説明

有機性排水の生物処理方法および装置

【課題】微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法において、高負荷運転の場合の固液分離性の改善と、微小動物を保持する槽の流動床担体の充填量の低減を図り、安定した処理水質を維持した上でより一層の処理効率の向上と余剰汚泥発生量の低減を図る。
【解決手段】第一生物処理槽1に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽1からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を流動床式の第二生物処理槽2に一過式で通水して第二生物処理水を得、第二生物処理水を浮遊式の第三生物処理槽3に通水して得た第三生物処理水を沈殿槽5で汚泥と処理水とに固液分離し、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外へ引き抜き、一部を返送汚泥として第三生物処理槽3に返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活排水、下水、食品工場やパルプ工場をはじめとした広い濃度範囲の有機性排水の処理に利用することができる有機性排水の生物処理方法および装置に関するものであり、特に、処理水質を悪化させることなく、処理効率を向上させ、かつ、余剰汚泥発生量の低減が可能な有機性排水の生物処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水を生物処理する場合に用いられる活性汚泥法は、処理水質が良好で、メンテナンスが容易であるなどの利点から、下水処理や産業廃水処理等に広く用いられている。しかしながら、活性汚泥法におけるBOD容積負荷は0.5〜0.8kg/m/d程度であるため、広い敷地面積が必要となる。また、分解したBODの20%が菌体、即ち汚泥へと変換されるため、大量の余剰汚泥処理も問題となる。
【0003】
有機性排水の高負荷処理に関しては、担体を添加した流動床法が知られている。この方法を用いた場合、3kg/m/d以上のBOD容積負荷で運転することが可能となる。しかしながら、この方法では発生汚泥量は分解したBODの30%程度で、通常の活性汚泥法より高くなることが欠点となっている。
【0004】
特開昭55−20649号公報には、有機性排水をまず、第一処理槽で細菌により処理し、排水に含まれる有機物を酸化分解して非凝集性の細菌の菌体に変換した後、第二処理槽で固着性原生動物に捕食除去させることで余剰汚泥の減量化が可能になることが記載されている。さらに、この方法では高負荷運転が可能となり、活性汚泥法の処理効率も向上するとされている。
【0005】
このように細菌の高位に位置する原生動物や後生動物の捕食を利用した廃水処理方法は、多数提案されている。
【0006】
例えば、特開2000−210692号公報では、特開昭55−20649号公報の処理方法で問題となる、原水の水質変動による処理性能悪化の対策が提案されている。具体的な方法としては、「被処理水のBOD変動を平均濃度の中央値から50%以内に調整する」、「第一処理槽内および第一処理水の水質を経時的に測定する」、「第一処理水の水質悪化時には種汚泥又は微生物製剤を第一処理槽に添加する」等の方法が提案されている。
【0007】
特公昭60−23832号公報では、細菌、酵母、放線菌、藻類、カビ類や廃水処理の初沈汚泥や余剰汚泥を、原生動物や後生動物に捕食させる際に、超音波処理または機械攪拌により、これらの餌のフロックサイズを動物の口より小さくさせる方法を提案している。
【0008】
また、流動床と活性汚泥法の多段処理に関する発明としては、特許第3410699号公報に記載のものがある。この方法では、後段の活性汚泥法をBOD汚泥負荷0.1kg−BOD/kg−MLSS/dの低負荷で運転することで、汚泥を自己酸化させ、汚泥引き抜き量を大幅に低減できるとしている。
【特許文献1】特開昭55−20649号公報
【特許文献2】特開2000−210692号公報
【特許文献3】特公昭60−23832号公報
【特許文献4】特許第3410699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法は、実際に有機性廃水処理に用いられており、対象とする排水によっては処理効率の向上、50%程度の発生汚泥量の減量化が可能となっている。
しかしながら、この方法では、
(1) 負荷が高い場合、微小動物を保持する槽の汚泥濃度が高くなり、固液分
離が困難になる。
(2) 微小動物を保持する槽を流動床とすると、担体の充填量が多くなり、建
設費が高くなってしまう。
といった問題があった。
【0010】
従って、本発明は、微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法において、高負荷運転の場合の固液分離性の改善と、微小動物を保持する槽の流動床担体の充填量の低減を図り、安定した処理水質を維持した上でより一層の処理効率の向上と余剰汚泥発生量の低減を図る有機性排水の生物処理方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、分散菌を捕食する固着性の濾過捕食型微小動物を優先化させる槽の一部を流動床として、この流動床で、分散菌をあら取りし、さらに浮遊式の微小動物槽で汚泥の減量化を図ることにより、上記課題を解決することができることと見出した。
【0012】
本発明は、このような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] 三段以上の多段に設けられた生物処理槽の第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽および第三生物処理槽に順次通水して生物処理する有機性排水の生物処理方法であって、該第二生物処理槽を流動床式生物処理槽、該第三生物処理槽を浮遊式生物処理槽とし、前記第一生物処理水を該第二生物処理槽に一過式で通水して第二生物処理水を得、該第二生物処理水を該第三生物処理槽に通水して得た第三生物処理水を汚泥と処理水とに固液分離し、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外に引き抜き、分離汚泥の残部の少なくとも一部を返送汚泥として該第三生物処理槽に返送することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0014】
[2] [1]において、前記第一生物処理槽が担体充填率10%以下の流動床式生物処理槽であり、前記第二生物処理槽が担体充填率10%以上の流動床式生物処理槽であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0015】
[3] [1]または[2]において、前記第一生物処理槽の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0016】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記分離汚泥の少なくとも一部を、第四生物処理槽で生物処理して減量化することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0017】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽の槽内pHを7以下とすることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0018】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽に栄養剤を添加することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0019】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、前記第三生物処理槽に前記有機性排水の一部を直接導入することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0020】
[8] 三段以上の多段に設けられた生物処理槽を備える有機性排水の生物処理装置において、第一生物処理槽は、有機性排水を細菌により生物処理する槽であり、第二生物処理槽は、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水が一過式で通水される流動床式生物処理槽であり、第三生物処理槽は、第二生物処理槽からの第二生物処理水が導入される浮遊式生物処理槽であり、第三生物処理槽からの第三生物処理水を汚泥と処理水とに固液分離する固液分離手段と、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外へ引き抜く手段と、分離汚泥の残部の少なくとも一部を返送汚泥として該第三生物処理槽に返送する手段とを備えることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0021】
[9] [8]において、前記第一生物処理槽が担体充填率10%以下の流動床式生物処理槽であり、前記第二生物処理槽が担体充填率10%以上の流動床式生物処理槽であることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0022】
[10] [8]または[9]において、前記第一生物処理槽は溶存酸素濃度0.5mg/L以下に制御されることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0023】
[11] [8]ないし[10]のいずれかにおいて、前記分離汚泥を生物処理して減量化する第四生物処理槽を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0024】
[12] [8]ないし[11]のいずれかにおいて、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽の槽内pHが7以下とされることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0025】
[13] [8]ないし[12]のいずれかにおいて、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽に栄養剤が添加されることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【0026】
[14] [8]ないし[13]のいずれかにおいて、前記第三生物処理槽に前記有機性排水の一部を直接導入する手段を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法において、微小動物を保持する生物処理槽を、担体を添加した流動床式の第二生物処理槽と、浮遊式の第三生物処理槽とに分け、前段の流動床式生物処理槽で第一生物処理槽からの分散菌の大部分を捕食させ、残部を後段の浮遊式生物処理槽で更に除去することにより、全体としての担体充填量を抑えた上で、汚泥を効果的に減量化することが可能となる(請求項1,8)。
【0028】
このため、本発明によれば、有機性排水の効率的な生物処理が可能になり、以下のような効果が奏される。
1)排水処理時に発生する汚泥の大幅な減量化
2)高負荷運転による処理効率の向上
3)安定した処理水質の維持
【0029】
本発明において、第一生物処理槽では有機物の大部分を分解して、菌体へと安定して変換しておく必要があるため、第一生物処理槽は流動床式とすることが望ましいが、第一生物処理槽に添加する担体の充填率が高い場合、分散菌は生成せず、細菌は担体に付着するか、糸状性細菌が増殖するので、第一生物処理槽に添加する担体の充填率は10%以下とすることが、原水の水質変動に影響されず、捕食しやすい分散菌の生成が可能になるため望ましい。一方、第二生物処理槽では、微小動物を維持するための、多量の足場が必要となることから、添加する担体の充填率は10%以上とすることが望ましい(請求項2,9)。
【0030】
また、第二生物処理槽で捕食されやすい分散菌を優占化させるべく、第一生物処理槽の溶存酸素濃度は0.5mg/L以下に制御することが好ましい(請求項3,10)。
【0031】
また、固液分離された分離汚泥を第四生物処理槽で更に生物処理して減量化しても良い(請求項4,11)。
【0032】
また、第二〜第四生物処理槽は、微小動物による捕食を促進させるために、pH7以下とすることが好ましい(請求項5,12)。
【0033】
また、第二〜第四生物処理槽に栄養剤を添加して、微小動物維持の安定化を図っても良い(請求項6,13)。
【0034】
また、後段の生物処理槽での適度な有機物負荷を確保するために、原水である有機性排水の一部を直接第三生物処理槽に導入するようにしても良い(請求項7,14)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に図面を参照して本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
図1〜4は本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の実施の形態を示す系統図である。
図1〜4において、1は第一生物処理槽、2は第二生物処理槽、3は第三生物処理槽、4は第四生物処理槽、5は沈殿槽であり、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0037】
図1の態様では、原水(有機性排水)は第一生物処理槽1に導入され、分散性細菌により、有機成分(溶解性BOD)の70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上が酸化分解される。この第一生物処理槽1のpHは6以上、望ましくは8以下とする。ただし、原水中に油分を多く含む場合にはpHは8以上としても良い。
また、第一生物処理槽1へのBOD容積負荷は1kg/m/d以上、例えば1〜20kg/m/d、HRT(原水滞留時間)は24h以下、例えば0.5〜24hとすることで、分散性細菌が優占化した処理水を得ることができ、また、HRTを短くすることでBOD濃度の低い排水を高負荷で処理することができ、好ましい。
【0038】
また、この第一生物処理槽1の溶存酸素濃度は0.5mg/L以下、特に0.1mg/L以下、とりわけ0.05mg/L以下に制御することが好ましく、これにより、1〜5μm程度の大きさの分散菌が優占化し、これらは第二生物処理槽2で速やかに捕食される。
【0039】
この第一生物処理槽には、後段生物処理槽からの汚泥の一部を返送したり、第一生物処理槽を二槽以上の多段構成としても良い。
【0040】
なお、第一生物処理槽1のHRTが最適値に比べて長くなると、糸状性細菌の優占化やフロックの形成につながり、後段の第二生物処理槽2で捕食されにくい細菌が生成してしまう。そこで、第一生物処理槽1のHRTを一定に制御する必要がある。この最適HRTは原水の水質により異なるため、机上試験などから、有機成分の70〜90%を除去できるHRTを求める必要がある。HRTを最適値に維持する方法としては、原水量減少時に、処理水の一部を返送して、第一生物処理槽1に流入する水量を一定にし、第一生物処理槽1のHRTを安定させる方法や、原水量の変動に合わせて第一生物処理槽1の水位を変動させる方法がある。第一生物処理槽1のHRTを安定させる幅は、机上試験で求めた最適HRTの0.75〜1.5倍の範囲内に納めることが望ましい。
【0041】
なお、第一生物処理槽1で溶解性有機物を完全に分解した場合、第二生物処理槽2ではフロックが形成されず、また、微小動物増殖のための栄養も不足し、圧密性の低い汚泥のみが優占化した生物処理槽となる。従って、第一生物処理槽1での有機成分の分解率は100%ではなく、95%以下となるようにすることが好ましい。
【0042】
第一生物処理槽1の処理水(第一生物処理水)は、後段の第二生物処理槽2および第三生物処理槽3に順次通水して、ここで、残存している有機成分の酸化分解、分散性細菌の自己分解および微小動物の捕食による余剰汚泥の減量化を行う。
【0043】
第二生物処理槽2では、細菌に比べ増殖速度の遅い微小動物の働きと細菌の自己分解を利用するため、微小動物と細菌が系内に留まるような運転条件および処理装置を用いる必要がある。そこで、本発明では、第二生物処理槽2は、曝気槽内に担体2Aを添加した流動床を形成することにより、微小動物の槽内保持量を高める。第二生物処理槽2に添加する担体2Aの形状は、球状、ペレット状、中空筒状、糸状等任意であり、大きさも0.1〜10mm程度の径で良い。また、担体2Aの材料は天然素材、無機素材、高分子素材等任意であり、ゲル状物質を用いても良い。
第二生物処理槽2では、微小動物を維持するための多量の足場が必要となることから、添加する担体の充填率は10%以上、望ましくは20%以上、例えば20〜40%とすることが望ましい。
【0044】
この第二生物処理槽2には、第1生物処理水が一過式で通水され、第二生物処理槽2の処理水(第二生物処理水)は、次いで第三生物処理槽3に導入され、第二生物処理槽2で分解し切れなかった有機物、分散菌、原水由来の固形物を分解することで、さらに汚泥の減量化を図る。
【0045】
この第三生物処理槽3からの処理水(第三生物処理水)は、次いで、沈殿槽5で汚泥と処理水とに固液分離され、分離汚泥の一部が返送汚泥として返送される。即ち、第三生物処理槽3は、担体を加えない浮遊式とされているため、微小動物は汚泥フロックを住処としている。そのため、沈殿槽5を設けて、汚泥返送を行い、第三生物処理槽3において5日以上30日以下の汚泥滞留時間を確保する必要がある。
【0046】
本発明において、第二生物処理槽2に導入する第一生物処理水中に有機物が多量に残存した場合、その酸化分解は第二生物処理槽2で行われることになる。しかし、微小動物が多量に存在する第二生物処理槽2で細菌による有機物の酸化分解が起こると、微小動物の捕食から逃れるための対策として、細菌は捕食されにくい形態で増殖することが知られており、このように増殖した細菌群は微小動物により捕食されず、これらの分解は自己消化のみに頼ることとなり、汚泥発生量低減の効果が下がってしまう。
そこで、前述の如く、第一生物処理槽1では原水中の有機成分の大部分、すなわち原水BODの70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上を分解し、菌体へと安定して変換しておく必要がある。そのため、図2に示す如く、第一生物処理槽1を、担体1Aを充填した流動床式とすることが望ましい。しかし、第一生物処理槽1に添加する担体の充填率が高い場合、分散菌は生成せず、細菌は担体に付着するか、糸状性細菌が増殖するので、第一生物処理槽2に添加する担体の充填率は20%以下、望ましくは10%以下、例えば3〜10%とすることが好ましく、これにより、濃度変動に影響されず、捕食しやすい分散菌の生成が可能となる。
【0047】
なお、この第一生物処理槽1に充填する担体1Aとしては特に制限はなく、前述の第二生物処理槽2に充填する担体2Aと同様のものを用いることができる。
【0048】
図2に示す態様は、第一生物処理槽1に担体1Aを充填した点が図1に示す態様と異なり、その他の構成は図1に示す態様と同様である。
【0049】
本発明では、図3に示すように、沈殿槽5で固液分離された汚泥を更に生物処理して減量化する第四生物処理槽4を設け、汚泥の減量化を促進しても良い。図4の態様では、分離汚泥の一部が第四生物処理槽4に導入されて処理された後、余剰汚泥として系外へ排出され、残部は返送汚泥として第三生物処理槽3に返送される。
【0050】
図3に示す態様は、余剰汚泥を生物処理する第四生物処理槽4を設けた点が図1に示す態様と異なり、その他の構成は図1に示す態様と同様である。
【0051】
また、前述の如く、第一生物処理槽1では、原水中の有機成分の大部分、すなわち原水BODの70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上を分解し、菌体へと変換しておく必要があるが、後段の生物処理槽でも適度な有機物負荷が必要となるため、図4に示すように、原水の一部をバイパスして、第三生物処理槽3に直接導入し、第三生物処理槽3での溶解性BODによる汚泥負荷が0.025kg−BOD/kg−MLSS/d以上となるように運転することが望ましい。
【0052】
図4に示す態様は、原水の一部を第三生物処理槽3に直接導入する配管を設けた点が図1に示す態様と異なり、その他の構成は図1に示す態様と同様である。
【0053】
本発明においては、微小動物による捕食を促進させるために、第二〜第四生物処理槽2〜4のいずれか、特に、第二生物処理槽2においてはpHを7以下、例えばpH5.5〜6.5の条件にすることが好ましい。
【0054】
また、運転条件を微小動物の増殖に適したものに設定しても、原水中に微小動物の増殖に必須な成分が含まれていなければ、微小動物は増殖せず、汚泥減量効果も向上しない。そこで、第二〜第四生物処理槽2〜4、特に、第二生物処理槽2に栄養剤を添加して、微小動物を安定して維持させ、これにより汚泥減量の効果を安定させるようにしても良い。また、第三生物処理槽3に栄養剤を添加することで、減量効果を促進しても良い。この場合、栄養剤としてはリン脂質、遊離脂肪酸、リゾリン脂質、ステロールやこれらを含むレシチン、その他、液糖、米糠、ビールの絞り粕、植物性油の絞り粕、大豆抽出物、甜菜粕、貝殻粉、卵殻、野菜エキス、魚肉エキス、各種アミノ酸、各種ビタミン等の後生動物の増殖促進に効果のある栄養剤を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
これらの栄養剤を添加する場合、その添加量は原水中の有機物量の0.5〜10%程度とすることが好ましい。
【0055】
図1〜4の態様は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示の方法に限定されるものではない。
【0056】
例えば、第三生物処理水の固液分離手段としては、沈殿槽の他、膜分離装置や浮上分離槽等を用いても良い。また、第三生物処理槽を生物処理槽と固液分離手段とを兼ねる膜浸漬型生物処理槽として、膜分離式好気処理を行ってもよい。
【0057】
また、図3に示すように第四生物処理槽4を設ける代りに、分離汚泥を嫌気処理、物理処理、化学処理のいずれかまたはこれらの組み合わせで処理して、微小動物を死滅させた後、第一生物処理槽1、第二生物処理槽2、第三生物処理槽3のいずれか一槽以上に返送するようにしても良い。
また、図3の態様において、更に第四生物処理槽4の処理水を固液分離する手段を設け、汚泥返送を行う好気処理法を行ったり、第四生物処理槽4を、担体を添加した流動床式または膜分離式好気処理法とすることで、第四生物処理槽4での汚泥滞留時間を長くするようにしても良い。
【実施例】
【0058】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0059】
実施例1
図2に示す如く、容量が2.5Lの第一生物処理槽(汚泥返送なし)1と、容量が2.5Lの第二生物処理槽(汚泥返送なし)2と、容量が4.2Lの第三生物処理槽(汚泥返送有り)3と、容量が4Lの沈殿槽5とを連結させた実験装置を用いて、本発明による有機性排水(BOD800mg/L)の処理を行った。
各生物処理槽の処理条件は次の通りとした。
【0060】
<第1生物処理槽>
DO:0.01mg/L
担体充填率:5%
BOD容積負荷:5.5kg−BOD/m/d
HRT:3.5h
pH:7
<第2生物処理槽>
DO:2〜3mg/L
担体充填率:40%
HRT:2h
pH:6.5
<第3生物処理槽>
DO:2〜3mg/L
HRT:7.3h
pH:7
汚泥滞留時間:25d
【0061】
なお、第一生物処理槽1および第二生物処理槽2の担体1A,2Bとしてはスポンジ担体を用いた。
また、装置全体でのBOD容積負荷は1.5kg−BOD/m/dであり、装置全体でのHRTは12.8hであった。
その結果、汚泥転換率は0.25kg−MLSS/kg−BODであり、処理水BODは検出限界以下であった。
【0062】
比較例1
図5に示す如く、容量が2.5Lの第一生物処理槽(汚泥返送なし)1と、容量が6.7Lの第二生物処理槽(汚泥返送ない)2と、容量が4Lの沈殿槽5とを連結させた実験装置を用いて、有機性排水(BOD800mg/L)の処理を行った。
各生物処理槽の処理条件は次の通りとした。
【0063】
<第1生物処理槽>
DO:0.01mg/L
担体充填率:5%
BOD容積負荷:5.5kg−BOD/m/d
HRT:3.5h
pH:7
<第2生物処理槽>
DO:2〜3mg/L
HRT:9.3h
pH:7
【0064】
なお、第一生物処理槽1の担体1Aとしてはスポンジ担体を用いた。
また、装置全体でのBOD容積負荷は1.5kg−BOD/m/dであり、装置全体でのHRTは12.8hであった。
その結果、汚泥転換率は0.25〜0.4kg−MLSS/kg−BODで変動し、汚泥発生量は安定しなかった。また、処理水BODも変動し、汚泥発生量が減っている期間は処理水質が悪化していた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の有機性排水の生物処理方法は、生活排水、下水、食品工場やパルプ工場をはじめとした広い濃度範囲の有機性排水の処理に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図3】本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図4】本発明の有機性排水の生物処理方法および装置の他の実施の形態を示す系統図である。
【図5】比較例1で用いた生物処理装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0067】
1 第一生物処理槽
2 第二生物処理槽
3 第三生物処理槽
4 第四生物処理槽
5 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三段以上の多段に設けられた生物処理槽の第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽および第三生物処理槽に順次通水して生物処理する有機性排水の生物処理方法であって、
該第二生物処理槽を流動床式生物処理槽、該第三生物処理槽を浮遊式生物処理槽とし、
前記第一生物処理水を該第二生物処理槽に一過式で通水して第二生物処理水を得、
該第二生物処理水を該第三生物処理槽に通水して得た第三生物処理水を汚泥と処理水とに固液分離し、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外に引き抜き、分離汚泥の残部の少なくとも一部を返送汚泥として該第三生物処理槽に返送することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記第一生物処理槽が担体充填率10%以下の流動床式生物処理槽であり、前記第二生物処理槽が担体充填率10%以上の流動床式生物処理槽であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記第一生物処理槽の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記分離汚泥の少なくとも一部を、第四生物処理槽で生物処理して減量化することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽の槽内pHを7以下とすることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽に栄養剤を添加することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記第三生物処理槽に前記有機性排水の一部を直接導入することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項8】
三段以上の多段に設けられた生物処理槽を備える有機性排水の生物処理装置において、
第一生物処理槽は、有機性排水を細菌により生物処理する槽であり、
第二生物処理槽は、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水が一過式で通水される流動床式生物処理槽であり、
第三生物処理槽は、第二生物処理槽からの第二生物処理水が導入される浮遊式生物処理槽であり、
第三生物処理槽からの第三生物処理水を汚泥と処理水とに固液分離する固液分離手段と、分離汚泥の一部を余剰汚泥として系外へ引き抜く手段と、分離汚泥の残部の少なくとも一部を返送汚泥として該第三生物処理槽に返送する手段とを備えることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項9】
請求項8において、前記第一生物処理槽が担体充填率10%以下の流動床式生物処理槽であり、前記第二生物処理槽が担体充填率10%以上の流動床式生物処理槽であることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項10】
請求項8または9において、前記第一生物処理槽は溶存酸素濃度0.5mg/L以下に制御されることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項において、前記分離汚泥を生物処理して減量化する第四生物処理槽を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか1項において、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽の槽内pHが7以下とされることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか1項において、第二段目以降の生物処理槽の少なくとも一槽に栄養剤が添加されることを特徴とする有機性排水の生物処理装置。
【請求項14】
請求項8ないし13のいずれか1項において、前記第三生物処理槽に前記有機性排水の一部を直接導入する手段を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202115(P2009−202115A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48089(P2008−48089)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】