Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料
説明

有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料

【課題】有益な有機物質を制御放出するための、特に有機物質を高用量で送達する必要がある状況で使用するための改善された剤型を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含み、前記有益な有機物質が、複合材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する、複合材料。このような材料を調製する方法、それらを含む薬学的組成物、治療の方法におけるそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性半導体を含む複合材料に関する。より具体的には、本発明は、高レベルの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料に関する。本発明は、このような材料を調製する方法、それらを含む薬学的組成物、治療の方法におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
製薬産業では、有益な物質を長期間にわたって制御放出する剤形の開発に大きな関心が寄せられている。活性物質をこのように放出することは、生物学的利用度を向上させるのに役立ち、反復投薬の必要なしに、長時間にわたって、物質の適切な濃度が与えられるように確保することができる。次いで、これは、他の投与形態に関して問題となることが多い、患者の服用指示の不遵守の影響を最小限に抑えるのにも役立つことができる。
【0003】
一般的にいえば、制御放出製剤は、ポリマー材料系をベースとしている。一般に、活性成分は、マトリックス相を合成中に封入することにより、ポリマー及びゾル−ゲル系の中に取り込まれる。生物分解性ポリマー用のマイクロカプセル化技術には、フィルム鋳造、成形、噴霧乾燥及び押し出し、融解分散、界面蒸着、乳化及び溶媒蒸発による相分離、エアサスペンションコーティング、パンコーティング並びにインシチュ重合などの方法が含まれる。融解分散技術(melt dispersion technique)は、例えば、米国特許第5807574号及び米国特許第5665428号に記載されている。
【0004】
これらより一般的ではないが、活性成分は、多孔性マトリックスの形成が完了した後に充填される。このような担体系は、一般に、ナノメートルサイズの孔ではなく、ミクロンサイズの孔を有する。米国特許第6,238,705号は、例えば、単に活性成分の溶液中に浸すことによる、マクロ多孔性ポリマー組成物の充填を記載しており、米国特許第5,665,114号及び6,521,284号は、ポリテトラフルオロエテン(PTFE)製のインプラント可能な人工器官の孔に充填するための、圧力の使用を開示している。
【0005】
活性成分の高充填を達成するという問題は、現在公知の多くのポリマーベースの送達系の有効性を制限する。この問題を克服するために様々なアプローチが記載されている。例えば、米国特許第5,718,922号は、油相中に懸濁された親水性薬物とともに、ポリマー/油分散物中に薬物細粒を形成することを開示しており、前記油は、高い薬物充填を達成できるように、細粒形成の間に分配を抑制する。米国特許第6,379,381号では、ステントなどの多孔性金属人工器官中に薬物を充填するための技術が記載されている。ここでは、まず、高毛管浸透の溶媒である第一の液体に薬物を添加し、次いで、低毛管浸透の非溶媒である第二の液体中での機械的撹拌によって、全ての表面堆積物を取り除き、最後に、薬物に対する溶媒であるが、同じく低毛管浸透性の溶媒である第三の液体中で人工器官をリンスする。
【0006】
半導体であるケイ素の生物学的用途における使用は、文献において公知であり、例えば、WO 97/06101号に記載されている。ここには、ある種の形態の多孔性ケイ素、特にメソ多孔性ケイ素が再吸収性であり、擬似体液溶液中に浸漬したときに長時間にわたって溶解することが開示されている。
【0007】
現在まで、多孔性ケイ素の含浸に関する研究の多くは、光電子工学装置及び構造の分野であった。例えば、発光ダイオードの効率を向上させるために、多孔性シリコンに伝導性材料が含浸されている。多孔性シリコン中に取り込まれた材料には、ニッケル、銅、鉄、銀及び金などの金属;ゲルマニウム、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛及び酸化スズなどの半導体;並びにポリピロール、ポリアニリン、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマーが含まれる。
【0008】
「Porous Silicon EMIS Data Review Series, No 18, p 66 to 76 (1997)」で、Herinoによって記載されているように、高濃度の含浸された物質を比較的大容量の多孔性シリコン中に取り込むことは、狭い孔が封鎖されるために困難であることが明らかとなっている。孔の開口部方向に材料が堆積することによって、高い割合の材料が孔系を占有するのが妨げられる傾向にある。
【0009】
Zangooie等は「Thin Solid Films 313/4,(1998)」で、酸化された薄い多孔性シリコン層中へのタンパク質の吸着を報告している。多孔性シリコン中へのタンパク質の取り込みを測定するために、この取り込み過程が多孔性シリコンの屈折率の変化をもたらす分光偏光解析法が使用されている。55%の多孔性シリコンに対して、10.7%の吸着されたアルブミンの容量パーセントが報告された。その後にタンパク質が放出されることについては、実証されなかった。
【0010】
脱離−イオン化技術を用いた、150から12,000ダルトンのサイズにわたる小薬物分子、ペプチド、糖脂質及び炭水化物を含む化合物の溶液の、メソ多孔性シリコン試料表面上への堆積に関する研究が、「Nature (Vol 243−246(1999))」で、Weiによって報告されている。使用された濃度は極めて低く(0.001から10μM)、検体の浸透の深さは記録されなかった。
【0011】
別の電子材料であるゲルマニウムによる高レベルの細孔充填が、Halimaoui等によって「J. Appl. Phys. 78, 3428−30 (1995)」に記載されている。しかし、これは、多くの薬学的用途には適していないと思われる技術である超高真空連続蒸着を使用している。
【0012】
多孔性シリコンは、その特性のため、有益な物質を対象に送達するためのビヒクルとして有用であることが示唆されている。例えば、再吸収性の多孔性シリコンが有益な物質に会合される場合、次いで、体内への多孔性シリコンの再吸収が有益な物質の放出をもたらすことができ、再吸収性シリコンの腐食又は溶解の結果、多孔性シリコンの孔中に配置された有益な物質を制御放出する可能性を与える。文献には、多孔性シリコンが、有益な物質を含浸されたインプラントの形態(WO 99/53898に記載されている。)であり、錠剤又は坐剤の形態(例えば、WO 01/29529を参照)であり、あるいは、多孔性シリコンが皮膚を通して注射するための(WO 01/76564)、又は皮膚若しくは経肺製剤として送達するための(それぞれ、WO 02/15863及びWO 03/011251に記載されている。)有益な物質が会合された粒状産物中に調合されている、提案された用途が含まれる。
【0013】
有益な物質の送達ビヒクルとして多孔性シリコンの微粒子を使用できる可能性が記されてきたが、特に、有益な物質が有機化合物である場合には、有益な物質の高い充填レベルを達成することはなお困難であり、このような組成物はこれまでに例証されていない。
【0014】
上記WO03/011251は、活性因子の溶液中で多孔性シリコンのインキュベーションを行い(活性因子の溶液が毛管作用によって多孔性シリコンの細孔中に浸透するように)、次いで、溶媒を除去するプロセスによって、所望の充填レベルが達成され得ることを示唆する。しかしながら、原理上、この方法は、有益な物質が高用量で送達される必要がある状況には、一般にあまり適していない。
【0015】
WO 99/53898号は、シリコンインプラントを用いて有益な物質を送達できることが望ましいと論述しているが、インプラント用の薬物積載量の物理的サイズに対する制約により、現実的には、それらの使用は、高レベルで必要とされない微量ミネラル又はその他の物質を送達するのに限定されると述べている。多孔性シリコンの試料の表面上に金属の塩を融解させる方法によって、多孔性シリコンインプラントに様々な金属又は金属の化合物を充填することが明記されているが、このような方法は、融解が起きるときに、熱分解が発生することが予想されるので、巨大な有機薬物分子の場合には適用できないと示唆されている。したがって、高用量の有益な有機化合物を送達するために、WO 99/53898の方法を模倣する動機付けは存在しない。
【0016】
5−フルオロウラシルなどの細胞毒性因子とのシリコン微粒子の組み合わせがWO 02/067998に記載されているが、高い充填レベルについての開示は存在しない。さらに、細胞毒性因子を微粒子と会合させるために想定される数多くの方法が論述されているが、加熱を伴う方法が適切であるという示唆は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5807574号明細書
【特許文献2】米国特許第5665428号明細書
【特許文献3】米国特許第6238705号明細書
【特許文献4】米国特許第5665114号明細書
【特許文献5】米国特許第6521284号明細書
【特許文献6】米国特許第5718922号明細書
【特許文献7】米国特許第6379381号明細書
【特許文献8】国際公開第97/06101号
【特許文献9】国際公開第99/53898号
【特許文献10】国際公開第01/29529号
【特許文献11】国際公開第01/76564号
【特許文献12】国際公開第02/15863号
【特許文献13】国際公開第03/011251号
【特許文献14】国際公開第02/067998号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Herino著、「Porous Silicon EMIS Data Review Series」,No 18, p 66 to 76 (1997)
【非特許文献2】Zangooie著、「Thin Solid Films 313/4」,(1998)
【非特許文献3】Wei著、「Nature」(Vol 243−246(1999))
【非特許文献4】Halimaoui著、「J. Appl. Phys.」78, 3428−30 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、有益な有機物質を制御放出するための、特に有機物質を高用量で送達する必要がある状況で使用するための改善された剤形を開発する必要性は、なお継続して存在している。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、有機物質を著しく分解させずに、実質的に多孔性材料全体にわたって、高レベルの有益な有機物質を多孔性シリコンに充填することができ、これにより、高用量の有益な有機物質を、長期間にわたって、制御された様式で送達することが可能であることを見出した。従って、実質的に均一に分配された高充填の有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料は、制御放出用の薬学的インプラントとして適切に調合することができ、又はより具体的には、予想外に有利に、微粒子の形態で調製し、細い針を用いて標的部位中に注射することが可能である。
【0021】
従って、第一の側面によれば、本発明は、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含み、前記有益な有機物質が、材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する、複合材料を提供する。
【0022】
さらなる側面によれば、治療におけるこのような材料の使用、及び有益な有機物質を患者に送達するための、このような材料を含む薬学的組成物も提供される。
【0023】
さらなる側面において、本発明は、有益な物質を必要としている患者に上記組成物を送達することを含む、前記患者に有益な物質を送達する方法、及びこのような方法における多孔性半導体の使用を提供する。
【0024】
本発明は、
i)有益な有機物質を多孔性半導体と接触させる工程と;
ii)前記有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させ、前記有益な有機物質の融点以上の温度で前記含浸が行われる工程と;
を含む、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含み、前記有益な有機物質が、複合材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する複合材料を調製する方法も提供する。
【0025】
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程と;
ii)パート(i)の溶液を多孔性半導体と接触させる工程と;
iii)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させ、該含浸が40℃から200℃の範囲の温度で行われる工程と;
を含む、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含み、前記有益な有機物質が、複合材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する複合材料を調製する方法も提供される。
【0026】
本発明を使用することによって、実質的に多孔質材料全体にわたって、高い均一性で分配された高有機物質充填の複合多孔性半導体材料が提供される。多孔性半導体中に有益な物質を導入する方法によって、高い割合の有益な物質が細孔容積を占有することが可能となり、このため、得られた材料は低い間隙率(高い細孔充填のため)を有する。
【0027】
薬学的組成物を調製するために、有益な有機物質が高レベルの細孔充填で高充填されている複合材料を使用することは、必要とされる原材料がより少ないことを意味するので、商業的な意味において有利であり、有益な物質の所望の用量を送達するために、より少ない回数で組成物を投与することが可能であるのみならず、細孔充填レベルが高いということは、有益な物質がほとんど浪費されずに高い充填を達成できることを意味する。
【0028】
特に有利なことに、本発明の複合多孔性半導体材料は、低い水溶性の有機化合物又は疎水性の有機化合物を大量に送達するために使用することができる。投与後に水性の体液中に薬物が溶解する速度は、薬物の生物学的利用性に影響を与えるので、低い水溶解度を有する化合物は、投与後、生物学的利用性が乏しい傾向にあり、治療的に有効な薬物レベルを迅速に達成することが困難になる。このことは、このような活性成分を含有する薬学的組成物の開発に著しい問題を提起する。しかしながら、本発明に従って、多孔性マトリックスフォーム中に有益な有機物質を提供することにより、水性媒体を投与の部位又は吸収の部位に接触させるために利用できる、有機物質の表面積が最大化され、これにより、その溶解速度が増大し、このため生物学的利用性が増大する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において使用される「有益な物質」という用語は、治療又は診断において使用され、それが投与される患者に対して総合的な有益な効果を有する任意の有機物質を表す。本用語には、患者に対する総合的な効果が有益であれば、幾分、患者にとって毒性があってもよい物質も含まれ、例えば、該物質は、トキシンとし、若しくは望ましくない細胞に対して毒性とし、又は望ましくない生理的プロセスを妨害することができるが、総合的にはなお「有益」と考えられる。
【0030】
「有機」とは、前記有益な物質が炭素原子の骨格を有する分子を含むことを意味する。
【0031】
「患者」という用語は、有益な物質が投与されるべきヒト又は動物を意味する。
【0032】
多孔性半導体は、適切に、ドープされ、又はドープされないことができる。本発明に従って使用するための適切な半導体には、炭化ケイ素、窒化ケイ素及びゲルマニウムが含まれるが、好ましくは、前記半導体はケイ素である。
【0033】
多孔性シリコンは、間隙率(間隙率は、容積に対する空洞含量の割合である。)の性質に応じて分類することができる。微孔性シリコンは2nm未満の平均孔サイズを有し、メソ多孔性シリコンは2から50nmの平均孔サイズを有し、マクロ多孔性シリコンは50nmを超える直径を有する孔を含有する。上記WO 97/06101に記載されているように、多孔性シリコンのある種の形態は、再吸収性であることが見出されている。「再吸収性」とは、長期間(例えば、最大8週間、一般的には2週未満)にわたって、擬似体液中において、正常な生理的温度(37℃±1℃)で溶解する材料であることを表す。擬似体液は、イオン濃度がヒト血漿中に見られるイオン濃度を反映するように、脱イオン化水中に試薬等級塩の溶液を含むことができ、あるいは、擬似体液は、擬似滑液、汗又はその他の体液を含むことができる。
【0034】
多孔性シリコンは、部分的に酸化された多孔性シリコン、すなわち、多孔性シリコンの一部が完全に非酸化なまま残存している様式で酸化された多孔性シリコンを含み得る。
【0035】
本発明に従う使用の場合、多孔性シリコンは、微孔性、メソ多孔性又はマクロ多孔性であり得る。本発明に従って使用される多孔性シリコンの間隙率の性質は、所期の送達様式並びに充填される有益な有機物質のサイズ及び特性に依存することが自明であるが、とりわけ、好ましくは、多孔性シリコンはメソ多孔性である。
【0036】
好ましくは、本発明に従って使用するための多孔性シリコンは、充填の前に、1%から99%、好ましくは20%から90%、特に40%から90%の間隙率を有する。
【0037】
多孔性シリコンは、好ましくは、再吸収性の多孔性シリコンを含む。
【0038】
あるシリコン骨格サイズの分布について、多孔性シリコンの間隙率が高いほど、多孔性シリコンはより素早く再吸収される。従って、孔の大きさ、孔密度及び多孔性シリコン中の骨格に対する孔の総容積に応じて、より速く又はより遅く再吸収され得る組成物を必要に応じて作製することが可能である。
【0039】
シリコンは、純粋なシリコンとすることができ、又は、例えばホウ素でドープすることができる。シリコンウェハは、p−又はp+の何れかによるドーピングのレベルに応じて分類され、p−ウェハは比較的低レベルのホウ素がドーピングされ、p+ウェハはより高いレベル(0.005オームcm−1の桁の抵抗率)のホウ素がドーピングされている。本発明では、使用されるシリコンは、好ましくはp+シリコンから得られる。
【0040】
本発明に従って使用するための多孔性半導体は、適切には、100nmから1mmの厚さ、好ましくは1ミクロンから750ミクロンの厚さの多孔性シリコンの単一サンプル(多孔性シリコンの任意の部分が、サンプルの残りの部分と実質的に一体である。)を含み得る。
【0041】
あるいは、多孔性半導体は、少なくとも一つの多孔性半導体粒子を含む、粒状形態とすることもできる。好ましくは、本発明の組成物は、100nmから10ミクロン、好ましくは500nmから2ミクロンの平均粒子サイズを有する複数の多孔性半導体粒子を含む。前記複数の多孔性半導体粒子は、好ましくは、同じ形状を有し、より好ましくは、互いに同じ容積を有する複数の粒子を含む。粒子は、それぞれ、好ましくは実質的に対称であり、実質的に楕円、球形、又は極微針の形態とすることができる。
【0042】
本発明において使用するための多孔性シリコン粒子は、数多くの公知の技術によって調製され得る。例えばHFと電位を使用する陽極酸化によって、単結晶ウェハシリコンを多孔化することができる。あるいは、多結晶供給原料由来の微粒子は、まず、2、3ミリメートルからミクロンサイズの均一な原料へと粒子サイズにジェットミルを施した後、確立された方法による染色エッチングを行う二段階のプロセスによって製造することができる。
【0043】
多孔性半導体は有益な物質を充填する前若しくは充填した後に、インプラント可能なインプラントへ、又は粒状形態へと形成し得ることが理解されるであろう。
【0044】
本発明に従って使用するための有益な有機物質は、患者に投与されたときに有益な効果を有する、薬学的に又は診断に有用な任意の有機化合物であり得る。典型的には、前記有益な有機物質は、少なくとも5個の炭素原子、好ましくは少なくとも10個の炭素原子を含む炭素原子骨格を有する有機化合物であり、一又は複数の薬学的化合物又は抗体、ペプチド及び遺伝的構築物などの生物学的材料から適切に選択され得る。具体的な例には、抗うつ剤、抗炎症剤、麻酔薬、駆虫薬、抗酸化剤、並びにアルキル化剤、細胞毒性抗体、代謝拮抗物質、アルカロイド及びホルモン調節物質などの細胞毒性化合物を含む抗癌化合物が含まれる。
【0045】
上述したように、本発明者らは、乏しい溶解度と低い生物学的利用性を有する高用量の化合物を送達するために、本発明の組成物を有利に使用し得ることを見出した。
【0046】
このように、一つの好ましい実施形態によれば、前記有機物質は、水への溶解度が低い(すなわち、正常な生理的温度とpH範囲1から7で、水性溶媒中での溶解度が10mg/mL以下である。)薬学的化合物である。
【0047】
このカテゴリーに属する例を有する薬物のクラスには、血圧降下剤、抗不安薬、抗がん剤、抗凝固剤、抗痙攣薬、血糖降下剤、うっ血除去薬、抗ヒスタミン剤、鎮咳薬(antiussives)、抗新生物薬、ベータ遮断剤、抗炎症薬、抗精神病薬、向知性薬、コレステロール減少剤、抗動脈硬化剤、抗肥満薬、自己免疫疾患薬、性的不能治療薬、抗菌剤及び抗真菌剤、睡眠薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬、抗生物質、抗うつ病、抗ウイルス薬、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤及びコレステロールエステル転送タンパク質阻害剤が含まれる。
【0048】
有益な有機物質の高レベルな充填は、高温、特に有益な有機物質の融点以上の温度での含浸を行うことによって達成することができる。従って、熱分解が生じる可能性を最小限に抑えるために、前記有益な物質は低い融点を有するのが好ましいことが理解されるであろう。
【0049】
従って、別の実施形態では、前記有益な有機物質は、適切には、300℃未満、より好ましくは200℃未満、さらに好ましくは100℃の融点を有する薬学的化合物である。例には、ピロカルピン(融点34℃)、エフェドリン(融点38から43℃)、シクロホスファミド(融点49から53℃)、プロカイン(融点61℃)、クロラムブシル(融点64から69℃)、リグノカイン(融点66から69℃)、イブプロフェン(融点75から78℃)、プラムバギン(融点78から79℃)、フルラゼパム(融点77から82℃)、フェンタニルヒスタミン(融点83から84℃)、ブサルファン(融点114℃)、ラウリン酸(融点44℃)、アミトリプチリンHCl(融点198から200℃)、リファンピシン(融点183から188℃)、酢酸メドキシプロゲステロン(融点271℃)、パクリタキセル(融点216から217℃)、レバシモール(levasimole)(融点227から233℃)及びデキサメタゾン(融点250から253℃)が含まれる。
【0050】
本発明に従って使用するのに適した特に有益な有機物質には、クロラムブシル、アミトリプチリン、イブプロフェン、プロカイン、レバミゾール、プラムバギン、シクロホスファミド、ブサルファン、デキサメタゾン、ラウリン酸、リファンピシン、酢酸メドロキシプロゲステロン及びパクリタキセルが含まれる。特に好ましい実施形態では、有益な有機物質がクロラムブシル又はパクリタキセルである。
【0051】
もちろん、多孔性半導体は、その構造中に取り込まれた2以上の有益な有機物質を有し得ることが理解されるであろう。別段の記載がなければ、従って、「有益な有機物質」という表記は、そのように理解すべきである。
【0052】
本発明の複合材料では、多孔性半導体は、組成物の重量を基準として、少なくとも15重量%の有益な有機物質を含浸される。好ましくは、前記有益な有機物質は、組成物の重量を基準として、15重量%から85重量%、特に20重量%から50重量%、特に30重量%から40重量%の量で存在する。
【0053】
本発明の材料の重量に対して高充填レベルであるということは、有益な物質によって占められている多孔性半導体中の細孔の容積に対して高パーセントであることに等しいことが理解されるであろう。本発明の材料に対する、有益な物質によって占められる最大充填能力のパーセント(すなわち、有益な物質によって占められる多孔性半導体中の細孔の総容積の%)は、典型的には、30%から100%、特に50%から90%の範囲である。ある複合材料について、この値は、充填中に取り込まれた有益な物質の容積(取り込まれた物質の質量をその密度で割ったものに等しい)を、充填前の多孔性半導体の間隙容積で割り、100を掛けることによって求めることができる。
【0054】
本発明の複合材料では、前記有益な物質は、半導体担体材料の細孔全体に実質的に分布されており、これは、多孔性半導体が、15重量%から85重量%、より好ましくは20重量%から50重量%、特に30重量%から45重量%(材料の重量を基準とする。)の量で、材料の表面から、少なくとも50ミクロン、好ましくは少なくとも100ミクロン、特に少なくとも150ミクロンの孔深度まで、有益な有機物質が含浸されていることを意味する。
【0055】
総充填の定量は、薬学的組成物の重量測定、EDX(X線によるエネルギー分散分析)、フーリエ変換赤外線(FTIR)若しくはラマン分光法、又は溶液中の溶出された有益な物質のUV分光光度法、滴定分析、HPLC又は質量分析を含む、数多くの公知の分析法によって、便利に達成することができる。充填の均一さの定量は、横断的EDX、オージェデプスプロファイリング、ミクロラマン及びミクロFTIRなど、空間解像可能な組成的技術によって達成することができる。
【0056】
材料の表面という表記は、多孔性半導体の試料をその周囲から隔てる表面を表す。
【0057】
本発明の複合材料では、著しい分解なしに、有益な物質が取り込まれ、半導体担体材料から放出される。
【0058】
本発明の薬学的組成物は、一又は複数の薬学的に許容される賦形剤と混合されて、慣用的な様式で使用するために都合よく与えることができる。本組成物は、任意の適切な様式で投与するために、典型的には、インプラントの形態で、適切には、皮下、筋肉内、腹腔内若しくは表皮導入のために、又は臓器(肝臓、肺又は腎臓など)中への埋め込みのために調合することができる。あるいは、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、血管内、皮下、筋肉内又は注入)の形態で非経口投与するために、又は経口投与するために調合することができる。
【0059】
複合材料の重量を基準として少なくとも15重量%の量で存在する、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体材料は、
i)有益な有機物質を多孔性半導体と接触させる工程と;
ii)前記有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させ、前記有益な有機物質の融点以上の温度で前記含浸が行われる工程と;
を含む、方法によって調製することができる。
【0060】
好ましくは、前記含浸は、40℃から200℃、特に60℃から130℃の範囲の温度で行われる。
【0061】
これは、
i)有益な有機物質の融点以上の温度に、多孔性半導体を加熱する工程と;
ii)前記加熱された多孔性半導体を前記有益な有機物質に接触させることにより、前記有益な有機物質を融解された状態にする工程と;
iii)前記融解された有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程と;
を含む方法によって達成することができる。
【0062】
あるいは、前記含浸は、
i)有益な有機物質をその融点以上の温度に加熱することにより、前記有益な有機物質を融解された状態にする工程と;
ii)前記融解された有益な有機物質を前記多孔性半導体と接触させる工程と;
iii)前記融解された有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程と;
によって実施することができる。
【0063】
さらなる実施形態では、前記多孔性半導体と前記有益な有機物質の両方が、独立に、前記有益な有機物質の融点以上の温度に加熱され、次いで、含浸を生じさせるために互い接触させることができる。
【0064】
好ましくは、前記多孔性半導体は、有益な有機物質を導入する前に予め加熱される。これは、孔内の物理吸着された水分を除去するのに役立ち、マトリックスが有益な物質をさらに効果的に取り込めるように、マトリックスを拡大させる効果も有する。都合のよいことには、この事前加熱は、100℃から250℃の範囲の温度まで、5から15分にわたって、多孔性半導体を加熱することによって達成することができる。
【0065】
融解された有益な有機物質による多孔性半導体の含浸を促進するために、含浸が行われる温度は、有益な有機物質の融点以上の任意の温度とすることができ、有益な有機物質の融点は、都合よく、前記有益な有機物質の融点を5℃から15℃上回る温度とすることができる。
【0066】
孔から水分を除去するために多孔性半導体が予め加熱される場合には、多孔性半導体を有益な有機物質に接触させる前に、予め加熱された多孔性半導体を所望の温度まで冷却する必要があり得ることが理解されるであろう。
【0067】
有益な有機物質と多孔性半導体が高温で互いに接触された状態に維持される時間は、含浸が生じるのに十分な時間とすべきである。これは、都合よく、1分から2時間、典型的には5分から1時間の期間である。
【0068】
有益な有機物質による含浸の後に、前記処理された多孔性半導体は、表面上の全ての過剰な有益な物質を除去するために、関与する有益な物質に対して適切な溶媒で都合よく洗浄され得る。溶媒の選択は、関与する有益な有機物質に依存し、有益な物質に適する本分野で公知の任意の溶媒又はそれらの混合物を使用できることが理解されるであろう。溶媒は、都合よく、有機溶媒又は水性有機溶媒であり、好ましくはアルコール、特にエタノール又エタノールと水の混合物である。
【0069】
融解工程(これは、熱分解を生じると予想される。)を伴う充填技術が有機化合物に対して奏功することは予想外であるのみならず、融解された(従って、さらに粘度が高い)有益な物質は、多孔性半導体中の孔を封鎖する傾向があり、細孔容積の大部分が占有されるのを妨げ、これにより、達成可能な充填レベルを制約することも予想されるであろう。従って、この方法を用いて、有機物質の高い充填レベルが達成できるという発見は、驚くべきものである。
【0070】
クロラムブシルは、特に熱分解を受けやすいことが知られており、水性環境中での熱分解に対する見かけの活性化エネルギー(Ea)が24.4kcal/molであることが報告されている(J. Pharm Sci, 69,1091−1094(1980))。これは、殆どの薬物に対する範囲(10から30kcal/mol)の高い側に位置する。従って、クロラムブシルの場合に、有益な物質の融解を伴う方法が著しい分解を生じずに高い充填レベルを与えることは、特に驚くべきことである。
【0071】
上記方法に従って、加熱された多孔性半導体上で有益な物質を直接融解することは、含まれるプロセスの工程数を減少させ、望ましくない莢雑物を導入するリスクを最小限に抑える。しかしながら、これらの利点に関わらず、特にごく少量が関与する場合には、溶液が取り扱いやすい傾向があり、処理のし易さの面で利点があるため、含浸工程において有益な物質を多孔性半導体に接触させる前に、有益な物質を適切な溶媒中に溶解することは有益であり得ることを本発明者らは見出した。この方法は、実質的な分解が生じることなく、それらの融点まで加熱できない有益な有機物質、及び融解された材料の粘度が高すぎて、多孔性構造中に効率的に取り込むことができない有益な有機物質にも適用することが可能である。
【0072】
従って、さらなる側面によれば、含浸は、
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程と;
ii)パート(i)の溶液を前記多孔性半導体と接触させる工程と;
iii)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させ、該含浸が40℃から200℃の範囲の温度で行われる工程と;
を含む方法によって行われる。
【0073】
好ましくは、前記含浸は、少なくとも60℃、特に60℃から130℃の範囲の温度で行われる。
【0074】
特定の実施形態において、有益な有機物質がその中に溶解される溶媒の沸点以上の温度で、含浸が行われる。例えば、エタノールが溶媒である場合には、約90℃の温度が適している。
【0075】
別の好ましい実施形態では、選択される温度は、有益な有機物質の融点以上とすべきである(但し、その温度で、分解が著しい程度で起こらないものとする。)。
【0076】
選択される温度は、有益な有機物質がその中に溶解される溶媒の沸点以上であるが、同時に、有益な有機物質の融点以上であることが特に好ましい(但し、その温度で、分解が著しい程度で起こらないものとする。)。
【0077】
この側面において、含浸は、
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程と;
ii)含浸が行われるべき温度まで、前記多孔性半導体を加熱する工程と;
iii)パート(i)の溶液を前記加熱された多孔性半導体と接触させる工程と;
iv)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程と;
を含む方法によって実施することができる。
【0078】
あるいは、含浸は、
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程と;
ii)含浸が行われるべき温度まで、パート(i)の溶液を加熱する工程と;
iii)パート(ii)の前記加熱された溶液を前記多孔性半導体と接触させる工程と;
iv)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程と;
を含む方法によって行うことができる。
【0079】
さらなる実施形態では、前記多孔性半導体と前記有益な有機物質の溶液が何れも、含浸が行われるべき温度まで独立に加熱され、次いで、含浸を生じさせるために互い接触されることができる。
【0080】
含浸を生じさせるために、有益な有機物質と多孔性半導体を接触させるための適切なプロセス条件は、上記されている。本分野において公知の有益な物質に適した任意の溶媒又はそれらの混合物を使用することができる。溶媒は、都合よく、有機溶媒又は水性有機溶媒であり、好ましくはアルコール、特にエタノール又エタノールと水の混合物である。
【0081】
有益な物質を導入する前に、及び/又は上記のように有益な物質の導入した後に、前記処理された多孔性半導体を洗浄する前に、水分を除去するために多孔性半導体を必要に応じて予め加熱する追加工程を好ましく実施し得る。
【0082】
前記有益な有機物質が室温で液体である(ビタミンE、ビタミンKなど)さらなる側面にでは、40℃から200℃の範囲の温度まで、液体の前記有益な有機物質を加熱し、加熱された液体を多孔性半導体に接触させ、有益な物質を多孔性半導体に含浸させる工程によって、含浸を実施することができる。
【0083】
あるいは、前記含浸は、多孔性半導体を40℃と200℃の間の温度まで加熱し、液体の前記有益な有機物質を前記加熱された多孔性半導体と接触させ、有益な物質を多孔性半導体に含浸させることによって実施することができる。
【0084】
さらなる実施形態において、多孔性半導体と液体の有益な有機物質はともに、40℃と200℃の温度に加熱され、次いで、液体の有益な物質を多孔性半導体と接触させ、有益な物質を多孔性半導体に含浸させる。
【0085】
好ましくは、液体の有益な物質による多孔性半導体の含浸は、60℃から130℃の範囲内の温度で実施される。有益な物質を導入する前に、及び/又は上記のように有益な物質を導入した後に、前記処理された多孔性半導体を洗浄する前に、水分を除去するために多孔性半導体を必要に応じて予め加熱する追加工程を好ましく実施し得る。
【0086】
添付の図面をともに参照しながら、以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、含浸されていない多孔性シリコンp+膜(pSi/p+)の横断面に沿った走査式電子顕微鏡を示している。膜の厚さ全体(約160μm)に関していえば、 上部は、膜の研磨された側から1ないし5μmに位置するEDXを表す。 上部中央は、膜の研磨された側から35ないし45μmを表す。 中央は、膜の研磨されていない側と研磨された側の間にある75ないし85μmを表す。 下部中央は、膜の研磨されていない側から35ないし45μmを表す。 下部は、膜の研磨されていない側から1ないし5μmに位置するEDXを表す。 膜の研磨された側は、多孔化(porosification)以前に、高度に研磨されたウェハの当初の面を表す。
【図2】図2は、含浸されていない多孔性シリコンp+膜に対するSEM−EDX分析を示している。各EDXスペクトルは、図1に規定されている膜の横断面に対して実施されたEDXの位置が標示されている。すなわち、A(上部)、B(上部中央)、C(中央)、D(下部中央)、E(下部)。
【図3】図3は、その表面上にピペットで滴下されたエタノールとともに、20分間、150℃で加熱され、蒸発に供された非含浸多孔性シリコンp+膜に対するSEM−EDX分析を示している。各EDXスペクトルは、図1の定義に従って、膜の横断面に対して実施されたEDXの位置が標示されている。
【図4】図4は、SEM−EDXによって測定された、クロラムブシルを含浸した多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図5】図5は、エタノール中の標準(A)、並びに取り込み及び多孔性シリコンからの抽出後(B)における、クロラムブシルのHPLC分析を示している。
【図6】図6は、SEM−EDXによって測定された、アミトリプチリンHClが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図7】図7は、SEM−EDXによって測定された、イブプロフェンが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図8】図8は、SEM−EDXによって測定された、プロカインが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図9】図9は、SEM−EDXによって測定された、レバミソールHClが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図10】図10は、SEM−EDXによって測定された、プラムバギンが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図11】図11は、SEM−EDXによって測定された、シクロホスファミドが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図12】図12は、SEM−EDXによって測定された、ブスルファンが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図13】図13は、SEM−EDXによって測定された、デキサメタゾンが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図14】図14は、SEM−EDXによって測定された、ラウリン酸が含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図15】図15は、SEM−EDXによって測定された、ビタミンEが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図16】図16は、SEM−EDXによって測定された、ビタミンKが含浸された多孔性シリコンp+膜の組成分析を示している。
【図17】図17は、クロラムブシルを含浸された多孔性シリコンp+膜のSEM−EDX分析を示している。各EDXスペクトルは、図1の定義に従って、膜の横断面に対して実施されたEDXの位置が標示されている。すなわち、A(上部)、B(上部中央)、C(中央)、D(下部中央)、E(下部)。
【図18】図18は、材料の表面から(A)80μm及び(B)145μmの深さで膜の横断面に対して行われた、パクリタキセルを含浸した多孔性シリコン/p+膜のSEM−EDX分析を示している。
【図19】図19は、2(A)、13(B)及び20(C)日に、パクリタキセル含浸多孔性シリコン膜のPBS溶出された試料から得られたUVプロファイルを示している。
【図20】図20は、30日の期間にわたって測定された、含浸された多孔性シリコン膜からのパクリタキセルの累積的放出に対して得られたグラフを示している。
【図21】図21は、多孔性シリコン膜中に含浸されたクロラムブシル(CBS)を腫瘍内に2回注射した後の腫瘍退行に対する効果を示している。対照群は、100μLのピーナッツ油のみの腫瘍内注射を受けた。
【図22】図22は、多孔性シリコンによって送達されるクロラムブシル(CBS)の腫瘍内注射後における、マウス内のヒト腫瘍の用量依存的退行を示している。対照群は、100μLのピーナッツ油のみの腫瘍内注射を受けた。
【図23】図23は、ピーナッツ油(A)及びパクリタキセルを充填された多孔性シリコン(B)を腫瘍内投与した後に、マウスで経時的に腫瘍横断面積に対して得られたグラフを示している。
【実施例】
【0088】
(a)含浸された多孔性シリコン膜の調製。
【0089】
以下の実施例1から15は、実質的に均一に分布された高充填の様々な有益な有機物質が含浸された多孔性シリコン膜の調製を示している。
【0090】
以下の一般的な方法に従って、多孔性膜を調製し、有益な物質を充填した。
【0091】
40重量%のHFとエタノールの50:50容量混合物中で、35mA/cmで90分間、陽極酸化することにより、直径3インチのp+ウェハ(5から15ミリオーム cm)をメソ多孔性にした。次いで、20秒間、電流密度を117mA/cmまで増加した。引き続き行われるエタノールリンスの間に、メソ多孔性フィルムは、その下に存在するバルクシリコンウェハから、重量479.6mg、厚さ162ミクロン及び間隙率63%の完全に無傷の膜として剥離する。次いで、重量測定及び有益な物質の取り込みのEDX研究のために、この膜を10から60mgの範囲の重量の破片とした。
【0092】
充填は、2つの類似の多孔性シリコン(p+)膜上で行った。
【0093】
(膜1)
重量=479.60mg
間隙率=62.94%
厚さ=161.73μm
陽極酸化重量の喪失=814.75mg
総空隙容量=814.75mg/{シリコンの密度}
=814.75mg/2.33gcm−3
=0.3497cm
(膜2)
重量=460.06mg
間隙率=64.07%
厚さ=160.07μm
陽極酸化重量の喪失=820.57mg
総空隙容量=820.57mg/{シリコンの密度}
=820.57mg/2.33gcm−3
=0.3522cm
【0094】
薬物によって占有され得る多孔性シリコン膜中で利用可能な細孔容積は、以下のように計算される。
最大充填能=(空隙容量、cm)×(純度のパーセント、%)×(薬物の密度、cm−3
SEM−EDXは、試料に対してJSM−6400F走査式顕微鏡を用いることによって実施した。検査を通じて、圧力10−6mbarで、5kVの一定した加速電圧を使用した。
【0095】
対照実験
その横断面図に沿って、非充填多孔性シリコン/p+膜に対して、SEM−EDXを実施した(図1)。Siに対して収集された強い信号を除き、顕著な莢雑は検出されなかった。極めて少量の酸素及び炭素のみが観察された(図2)。酸素の存在は、空気中の大気の莢雑と何らかの自然酸化物の形成によるものであり得る。表面(上部又は底部)のみに、極めて小さな炭素シグナルが検出されたが、これは、空気からの炭化水素の莢雑によるものであり得る。
【0096】
150℃で20分間、膜の破片を加熱し、薬物充填なしの実験対照とするために、エタノールの十分量をピペットで加えた。(エタノールと多孔性シリコンとの間で起り得る反応から由来し得る)有意な量の炭素又は酸素は観察されず、エタノール(沸点78.3℃)が、与えられた熱の下で、多孔性シリコンとの反応なしに、完全に蒸発したことを示唆している(図3)。
【0097】
1.クロラムブシル(融点64から66℃)
含浸は、80℃で25分間、クロラムブシルの融点より約10℃高い熱を与え、直接含浸融解法を用いて行った。薬物充填及び洗浄後、その重量は、72.92mgに増加し、39.19%w/wの充填に相当した。このように、薬物は、利用可能な細孔容量の88.40/薬物密度を占めた。
【0098】
充填されてない破片の重量=44.34mg
密度=dchlg cm−3
空隙容積={44.34/479.60mg}×814.75mg/{シリコンの密度}
=0.03233cm
最大充填能=0.03233cm×dchlg cm−3
=32.33dchl mg
充填と洗浄 w=71.66mg
=73.41mg
=72.92mg、39.19%w/wに相当
%充填能(w/v)={72.92−44.34}/{32.33dchl}×100
=88.40/dchl
SEM−EDX法(図4)を用いた、含浸された膜の組成分析によって、C/Si及びCl/Si比を参照すると、クロラムブシルの充填は膜を通じてかなり均一であることが明らかとなった。平均C/Si約0.35から明らかなように、高いクロラムブシルが検出される。膜の横断面に対して行われたEDXから得られたEDXスペクトル(図1の定義に従って標示されている。)が、図17に示されている。
【0099】
膜の中に取り込まれた後、クロラムブシルを抽出して、HPLC分析にかけた。メスフラスコ中に、既知量の取り込まれたクロラムブシル/多孔性シリコン(典型的には10から15mg、取り込みのレベルに依る。)を配置し、100mLのエタノールで定量とし、30℃で30分間、振盪及び音波処理を行った。この原液から、ピペットにより、25mLを100mLのメスフラスコに移して、試料溶液を得た。HPLCによる分析の前に、0.45ミクロンのフィルターを通して試料をろ過した。
【0100】
この分析に対して使用したクロマトグラフィー条件は、以下のとおりであった。
【0101】
【表1】

【0102】
結果(図5)は、顕著な分解なしに、化合物が取り込まれ得ること、及び半導体材料から放出され得ることを実証した。クロラムブシルと標示された一本の主ピークの位置が変化していないことが、多孔性シリコンへの充填及びその後の多孔性シリコンからの放出の結果、顕著な分解が起こらないことを示す主要な指標である。感知できるほどの分解があれば、スペクトル中に、「保持時間」5.2分で、親ピークの周囲に強いピークが追加されるであろう。0および3.2分の保持時間の間に存在する多数の小さなピークは、クロラムブシルとは無関係である。
【0103】
2.アミトリプチリンHCl(融点198から200℃)
予め溶かしたアミトリプチリン溶液(エタノール中)を多孔性シリコン膜上に配置することによって、充填を行い、90℃で10分間、穏やかに加熱した。薬物充填及び洗浄後、その重量は、(25.18mgから)38.78mgに増加し、これは、35.07%w/wに相当した。このように、薬物は、利用可能な細孔容量の(74.07/薬物密度)%を占めた。
【0104】
充填されてない破片の重量=25.18mg
密度=dAMTg cm−3
空隙容積={25.18/479.60mg}×814.75mg/{シリコンの密度}
=0.01836cm
最大充填能=0.01836cm×dAMTg cm−3
=18.36dAMT mg
充填と洗浄 w=38.35mg
=38.77mg
=38.78mg、35.07%w/wに相当
%充填能(w/v)={38.78−25.18}/{18.36dAMT}×100
=74.07/dAMT
SEM−EDX法を用いた、含浸された膜の組成分析(図6)は、C/Siの元素比に基づき、アミトリプチリンに対して高充填を示している。膜の横断面に沿ったEXDを通じて、塩素が観察され、薬物はHClと十分に複合体を形成し、薬物がなおプロドラッグのままであることを示唆している。しかしながら、この複合体形成は、大気中の水分からの水の吸着を誘導し、これは、続いて、構造中のO/Si含量を高くする。
【0105】
3.S−(+)−イブプロフェン(融点75から78℃)
90℃で20分間、穏やかに加熱しながら、予め溶かしたイブプロフェン溶液(エタノール中)を膜上に配置することによって、含浸を行った。得られた充填重量は、(11.57mgから)19.50mgであり、40.67%w/wに相当する。これは、利用可能な細孔容量のほぼ(89.54/薬物密度)%を占めた。
【0106】
充填されてない破片の重量=11.57g mg
密度=dIbucm−3
空隙容積={11.57/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0088568cm
最大充填能=0.0088568cm×ddoxg cm−3
=8.8568dIbu mg
充填と洗浄 w=19.50mg、40.67%w/wに相当
%充填能(w/v)={19.50−11.57}/{8.8568dIbu}×100
=89.54/dIbu
SME−EDX法を用いた、含浸された膜の組成分析(図7)は、膜全体に炭素が観察されるという明瞭な証拠とともに、イブプロフェンの均一な充填を示している。
【0107】
4.プロカイン(融点153から156℃)
多孔性シリコン/p+膜上に、溶解されたプロカイン(EtOH:dHO 1:1中)を配置し、溶液が乾燥された状態になるまで25分間、110℃(dHOの沸点より高い)で穏やかに加熱することによって、含浸を行った。得られた充填重量は、35.33%w/w又は71.38%w/vに相当した。
【0108】
充填されてない破片の重量=9.70mg
密度=dProg cm−3
空隙容積={9.70/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0074253cm
最大充填能=0.0074253cm×dProg cm−3
=7.4253dPro mg
充填と洗浄 w=16.01mg
=15.00mg、35.33%w/wに相当
%充填能(w/v)={15.00−9.70}/{7.4253dPro}×100
=71.38/dPro
アミトリプチリンHClと同様に、pSi孔の中に充填されたプロカインは、空気からの水分を吸着する傾向があり、極めて高含量の酸素が横断面全体に存在することが示された(図8)。
【0109】
5.レバミゾールHCl(融点230から233℃)
多孔性シリコン/p+膜上に、溶解されたレバミゾール(EtOH:dHO 1:1中)を配置し、溶液が乾燥された状態になるまで25分間、110℃(dHOの沸点より高い)で穏やかに加熱することによって、含浸を行った。充填後の重量増加は、32.93%に達し、これは、(64/薬物密度)%で細孔容積を占める薬物に相当する。
【0110】
充填されてない破片の重量=9.35mg
密度=dLevg cm−3
空隙容積={9.35/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0071574cm
最大充填能=0.0071574cm×dLevg cm−3
=7.1574dLev mg
充填と洗浄 w=12.87mg
=13.94mg、32.93%w/wに相当
%充填能(w/v)={13.94−9.35}/{7.1574dLev}×100
=64.13/dLev
SME−EDXを用いた組成分析から明らかなように(図9)、横断面全体にClシグナルが検出され、含浸後、化合物がなおプロドラッグとして存在することを示唆している。
【0111】
6.プラムバギン(融点78から79℃)
プラムバギンは、Plumbagineae及びDroseracea科の植物に見出される天然の黄色色素である。エタノール中に溶かしたプラムバギンを多孔性シリコン膜上に配置することによって、含浸を行い、90℃で20分間、穏やかに加熱した。重量増加は34.68%w/wに達し、(98.50/薬物密度)%の占有細孔容量に相当する。
【0112】
充填されてない破片の重量=13.28mg
密度=dPlumg cm−3
空隙容積={13.28/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0101658cm
最大充填能=0.0101658cm×dPlumg cm−3
=10.1658dPlum mg
充填と洗浄 w=17.33mg
=20.33mg、34.68%w/wに相当
%充填能(w/v)={20.33−13.28}/{7.1574dPlum}×100
=98.50/dPlum
図10は、SME−EDXによって測定した、プラムバギンが含浸された膜の組成分析を示している。これから、C/Si含量を参照すると、プラムバギンに対して、かなり高い充填が得られていることが分かる。
【0113】
7.シクロホスファミド(融点41から45℃)
約60℃で20分間、加熱融解しながら、直接充填融解法によって含浸を行った。充填及び洗浄後、得られた重量は、9.68mgから17.41mgに増加し、44.4%のw/wに相当した。このように、薬物は、(104/薬物密度)%で細孔容積を占有した。
【0114】
充填されてない破片の重量=9.68mg
密度=dCycg cm−3
空隙容積={9.68/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.00741cm
最大充填能=0.00741cm×dCycg cm−3
=7.41dCyc mg
充填と洗浄 w=17.41mg、44.40%w/wに相当
%充填能(w/v)={17.41−9.68}/{7.41dPro}×100
=104.32/dPro
SEM−EDX組成分析(図11)から、シクロホスファミド中の全元素(特に、元素P及びN)が明確に観察されたことが明らかであり、膜の厚さ全体にわたって、薬物が孔中に充填されていることを示唆する。
【0115】
8.ブスルファン(融点114℃)
エタノールと水(1:1)の溶液中にブスルファンを予め溶解し、多孔性シリコン膜上に配置し、120℃で30分間加熱した。洗浄後、重量の増加は37.54%w/wであると決定され、78.53/薬物密度% w/vに相当する。
【0116】
充填されてない破片の重量=8.80mg
密度=dBusg cm−3
空隙容積={8.80/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0067364cm
最大充填能=0.0067364cm×dBusg cm−3
=6.7364dBus mg
充填と洗浄 w=10.67mg
=14.09mg、37.54%w/wに相当
%充填能(w/v)={14.09−8.80}/{6.7364dBus}×100
=78.53/dBus
純粋な薬物のSEM−EDX組成分析は、予想された3:3:1の比で、元素C:O:Sを与え、C、O及びSのシグナルは、EDX検査全体にわたって明瞭に認められた(図12)。
【0117】
9.デキサメタゾン(融点255℃)
エタノールとdHO(1:1)の溶液中にデキサメタゾンを予め溶解し、多孔性シリコン膜上に配置し、130℃で30分間加熱した。洗浄後、重量の増加は31.52%w/w、すなわち60.14/薬物密度% w/vであると決定された。
【0118】
充填されてない破片の重量=6.43mg
密度=dDexg cm−3
空隙容積={6.43/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0049222cm
最大充填能=0.0049222cm×dDexg cm−3
=4.9222dDex mg
充填と洗浄 w=9.65mg
=9.39mg、31.52%w/wに相当
%充填能(w/v)={9.39−6.43}/{4.9222dDex}×100
=60.14/dDex
多孔性シリコン膜中のデキサメタゾンの組成分析(図13)は、充填が膜全体を通じてかなり均一であることを示している。膜中のデキサメタゾンの充填を同定するために、C/Si比と併せて、特に、F/Si比が使用される。
【0119】
10.ラウリン酸(融点44℃)
ホットプレート上で、60℃の温度で20分間加熱しながら、直接充填融解法によって、含浸を行った。洗浄後、重量の増加は42.57%w/wで、すなわち55.62/薬物密度% w/vであると決定された。
【0120】
充填されてない破片の重量=12.59mg
密度=dLaug cm−3
空隙容積={12.59/460.06mg}×820.57mg/{シリコンの密度}
=0.0096376cm
最大充填能=0.0096376cm×dLaug cm−3
=9.6376dLau mg
充填と洗浄 w=17.95mg、42.57%w/wに相当
%充填能(w/v)={17.95−12.59}/{9.6376dLau}×100
=55.62/dLau
含浸された膜のSEM−EDX組成分析(図14)は、約0.35のC/Si比で膜の横断面全体にわたってCが認められることを示しており、ラウリン酸の高充填が示唆される。
【0121】
11.α−トコフェロール(ビタミンE、沸点200℃)
ビタミンEは、0.95g cm−3の密度を有するので、63%の間隙率のシリコンマトリックスの場合、最大w/w充填能は41%である。70℃で20分間穏やかに加熱しながら、pSi/p+膜上に、液体形態のビタミンEを直接適用することによって、充填を行った。充填されていない破片の重量は58.83mgであった。薬物充填及び洗浄後、その重量は、93.67mgに増加し、37%w/wの充填に相当した。このように、薬物は、利用可能な細孔容量の88%を占有した。
【0122】
充填されてない破片の重量=58.83mg
ビタミンE(Sigma)の純度=97%
密度=0.95g cm−3
空隙容積={58.83mg/479.60mg}×814.75mg/{シリコンの密度}
=0.04289cm
最大充填能=0.04289cm×0.97×0.95g cm−3
=39.5259mg
充填と洗浄 w=103.96mg
=94.99mg
=92.31mg
=93.67mg、37.19%w/wに相当
%充填能(w/v)={93.67−58.83}/39.5259×100
=88.14%
組成分析におけるC/Si(約0.53)及びO/Si(約0.15)の元素比が高いことから(図15)、ビタミンEが膜全体に認められることが分かる。
【0123】
12.ビタミンK
使用されたビタミンKは、0.984g cm−3の密度を有するので、63%の間隙率のシリコンマトリックスの場合、最大w/w充填能は42%である。70℃で20分間、穏やかに加熱しながら、液体形態のビタミンKを膜上に直接適用することによって、充填を行った。充填されていない破片の重量は31.90mgであった。薬物充填及び洗浄後、その重量は、49.92mgに増加し、36%のw/w充填に相当した。このように、薬物は、利用可能な細孔容量の80%を占有した。
【0124】
充填されてない破片の重量=31.90mg
ビタミンK(Sigma)の純度=98%
密度=0.984g cm−3
空隙容積={31.90mg/479.60mg}×814.75mg/{シリコンの密度}
=0.02326cm
最大充填能=0.02326cm×0.98×0.984g cm−3
=22.43mg
充填と洗浄 w=49.50mg
=49.92mg、36.10%w/wに相当
%充填能(w/v)={49.92−31.90}/22.43×100
=80.34%
C/Si約0.56及びO/Si約0.20という高い元素比率に基づいて(図16)、ビタミンKは、pSi/p+膜中に十分に充填されることが示された。
【0125】
13.酢酸メドロキシプロゲステロン(融点207℃)
実施例2の方法に従って、アセトン中の薬物の溶液を多孔性シリコン膜に含浸すると、19.81% w/wに相当する薬物の充填が得られた。
【0126】
14.リファンピシン(融点183から188℃)
薬物のエタノール溶液を多孔性シリコン膜上に配置し、回転蒸発によって溶媒を除去することによって、充填を行った。19% w/wに相当する薬物充填が得られた。
【0127】
15.パクリタキセル(融点216から217℃)
回転蒸発法を用いて、薬物のエタノール溶液に多孔性シリコン膜を含浸させることにより、16.71%w/wに相当する薬物充填が得られた。
【0128】
パクリタキセルが含浸された多孔性シリコン/p+膜(166μm厚)のSEM−EDX分析によって、図18に示されている材料の表面から(A)80μm及び(B)145μmの深さで、膜の横断面に対して行ったEDXスペクトルから明らかなように、膜全体にわたって、パクリタキセルが実質的に均一に分布されていることが確認される。
【0129】
HPLC分析によって、著しい分解なしに、化合物が多孔性シリコン材料中に取り込まれ、多孔性シリコン材料から放出されることが確認される。
【0130】
周温で、UV分光法(230nm)を使用し、PBS(リン酸緩衝溶液、pH7.4)を溶解溶媒とする全溶媒置換溶解装置中で、パクリタキセルを含浸された多孔性シリコン膜(試料の重量は、2mgの多孔性シリコンに相当する。)の溶解を調べた。各時点で(毎日)、新鮮な4mLのPBS中に前記含浸された膜を移した。
【0131】
図19は、2、13及び20日に(それぞれ、A−C)、溶出された試料から得られたUVプロファイルを示している。これらの結果から、溶出された薬物の吸収プロファイルは、20日の期間にわたって変化しないことが明らかであり、充填された試料から溶出される薬物が、この期間に実質的に分解しないことを示唆している。
【0132】
図20は、30日の期間にわたって測定された、含浸膜からのパクリタキセルの累積的放出に対して得られたグラフを示している。これから、パクリタキセルの持続的な制御放出が達成されていることが明瞭であり、放出速度は最初の7日間、概ね一定であり、その後、30日後まで放出速度が遅くなり、95%の薬物が回収された。特に注目すべきことは、放出速度の初期「バースト」が全く見られず、これは、他の制御放出製剤に比べて、著しい利点である。
【0133】
(b)インビボ研究
上記実施例1及び15に記載されたとおりに調製され、腫瘍内に投与されたクロラムブシル充填多孔性シリコンとパクリタキセル充填多孔性シリコン製剤の、マウス中の腫瘍増殖に対する効果を調べた。何れのケースでも、対応する遊離の薬物のLD50を上回る投薬レベルで薬物が投与される場合でさえ、著しい死亡率なしに、効果的な腫瘍退行が観察された。
【0134】
クロラムブシル
動物モデルに対する研究は、シンガポール総合病院の倫理委員会による承認を得て、シンガポール総合病院の実験外科部の動物研究室で行った。
【0135】
以下のプロトコールを採用した。
【0136】
1.ヒト細胞の培養及びヌードマウス中の充実性腫瘍としての腫瘍細胞の移植
動物中での移植に十分な数に増殖するまで、COインキュベータ中で、2から3日おきに、それぞれ、10%ウシ胎児血清を加えたRPMI及びHamのF−12培地中で、癌腫細胞株を培養した。次いで、ヌードマウス中に、充実性腫瘍として細胞を移植した]。HBSS (Hanks balanced salt solution)中に細胞を収集した。25ゲージの針を用いて、HBSS中の細胞懸濁物(5×10細胞)100μLを、ヌードマウス(雌、6から9週齢、平均体重25gの平均体重、無菌条件で飼育したヌードマウス)の右臀部領域中に皮下注射した。
【0137】
2.動物のグループ:対照1(ピーナッツ油を注入)、対照2(薬物なしの多孔性シリコンを注入)、遊離のクロラムブシル(多孔性シリコンなしに、腫瘍中に薬物を直接注入するか、又は腹腔内経路を介して薬物を注入)及びクロラムブシルを含浸された多孔性シリコン群に、動物を無作為にグループ分けした。各群には、16から20匹の動物を含めた。
【0138】
3.移植された腫瘍中への、クロラムブシルを含浸された多孔性シリコンの注入:腫瘍(腫瘍の直径は約1cm)の移植から14日後に、クロラムブシルを含浸された製剤を腫瘍の中心に適用した。
【0139】
4.腫瘍の体積測定:ヌードマウス中の移植された腫瘍のサイズを、3日ごとに測定した。最大の直径と最小の直径をノギスによって測定し、式:V=1/2ab(a及びbは、それぞれ、最大及び最小の腫瘍の直径であり、Vは、cmで表した腫瘍の体積である。)に従って、腫瘍の体積を推定した。
【0140】
腫瘍の増殖に対する、腫瘍内投与されたクロラムブシル含浸多孔性シリコンの効果を調べ、対照及び全身療法群と比較した。3日ごとに、総体重(g)から腫瘍体積(cm)を差し引くことによって、動物の体重を測定した。各実験動物の生存時間を記録した。
【0141】
図21にグラフとして示されている経時的な相対腫瘍体積の結果は、多孔性シリコン中に充填されたクロラムブシル(CBS)が、使用した用量に応じて、極めて効果的に腫瘍の退行を引き起こしたことを示している。これらの結果は、融解溶媒法によってクロラムブシル(360μg又は720μg)が充填された後、乳棒と乳鉢で1時間研磨することによって粒子サイズが約20ミクロンまで縮小された、陽極酸化で得られた多孔性シリコンは破片から得られている。
【0142】
同じ腫瘍モデルを用いた別の一連の実験では、多孔性シリコンによって送達され、腫瘍中に直接注入された、より多量のクロラムブシル(1500μg)が、無処置の動物(対照群)と比較したときに、腫瘍のサイズを著しく減少した。脇腹の腫瘍増殖は、無処置の動物と比べて、12週間遅延した(図22)。これに対して、同じ用量(2×LD50)を用いたクロラムブシルの腫瘍内送達は、90%の動物死亡率をもたらした。投薬量を720μg(LD50)から1.5mg(2×LD50)に増加させると、CBS群の死亡率が20%となり、用量を制限する薬物の全身的副作用を最小限に抑えながら、薬物に対して腫瘍を長期間曝露できることを示唆している。これに対して、多孔性シリコンなしに同様の量のクロラムブシルを投与すると、50%(720μg)から90%(1500μg)の致死率がもたらされた。これらの研究の結果は、本発明の方法に従って処置を受けた群で、生存率が著しく延長されることを示した。さらに、局所的に投与されたクロラムブシル充填多孔性シリコンによる処置は、長期間生存する動物をもたらした。
【0143】
パクリタキセル
ヌードマウス中でのヒト乳癌MCF7の皮下増殖に対するパクリタキセル充填多孔性シリコンの効果を調べ、ピーナッツ油賦形剤のみを注入されたマウスの対照群と比較した。研究は、ノッティンガム大学で行われた。以下のプロトコールを採用した:−
移植法:ヌードマウス中で連続継代して、腫瘍株を維持した。治療研究のために、ドナーマウスを屠殺し、腫瘍を切り出した。腫瘍を細かく刻み、適切な麻酔下で、MF1ヌードマウスの脇腹中に3mm切片を皮下移植した。腫瘍の発生について、動物を定期的に調べた。測定可能な腫瘍が確立された時点で、各群内のサイズの代表的な分布を得るために、マウスをサイズにより処置群に振り分けた。腫瘍サイズを一週間に三回評価した。
【0144】
処置群には、腫瘍に直接注入された、調合された化合物(多孔性シリコン中に充填されたパクリタキセル)100μLが与えられた。対照群には、ピーナッツ油100のみを与えた。
【0145】
図23にグラフで示された腫瘍横断面積の経時的測定の結果から、対照群(A)と比べると、パクリタキセルが充填された多孔性シリコン(B)で処置されたマウス中では、腫瘍増殖の遅延が観察されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料(前記有益な有機物質は、前記材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する。)。
【請求項2】
多孔性半導体が、ドープされた又はドープされていない、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素又は窒化ケイ素である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
多孔性半導体がケイ素である、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
ケイ素が再吸収性である、請求項3に記載の材料。
【請求項5】
ケイ素がメソ多孔性である、請求項4に記載の材料。
【請求項6】
多孔性ケイ素が40%から90%の間隙率を有する、請求項3から5の何れかに記載の材料。
【請求項7】
有益な有機物質が、1から7のpH範囲で、水性溶媒中において10mg/mL以下の溶解度を有する、請求項1から6の何れかに記載の材料。
【請求項8】
有益な有機物質が300℃未満の融点を有する、請求項1から7の何れかに記載の材料。
【請求項9】
有益な有機物質が100℃未満の融点を有する、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
前記有益な有機物質が、クロラムブシル、アミトリプチリン、イブプロフェン、プロカイン、レバミゾール、プラムバギン、シクロホスファミド、ブスルファン、デキサメタゾン、ラウリン酸、酢酸メドロキシプロゲステロン、ビタミンK、ビタミンE、パクリタキセル及びリファンピシン又はこれらの混合物から選択される、請求項1から9の何れかに記載の材料。
【請求項11】
有益な有機物質が、材料の重量を基準として、15重量%から85重量%の量で存在する、請求項の1から10何れかに記載の材料。
【請求項12】
有益な有機物質が、半導体の孔を通じて実質的に均一に分配される、請求項1から11の何れかに記載の材料。
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載の材料を含む、薬学的組成物。
【請求項14】
インプラント又は粒子の形態の、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1から12の何れかに記載の材料又は請求項13若しくは14に記載の組成物の、治療における使用。
【請求項16】
有益な物質を必要としている患者に請求項13又は14に記載の組成物を送達することを含む、前記患者に有益な物質を送達する方法。
【請求項17】
i)有益な有機物質を多孔性半導体と接触させる工程;および
ii)前記有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程(該含浸は前記有益な有機物質の融点以上の温度で行われる。)
を含む、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料を調製する方法(前記有益な有機物質は、前記材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する。)。
【請求項18】
含浸が、
i)有益な有機物質の融点以上の温度に、多孔性半導体を加熱する工程;
ii)前記加熱された多孔性半導体を前記有益な有機物質に接触させることにより、前記有益な有機物質を融解された状態にする工程;および
iii)前記融解された有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程;
によって実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
含浸が、
i)有益な有機物質をその融点以上の温度に加熱することにより、前記有益な有機物質を融解された状態にする工程;
ii)前記融解された有益な有機物質を多孔性半導体と接触させる工程;および
iii)前記融解された有益な有機物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程;
によって実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
多孔性半導体と有益な有機物質の両方が、独立に、前記有益な有機物質の融点以上の温度に加熱され、次いで、含浸を生じさせるために互い接触される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
含浸が40℃から200℃の温度で行われる、請求項17から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
含浸が60℃から130℃の温度で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
含浸が、有益な有機物質の融点より5℃から15℃高い温度で行われる、請求項17から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程;
ii)パート(i)の溶液を多孔性半導体と接触させる工程;および
iii)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程(該含浸は40℃から200℃の範囲の温度で行われる);
を含む、少なくとも一つの有益な有機物質が含浸された多孔性半導体を含む複合材料を調製する方法(前記有益な有機物質は複合材料の重量を基準として、少なくとも15重量%の量で存在する)。
【請求項25】
含浸が60℃から130℃の温度で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
含浸が、有益な物質に対する溶媒の沸点以上である温度で行われる、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
含浸が、有益な有機物質の融点以上の温度で行われる、請求項24から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
含浸が、
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程;
ii)含浸が行われるべき温度まで、多孔性半導体を加熱する工程;
iii)パート(i)の溶液を前記加熱された多孔性半導体と接触させる工程;および
iv)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程;
によって実施される、請求項24から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記含浸が、
i)有益な有機物質を、前記有益な有機物質に対する溶媒中に溶解する工程;
ii)含浸が行われるべき温度まで、パート(i)の溶液を加熱する工程;
iii)パート(ii)の前記加熱された溶液を多孔性半導体と接触させる工程;および
iv)前記有益な物質を前記多孔性半導体に含浸させる工程;
によって実施される、請求項24から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
多孔性半導体と有益な有機物質の溶液の両方が、独立に、含浸が行われるべき温度まで加熱され、含浸を生じさせるために互い接触される、請求項24から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
半導体がケイ素である、請求項17から30の何れかに記載の方法。
【請求項32】
有益な有機物質が300℃未満の融点を有する、請求項17から31の何れかに記載の方法。
【請求項33】
有益な有機物質が、クロラムブシル、アミトリプチリン、イブプロフェン、プロカイン、レバミゾール、プラムバギン、シクロホスファミド、ブスルファン、デキサメタゾン、ラウリン酸、酢酸メドロキシプロゲステロン、ビタミンK、ビタミンE、パクリタキセル及びリファンピシン又はこれらの混合物から選択される、請求項17から32の何れかに記載の方法。
【請求項34】
有益な有機物質と接触させる前に、多孔性半導体が100℃から250℃の温度まで加熱される、請求項17から33の何れかに記載の方法。
【請求項35】
多孔性半導体及び有益な有機物質が、1分から2時間の期間、接触された状態に維持される、請求項17から34の何れか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−148089(P2012−148089A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45526(P2012−45526)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2006−536166(P2006−536166)の分割
【原出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504235883)サイメデイカ リミテツド (16)
【Fターム(参考)】