有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体
【課題】車両用耐衝突補強材の耐座屈性を簡便迅速に予測する車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【解決手段】有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする車両用耐衝突補強材の評価方法を採用する。
【解決手段】有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする車両用耐衝突補強材の評価方法を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用した自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に高強度鋼板を使用する方向で検討が進められている。
【0003】
車両の衝突安全性は重要な性能の一つであり、その性能向上が進められている。一般にこの性能は実際に車を製作して、衝突試験を行うことにより評価されていた。しかしながら、このような試験は膨大な時間とコストを要するため試験回数の低減が試行されている。
そこで用いられているのが有限要素法を用いた衝突解析である。この衝突解析では、車両の各部位を有限要素と呼ばれる小さな領域に分割した上で、動的陽解法という手法により解析を行うものである。デジタル化された車両を仮想空間の中で実際の衝突試験と同じ条件で変形させ、その際の衝撃吸収特性を評価することにより、実験回数の低減が図られてきた。
【0004】
しかしながらこのような衝突解析にはいくつかの問題があった。その一つは解析の準備に要する時間および計算時間が長いことであり、精緻な結果を得ようとするほど全体に要する時間が増加する傾向にある。またこのような解析は車両全体の設計が終わり、各部材の位置関係や接合方法が明確になってからでしかその性質上行うことができない。したがって、設計の構想段階で部材のある形状の衝撃吸収特性や耐座屈性を衝突解析で調査することは非常に難しく、特に部材単体で耐座屈性を予測するのはその周囲の部材形状が決まらない限りほぼ不可能であった。
【0005】
特許文献1(特開2008―33689号公報)には、有限要素法による衝突解析技術を活用した車両設計支援装置に関して開示されている。この装置では、構造変更を加えた前後で各部位毎の内部エネルギーの変化を算出することで、軽量化が可能な部位を簡便に抽出するということがなされている。しかしながら本装置では車両構造がほぼ確定した状態でないと評価が難しく、設計の初期段階では適用することが難しい。
【0006】
また、特許文献2(特開2008―149356)には、剛性の高い部品を設計するための方法が開示されている。この方法では成形加工による影響を取り込んだ動剛性解析を行い、プレス成形条件を変更することで剛性の高い部品を設計する方法が開示されている。しかしながらこの方法では衝突性能については全く触れられておらず、また動剛性解析も固有振動数解析である。
【0007】
座屈固有値解析そのものの手法については、非特許文献1(マトリックス有限要素法、原著/O.C.ツィエンキーヴィツ、監訳/吉識雅夫、山田嘉昭、培風館(1984))に開示されている。この手法は固有振動数解析と異なり、特定の境界条件(荷重、拘束)での分岐不安定を取り扱い、座屈荷重を求めるものである。しかしながらこの手法を衝突性能の評価に使用することは従来行われていなかった。
【特許文献1】特開2008―33689号公報
【特許文献2】特開2008―149356号公報
【非特許文献1】マトリックス有限要素法、原著/O.C.ツィエンキーヴィツ、監訳/吉識雅夫、山田嘉昭、培風館(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両用耐衝突補強材の耐座屈性を簡便迅速に予測する車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは部材単体、あるいは部分構造のみで耐座屈性を予測する方法を鋭意検討した。一般に部材単体の性能検討としては、断面二次モーメントの部材内での分布が用いられることが多い。これにより部材の曲げに対する抵抗を調査し、作用する外力を予測しながら各部の寸法が決定される。しかしながら本来、断面二次モーメントは部材全体の曲げ剛性と対応する量である。耐座屈性および部材の衝撃吸収能は、ある箇所への変形の集中し易さと変形が集中した後から崩壊までの抵抗により支配されるものであり、基本的に部材の局所的な性質に依存して決まる。断面二次モーメントはこのような局所的な性質の代表値とはなりえない。そこで本発明者らは部材の局所的な性能を把握できる方法について検討した。
【0010】
従来の衝突解析は、このような局所的な性質を把握することが可能であり、実際の部材構成をデジタル上で再現し、加わる外力についてもほぼ現実を反映した境界条件により計算することが可能である。しかしながら従来の解析を行うには、設計対象の部材だけでなく、それを支持する周囲の部材含めて計算の中で考慮する必要があった。実際の設計の初期段階を考えると周囲の部材は同時に設計されることがほとんどであり、確定した情報を得ることが難しい。またこのような解析は境界条件の設定が煩雑であり工数を要するとともに、計算時間も長く短期間で最適解を検討するには向いていない。これらの理由により設計初期段階で衝突解析を用いることは難しい。
【0011】
本発明者らは、衝突における局所的な変形を模擬するために有限要素法による座屈固有値解析に着目した。座屈固有値解析は静的解法を利用するものであるが、ある境界条件下で部材がどのような変形形態となり、そのときの座屈抵抗を調べることが可能である。前述のように衝突変形は局所的な変形である一方、座屈固有値解析は衝突変形時の変形形態と類似の座屈モードにおいてその際の座屈抵抗を比較することで、衝突変形時の耐座屈性や衝撃吸収特性と相関させることができることに思い至った。この手法では基本的に部品単体での検討が可能であり、かつ解析時間も非常に短い。従って設計の初期段階で衝突性能を定量的に把握しながら設計を進めることが可能である。
【0012】
また、さらにこの座屈固有値解析は、凹ビードを有する部材の耐座屈性を予測し、ビード配置の最適化を行う際に特に有用である。閉断面構造を有する耐衝突補強材に凹ビートを設けることは断面二次モーメントの減少となり、従来の設計方法ではこのような凹ビードの効果の予測が出来ていない。本発明者らは有限要素法による座屈固有値解析を用いることで、凹ビードの効果を評価でき、部材形状が三次元的に複雑となった場合でもビード配置を最適化できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする。
また、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記ステップが、前記車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、前記メッシュ、前記車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップと、前記座屈固有値解析によって抽出された、前記複数の固有モード次数毎の変形集中の前記解析位置と、前記車両用耐衝突補強材の変形集中の前記評価対象位置とを対比する対比ステップと、前記対比ステップにおいて前記評価対象位置と前記解析位置とが概略一致した場合に、一致した前記解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップと、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士を、前記抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップと、から構成されることを特徴とする。
更に、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記対比ステップにおいて変形集中の前記評価対象位置と前記解析位置とが一致しない場合に、前記車両用耐衝突補強材の前記境界条件を変更する変更ステップを備え、前記評価対象位置と前記解析位置とが一致するまで、前記変更ステップ、前記解析ステップ及び前記対比ステップを繰り返し行うことを特徴とする。
更にまた、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記車両用耐衝突補強材の物理量が、前記車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚または弾性率のいずれか一方または両方であることを特徴とする。
【0014】
次に、本発明のコンピュータプログラムは、先の何れかに記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のコンピュータプログラムで読み取り可能な記憶媒体は、先に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、車両用耐衝突補強材の耐座屈性を簡便迅速に予測する車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法の概略について説明すると、まず、有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求める。
次に、車両用耐衝突補強材に対して実際に座屈荷重試験を行って変形集中の位置を求めるか、あるいは、車両用耐衝突補強材の中で耐座屈変形性能を評価したい位置を任意に定める。この実測位置または評価したい位置を評価対象位置とする。
次に、固有モード次数毎に求めた変形集中の解析位置と、変形集中の評価対象位置とを対比する。
そして、解析位置と評価対象位置とが重なる場合の固有モード次数を決定する。
そして、決定された固有モード次数における座屈固有値を、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能の評価値とする。
【0017】
次に、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、上記と同様にして座屈固有値を求める。但し、この場合の固有モード次数は、変形集中の解析位置と評価対象位置との対比によって決定された先の固有モード次数を用いることを基本とする。すなわち、座屈固有値解析の固有モード次数は、各車両用耐衝突補強材毎に共通の次数を用いることが簡便かつ迅速に解析を行う上で好ましい。しかしながら形状や材料の物理量が大幅に異なる場合には同じ次数で比較すると変形形態が異なるものとなってしまい、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致しなくなる可能性がある。そのような場合には変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致することを条件として、異なる固有モード次数での座屈固有値を用いることができる。但し、この際対比する複数の車両用耐衝突補強材について座屈固有値解析の境界条件は変更してはならない。
【0018】
そして、各車両用耐衝突補強材毎に得られた座屈固有値を対比する。座屈固有値解析によって得られた座屈固有値は、実際の車両を用いた衝突試験の結果とほぼ相関するので、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、車両を用いた衝突試験を行うことなく、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能を評価することが可能となる。
【0019】
本実施形態の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状、板厚、弾性率等の物理量及び境界条件をパラメータとして耐座屈性能を評価できる。また、後述するように、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合は、座屈固有値解析における境界条件を変更して再度座屈固有値解析を行うことで、評価対象位置における座屈性能を正確に予測できる。これにより、車両用耐衝突補強材を単独で評価することが可能になる。
【0020】
以下、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法を説明するフローチャートである。また、図2は、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法の評価対象となる車両用耐衝突補強材の一例を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割したメッシュ等に基づいて有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップS1と、変形集中の解析位置と評価対象位置とを対比する対比ステップS2と、一致した解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップS3と、抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップS4と、から概略構成されている。
【0022】
また、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法は、対比ステップS2において変形集中の評価対象位置と解析位置とが一致しない場合に、対比ステップS2から分岐して車両用耐衝突補強材の境界条件を変更する変更ステップS5を備え、評価対象位置と解析位置とが一致するまで、変更ステップS5、解析ステップS1及び対比ステップS2を繰り返し行うようになっている。
以下、各ステップについて説明する。
【0023】
(解析ステップS1)
解析ステップS1は、車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、このメッシュと、車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行うステップである。
【0024】
図2には、評価対象の車両用耐衝突補強材の一例を示す。図2に示す車両用耐衝突補強材は、自動車用のセンターピラー補強材のモデルである。自動車のセンターピラーは、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。センターピラー補強材は更に、アウタ側の補強材と、インナ側の補強材の2つの部品で構成される。センターピラーの最も外側に位置するボディサイドアウタパネルは、主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与しない。従って、側面衝突時の衝撃エネルギーは、主にセンターピラー補強材により吸収される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々であるが、本実施形態では、図2に示す車両用耐衝突補強材1をモデルとして説明する。
【0025】
図2に示す車両用耐衝突補強材1は、アウタ側部材1Aと、インナ側部材1Bとが溶接によって相互に接合されて構成されている。アウタ側部材1Aは、帯状の金属板の幅方向中央に凸部2を設け、更に凸部2の幅方向中央に凹ビード3を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部2の幅及び凹ビード3の幅が長手方向に沿って一定の部材である。
また、インナ側部材1Bは、アウタ側部材1aの凸部2の突出方向と反対側に重ねられた金属板からなる部材である。両部材1A、1Bは、スポット溶接によって接合されている。
【0026】
図2では、凹ビード3の幅を含む凸部2全体の幅を60mmとし、凹ビード3の幅を20mmとし、長手方向の長さを1000mmとしている。車両用耐衝突補強材1の各部材1A、1Bを構成する金属板としては、例えば、引張強度440MPa級以上の固溶強化鋼、DP鋼、焼き入れ鋼等の鋼板を用いることができ、また、板厚が3mm以下の薄板を用いることができる。図2に示す車両用耐衝突補強材1は、薄板をプレス成形することで形成される。尚、図2におけるH1点及びH2点はそれぞれ、後述する評価対象位置である。
【0027】
解析ステップS1は、図1に示すように、車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュを生成するメッシュ生成ステップS11と、車両用耐衝突補強材1の物理量及び境界条件を決める条件設定ステップS12と、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う座屈固有値解析ステップS13と、座屈固有値解析によって得られた結果を抽出する抽出ステップS14とから構成される。
【0028】
先ず、メッシュ生成ステップS11では、図2に示す車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する。メッシュの生成は、例えば、市販の有限要素法の解析パッケージ等に含まれるメッシュ生成プログラムを用いることが出来る。有限要素の形状としては、三角形、四角形のいずれでもよい。有限要素の大きさは、車両用耐衝突補強材1の大きさ、形状、境界条件に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
次に、条件設定ステップS12では、車両用耐衝突補強材1の物理量と境界条件とを設定する。物理量は、車両用耐衝突補強材1を構成する金属板の板厚、弾性率等であり、金属板の物性値をそのまま用いればよい。また境界条件は、車両用耐衝突補強材1の拘束位置、荷重位置及び荷重量である。
【0030】
拘束位置は、車両用耐衝突補強材1が実車両の部材として適用された場合に、車両の他の構成部材によって拘束される位置とすればよい。例えば、車両用のセンターピラー補強材には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部と、車両のサイドシルに溶接される下側結合部とが設けられるので、上側結合部または下側結合部のいずれか一方に対応する位置を拘束位置とすればよい。
【0031】
但し、車両用のセンターピラー補強材では、側面衝突を受けた際に下側結合部側に圧縮荷重が加わって潰されるケースが多く、そのような状況においては、拘束位置が当初の下側結合部から、潰れ箇所の上部に遷移していく。また、側面衝突を受けた際に、センターピラー補強材に圧縮応力が加わり、上側結合部と、新たな拘束位置である潰れ箇所の上部との間で座屈変形が起こる。このように、拘束位置が衝突変形によって移動することが予想されるセンターピラー補強材については、当初の拘束位置を下部結合部に設定すればよい。そして、対比ステップS2において解析位置と評価対象位置とが重ならない場合に、後述する変更ステップS5において、拘束位置を当初の下部結合部から評価対象位置寄りに変更して、拘束位置の最適化を図ればよい。
【0032】
また、荷重位置は、車両用耐衝突補強材1が車両の部材として適用され、この車両に衝突荷重が加わった場合において、車両用耐衝突補強材1にその荷重が伝達される位置とすればよい。例えば、車両用のセンターピラー補強材には、上述のように上側結合部と下側結合部とが設けられるが、下側結合部は前述の通り拘束位置となるので、上部結合部を荷重位置とすればよい。また、荷重量は任意に設定すればよい。
【0033】
図2に示す車両用耐衝突補強材1の場合は、例えば、長手方向一端部1aを荷重位置とし、他端部1bを拘束位置とし、荷重量を600Nとし、荷重方向は、図2のZ軸方向とする。尚、ここで決定した拘束位置は、後のステップにおいて変更される場合がある。
【0034】
次に、座屈固有値解析ステップS13では、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う。座屈固有値解析は、有限要素法の一種であり、座屈モードと、座屈固有値とを求める解析法である。例えば、解析ソフトウェアとして、静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いることができる。座屈固有値解析は、1次からn次の複数の固有モード次数について行えばよい。固有モード次数の上限に特に制限はないが、本実施形態では10次まで行えば十分である。
【0035】
次に、抽出ステップS14では、座屈固有値解析ステップS13において得られた結果を抽出する。図3には、解析結果の一例を示す。図3(a)は1次モードの解析結果であり、図3(b)は2次モードの解析結果である。1次モードでは、図3(a)に示すように変形集中が見られず、車両用耐衝突補強材全体が撓んだ状態が示されている。一方、2次モードでは、図3(b)に示すように、車両用耐衝突補強材の長手方向のほぼ中央に、変形集中が生じている。この変形集中の位置を解析位置Kとする。本例では、1次及び2次モードの解析結果を示したが、変形集中の解析位置は固有モード次数によって変動するので、例えば1〜10次までモード解析を行えば、複数の解析位置が求められる。
【0036】
(対比ステップS2)
次に、対比ステップS2では、座屈固有値解析によって抽出された、複数の固有モード次数毎の変形集中の解析位置と、車両用耐衝突補強材の変形集中の評価対象位置とを対比する。ここで、評価対象位置とは、車両用耐衝突補強材1のうち、耐座屈変形性能を評価したい任意の位置である。
【0037】
例えば、車両用耐衝突補強材としてセンターピラー補強材を例に説明すると、センターピラー補強材を車両に搭載して側面衝突試験を実施した場合に、センターピラー補強材のうち車両の上部に対応する部分が、側面衝突の際に下部からの圧縮荷重を受けて車内側に折れ曲がって座屈変形しやすい部分となる。この車内側への座屈変形を防止するためには、車両の上部に配置される部分の耐座屈変形性能を高める必要があり、そのためには、座屈変形し易い位置を評価対象位置に設定して、本実施形態の評価方法によって評価すればよい。
【0038】
また、車両用耐衝突補強材1を実際の車両に適用して衝突試験を行い、その結果、座屈変形が生じた場合に、当該変形箇所を本実施形態の評価対象位置に設定してもよい。これにより、本実施形態の評価方法を適用することで、耐座屈変形性能の向上が図られる。
【0039】
本ステップS2における変形集中の解析位置と評価対象位置との対比は、例えば、図3(b)に示された解析結果における解析位置Kが、評価対象位置に重なるかどうかで判断すればよい。解析位置Kは、図3(b)に示すようにある程度の広がりを持つので、この広がりの範囲と評価対象位置とが重なる場合に、解析位置Kと評価対象位置とが一致すると判断し、広がりの範囲と評価対象位置とが重ならない場合には、解析位置Kと評価対象位置とが一致しないと判断すればよい。
【0040】
本例では例えば、評価対象位置を、図2に示すように車両用耐衝突補強材の長手方向中央のH1点に設定したとすると、この評価対象位置(H1点)は、図3(b)に示す2次モードの変形集中の解析位置Kと重なるので、本例では2次モードにおいて解析位置Kと評価対象位置H1が一致したと判断する。
【0041】
(固有値抽出ステップS3)
次に、解析位置Kと評価対象位置H1とが一致した場合は、固有値抽出ステップS3に進み、解析位置Kの固有モード次数における座屈固有値を抽出する。本例では、固有モード次数が2次になる。従って2次モードの座屈固有値が、車両用耐衝突補強材1の評価対象位置H1における耐座屈性能を表す評価値となる。
【0042】
(評価ステップS4)
次に、評価ステップS4では、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較する。
すなわち前述したように、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、S1〜S3の各ステップを行って座屈固有値をそれぞれ求める。この場合の固有モード次数は、変形集中の解析位置Kと評価対象位置H1との対比によって決定された先の固有モード次数を用いる。本例の場合は2次モードの座屈固有値を用いる。
【0043】
そして、各車両用耐衝突補強材毎に座屈固有値を対比する。最も高い座屈固有値を示した形状が、評価対象位置H1において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材となる。
【0044】
なお、評価ステップS4において、比較対象となる車両用耐衝突補強材同士の形状、板厚、弾性率が大幅に異なる場合は、同じ固有モード次数で比較しても変形形態が異なるものとなり、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致しなくなる可能性がある。そのような場合には、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致することを条件として、異なる固有モード次数での座屈固有値を用いる。但し、この際対比する複数の車両用耐衝突補強材について、座屈固有値解析の境界条件は変更してはならない。
【0045】
(対比ステップS2において、解析位置と評価対象位置とが一致しない場合)
次に、対比ステップS2において、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合について説明する。
解析位置と評価対象位置が一致しない場合とは、例えば、図2において、評価対象位置をH2点に設定した場合である。この評価対象位置(H2点)は、図3(b)に示す2次モードの変形集中の解析位置Kと重ならない。また、3次以上の高次モードにおける解析位置とも重ならない。この場合は、全ての固有モード次数において解析位置と評価対象位置が一致しないと判断し、変更ステップS5に進む。
【0046】
(変更ステップS5)
変更ステップS5は、条件設定ステップS12において設定した境界条件を変更するステップである。本実施形態では、拘束位置を評価対象位置寄りに変更すればよい。具体的には、図2に示すように、長手方向他端部1bに設定した拘束位置を、評価対象位置(H2点)寄の位置1cに移動させる。移動量は任意に設定すればよく、例えば、車両用耐衝突補強材1の長手方向の全長の数分の1〜数十分の1程度にすればよい。
【0047】
そして、新たな拘束位置1cに基づいて、座屈固有値解析ステップS13、抽出ステップS14及び対比ステップS2を行う。この一連のサイクルを、解析位置と評価対象位置とが一致するまで繰り返し行う。解析位置と評価対象位置とが一致した場合には、固有値抽出ステップS3及び評価ステップS4に移ればよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法によれば、ステップS1〜S4を経て得られた座屈固有値が、実際の車両を用いた衝突試験の結果とほぼ相関するので、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、車両を用いた衝突試験を行うことなく、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能の評価が迅速かつ簡便に行うことが出来る。
【0049】
また、本実施形態の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状、板厚、弾性率等の物理量及び境界条件をパラメータとして耐座屈性能を容易に評価できる。また、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合は、座屈固有値解析における境界条件を変更して再度座屈固有値解析を行うことで、境界条件の最適化を図ることができ、評価対象位置における座屈性能を正確に予測できる。これにより、車両用耐衝突補強材を単独で評価できる。
【0050】
また、本実施形態の評価方法を実現するべく、コンピュータに対し,上記実施の形態の評価方法を実現するためのコンピュータプログラムを供給し,そのコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納された該プログラムに従って評価することも、本発明の範疇に含まれる。
【0051】
また、上記の場合においては、上記コンピュータプログラム自体が上記の実施の形態の機能を実現することになり,本発明を構成する。そのコンピュータプログラムの伝送媒体としては,プログラム情報を搬送波として伝播させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN,インターネット等のWAN,無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の優先回線や無線回線等)用いることができる。
【0052】
さらに、上記コンピュータプログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体は本発明を構成する。かかる記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等の各種記録媒体を用いることが出来る。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本発明の評価方法の車両のセンターピラー補強材への適用について検討した。
実際の車両のセンターピラー部は、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強部材(アウタ側、インナ側の2部品)で構成される。一番外側に位置するボディサイドパネルは主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与せず、側面衝突時の衝撃エネルギーは主にセンターピラー補強部材により吸収される。
【0054】
実際に用いられているセンターピラー補強材は形状等様々であるが、ここではモデル部材を用いた。その形状を図4及び図5に示す。ここで対象とするのはセンターピラー補強部材11のインナ側部材11Bとアウタ側部材11Aであり、この部分を取り出して予測を行った。先ず、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成した(ステップS11)。
【0055】
次に、本発明の評価方法を適用するための境界条件としての荷重位置と拘束位置を図6に示す。実際の衝突変形では、センターピラー補強部材11のアウタ部材11Aの下部を中心に変形が始まり、その後上部に圧縮の荷重が作用する。センターピラー補強部材11は、このような圧縮荷重下で高い変形抵抗を示す構造が優れたものであると考えられる。このような衝突時の変形を模擬して、アウタ側部材11Aに圧縮荷重が加わるように上端のルーフサイドレール12との結合部を荷重位置Mとし、この荷重位置Mに対して車両外側方向に600Nの荷重を与えた(ステップS12)。また下端に関しては完全拘束としたが(ステップS12)、その位置に関しては解析結果を参照しながら最適化を行った。すなわち、当初の拘束位置を、下端のサイドシル13との結合部とした。
また、センターピラー補強部材11を構成する鋼板の厚みを1.8mmに設定し、弾性率を210GPaに設定した(ステップS12)。
【0056】
実際の衝突変形を考えると、衝突の初期の時点では拘束位置Lはサイドシルとの結合箇所であるが、下部の潰れ変形の進行とともに上方に拘束位置が移動していく。センターピラー補強部材上部の変形抵抗が重要となるのは、下部での潰れ変形が進行した衝突後期であり、この状態での上部の変形挙動は拘束位置を上方に変えることにより擬似的に評価できる。
【0057】
図7に今回の解析で使用した拘束位置を示す。拘束位置L1はサイドシルとの結合箇所であり、これを最初の拘束位置として座屈固有値解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(a)に示す。これは1次モードでの変形状態であるが、変形集中の解析位置K1がセンターピラー補強材の下部に現れている。これは高次までの解析を行っても同様であった(ステップS13〜S14)。
【0058】
実際の部材で変形が集中し、折れが観察される評価対象位置はセンターピラー補強材の上部であり、変形集中の解析位置K1と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。これではその部分の特性を評価できない。そこで、拘束位置を上方に100mm移動させて図7に示すように新たな拘束位置L2を設定し(ステップS5)、再度解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(b)に示すが、拘束位置L2では、拘束位置L1の場合と変形状態がほとんど変化せず、変形集中の解析位置K2がセンターピラー補強材の下部に現れた。これは、高次モードでも同様であった(ステップS13〜S14)。従って、変形集中の解析位置K2と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。
【0059】
そこでさらに、拘束位置L2から100mm上方に拘束位置を移動させて新たに拘束位置L3を設置し、座屈固有値解析を行った(ステップS5、S13)。その結果、図8(c)に示すように、1次モードにおける解析位置K3がセンターピラー補強材の上部に生じ、評価対象位置にほぼ重なる結果になった(ステップS2)。従って、拘束位置L3を境界条件とし、固有モード次数として1次モードを採用することで、座屈固有値を評価することにより(ステップS3、S4)、実際のセンターピラー補強部材の耐座屈性を予測することが可能になった。
【0060】
次に、座屈変形しやすい上部に凹ビードを設けたこと以外は図4及び図5に示すセンターピラー補強材と同一形状のセンターピラー補強材を用いて、座屈固有値解析を行った。境界条件は図6の場合と同様に、上端を荷重位置Mに設定して600Nの荷重入力を加えることとし、下部は図7に示す拘束位置L3にて完全拘束した。
【0061】
用いた形状は、凹ビードのないNo.1部材と、図9に示す位置に深さ5mmの凹ビード18をセンターピラー補強部材のアウタ側部材に与えたNo.2部材、位置はNo.2と同じであるが凹ビードの深さを3mmとしたNo.3である。
【0062】
なお、図4、図5及び図9に示すセンターピラー用補強材11のアウタ側部材11Aの形状について詳細に説明すると、このアウタ側部材11Aは、薄板が例えば凸状にプレス成形加工されてなるものであって、上下方向に延在する本体部16と、本体部16の幅方向両側に設けた折曲部13と、折曲部13を介して本体部16と一体化された一対の側壁部14、14と、側壁部14、14に設けられた溶接部となるフランジ部15と、から概略構成されている。また、本体部16の上端側には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部16Aが設けられ、一方、本体部16の下端側には、車両のサイドシルに溶接される下側結合部16Bが設けられている。そして、本体部2に凹ビード18が設けられている。
【0063】
No.1からNo.3の部材について同じ境界条件で解析を行った結果、いずれも1次モードで上部に変形が生じ、そのときのそれぞれ座屈固有値は5338(No.1)、15863(No.2)、9834(No.3)となった。すなわちほぼ同じ変形モードで、深さ5mmの凹ビードを設けたNo.2は凹ビード無しのNo.1の3倍、深さ3mmの凹ビードを設けたNo.3はNo.1の2倍の座屈抵抗を示すとの結果が得られ、凹ビードの付与が効果があるという結果が得られた。
【0064】
以上の解析結果を検証するために、図9に示す構造を備えたセンターピラー補強部材を、図4に示すように上下端をルーフサイドレール12およびサイドシル13によって固定した状態で実際に衝突実験を行った。アウタ側材11Aの素材は板厚1.8mmの780MPa級DP鋼とし(降伏応力:490MPa、引張強さ:820MPa、伸び:24%)、インナ側部材11Bは板厚1.2mmの780MPa級DP鋼とした。
ルーフサイドレール12およびサイドシル13はすべて3.2mmの板厚の590MPa級鋼板(JSH590Y)を用いて作製した。各部材は約50mm間隔のスポット溶接により結合した。ルーフサイドレール12およびサイドシル13の左右端を治具により拘束し、その後半球状の治具(R=1000mm、125kg)をその頂点がセンターピラー補強部材11の下端から高さ490mmに位置するようにした状態で側方より速度15m/sでアウタ側から衝突させた。この際にセンターピラー補強部材11のインナ側部材11Bの稜線に約100mm間隔で付けたマークの位置を逐次計測し侵入量(変位量)の指標とした。結果を図10及び表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
図10及び表1に示すように、凹ビードを設けないNo.1では、約10msec経過時にセンターピラー補強部材の下端から高さ800〜900mmの位置に変形が集中し、折れが発生した。これは図8(c)での解析位置K3にほぼ相当していた。変形の進行とともにこの折れが上方にも拡大し、20msec経過時には大きな折れが生じていた。一方、深さ5mmの凹ビードを付与したNo.2ではアウタ部材に折れが生じず、その結果として20msec経過時の変形量が小さく好ましいことが分かった。No.3ではNo.1に比べ変形が抑制されていたがわずかな折れが生じ、侵入量はNo.2に比べて若干大きくなった。以上のように車体への侵入量の大きさはNo.1>No.3>No.2となった。これは座屈固有値解析での座屈固有値の大小と一致している。一般に凹ビードは断面二次モーメントを下げるために曲げ抵抗が下がるとされているが、衝突実験では凹ビードを付与すれば侵入量が低下する、すなわち変形抵抗が増加することが分かった。このような結果は断面二次モーメントだけを用いた場合には推定することができず、座屈固有値解析を使用することで初めて評価可能であり、本発明を適用する効果が高いことが分かった。
【0067】
(実施例2)
次に、実際の部品の衝撃吸収特性を、車両全体ではなく部分的な構造で評価する手法を検討した。
本例では凹ビードの配置最適化のために本発明の手法を用いたが、実際にはビード配置のみならず各部の断面形状設計に有用である。
【0068】
図11は、検討に用いたモデル部材の外形形状である。図2に示した車両用耐衝突補強材1と同じ構成のものであって、アウタ側部材とインナ側部材とが溶接によって相互に接合されて構成されている。アウタ側部材は、帯状の金属板の幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部の幅が長手方向に沿って断面幅が60mmと一定の部材である。一方、図11(b)に示す拡幅部材は、図11(a)と同様に幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材を含み、一端の凸部の幅が60mm、他端の凸部の幅が100mmで、一端と他端の間で凸部の幅が変化する部材である。
【0069】
これら2種類のモデル部材に対して、表2に示すNo.4〜No.19の部材を想定した。ストレート部材の断面形状を図12に示す。図12(a)に示すように凹ビードがないものをNo.4、No.12とし、図12(b)に示すように凹ビードの幅が20mmのものをNo.5、No.13とし、図12(c)に示すように凹ビードの幅が40mmのものをNo.6、No.14とした。
【0070】
【表2】
【0071】
拡幅部材に対しては、図13に示すように、凹ビードの形状が長手方向で変化しないもの(等幅)と、凸部の幅に合わせて広がっていくもの(拡幅)の2種類の形状を検討した。これらの部材形状はフロントサイドメンバのエクステンションやクロスメンバを想定しているものである。
【0072】
想定した材料特性値は、980MPa級DP鋼であって、降伏応力を650MPaと考えた。下記式(1)を用いて、板厚と強度を考慮した有効幅c’を算出すると、板厚1.2mmで部材幅が60mmの場合は有効幅c’が16.5mm、部材幅が100mmの場合は有効幅c’が18,0mmとなった。また板厚1.8mmでは部材幅が60mmの場合は有効幅c’が21.9mm、部材幅が100mmの場合は有効幅c’が25.3mmとなった。
従って、ビードを配置した部材の内、20mm幅の部材では、有効幅以外の場所に凹ビードが配置されており、幅40mmの部材では凹ビードの形成領域が有効幅内にかかっている。
【0073】
尚、式(1)において、hは鋼板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の凸部の幅であり、Eは鋼板の弾性率であり、σYPは鋼板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0074】
【数1】
【0075】
まず、ストレート部材の断面性能を評価する際に行われる曲げ特性の評価を行った。解析ソフトウェアは静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いた。部材の中央部を拘束した上で部材の両端に600Nの力を与えてビード配置面に圧縮力が加わるようにして解析した。それぞれの部材で力を加えた端部の変位を計測した。その結果を表2に示す。
【0076】
表2に示すように、それぞれビードを配置したものと配置していないものとを比較すると、凹ビードを配置した方が負荷方向変位が大きくなってしまうことが分かった。これは、静的な曲げ変形では凹ビードにより断面二次モーメントが低下してしまい、曲がりやすくなることを意味していると考えられる。
【0077】
しかしながら実際の衝突変形では、凹ビードは座屈の防止と座屈後の荷重低下の阻止に有効であることが分かっており、このような評価では実性能と相関を取ることができない。そこで、衝突時の変形が局所的に起こることを考慮して、本発明に係る座屈固有値解析による評価を行った。
【0078】
解析ソフトウェアは、曲げ解析と同様にNASTRANを用いた。座屈固有値解析では、曲げ解析で与えた境界条件を基に高次モードまでの解析を行い(ステップS1)、その結果を変形形態と座屈固有値で評価した(ステップS2〜S4)。
【0079】
当該モードでの座屈荷重は、境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える。今回の解析では高次までの計算を行い、衝突変形での局部座屈とほぼ同等となる座屈モードを探索し(ステップS2、S5、S1)、そのモードでの座屈固有値を求めた(ステップS3)。
【0080】
今回対象にした部材は形状が単純であり、局部的な座屈に相当するモードは2次モードとなった。その値を表2に示す。表2に示されているように、静的な曲げ解析ではビードの効果が見られなかったのに対して、座屈固有値で評価した場合は、いずれも凹ビードを付けたもので座屈固有値が高くなっていることが分かった。また幅20mmと幅40mmの部材で比較すると、有効幅以外に配置している幅20mmの部材で座屈固有値が高くなっていることが分かった。
【0081】
従来のような、実際の衝突実験による検討は、時間やコストが膨大であり、かつ、ある部品を評価する際にはそれを支える他部材の情報も必要となる。しかしながら、本発明に係る座屈固有値解析は部品単体での検討が可能であり、通常の曲げ解析では効果の検討が難しい凹ビードの配置最適化には好適である。また実際の部材を考えたときに座屈モードが特定できている場合には、拘束位置等の境界条件により所望の座屈モードを得ることが可能であり、その上で凹ビードの配置検討をすればよい。このような手法により周囲の部材の情報が得られない場合でも凹ビードの配置検討を行うことが可能であり、設計の初期段階においては特に有効な手段となる。
【0082】
本発明の評価方法の有効性を確認するために、実際に部材を作製して落重試験により初期ピーク荷重を評価した。用いた素材は、上記の検討と同じく980MPa級DP鋼であり、板厚は1.2mmと1.8mmのものを用いた。部材の背板は他方の部材と同じ素材を用いた。スポット溶接間隔は30mmとした。この部材をスパン800mmで支持し、R50の落錘により中央部分に曲げを生じさせた。その結果を同じく表2に併せて示す。ビードを設けたもので初期ピーク荷重が高くなることが分かった。また座屈固有値解析により得た座屈固有値の結果と部材外形が同じものの中では良い対応関係が見られた。従って、凹ビードによる衝撃吸収特性の向上が確認できるとともに、座屈固有値解析を用いた数値解析手法が有効であることが分かった。
【0083】
今回対象にした部材の中で、折曲部から凹ビードまでの距離が10mmであるNo.6、No.14は、式(1)で算出される有効幅c’内にビードが配置されている。表2にまとめたように、これらの部材であっても座屈固有値や初期ピーク荷重はビードを配置しないものよりも優れた特性を示すことが分かった。従って、有効幅c’内への凹ビードの配置も一案である。しかしながら、凹ビードの効果を最大限に発揮させようとする場合には、No.5、No.13のように有効幅c’外に凹ビードを配置した方が良い。また、何らかの制約条件により凹ビードが配置できない場合には、1段の段差のみでも有効幅外に配置することは効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法の評価対象となる車両用耐衝突補強材の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、評価対象となる車両用耐衝突補強材の有限要素法の座屈固有値解析の結果を示す図であって、(a)は1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(b)は2次モードの座屈固有値解析の結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例1のモデル部材を示す平面模式図である。
【図5】図5、実施例1のモデル部材を示す側面模式図である。
【図6】図6は、実施例1のモデル部材の荷重位置及び拘束位置を示す斜視模式図である。
【図7】図7は、実施例1のモデル部材の拘束位置L1〜L3を示す平面模式図である。
【図8】図8は、実施例1の座屈固有値解析の結果を示す図であって、(a)は拘束位置L1における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(b)は拘束位置L2における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(c)は拘束位置L3における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例1において用いたアウタ側のセンターピラー補強材を示す図であって、(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、(b)〜(e)はそれぞれ、(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。
【図10】図10は、衝突の際の実施例1のモデル部材の変位量と、高さ位置との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例2において検討に用いた衝突試験に用いた別のモデル部材を示す図であって、(a)はストレート部材の斜視図であり、(b)は拡幅部材の斜視図である。
【図12】図12は、図11(a)のストレート部材の断面形状を示す断面模式図であって、(a)は凹ビードがない例であり、(b)は凹ビードの幅が20mmの例であり、(c)は凹ビードの幅が40mmの例である。
【図13】図13は、実施例2において検討に用いたストレート部材及び拡幅部材を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
S1…解析ステップ、S2…対比ステップ、S3…固有値抽出ステップ、S4…評価ステップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車からの炭酸ガスの排出量を抑えるために、高強度鋼板を使用した自動車車体の軽量化が進められている。また、搭乗者の安全確保のためにも、自動車車体には軟鋼板の他に高強度鋼板を使用する方向で検討が進められている。
【0003】
車両の衝突安全性は重要な性能の一つであり、その性能向上が進められている。一般にこの性能は実際に車を製作して、衝突試験を行うことにより評価されていた。しかしながら、このような試験は膨大な時間とコストを要するため試験回数の低減が試行されている。
そこで用いられているのが有限要素法を用いた衝突解析である。この衝突解析では、車両の各部位を有限要素と呼ばれる小さな領域に分割した上で、動的陽解法という手法により解析を行うものである。デジタル化された車両を仮想空間の中で実際の衝突試験と同じ条件で変形させ、その際の衝撃吸収特性を評価することにより、実験回数の低減が図られてきた。
【0004】
しかしながらこのような衝突解析にはいくつかの問題があった。その一つは解析の準備に要する時間および計算時間が長いことであり、精緻な結果を得ようとするほど全体に要する時間が増加する傾向にある。またこのような解析は車両全体の設計が終わり、各部材の位置関係や接合方法が明確になってからでしかその性質上行うことができない。したがって、設計の構想段階で部材のある形状の衝撃吸収特性や耐座屈性を衝突解析で調査することは非常に難しく、特に部材単体で耐座屈性を予測するのはその周囲の部材形状が決まらない限りほぼ不可能であった。
【0005】
特許文献1(特開2008―33689号公報)には、有限要素法による衝突解析技術を活用した車両設計支援装置に関して開示されている。この装置では、構造変更を加えた前後で各部位毎の内部エネルギーの変化を算出することで、軽量化が可能な部位を簡便に抽出するということがなされている。しかしながら本装置では車両構造がほぼ確定した状態でないと評価が難しく、設計の初期段階では適用することが難しい。
【0006】
また、特許文献2(特開2008―149356)には、剛性の高い部品を設計するための方法が開示されている。この方法では成形加工による影響を取り込んだ動剛性解析を行い、プレス成形条件を変更することで剛性の高い部品を設計する方法が開示されている。しかしながらこの方法では衝突性能については全く触れられておらず、また動剛性解析も固有振動数解析である。
【0007】
座屈固有値解析そのものの手法については、非特許文献1(マトリックス有限要素法、原著/O.C.ツィエンキーヴィツ、監訳/吉識雅夫、山田嘉昭、培風館(1984))に開示されている。この手法は固有振動数解析と異なり、特定の境界条件(荷重、拘束)での分岐不安定を取り扱い、座屈荷重を求めるものである。しかしながらこの手法を衝突性能の評価に使用することは従来行われていなかった。
【特許文献1】特開2008―33689号公報
【特許文献2】特開2008―149356号公報
【非特許文献1】マトリックス有限要素法、原著/O.C.ツィエンキーヴィツ、監訳/吉識雅夫、山田嘉昭、培風館(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、車両用耐衝突補強材の耐座屈性を簡便迅速に予測する車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは部材単体、あるいは部分構造のみで耐座屈性を予測する方法を鋭意検討した。一般に部材単体の性能検討としては、断面二次モーメントの部材内での分布が用いられることが多い。これにより部材の曲げに対する抵抗を調査し、作用する外力を予測しながら各部の寸法が決定される。しかしながら本来、断面二次モーメントは部材全体の曲げ剛性と対応する量である。耐座屈性および部材の衝撃吸収能は、ある箇所への変形の集中し易さと変形が集中した後から崩壊までの抵抗により支配されるものであり、基本的に部材の局所的な性質に依存して決まる。断面二次モーメントはこのような局所的な性質の代表値とはなりえない。そこで本発明者らは部材の局所的な性能を把握できる方法について検討した。
【0010】
従来の衝突解析は、このような局所的な性質を把握することが可能であり、実際の部材構成をデジタル上で再現し、加わる外力についてもほぼ現実を反映した境界条件により計算することが可能である。しかしながら従来の解析を行うには、設計対象の部材だけでなく、それを支持する周囲の部材含めて計算の中で考慮する必要があった。実際の設計の初期段階を考えると周囲の部材は同時に設計されることがほとんどであり、確定した情報を得ることが難しい。またこのような解析は境界条件の設定が煩雑であり工数を要するとともに、計算時間も長く短期間で最適解を検討するには向いていない。これらの理由により設計初期段階で衝突解析を用いることは難しい。
【0011】
本発明者らは、衝突における局所的な変形を模擬するために有限要素法による座屈固有値解析に着目した。座屈固有値解析は静的解法を利用するものであるが、ある境界条件下で部材がどのような変形形態となり、そのときの座屈抵抗を調べることが可能である。前述のように衝突変形は局所的な変形である一方、座屈固有値解析は衝突変形時の変形形態と類似の座屈モードにおいてその際の座屈抵抗を比較することで、衝突変形時の耐座屈性や衝撃吸収特性と相関させることができることに思い至った。この手法では基本的に部品単体での検討が可能であり、かつ解析時間も非常に短い。従って設計の初期段階で衝突性能を定量的に把握しながら設計を進めることが可能である。
【0012】
また、さらにこの座屈固有値解析は、凹ビードを有する部材の耐座屈性を予測し、ビード配置の最適化を行う際に特に有用である。閉断面構造を有する耐衝突補強材に凹ビートを設けることは断面二次モーメントの減少となり、従来の設計方法ではこのような凹ビードの効果の予測が出来ていない。本発明者らは有限要素法による座屈固有値解析を用いることで、凹ビードの効果を評価でき、部材形状が三次元的に複雑となった場合でもビード配置を最適化できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする。
また、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記ステップが、前記車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、前記メッシュ、前記車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップと、前記座屈固有値解析によって抽出された、前記複数の固有モード次数毎の変形集中の前記解析位置と、前記車両用耐衝突補強材の変形集中の前記評価対象位置とを対比する対比ステップと、前記対比ステップにおいて前記評価対象位置と前記解析位置とが概略一致した場合に、一致した前記解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップと、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士を、前記抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップと、から構成されることを特徴とする。
更に、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記対比ステップにおいて変形集中の前記評価対象位置と前記解析位置とが一致しない場合に、前記車両用耐衝突補強材の前記境界条件を変更する変更ステップを備え、前記評価対象位置と前記解析位置とが一致するまで、前記変更ステップ、前記解析ステップ及び前記対比ステップを繰り返し行うことを特徴とする。
更にまた、本発明の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法は、先に記載の評価方法であって、前記車両用耐衝突補強材の物理量が、前記車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚または弾性率のいずれか一方または両方であることを特徴とする。
【0014】
次に、本発明のコンピュータプログラムは、先の何れかに記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のコンピュータプログラムで読み取り可能な記憶媒体は、先に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、車両用耐衝突補強材の耐座屈性を簡便迅速に予測する車両用耐衝突補強材の評価方法、コンピュータプログラム及びコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法の概略について説明すると、まず、有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求める。
次に、車両用耐衝突補強材に対して実際に座屈荷重試験を行って変形集中の位置を求めるか、あるいは、車両用耐衝突補強材の中で耐座屈変形性能を評価したい位置を任意に定める。この実測位置または評価したい位置を評価対象位置とする。
次に、固有モード次数毎に求めた変形集中の解析位置と、変形集中の評価対象位置とを対比する。
そして、解析位置と評価対象位置とが重なる場合の固有モード次数を決定する。
そして、決定された固有モード次数における座屈固有値を、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能の評価値とする。
【0017】
次に、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、上記と同様にして座屈固有値を求める。但し、この場合の固有モード次数は、変形集中の解析位置と評価対象位置との対比によって決定された先の固有モード次数を用いることを基本とする。すなわち、座屈固有値解析の固有モード次数は、各車両用耐衝突補強材毎に共通の次数を用いることが簡便かつ迅速に解析を行う上で好ましい。しかしながら形状や材料の物理量が大幅に異なる場合には同じ次数で比較すると変形形態が異なるものとなってしまい、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致しなくなる可能性がある。そのような場合には変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致することを条件として、異なる固有モード次数での座屈固有値を用いることができる。但し、この際対比する複数の車両用耐衝突補強材について座屈固有値解析の境界条件は変更してはならない。
【0018】
そして、各車両用耐衝突補強材毎に得られた座屈固有値を対比する。座屈固有値解析によって得られた座屈固有値は、実際の車両を用いた衝突試験の結果とほぼ相関するので、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、車両を用いた衝突試験を行うことなく、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能を評価することが可能となる。
【0019】
本実施形態の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状、板厚、弾性率等の物理量及び境界条件をパラメータとして耐座屈性能を評価できる。また、後述するように、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合は、座屈固有値解析における境界条件を変更して再度座屈固有値解析を行うことで、評価対象位置における座屈性能を正確に予測できる。これにより、車両用耐衝突補強材を単独で評価することが可能になる。
【0020】
以下、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法を説明するフローチャートである。また、図2は、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法の評価対象となる車両用耐衝突補強材の一例を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割したメッシュ等に基づいて有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップS1と、変形集中の解析位置と評価対象位置とを対比する対比ステップS2と、一致した解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップS3と、抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップS4と、から概略構成されている。
【0022】
また、本実施形態の車両用耐衝突補強材の評価方法は、対比ステップS2において変形集中の評価対象位置と解析位置とが一致しない場合に、対比ステップS2から分岐して車両用耐衝突補強材の境界条件を変更する変更ステップS5を備え、評価対象位置と解析位置とが一致するまで、変更ステップS5、解析ステップS1及び対比ステップS2を繰り返し行うようになっている。
以下、各ステップについて説明する。
【0023】
(解析ステップS1)
解析ステップS1は、車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、このメッシュと、車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行うステップである。
【0024】
図2には、評価対象の車両用耐衝突補強材の一例を示す。図2に示す車両用耐衝突補強材は、自動車用のセンターピラー補強材のモデルである。自動車のセンターピラーは、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強材(車両用耐衝突補強材)とで構成される。センターピラー補強材は更に、アウタ側の補強材と、インナ側の補強材の2つの部品で構成される。センターピラーの最も外側に位置するボディサイドアウタパネルは、主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与しない。従って、側面衝突時の衝撃エネルギーは、主にセンターピラー補強材により吸収される。自動車のセンターピラー部は、車種によって形状等が様々であるが、本実施形態では、図2に示す車両用耐衝突補強材1をモデルとして説明する。
【0025】
図2に示す車両用耐衝突補強材1は、アウタ側部材1Aと、インナ側部材1Bとが溶接によって相互に接合されて構成されている。アウタ側部材1Aは、帯状の金属板の幅方向中央に凸部2を設け、更に凸部2の幅方向中央に凹ビード3を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部2の幅及び凹ビード3の幅が長手方向に沿って一定の部材である。
また、インナ側部材1Bは、アウタ側部材1aの凸部2の突出方向と反対側に重ねられた金属板からなる部材である。両部材1A、1Bは、スポット溶接によって接合されている。
【0026】
図2では、凹ビード3の幅を含む凸部2全体の幅を60mmとし、凹ビード3の幅を20mmとし、長手方向の長さを1000mmとしている。車両用耐衝突補強材1の各部材1A、1Bを構成する金属板としては、例えば、引張強度440MPa級以上の固溶強化鋼、DP鋼、焼き入れ鋼等の鋼板を用いることができ、また、板厚が3mm以下の薄板を用いることができる。図2に示す車両用耐衝突補強材1は、薄板をプレス成形することで形成される。尚、図2におけるH1点及びH2点はそれぞれ、後述する評価対象位置である。
【0027】
解析ステップS1は、図1に示すように、車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュを生成するメッシュ生成ステップS11と、車両用耐衝突補強材1の物理量及び境界条件を決める条件設定ステップS12と、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う座屈固有値解析ステップS13と、座屈固有値解析によって得られた結果を抽出する抽出ステップS14とから構成される。
【0028】
先ず、メッシュ生成ステップS11では、図2に示す車両用耐衝突補強材1の形状を有限要素に分割してメッシュのデータを生成する。メッシュの生成は、例えば、市販の有限要素法の解析パッケージ等に含まれるメッシュ生成プログラムを用いることが出来る。有限要素の形状としては、三角形、四角形のいずれでもよい。有限要素の大きさは、車両用耐衝突補強材1の大きさ、形状、境界条件に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
次に、条件設定ステップS12では、車両用耐衝突補強材1の物理量と境界条件とを設定する。物理量は、車両用耐衝突補強材1を構成する金属板の板厚、弾性率等であり、金属板の物性値をそのまま用いればよい。また境界条件は、車両用耐衝突補強材1の拘束位置、荷重位置及び荷重量である。
【0030】
拘束位置は、車両用耐衝突補強材1が実車両の部材として適用された場合に、車両の他の構成部材によって拘束される位置とすればよい。例えば、車両用のセンターピラー補強材には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部と、車両のサイドシルに溶接される下側結合部とが設けられるので、上側結合部または下側結合部のいずれか一方に対応する位置を拘束位置とすればよい。
【0031】
但し、車両用のセンターピラー補強材では、側面衝突を受けた際に下側結合部側に圧縮荷重が加わって潰されるケースが多く、そのような状況においては、拘束位置が当初の下側結合部から、潰れ箇所の上部に遷移していく。また、側面衝突を受けた際に、センターピラー補強材に圧縮応力が加わり、上側結合部と、新たな拘束位置である潰れ箇所の上部との間で座屈変形が起こる。このように、拘束位置が衝突変形によって移動することが予想されるセンターピラー補強材については、当初の拘束位置を下部結合部に設定すればよい。そして、対比ステップS2において解析位置と評価対象位置とが重ならない場合に、後述する変更ステップS5において、拘束位置を当初の下部結合部から評価対象位置寄りに変更して、拘束位置の最適化を図ればよい。
【0032】
また、荷重位置は、車両用耐衝突補強材1が車両の部材として適用され、この車両に衝突荷重が加わった場合において、車両用耐衝突補強材1にその荷重が伝達される位置とすればよい。例えば、車両用のセンターピラー補強材には、上述のように上側結合部と下側結合部とが設けられるが、下側結合部は前述の通り拘束位置となるので、上部結合部を荷重位置とすればよい。また、荷重量は任意に設定すればよい。
【0033】
図2に示す車両用耐衝突補強材1の場合は、例えば、長手方向一端部1aを荷重位置とし、他端部1bを拘束位置とし、荷重量を600Nとし、荷重方向は、図2のZ軸方向とする。尚、ここで決定した拘束位置は、後のステップにおいて変更される場合がある。
【0034】
次に、座屈固有値解析ステップS13では、メッシュ、物理量及び境界条件に基づいて座屈固有値解析を行う。座屈固有値解析は、有限要素法の一種であり、座屈モードと、座屈固有値とを求める解析法である。例えば、解析ソフトウェアとして、静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いることができる。座屈固有値解析は、1次からn次の複数の固有モード次数について行えばよい。固有モード次数の上限に特に制限はないが、本実施形態では10次まで行えば十分である。
【0035】
次に、抽出ステップS14では、座屈固有値解析ステップS13において得られた結果を抽出する。図3には、解析結果の一例を示す。図3(a)は1次モードの解析結果であり、図3(b)は2次モードの解析結果である。1次モードでは、図3(a)に示すように変形集中が見られず、車両用耐衝突補強材全体が撓んだ状態が示されている。一方、2次モードでは、図3(b)に示すように、車両用耐衝突補強材の長手方向のほぼ中央に、変形集中が生じている。この変形集中の位置を解析位置Kとする。本例では、1次及び2次モードの解析結果を示したが、変形集中の解析位置は固有モード次数によって変動するので、例えば1〜10次までモード解析を行えば、複数の解析位置が求められる。
【0036】
(対比ステップS2)
次に、対比ステップS2では、座屈固有値解析によって抽出された、複数の固有モード次数毎の変形集中の解析位置と、車両用耐衝突補強材の変形集中の評価対象位置とを対比する。ここで、評価対象位置とは、車両用耐衝突補強材1のうち、耐座屈変形性能を評価したい任意の位置である。
【0037】
例えば、車両用耐衝突補強材としてセンターピラー補強材を例に説明すると、センターピラー補強材を車両に搭載して側面衝突試験を実施した場合に、センターピラー補強材のうち車両の上部に対応する部分が、側面衝突の際に下部からの圧縮荷重を受けて車内側に折れ曲がって座屈変形しやすい部分となる。この車内側への座屈変形を防止するためには、車両の上部に配置される部分の耐座屈変形性能を高める必要があり、そのためには、座屈変形し易い位置を評価対象位置に設定して、本実施形態の評価方法によって評価すればよい。
【0038】
また、車両用耐衝突補強材1を実際の車両に適用して衝突試験を行い、その結果、座屈変形が生じた場合に、当該変形箇所を本実施形態の評価対象位置に設定してもよい。これにより、本実施形態の評価方法を適用することで、耐座屈変形性能の向上が図られる。
【0039】
本ステップS2における変形集中の解析位置と評価対象位置との対比は、例えば、図3(b)に示された解析結果における解析位置Kが、評価対象位置に重なるかどうかで判断すればよい。解析位置Kは、図3(b)に示すようにある程度の広がりを持つので、この広がりの範囲と評価対象位置とが重なる場合に、解析位置Kと評価対象位置とが一致すると判断し、広がりの範囲と評価対象位置とが重ならない場合には、解析位置Kと評価対象位置とが一致しないと判断すればよい。
【0040】
本例では例えば、評価対象位置を、図2に示すように車両用耐衝突補強材の長手方向中央のH1点に設定したとすると、この評価対象位置(H1点)は、図3(b)に示す2次モードの変形集中の解析位置Kと重なるので、本例では2次モードにおいて解析位置Kと評価対象位置H1が一致したと判断する。
【0041】
(固有値抽出ステップS3)
次に、解析位置Kと評価対象位置H1とが一致した場合は、固有値抽出ステップS3に進み、解析位置Kの固有モード次数における座屈固有値を抽出する。本例では、固有モード次数が2次になる。従って2次モードの座屈固有値が、車両用耐衝突補強材1の評価対象位置H1における耐座屈性能を表す評価値となる。
【0042】
(評価ステップS4)
次に、評価ステップS4では、形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士について、それぞれ抽出された座屈固有値を評価値として比較する。
すなわち前述したように、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、S1〜S3の各ステップを行って座屈固有値をそれぞれ求める。この場合の固有モード次数は、変形集中の解析位置Kと評価対象位置H1との対比によって決定された先の固有モード次数を用いる。本例の場合は2次モードの座屈固有値を用いる。
【0043】
そして、各車両用耐衝突補強材毎に座屈固有値を対比する。最も高い座屈固有値を示した形状が、評価対象位置H1において耐座屈性能に最も優れた車両用耐衝突補強材となる。
【0044】
なお、評価ステップS4において、比較対象となる車両用耐衝突補強材同士の形状、板厚、弾性率が大幅に異なる場合は、同じ固有モード次数で比較しても変形形態が異なるものとなり、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致しなくなる可能性がある。そのような場合には、変形集中の解析位置と変形集中の評価対象位置とが一致することを条件として、異なる固有モード次数での座屈固有値を用いる。但し、この際対比する複数の車両用耐衝突補強材について、座屈固有値解析の境界条件は変更してはならない。
【0045】
(対比ステップS2において、解析位置と評価対象位置とが一致しない場合)
次に、対比ステップS2において、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合について説明する。
解析位置と評価対象位置が一致しない場合とは、例えば、図2において、評価対象位置をH2点に設定した場合である。この評価対象位置(H2点)は、図3(b)に示す2次モードの変形集中の解析位置Kと重ならない。また、3次以上の高次モードにおける解析位置とも重ならない。この場合は、全ての固有モード次数において解析位置と評価対象位置が一致しないと判断し、変更ステップS5に進む。
【0046】
(変更ステップS5)
変更ステップS5は、条件設定ステップS12において設定した境界条件を変更するステップである。本実施形態では、拘束位置を評価対象位置寄りに変更すればよい。具体的には、図2に示すように、長手方向他端部1bに設定した拘束位置を、評価対象位置(H2点)寄の位置1cに移動させる。移動量は任意に設定すればよく、例えば、車両用耐衝突補強材1の長手方向の全長の数分の1〜数十分の1程度にすればよい。
【0047】
そして、新たな拘束位置1cに基づいて、座屈固有値解析ステップS13、抽出ステップS14及び対比ステップS2を行う。この一連のサイクルを、解析位置と評価対象位置とが一致するまで繰り返し行う。解析位置と評価対象位置とが一致した場合には、固有値抽出ステップS3及び評価ステップS4に移ればよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法によれば、ステップS1〜S4を経て得られた座屈固有値が、実際の車両を用いた衝突試験の結果とほぼ相関するので、形状、板厚、弾性率等が相互に異なる複数の車両用耐衝突補強材について、車両を用いた衝突試験を行うことなく、車両用耐衝突補強材の耐座屈性能の評価が迅速かつ簡便に行うことが出来る。
【0049】
また、本実施形態の評価方法は、車両用耐衝突補強材の形状、板厚、弾性率等の物理量及び境界条件をパラメータとして耐座屈性能を容易に評価できる。また、変形集中の解析位置と評価対象位置とが一致しない場合は、座屈固有値解析における境界条件を変更して再度座屈固有値解析を行うことで、境界条件の最適化を図ることができ、評価対象位置における座屈性能を正確に予測できる。これにより、車両用耐衝突補強材を単独で評価できる。
【0050】
また、本実施形態の評価方法を実現するべく、コンピュータに対し,上記実施の形態の評価方法を実現するためのコンピュータプログラムを供給し,そのコンピュータ(CPUあるいはMPU)に格納された該プログラムに従って評価することも、本発明の範疇に含まれる。
【0051】
また、上記の場合においては、上記コンピュータプログラム自体が上記の実施の形態の機能を実現することになり,本発明を構成する。そのコンピュータプログラムの伝送媒体としては,プログラム情報を搬送波として伝播させて供給するためのコンピュータネットワーク(LAN,インターネット等のWAN,無線通信ネットワーク等)システムにおける通信媒体(光ファイバ等の優先回線や無線回線等)用いることができる。
【0052】
さらに、上記コンピュータプログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体は本発明を構成する。かかる記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等の各種記録媒体を用いることが出来る。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
本発明の評価方法の車両のセンターピラー補強材への適用について検討した。
実際の車両のセンターピラー部は、一般にボディサイドアウタパネルとその中に位置するセンターピラー補強部材(アウタ側、インナ側の2部品)で構成される。一番外側に位置するボディサイドパネルは主に強度の低い軟鋼により作製され、衝撃荷重の吸収にはほとんど寄与せず、側面衝突時の衝撃エネルギーは主にセンターピラー補強部材により吸収される。
【0054】
実際に用いられているセンターピラー補強材は形状等様々であるが、ここではモデル部材を用いた。その形状を図4及び図5に示す。ここで対象とするのはセンターピラー補強部材11のインナ側部材11Bとアウタ側部材11Aであり、この部分を取り出して予測を行った。先ず、センターピラー補強材の形状を複数の有限要素に分割してメッシュを生成した(ステップS11)。
【0055】
次に、本発明の評価方法を適用するための境界条件としての荷重位置と拘束位置を図6に示す。実際の衝突変形では、センターピラー補強部材11のアウタ部材11Aの下部を中心に変形が始まり、その後上部に圧縮の荷重が作用する。センターピラー補強部材11は、このような圧縮荷重下で高い変形抵抗を示す構造が優れたものであると考えられる。このような衝突時の変形を模擬して、アウタ側部材11Aに圧縮荷重が加わるように上端のルーフサイドレール12との結合部を荷重位置Mとし、この荷重位置Mに対して車両外側方向に600Nの荷重を与えた(ステップS12)。また下端に関しては完全拘束としたが(ステップS12)、その位置に関しては解析結果を参照しながら最適化を行った。すなわち、当初の拘束位置を、下端のサイドシル13との結合部とした。
また、センターピラー補強部材11を構成する鋼板の厚みを1.8mmに設定し、弾性率を210GPaに設定した(ステップS12)。
【0056】
実際の衝突変形を考えると、衝突の初期の時点では拘束位置Lはサイドシルとの結合箇所であるが、下部の潰れ変形の進行とともに上方に拘束位置が移動していく。センターピラー補強部材上部の変形抵抗が重要となるのは、下部での潰れ変形が進行した衝突後期であり、この状態での上部の変形挙動は拘束位置を上方に変えることにより擬似的に評価できる。
【0057】
図7に今回の解析で使用した拘束位置を示す。拘束位置L1はサイドシルとの結合箇所であり、これを最初の拘束位置として座屈固有値解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(a)に示す。これは1次モードでの変形状態であるが、変形集中の解析位置K1がセンターピラー補強材の下部に現れている。これは高次までの解析を行っても同様であった(ステップS13〜S14)。
【0058】
実際の部材で変形が集中し、折れが観察される評価対象位置はセンターピラー補強材の上部であり、変形集中の解析位置K1と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。これではその部分の特性を評価できない。そこで、拘束位置を上方に100mm移動させて図7に示すように新たな拘束位置L2を設定し(ステップS5)、再度解析を行った(ステップS13)。その結果を図8(b)に示すが、拘束位置L2では、拘束位置L1の場合と変形状態がほとんど変化せず、変形集中の解析位置K2がセンターピラー補強材の下部に現れた。これは、高次モードでも同様であった(ステップS13〜S14)。従って、変形集中の解析位置K2と評価対象位置とが一致しない結果になった(ステップS2)。
【0059】
そこでさらに、拘束位置L2から100mm上方に拘束位置を移動させて新たに拘束位置L3を設置し、座屈固有値解析を行った(ステップS5、S13)。その結果、図8(c)に示すように、1次モードにおける解析位置K3がセンターピラー補強材の上部に生じ、評価対象位置にほぼ重なる結果になった(ステップS2)。従って、拘束位置L3を境界条件とし、固有モード次数として1次モードを採用することで、座屈固有値を評価することにより(ステップS3、S4)、実際のセンターピラー補強部材の耐座屈性を予測することが可能になった。
【0060】
次に、座屈変形しやすい上部に凹ビードを設けたこと以外は図4及び図5に示すセンターピラー補強材と同一形状のセンターピラー補強材を用いて、座屈固有値解析を行った。境界条件は図6の場合と同様に、上端を荷重位置Mに設定して600Nの荷重入力を加えることとし、下部は図7に示す拘束位置L3にて完全拘束した。
【0061】
用いた形状は、凹ビードのないNo.1部材と、図9に示す位置に深さ5mmの凹ビード18をセンターピラー補強部材のアウタ側部材に与えたNo.2部材、位置はNo.2と同じであるが凹ビードの深さを3mmとしたNo.3である。
【0062】
なお、図4、図5及び図9に示すセンターピラー用補強材11のアウタ側部材11Aの形状について詳細に説明すると、このアウタ側部材11Aは、薄板が例えば凸状にプレス成形加工されてなるものであって、上下方向に延在する本体部16と、本体部16の幅方向両側に設けた折曲部13と、折曲部13を介して本体部16と一体化された一対の側壁部14、14と、側壁部14、14に設けられた溶接部となるフランジ部15と、から概略構成されている。また、本体部16の上端側には、車両のサイドルーフレールに溶接される上側結合部16Aが設けられ、一方、本体部16の下端側には、車両のサイドシルに溶接される下側結合部16Bが設けられている。そして、本体部2に凹ビード18が設けられている。
【0063】
No.1からNo.3の部材について同じ境界条件で解析を行った結果、いずれも1次モードで上部に変形が生じ、そのときのそれぞれ座屈固有値は5338(No.1)、15863(No.2)、9834(No.3)となった。すなわちほぼ同じ変形モードで、深さ5mmの凹ビードを設けたNo.2は凹ビード無しのNo.1の3倍、深さ3mmの凹ビードを設けたNo.3はNo.1の2倍の座屈抵抗を示すとの結果が得られ、凹ビードの付与が効果があるという結果が得られた。
【0064】
以上の解析結果を検証するために、図9に示す構造を備えたセンターピラー補強部材を、図4に示すように上下端をルーフサイドレール12およびサイドシル13によって固定した状態で実際に衝突実験を行った。アウタ側材11Aの素材は板厚1.8mmの780MPa級DP鋼とし(降伏応力:490MPa、引張強さ:820MPa、伸び:24%)、インナ側部材11Bは板厚1.2mmの780MPa級DP鋼とした。
ルーフサイドレール12およびサイドシル13はすべて3.2mmの板厚の590MPa級鋼板(JSH590Y)を用いて作製した。各部材は約50mm間隔のスポット溶接により結合した。ルーフサイドレール12およびサイドシル13の左右端を治具により拘束し、その後半球状の治具(R=1000mm、125kg)をその頂点がセンターピラー補強部材11の下端から高さ490mmに位置するようにした状態で側方より速度15m/sでアウタ側から衝突させた。この際にセンターピラー補強部材11のインナ側部材11Bの稜線に約100mm間隔で付けたマークの位置を逐次計測し侵入量(変位量)の指標とした。結果を図10及び表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
図10及び表1に示すように、凹ビードを設けないNo.1では、約10msec経過時にセンターピラー補強部材の下端から高さ800〜900mmの位置に変形が集中し、折れが発生した。これは図8(c)での解析位置K3にほぼ相当していた。変形の進行とともにこの折れが上方にも拡大し、20msec経過時には大きな折れが生じていた。一方、深さ5mmの凹ビードを付与したNo.2ではアウタ部材に折れが生じず、その結果として20msec経過時の変形量が小さく好ましいことが分かった。No.3ではNo.1に比べ変形が抑制されていたがわずかな折れが生じ、侵入量はNo.2に比べて若干大きくなった。以上のように車体への侵入量の大きさはNo.1>No.3>No.2となった。これは座屈固有値解析での座屈固有値の大小と一致している。一般に凹ビードは断面二次モーメントを下げるために曲げ抵抗が下がるとされているが、衝突実験では凹ビードを付与すれば侵入量が低下する、すなわち変形抵抗が増加することが分かった。このような結果は断面二次モーメントだけを用いた場合には推定することができず、座屈固有値解析を使用することで初めて評価可能であり、本発明を適用する効果が高いことが分かった。
【0067】
(実施例2)
次に、実際の部品の衝撃吸収特性を、車両全体ではなく部分的な構造で評価する手法を検討した。
本例では凹ビードの配置最適化のために本発明の手法を用いたが、実際にはビード配置のみならず各部の断面形状設計に有用である。
【0068】
図11は、検討に用いたモデル部材の外形形状である。図2に示した車両用耐衝突補強材1と同じ構成のものであって、アウタ側部材とインナ側部材とが溶接によって相互に接合されて構成されている。アウタ側部材は、帯状の金属板の幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材であって、凸部の幅が長手方向に沿って断面幅が60mmと一定の部材である。一方、図11(b)に示す拡幅部材は、図11(a)と同様に幅方向中央に凸部を設けた所謂断面視ハット状の部材を含み、一端の凸部の幅が60mm、他端の凸部の幅が100mmで、一端と他端の間で凸部の幅が変化する部材である。
【0069】
これら2種類のモデル部材に対して、表2に示すNo.4〜No.19の部材を想定した。ストレート部材の断面形状を図12に示す。図12(a)に示すように凹ビードがないものをNo.4、No.12とし、図12(b)に示すように凹ビードの幅が20mmのものをNo.5、No.13とし、図12(c)に示すように凹ビードの幅が40mmのものをNo.6、No.14とした。
【0070】
【表2】
【0071】
拡幅部材に対しては、図13に示すように、凹ビードの形状が長手方向で変化しないもの(等幅)と、凸部の幅に合わせて広がっていくもの(拡幅)の2種類の形状を検討した。これらの部材形状はフロントサイドメンバのエクステンションやクロスメンバを想定しているものである。
【0072】
想定した材料特性値は、980MPa級DP鋼であって、降伏応力を650MPaと考えた。下記式(1)を用いて、板厚と強度を考慮した有効幅c’を算出すると、板厚1.2mmで部材幅が60mmの場合は有効幅c’が16.5mm、部材幅が100mmの場合は有効幅c’が18,0mmとなった。また板厚1.8mmでは部材幅が60mmの場合は有効幅c’が21.9mm、部材幅が100mmの場合は有効幅c’が25.3mmとなった。
従って、ビードを配置した部材の内、20mm幅の部材では、有効幅以外の場所に凹ビードが配置されており、幅40mmの部材では凹ビードの形成領域が有効幅内にかかっている。
【0073】
尚、式(1)において、hは鋼板の厚みであり、bは凹ビードを設ける前の凸部の幅であり、Eは鋼板の弾性率であり、σYPは鋼板の降伏応力であり、A及びBはそれぞれ定数であって、Aは1.90であり、Bは−1.00である。
【0074】
【数1】
【0075】
まず、ストレート部材の断面性能を評価する際に行われる曲げ特性の評価を行った。解析ソフトウェアは静的陰解法の汎用構造解析有限要素法コードであるNASTRANを用いた。部材の中央部を拘束した上で部材の両端に600Nの力を与えてビード配置面に圧縮力が加わるようにして解析した。それぞれの部材で力を加えた端部の変位を計測した。その結果を表2に示す。
【0076】
表2に示すように、それぞれビードを配置したものと配置していないものとを比較すると、凹ビードを配置した方が負荷方向変位が大きくなってしまうことが分かった。これは、静的な曲げ変形では凹ビードにより断面二次モーメントが低下してしまい、曲がりやすくなることを意味していると考えられる。
【0077】
しかしながら実際の衝突変形では、凹ビードは座屈の防止と座屈後の荷重低下の阻止に有効であることが分かっており、このような評価では実性能と相関を取ることができない。そこで、衝突時の変形が局所的に起こることを考慮して、本発明に係る座屈固有値解析による評価を行った。
【0078】
解析ソフトウェアは、曲げ解析と同様にNASTRANを用いた。座屈固有値解析では、曲げ解析で与えた境界条件を基に高次モードまでの解析を行い(ステップS1)、その結果を変形形態と座屈固有値で評価した(ステップS2〜S4)。
【0079】
当該モードでの座屈荷重は、境界条件として与えた荷重(今回は600N)と座屈固有値の積で計算でき、座屈固有値が高いものほど座屈荷重が高く、従って座屈しにくいと言える。今回の解析では高次までの計算を行い、衝突変形での局部座屈とほぼ同等となる座屈モードを探索し(ステップS2、S5、S1)、そのモードでの座屈固有値を求めた(ステップS3)。
【0080】
今回対象にした部材は形状が単純であり、局部的な座屈に相当するモードは2次モードとなった。その値を表2に示す。表2に示されているように、静的な曲げ解析ではビードの効果が見られなかったのに対して、座屈固有値で評価した場合は、いずれも凹ビードを付けたもので座屈固有値が高くなっていることが分かった。また幅20mmと幅40mmの部材で比較すると、有効幅以外に配置している幅20mmの部材で座屈固有値が高くなっていることが分かった。
【0081】
従来のような、実際の衝突実験による検討は、時間やコストが膨大であり、かつ、ある部品を評価する際にはそれを支える他部材の情報も必要となる。しかしながら、本発明に係る座屈固有値解析は部品単体での検討が可能であり、通常の曲げ解析では効果の検討が難しい凹ビードの配置最適化には好適である。また実際の部材を考えたときに座屈モードが特定できている場合には、拘束位置等の境界条件により所望の座屈モードを得ることが可能であり、その上で凹ビードの配置検討をすればよい。このような手法により周囲の部材の情報が得られない場合でも凹ビードの配置検討を行うことが可能であり、設計の初期段階においては特に有効な手段となる。
【0082】
本発明の評価方法の有効性を確認するために、実際に部材を作製して落重試験により初期ピーク荷重を評価した。用いた素材は、上記の検討と同じく980MPa級DP鋼であり、板厚は1.2mmと1.8mmのものを用いた。部材の背板は他方の部材と同じ素材を用いた。スポット溶接間隔は30mmとした。この部材をスパン800mmで支持し、R50の落錘により中央部分に曲げを生じさせた。その結果を同じく表2に併せて示す。ビードを設けたもので初期ピーク荷重が高くなることが分かった。また座屈固有値解析により得た座屈固有値の結果と部材外形が同じものの中では良い対応関係が見られた。従って、凹ビードによる衝撃吸収特性の向上が確認できるとともに、座屈固有値解析を用いた数値解析手法が有効であることが分かった。
【0083】
今回対象にした部材の中で、折曲部から凹ビードまでの距離が10mmであるNo.6、No.14は、式(1)で算出される有効幅c’内にビードが配置されている。表2にまとめたように、これらの部材であっても座屈固有値や初期ピーク荷重はビードを配置しないものよりも優れた特性を示すことが分かった。従って、有効幅c’内への凹ビードの配置も一案である。しかしながら、凹ビードの効果を最大限に発揮させようとする場合には、No.5、No.13のように有効幅c’外に凹ビードを配置した方が良い。また、何らかの制約条件により凹ビードが配置できない場合には、1段の段差のみでも有効幅外に配置することは効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の実施形態である車両用耐衝突補強材の評価方法の評価対象となる車両用耐衝突補強材の一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、評価対象となる車両用耐衝突補強材の有限要素法の座屈固有値解析の結果を示す図であって、(a)は1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(b)は2次モードの座屈固有値解析の結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例1のモデル部材を示す平面模式図である。
【図5】図5、実施例1のモデル部材を示す側面模式図である。
【図6】図6は、実施例1のモデル部材の荷重位置及び拘束位置を示す斜視模式図である。
【図7】図7は、実施例1のモデル部材の拘束位置L1〜L3を示す平面模式図である。
【図8】図8は、実施例1の座屈固有値解析の結果を示す図であって、(a)は拘束位置L1における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(b)は拘束位置L2における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図であり、(c)は拘束位置L3における1次モードの座屈固有値解析の結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例1において用いたアウタ側のセンターピラー補強材を示す図であって、(a)はセンターピラー補強材の平面模式図であり、(b)〜(e)はそれぞれ、(a)のA−A’線〜D−D’線に対応する断面模式図である。
【図10】図10は、衝突の際の実施例1のモデル部材の変位量と、高さ位置との関係を示すグラフである。
【図11】図11は、実施例2において検討に用いた衝突試験に用いた別のモデル部材を示す図であって、(a)はストレート部材の斜視図であり、(b)は拡幅部材の斜視図である。
【図12】図12は、図11(a)のストレート部材の断面形状を示す断面模式図であって、(a)は凹ビードがない例であり、(b)は凹ビードの幅が20mmの例であり、(c)は凹ビードの幅が40mmの例である。
【図13】図13は、実施例2において検討に用いたストレート部材及び拡幅部材を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
S1…解析ステップ、S2…対比ステップ、S3…固有値抽出ステップ、S4…評価ステップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項2】
前記ステップが、
前記車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、前記メッシュ、前記車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップと、
前記座屈固有値解析によって抽出された、前記複数の固有モード次数毎の変形集中の前記解析位置と、前記車両用耐衝突補強材の変形集中の前記評価対象位置とを対比する対比ステップと、
前記対比ステップにおいて前記評価対象位置と前記解析位置とが一致した場合に、一致した前記解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップと、
形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士を、前記抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップと、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項3】
前記対比ステップにおいて変形集中の前記評価対象位置と前記解析位置とが一致しない場合に、前記車両用耐衝突補強材の前記境界条件を変更する変更ステップを備え、
前記評価対象位置と前記解析位置とが一致するまで、前記変更ステップ、前記解析ステップ及び前記対比ステップを繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項4】
前記車両用耐衝突補強材の物理量が、前記車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚または弾性率のいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項1】
有限要素法の座屈固有値解析によって、評価対象の車両用耐衝突補強材における変形集中の解析位置を複数の固有モード次数毎に求め、前記車両用耐衝突補強材における変形集中の評価対象位置と前記解析位置とが一致する場合の固有モード次数を決定し、当該固有モード次数における座屈固有値を評価値として前記車両用耐衝突補強材を評価するステップを有することを特徴とする有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項2】
前記ステップが、
前記車両用耐衝突補強材の形状を有限要素に分割してメッシュを生成してから、前記メッシュ、前記車両用耐衝突補強材の物理量及び境界条件に基づいて、有限要素法の座屈固有値解析を複数の固有モード次数について行う解析ステップと、
前記座屈固有値解析によって抽出された、前記複数の固有モード次数毎の変形集中の前記解析位置と、前記車両用耐衝突補強材の変形集中の前記評価対象位置とを対比する対比ステップと、
前記対比ステップにおいて前記評価対象位置と前記解析位置とが一致した場合に、一致した前記解析位置の固有モード次数における座屈固有値を抽出する固有値抽出ステップと、
形状または物理量のうち少なくとも一以上が異なる複数の車両用耐衝突補強材同士を、前記抽出された座屈固有値を評価値として比較する評価ステップと、から構成されることを特徴とする請求項1に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項3】
前記対比ステップにおいて変形集中の前記評価対象位置と前記解析位置とが一致しない場合に、前記車両用耐衝突補強材の前記境界条件を変更する変更ステップを備え、
前記評価対象位置と前記解析位置とが一致するまで、前記変更ステップ、前記解析ステップ及び前記対比ステップを繰り返し行うことを特徴とする請求項2に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項4】
前記車両用耐衝突補強材の物理量が、前記車両用耐衝突補強材を構成する金属板の板厚または弾性率のいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の有限要素法を用いた車両用耐衝突補強材の評価方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−49319(P2010−49319A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210600(P2008−210600)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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