有機EL装置の製造装置および有機EL装置の製造方法
【課題】有機EL装置の製造工程において、基板に付着した異物を効果的に除去する製造装置および製造方法を提供すること。
【解決手段】有機EL装置の製造装置100は、基体20の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置130と、成膜装置130に接続され、基体20に外力を加えることにより基体20の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置140と、を備えている。
【解決手段】有機EL装置の製造装置100は、基体20の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置130と、成膜装置130に接続され、基体20に外力を加えることにより基体20の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置140と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造装置および有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層を含む有機機能層を備えた有機エレクトロルミネセンス装置(以下、有機EL装置と呼ぶ)が知られている。有機EL装置は、陽極と陰極と両者の間に位置する有機機能層とからなる有機EL素子を備えている。有機機能層や陰極は大気中に存在する水分と反応しやすく、水と反応することによって特性が劣化する。そのため、有機EL装置において、有機機能層や陰極を水分から保護する保護層を有する構成が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような有機EL装置の製造は、上述の理由から、水分を極力存在させないように減圧雰囲気や不活性ガスの雰囲気の装置内で行われる。また、同じ理由から、有機EL装置の製造では、純水等を用いたウエット洗浄が適用できない。そのため、有機EL装置の製造工程において、有機EL装置の基板に異物等が付着しても、その異物を除去することは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2007−157606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機EL装置の製造工程における基板への異物の付着は、発光しない部分(ダークスポット)の発生等による有機EL装置の製造歩留りの低下や、保護層等にピンホールが生じることによる有機EL装置の寿命劣化を招く。したがって、有機EL装置の製造工程において、減圧雰囲気や不活性ガスの雰囲気の装置内で、基板に付着した異物を効果的に除去する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置の製造装置は、基体の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置と、前記少なくとも一つの成膜装置に接続され、前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、成膜装置に接続された処理装置に、基体に外力を加えて基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられている。このため、成膜装置で成膜を行う前および成膜を行った後の少なくともどちらかにおいて、ウエット洗浄を用いることなく基体の表面に付着した異物を除去できる。これにより、有機EL装置の製造歩留りの低下や寿命劣化を防止できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記除去手段は、振動により前記基体に前記外力を加える振動発生機構を含んでいてもよい。
【0010】
この構成によれば、振動により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記振動発生機構は、超音波振動子または超音波振動板を含んでいてもよい。
【0012】
この構成によれば、超音波振動子または超音波振動板により簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記振動発生機構は、振動モータを含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、振動モータにより簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記除去手段は、風圧により前記基体に前記外力を加える風圧発生装置を含み、前記風圧発生装置は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出してもよい。
【0016】
この構成によれば、基体の表面に向けて放出されるガスの風圧により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の周辺に存在する異物を遠ざけ、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記処理装置内の雰囲気を吸気口から外部へ排気する排気装置をさらに備え、前記吸気口は、前記基体の表面に対向するように配置されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、基体の表面から除去された異物や基体の周辺に存在する異物を処理装置外へ排出できる。これにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0019】
[適用例7]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記成膜装置に前記基体を搬入および搬出する搬送装置をさらに備え、前記処理装置は、前記基体が前記搬送装置により前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中に配置されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、基体を成膜装置に搬入および搬出する搬送経路の途中で基体に付着した異物を除去できる。
【0021】
[適用例8]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、前記成膜装置に接続された処理装置内で前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去工程を備えていることを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、ウエット洗浄を用いることなく基体に付着した異物を除去できる。これにより、有機EL装置の製造歩留りの低下や寿命劣化を防止できる。
【0023】
[適用例9]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、振動により前記基体に前記外力を加えてもよい。
【0024】
この方法によれば、基体に振動を加えることにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体に振動を加えることにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0025】
[適用例10]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記振動は、超音波振動子または超音波振動板を用いて発生させてもよい。
【0026】
この方法によれば、超音波振動子または超音波振動板により簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0027】
[適用例11]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記振動は、振動モータを用いて発生させてもよい。
【0028】
この方法によれば、振動モータにより簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0029】
[適用例12]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、風圧により前記基体に前記外力を加え、前記風圧は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することにより発生させてもよい。
【0030】
この方法によれば、基体の表面に向けて放出されるガスの風圧により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の周辺に存在する異物を遠ざけ、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0031】
[適用例13]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、前記基体の表面に対向する位置に配置された吸気口から前記処理装置内の雰囲気を外部へ排気してもよい。
【0032】
この方法によれば、基体の表面から除去された異物や基体の周辺に存在する異物を処理装置外へ排出できる。これにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0033】
[適用例14]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程を、前記基体が前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中で行ってもよい。
【0034】
この方法によれば、基体を成膜装置に搬入および搬出する搬送経路の途中で基体に付着した異物を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の厚さや寸法の比率等は適宜異ならせてある。
【0036】
<有機EL装置>
まず、本実施形態に係る製造装置を用いて製造される有機EL装置の一例を説明する。図1は、有機EL装置の一例の配線構造を示す図である。図2は、有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図である。図3は、有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図2のA−A’線に沿った部分断面図である。なお、それぞれの図面において、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0037】
図1に示すように、有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。有機EL装置1は、複数の走査線16と、各走査線16に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線17と、各信号線17に並列に延びる複数の電源線18とがそれぞれ配線された構成を有している。有機EL装置1において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域が画素2の領域である。
【0038】
信号線17には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスタおよびレベルシフタを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0039】
画素2の領域のそれぞれには、走査線16を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT11と、スイッチング用TFT11を介して信号線17から供給される画素信号を保持する保持容量13と、保持容量13によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT12と、駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したときに電源線18から駆動電流が流れ込む画素電極24と、画素電極24と陰極36との間に位置する有機機能層30とが設けられている。画素電極24と有機機能層30と陰極36とにより、有機EL素子が構成される。このような有機EL素子において、画素電極24は陽極として機能する。
【0040】
有機EL装置1では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、そのときの信号線17の電位が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12のチャネルを介して電源線18から画素電極24に電流が流れ、さらに有機機能層30を介して陰極36に電流が流れる。有機機能層30は、これを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0041】
次に、有機EL装置1の概略構成を説明する。有機EL装置1は、電気絶縁性を有する基板10と、駆動用TFT12に接続された画素電極24が基板10上にマトリクス状に配置されてなる画素電極域(図示しない)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極24に接続される電源線18と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視略矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)と、を備えたアクティブマトリクス型である。
【0042】
図2に示すように、画素部3は、中央部分の実発光領域4(二点鎖線枠内)と、実発光領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。実発光領域4には、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの表示に寄与する画素2が、A−A’線方向およびA−A’線と直交する方向にそれぞれ離間してマトリクス状に配置されている。
【0043】
画素2は有機EL装置1の表示の最小単位であり、画素2の領域のそれぞれには画素電極24が配置されている。画素2は、R、G、Bのそれぞれに発光する有機EL素子により得られた光を表示光として出力するようになっている。有機EL装置1では、画素2(R),2(G),2(B)から一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素2(R),2(G),2(B)のそれぞれの表示の輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0044】
実発光領域4の図2中両側には、走査線駆動回路15が配置されている。また、実発光領域4の図2中上側には、検査回路19が配置されている。検査回路19は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路である。検査回路19は、例えば、検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示しない)を備え、製造途中や出荷時の有機EL装置1の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。なお、検査回路19も、ダミー領域5の下側に配置されている。
【0045】
走査線駆動回路15および検査回路19には、所定の電源部から駆動電圧導通部22(図3参照)および駆動電圧導通部(図示しない)を介して、駆動電圧が印加される。また、走査線駆動回路15および検査回路19への駆動制御信号および駆動電圧は、有機EL装置1の作動制御を行う所定のメインドライバ等から駆動制御信号導通部23(図3参照)および駆動電圧導通部(図示しない)を介して送信および印加される。基板10の外周部には、陰極用配線36aが配置されている。
【0046】
図3に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、回路部21と、画素電極24と有機機能層30と陰極36とで構成される多数の有機EL素子と、これらの有機EL素子を覆う陰極保護層38と緩衝層42とガスバリア層44と、を備えている。ここでは、有機EL装置1が、有機機能層30から発した光がガスバリア層44側に射出されるトップエミッション方式である場合を例に取り説明する。
【0047】
基板10の材料は、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれであってもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えばSiO2等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0048】
回路部21は、基板10上に形成されている。回路部21は、画素電極24を駆動するための駆動用TFT12と、各種回路と、導通部と、層間絶縁層等で構成されている。以下の説明では、基板10と、基板10上に形成された回路部21とを含めて、基体20と称する。
【0049】
画素電極24は、基体20上の実発光領域4内の画素2の領域毎に設けられている。画素電極24の材料としては、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性および不透光性の導電材料を適宜用いることができる。画素電極24の材料は、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)である。なお、画素電極24は、反射性をより高めるために、例えば反射層/無機絶縁層/透光性陽極のような多層構造を有していてもよい。
【0050】
基体20上のダミー領域5には、ダミーパターン25が設けられている。ダミーパターン25は、島状に配置されており、画素電極24と略同形状を有している。ダミーパターン25は、実発光に寄与せず、駆動用TFT12に接続されていない。
【0051】
基体20上の画素電極24とダミーパターン25との上には、親液性制御層26が形成されている。親液性制御層26は、それぞれの画素2に対応して開口部26aを複数有している。親液性制御層26は、開口部26aの周囲に沿って画素電極24の周縁部に所定幅で重なる部分を有している。親液性制御層26は、ダミーパターン25を覆っている。親液性制御層26は、例えばSiO2等の無機材料からなる。
【0052】
親液性制御層26上には、画素2の領域を区画する隔壁層28が形成されている。隔壁層28は、親液性制御層26の開口部26aに重なる開口部28aを有している。開口部28aは、開口部26aよりも一回り大きい。開口部28aは、ダミーパターン25上にも設けられている。隔壁層28は、有機樹脂からなり、例えばアクリル樹脂からなる。なお、基体20と親液性制御層26との間、または親液性制御層26と隔壁層28との間に、互いに隣り合う画素2同士の間の領域に位置するように遮光層が設けられていてもよい。
【0053】
有機機能層30は、隔壁層28により区画された画素2の領域に形成されており、画素電極24上に位置している。有機機能層30は、ダミーパターン25上の隔壁層28により区画された領域にも形成されている。有機機能層30は、順に積層された正孔輸送層32と発光層34とで構成されている。有機機能層30では、正孔輸送層32から注入される正孔と、陰極36から注入される電子とが発光層34で再結合することにより、R、G、Bのいずれかの発光が得られる。なお、有機機能層30は、発光層34の上に積層された電子注入層をさらに有していてもよいし、発光層34を含む4層以上の機能層で構成されていてもよい。
【0054】
正孔輸送層32の材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体等、またはそれらのドーピング体等を用いることができる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液等を用いることができる。
【0055】
発光層34の材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系等が好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いてもよい。上述した高分子材料に代えて、公知の低分子材料を用いてもよい。
【0056】
陰極36は、実発光領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を有している。陰極36は、有機機能層30と、隔壁層28の上面および側部壁面とを覆っている。陰極36は、基体20の外周部で陰極用配線36a(図2参照)に接続されている。この陰極用配線36aにはフレキシブル基板(図示しない)が接続されており、これによって、陰極36は陰極用配線36aを介してフレキシブル基板上の駆動IC(図示しない)に接続されている。
【0057】
陰極36は、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性導電材料からなる。透光性導電材料としては、ITOが好適に用いられるが、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透光性導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO(登録商標))等を用いてもよい。また、陰極36の材料として、電子注入効果の大きい材料、例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、またはこれらの金属化合物も好適に用いられる。金属化合物としては、例えば、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体を用いることができる。なお、これらの材料だけでは電気抵抗が大きく電極として機能しないため、アルミニウムや金、銀、銅等の金属層やITO、酸化錫等の金属酸化物導電層との積層体と組み合わせて用いてもよい。本実施形態では、陰極36の材料として、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透光性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0058】
陰極36上には、陰極36を覆う陰極保護層38が形成されている。陰極保護層38は、製造工程において、上層に位置する緩衝層42の残留水分等により陰極36が損傷を受けるのを防止するためのものである。また、陰極保護層38は、緩衝層42の形成時の平坦性、消泡性、密着性等の向上や側面端部の低角度化も目的とする。陰極保護層38の材料としては、透光性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を考慮して、緻密かつ高弾性率の珪素窒化物や珪素窒酸化物等の窒素を含む珪素化合物等が好ましい。陰極保護層38の材料の弾性率は、100GPa以上が好ましい。陰極保護層38の膜厚は、50nm〜200nm程度が好ましい。本実施形態では、陰極保護層38の材料をSiONとし、膜厚を200nm程度とする。陰極保護層38の形成方法としては、例えば、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が適用できる。
【0059】
陰極保護層38上には、陰極36よりも広い範囲に緩衝層42が設けられている。緩衝層42は、陰極保護層38を終端部まで全て覆う必要はなく、画素部3(図2参照)上に形成された陰極36を覆う場合、または基体20の外周部の陰極用配線36a(図2参照)上に形成された陰極36も覆う場合のいずれであってもよい。
【0060】
緩衝層42は、隔壁層28の形状が反映された陰極36表面の凹凸形状の凹部を埋めるように配置されており、略平坦に形成された上面を有している。緩衝層42は、基体20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、隔壁層28からの陰極36の剥離を防止する機能を有している。また、緩衝層42の上面が略平坦化されるので、緩衝層42上に位置し硬い被膜からなるガスバリア層44も平坦化される。これにより、ガスバリア層44において、応力が集中する部位がなくなるので、クラックや剥離、欠損の発生を防止できる。
【0061】
次に、緩衝層42の材料(塗布材料)について説明する。硬化前の原料主成分としては、減圧雰囲気下で印刷形成するために、流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分のない、全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが好適に用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。このような材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキレート等があり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0062】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透光性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として、1,6−ヘキサンジオール等分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで、低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60℃〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
【0063】
さらに、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として、芳香続アミンやアルコール類、アミノフェノール等の比較的分子量の高いものを添加することで、低温かつ短時間での硬化が可能となる。硬化時間を短縮するためによく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤は、着色や急激な硬化収縮を発生するため好ましくないが、ガスバリア層44との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物等の補水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子等の添加剤が混入されていてもよい。
【0064】
これらの原料毎の粘度は、1000mPa・s(室温:25℃)以上が好ましい。塗布直後に発光層34へ浸透して、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を発生させないためである。また、これらの原料を混合した緩衝層材料の粘度としては、500mPa・s〜20000mPa・sが好ましく、2000mPa・s〜10000mPa・s(室温)がより好ましい。
【0065】
また、緩衝層42の膜厚としては、3μm〜10μm程度が好ましい。緩衝層42の膜厚が3μm以上であれば、異物が混入した場合であってもガスバリア層44の欠陥発生を防止することができるからである。また、硬化後の特性としては、緩衝層42の弾性率が1GPa〜10GPaであることが好ましい。10GPa以上では、隔壁層28上を平坦化した際の応力を吸収することができず、1GPa以下では耐摩耗性や耐熱性等が不足するためである。
【0066】
緩衝層42上には、緩衝層42と陰極保護層38とを覆うガスバリア層44が形成されている。ガスバリア層44は、酸素や水分が浸入することによる陰極36や有機機能層30の劣化を防止するためのものである。ガスバリア層44の材料としては、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物等が用いられる。ガスバリア層44は、水蒸気等のガスを遮断するため、緻密で欠陥のない被膜であることが好ましい。したがって、ガスバリア層44の形成方法としては、緻密な膜を形成できるECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が好適である。
【0067】
ガスバリア層44の弾性率は、100GPa以上、より具体的には200Pa〜250Pa程度が好ましい。なお、上述した陰極保護層38と同一の弾性率を有する材料で形成してもよい。また、ガスバリア層44の膜厚は、200nm〜600nm程度が好ましい。200nm未満であると、異物に対する被覆性が不足し部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、600nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
【0068】
さらに、ガスバリア層44は、積層構造としてもよいし、その組成を不均一にしてその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよい。また、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、ガスバリア層44は透光性であることが求められる。したがって、ガスバリア層44は、その材質や膜厚を適宜に調整することにより、可視光領域における光線透過率が例えば80%以上であることが好ましい。本実施形態では、ガスバリア層44の材料をSiONとし、膜厚を400nm程度とする。
【0069】
ガスバリア層44上には、ガスバリア層44を覆う保護層40が設けらてれる。保護層40は、ガスバリア層44側に設けられた接着層46と、接着層46に貼り合わされた表面保護基板48とからなる。接着層46は、ガスバリア層44上に表面保護基板48を固定させるとともに、外部からの機械的衝撃に対して有機機能層30やガスバリア層44を保護する緩衝機能を有している。接着層46は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系等の樹脂で、表面保護基板48より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されている。接着層46の材料としては、透光性樹脂材料が好ましい。また、低温で硬化させるため硬化剤を添加する2液混合型の材料であってもよい。
【0070】
なお、接着層46には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましい。このようにすれば、形成される接着層46とガスバリア層44との密着性がより良好になり、したがって、機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。また、ガスバリア層44が珪素化合物で形成されている場合等では、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層44との密着性を向上させることができ、したがって、ガスバリア層44のガスバリア性を高めることができる。
【0071】
表面保護基板48は、接着層46上に設けられ、保護層40の表面側に位置している。表面保護基板48は、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性等の機能の少なくとも一つを有している。表面保護基板48の材質としては、ガラス、DLC(ダイアモンドライクカーボン)層、透明プラスチック、透明プラスチックフィルム等が用いられる。プラスチック材料としては、例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が用いられる。表面保護基板48には、紫外線遮断/吸収層や光反射防止層、放熱層、レンズ、色波長変換層やミラー等の光学構造が設けられていてもよい。また、カラーフィルタ機能が設けられていてもよい。なお、有機EL装置1はトップエミッション方式であるため、接着層46および表面保護基板48には透光性材料が用いられる。
【0072】
表面保護基板48は、耐圧性、耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性等の機能を有しているので、有機機能層30、陰極36、ガスバリア層44を保護することができる。また、接着層46は、機械的衝撃に対して緩衝機能を有しているので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層44や、その下層に位置する陰極36、有機機能層30への機械的衝撃を緩和することができる。したがって、ガスバリア層44上に保護層40を設けることにより、有機EL素子の長寿命化が図られるとともに、機械的衝撃による有機EL素子の機能劣化を防止することができる。
【0073】
なお、有機EL装置1は、ボトムエミッション方式であってもよい。有機EL装置1がボトムエミッション方式である場合には、基板10側から発光光を取り出す構成であるので、基板10の材料としては、透光性または半透光性のものが用いられ、ガラス基板が好適である。また、画素電極24も透光性材料が用いられる。一方、陰極36、接着層46、および表面保護基板48は、いずれも透光性の材料でなくてもよい。
【0074】
<有機EL装置の製造装置>
次に、本実施形態に係る有機EL装置の製造装置を説明する。図4は、本実施形態に係る製造装置の概略構成を示す構成図である。図5は、本実施形態に係る製造装置の成膜装置の概略構成を示す構成図である。図6は、本実施形態に係る製造装置の処理装置の概略構成を示す構成図である。
【0075】
本実施形態に係る有機EL装置の製造装置100は、図4に示すように、成膜装置110と成膜装置120と成膜装置130と、処理装置140と、ストック室150と、搬送室160,170と、印刷装置180と、封止装置190と、を備えている。
【0076】
成膜装置110と成膜装置120とストック室150とは、搬送室160の周囲に配置されており、それぞれが搬送室160に接続されている。処理装置140と印刷装置180と封止装置190とは、搬送室170の周囲に配置されており、それぞれが搬送室170に接続されている。成膜装置130は、処理装置140に接続されている。すなわち、成膜装置130は、処理装置140を介して、搬送室170に接続されている。また、搬送室160と搬送室170とは、互いに接続されている。
【0077】
製造装置100では、製造装置100内への基体20の搬出、搬入をストック室150で行う。搬送室160,170には、図示しないが、例えばロボットアームやラック・アンド・ピニオン機構、搬送レール172(図5参照)等を含む搬送装置が備えられている。この搬送装置により、成膜装置110と成膜装置120とストック室150と搬送室160との間、および処理装置140と印刷装置180と封止装置190と搬送室170との間で、基体20の搬出、搬入、またはそれぞれの内部での移動を行う。また、この搬送装置により、必要に応じて基体20の向きを変えることが可能である。
【0078】
成膜装置110は、有機機能層30(正孔輸送層32、発光層34)を成膜する装置である。成膜装置110は、例えば、インクジェット法等により、有機機能層30の材料の液滴を吐出する液滴吐出機構を備えている。なお、成膜装置110は、スピンコート法により、有機機能層30の材料の液滴を塗布するスピンコート機構を備えていてもよい。また、有機機能層30の材料として低分子材料を用いる場合は、成膜装置110は、真空蒸着法により有機機能層30を成膜する蒸着装置であってもよい。
【0079】
成膜装置120は、陰極36を成膜する装置である。成膜装置120は、例えば、イオンプレーティング法により成膜を行うイオンプレーティング装置である。成膜装置120は、真空蒸着法により成膜を行う蒸着装置であってもよい。なお、成膜装置110および成膜装置120は、内部が水、酸素のない雰囲気、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気であることが好ましい。
【0080】
成膜装置130は、陰極保護層38とガスバリア層44とを成膜する装置である。成膜装置130は、例えば、イオンプレーティング法により成膜を行うイオンプレーティング装置である。なお、成膜装置130は、プラズマCVD装置またはECRスパッタ装置であってもよい。成膜装置130の構成については後述する。
【0081】
処理装置140は、陰極保護層38を成膜する工程、あるいはガスバリア層44を成膜する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、基体20の表面に付着した異物の除去を行う装置である。処理装置140の構成については後述する。
【0082】
印刷装置180は、陰極保護層38上に緩衝層42を形成する装置である。印刷装置180は、例えば、基体20を保持するステージと、所定のパターンを印刷するためのスクリーンメッシュと、スクリーンメッシュ上の印刷材料を基体20に転写するためのスキージとを有するスクリーン印刷装置を備えている。
【0083】
封止装置190は、ガスバリア層44上に保護層40を形成する装置である。封止装置190は、例えば、スクリーン印刷装置を備えている。
【0084】
次に、成膜装置130の構成について、成膜装置130がイオンプレーティング装置である場合を例に取り説明する。
【0085】
図5に示すように、成膜装置130は、成膜室131と、蒸着源132と、保持部142と、プラズマ生成部134と、ガス供給装置136と、減圧装置138とを備えている。成膜装置130は、成膜室131の側部に位置する接続部131aで、処理装置140に接続されている。成膜装置130は、成膜室131の側部の接続部131aとは反対側に、スペース131bを有している。
【0086】
成膜室131内の上部側に位置する搬送レール172は、搬送装置の一部であり、搬送室170から処理装置140を経て接続部131aを通りスペース131bに至るまで延在している。蒸着源132は、成膜室131内の底部側に位置している。蒸着源132には陰極保護層38の材料38a(またはガスバリア層44の材料)が収容される。
【0087】
保持部142は成膜室131内の上部側に位置しており、台座143(図7参照)を貫通する搬送レール172に支持されている。保持部142は、基体20の成膜される側の表面が蒸着源132に対向するように、基体20を保持する。保持部142は、搬送レール172の延在方向に沿って、基体20とともに図の矢印の向き、および矢印とは反対の向きに移動可能である。本実施形態では、保持部142は、成膜装置130における成膜時、および処理装置140における異物除去時に共通して使用される。なお、保持部142の構成については後述する。
【0088】
プラズマ生成部134には、例えばアルゴンガスが供給される。ガス供給装置136は、例えば窒素ガスを成膜室131内に供給する。減圧装置138は、成膜室131内を排気して減圧雰囲気にする。
【0089】
成膜装置130では、ガス供給装置136から供給される窒素ガスで成膜室131内が満たされることにより、外部からの酸素が遮断される。これにより、基体20上の有機機能層30の酸化が防止される。また、プラズマ生成部134にアルゴンガスが供給されることにより、アルゴンプラズマが発生する。このアルゴンプラズマが成膜室131内に導入されることにより、蒸着源132に収容された陰極保護層38の材料38aは加熱されて蒸発する。材料38aがSiOである場合、蒸発したSiOは窒素ガスと結びついてSiONとなり、基体20の表面に堆積する。このとき、保持部142が基体20とともに矢印の方向に移動するので、基体20の表面にSiONの薄膜が略均一に成膜される。
【0090】
次に、処理装置140について、図6を参照して説明する。処理装置140は、処理室141と、保持部142と、除去手段としての振動発生機構200(図8参照)と風圧発生装置146と、排気装置148とを備えている。処理装置140は、処理室141の一方の側部に位置する接続部141aで搬送室170に接続されている。また、処理室141の側部の接続部141aとは反対側に位置する接続部141bは、成膜室131の接続部131aに連通している。これにより、処理装置140は成膜装置130に接続されている。処理室141の上部に位置する搬送レール172は、搬送室170から成膜装置130まで延在している。すなわち、処理装置140は、搬送装置により基体20が成膜装置130に搬送される搬送経路の途中に位置している。
【0091】
保持部142は、処理室141内の上部側に位置しており、基体20の成膜される側の表面が処理室141内の底部側に対向するように、基体20を保持する。保持部142は、搬送レール172に支持され、搬送レール172の延在方向に沿って、基体20とともに図の矢印の向き、および矢印とは反対の向きに移動可能である。
【0092】
次に、保持部142の構成について、図7を参照して説明する。図7は、保持部142の概略構成を示す図である。詳しくは、図7(a)は保持部142の模式平面図であり、図7(b)は図7(a)のB−B’線に沿った模式断面図である。なお、図7(a)は、図6における保持部142を基体20の側からみた平面を示しており、図7(b)は、図6における保持部142の上下を反転した状態を示している。
【0093】
図7に示すように、保持部142は、台座143と、ホルダ144と、振動発生機構200の一部としての超音波振動子210a,210bとを有している。台座143は、搬送レール172(図6参照)に支持される。ホルダ144は、台座143上に固定されている。ホルダ144は、中央が開口した額縁形状を有しており、基体20の4辺周辺の底面部および側面部を支持する。ホルダ144は、例えば真空吸着により、基体20を台座143上に保持する。
【0094】
超音波振動子210a,210bは、台座143上の異なる位置に配置されている。超音波振動子210aは、ホルダ144の4辺のそれぞれの略中央部に取り付けられている。また、超音波振動子210bは、台座143の略中央部において基体20の底面に接触するように取り付けられている。超音波振動子210aの振動は、ホルダ144を介して基体20に伝達され、超音波振動子210bの振動は基体20に直接伝達される。
【0095】
次に、図8を参照して、振動発生機構200の構成について説明する。図8は、振動発生機構200の構成を示すブロック図である。振動発生機構200は、超音波振動子210a,210bと、超音波振動子210a,210bに駆動電圧を印加する駆動部220と、その駆動電圧を生成する駆動波形生成回路230とで構成される。
【0096】
駆動波形生成回路230は、D/Aコンバータ231と、プリアンプ232と、パワーアンプ233とで構成されている。駆動部220は、アナログスイッチ221を含んで構成されている。駆動波形生成回路230と駆動部220とは、FFC(Flexible Flat Cable)222で接続されている。FFC222には、インダクタンス223が含まれている。駆動部220は、超音波振動子210a,210bに接続されている。
【0097】
駆動波形生成回路230において、D/Aコンバータ231は、超音波振動子210a,210bの振動波形となるデジタル信号をアナログ信号に変換する。D/Aコンバータ231から出力されたアナログ信号は、プリアンプ232によって所定量だけ増幅される。プリアンプ232から出力されたアナログ信号は、パワーアンプ233によって所定量だけ増幅される。パワーアンプ233から出力されたアナログ信号は、FFC222を介して駆動部220のアナログスイッチ221に送られる。アナログスイッチ221に送られたアナログ信号は、さらに所定量だけ増幅されて超音波振動子210a,210bに送られる。以上により、超音波振動子210a,210bは、駆動部220から所定波形の電圧が印加され所定の振動波形で振動する。
【0098】
超音波振動子210a,210bの振動の周波数は、例えば20kHz〜300kHzである。超音波振動子210a,210bの振動の周波数および振幅、並びに正弦波、ノコギリ波、矩形波等の波形は、駆動波形生成回路230により制御される。また、超音波振動子210a,210bが振動するタイミングおよび期間も、駆動波形生成回路230により制御される。
【0099】
振動発生機構200で発生された振動により、保持部142に保持された基体20に外力が加えられる。これにより、基体20の表面に異物が付着している場合、付着した異物を基体20の表面から離れさせて除去できる。また、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0100】
次に、図6に戻って、風圧発生装置146について説明する。風圧発生装置146は、処理室141内にガスを供給するための放出管147を有している。また、風圧発生装置146は、図示しないが、ガスボンベと、ガスの流量を制御するマスフローコントローラとを有している。放出管147は、処理室141内において保持部142よりも底部側に配置されている。
【0101】
放出管147は、先端の放出口147aが保持部142に保持された基体20の表面に対向するように配置されている。また、放出管147の先端部は、例えばエアナイフ形状を有しており、放出口147aに向かって細くなっている。風圧発生装置146により供給されるガスは、保持部142に保持された基体20の表面に向かって、放出口147aから放出される。このとき、放出管147の先端部が細くなっているので、放出口147aから放出されるガスの風圧が高められる。風圧発生装置146により供給されるガスとしては、水や酸素を含まないガスが用いられ、製造装置100で用いられるガス、例えばアルゴンガスや窒素ガスを用いることができる。
【0102】
風圧発生装置146の放出口147aから基体20の表面に向けて放出されるガスの風圧により、基体20に外力が加えられる。これにより、基体20の表面に異物が付着している場合、付着した異物を基体20の表面から離れさせて除去できる。また、基体20の周辺に存在する異物を基体20から遠ざけて、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。なお、放出管147は、放出口147aから放出されるガスによる風圧が異物を基体20から離れさせる方向に作用するように、基体20の表面の法線に対してある程度の角度を有していることが好ましい。
【0103】
さらに、振動発生機構200により振動を発生させるのと並行して、風圧発生装置146により風圧を発生させると、振動による作用に風圧による作用が加わるので、基体20の表面に付着した異物の除去を助長できる。また、振動の作用により基体20から除去された異物を風圧の作用により基体20から遠ざけて、基体20の表面に再び付着するのを抑制できる。
【0104】
続いて、排気装置148について説明する。排気装置148は、処理室141内の雰囲気を外部に排気するための吸気管149とポンプとを有している。吸気管149は、処理室141内において保持部142よりも底部側に配置されている。吸気管149は、先端の吸気口149aが保持部142に保持された基体20の表面に対向するように配置されている。処理室141内の雰囲気は、吸気口149aより吸引され排気される。
【0105】
排気装置148により、基体20の表面から除去された異物や基体20の周辺に存在する異物を処理装置140外へ排出できる。これにより、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0106】
以上のように、処理装置140において、振動発生機構200と風圧発生装置146とは、基体20の表面に付着した異物を除去する除去手段として機能する。基体20に対して、振動発生機構200により発生する振動、および風圧発生装置146により発生する風圧のうち少なくとも一方の単独作用、または両者が複合した作用により、基体20の表面に付着した異物が除去される。また、基体20の表面から除去された異物や基体20の周辺に存在する異物は、風圧の作用により基体20から遠ざけられるとともに、排気装置148により処理室141外へ排出される。
【0107】
ここで、放出管147と吸気管149とは、処理室141内において、搬送レール172の延在方向の一端側に一方が配置され、その他端側に他方が配置されていることが好ましい。また、放出管147と吸気管149とが基体20の表面の法線に対して互いに相反する側にそれぞれ所定の角度を有しており、放出口147aと吸気口149aとが互いに対向するように配置されていることが好ましい。このような構成であれば、放出口147aから矢印Cの向きに放出されたガスが、基体20から除去された異物や基体20周辺の異物とともに矢印Dの向きに吸気口149aから排出されるような流れが形成されるので、効果的に基体20から異物を除去し処理室141外へ排出できる。
【0108】
さらに、保持部142(基体20)が移動する進行方向側に放出口147aが配置され、その反対側に吸気口149aが配置されていることが好ましい。このような構成であれば、基体20の進行方向の先端側からガスが放出され後端側から吸引され排出されるので、より効果的に基体20から異物を除去し処理室141外へ排出できる。
【0109】
なお、処理装置140において、振動発生機構200または風圧発生装置146のどちらか一方を備えていない構成であってもよい。このような構成であっても、振動または風圧のどちらか一方の作用により、基体20の表面に付着した異物を除去することが可能である。また、排気装置148は、処理室141内を減圧排気する装置を兼ねていてもよい。
【0110】
製造装置100では、基体20が成膜装置130に搬送される搬送経路の途中に処理装置140が位置している。これにより、成膜装置130において基体20に成膜を行う直前に、かつその搬送経路上で、基体20の表面に付着した異物の除去を行うことができる。また、成膜装置130において基体20に成膜を行った後に、基体20の表面に付着した異物の除去を行うことも可能である。
【0111】
なお、製造装置100においては、基体20が配される空間を、酸素や水分が排除された雰囲気とすることが好ましい。例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。これにより、基体20上に形成される各層の酸化等による品質劣化が防止される。
【0112】
<有機EL装置の製造方法>
次に、上記の製造装置100を用いた有機EL装置の製造方法を説明する。図9および図10は、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図である。
【0113】
まず、図9(a)に示すように、基体20を形成する。基体20は、基板10上に、駆動用TFT12、各種回路、導通部、層間絶縁層等を含む回路部21を、それぞれ公知の方法を用いて形成することにより得られる。そして、基体20上に、画素電極24とダミーパターン25とを、公知の方法を用いて形成する。
【0114】
次に、図9(b)に示すように、画素電極24とダミーパターン25とが形成された基体20上に、開口部26aを有する親液性制御層26を形成する。続いて、親液性制御層26上に、開口部28aを有する隔壁層28を形成する。なお、基体20と親液性制御層26との間、または親液性制御層26と隔壁層28との間に、互いに隣り合う画素2(図3参照)同士の間の領域に位置するように遮光層を設けてもよい。また、画素電極24および親液性制御層26の表面に親液化処理を施し、隔壁層28表面に撥液化処理を施してもよい。
【0115】
次に、図9(c)に示すように、基体20の画素2の領域に有機機能層30を形成する。有機機能層30の形成は、成膜装置110において、例えばインクジェット法により行う。この工程では、まず正孔輸送層32の材料を塗布した後、乾燥処理および熱処理を行い、正孔輸送層32を形成する。続いて、正孔輸送層32上に発光層34の材料を塗布した後、乾燥処理および熱処理を行い、発光層34を形成する。
【0116】
次に、図9(d)に示すように、基体20上の有機機能層30と隔壁層28の上面および側部壁面とを覆うように陰極36を形成する。本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を透光性が得られる膜厚に成膜して、陰極36を形成する。陰極36の形成は、成膜装置120において、例えばイオンプレーティング法により行う。
【0117】
次に、陰極36上に陰極保護層38を形成するが、その工程の前に、図6に示す処理装置140において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。これは、陰極36の表面に異物が付着していると、陰極保護層38にピンホールが生じその上層に形成される緩衝層42の残留水分等により陰極36や有機機能層30が損傷を受けるおそれがあるためである。
【0118】
図6に示すように、陰極36までが形成された基体20を保持部142で保持し、搬送室170から処理装置140を経て、成膜装置130へと移動させる過程で、処理装置140内において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。
【0119】
基体20(保持部142)を、搬送装置により処理室141内の接続部141a側から接続部141b側へ移動させる。このとき、振動発生機構200により、基体20に振動が加えられる。また、風圧発生装置146の放出口147aからガスが基体20の表面に放出されることにより、基体20に風圧が加えられる。この振動と風圧との作用により、基体20の表面から異物が離れ除去される。さらに、排気装置148の吸気口149aから、除去された異物が処理室141外へ排出される。
【0120】
次に、図10(a)に示すように、基体20の陰極36上に陰極保護層38を形成する。陰極保護層38の形成は、図5に示す成膜装置130において、例えばイオンプレーティング法により行う。本実施形態では、陰極保護層38の材料をSiONとし、膜厚を200nm程度とする。図5に示すように、陰極36までが形成された基体20を保持部142で保持し、成膜室131内を接続部131a(処理装置140)側からスペース131bへ移動させる。
【0121】
このとき成膜室131内は、ガス供給装置136から供給される窒素ガスで満たされることにより、外部からの酸素が遮断されている。これにより、基体20上の有機機能層30の酸化が防止される。また、プラズマ生成部134にアルゴンガスが供給されることにより、アルゴンプラズマが発生する。蒸着源132には、陰極保護層38の材料38a(SiO)が収容されている。アルゴンプラズマが成膜室131内に導入されることにより、蒸着源132に収容されたSiOは加熱されて蒸発する。蒸発したSiOは窒素ガスと結びついてSiONとなり、基体20の表面に堆積する。基体20を移動させながら成膜するので、基体20の表面にSiONの薄膜が略均一に成膜される。
【0122】
ここで、陰極保護層38の膜厚200nmを一括して成膜する場合、成膜室131内のアルゴンプラズマの輻射熱が基体20に加わり蓄積されることで、基体20上の有機機能層30の特性が劣化するおそれがある。このような有機機能層30の特性劣化を避けるため、陰極保護層38を複数回に分けて成膜してもよい。例えば、陰極保護層38を100nmずつ2回に分けて成膜することとし、100nmを成膜した後に冷却し、その後さらに100nm成膜した後に冷却する、というように、成膜工程と冷却工程とを2回ずつ繰り返して行うことが好ましい。
【0123】
また、1回目の成膜および冷却の後に、基体20を処理装置140に移動させて基体20表面の異物の除去を行ってもよい。このようにすれば、陰極保護層38をより欠陥の少ない緻密な層に成膜でき、酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。さらに、陰極保護層38を形成した後に、基体20を搬送室170へ搬送する途中で、処理装置140において、基体20の表面に付着した異物の除去を行ってもよい。
【0124】
次に、図10(b)に示すように、基体20の陰極保護層38上に緩衝層42を形成する。緩衝層42の形成は、印刷装置180において、例えばスクリーン印刷法により行う。陰極保護層38までが形成された基体20上に、スクリーンメッシュに樹脂硬化物で非塗布領域をパターン形成したマスクを接触させてスキージで押し付けることで、緩衝層42の材料を基体20(陰極保護層38)上に転写する。緩衝層42の膜厚は、例えば3μm〜4μm程度とする。この工程は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0125】
次に、基体20の緩衝層42上にガスバリア層44を形成するが、その工程の前に、図6に示す処理装置140において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。これは、緩衝層42の表面に異物が付着していると、ガスバリア層44にピンホールが生じ酸素や水分が浸入して、陰極36や有機機能層30が損傷を受けるおそれがあるためである。この異物の除去は、陰極保護層38を形成する前の異物の除去方法と同様の方法で行う。
【0126】
次に、図10(c)に示すように、基体20の緩衝層42上にガスバリア層44を形成する。ガスバリア層44の形成は、図5に示す成膜装置130において、陰極保護層38を形成する方法と同様の方法で行う。本実施形態では、ガスバリア層44の材料をSiONとし、膜厚を400nm程度とする。
【0127】
ガスバリア層44の成膜においても、陰極保護層38の成膜と同様に有機機能層30の特性劣化を避けるため、例えば、100nmずつ4回に分けて成膜工程と冷却工程とを繰り返し行ってもよい。また、100nmを成膜して冷却した後に、基体20を処理装置140に移動させて基体20表面の異物の除去を行ってもよい。このようにすれば、ガスバリア層44をより欠陥の少ない緻密な層に成膜でき、酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。さらに、ガスバリア層44形成後に、基体20を搬送室170へ搬送する途中で、処理装置140において、基体20の表面に付着した異物の除去を行ってもよい。
【0128】
次に、図3に示すように、基体20のガスバリア層44上に、接着層46と表面保護基板48からなる保護層40を形成する。保護層40の形成は、封止装置190において行う。まず、ガスバリア層44上に接着層46の材料を、例えばスクリーン印刷法やスリットコート法により略均一に塗布する。続いて、接着層46上に表面保護基板48を貼り合わせる。これにより、保護層40が形成される。以上により、有機EL装置1を形成することができる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0130】
(変形例1)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140において、振動発生機構200は超音波振動子210a,210bを含んで構成されていたが、この形態に限定されない。振動発生機構200は、超音波振動子210a,210bの代わりに超音波振動板を有しており、その超音波振動板の振動を基体20に伝達する構成であってもよい。このような構成であっても、同様の効果を得ることができる。
【0131】
(変形例2)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140は、超音波振動子210a,210bを含む振動発生機構200を備えていたが、この形態に限定されない。処理装置140は、振動発生機構200に代わる振動発生機構として振動モータを備えており、その振動モータにより基体20に振動を伝達する構成であってもよい。
【0132】
図11は、処理装置140の変形例を示す図である。図11に示すように、保持部240は、搬送レール172に支持されている。保持部240は、台座143からなり、例えば真空吸着により基体20を保持する。振動モータ250は、処理室141内の保持部240より上部側に取り付けられており、搬送レール172の延在方向に沿って移動しない。振動モータ250は、保持部240の基体20を保持する側とは反対側の面に接触している。振動モータ250は、搬送レール172の延在方向と直交する方向に回転軸を有している。
【0133】
振動モータ250が回転することで発生する振動が保持部240を介して伝達されることにより、基体20に外力が加えられる。振動モータ250は、保持部240が搬送レール172の延在方向に沿って移動すると、進行方向側からその反対側へと相対的に移動するように、振動が伝達される。これにより、基体20の表面に付着した異物を離れさせて除去できる。なお、振動モータ250から伝達される振動の振動数は、振動モータ250の回転数により制御できる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
(変形例3)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140では、保持部142に保持された基体20を搬送レール172の延在方向に沿って移動させたが、この形態に限定されない。基体20が、表面の法線に平行な回転軸を有する回転機構に固定された保持部に保持されていてもよい。
【0135】
図12は、処理装置140の変形例を示す図である。図12に示すように、保持部260は、保持部260が保持する基体20の表面の法線に平行な回転軸を有する回転機構270に固定されている。保持部260は、基体20とともに回転機構270の回転軸を中心に回転する。これにより、基体20に振動を伝達しながら基体20を回転させて、基体20の表面に付着した異物を除去できる。なお、処理装置140がこのような回転機構を備える場合は、成膜装置130が搬送室170に接続されるように配置し、搬送装置により基体20を処理装置140から搬出し成膜装置130に搬入するようにしてもよい。
【0136】
(変形例4)
上記実施形態における製造装置100の構成や各装置の配置は、上述の形態に限定されるものではなく、製造する有機EL装置の構成あるいは有機EL装置の製造方法によって適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】有機EL装置の一例の配線構造を示す図。
【図2】有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図。
【図3】有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る製造装置の概略構成を示す構成図。
【図5】本実施形態に係る製造装置の成膜装置の概略構成を示す構成図。
【図6】本実施形態に係る製造装置の処理装置の概略構成を示す構成図。
【図7】保持部の概略構成を示す図。
【図8】振動発生機構の構成を示すブロック図。
【図9】本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図10】本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図11】処理装置の変形例を示す図。
【図12】処理装置の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0138】
1…有機EL装置、2…画素、3…画素部、4…実発光領域、5…ダミー領域、10…基板、11…スイッチング用TFT、12…駆動用TFT、13…保持容量、14…データ線駆動回路、15…走査線駆動回路、16…走査線、17…信号線、18…電源線、19…検査回路、20…基体、21…回路部、22…駆動電圧導通部、23…駆動制御信号導通部、24…画素電極、25…ダミーパターン、26…親液性制御層、26a…開口部、28…隔壁層、28a…開口部、30…有機機能層、32…正孔輸送層、34…発光層、36…陰極、36a…陰極用配線、38…陰極保護層、38a…材料、40…保護層、42…緩衝層、44…ガスバリア層、46…接着層、48…表面保護基板、100…有機EL装置の製造装置、110…成膜装置、120…成膜装置、130…成膜室、131…成膜室、131a…接続部、131b…スペース、132…蒸着源、134…プラズマ生成部、136…ガス供給装置、138…減圧装置、140…処理装置、141…処理室、141a…接続部、141b…接続部、142…保持部、143…台座、144…ホルダ、146…風圧発生装置、147…放出管、147a…放出口、148…排気装置、149…吸気管、149a…吸気口、150…ストック室、160,170…搬送室、172…搬送レール、180…印刷装置、190…封止装置、200…振動発生機構、210a,210b…超音波振動子、220…駆動部、221…アナログスイッチ、222…FFC、223…インダクタンス、230…駆動波形生成回路、231…D/Aコンバータ、232…プリアンプ、233…パワーアンプ、240…保持部、250…振動モータ、260…保持部、270…回転機構。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造装置および有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層を含む有機機能層を備えた有機エレクトロルミネセンス装置(以下、有機EL装置と呼ぶ)が知られている。有機EL装置は、陽極と陰極と両者の間に位置する有機機能層とからなる有機EL素子を備えている。有機機能層や陰極は大気中に存在する水分と反応しやすく、水と反応することによって特性が劣化する。そのため、有機EL装置において、有機機能層や陰極を水分から保護する保護層を有する構成が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような有機EL装置の製造は、上述の理由から、水分を極力存在させないように減圧雰囲気や不活性ガスの雰囲気の装置内で行われる。また、同じ理由から、有機EL装置の製造では、純水等を用いたウエット洗浄が適用できない。そのため、有機EL装置の製造工程において、有機EL装置の基板に異物等が付着しても、その異物を除去することは困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2007−157606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有機EL装置の製造工程における基板への異物の付着は、発光しない部分(ダークスポット)の発生等による有機EL装置の製造歩留りの低下や、保護層等にピンホールが生じることによる有機EL装置の寿命劣化を招く。したがって、有機EL装置の製造工程において、減圧雰囲気や不活性ガスの雰囲気の装置内で、基板に付着した異物を効果的に除去する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置の製造装置は、基体の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置と、前記少なくとも一つの成膜装置に接続され、前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、成膜装置に接続された処理装置に、基体に外力を加えて基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられている。このため、成膜装置で成膜を行う前および成膜を行った後の少なくともどちらかにおいて、ウエット洗浄を用いることなく基体の表面に付着した異物を除去できる。これにより、有機EL装置の製造歩留りの低下や寿命劣化を防止できる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記除去手段は、振動により前記基体に前記外力を加える振動発生機構を含んでいてもよい。
【0010】
この構成によれば、振動により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記振動発生機構は、超音波振動子または超音波振動板を含んでいてもよい。
【0012】
この構成によれば、超音波振動子または超音波振動板により簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記振動発生機構は、振動モータを含んでいてもよい。
【0014】
この構成によれば、振動モータにより簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記除去手段は、風圧により前記基体に前記外力を加える風圧発生装置を含み、前記風圧発生装置は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出してもよい。
【0016】
この構成によれば、基体の表面に向けて放出されるガスの風圧により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の周辺に存在する異物を遠ざけ、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記処理装置内の雰囲気を吸気口から外部へ排気する排気装置をさらに備え、前記吸気口は、前記基体の表面に対向するように配置されていてもよい。
【0018】
この構成によれば、基体の表面から除去された異物や基体の周辺に存在する異物を処理装置外へ排出できる。これにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0019】
[適用例7]上記適用例に係る有機EL装置の製造装置であって、前記成膜装置に前記基体を搬入および搬出する搬送装置をさらに備え、前記処理装置は、前記基体が前記搬送装置により前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中に配置されていてもよい。
【0020】
この構成によれば、基体を成膜装置に搬入および搬出する搬送経路の途中で基体に付着した異物を除去できる。
【0021】
[適用例8]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、前記成膜装置に接続された処理装置内で前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去工程を備えていることを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、ウエット洗浄を用いることなく基体に付着した異物を除去できる。これにより、有機EL装置の製造歩留りの低下や寿命劣化を防止できる。
【0023】
[適用例9]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、振動により前記基体に前記外力を加えてもよい。
【0024】
この方法によれば、基体に振動を加えることにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体に振動を加えることにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0025】
[適用例10]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記振動は、超音波振動子または超音波振動板を用いて発生させてもよい。
【0026】
この方法によれば、超音波振動子または超音波振動板により簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0027】
[適用例11]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記振動は、振動モータを用いて発生させてもよい。
【0028】
この方法によれば、振動モータにより簡易に所望の周波数で微弱振動を発生できる。
【0029】
[適用例12]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、風圧により前記基体に前記外力を加え、前記風圧は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することにより発生させてもよい。
【0030】
この方法によれば、基体の表面に向けて放出されるガスの風圧により基体に外力が加えられる。これにより、基体の表面に付着した異物を基体から離れさせて除去できる。また、基体の周辺に存在する異物を遠ざけ、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0031】
[適用例13]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程では、前記基体の表面に対向する位置に配置された吸気口から前記処理装置内の雰囲気を外部へ排気してもよい。
【0032】
この方法によれば、基体の表面から除去された異物や基体の周辺に存在する異物を処理装置外へ排出できる。これにより、基体の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0033】
[適用例14]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記除去工程を、前記基体が前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中で行ってもよい。
【0034】
この方法によれば、基体を成膜装置に搬入および搬出する搬送経路の途中で基体に付着した異物を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する各図面において、構成をわかりやすく示すため、各構成要素の厚さや寸法の比率等は適宜異ならせてある。
【0036】
<有機EL装置>
まず、本実施形態に係る製造装置を用いて製造される有機EL装置の一例を説明する。図1は、有機EL装置の一例の配線構造を示す図である。図2は、有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図である。図3は、有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図2のA−A’線に沿った部分断面図である。なお、それぞれの図面において、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0037】
図1に示すように、有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。有機EL装置1は、複数の走査線16と、各走査線16に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線17と、各信号線17に並列に延びる複数の電源線18とがそれぞれ配線された構成を有している。有機EL装置1において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域が画素2の領域である。
【0038】
信号線17には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスタおよびレベルシフタを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0039】
画素2の領域のそれぞれには、走査線16を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT11と、スイッチング用TFT11を介して信号線17から供給される画素信号を保持する保持容量13と、保持容量13によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT12と、駆動用TFT12を介して電源線18に電気的に接続したときに電源線18から駆動電流が流れ込む画素電極24と、画素電極24と陰極36との間に位置する有機機能層30とが設けられている。画素電極24と有機機能層30と陰極36とにより、有機EL素子が構成される。このような有機EL素子において、画素電極24は陽極として機能する。
【0040】
有機EL装置1では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、そのときの信号線17の電位が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12のチャネルを介して電源線18から画素電極24に電流が流れ、さらに有機機能層30を介して陰極36に電流が流れる。有機機能層30は、これを流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0041】
次に、有機EL装置1の概略構成を説明する。有機EL装置1は、電気絶縁性を有する基板10と、駆動用TFT12に接続された画素電極24が基板10上にマトリクス状に配置されてなる画素電極域(図示しない)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極24に接続される電源線18と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視略矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)と、を備えたアクティブマトリクス型である。
【0042】
図2に示すように、画素部3は、中央部分の実発光領域4(二点鎖線枠内)と、実発光領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。実発光領域4には、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの表示に寄与する画素2が、A−A’線方向およびA−A’線と直交する方向にそれぞれ離間してマトリクス状に配置されている。
【0043】
画素2は有機EL装置1の表示の最小単位であり、画素2の領域のそれぞれには画素電極24が配置されている。画素2は、R、G、Bのそれぞれに発光する有機EL素子により得られた光を表示光として出力するようになっている。有機EL装置1では、画素2(R),2(G),2(B)から一つの画素群が構成され、それぞれの画素群において画素2(R),2(G),2(B)のそれぞれの表示の輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0044】
実発光領域4の図2中両側には、走査線駆動回路15が配置されている。また、実発光領域4の図2中上側には、検査回路19が配置されている。検査回路19は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路である。検査回路19は、例えば、検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示しない)を備え、製造途中や出荷時の有機EL装置1の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されている。なお、検査回路19も、ダミー領域5の下側に配置されている。
【0045】
走査線駆動回路15および検査回路19には、所定の電源部から駆動電圧導通部22(図3参照)および駆動電圧導通部(図示しない)を介して、駆動電圧が印加される。また、走査線駆動回路15および検査回路19への駆動制御信号および駆動電圧は、有機EL装置1の作動制御を行う所定のメインドライバ等から駆動制御信号導通部23(図3参照)および駆動電圧導通部(図示しない)を介して送信および印加される。基板10の外周部には、陰極用配線36aが配置されている。
【0046】
図3に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、回路部21と、画素電極24と有機機能層30と陰極36とで構成される多数の有機EL素子と、これらの有機EL素子を覆う陰極保護層38と緩衝層42とガスバリア層44と、を備えている。ここでは、有機EL装置1が、有機機能層30から発した光がガスバリア層44側に射出されるトップエミッション方式である場合を例に取り説明する。
【0047】
基板10の材料は、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれであってもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えばSiO2等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0048】
回路部21は、基板10上に形成されている。回路部21は、画素電極24を駆動するための駆動用TFT12と、各種回路と、導通部と、層間絶縁層等で構成されている。以下の説明では、基板10と、基板10上に形成された回路部21とを含めて、基体20と称する。
【0049】
画素電極24は、基体20上の実発光領域4内の画素2の領域毎に設けられている。画素電極24の材料としては、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性および不透光性の導電材料を適宜用いることができる。画素電極24の材料は、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)である。なお、画素電極24は、反射性をより高めるために、例えば反射層/無機絶縁層/透光性陽極のような多層構造を有していてもよい。
【0050】
基体20上のダミー領域5には、ダミーパターン25が設けられている。ダミーパターン25は、島状に配置されており、画素電極24と略同形状を有している。ダミーパターン25は、実発光に寄与せず、駆動用TFT12に接続されていない。
【0051】
基体20上の画素電極24とダミーパターン25との上には、親液性制御層26が形成されている。親液性制御層26は、それぞれの画素2に対応して開口部26aを複数有している。親液性制御層26は、開口部26aの周囲に沿って画素電極24の周縁部に所定幅で重なる部分を有している。親液性制御層26は、ダミーパターン25を覆っている。親液性制御層26は、例えばSiO2等の無機材料からなる。
【0052】
親液性制御層26上には、画素2の領域を区画する隔壁層28が形成されている。隔壁層28は、親液性制御層26の開口部26aに重なる開口部28aを有している。開口部28aは、開口部26aよりも一回り大きい。開口部28aは、ダミーパターン25上にも設けられている。隔壁層28は、有機樹脂からなり、例えばアクリル樹脂からなる。なお、基体20と親液性制御層26との間、または親液性制御層26と隔壁層28との間に、互いに隣り合う画素2同士の間の領域に位置するように遮光層が設けられていてもよい。
【0053】
有機機能層30は、隔壁層28により区画された画素2の領域に形成されており、画素電極24上に位置している。有機機能層30は、ダミーパターン25上の隔壁層28により区画された領域にも形成されている。有機機能層30は、順に積層された正孔輸送層32と発光層34とで構成されている。有機機能層30では、正孔輸送層32から注入される正孔と、陰極36から注入される電子とが発光層34で再結合することにより、R、G、Bのいずれかの発光が得られる。なお、有機機能層30は、発光層34の上に積層された電子注入層をさらに有していてもよいし、発光層34を含む4層以上の機能層で構成されていてもよい。
【0054】
正孔輸送層32の材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体等、またはそれらのドーピング体等を用いることができる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液等を用いることができる。
【0055】
発光層34の材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)等のポリシラン系等が好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いてもよい。上述した高分子材料に代えて、公知の低分子材料を用いてもよい。
【0056】
陰極36は、実発光領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を有している。陰極36は、有機機能層30と、隔壁層28の上面および側部壁面とを覆っている。陰極36は、基体20の外周部で陰極用配線36a(図2参照)に接続されている。この陰極用配線36aにはフレキシブル基板(図示しない)が接続されており、これによって、陰極36は陰極用配線36aを介してフレキシブル基板上の駆動IC(図示しない)に接続されている。
【0057】
陰極36は、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、透光性導電材料からなる。透光性導電材料としては、ITOが好適に用いられるが、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透光性導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO(登録商標))等を用いてもよい。また、陰極36の材料として、電子注入効果の大きい材料、例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、またはこれらの金属化合物も好適に用いられる。金属化合物としては、例えば、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体を用いることができる。なお、これらの材料だけでは電気抵抗が大きく電極として機能しないため、アルミニウムや金、銀、銅等の金属層やITO、酸化錫等の金属酸化物導電層との積層体と組み合わせて用いてもよい。本実施形態では、陰極36の材料として、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透光性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0058】
陰極36上には、陰極36を覆う陰極保護層38が形成されている。陰極保護層38は、製造工程において、上層に位置する緩衝層42の残留水分等により陰極36が損傷を受けるのを防止するためのものである。また、陰極保護層38は、緩衝層42の形成時の平坦性、消泡性、密着性等の向上や側面端部の低角度化も目的とする。陰極保護層38の材料としては、透光性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を考慮して、緻密かつ高弾性率の珪素窒化物や珪素窒酸化物等の窒素を含む珪素化合物等が好ましい。陰極保護層38の材料の弾性率は、100GPa以上が好ましい。陰極保護層38の膜厚は、50nm〜200nm程度が好ましい。本実施形態では、陰極保護層38の材料をSiONとし、膜厚を200nm程度とする。陰極保護層38の形成方法としては、例えば、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が適用できる。
【0059】
陰極保護層38上には、陰極36よりも広い範囲に緩衝層42が設けられている。緩衝層42は、陰極保護層38を終端部まで全て覆う必要はなく、画素部3(図2参照)上に形成された陰極36を覆う場合、または基体20の外周部の陰極用配線36a(図2参照)上に形成された陰極36も覆う場合のいずれであってもよい。
【0060】
緩衝層42は、隔壁層28の形状が反映された陰極36表面の凹凸形状の凹部を埋めるように配置されており、略平坦に形成された上面を有している。緩衝層42は、基体20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、隔壁層28からの陰極36の剥離を防止する機能を有している。また、緩衝層42の上面が略平坦化されるので、緩衝層42上に位置し硬い被膜からなるガスバリア層44も平坦化される。これにより、ガスバリア層44において、応力が集中する部位がなくなるので、クラックや剥離、欠損の発生を防止できる。
【0061】
次に、緩衝層42の材料(塗布材料)について説明する。硬化前の原料主成分としては、減圧雰囲気下で印刷形成するために、流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分のない、全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、エポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが好適に用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。このような材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキレート等があり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0062】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透光性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として、1,6−ヘキサンジオール等分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで、低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60℃〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
【0063】
さらに、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として、芳香続アミンやアルコール類、アミノフェノール等の比較的分子量の高いものを添加することで、低温かつ短時間での硬化が可能となる。硬化時間を短縮するためによく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤は、着色や急激な硬化収縮を発生するため好ましくないが、ガスバリア層44との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物等の補水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子等の添加剤が混入されていてもよい。
【0064】
これらの原料毎の粘度は、1000mPa・s(室温:25℃)以上が好ましい。塗布直後に発光層34へ浸透して、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を発生させないためである。また、これらの原料を混合した緩衝層材料の粘度としては、500mPa・s〜20000mPa・sが好ましく、2000mPa・s〜10000mPa・s(室温)がより好ましい。
【0065】
また、緩衝層42の膜厚としては、3μm〜10μm程度が好ましい。緩衝層42の膜厚が3μm以上であれば、異物が混入した場合であってもガスバリア層44の欠陥発生を防止することができるからである。また、硬化後の特性としては、緩衝層42の弾性率が1GPa〜10GPaであることが好ましい。10GPa以上では、隔壁層28上を平坦化した際の応力を吸収することができず、1GPa以下では耐摩耗性や耐熱性等が不足するためである。
【0066】
緩衝層42上には、緩衝層42と陰極保護層38とを覆うガスバリア層44が形成されている。ガスバリア層44は、酸素や水分が浸入することによる陰極36や有機機能層30の劣化を防止するためのものである。ガスバリア層44の材料としては、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物等が用いられる。ガスバリア層44は、水蒸気等のガスを遮断するため、緻密で欠陥のない被膜であることが好ましい。したがって、ガスバリア層44の形成方法としては、緻密な膜を形成できるECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が好適である。
【0067】
ガスバリア層44の弾性率は、100GPa以上、より具体的には200Pa〜250Pa程度が好ましい。なお、上述した陰極保護層38と同一の弾性率を有する材料で形成してもよい。また、ガスバリア層44の膜厚は、200nm〜600nm程度が好ましい。200nm未満であると、異物に対する被覆性が不足し部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、600nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
【0068】
さらに、ガスバリア層44は、積層構造としてもよいし、その組成を不均一にしてその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよい。また、有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、ガスバリア層44は透光性であることが求められる。したがって、ガスバリア層44は、その材質や膜厚を適宜に調整することにより、可視光領域における光線透過率が例えば80%以上であることが好ましい。本実施形態では、ガスバリア層44の材料をSiONとし、膜厚を400nm程度とする。
【0069】
ガスバリア層44上には、ガスバリア層44を覆う保護層40が設けらてれる。保護層40は、ガスバリア層44側に設けられた接着層46と、接着層46に貼り合わされた表面保護基板48とからなる。接着層46は、ガスバリア層44上に表面保護基板48を固定させるとともに、外部からの機械的衝撃に対して有機機能層30やガスバリア層44を保護する緩衝機能を有している。接着層46は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系等の樹脂で、表面保護基板48より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されている。接着層46の材料としては、透光性樹脂材料が好ましい。また、低温で硬化させるため硬化剤を添加する2液混合型の材料であってもよい。
【0070】
なお、接着層46には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましい。このようにすれば、形成される接着層46とガスバリア層44との密着性がより良好になり、したがって、機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。また、ガスバリア層44が珪素化合物で形成されている場合等では、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層44との密着性を向上させることができ、したがって、ガスバリア層44のガスバリア性を高めることができる。
【0071】
表面保護基板48は、接着層46上に設けられ、保護層40の表面側に位置している。表面保護基板48は、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性等の機能の少なくとも一つを有している。表面保護基板48の材質としては、ガラス、DLC(ダイアモンドライクカーボン)層、透明プラスチック、透明プラスチックフィルム等が用いられる。プラスチック材料としては、例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が用いられる。表面保護基板48には、紫外線遮断/吸収層や光反射防止層、放熱層、レンズ、色波長変換層やミラー等の光学構造が設けられていてもよい。また、カラーフィルタ機能が設けられていてもよい。なお、有機EL装置1はトップエミッション方式であるため、接着層46および表面保護基板48には透光性材料が用いられる。
【0072】
表面保護基板48は、耐圧性、耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性等の機能を有しているので、有機機能層30、陰極36、ガスバリア層44を保護することができる。また、接着層46は、機械的衝撃に対して緩衝機能を有しているので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層44や、その下層に位置する陰極36、有機機能層30への機械的衝撃を緩和することができる。したがって、ガスバリア層44上に保護層40を設けることにより、有機EL素子の長寿命化が図られるとともに、機械的衝撃による有機EL素子の機能劣化を防止することができる。
【0073】
なお、有機EL装置1は、ボトムエミッション方式であってもよい。有機EL装置1がボトムエミッション方式である場合には、基板10側から発光光を取り出す構成であるので、基板10の材料としては、透光性または半透光性のものが用いられ、ガラス基板が好適である。また、画素電極24も透光性材料が用いられる。一方、陰極36、接着層46、および表面保護基板48は、いずれも透光性の材料でなくてもよい。
【0074】
<有機EL装置の製造装置>
次に、本実施形態に係る有機EL装置の製造装置を説明する。図4は、本実施形態に係る製造装置の概略構成を示す構成図である。図5は、本実施形態に係る製造装置の成膜装置の概略構成を示す構成図である。図6は、本実施形態に係る製造装置の処理装置の概略構成を示す構成図である。
【0075】
本実施形態に係る有機EL装置の製造装置100は、図4に示すように、成膜装置110と成膜装置120と成膜装置130と、処理装置140と、ストック室150と、搬送室160,170と、印刷装置180と、封止装置190と、を備えている。
【0076】
成膜装置110と成膜装置120とストック室150とは、搬送室160の周囲に配置されており、それぞれが搬送室160に接続されている。処理装置140と印刷装置180と封止装置190とは、搬送室170の周囲に配置されており、それぞれが搬送室170に接続されている。成膜装置130は、処理装置140に接続されている。すなわち、成膜装置130は、処理装置140を介して、搬送室170に接続されている。また、搬送室160と搬送室170とは、互いに接続されている。
【0077】
製造装置100では、製造装置100内への基体20の搬出、搬入をストック室150で行う。搬送室160,170には、図示しないが、例えばロボットアームやラック・アンド・ピニオン機構、搬送レール172(図5参照)等を含む搬送装置が備えられている。この搬送装置により、成膜装置110と成膜装置120とストック室150と搬送室160との間、および処理装置140と印刷装置180と封止装置190と搬送室170との間で、基体20の搬出、搬入、またはそれぞれの内部での移動を行う。また、この搬送装置により、必要に応じて基体20の向きを変えることが可能である。
【0078】
成膜装置110は、有機機能層30(正孔輸送層32、発光層34)を成膜する装置である。成膜装置110は、例えば、インクジェット法等により、有機機能層30の材料の液滴を吐出する液滴吐出機構を備えている。なお、成膜装置110は、スピンコート法により、有機機能層30の材料の液滴を塗布するスピンコート機構を備えていてもよい。また、有機機能層30の材料として低分子材料を用いる場合は、成膜装置110は、真空蒸着法により有機機能層30を成膜する蒸着装置であってもよい。
【0079】
成膜装置120は、陰極36を成膜する装置である。成膜装置120は、例えば、イオンプレーティング法により成膜を行うイオンプレーティング装置である。成膜装置120は、真空蒸着法により成膜を行う蒸着装置であってもよい。なお、成膜装置110および成膜装置120は、内部が水、酸素のない雰囲気、例えば窒素雰囲気やアルゴン雰囲気であることが好ましい。
【0080】
成膜装置130は、陰極保護層38とガスバリア層44とを成膜する装置である。成膜装置130は、例えば、イオンプレーティング法により成膜を行うイオンプレーティング装置である。なお、成膜装置130は、プラズマCVD装置またはECRスパッタ装置であってもよい。成膜装置130の構成については後述する。
【0081】
処理装置140は、陰極保護層38を成膜する工程、あるいはガスバリア層44を成膜する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、基体20の表面に付着した異物の除去を行う装置である。処理装置140の構成については後述する。
【0082】
印刷装置180は、陰極保護層38上に緩衝層42を形成する装置である。印刷装置180は、例えば、基体20を保持するステージと、所定のパターンを印刷するためのスクリーンメッシュと、スクリーンメッシュ上の印刷材料を基体20に転写するためのスキージとを有するスクリーン印刷装置を備えている。
【0083】
封止装置190は、ガスバリア層44上に保護層40を形成する装置である。封止装置190は、例えば、スクリーン印刷装置を備えている。
【0084】
次に、成膜装置130の構成について、成膜装置130がイオンプレーティング装置である場合を例に取り説明する。
【0085】
図5に示すように、成膜装置130は、成膜室131と、蒸着源132と、保持部142と、プラズマ生成部134と、ガス供給装置136と、減圧装置138とを備えている。成膜装置130は、成膜室131の側部に位置する接続部131aで、処理装置140に接続されている。成膜装置130は、成膜室131の側部の接続部131aとは反対側に、スペース131bを有している。
【0086】
成膜室131内の上部側に位置する搬送レール172は、搬送装置の一部であり、搬送室170から処理装置140を経て接続部131aを通りスペース131bに至るまで延在している。蒸着源132は、成膜室131内の底部側に位置している。蒸着源132には陰極保護層38の材料38a(またはガスバリア層44の材料)が収容される。
【0087】
保持部142は成膜室131内の上部側に位置しており、台座143(図7参照)を貫通する搬送レール172に支持されている。保持部142は、基体20の成膜される側の表面が蒸着源132に対向するように、基体20を保持する。保持部142は、搬送レール172の延在方向に沿って、基体20とともに図の矢印の向き、および矢印とは反対の向きに移動可能である。本実施形態では、保持部142は、成膜装置130における成膜時、および処理装置140における異物除去時に共通して使用される。なお、保持部142の構成については後述する。
【0088】
プラズマ生成部134には、例えばアルゴンガスが供給される。ガス供給装置136は、例えば窒素ガスを成膜室131内に供給する。減圧装置138は、成膜室131内を排気して減圧雰囲気にする。
【0089】
成膜装置130では、ガス供給装置136から供給される窒素ガスで成膜室131内が満たされることにより、外部からの酸素が遮断される。これにより、基体20上の有機機能層30の酸化が防止される。また、プラズマ生成部134にアルゴンガスが供給されることにより、アルゴンプラズマが発生する。このアルゴンプラズマが成膜室131内に導入されることにより、蒸着源132に収容された陰極保護層38の材料38aは加熱されて蒸発する。材料38aがSiOである場合、蒸発したSiOは窒素ガスと結びついてSiONとなり、基体20の表面に堆積する。このとき、保持部142が基体20とともに矢印の方向に移動するので、基体20の表面にSiONの薄膜が略均一に成膜される。
【0090】
次に、処理装置140について、図6を参照して説明する。処理装置140は、処理室141と、保持部142と、除去手段としての振動発生機構200(図8参照)と風圧発生装置146と、排気装置148とを備えている。処理装置140は、処理室141の一方の側部に位置する接続部141aで搬送室170に接続されている。また、処理室141の側部の接続部141aとは反対側に位置する接続部141bは、成膜室131の接続部131aに連通している。これにより、処理装置140は成膜装置130に接続されている。処理室141の上部に位置する搬送レール172は、搬送室170から成膜装置130まで延在している。すなわち、処理装置140は、搬送装置により基体20が成膜装置130に搬送される搬送経路の途中に位置している。
【0091】
保持部142は、処理室141内の上部側に位置しており、基体20の成膜される側の表面が処理室141内の底部側に対向するように、基体20を保持する。保持部142は、搬送レール172に支持され、搬送レール172の延在方向に沿って、基体20とともに図の矢印の向き、および矢印とは反対の向きに移動可能である。
【0092】
次に、保持部142の構成について、図7を参照して説明する。図7は、保持部142の概略構成を示す図である。詳しくは、図7(a)は保持部142の模式平面図であり、図7(b)は図7(a)のB−B’線に沿った模式断面図である。なお、図7(a)は、図6における保持部142を基体20の側からみた平面を示しており、図7(b)は、図6における保持部142の上下を反転した状態を示している。
【0093】
図7に示すように、保持部142は、台座143と、ホルダ144と、振動発生機構200の一部としての超音波振動子210a,210bとを有している。台座143は、搬送レール172(図6参照)に支持される。ホルダ144は、台座143上に固定されている。ホルダ144は、中央が開口した額縁形状を有しており、基体20の4辺周辺の底面部および側面部を支持する。ホルダ144は、例えば真空吸着により、基体20を台座143上に保持する。
【0094】
超音波振動子210a,210bは、台座143上の異なる位置に配置されている。超音波振動子210aは、ホルダ144の4辺のそれぞれの略中央部に取り付けられている。また、超音波振動子210bは、台座143の略中央部において基体20の底面に接触するように取り付けられている。超音波振動子210aの振動は、ホルダ144を介して基体20に伝達され、超音波振動子210bの振動は基体20に直接伝達される。
【0095】
次に、図8を参照して、振動発生機構200の構成について説明する。図8は、振動発生機構200の構成を示すブロック図である。振動発生機構200は、超音波振動子210a,210bと、超音波振動子210a,210bに駆動電圧を印加する駆動部220と、その駆動電圧を生成する駆動波形生成回路230とで構成される。
【0096】
駆動波形生成回路230は、D/Aコンバータ231と、プリアンプ232と、パワーアンプ233とで構成されている。駆動部220は、アナログスイッチ221を含んで構成されている。駆動波形生成回路230と駆動部220とは、FFC(Flexible Flat Cable)222で接続されている。FFC222には、インダクタンス223が含まれている。駆動部220は、超音波振動子210a,210bに接続されている。
【0097】
駆動波形生成回路230において、D/Aコンバータ231は、超音波振動子210a,210bの振動波形となるデジタル信号をアナログ信号に変換する。D/Aコンバータ231から出力されたアナログ信号は、プリアンプ232によって所定量だけ増幅される。プリアンプ232から出力されたアナログ信号は、パワーアンプ233によって所定量だけ増幅される。パワーアンプ233から出力されたアナログ信号は、FFC222を介して駆動部220のアナログスイッチ221に送られる。アナログスイッチ221に送られたアナログ信号は、さらに所定量だけ増幅されて超音波振動子210a,210bに送られる。以上により、超音波振動子210a,210bは、駆動部220から所定波形の電圧が印加され所定の振動波形で振動する。
【0098】
超音波振動子210a,210bの振動の周波数は、例えば20kHz〜300kHzである。超音波振動子210a,210bの振動の周波数および振幅、並びに正弦波、ノコギリ波、矩形波等の波形は、駆動波形生成回路230により制御される。また、超音波振動子210a,210bが振動するタイミングおよび期間も、駆動波形生成回路230により制御される。
【0099】
振動発生機構200で発生された振動により、保持部142に保持された基体20に外力が加えられる。これにより、基体20の表面に異物が付着している場合、付着した異物を基体20の表面から離れさせて除去できる。また、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0100】
次に、図6に戻って、風圧発生装置146について説明する。風圧発生装置146は、処理室141内にガスを供給するための放出管147を有している。また、風圧発生装置146は、図示しないが、ガスボンベと、ガスの流量を制御するマスフローコントローラとを有している。放出管147は、処理室141内において保持部142よりも底部側に配置されている。
【0101】
放出管147は、先端の放出口147aが保持部142に保持された基体20の表面に対向するように配置されている。また、放出管147の先端部は、例えばエアナイフ形状を有しており、放出口147aに向かって細くなっている。風圧発生装置146により供給されるガスは、保持部142に保持された基体20の表面に向かって、放出口147aから放出される。このとき、放出管147の先端部が細くなっているので、放出口147aから放出されるガスの風圧が高められる。風圧発生装置146により供給されるガスとしては、水や酸素を含まないガスが用いられ、製造装置100で用いられるガス、例えばアルゴンガスや窒素ガスを用いることができる。
【0102】
風圧発生装置146の放出口147aから基体20の表面に向けて放出されるガスの風圧により、基体20に外力が加えられる。これにより、基体20の表面に異物が付着している場合、付着した異物を基体20の表面から離れさせて除去できる。また、基体20の周辺に存在する異物を基体20から遠ざけて、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。なお、放出管147は、放出口147aから放出されるガスによる風圧が異物を基体20から離れさせる方向に作用するように、基体20の表面の法線に対してある程度の角度を有していることが好ましい。
【0103】
さらに、振動発生機構200により振動を発生させるのと並行して、風圧発生装置146により風圧を発生させると、振動による作用に風圧による作用が加わるので、基体20の表面に付着した異物の除去を助長できる。また、振動の作用により基体20から除去された異物を風圧の作用により基体20から遠ざけて、基体20の表面に再び付着するのを抑制できる。
【0104】
続いて、排気装置148について説明する。排気装置148は、処理室141内の雰囲気を外部に排気するための吸気管149とポンプとを有している。吸気管149は、処理室141内において保持部142よりも底部側に配置されている。吸気管149は、先端の吸気口149aが保持部142に保持された基体20の表面に対向するように配置されている。処理室141内の雰囲気は、吸気口149aより吸引され排気される。
【0105】
排気装置148により、基体20の表面から除去された異物や基体20の周辺に存在する異物を処理装置140外へ排出できる。これにより、基体20の表面に新たに異物が付着するのを抑制できる。
【0106】
以上のように、処理装置140において、振動発生機構200と風圧発生装置146とは、基体20の表面に付着した異物を除去する除去手段として機能する。基体20に対して、振動発生機構200により発生する振動、および風圧発生装置146により発生する風圧のうち少なくとも一方の単独作用、または両者が複合した作用により、基体20の表面に付着した異物が除去される。また、基体20の表面から除去された異物や基体20の周辺に存在する異物は、風圧の作用により基体20から遠ざけられるとともに、排気装置148により処理室141外へ排出される。
【0107】
ここで、放出管147と吸気管149とは、処理室141内において、搬送レール172の延在方向の一端側に一方が配置され、その他端側に他方が配置されていることが好ましい。また、放出管147と吸気管149とが基体20の表面の法線に対して互いに相反する側にそれぞれ所定の角度を有しており、放出口147aと吸気口149aとが互いに対向するように配置されていることが好ましい。このような構成であれば、放出口147aから矢印Cの向きに放出されたガスが、基体20から除去された異物や基体20周辺の異物とともに矢印Dの向きに吸気口149aから排出されるような流れが形成されるので、効果的に基体20から異物を除去し処理室141外へ排出できる。
【0108】
さらに、保持部142(基体20)が移動する進行方向側に放出口147aが配置され、その反対側に吸気口149aが配置されていることが好ましい。このような構成であれば、基体20の進行方向の先端側からガスが放出され後端側から吸引され排出されるので、より効果的に基体20から異物を除去し処理室141外へ排出できる。
【0109】
なお、処理装置140において、振動発生機構200または風圧発生装置146のどちらか一方を備えていない構成であってもよい。このような構成であっても、振動または風圧のどちらか一方の作用により、基体20の表面に付着した異物を除去することが可能である。また、排気装置148は、処理室141内を減圧排気する装置を兼ねていてもよい。
【0110】
製造装置100では、基体20が成膜装置130に搬送される搬送経路の途中に処理装置140が位置している。これにより、成膜装置130において基体20に成膜を行う直前に、かつその搬送経路上で、基体20の表面に付着した異物の除去を行うことができる。また、成膜装置130において基体20に成膜を行った後に、基体20の表面に付着した異物の除去を行うことも可能である。
【0111】
なお、製造装置100においては、基体20が配される空間を、酸素や水分が排除された雰囲気とすることが好ましい。例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。これにより、基体20上に形成される各層の酸化等による品質劣化が防止される。
【0112】
<有機EL装置の製造方法>
次に、上記の製造装置100を用いた有機EL装置の製造方法を説明する。図9および図10は、本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図である。
【0113】
まず、図9(a)に示すように、基体20を形成する。基体20は、基板10上に、駆動用TFT12、各種回路、導通部、層間絶縁層等を含む回路部21を、それぞれ公知の方法を用いて形成することにより得られる。そして、基体20上に、画素電極24とダミーパターン25とを、公知の方法を用いて形成する。
【0114】
次に、図9(b)に示すように、画素電極24とダミーパターン25とが形成された基体20上に、開口部26aを有する親液性制御層26を形成する。続いて、親液性制御層26上に、開口部28aを有する隔壁層28を形成する。なお、基体20と親液性制御層26との間、または親液性制御層26と隔壁層28との間に、互いに隣り合う画素2(図3参照)同士の間の領域に位置するように遮光層を設けてもよい。また、画素電極24および親液性制御層26の表面に親液化処理を施し、隔壁層28表面に撥液化処理を施してもよい。
【0115】
次に、図9(c)に示すように、基体20の画素2の領域に有機機能層30を形成する。有機機能層30の形成は、成膜装置110において、例えばインクジェット法により行う。この工程では、まず正孔輸送層32の材料を塗布した後、乾燥処理および熱処理を行い、正孔輸送層32を形成する。続いて、正孔輸送層32上に発光層34の材料を塗布した後、乾燥処理および熱処理を行い、発光層34を形成する。
【0116】
次に、図9(d)に示すように、基体20上の有機機能層30と隔壁層28の上面および側部壁面とを覆うように陰極36を形成する。本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を透光性が得られる膜厚に成膜して、陰極36を形成する。陰極36の形成は、成膜装置120において、例えばイオンプレーティング法により行う。
【0117】
次に、陰極36上に陰極保護層38を形成するが、その工程の前に、図6に示す処理装置140において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。これは、陰極36の表面に異物が付着していると、陰極保護層38にピンホールが生じその上層に形成される緩衝層42の残留水分等により陰極36や有機機能層30が損傷を受けるおそれがあるためである。
【0118】
図6に示すように、陰極36までが形成された基体20を保持部142で保持し、搬送室170から処理装置140を経て、成膜装置130へと移動させる過程で、処理装置140内において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。
【0119】
基体20(保持部142)を、搬送装置により処理室141内の接続部141a側から接続部141b側へ移動させる。このとき、振動発生機構200により、基体20に振動が加えられる。また、風圧発生装置146の放出口147aからガスが基体20の表面に放出されることにより、基体20に風圧が加えられる。この振動と風圧との作用により、基体20の表面から異物が離れ除去される。さらに、排気装置148の吸気口149aから、除去された異物が処理室141外へ排出される。
【0120】
次に、図10(a)に示すように、基体20の陰極36上に陰極保護層38を形成する。陰極保護層38の形成は、図5に示す成膜装置130において、例えばイオンプレーティング法により行う。本実施形態では、陰極保護層38の材料をSiONとし、膜厚を200nm程度とする。図5に示すように、陰極36までが形成された基体20を保持部142で保持し、成膜室131内を接続部131a(処理装置140)側からスペース131bへ移動させる。
【0121】
このとき成膜室131内は、ガス供給装置136から供給される窒素ガスで満たされることにより、外部からの酸素が遮断されている。これにより、基体20上の有機機能層30の酸化が防止される。また、プラズマ生成部134にアルゴンガスが供給されることにより、アルゴンプラズマが発生する。蒸着源132には、陰極保護層38の材料38a(SiO)が収容されている。アルゴンプラズマが成膜室131内に導入されることにより、蒸着源132に収容されたSiOは加熱されて蒸発する。蒸発したSiOは窒素ガスと結びついてSiONとなり、基体20の表面に堆積する。基体20を移動させながら成膜するので、基体20の表面にSiONの薄膜が略均一に成膜される。
【0122】
ここで、陰極保護層38の膜厚200nmを一括して成膜する場合、成膜室131内のアルゴンプラズマの輻射熱が基体20に加わり蓄積されることで、基体20上の有機機能層30の特性が劣化するおそれがある。このような有機機能層30の特性劣化を避けるため、陰極保護層38を複数回に分けて成膜してもよい。例えば、陰極保護層38を100nmずつ2回に分けて成膜することとし、100nmを成膜した後に冷却し、その後さらに100nm成膜した後に冷却する、というように、成膜工程と冷却工程とを2回ずつ繰り返して行うことが好ましい。
【0123】
また、1回目の成膜および冷却の後に、基体20を処理装置140に移動させて基体20表面の異物の除去を行ってもよい。このようにすれば、陰極保護層38をより欠陥の少ない緻密な層に成膜でき、酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。さらに、陰極保護層38を形成した後に、基体20を搬送室170へ搬送する途中で、処理装置140において、基体20の表面に付着した異物の除去を行ってもよい。
【0124】
次に、図10(b)に示すように、基体20の陰極保護層38上に緩衝層42を形成する。緩衝層42の形成は、印刷装置180において、例えばスクリーン印刷法により行う。陰極保護層38までが形成された基体20上に、スクリーンメッシュに樹脂硬化物で非塗布領域をパターン形成したマスクを接触させてスキージで押し付けることで、緩衝層42の材料を基体20(陰極保護層38)上に転写する。緩衝層42の膜厚は、例えば3μm〜4μm程度とする。この工程は、減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
【0125】
次に、基体20の緩衝層42上にガスバリア層44を形成するが、その工程の前に、図6に示す処理装置140において、基体20表面に付着した異物の除去を行う。これは、緩衝層42の表面に異物が付着していると、ガスバリア層44にピンホールが生じ酸素や水分が浸入して、陰極36や有機機能層30が損傷を受けるおそれがあるためである。この異物の除去は、陰極保護層38を形成する前の異物の除去方法と同様の方法で行う。
【0126】
次に、図10(c)に示すように、基体20の緩衝層42上にガスバリア層44を形成する。ガスバリア層44の形成は、図5に示す成膜装置130において、陰極保護層38を形成する方法と同様の方法で行う。本実施形態では、ガスバリア層44の材料をSiONとし、膜厚を400nm程度とする。
【0127】
ガスバリア層44の成膜においても、陰極保護層38の成膜と同様に有機機能層30の特性劣化を避けるため、例えば、100nmずつ4回に分けて成膜工程と冷却工程とを繰り返し行ってもよい。また、100nmを成膜して冷却した後に、基体20を処理装置140に移動させて基体20表面の異物の除去を行ってもよい。このようにすれば、ガスバリア層44をより欠陥の少ない緻密な層に成膜でき、酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。さらに、ガスバリア層44形成後に、基体20を搬送室170へ搬送する途中で、処理装置140において、基体20の表面に付着した異物の除去を行ってもよい。
【0128】
次に、図3に示すように、基体20のガスバリア層44上に、接着層46と表面保護基板48からなる保護層40を形成する。保護層40の形成は、封止装置190において行う。まず、ガスバリア層44上に接着層46の材料を、例えばスクリーン印刷法やスリットコート法により略均一に塗布する。続いて、接着層46上に表面保護基板48を貼り合わせる。これにより、保護層40が形成される。以上により、有機EL装置1を形成することができる。
【0129】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0130】
(変形例1)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140において、振動発生機構200は超音波振動子210a,210bを含んで構成されていたが、この形態に限定されない。振動発生機構200は、超音波振動子210a,210bの代わりに超音波振動板を有しており、その超音波振動板の振動を基体20に伝達する構成であってもよい。このような構成であっても、同様の効果を得ることができる。
【0131】
(変形例2)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140は、超音波振動子210a,210bを含む振動発生機構200を備えていたが、この形態に限定されない。処理装置140は、振動発生機構200に代わる振動発生機構として振動モータを備えており、その振動モータにより基体20に振動を伝達する構成であってもよい。
【0132】
図11は、処理装置140の変形例を示す図である。図11に示すように、保持部240は、搬送レール172に支持されている。保持部240は、台座143からなり、例えば真空吸着により基体20を保持する。振動モータ250は、処理室141内の保持部240より上部側に取り付けられており、搬送レール172の延在方向に沿って移動しない。振動モータ250は、保持部240の基体20を保持する側とは反対側の面に接触している。振動モータ250は、搬送レール172の延在方向と直交する方向に回転軸を有している。
【0133】
振動モータ250が回転することで発生する振動が保持部240を介して伝達されることにより、基体20に外力が加えられる。振動モータ250は、保持部240が搬送レール172の延在方向に沿って移動すると、進行方向側からその反対側へと相対的に移動するように、振動が伝達される。これにより、基体20の表面に付着した異物を離れさせて除去できる。なお、振動モータ250から伝達される振動の振動数は、振動モータ250の回転数により制御できる。このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0134】
(変形例3)
上記実施形態の有機EL装置の製造装置の処理装置140では、保持部142に保持された基体20を搬送レール172の延在方向に沿って移動させたが、この形態に限定されない。基体20が、表面の法線に平行な回転軸を有する回転機構に固定された保持部に保持されていてもよい。
【0135】
図12は、処理装置140の変形例を示す図である。図12に示すように、保持部260は、保持部260が保持する基体20の表面の法線に平行な回転軸を有する回転機構270に固定されている。保持部260は、基体20とともに回転機構270の回転軸を中心に回転する。これにより、基体20に振動を伝達しながら基体20を回転させて、基体20の表面に付着した異物を除去できる。なお、処理装置140がこのような回転機構を備える場合は、成膜装置130が搬送室170に接続されるように配置し、搬送装置により基体20を処理装置140から搬出し成膜装置130に搬入するようにしてもよい。
【0136】
(変形例4)
上記実施形態における製造装置100の構成や各装置の配置は、上述の形態に限定されるものではなく、製造する有機EL装置の構成あるいは有機EL装置の製造方法によって適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】有機EL装置の一例の配線構造を示す図。
【図2】有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図。
【図3】有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る製造装置の概略構成を示す構成図。
【図5】本実施形態に係る製造装置の成膜装置の概略構成を示す構成図。
【図6】本実施形態に係る製造装置の処理装置の概略構成を示す構成図。
【図7】保持部の概略構成を示す図。
【図8】振動発生機構の構成を示すブロック図。
【図9】本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図10】本実施形態に係る有機EL装置の製造方法を説明する図。
【図11】処理装置の変形例を示す図。
【図12】処理装置の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0138】
1…有機EL装置、2…画素、3…画素部、4…実発光領域、5…ダミー領域、10…基板、11…スイッチング用TFT、12…駆動用TFT、13…保持容量、14…データ線駆動回路、15…走査線駆動回路、16…走査線、17…信号線、18…電源線、19…検査回路、20…基体、21…回路部、22…駆動電圧導通部、23…駆動制御信号導通部、24…画素電極、25…ダミーパターン、26…親液性制御層、26a…開口部、28…隔壁層、28a…開口部、30…有機機能層、32…正孔輸送層、34…発光層、36…陰極、36a…陰極用配線、38…陰極保護層、38a…材料、40…保護層、42…緩衝層、44…ガスバリア層、46…接着層、48…表面保護基板、100…有機EL装置の製造装置、110…成膜装置、120…成膜装置、130…成膜室、131…成膜室、131a…接続部、131b…スペース、132…蒸着源、134…プラズマ生成部、136…ガス供給装置、138…減圧装置、140…処理装置、141…処理室、141a…接続部、141b…接続部、142…保持部、143…台座、144…ホルダ、146…風圧発生装置、147…放出管、147a…放出口、148…排気装置、149…吸気管、149a…吸気口、150…ストック室、160,170…搬送室、172…搬送レール、180…印刷装置、190…封止装置、200…振動発生機構、210a,210b…超音波振動子、220…駆動部、221…アナログスイッチ、222…FFC、223…インダクタンス、230…駆動波形生成回路、231…D/Aコンバータ、232…プリアンプ、233…パワーアンプ、240…保持部、250…振動モータ、260…保持部、270…回転機構。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置と、
前記少なくとも一つの成膜装置に接続され、前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置と、
を備えていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記除去手段は、振動により前記基体に前記外力を加える振動発生機構を含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記振動発生機構は、超音波振動子または超音波振動板を含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記振動発生機構は、振動モータを含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記除去手段は、風圧により前記基体に前記外力を加える風圧発生装置を含み、
前記風圧発生装置は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記処理装置内の雰囲気を吸気口から外部へ排気する排気装置をさらに備え、
前記吸気口は、前記基体の表面に対向するように配置されていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記成膜装置に前記基体を搬入および搬出する搬送装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記基体が前記搬送装置により前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中に配置されていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項8】
成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、
前記成膜装置に接続された処理装置内で前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去工程を備えていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、振動により前記基体に前記外力を加えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記振動は、超音波振動子または超音波振動板を用いて発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記振動は、振動モータを用いて発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、風圧により前記基体に前記外力を加え、
前記風圧は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することにより発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、前記基体の表面に対向する位置に配置された吸気口から前記処理装置内の雰囲気を外部へ排気することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程を、前記基体が前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中で行うことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項1】
基体の表面に薄膜を形成する少なくとも一つの成膜装置と、
前記少なくとも一つの成膜装置に接続され、前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去手段が設けられた処理装置と、
を備えていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記除去手段は、振動により前記基体に前記外力を加える振動発生機構を含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項3】
請求項2に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記振動発生機構は、超音波振動子または超音波振動板を含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項4】
請求項2に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記振動発生機構は、振動モータを含んでいることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記除去手段は、風圧により前記基体に前記外力を加える風圧発生装置を含み、
前記風圧発生装置は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記処理装置内の雰囲気を吸気口から外部へ排気する排気装置をさらに備え、
前記吸気口は、前記基体の表面に対向するように配置されていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置であって、
前記成膜装置に前記基体を搬入および搬出する搬送装置をさらに備え、
前記処理装置は、前記基体が前記搬送装置により前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中に配置されていることを特徴とする有機EL装置の製造装置。
【請求項8】
成膜装置内で基体の表面に薄膜を形成する工程の前および後の少なくともどちらかにおいて、
前記成膜装置に接続された処理装置内で前記基体に外力を加えることにより前記基体の表面に付着した異物を除去する除去工程を備えていることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、振動により前記基体に前記外力を加えることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記振動は、超音波振動子または超音波振動板を用いて発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記振動は、振動モータを用いて発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、風圧により前記基体に前記外力を加え、
前記風圧は、前記基体の表面に対向する位置に配置された放出口から前記基体の表面にガスを放出することにより発生させることを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程では、前記基体の表面に対向する位置に配置された吸気口から前記処理装置内の雰囲気を外部へ排気することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記除去工程を、前記基体が前記成膜装置に搬送される搬送経路の途中で行うことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−277522(P2009−277522A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128030(P2008−128030)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]