼン30ml、トルエン15mlで2回、最後にエタノール30mlで洗浄した。乾燥した後、7,14−ジフェニル−5,12−ジチア−ペンタセン5.9gを暗紫色の結晶、融点=320℃として得た。EI−MS:468(100%),436(7%),391(7%),358(8%),234(11%)。構造を単結晶X線回析分析により確認した:(空間群:P−1;セル長さ:a 5.746(2);b 10.337(2);c 10.623(2);セル角度:α 116.620(11) β 104.914(13) γ 92.354(14))。図5は、上記のX線データに従って計算した生成物の代表を示す(結晶軸以外からの図)
【0132】
実施例14:7,14−ジフェニル−5,12−ジチア−ペンタセンによる電界効果トランジスター
p−Siゲート(10Ωcm)を有するボトムゲート型薄膜トランジスター(TFT)を、全ての実験で使用した。300nm厚の高品質熱成長SiO層は、単位面積あたりC=11nF/cmの静電容量のゲート絶縁体として作用した。ソース電極及びドレイン電極を、フォトリソグラフィーによりゲート酸化物に直接パターン形成した(ボトム接触配置)。幅W=2mm及び長さL=4〜30μmでチャンネルを画定する金ソース/ドレイン電極を使用した。有機半導体の付着の前に、SiO表面を、飽和シラン蒸気に160℃で2時間暴露することにより、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で誘導体化した。
【0133】
トランジスターの性能:
薄膜トランジスターは、明確なp型トランジスターの挙動を示した(図6を参照すること)。飽和伝達特性の線形適合から平方根まで、0.5〜1.9×10−3cm/Vsの電界効果移動度が決定された(IEEE標準1620)。単位面積あたり11nF/cmの静電容量の300nmゲート酸化物によって、トランジスターは、約−20Vの閾値電圧を示した。
このトランジスターは、0.1〜5×10の良好なオン/オフ電流比を示した。
【0134】
実施例15:2,9−ジブロモ−7,14−ビス−〔4−(1−ヘキシル−ヘプチル)−フェニル〕−5,12−ジチア−ペンタセン
【0135】
【化23】

【0136】
前駆体2,9−ジブロモ−7,14−ビス−〔4−(1−ヘキシル−ヘプチル)−フェニル〕−7,14−ジヒドロ−5,12−ジチア−ペンタセンの合成は、対応する出発材料として1−ヘキシル−ヘプチル−ベンゼン及びp−ブロモ−チオフェノールを用いて、Freund, T. et al. Angew. Chem. 1994, 106, 2547に類似の方法で実施した。
【0137】
2,9−ジブロモ−7,14−ビス−〔4−(1−ヘキシル−ヘプチル)−フェニル〕−7,14−ジヒドロ−5,12−ジチア−ペンタセン7.1グラム及びクロラニル2.6グラムの混合物を、オルト−ジクロロベンゼン100ml中、150℃で4時間加熱した。22℃に冷却した後、反応混合物をメタノール600mlに注ぎ、濾取し、メタノール50mlで3回洗浄した。粗生成物をアセトン80mlに懸濁し、1時間撹拌し、濾取した。真空下で乾燥した後、2,9−ジブロモ−7,14−ビス−〔4−(1−ヘキシル−ヘプチル)−フェニル〕−5,12−ジチア−ペンタセン3.0グラムを紫色の結晶として得た。H−NMR(CHCl):7.26(d,4H,J=8Hz);7.04(d,4H,J=8Hz);6.98(dd,2H,J=8.5/2Hz);6.71(d,2H,J=8.5Hz);6.58(d,2H,J=2Hz);5.86(s,2H);2.57(m, 2H);1.8−1.1(m,40H);0.88(t,12H)。
【0138】
実施例16:2,5−ビス−フェニルスルファニル−ベンゼン−1,4−ジカルボアルデヒド
【0139】
【化24】

【0140】
500mlのシュレンクフラスコに、不活性雰囲気下で、2,5−ジクロロ−ベンゼン−1,4−ジカルボアルデヒド(30.45g、0.15mol)、炭酸カリウム(62.1g、0.45mol)及び無水DMF(200ml)を投入した。フラスコを80℃の油浴に浸漬し、次に直ぐにチオフェノール(33.0g、0.3mol)を、滴下漏斗により15分以内に加えた。形成された褐色の懸濁液に、水(約100ml)を加え、混合物を更に5分間撹拌した。次にフラスコの内容物を、激しく撹拌した水2Lを含有するビーカーに、細流で注いだ。黄色の固体が沈殿し、混合物を更に1時間撹拌した。次に固体を濾取し、水(2回、250ml)で洗浄し、更に乾燥することなく、THF(約200ml)から再結晶させた。生成物の結晶を濾取し、少量のイソプロパノール(約50ml)で洗浄し、乾燥して、生成物(36.75g)を得た。母液から、大部分のTHFをrotavaporで除去すると、別の産出物の結晶化をもたらした。この物質も濾取し、少量のイソプロパノールで洗浄して、別の生成物4.72gを得た。鮮黄色の結晶、融点163℃。H−NMR(CDCl,300MHz)δ7.39(フェニル パラ H);7.40(フェニル オルト H));7.41(フェニル メタ H);7.58(s,アリール CH);10.27 (s,1H,CHO)。13C−NMR(CDCl,75MHz)δ129.18(フェニル パラ CH);130.19(フェニル オルト CH);132.47(フェニル イプソ C);133.20(フェニル メタ CH);133.75(アリール CH);136.79(CCHO);139.54(CS);190.45(CHO)。
【0141】
実施例17:5,12−ジチア−ペンタセンD
【0142】
【化25】

【0143】
a)前駆体A、B及びCの混合物の合成:500mlの丸底フラスコに、硫酸(96%酸約200ml)を投入した。激しく撹拌した酸に、2,5−ビス−フェニルスルファニル−ベンゼン−1,4−ジカルボアルデヒド10.0g(28.57mol)をスパチュラでゆっくりと加えた。色は直ちに暗黄緑色になり、混合物の温度は約30℃に上昇した。混合物を更に10分間撹拌し、次に、激しく撹拌した水800mlを有するビーカーに、細流で注いだ。黄褐色の固体が沈殿し、これを濾取し、水(約300ml)で十分洗浄した。次に固体を高温エタノール(約150ml)中でスラリー化し、再び濾取した。湿潤フィルターケーキを還流THF(約100ml)で再びスラリー化し、次に濾取し、乾燥した後、生成物5.86gを得た。別の産出物3.20gを、濃エタノール−及びTHF−濾液から得た。得られた物質は、質量分析により決定されたように、A、B及びCの混合物であり、収量9.06g(95%)であった。
【0144】
b)7,14−ジヒドロ−5,12−ジチア−ペンタセンAの合成(代替案):500mlのフラスコに、上記の混合物及びTHF(約200ml)を投入し、窒素でフラッシュした。溶液を60℃に加熱した後、ボランジメチルスルフィド付加物(4ml、96%、約40mmol)を加え、混合物を3時間撹拌した。ボランジメチルスルフィド付加物の別の部分(2ml、96%、約20mmol)を加え、混合物を60℃で更に3時間撹拌した。この時間の間、反応混合物の色は、黄色からほぼ無色になった。一晩冷却した後、形成された固体を濾取し、乾燥して、無色の結晶8.03g(92.8%)、融点=271℃(DSC)を得た。H−NMR(DMSO−D6,120℃,300MHz)δ3.86(s,2H,CH);7.21,7.23(2“tr”,各1,H−3,H4);7.37,7.43(2d,各1,H−2,H−4);7.49(s,1H,H−7)。
【0145】
c)5,12−ジチア−ペンタセンDの合成:40mlのオートクレーブに、A(0.718g)、硫黄(0.217g)、ピリジン(10ml)及び電磁式撹拌バーを投入した。密閉した後、オートクレーブを240℃で一晩加熱し(52bar)、次に周囲温度に冷ました。次に反応生成物を濾取し、乾燥して、深赤色を帯びた黒色生成物0.66g(融点276〜280℃(DSC);収率92%)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】実施例4のトランジスターにおける定ゲート電圧(V)でのドレイン電流(I)を示す図である。
【図2】実施例5aのトランジスターにおける線形目盛と対数目盛の両方による伝達特性(左側)及び出力特性(右側)を示す図である。
【図3】基盤表面処理あり及びなしのTFT伝達特性を示す図である(実施例7)。
【図4】半導体としてペンタセン又は実施例2の生成物を使用するゲート電圧/ドレイン電流の掃引を示す図である(実施例8)。
【図5】X線回析分析に基づいて計算した分子(実施例13の生成物)を示す図である(結晶軸以外からの図)。
【図6】実施例14のトランジスターにおける線形目盛及び対数目盛の両方による伝達特性(左側;上部)及び出力特性(下部)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体として非ポリマー化合物を含み、前記化合物が、式I:
【化1】


〔式中、Xは、O、S又はNRを意味し、R、R、R、R、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、有機残基であるか又はその2つ以上が一緒になって、置換若しくは非置換、炭素環式若しくは複素環式、芳香族、キノイド若しくは脂肪族であってもよい1つ以上の縮合環を形成し;そしてR、R、R、R、R、R、R、Rは、更に水素であってもよい〕
で示されるキノイドジヘテロアセンであることを特徴とする、半導体デバイス。
【請求項2】
式Iの化合物が、1200g/mol未満の分子量であり、対称性群C又は特にC2hに属する、請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項3】
ダイオード、有機電界効果トランジスター、太陽電池、又はダイオード及び/若しくは有機電界効果トランジスター及び/若しくは太陽電池を含むデバイスである、請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項4】
式Iの化合物において、
Rが、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、非置換又は置換アリールから選択され;
、R、R、R、R、R、R、Rが、それぞれ独立して、H、非置換若しくは置換アルキル、非置換若しくは置換アルケニル、非置換若しくは置換アルキニル、非置換若しくは置換アリール、ハロゲン、置換シリル、XR12から選択されるか、又は1つ以上のR、R、R、R、R、R、R、R、Rが、それらが結合している炭素若しくは窒素原子と一緒になって、飽和若しくは不飽和、非置換若しくは置換、炭素環式若しくは複素環式の縮合環を形成し;
12が、非置換又は置換アルキル、非置換又は置換アルケニル、非置換又は置換アルキニル、置換シリル、非置換又は置換アリールである
請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項5】
式Iにおいて、
アルキルが、それぞれ、O、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10で中断されていてもよいC〜C22アルキルから選択され、ここでR10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
アリールが、それぞれ、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有してもよいC〜C18芳香族部分から選択され、好ましいアリールが、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
存在する場合、縮合環が、2つ以上の残基R、R、R、R、R、Rにより形成され、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の6員環であり;
存在する場合、置換基が、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、Si(R11)、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基が、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい
請求項1記載の半導体デバイス。
【請求項6】
式Iの化合物が、式II:
【化2】


〔式中、
Xは、O、S又はNRを意味し、
Rは、非置換又は置換C〜C18アルキル、非置換又は置換C〜C18アルケニル、非置換又は置換C〜C18アルキニル、非置換又は置換C〜C18アリールから選択され;
、R、R、Rは、互いに独立して、H;それぞれO、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C22アルキル若しくはC〜C22アルケニル;置換C〜C18アルキニル;非置換又は置換C〜C18アリール;ハロゲン;シリル;XR12から選択され;
、R’、R”、R'''は、独立してRで定義されたとおりであるか、或いは
隣接するRとR’、及び/又は隣接するR”とR'''若しくはRとR'''、及び/若しくはRとR’は、一緒になって縮合環を形成し;
R10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
シリルは、それぞれ、SiH(R11)又はSi(R11)であり、ここでR11は、C〜C20−アルキル又は−アルコキシであり;
12は、シリル、アシル、非置換又は置換C〜C22アルキル、非置換又は置換C〜C18アリールであり;
アリールは、それぞれ、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有してもよいC〜C18芳香族部分から選択され、好ましいアリールは、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
存在する場合、縮合環は、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の6員環であり;そして
存在する場合、置換基は、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基は、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい〕
に一致する、請求項1又は4又は5記載の半導体デバイス。
【請求項7】
式IIの化合物において、
Xが、O、S又はNRを意味し、
Rが、C〜C18アルキル、又は非置換若しくは置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
、R、R、Rが、それぞれ独立して、H;それぞれO、S又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C18アルキル、C〜C18アルケニル若しくはC〜C18アルコキシ;置換エチニル;非置換又は置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニル;ハロゲン;Si(R11)から選択され;
、R’、R”、R'''が、独立して、Rで定義されたとおりであるか、又は隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''が、一緒になって縮合環を形成するか、又は非置換若しくは置換フェニルとしてのRがR'''に結合して及び/若しくは非置換若しくは置換フェニルとしてのRがR’に結合して、6員環構造を形成し、ここでR'''及び/又はR’がX又はCHであり;
R10が、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
R11が、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシであり;
存在する場合、縮合環が、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の5員又は6員環であり;そして
存在する場合、置換基が、炭素原子に結合しており、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基が、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい
請求項6記載の半導体デバイス。
【請求項8】
式IIの化合物において、
Xが、O又はSであり;
、R、R、Rが、それぞれ独立して、H;非置換又は置換のC〜C18アルキル若しくはC〜C18アルコキシ;置換エチニル;非置換又は置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、キノリル;ハロゲン;Si(R11)から選択され;
、R’、R”、R'''が、独立して、Rで定義されたとおりであるか、又は隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''が、結合炭素原子と一緒になって縮合フェニル、ナフチル若しくはピリジル環を形成するか、又は非置換若しくは置換フェニルとしてのRがR'''に結合して及び/若しくは非置換若しくは置換フェニルとしてのRがR’に結合して、6員環構造を形成し、ここでR'''及び/又はR’がXであり;
R11が、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシであり;そして
存在する場合、置換基が、炭素原子に結合し、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキル、シクロヘキシルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシル、シクロペンチル、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)で置換されていてもよい
請求項7記載の半導体デバイス。
【請求項9】
有機半導体デバイスの製造方法であって、特にR〜Rのうち少なくとも1つが炭素原子4個以上のアルキル又はアルキレン鎖を含み、特にR1〜R8のうちの1又は2つが、C〜C22アルキル、C10〜C22フェニルアルキルから選択される残基を含むか、又はそのような残基がO、S、NR10、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10により脂肪族部分で中断されている、請求項1記載の式Iの化合物を、
適切な基板に塗布し、化合物の付着が蒸着により、又は特に有機溶媒中の溶液の塗布、続く溶媒の除去により実施されることを含む
方法。
【請求項10】
有機半導体デバイスの製造方法であって、式III:
【化3】


〔式中、
、R、R、R’、R”、R'''及びXは、請求項6記載の式IIで定義されたとおりであり、そして
Lは、C〜Cアルキルである〕
で示される前駆体化合物の層を、
60〜500℃の範囲の温度に加熱することを含む
方法。
【請求項11】
式I又はIIの化合物の膜が5〜200nmの範囲の厚さを有する、有機薄膜トランジスターの製造のための請求項9又は10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
式II又はIV:
【化4】


〔式中、
X’は、S又はNRを意味し、
X及びX”は、独立してO、S又はNRを意味し、
Rは、非置換又は置換C〜C18アルキル、非置換又は置換C〜C18アルケニル、非置換又は置換C〜C18アルキニル、非置換又は置換C〜C18アリールから選択され;
、R、R、Rは、互いに独立して、H;それぞれO、S、COO、OCNR10、OCOO、OCONR10、NR10CNR10又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C22アルキル若しくはC〜C22アルケニル;置換C〜C18アルキニル;非置換又は置換C〜C18アリール;ハロゲン;Si(R11);XR12から選択され;
、R’、R”、R'''は、独立してRで定義されたとおりであるか、又は式IIにおいて、隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''は、一緒になって縮合環を形成し;
R10は、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
R11は、C〜C20−アルキル又は−アルコキシであり;
12は、Si(R11)、非置換又は置換C〜C22アルキル、非置換又は置換C〜C18アリールであり;
アリールは、それぞれ、O、N及びSから選択される1又は2個のヘテロ原子を環構造の一部として含有してもよいC〜C18芳香族部分から選択され、好ましいアリールは、フェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
存在する場合、縮合環は、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の6員環であり;そして
存在する場合、置換基は、炭素原子に結合しており、C〜C22アルコキシ、C〜C22アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、、フェニル、ナフチルから選択され、一方、飽和炭素もオキソ(=O)により置換されていてもよく、2つの隣接する置換基は、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい〕
で示される化合物。
【請求項13】
Rが、C〜C18アルキル、又は非置換若しくは置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニルから選択され;
、R、R、Rが、それぞれ独立して、H;それぞれO、S又はNR10で中断されていてもよい非置換又は置換のC〜C18アルキル若しくはC〜C18アルコキシ;置換エチニル;非置換又は置換のフェニル、ナフチル、ピリジル、テトラヒドロナフチル、フリル、チエニル、ピリル、キノリル、イソキノリル、アントラキニル、アントラシル、フェナントリル、ピレニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチエニル;ハロゲン;Si(R11)から選択され;
、R’、R”、R'''が、独立してRで定義されたとおりであるか、又は隣接するRとR’、及び/若しくは隣接するR”とR'''が、一緒になって縮合環を形成し;
R10が、H、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキルであり;
R11が、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシであり;
存在する場合、縮合環が、芳香族、炭素環式又はN−複素環式、置換又は非置換の5員又は6員環であり;そして
存在する場合、置換基が、炭素原子に結合しており、C〜C18アルコキシ、C〜C18アルキル、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12シクロアルキル、OH、ハロゲン、フェニル、ナフチルから選択され、2つの隣接する置換基が、一緒に結合して、たとえば、ラクトン、無水物、イミド又は炭素環を形成してもよい
請求項12記載の化合物。
【請求項14】
電子デバイス、特に有機電界効果トランジスター若しくは薄膜トランジスター、又は有機電界効果トランジスター若しくは薄膜トランジスターを含む電子デバイスの製造又は稼働のための有機半導体としての、請求項1〜8又は12のいずれか1項記載の式I又はIIの化合物の使用。
【請求項15】
有機半導体としてポリマー化合物を含み、前記化合物が、請求項1記載の式I又は特に請求項6記載の式IIのキノイドジヘテロアセンを含有することを特徴とし、2個の水素原子が、反復単位として開放結合に代えられている、半導体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−533852(P2009−533852A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504695(P2009−504695)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053314
【国際公開番号】WO2007/118799
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508120547)チバ ホールディング インコーポレーテッド (81)
【氏名又は名称原語表記】CIBA HOLDING INC.
【Fターム(参考)】