説明

有端状の転動体収容ベルトおよびこれを備えた直動案内装置

【課題】転動体収容ベルトを直動案内装置の転動体循環路内で、円滑に循環できるようにする。
【解決手段】転動体収容ベルト4の長手方向端部に位置する間座42Aの端面に、軸方向に垂直な断面が楕円形である筒状突起44を、筒の軸方向が転動体3の配列方向と直交するように(転動体収容ベルト4の幅方向、すなわち連結腕部43の突き出し方向と平行に)、間座42Aの端面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置の転動体循環路内に配置されて使用される、有端状の転動体収容ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置(リニアガイド装置)は、案内レールとスライダと転動体を有し、複数の転動体を内部で無限循環させながら、被案内物を直線的に案内する装置であり、案内レールの転動体軌道面に対向する転動体軌道面をスライダに設け、これらの転動体軌道面間に形成された転動体転動路内に複数の転動体が配設されている。そして、転動体転動路内での転動体の転動により、案内レールがスライダに対して相対的に軸方向に移動可能となっている。
【0003】
スライダは、スライダ本体と、その移動方向両端部に取り付けられたエンドキャップとからなる。スライダ本体には、転動体転動路と、転動体転動路とほぼ平行に延びる転動体戻し路が形成され、エンドキャップには、転動体転動路と転動体戻し路とを連結する円弧状の方向転換路が形成されている。そして、転動体転動路と転動体戻し路が方向転換路で連結されて生じる無限状の転動体循環路内を、前記複数の転動体が循環移動する。
【0004】
このような直動案内装置では、スライダが案内レールに対して相対移動すると、各転動体は同一方向へ回転しながら移動するため、隣り合う転動体同士が擦れ合って転動体の円滑な転動が妨げられる。その結果、作動時の騒音が大きくなり、転動体が摩耗し易くなる。そこで、従来から、騒音の発生や摩耗を抑制し、直動案内装置を円滑に作動させるために、転動体循環路内で転動体同士が接触しないように、所定の間隔を隔てて整列させる転動体収容ベルトが提案されている。
【0005】
この転動体収容ベルトは、(1)転動体を保持する複数の転動体保持穴と、(2)隣り合う保持穴の間に配置され、各保持穴を挟んで対向する転動体保持面を備えた複数の間座と、(3)転動体保持穴の周縁部および間座の両側部を成し、転動体の配列方向で連結された長尺な連結腕部と、を有している。また、スライダ内に容易に組み込むことができるように、両端部が連結されない長尺な帯状に(すなわち、有端状に)形成されている。
【0006】
そして、直動案内装置の転動体循環路には、この転動体収容ベルトの連結腕部を案内するための案内溝または案内面が、全周に亘って設けられている。転動体収容ベルトの連結腕部は、作動時には常にその案内溝または案内面に摺れながら移動するため、従来から、この転動体収容ベルトをより円滑に循環させるための工夫が種々提案されている。
例えば、以下の特許文献1には、転動体循環路内に1本または複数本の有端状の転動体収容ベルトを配置し、転動体循環路内で対向する転動体収容ベルトの両端部間に隙間を設け、連結腕部先端には、転動体収容ベルトを円滑に循環するための面取り案内部を設けることが提案されている。
【0007】
また、以下の特許文献2には、以下の(a)〜(c)の技術が記載されている。
(a)転動体収容ベルトの長手方向の両端部に、転動体循環路内で一個の緩衝用転動体を介して互いに対向する一対の凹状先端面を設け、これらの凹状先端面が緩衝用転動体を挟持することで、転動体収容ベルトの先端部が方向転換路の内壁と摺れ合うのを防止している。これにより、転動体収容ベルトの転動体循環路内での循環がより円滑になるようにしている。
【0008】
(b)転動体収容ベルトの長手方向の一端に凹状先端面を設け、この凹状先端面と合致する凸状先端面を他端に設けることで、凹状先端面と凸状先端面とが当接して転動体収容ベルト先端部が方向転換路の内壁と摺れ合うのを防止している。これにより、転動体収容ベルトの転動体循環路内での循環がより円滑になるようにしている。
(c)方向転換路における転動体収容ベルトの循環をより円滑にするために、転動体収容ベルトの両端部に、両端に位置する転動体よりも長手方向に誘導片を突設し、転動体収容ベルトがこの誘導片を先頭にして方向転換路内に進入するように構成している。
【0009】
さらに、以下の特許文献3には、転動体収容ベルトの連結腕部の長手方向端部に位置する間座の端面に、板面が転動体の配列方向と直交するように配置された板片(自由端+移動可能な脚部)を、継手を介して固定することが記載されている。この転動体収容ベルトは、転動体循環路内に前記板片の板面が互いに向き合うように配置され、転動体循環路内で走行方向に前記板片間の圧縮力が作用した場合に、連結腕部の高さで力が伝達される構成となっている。
【0010】
ところで、特許文献1および特許文献2(c)に記載されている転動体収容ベルトは、連結腕部の端部に面取り案内部や誘導片を設けるとともに、転動体収容ベルトの端部対向間に意図的に隙間を設けている。そのため、これらの転動体収容ベルトには、繰り返し曲げ力以外にも引張力が作用することになる。特に、高速走行させる直動案内装置に使用する場合には、潤滑剤の粘性抵抗等に起因して、転動体循環路内での転動体および転動体収容ベルトの循環抵抗が大となって、転動体収容ベルトに過大な繰り返し引張力が作用するため、十分な耐久性を得ることが難しい。
【0011】
また、特許文献2(a)に記載されている転動体収容ベルトの「一対の凹状先端面が緩衝用転動体を挟持する構成」を実現しようとすると、転動体収容ベルトの先端同士が互いに緩衝用転動体を押し合った状態とする必要があるため、転動体収容ベルトが転動体循環路内で常時張り詰めた状態となる。このような状態であると、連結腕部は案内溝の外周面に押し付けられた状態で循環するため、摩擦が増大し、転動体収容ベルトが早期摩耗に至ることも考えられる。
さらに、特許文献2(b)に記載されている転動体収容ベルトも、先端部同士が互いに押し付け合った状態でなければ、先端部が方向転換路で外周側に逃げてしまうため、実際には、転動体収容ベルトの先端部が方向転換路の内壁と摺れ合うことを防止できない。
【0012】
一方、特許文献3に記載されている転動体収容ベルトは、前述のように、転動体循環路内で走行方向に圧縮力が作用した場合に、連結腕部の高さで力が伝達されるように構成されている。しかし、転動体循環路の方向転換路では、連結腕部と案内溝との隙間の範囲で転動体収容ベルトの先端が案内溝の外周側に沿うように移動する。その結果、転動体収容ベルトの先端が互いに離れる方向にずれるため、両端部が互いに接触しても、連結腕部の高さで走行方向に圧縮力が伝達され難い。
案内溝と連結腕部の隙間が非常に小さければ圧縮力の伝達効率は向上するが、連結腕部と案内溝とが摺れ合う箇所が増えるため、摩擦が増大し、転動体収容ベルトが早期に摩耗し易くなる。
【特許文献1】特許3243415号公報
【特許文献2】特開平11−2241号公報
【特許文献3】特開2004−144283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決することを課題とし、転動体収容ベルトに引張力が極力作用しないようにして耐久性を確保するとともに、連結腕部と案内溝との間に適度な隙間を確保しつつ、循環方向における圧縮力の伝達効率を高くして、転動体収容ベルトをより円滑に循環できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、直動案内装置の転動体循環路内に配置され、転動体を保持する複数の転動体保持穴と、隣り合う保持穴の間に配置され、各保持穴を挟んで対向する転動体保持面を備えた複数の間座と、転動体保持穴の周縁部および間座の両側部を成し、転動体の配列方向で連結された連結腕部と、を有する有端状の転動体収容ベルトであって、連結腕部の長手方向両端部に位置する間座の端面に、筒状突起を備え、この筒の軸方向が転動体の配列方向と直交するように形成されていることを特徴とする転動体収容ベルトを提供する。
【0015】
本発明の転動体収容ベルトは、筒状突起に凹部を有すると、凹部による筒状突起の欠損量を変えることで長手方向の剛性を変えることができる。筒状突起の凹部の例としては、軸方向端部を切り欠いた切欠き部や、軸方向端部以外に設けた穴(周面に設けた凹みや貫通穴)などが挙げられる。
本発明は、また、本発明の転動体収容ベルトが、長手方向両端部の筒状突起同士が当接した状態で、転動体循環路内に配置されていることを特徴とする直動案内装置(第1の直動案内装置)を提供する。
本発明は、また、本発明の転動体収容ベルトが、長手方向両端部の筒状突起同士の間に転動体を介装し、この転動体と各筒状突起とが当接した状態で、転動体循環路内に配置されていることを特徴とする直動案内装置(第2の直動案内装置)を提供する。
【0016】
本発明の直動案内装置によれば、転動体循環路内を、転動体収容ベルトが、長手方向両端部の筒状突起同士を当接させた状態で(第1の直動案内装置)、または長手方向両端部の各筒状突起と前記転動体とが当接した状態で(第2の直動案内装置)移動する。そのため、連結腕部と案内溝との隙間の範囲で転動体循環路の方向転換路を、転動体収容ベルトの先端が振れながら移動しても、この当接力により、循環方向における圧縮力の伝達効率が特許文献3の転動体収容ベルトよりも高くなる。よって、転動体循環路における転動体収容ベルトの循環がより円滑になる。
また、中空の筒状突起は中実の突起や板片などと比較して変形し易いため、転動体収容ベルトに熱膨張や弾性変形が生じた場合に対応させて端部間に意図的な隙間を設ける必要がない。よって、高速走行させる場合に転動体収容ベルトに作用する繰り返し引張力を軽減できるため、耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の直動案内装置によれば、転動体収容ベルトに引張力が極力作用しないようにして耐久性を確保するとともに、連結腕部と案内溝との間に適度な隙間を確保しつつ、循環方向における圧縮力の伝達効率を高くして、転動体収容ベルトをより円滑に循環させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の直動案内装置の第1実施形態を示す図であって、転動体循環路と転動体収容ベルトの全体構造を示す断面図である。図2は図1のA−A断面である。図3は図1の転動体収容ベルトの一部を示す斜視図である。図4は、第1実施形態の直動案内装置の部分拡大図であって、転動体収容ベルトの端部位置が図1とは異なる状態にある場合を示す。
【0019】
この実施形態の直動案内装置は、案内レール1とスライダ2と転動体3と転動体収容ベルト4と保持器5とからなる。案内レール1は二対4列の転動体軌道面11を有する。
スライダ2は、スライダ本体21と、その移動方向両端部に取り付けられたエンドキャップ22とからなる。スライダ本体21には、案内レール1の各転動体軌道面11に対向する転動体転動面211と、各転動体転動面211と平行に延びる転動体戻し路212が形成されている。転動体戻し路212は、スライダ本体21に形成した貫通穴213に、スリーブ214を挿入することで形成されている。
【0020】
案内レール1の各転動体軌道面11とスライダ2の各転動体転動面211とにより、二対4列の転動体転動路23が形成される。エンドキャップ22には円弧状の方向転換路221が形成されている。転動体循環路は、転動体転動路23と転動体戻し路212が方向転換路221で連結されて生じ、この転動体循環路内を転動体3が循環移動し、転動体転動路23内での転動体3の転動により、案内レール1がスライダ2に対して相対的に軸方向に移動可能となっている。また、転動体循環路の全体に亘って、転動体収容ベルト4を案内する案内溝25が形成されている。
【0021】
転動体収容ベルト4は、転動体3を保持する複数の転動体保持穴41と、隣り合う保持穴41の間に配置され、各保持穴41を挟んで対向する転動体保持面42aを備えた複数の間座42と、転動体保持穴41の周縁部41aおよび間座42の両側部42bを成し、転動体3の配列方向で連結された長尺な連結腕部43と、長手方向端部に位置する間座42Aの端面に形成された筒状突起44と、からなる。
【0022】
筒状突起44は、軸方向に垂直な断面が楕円形である。この筒状突起44が、筒の軸方向が転動体3の配列方向と直交するように(転動体収容ベルト4の幅方向、すなわち連結腕部43の突き出し方向と平行に)、間座42Aの端面に形成されている。
転動体収容ベルト4の長さは、図1に示すように、転動体循環路全体の長さに合わせて、転動体循環路内で長手方向両端部となる筒状突起44同士が当接した状態となる長さに形成されている。すなわち、転動体収容ベルト4の長さは、転動体循環路内に配置したときに長手方向両端部間に意図的な隙間が生じない長さにしてある。
【0023】
保持器5は、案内レール1の上面および側面とスライダ2の内面との間に配置され、中間保持部51、上側保持部52、下側保持部53とからなる。
中間保持部51は、上側の転動体転動路23に存在する転動体3の下側部分を保持する面と、この面に連続して転動体収容ベルト4の案内溝25を形成する凹部と、下側の転動体転動路23に存在する転動体3の上側部分を保持する面と、この面に連続して転動体収容ベルト4の案内溝25を形成する凹部と、を備えている。
【0024】
上側保持部52は、上側の転動体転動路23に存在する転動体3の上側部分を保持する面と、この面に連続して転動体収容ベルト4の案内溝25を形成する凹部を備えている。下側保持部53は、下側の転動体転動路23に存在する転動体3の下側部分を保持する面と、この面に連続して転動体収容ベルト4の案内溝25を形成する凹部を備えている。
転動体収容ベルト4は、転動体3を転動体保持穴41に入れた状態で、転動体循環路内の案内溝25に連結腕部43を嵌めることで取り付けられる。
【0025】
この実施形態の直動案内装置によれば、転動体収容ベルト4は、転動体循環路内を連結腕部43が案内溝25に案内されながら、長手方向両端部の筒状突起44同士を当接させた状態で移動する。図4に示すように、円弧状の方向転換路221においては、筒状突起44同士が方向転換路221の外周側で離れ、内周側で押し付けあって変形した状態で移動する。これにより、循環方向における圧縮力が効率よく伝達されるため、転動体収容ベルト4は円滑に循環する。
【0026】
したがって、直線状の転動体転動路23と転動体戻し路212ではもちろんのこと、円弧状の方向転換路221でも、転動体収容ベルト4は筒状突起44同士の当接力により円滑に循環する。これに伴って、転動体3も円滑に循環する。また、長手方向両端部間に意図的な隙間がないため、高速走行させた場合でも、転動体収容ベルト4に作用する繰り返し引張力が軽減されて、耐久性が向上する。
【0027】
図5は、本発明の直動案内装置の第2実施形態を示す図であって、転動体循環路と転動体収容ベルトの全体構造を示す断面図である。図5のA−A断面図は第1実施形態と同様に図2である。図6は、第2実施形態の直動案内装置の部分拡大図であって、転動体収容ベルトの端部位置が図5とは異なる状態にある場合を示す。
第2実施形態の直動案内装置は、第1実施形態と同様に、図3に示す構造の転動体収容ベルト4を備えているが、第1実施形態とは異なり、筒状突起44同士の間に転動体3Aを介装して転動体循環路内に配置されている。そのため、第2実施形態の転動体収容ベルト4の長さは、転動体3の直径分だけ第1実施形態の転動体収容ベルト4よりも短い。
【0028】
転動体収容ベルト4は、転動体3を転動体保持穴41に入れた状態で、転動体循環路内の案内溝25に連結腕部43を嵌めることで取り付けられる。その際に、両筒状突起44の間に転動体3Aを介装する。
この実施形態の直動案内装置によれば、転動体収容ベルト4は、転動体循環路内を連結腕部43が案内溝25に案内されながら、長手方向両端部の各筒状突起44と介装された転動体3Aとが当接した状態で移動する。図6に示すように、円弧状の方向転換路221においては、両筒状突起44と転動体3Aの円弧面同士が、方向転換路221の内周側で押し付けあって移動する。これにより、循環方向における圧縮力が効率よく伝達されるため、転動体収容ベルト4は円滑に循環する。
【0029】
したがって、直線状の転動体転動路23と転動体戻し路212ではもちろんのこと、円弧状の方向転換路221でも、転動体収容ベルト4は各筒状突起44と転動体3Aの当接力により円滑に循環する。これに伴って、転動体3も円滑に循環する。また、長手方向両端部間に意図的な隙間がないため、高速走行させた場合でも、転動体収容ベルト4に作用する繰り返し引張力が軽減されて、耐久性が向上する。
第1実施形態および第2実施形態で使用した図3に示す転動体収容ベルト4は、長手方向両端部の各筒状突起44の軸方向に垂直な断面が楕円形であって、各筒状突起44に凹部がないものである。
【0030】
これに対して、図7に示す転動体収容ベルト4Aは、筒状突起44Aの周面に、軸方向両端を切欠いた形状の凹部45を有する。すなわち、転動体収容ベルト4Aの筒状突起44Aは、軸方向寸法が図3の筒状突起44と同じ幅広部分46と、凹部45によって幅が狭くなった幅狭部分47とからなる。凹部45の量は、転動体収容ベルト4Aの長手方向の剛性が最適な状態(転動体循環路内で転動体収容ベルト4Aの移動時に、連結腕部43と案内溝25との摺動力が適度な状態)となるように設定する。
これにより、連結腕部43が案内溝25に強く摺れることが防止されるため、図3の転動体収容ベルト4を使用した場合と比較して、転動体収容ベルト4Aをより円滑に循環させることができる。
【0031】
本発明の転動体収容ベルトに相当する別の実施形態を図8に示す。
図8の転動体収容ベルト4Bは、長手方向両端部の各筒状突起44Bの軸方向に垂直な断面が五角形の角を丸めた形状であって、各筒状突起44Bに凹部45を有するものである。すなわち、転動体収容ベルト4Bの筒状突起44Bは、軸方向寸法が広い幅広部分46と、凹部45によって幅が狭くなった幅狭部分47とからなる。凹部45の量は、転動体収容ベルト4Bの長手方向の剛性が最適な状態(転動体循環路内で転動体収容ベルト4Bの移動時に、連結腕部43と案内溝25との摺動力が適度な状態)となるように設定する。
【0032】
この転動体収容ベルト4Bのように、筒状突起44Bの軸方向に垂直な断面が円形(楕円形を含む)でない場合(多角形の場合)でも、角部を丸める(円弧状に形成する)ことで、方向転換路221では、筒状突起44B同士の角部の円弧面が当接して移動する。そのため、転動体収容ベルト4Bは方向転換路221においても円滑に循環する。
また、この転動体収容ベルト4Bは、凹部45を設けたことにより、連結腕部43が案内溝25に強く摺れることが防止される。そのため、各筒状突起の軸方向に垂直な断面が五角形の角を丸めた形状であって凹部を有さない転動体収容ベルトを使用した場合と比較して、転動体収容ベルトをより円滑に循環させることができる。
【0033】
本発明の転動体収容ベルトに相当する別の実施形態を図9に示す。
図3の転動体収容ベルト4、図7および図8の転動体収容ベルト4A,4Cは、各筒状突起44,44A,44Bの周面の一部が、端部の間座42Aに直に付いた形状のものである。これに対して、図9の転動体収容ベルト4Cは、長手方向両端部の各筒状突起44Cが端部の間座42Aに対して、連結部48を介して付いた形状のものである。これ以外の点は図7の転動体収容ベルト4Aと同じである。
【0034】
この連結部48は、端部の間座42Aの裏面をなす円の中心位置から突出している。連結部48の突出位置はこれ以外の位置であってもよいが、この位置か、連結腕部43が端部の間座42Aに固定されている位置と同じ位置に設けることが望ましい。
この連結部48の存在により、軸方向断面が楕円形の筒状突起44Cは、楕円が潰れるように変形するだけでなく、連結部48が曲がって傾くように変形することもできる。これにより、両筒状突起44C間の押し付け力を調整できる範囲を大きくできるため、図7の転動体収容ベルト4Aよりも更に効率よく、循環方向における圧縮力が伝達される。よって、転動体収容ベルト4Cを更に円滑に循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の直動案内装置の第1実施形態を示す図であって、転動体循環路と転動体収容ベルトの全体構造を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の転動体収容ベルトの一部を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態の直動案内装置の部分拡大図であって、転動体収容ベルトの端部位置が図1とは異なる状態にある場合を示す。
【図5】本発明の直動案内装置の第2実施形態を示す図であって、転動体循環路と転動体収容ベルトの全体構造を示す断面図である。
【図6】第2実施形態の直動案内装置の部分拡大図であって、転動体収容ベルトの端部位置が図1とは異なる状態にある場合を示す。
【図7】本発明の実施形態に相当する、図3とは異なる転動体収容ベルトを示す図であって、その一部を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に相当する、図3とは異なる転動体収容ベルトを示す図であって、その一部を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に相当する、図3とは異なる転動体収容ベルトを示す図であって、その一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
1 案内レール
11 案内レールの転動体軌道面
2 スライダ
21 スライダ本体
211 スライダの転動体転動面
212 転動体戻し路(転動体循環路)
213 貫通穴
214 スリーブ
22 エンドキャップ
221 方向転換路(転動体循環路)
23 転動体転動路(転動体循環路)
25 案内溝
3 転動体
4 転動体収容ベルト
4A 転動体収容ベルト
4B 転動体収容ベルト
4C 転動体収容ベルト
41 転動体保持穴
41a 転動体保持穴の周縁部
42 間座
42A 長手方向端部に位置する間座
42a 転動体保持面
42b 間座の両側部
43 連結腕部
44 筒状突起
44A 筒状突起
44B 筒状突起
44C 筒状突起
5 保持器
51 中間保持部
52 上側保持部
53 下側保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動案内装置の転動体循環路内に配置され、
転動体を保持する複数の転動体保持穴と、
隣り合う保持穴の間に配置され、各保持穴を挟んで対向する転動体保持面を備えた複数の間座と、
転動体保持穴の周縁部および間座の両側部を成し、転動体の配列方向で連結された連結腕部と、
を有する有端状の転動体収容ベルトであって、
連結腕部の長手方向両端部に位置する間座の端面に、筒状突起を備え、この筒の軸方向が転動体の配列方向と直交するように形成されていることを特徴とする転動体収容ベルト。
【請求項2】
筒状突起に凹部を有する請求項1記載の転動体収容ベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の転動体収容ベルトが、長手方向両端部の筒状突起同士が当接した状態で、転動体循環路内に配置されていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の転動体収容ベルトが、長手方向両端部の筒状突起同士の間に転動体を介装し、この転動体と各筒状突起とが当接した状態で、転動体循環路内に配置されていることを特徴とする直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−127799(P2009−127799A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305774(P2007−305774)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】