末梢神経疾患の治療及び/又は予防のためのクラステリンの使用
本発明は、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン及びへパリンの組み合わせの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、抹消神経系の神経疾患の分野におけるものである。これは、神経保護、神経ミエリン化、及び細胞を産出するミエリンの産出又は再生に関する。より好ましくは、本発明は、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢神経疾患は、末梢神経系(PNS)又はPNSを支持する末梢グリアに関する障害である。末梢神経障害は、最も一般的な末梢神経疾患の1つである。
【0003】
末梢神経障害は、感覚喪失、筋肉衰弱及び萎縮、深部腱反射の減少、並びに血管運動症状の単独又はいずれかの組み合わせにおける症候群である。
【0004】
上記疾患は、単一の神経(単神経障害)、別々の領域中の2又は複数の神経(多発性単神経障害)、又は同時に多くの神経(多発性神経障害)に影響しうる。軸索(例えば、糖尿病、ライム病、又は尿毒若しくは毒素を伴う場合)、又は髄鞘若しくはシュワン細胞(例えば、急性又は慢性の炎症性多発神経障害、白質萎縮症、又はギランバレー症候群における)が最初に影響される。小さな無髄及び有髄線維に対する損傷は、先ず温度覚及び痛覚の喪失をもたらし、大きな有髄線維に対する損傷は運動若しくは固有感覚の欠陥をもたらす。いくつかの神経障害(例えば、導入された毒性、ダプソンの使用、ダニ刺され、ポルフィリン症、ギランバレー症候群が原因である)は、最初に運動線維に影響する:他のもの(例えば、癌の後根神経節炎、ライ病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒が原因である)は最初に、後根神経節、又は感覚線維に影響し、感覚症状を生じる。時折、脳神経もまた関係する(例えば、ギランバレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリア)。関連する様態の確認は当該原因の決定を助ける。
【0005】
外傷は、単神経に対する局所型の傷害の最も一般的な原因である。激しい筋肉動作、又は関節の無理な過伸展は、反復性の小さな外傷として局所的な神経障害を生じさせる(例えば、小さな道具できつく掴むこと、エアーハンマーからの過剰な振動)。圧力又はエントラップメント麻痺は、通常、骨の隆起における(例えば、細身又は悪液性の人及びしばしばアルコール依存症の人における熟眠中、又は麻酔中)、又は細管における(例えば、手根管症候群における)表層神経(尺骨、橈骨、腓骨)に影響する。圧力麻痺はまた、腫瘍、骨過形成、ギブス、松葉杖、又は遷延痙攣姿勢(例えば、ガーデニング)によりもたらされる。神経中への出血、及び寒冷又は放射線への暴露は神経障害を生じさせうる。単神経障害は、直接的な腫瘍の浸潤によりもたらされうる。
【0006】
PNSの外傷性神経の傷害は、手術(例えば、手術的な前立腺切除)において発生しうる。神経−節約前立腺切除において、神経への損傷を防ぐために、海綿体神経のコースを認識するために、手術中に海面体神経の刺激がされ、そして神経損傷を避けながら外科医を誘導する(Klotz and Herschorn, 1998)。急性の前立腺切除による性交不能の結果の評価研究は、1つ又は両方の陰核海綿体を部分的なに又は完全に切除した場合、以前に性交可能であった男性503人中212人(42%)が性交不能に苦しむことを示した。当該性交不能の割合は、神経が無傷で残された場合、24%に減少する(Quinlan et al, 1991b ; Quinlan et al, 1991a)。
【0007】
多発性単神経障害は、コラーゲン性血管疾患(例えば、結節性多発性動脈炎、SLE、シューグレン症候群、RA)、サルコイドーシス、代謝疾患(例えば、糖尿業、アミロイド症)、又は感染症(例えば、ライム病、HIV感染)に対して通常続発性である。微生物は、神経への直接的な侵入により多発性単神経障害を起こしうる(例えば、ライ病)。
【0008】
急性熱性疾患が原因の多発性傷害は、毒素(例えば、ジフテリアにおいて)、又は自己免疫応答(例えば、ギランバレー症候群において)によりもたらされ、しばしば免疫化を伴う多発性神経障害もまた、おそらく自己免疫性である。
【0009】
毒性薬剤は一般的に多発性神経障害を生じさせるが、しばしば単神経障害も生じさせる。これらは、エメチン、ヘキソバルビタール、バルビタール、クロロブタノール、スルホンアミド、フェニトイン、ニトロフラントイン、ビンカアルカロイド、重金属、カーボンモノキシド、トリオルトクレシルホスフェート、オルトジニトロフェノール、多くの溶媒、他の工業性毒物、及びいくつかのAIDS薬物(例えば、ザルシタビン、ジダノシン)を含む。
【0010】
栄養欠乏及び代謝疾患は、多発性神経障害をもたらしうる。ビタミンB欠乏はしばしば当該原因である(例えば、アルコール依存症、脚気、悪性貧血、イソニアジド誘導性ピリドキシン欠乏、吸収不良症候群、及び悪阻において)。多発性神経疾患はまた、甲状腺機能低下症、ポルフィリン症、サルコイドーシス、アミロイド症、及び尿毒症においても発生する。糖尿病は、感覚運動末端多発性神経障害(最も一般的)、多発性単神経障害、及び局所的単神経障害(例えば、眼球運動、又は外転脳神経の障害)の原因となりうる。
【0011】
悪性疾患は、モノクローナル免疫グロブリン血症(多発性骨髄腫、リンパ腫)、アミロイド侵入又は栄養欠乏を介して、多発性神経障害又は腫瘍随伴症候群として生じうる。
【0012】
特定の単神経障害:単一性及び多発性単神経障害は、影響された神経の分布における痛み、衰弱、及び知覚異常により特徴付けられる。多発性単神経障害は、非対称性である;当該神経は、突然に又は進行的に関与されうる。多くの神経の広範な関与は、多発性神経障害を装いうる。
【0013】
尺骨神経麻痺は、しばしば肘における反復した折り曲げ、又は子供の頃の骨折後の不均整な骨の成長による肘の尺骨溝における神経への外傷により引き起こされる(遅発性尺骨麻痺)。また、尺骨神経は、肘トンネルにおいて圧迫されうる。小指及び薬指の内側半分における知覚異常及び感覚欠陥が発生する;親指内転筋、小指内転筋、及び骨間筋は、弱体化及び萎縮する。重度な慢性尺骨麻痺はワシ手奇形を生じさせる。神経伝導の研究は、当該障害の部位を特定することができる。保守的な治療は外科的修復が試みられる前に試みるべきである。
【0014】
手根トンネル症候群は、横断表面手根靭帯と手を曲げる前腕筋の縦方向の腱の間の手首の掌側における正中神経の圧迫によりもたらされる。それは片面側又は両側であってよい。当該圧迫は、手の橈骨手掌側における知覚異常及び手首及び手掌における痛みを生じさせる:時々、痛みは前腕及び肩における圧迫部位の近位に発生する。痛みは、夜間により厳しい痛みとなりうる。第一第三指の手掌側における感覚欠陥は以下を起こしうる:親指外転及び反転を制御する筋肉を弱体化及び萎縮させる。当該症候群は、頚部の神経根障害によるC−6根圧迫と区別すべきである。
【0015】
腓骨神経麻痺は、通常、腓骨頚部の外側の神経の圧迫により発生する。それは最も一般的には、痩せている寝たきりの患者において、及び足を習慣的に組む痩せた人において生じる。足背屈弱体化及び外転(尖足)が発生する。たまに、感覚欠陥が、下腿の前外側及び足の背側、又は1番目と2番目の中足骨の間の趾間において起こる。圧迫された神経障害の治療は、通常保守的である(例えば、足を組むのを避ける)。不完全な神経障害は、通常臨床的に従い、そして通常自然に向上する。回復しない場合、外科的な診査が指摘されるであろう。
【0016】
橈骨神経麻痺(Saturday night palsy)は、例えば、酔っている間又は熟睡中腕を椅子の背にもたれされるような上腕骨に対する神経の圧迫により引き起こされる。症状は、手首及び指伸筋の弱体化(垂手)、並びにたまに1番目の背面骨間筋の背側にわたる感覚喪失を含む。治療は圧迫性腓骨神経障害のものと同様である。
【0017】
多発性神経障害は、比較的対称的であり、しばしば同時に感覚、運動、及び血管運動線維に影響する。これらは、軸索又は髄鞘に影響し、そしていずれかの形態において、急性(例えば、ギランバレー症候群)又は慢性(例えば、腎不全)であってよい。
【0018】
代謝疾患(例えば、糖尿病)又は腎不全が原因の多発性神経障害は、ゆっくりと、しばしば、何ヶ月も何年にもわたり発達する。それは、頻繁に、しばしば近位よりも遠位においてより重篤である、脚の感覚異常で始まる。末梢性刺痛、痺れ感、灼熱痛、又は関節における固有受容性感覚及び振動性感覚の欠陥がしばしば顕著である。痛みはしばしば夜間に悪化し、そして発症した部位を触ることにより、又は温度変化により悪化しうる。重篤な場合、典型的には手袋・靴下型分布を伴い感覚喪失の客観的な徴候がある。アキレス及び他の深部腱反射は減少するか又は存在しない。固有受容性欠陥における無痛性潰瘍は、歩行運動異常を誘導しうる。運動関与は末端筋肉の低下及び萎縮をもたらす。
【0019】
自律神経系は、追加的に又は選択的に関係し、夜間の下痢、尿及び糞便失調、性交不能、又は体位性低血圧を導く。血管運動性の症状は変化する。皮膚は、時々、浅黒い変色を伴うが、通常より蒼白及び乾燥していてもよく、発汗は過剰となりうる。栄養性変化(滑らか及び光沢のある皮膚、窪み又は隆線がある爪、骨粗鬆症)は重篤であり、遅延型である場合が通常である。
【0020】
栄養性多発性神経障害は、通常、アルコール中毒及び栄養不良における。最初の軸索障害は、もっとも長く且つ大きな神経において二次的な脱ミエリン化及び軸索破壊を導く。当該原因が、チアミン、又は他のビタミン(例えば、ピリドキシン、パントテン酸、葉酸)の欠乏によるものかは明確ではない。ピリドキシン欠乏による神経障害は、通常、TBのためのイソニアジドを摂取する人においてのみ発生する;ピリドキシンが欠乏又は依存している乳児は痙攣しうる。末端の萎縮及び全身性の脱力感は、通常、潜行性であるが、時々、感覚喪失、麻痺、及び痛みにより付随され急速に進行しうる。ふくらはぎ及び足における痛み、痙攣、寒気、熱気、及び痺れは、触れることにより悪化しうる。複数のビタミンは病因が不明な場合与えられるが、これらは証明された利点を有さない。
【0021】
稀に、専ら感覚多発性神経障害は、末梢性の痛み及び知覚異常を伴って開始し、そして全ての形態の感覚の喪失に対して中枢的に進行する。それは癌腫(特には、気管支原性)の遠隔的な影響として、過剰量のピリドキシン摂取(>0.5g/日)後に、及びアミロイド症、甲状腺機能低下症、骨髄腫、及び尿毒症において発生する。当該ピリドキシン誘導神経障害はピリドキシンが中断されると回復する。
【0022】
遺伝性神経障害は、感覚運動神経障害又は感覚神経障害として分類される。シャルコー‐マリー-ツース病は、最も一般的な遺伝性感覚運動神経障害である。一般的でない感覚運動神経障害は、誕生において始まり、そして重度の能力障害をもたらす。稀な感覚神経障害において、末梢性の痛み及び温度感覚の欠如は、振動性及び位置感覚の欠如よりもより顕著である。主な問題は、頻繁な感染及び骨髄炎を伴う、痛みの非感受性が原因の遠心性神経離断である。
【0023】
遺伝性運動及び感覚神経障害I型及びII型(シャルコー‐マリー-ツース病、腓骨筋肉萎縮症)は、比較的一般的な、通常、最初に腓骨及び末端脚筋肉における低下及び萎縮により特徴付けられる常染色体優性疾患である。また、患者は他の変性疾患(フリートライヒ運動失調)、又はこれらの家族歴を有しうる。尖足及び遅進行性末端筋の萎縮を伴う幼少期の中盤に本I型を有する患者は「コウノトリ足」を生じる。手の内因性筋肉の萎縮は後で始まる。振動、痛み、及び温度の感覚は、手袋・靴下型において減少する。深部腱反射は存在しない。高遠心性神経弓状又は槌状足指は、ほとんど発症していない疾患を有する家族において、唯一の徴候となりうる。神経圧迫速度はゆっくりであり、そして末端潜時は延長される。分節性脱ミエリン化及び再ミエリン化が生じる。拡大した末梢神経は触診できる。当該疾患はゆっくりと進行し、そして寿命に影響しない。II型疾患は、よりゆっくりと進行し、人生の後半において通常発生する脱力感を伴う。患者は比較的正常な神経圧迫速度を有するが、潜在性が誘起した低い振幅を有する。組織診は、ウォーラー変性を示す。
【0024】
遺伝性の運動及び感覚神経障害III 型(肥大間質性神経障害、ドゥジュリーヌ‐ソッタ病)である、稀な常染色体劣性疾患は、進行性虚弱及び感覚喪失及び深部腱反射の不存在を伴う幼少期において開始する。初期において、それはシャルコー‐マリー-ツース病に似ているが、運動性脱力感は急速に進行する。脱ミエリン化及び再ミエリン化が生じ、拡大した末梢神経を生じ、そして神経組織診においてタマネギ茎が確認された。
【0025】
特徴的な運動脱力、足変形、家族歴、及び電気生理学的異常の特徴的な分布は、診断を確認する。遺伝的分析は利用可能であるが特別な治療法はない。疾患の進行のために若い患者を準備するための職業的カウンセリングは有用となりうる。装具の補助は尖足を矯正する;足を安定化するための整形手術は助けとなりうる。
【0026】
脊髄損傷は、多くの病院の対麻痺及び四肢麻痺の入院を説明する。80%以上が交通事故によるものとして引き起こされる。損傷の2つの主なグループが臨床的に認識される:開放性損傷及び非開放性損傷。
【0027】
開放性損傷は、脊髄及び脊髄神経根の直接的な外傷が原因となる。穿孔性傷害は広範な破壊及び出血を生じうる。非開放性損傷は、最も脊髄傷害を説明し、そして通常、脊柱の骨折/脱臼に関係し、通常放射線学的に実証できる。当該索の傷害は、骨の損傷の程度に依存し、そして2つの主な段階において考えることができる:第一の損傷は、挫傷、神経線維横切、及び出血壊死であり、そして第二の損傷は、硬膜外血腫、感染、及び浮腫である。
【0028】
索の損傷後の影響は、以下を含む:損傷した神経線維の上行及び下行順変性、外傷後の脊髄空洞症、及び対麻痺の全身性効果、例えば、尿路及び胸感染、床ずれ、筋肉るいそう。
【0029】
脱ミエリン化は、神経インパルス伝導において機能的な減少又は妨害に結びつける。
【0030】
多重膜髄鞘は、脂質中に豊富であり、そしてタンパク質中で不十分なグリア細胞原形質膜の特異的なドメインである。それは軸索を補助し、そして電荷が周りの組織に流れ出だすことを防ぐことにより神経系において電気シグナル伝導の有効性を向上する。ランビエ絞輪は、飛躍伝導が発生する軸索に沿う鞘中の部位である。
【0031】
再ミエリン化の過程は、損傷を修復するために抗炎症性経路と一緒に働くことができ、そして軸索を横切及び死から保護する。
【0032】
シュワン細胞は、末梢神経神経系において補助的な役割を供する末梢性グリア細胞であり、衛星細胞に属する。シュワン細胞は、末梢性軸索のシャフトを個々に包み、軸索のセグメントに沿った層又は髄鞘を形成する。シュワン細胞は、主に脂肪の脂質により構成される;当該脂肪は絶縁体として働き、これにより、軸索に沿った活動電位の伝達速度を上げる。
【0033】
また、シュワン細胞は、末梢神経系において神経細胞の再生を進行するために不可欠である。軸索が瀕死である場合、その周りのシュワン細胞はその消化において助ける。これは、連続的なシュワン細胞により形成された空のチャンネルを離し、新たな軸索は、1日当たり3〜4ミリメートルの速さで重篤末端から成長できる。
【0034】
神経障害は、通常、影響されたPNSの神経細胞型について選択的であり(例えば、感覚と自律神経)、そしてまた、実際に神経細胞のサブタイプに選択的である(小と大)。末梢神経の軸索切断は、神経親和性因子の神経保護効果を評価するために、最も一般的には動物モデルが使用される。外傷性神経傷害、神経叢傷害、及び根破壊は、深刻な事故の合併症である。更に、ミエリン損傷の原因となりうる末梢神経における圧迫は、しばしば疾患、例えば、手根管症候群において見られ、又は脊柱整形合併症に付随する。軸索切断は、細胞死のような、損傷した神経細胞において軸索伝導速度が減少され、そして神経障害状態に対する神経伝達物質レベルが変化する減少を生じさせる(McMahon and Priestley, 1995)。粉砕破壊は、神経障害の状態に関する興味深い追加的なプロセスである再生を許容する(McMahon and Priestley, 1995)。
【0035】
細胞神経生物学における基礎的な問題は、傷害又は疾患後の神経再生の調節である。機能的な神経再生は、軸索の出芽及び伸長だけでなく、新たなミエリン合成を必要とする。再ミエリン化は、正常な神経伝導の修復、及び新たな神経変性免疫の攻撃からの軸索の保護に必要である。神経変性疾患における研究の第一の目的は、究極的には、神経細胞死を防ぎ、神経細胞の表現型を維持し、そして神経細胞及びミエリンの損傷を回復する処置を発達させることである。軸索切断された脊髄運動神経細胞の完全な再生に関係する分子及び細胞メカニズムを解明する多くの研究が捧げられてきた(Fawcett and Keynes, 1990 ; Funakoshi et al., 1993)。神経栄養因子及び対応するレセプターの傷害誘導性発現は、神経再生能において重要な役割を果たすことができる。以前の研究は、様々なペプチド及び非ペプチド化合物、例えば、インスリン様成長因子(IGF−1)、ACTH( Lewis et al., 1993 ; Strand et al., 1993)、テストステロン(Jones, 1993)、SR57746A(Fournier et ai.. 1993)、及び4−メチルカテコール(Hanaoka et al., 1992 ; Kaechi et al, 1993)による神経再生の有意な向上を示してきた。
【0036】
クラステリンは、アポリポタンパク質J、SGP−2、TRPM−2、及びSP−40,40としても知られている細胞外タンパク質である。これは、ほとんど偏在性の組織分布を有し、そしてそれが精製された原料に従い多くの名前が与えられている(Trougakos及びGonos(Trougakos and Gonos, 2002)、Jones及びJomary(Jones and Jomary, 2002)において概説されている)。その偏在的な発現及びその関連する血清の存在量にも関わらず(100ug/ml)、クラステリンの本当の機能は、解明を残す。クラステリンのいくつかの生物学的な役割は、結合性C9補体(Tschopp et al., 1993)、実験された動物モデルに依存するアポトーシス促進活性又は抗−アポトーシス活性(Han et al., 2001; Wehrli et al., 2001)、進行の制限、及びより最近のシャペロン特性(Poon et al., 2002)による補体カスケードを阻害する能力において提唱された。アルツハイマー病におけるクラステリンの神経保護の役割もまた、示差されてきた(Giannakopoulos et al., 1998)。その主要な形態である75〜80kDaのヘテロ二量体は、単一の転写物から得られる。それから当該ポリペプチド鎖は、22塩基長の分泌シグナルペプチドを除去するために、そして続いて227/228残渣間において、各鎖の中央に位置する5つのシステイン結合により構築されるアルファとベータの2本の鎖を産出するためにタンパク分解的に切断される。また、当該ポリペプチドは、グリコシル化部位及び核局在化シグナル配列を含む。その分解は、低密度リポタンパク質レセプターファミリーのメンバーである、エンドサイトーシスレセプター gp330/メガリン/LRP2により媒介されているようである。
【0037】
ヘパリンは、スルファミン架橋を有する硫酸化D−グルコサミン及びD−グルクロン酸の同じ部分を形成する高酸性ムコ多糖である。当該分子量は6000〜20000の範囲である。ヘパリンは、脊椎動物の肝臓、肺、マスト細胞等中で発生し、そして得られる。その機能は未知であるが、生体内及び試験管内において、多くの異なる塩の形態において血液凝固を防ぐために使用さる(Medical Subject Headings (MESH), http ://www. nlm. nih. gov/mesh/meshhome. html)。ヘパリンナトリウム(取引名:リポヘパリン及びリキアエミン(Liquaemin))は、血栓症の治療における抗凝固剤として使用される。
【0038】
ヘパリン画分である低分子量ヘパリン(LMWHs)もまた存在する。これらは、通常4000〜6000kDaの分子量を有する。これらの低分子量分画は、有効な抗凝固剤である。これらの投与は、出血のリスクを減少し、これらはより長い半減期を有し、そしてこれらの血小板相互作用は、非分画ヘパリンと比較して減少される。また、これらは、手術後の主な肺塞栓症に対する有効な予防法を供する(Medical Subject Headings (MESH), http ://www. nlm. nih. gov/mesh/meshhome. html)。LMWHsは、例えば、ナドロパリン、N−アセチルヘパリン、アルデパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、レビパリン、チンザパリンであってよい。
【0039】
他のヘパリンは、ヘパリノイドを含む。これらは、天然及び合成の類似した構造の高硫酸化多糖類である。ヘパリノイド調製物、例えば、ダナパロイドナトリウムは、抗凝固剤及び抗炎症剤としての使用を含む広範囲の投与に使用されており、そして、これらは、脂質低下特性を有することが要求されてきた(Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 30th, p232)。
【0040】
インターフェロンは、抗炎症性、抗ウイルス性、及び抗増殖性を示すサイトカインのサブクラスである。生化学的及び免疫学的特性に基づき、天然のヒトインターフェロンは、3つのクラスに分類される:インターフェロンアルファ(白血球)、インターフェロンベータ(線維芽細胞)、及びインターフェロンガンマ(免疫性)である。アルファ−インターフェロンは、有毛細胞白血病、性病いぼ、カポジ肉腫(一般的に後天性免疫不全症候群(AIDS)に苦しむ患者を悩ます癌)、及び慢性非A型肝炎、非B型肝炎のために、現在米国及び他の国々に認可されている。
【0041】
更に、インターフェロン(IFNs)は、ウイルスの感染に対する応答において身体により産出される糖タンパク質である。これらは、保護された細胞中においてウイルスの分裂増殖を阻害する。低分子量のタンパク質の存在において、IFNは、これらの作用において、著しく非特異的である。即ち、あるウイルスにより誘導されたIFNは、広範な他のウイルスに対して有効である。しかしながら、これらは種特異性である。即ち、ある種により誘導されたIFNは、同じ又は近い関係にある種である細胞においてのみ抗ウイルス活性を刺激するであろう。IFNは、これらの潜在的な抗腫瘍及び抗ウイルス活性のために活用すべきサイトカインの第一のグループである。
【0042】
3つの主要なIFNは、IFN−α、IFN−β、及びIFN−γを意味する。このような主要な種類のIFNは、先ず、これらの起源の細胞に従い分類される(白血球、線維芽細胞、又はT細胞)。しかしながら、いくつかの種類は、1つの細胞により産出されうることが明らかとなった。それゆえ、現在、白血球IFNはIFN−α、線維芽細胞IFNは、IFN−β、及びT細胞IFNはIFN−γと呼ばれる。また、「Namalwa」細胞株(バーキットリンパ腫に由来)において産出される4番目の種類のIFNである、リンパ芽球腫IFNが存在し、白血球及び線維芽細胞IFNの両方の混合体を産出するようである。
【0043】
上記インターフェロン単位は、ウイルス傷害に対する50%の細胞を保護するために必要な量として定義される(任意)IFN活性の尺度として報告されてきた。
【0044】
IFNの全てのクラスはいくつかの別の種類を含む。IFN−β及びIFN−γは、それぞれ、単一の遺伝子の生産物である。個々の種類の違いは、主に、グリコシル化の違いが原因である。
【0045】
IFN−αは、最も多様なグループであり、約15種類を含む。染色体9において、少なくとも23のメンバーを含み、その15が活性であり、そして転写されるIFN−α遺伝子のクラスターが存在する。成熟IFN−αはグリコシル化されていない。
【0046】
IFN−α及びIFN−βは類似した生物活性を伴い、全て同じ長さ(165又は166アミノ酸)である。IFN−γは長さにおいて146のアミノ酸であり、そして密接ではないα及びβクラスに似ている。唯一、IFN−γはマクロファージを活性化し、又はキラーT細胞の突然変異を誘導することができる。効果において、これらが腫瘍に対する生物の応答において効果を有し、免疫調節を介して認識を及ぼすことから、これらの新しい種類の治療剤は生物応答修飾因子(BRM)と呼ぶことができる。
【0047】
特に、ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウイルス活性を有し、そしてまた、腫瘍性細胞に対する天然キラー細胞を刺激することができる。それは、ウイルス及び2本鎖RNAにより誘導される約20,000Daのポリペプチドである。組み換えDNA技術によりクローンされた線維芽細胞の遺伝子の核酸配列から、Derynck等は、当該タンパク質の完全アミノ酸配列を推定した(Derynck et al., 1980)。それは166のアミノ酸長である。
【0048】
Shepard等は、その抗ウイルス活性を破壊する塩基842における突然変異(141位におけるCys→Ser)、及びヌクレオチド1119〜1121の欠失を伴う変異体クローンを説明した(Shepard et al., 1981)。
【0049】
Mark等は、17位においてアミノ酸をCys→Serに転換させる塩基469(T)を(A)で置換することにより人工突然変異タンパク質を挿入した(Mark et al, 1984)。結果として生じたIFN−βは、「未変性」IFN−βと同様に活性であり、そして長期間の保存(−70℃)において安定であることが報告された。
【0050】
IFNがこれらの効果を及ぼすメカニズムは、完全には理解されていない。しかしながら、ほとんどの場合、これらは一定の遺伝子の誘導又は転写に影響することにより作用し、従って免疫系に影響する。試験管内による研究は、IFNが約20の遺伝子生産物を誘導又は抑制する能力があることを示した。
【0051】
オステオポンチン(OPN)は、骨及び歯のミネラル化された細胞外又はトリックスの顕著な成分である高リン酸化シアロタンパク質である。OPNは、ポリアスパラギン酸配列、及びヒドロキシアパタイト結合性を媒介するSer/Thrリン酸化部位、及び細胞接着/シグナリングを媒介する高保存RGDモチーフの存在により特徴付けられる。オステオポンチン阻害因子は、MS、多様な免疫不全、及び癌を誘導する感染症、障害、及び疾患の治療に有用な上記を説明してきた(WO00/63241)。オステオポンチン又はオステオポンチン活性のアゴニストの使用は、神経疾患の治療及び/又は予防のための薬物の製造のために、W002/92122において要求されている。
【0052】
Bonnard A等は、ラット坐骨神経粉砕後の破壊部位におけるクラステリンmRNA発現の増加を観察した(Bonnard et al., 1997)。
【0053】
クラステリンによるPNS疾患の治療は、未だ当業界において考慮されていない。
【発明の開示】
【0054】
発明の概要
本発明の目的は、新規な末梢神経疾患の治療及び/又は予防方法を供することである。
【0055】
本発明は、末梢神経障害の動物モデルにおいてタンパク質クラステリンが有利な効果を有することの発見に基づく。
【0056】
従って、本発明は、末梢神経疾患、例えば、末梢神経系(PNS)の外傷性神経傷害、及び末梢神経障害におけるクラステリン又はクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【0057】
また、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリンを含んで成る核酸分子及び発現ベクター、並びにクラステリンを発現する細胞の使用も本発明の範囲である。
【0058】
本発明は、更に、クラステリン、及びヘパリン又はインターフェロン又はオステオポンチン、任意的な1又は複数の医薬的に受容可能な賦形剤を一緒に含んで成る医薬組成物組成物を供する。
【0059】
本発明の2番目の観点において、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のために、クラステリンは、ヘパリン、インターフェロン、又はオステオポンチンとの組み合わせにおいて使用することができる。
【0060】
発明の詳細な説明
本発明の枠組みにおいて、クラステリンの投与が、末梢神経疾患の生体内動物モデルにおいて有利な効果を有することが発見された。神経障害を誘導された坐骨神経粉砕マウスモデルにおいて、神経再生に関する全ての生理的及び形態的パラメーター、完全性及び生命力はクラステリンの投与により肯定的に影響された。
【0061】
従って、本発明は、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、円順列変異誘導体(circularly permutated derivative)、又はこれらの塩、あるいはクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【0062】
本明細書において使用される「クラステリン」の語は、完全長の成熟ヒトクラステリン、又はいずれかのクラステリンサブユニット、又はこれらのフラグメントに関する。ヒトクラステリンの配列は、本明細書において、添付配列の一覧の配列番号1及び添付図の図1Cとして報告される。更に、本発明において使用される「クラステリン」は、クラステリン活性を維持するために十分な同一性を有する限り、そして生じた分子がヒトにおいて免疫原生とならない限り、動物、例えば、マウス、ウシ、ブタ、ネコ、又はヒツジ由来のいずれかのクラステリンに関する。
【0063】
更に、本明細書において使用される「クラステリン」の語は、生物活性突然変異タンパク質及びフラグメント、例えば、天然クラステリンのアルファ及びベータサブユニットに関する。
【0064】
更に、本明細書において使用される「クラステリン」の語は、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、又は円順列変異誘導体、あるいはこれらの塩を包含する。これらのアイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、又は円順列変異誘導体は、クラステリンの生物活性を保持する。好ましくは、これらは、野生型クラステリンと比較して向上した生物活性を有する。
【0065】
本明細書において使用される「クラステリン活性のアゴニスト」は、クラステリン活性を刺激又は模倣する分子、例えば、クラステリンレセプターのアゴニスト抗体、又はクラステリンレセプターを介してシグナリングを活性化する小分子量アゴニストに関する。クラステリンレセプターは、おそらく、例えば、gp330/メガリン/LRP2である(Kounnas et al., 1995)。刺激因子又はエンハンサーであるこのようなレセプターのいずれかのアゴニストは、本明細書中に使用される「クラステリン活性のアゴニスト」の語により包含される。
【0066】
更に、本明細書において使用される「クラステリン活性のアゴニスト」は、クラステリン媒介活性を増強する薬剤、例えば、上記クラステリン活性を模倣する小分子量化合物を意味する。
【0067】
本明細書において使用される「治療」及び「予防」の語は、1又は複数の末梢神経疾患の症状又は原因、並びに末梢神経疾患に付随する症状、疾患、又は合併症の予防、阻害、減弱、又は回復として理解すべきである。末梢神経疾患を「治療」する場合、本発明に従う物質は、疾患の発病後に与えられ、「予防」は患者において注意できる疾患の徴候の前に当該物質を投与することに関する。
【0068】
本明細書において使用される「末梢神経疾患」の語は、「背景技術」に詳説したものを含む、全ての既知の末梢神経疾患若しくは障害、又はPNSの傷害を包含する。
【0069】
末梢神経疾患は、PNSの機能障害に関する障害、例えば、神経伝達、神経外傷、PNS感染、PNSの脱ミエリン化性疾患、又はPNSの神経障害に関する疾患を含んで成る。
【0070】
好ましくは、本発明の末梢神経疾患は、末梢神経系の外傷性神経傷害、RNSの脱ミエリン化性疾患、及び末梢神経変性疾患、及び末梢神経神経障害から成る群から選択される。
【0071】
外傷性神経傷害は、上述の「背景技術」において説明したPNSに関連してもよい。
【0072】
末梢神経傷害は、感覚喪失、筋肉虚弱及び萎縮の症候群、深在性腱反射、及び血管運動症状単独又はいずれかの組み合わせに関してもよい。
【0073】
神経障害は、単一の神経(単神経障害)、別々の領域における2又は複数の神経(多発性単神経障害)、又は同時に多くの神経(多発性神経障害)に影響しうる。軸索(例えば、糖尿病、ライム病、又は尿毒症若しくは毒素を伴う疾患における)、髄鞘、又はシュワン細胞(例えば、急性若しくは慢性炎症性多発性神経障害、白質萎縮症、又はギランバレー症候群において)が最初に影響されうる。更に、本発明に関する治療できる神経障害は、例えば、導入された毒素、ダプソンの使用、ダニ刺され、ポルフィリン症、ギランバレー症候群が原因であってよく、そして、これらは最初に運動線維に影響しうる。他のもの、例えば、癌の後根神経節、ライ病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒が原因のものは、最初に後根神経節又は感覚線維に影響し、感覚症状を生じうる。また、脳神経は、例えば、ギランバレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリアに関係しうる。
【0074】
更に、末梢神経疾患は、異常なミエリン化を伴う神経障害、例えば、上述の「背景技術」で説明したものの1つ、並びに手根トンネル症候群を含んで成る。外傷性神経傷害は、脊柱整形合併症により達成され、そしてこれらはまた、本発明に関連する疾患の範囲内である。
【0075】
更に、末梢神経疾患は、先天性代謝疾患が原因であってよい。従って、本発明の好ましい態様において、当該末梢神経疾患は先天性代謝欠陥が原因である。
【0076】
更に好ましい態様において、当該末梢神経疾患は末梢神経障害であり、最も好ましくは糖尿病性神経障害である。また、神経障害に関する化学療法は、好ましくは、本発明に関する。
【0077】
「糖尿病性神経障害」の語は、糖尿病性神経障害のいずれかの形態、又は糖尿病性神経障害、又は上述の「背景技術」に説明されるような神経に影響する糖尿業の合併症を付随し、あるいは引き起こされる1又は複数の症状又は障害に関する。糖尿病性神経障害は、多発性神経障害であってよい。糖尿病性多発性神経障害において、多くの神経が同時に影響される。また、当該糖尿病性神経障害は単神経障害であってもよい。局所的な単神経障害において、例えば、当該疾患は、単一の神経、例えば、眼球運動又は外転脳神経に影響する。また、それは、別々の領域において2又は複数の神経が影響される多発性単神経障害であってもよい。
【0078】
より更なる好ましい態様において、上記末梢神経疾患は末梢神経系(PNS)の脱ミエリン化疾患である。後者は、疾患、例えば、慢性炎症性脱ミエリン化多発神経根筋障害(CIDP)及び急性単相性障害、例えば、ギランバレー症候群と名付けられる炎症性脱ミエリン化多発神経根筋障害を含んで成る。
【0079】
好ましくは、上記クラステリンは以下から成る群から選択されるペプチド又はタンパク質から選択される:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
j)(a)〜(f)のいずれかの、塩又はアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション又は円順列変異誘導体。
【0080】
活性フラクション又はフラグメントは、いずれかのクラステリンの一部又はドメイン、例えば、分離した、あるいはジスルフィド橋を介して互いに結合した、直接的に融合した、あるいは適当なリンカーを介して融合したアルファ鎖又はベータ鎖を含んで成る。また、活性フラクションは、クラステリンの特異的なグリコシル化又はシアル酸付加形態を含んで成る。
【0081】
当業者は、クラステリンのより小さな部分、又はその2つのサブユニットが、例えば、クラステリンの機能のために必要とされる必須アミノ酸残基を含んで成る活性ペプチドが、その機能を発揮するために十分となりうることを認識するであろう。
【0082】
更に、当業者は、クラステリンの突然変異タンパク質、塩、アイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、クラステリンの活性フラクション又は円順列変異誘導体が、同等、あるいはより優れたクラステリンの生物活性を保持することを認識するであろう。当該クラステリン及び突然変異タンパク質、アイソフォーム、融合タンパク質若しくは機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、円順列変異誘導体、又はこれらの塩は、共培養アッセイにおいて測定できる。
【0083】
好ましい活性フラクションは、完全長クラステリンと同等又はより優れた活性を有し、あるいは更なる有利、例えば、より優れた安定性、又はより低い毒性若しくは免疫原生を有し、あるいは、これらは大量に産出すること、あるいは精製することが容易である。当業者は、突然変異タンパク質、活性フラグメント及び機能的誘導体が、適当なプラスミドにおいて、対応するcDNAをクローン化し、そして上述の通り、共培養アッセイにおいてこれらを試験することにより産出することができることを認識するであろう。
【0084】
本発明に従うタンパク質は、グリコシル化型又は非グリコシル化型であってよく、これらは、天然原料、例えば、体液に由来してよく、又はこれらは、好ましくは、組み換え的に産出することができる。組み換え体の発現は、原核生物発現系、例えば、大腸菌(E.coli)において、又は昆虫細胞において、そして好ましくは、哺乳動物発現系、例えば、CHO細胞又はHEK細胞において行うことができる。
【0085】
本明細書において使用される「突然変異タンパク質」の語は、野生型クラステリンと比較して、生じた生産物の活性が相当に変化することなく、天然クラステリンの1又は複数のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基で置換され、又は欠失し、又は1又は複数のアミノ酸残基がクラステリンの天然配列に追加さているクラステリンの類似体を意味する。これらの突然変異タンパク質は、既知の合成法、及び/又は部位誘導変異誘発技術、あるいはこれらに適当ないずれかの他の既知の技術により調製される。
【0086】
本発明に従い使用できるクラステリンの突然変異タンパク質、又はこれらをコードする核酸は、過度な実験法によることなく、本明細書に存在する技術及びガイダンスに基づき、当業者により慣習的に得ることが可能な置換ペプチド又はポリヌクレオチドとして実質的に一致する配列の有限なセットを含む。
【0087】
本発明に従う突然変異タンパク質は、核酸、例えば、本発明に従い、中又は高ストリンジェント条件下においてDNA又はRNAとハイブリダイズし、クラステリンをコードするDNA又はRNAによりコードされるタンパク質を含む。「ストリンジェント条件」の語は、当業者が慣習的に「ストリンジェント」として意味するハイブリダイゼーション、続く洗浄条件を意味する。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N. Y. , §§6.3 and 6.4 (1987, 1992)、及びSambrook et al. (Sambrook, J. C, Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0088】
制限することなく、ストリンジェント条件の例は、例えば、2×SSC及び0.5%SDSで5分間、2×SSC及び0.1%SDSで15分間;0.1×SSC及び0.5%SDSで37℃において30〜60分間、それから0.1×SSC及び0.5%SDSで68℃において30〜60分間の実験下のハイブリッドの培養Tm以下の12〜20℃の洗浄条件を含む。当業者は、ストリンジェント条件もまた、DNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、10〜40塩基)、又は混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することを理解する。混合プローブが使用される場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel,supraを参照のこと。
【0089】
好ましい態様において、いずれかのこのような突然変異タンパク質は、添付した配列表の配列番号1と少なくとも40%の同一性又は相同性を有する。より好ましくは、その少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は最も好ましくは少なくとも90%の同一性又は相同性を有する。
【0090】
同一性は、2又は複数のポリペプチド配列、あるいは2又は複数のポリヌクレオチド配列間の関係に反映し、当該配列を比較することにより決定される。一般的に、同一性は、それぞれ、比較される配列の長さにわたって、2つのポリヌクレオチド、又は2つのポリペプチドが一致する正確なヌクレオチドに対するヌクレオチド、又はアミノ酸に対するアミノ酸を意味する。
【0091】
正確な一致が存在しない配列のために、「%同一性」を測定してもよい。一般的に、比較すべき2つの配列は、配列間の最大相関を与えるように並べられる。これは、アライメントの程度を増強するために一方のいずれか、又は両方の配列に「ギャップ」を挿入することを含んでよい。%同一性は、比較される各配列の完全長にわたって決定することができ(いわゆる、グローバルアライメント)、同一又は極めて類似した長さの、又はより短く定義された長さにわたる配列に特に安定であり(いわゆる、ローカルアライメント)、不等な長さの配列により安定である。
【0092】
2又は複数の配列の同一性又は相同性を比較する方法は、当業界において周知である。従って、例えば、ウィスコンシン配列分析パッケージ(Wisconsin Sequence Analysis Package)、バージョン9.1において入手可能なプログラム(Devereux et al., 1984)、例えば、プログラムBESTFIT及びGAPを2つのポリヌクレオチド間の%同一性及び、2つのポリペプチド配列間の%同一性及び%相同性を決定するために使用することができる。BESTFITは、SmithとWatermanの「ローカルホモロジー」アルゴリズムを使用し(Smith and Waterman, 1981)、そして、2つの配列間の類似性の最良な単一領域を発見する。配列間の同一性及び/又は類似性を決定するための他のプログラムもまた、当業界において既知であり、例えば、プログラムのBLASTファミリー(Altschul et al., 1990; Altschul et al., 1997、www. ncbi. nlm. nih. gov においてNCBIのホームページを介して構築されれる)、及びFASTA(Pearson, 1990 ; Pearson and Lipman, 1988)がある。
【0093】
本発明に従う突然変異タンパク質の好ましい変化は、「保存的な」置換として知られる。クラステリンポリペプチドの保存的なアミノ酸置換は、グループのメンバー間の置換基が分子の生物活性を保存するであろう、十分に類似の物理化学的な特性を有するグループにおける同義アミノ酸を含んでよい。また、アミノ酸の挿入及び欠失は、特に、当該挿入又は欠失が少数、例えば、30以下、そして好ましくは10以下のアミノ酸のみを含み、そして、機能的構造に重大なアミノ酸、例えば、システイン残基を除去又は置換しない場合、これらの機能を変化することなく上に定義した配列中で作製することができる。このような欠失、及び/又は挿入により産出されたタンパク質及び突然変異タンパク質は、本発明の範囲内である。
【0094】
好ましくは、上記同義アミノ酸グループは、表Iに定義したものである。より好ましくは、上記同義アミノ酸グループは表IIに定義したものであり;そして、最も好ましくは上記同義アミノ酸グループは表III に定義したものである。
【0095】
表I
同義アミノ酸の好ましいグループ
【表1】
【0096】
表II
同義アミノ酸のより好ましいグループ
【表2】
【0097】
表III
同義アミノ酸の最も好ましいグループ
【表3】
【0098】
本発明に使用するためのクラステリンの突然変異タンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質を得るために使用することができるタンパク質中のアミノ酸置換基の産出例は、いずれかの既知の方法、例えば、Mark等の米国特許第4,959,314号、第4,588,585号、及び第4,737,462号;Koths等の第5,116,943号、Namen等の第4,965,195号;Chong等の第4,879,111号、及びLee等の第5,017,691号に示される方法を含む;そして、リジン置換タンパク質は米国特許第4,904,584号(Shawetai)に示されている。
【0099】
「融合タンパク質」の語は、クラステリン、又は突然変異タンパク質若しくはこれらのフラグメントを含んで成るポリペプチドであり、他のタンパク質に融合され、例えば、体液中で延長された滞留時間を有するポリペプチドを意味する。従って、クラステリンは他のタンパク質、ポリペプチド等、例えば、免疫グロブリン、又はこれらのフラグメントと融合してもよい。免疫グロブリンFc部は、二量体又は多量体Ig融合タンパク質の産出に特に安定である。クラステリンのアルファ−及びベータ鎖は、例えば、IgFcタンパク質により二量体化されたクラステリンのアルファ−及びベータ−鎖を産出するように免疫グロブリンの一部と結合していてもよい。
【0100】
本明細書において使用される「機能的誘導体」は、当業界において既知の方法により、残基の側鎖、又はN−若しくはC−末端基において生じる官能基から調製することができるクラステリンの誘導体、及びこれらの突然変異タンパク質及び融合タンパク質を網羅し、そしてこれらが医薬的な受容可能である限り、即ち、これらが実質的にクラステリンの活性に類似したタンパク質の活性を破壊することなく、そしてそれを含む組成物において毒性特性を与えない限り本発明中に包含される。
【0101】
これらの誘導体は、例えば、抗原部位を遮蔽し、そして体液中のクラステリンの滞留を延長することができるポリエチレングリコール側鎖を含んでよい。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は第1級若しくは第2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部(例えば、アルカノイル又は炭素環式アロイル基)により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又はアシル部で形成されるヒドロキシル基(例えば、セリル又はスレオニル残基の)O−アシル誘導体を含む。
【0102】
本発明のクラステリン、突然変異タンパク質、及び融合タンパク質の「活性フラクション」は、いかなるタンパク質分子のポリペプチド鎖のフラグメント又は前駆体のみ、又は例えば、糖若しくはリン酸残基と結合する分子若しくは残基、又はタンパク質分子の凝集体、又はこれらによる糖残基を網羅し、但し上記フラクションは実質的にクラステリンに対して類似する活性を有する。
【0103】
本明細書における「塩」の語は、カルボキシル基の塩及びクラステリン分子のアミノ基の酸添加塩の両方、又はこれらの類似体を意味する。カルボキシル基の塩は、当業界に既知の方法により形成することができ、そして無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、三価鉄、又は亜鉛塩等を含み、そして、例えば、アミン、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、又はリジン、ピペリジン、プロカイン等で形成されるものとして有機塩基を伴う塩を含む。酸添加塩は、例えば、無機酸、例えば、塩酸、又は硫酸を伴う塩、及び有機酸、例えば、酢酸、又はシュウ酸を伴う塩を含む。当然に、いかなるこれらの塩も、本発明に関するクラステリンの生物活性、即ち、末梢神経疾患における神経保護の効果を維持していなければならない。
【0104】
クラステリンの機能的誘導体は、タンパク質の特性、例えば、安定性、半減期、生物学的利用能、ヒトの身体による耐性、又は免疫原生を向上させるためにポリマーと接合してもよい。当該目的を達成するために、クラステリンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)と結合してもよい。PEG化は、例えば、WO92/13095に説明される既知の方法により行うことができる。
【0105】
このように、本発明の好ましい態様は、クラステリンがPEG化されている。
【0106】
本発明の更に好ましい態様は、融合タンパク質が免疫グロブリン(Ig)融合を含んで成る。当該融合は、直接的に、あるいは、長さにおいて1〜3アミノ酸残基の長さ又はそれより長い程度、例えば、長さにおいて13アミノ酸残基の短いリンカーペプチドを介してもよい。上記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、又は、例えば、クラステリン配列及び免疫グロブリン配列間に導入されたGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metを含んで成る、13アミノ酸のリンカー配列であってよい。生じた融合タンパク質は、向上した特性、例えば、体液中の延長された滞留時間(半減期)、又は向上した特異活性、向上した発現レベルを有する。また、Ig融合は、融合タンパク質の精製を促進することができる。
【0107】
更なる他の好ましい態様において、クラステリン、又は一方若しくは両方のサブユニットは、Ig分子の定常部と融合している。好ましくは、例えば、ヒトIgG1のCH2及びCH3のような重鎖領域と融合している。他のIg分子のアイソフォームもまた、本発明に従う融合タンパク質の産出に安定である。例えば、アイソフォームIgG2若しくはIgG4、又は、例えば、IgMのような他のIgクラスである。融合タンパク質は、単量体若しくは多量体、ヘテロ−若しくはホモ多量体であってよい。融合タンパク質の免疫グロブリン部分は、補体結合性若しくは補体カスケード、又はFcレセプターとの結合を活性化しない方法において、更に修飾されていてもよい。
【0108】
更に、本発明は、同時に、順番に、又は別々に使用される、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及び免疫抑制剤との組み合わせの使用に関する。免疫抑制剤は、ステロイド、メトトレキセート、シクロホスファミド、抗白血球抗体(例えば、CAMPATH−1)等であってよい。
【0109】
本発明は、更に、クラステリン及びIL−6の組み合わせに関する。
【0110】
ヘパリン投与は、クラステリン生物活性を著しく向上することが示され、従って、本発明は、更に、同時に、順番に、又は別々に使用に使用される、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びヘパリンの組み合わせの使用に関する。
【0111】
本明細書において使用される「ヘパリン」は、当業界において既知の全てのヘパリン及びヘパリノイド、例えば、「背景技術」において説明されたもの、例えば、低分子量ヘパリン(LMWH)を意味する。
【0112】
本発明は、更に、同時に、順番に、又は別々に使用される末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びインターフェロンの組み合わせの使用に関する。
【0113】
本特許出願において使用される「インターフェロン」の語は、例えば、上述の「背景技術」に記載したいずれかの種類のIFNを含んで成る文献において定義されるいかなる分子も含むことを意図する。当該インターフェロンは、好ましくはヒトであるが、生物活性がヒトインターフェロンと類似し、そして当該分子がヒトにおいて免疫原生でない限り、他の種由来のものであってよい。
【0114】
特に、IFN−α、IFN−β、及びIFN−γのいずれかの種類は、上記定義に含まれる。IFN−βは、本発明に従う好ましいIFNである。
【0115】
本発明において使用される「インターフェロン−ベータ(IFN−β)」は、生物液からの単離により得られる、あるいは原核生物又は真核生物宿主細胞DNA組み換え技術により得られるヒト線維芽細胞インターフェロン、並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及びフラグメントを含むことが意図される。
【0116】
また、インターフェロンは、タンパク質の安定性を向上させるためにポリマーと接合してもよい。インターフェロンβ及びポリオールポリエチレングリコール(PEG)間の接合は、例えば、W099/55377において説明されている。
【0117】
本発明の他の好ましい態様において、インターフェロンはインターフェロン−β(IFN−β)であり、より好ましくはIFN−β1aである。
【0118】
クラステリンは、好ましくは、インターフェロンと同時に、順番に、又は別々に使用される。
【0119】
更に、本発明は、同時に、順番に、又は別々に使用される末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びオステオポンチンの組み合わせの使用に関する。
【0120】
また、本明細書において使用される「オステオポンチン」は、オステオポンチンの突然変異タンパク質、フラグメント、活性フラクション、及び機能的誘導体を包含する。これらのタンパク質は、例えば、WO02/092122において説明されている。
【0121】
本発明の好ましい態様において、クラステリンは約0.001〜100mg/kg体重、又は約1〜10mg/kg体重、又は約5mg/kg体重の量において使用される。
【0122】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のため医薬の製造のための核酸の使用に関し、ここで、当該核酸分子は、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;又は(a)〜(f)のいずれかのアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、又は円順列変異誘導体。
【0123】
当該核酸は、例えば、裸の核酸分子として、例えば、筋肉注射により投与することができる。
【0124】
それは、更に、ベクター配列、例えば、ヒトの身体において、好ましくは適当な細胞又は組織において核酸分子によりコードされる遺伝子の発現のために有用なウイルス配列を含んで成る。
【0125】
従って、好ましい態様において、核酸分子は、更に、発現ベクター配列を含んで成る。発現ベクター配列は、当業界において周知であり、これらは、更に、注目の遺伝子の発現に役立つエレメントを含んで成る。これらは、制御配列、例えば、プロモーター若しくはエンハンサー配列、選択マーカー配列、増殖の開始点等を含んで成ってよい。遺伝子治療のアプローチは、従って、疾患の治療及び/又は予防のために使用される。有利には、クラステリンの発現は、生体内におけるものであろう。
【0126】
本発明の好ましい態様において、上記発現ベクターは、筋肉内注射により投与することができる。
【0127】
クラステリンの発現のために通常サイレントである、あるいは十分でないクラステリン量を発現する細胞におけるクラステリンの内在性の生成物の誘導及び/又は増強のためのベクターの使用もまた本発明に従い考慮される。上記ベクターは、クラステリンを発現するために所望する細胞において制御配列機能を含んで成ってよい。このような制御配列は、例えば、プロモーター又はエンハンサーでよい。当該制御配列は、それから相同的組み換えによりゲノムの適当な場所に導入することができ、従って、制御配列と誘導又は増強されることが必要とされる発現遺伝子を結合することが可能である。
【0128】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造においてクラステリンを生産するために遺伝子的に改変された細胞の使用に関する。
【0129】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリンを産出するために遺伝子的に改変された細胞に関する。従って、細胞治療的なアプローチは、薬剤を人体の適当な部分に伝達するために使用することができる。
【0130】
本発明は、更に、特に末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のヘパリン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0131】
本発明は、更に、特に末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のインターフェロン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0132】
本発明は、更に特に、末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のオステオポンチン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0133】
「医薬的に受容可能」の定義は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、そしてそれを投与された宿主に対して毒性でないいかなる担体も包含することを意味する。例えば、非経口的な投与のために、当該活性タンパク質は、媒体、例えば、食塩水、ブドウ糖溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液における注射のための単位薬用量形態において処方することができる。
【0134】
本発明に従う医薬組成物の活性成分は、多様な方法において個々に投与することができる。当該投与経路は、皮内、経皮(例えば、徐放性製剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所的、くも膜下腔内、直腸、及び鼻腔内経路を含む。治療的に有効ないずれの他の投与経路も使用することができ、例えば、上皮又は内皮組織を通した吸収、又は生体内において発現及び分泌される活性剤が生じる活性剤をコードするDNA分子が患者に投与される(例えば、ベクターを介して)遺伝子治療により使用することができる。更に、本発明に従うタンパク質は、生物活性剤の他の成分、例えば、医薬的に受容可能な界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤、及び媒体と一緒に投与することができる。
【0135】
非経口(例えば、血管内、皮下、筋肉内)投与のために、活性タンパク質は、医薬的に受容可能な非経口媒体(例えば、水、食塩水、ブドウ糖溶液)、懸濁液、乳濁液、又は凍結乾燥化粉末、及び等張性(例えば、マンニトール)又は化学安定性(例えば、防腐剤及びバッファー)を維持する添加剤を付随した溶液として処方することができる。当該製剤は、慣習的に使用される技術により無菌化される。
【0136】
また、本発明に従う活性タンパク質の生物学的利用能は、ヒトの身体において当該分子の半減期を向上させる接合手順を使用して、例えば、PCT特許出願WO92/13095号において説明されるように、当該分子をポリエチレングリコールと結合させることにより改良することができる。
【0137】
治療的有効量の活性タンパク質は、タンパク質の種類、タンパク質の親和性、アンタゴニストにより示されるいずれかの残基の細胞傷害活性、投与経路、患者の臨床的状態(内在性クラステリン活性の非毒性レベルの維持の望ましさを含む)を含む多くの可変性の機能であろう。
【0138】
「治療意的有効量」は、投与された場合、クラステリンが、末梢神経疾患において有利な効果を発揮するよう量である。個々に対する単一又は複数の用量として投与される薬用量は、クラステリンの薬物動態学的な特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用処理、治療の頻度、及び所望する効果を含む因子の多様性に依存して変化するであろう。
【0139】
クラステリンは、約0.001〜10mg/kg体重、又は約0.01〜5mg/kg体重、又は約0.1〜3mg/kg体重、又は約1〜2mg/kg体重において好ましく使用することができる。更に好ましいクラステリンの量は、約0.1〜1000μg/kg体重、又は約1〜100μg/kg体重、又は約10〜50μg/kg体重である。
【0140】
本発明に従う好ましい投与経路は、皮下経路による投与である。筋肉内投与は、本発明に従う更に好ましい投与経路である。
【0141】
更に好ましい態様において、クラステリンは、毎日、又は1日おきに投与される。
【0142】
毎日の用量は、通常、所望する結果を得るために有効な分割用量又は懸濁化放出形態において与えられる。2回目の、又は引き続く投与は、個々に対して投与された最初の、又は前の用量と同じか、それ以下か、又はそれ以上の薬用量において行うことができる。
【0143】
本発明に従い、クラステリンは、治療的有効量において好ましくはインターフェロンを伴い、個々に対して予防的に又は治療的に、他の治療的投与剤又は薬剤(例えば、複数の薬剤投与剤)の前に、同時に、あるいはその後に投与することができる。他の治療剤の後に投与される活性剤は、同じ又は異なる成分において投与することができる。
【0144】
更に、本発明は、有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、任意的な医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0145】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0146】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0147】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0148】
雑誌文献、又は要約、又は出版された若しくは出版されていない米国若しくは外国の特許出願、出版された米国若しくは外国の特許、又はいずれかの他の引例は、全て本明細書の引例として組み入れられており、引用された引例中の全てのデータ、表、図、及び文書を含む。更に、本明細書に引用した引例中の引用した全ての引例の内容もまた、引例により組み入れられている。
【0149】
既知の方法工程、慣習的な方法工程、既知の方法、又は慣習的な方法に関する引例は、関連技術において本発明の観点、説明、又は態様が開示され、教示され、又は示差されていることを容認するものではない。
【0150】
本明細書の態様の先の説明は、本発明の一般的な特性を完全に明らかにするであろうから、第三者は、当業者の知識(本明細書中に引用した引例の内容を含む)を適用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から離れることなく、多様な出願、例えば、明細書の態様を容易に修正及び/又は応用することができる。従って、このような応用及び修正は、本明細書に存在する教え及びガイダンスに基づき、開示された態様と同じ範囲を意味することを意図する。本明細書中の言い回し及び用語は、説明の目的のためであると理解すべきであり、本明細書の用語又は言い回しは、本明細書に存在する教え及びガイダンスに明るい当業者により、当業者の知識と組み合わせて解釈すべきものとして制限されない。
【0151】
本発明が説明されたことにより、説明の方法により供される以下の実施例によって、より容易に理解されるが、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0152】
実施例1:クラステリンの組み換え発現
タグ化組み換え型の、マウス又は組み換えヒトクラステリン(それぞれ、mクラステリン及びhクラステリン)をHEK細胞中で発現させ、そして以下に従い精製した:
【0153】
C末端タグを伴う組み換えタンパク質を含む培養培地試料(100ml)を、一定容量のコールドバッファーA(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で、最終容量を200mlに希釈した。当該試料を、0.22μm無菌フィルター(Millipore,500mlフィルターユニット)を通してろ過し、そして無菌角培養ビン(Nalgene)に4℃で保った。
【0154】
精製は、自動試料充填器(Labomatic)に接続したVISIONワークステーション(バイオシステムに適用させた)において4℃で行った。当該精製手順は、2つの一連の工程である、タグに特異的なアフィニティークロマトグラフィー、続いてSephadex G−25メディア(Amersham Pharmacia)カラム(1.0×10cm)におけるろ過から構成された。
【0155】
最初のクロマトグラフィー工程は、1.6ml画分において収集された溶出されたタンパク質をもたらした。
【0156】
2番目のクロマトグラフィー工程のために、Sephadex G−25 ゲルろ過カラムを、2mlのバッファーD(1.137MのNaCl:2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容量のバッファーC(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。最初の工程のアフィニティーカラムから溶出されたピーク画分を、VISIONに組み込んだ試料充填機を介して自動的にSephadex G−25カラムに充填し、そして当該タンパク質を流速2ml/分においてバッファーCで溶出させた。当該脱塩した試料を2.2ml分画に回収した。当該分画を0.22μmの無菌遠心分離フィルター(Millipore)を通してろ過し、凍結させ、そして−80℃で保存した。一定分量の試料を、クーマシー染色及び抗−タグ抗体でのウェスタンブロットによりSDS−PAGE(4〜12%NuPAGEゲル; Novex)において分析した。
【0157】
クーマシー染色。上記NuPAGEゲルを、0.1%クーマシーブルー R250染色液(30%メタノール、10%酢酸)中、室温で1時間染色し、続いてバックグランドが透明になり、そして当該タンパク質のバンドが明確に見えるまで、20%メタノール、7.5%酢酸で脱染した。
【0158】
ウェスタンブロット。電気泳動後、上記タンパク質を、290mAにおいて4℃で1時間、上記ゲルからニトロセルロース膜へと電気転写させた。当該膜を、室温で1時間、バッファーE(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;0.1%Tween20,pH7.4)中の5%粉乳でブロックし、そして続いて、バッファーE中の2.5%粉乳において2つのウサギポリクローナル抗−タグ抗体(G−18及びH−15,各0.2μg/ml; Santa Cruz)の混合物と共に、4℃で一昼夜インキュベートした。更に室温で1時間のインキュベーション後、当該膜をバッファーE(3×10分)洗浄し、それから、2.5%粉乳を含むバッファーEにおいて1/3000に希釈された二次的なHRP−接合抗−ウサギ抗体(DAKO, HRP 0399)と共に、室温で2時間インキュベートした。バッファーE(3×10分)洗浄した後、当該膜をECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間発色させた。続いて、当該膜をハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に暴露し、当該フィルムを現像し、そしてウェスタンブロットのイメージを視覚的に分析した。
【0159】
タンパク質アッセイ。上記タンパク質濃度を、スタンダードとしてウシ血清アルブミンと共にBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して測定した。平均タンパク質回収量は、培養意培地100ml当たり216μgの精製クラステリンであった。
【0160】
非還元SDS PAGE精製タンパク質の分析は、当該組み換えタンパク質が未変性のクラステリンのヘテロ二量体構造を有することを示した(図なし)。
【0161】
実施例2:マウスの坐骨神経粉砕によるクラステリンの保護効果
略語
CMAP:複合筋活動電位
DAC:粉砕後日数
DIV:試験管内での日数
EMG:筋電図検査
IGF−1:インシュリン様成長因子
i.p.:腹腔内
i.v.:血管内
s.c.:皮下
s.e.m.:平均値の標準誤差
vs:対
【0162】
序文
本実験は、異なる用量のクラステリンで処理したマウスにおける神経再生を評価するために行った。当該モデルにおいて、神経細胞及び軸索(感覚及び運動神経)の生存及び再生における、ミエリン化又はマクロファージ炎症におけるクラステリンの肯定的な効果は運動機能の回復に導くことができた。当該再生は、感覚機能の回復及び形態学的な実験に従い計測することができる。従って、本実験において、電気生理学的な記録及び組織形態計測的な分析を並行して行った。
【0163】
材料及び方法
動物
72匹の8週齢の雌のC57bl/6 RJマウス(Elevage Janvier, Le Genest-St-Isle, France)を使用した。これらは6つのグループに分けた(n=12):(a)媒体 偽手術グループ;(b)媒体 神経粉砕手術グループ;(c)神経粉砕/mクラステリン(300μg/kg);(d)神経粉砕/mクラステリン(1000μg/kg);(e)神経粉砕/4−メチルカテコール(10μg/kg);(f)神経粉砕/オステオポンチン(100μg/kg)。オステオポンチンは(OPN)は、骨及び歯のミエリン化細胞外マトリックスの顕著な成分である高リン酸化シアロタンパク質である。その使用又はその活性のアゴニストの使用は、神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためにWO/02092122において主張されている。
【0164】
これらは、グループ飼育し(ケージ当たり12匹の動物)、そして調節された温度(21〜22℃)で部屋を維持し、そして、餌及び水を自由に得られるように明−暗サイクル(12時間/12時間)を繰り返した。全ての実験は、最初の指針に一致して行った。
【0165】
坐骨神経の破壊
上記動物を60mg/kgのケタミンクロルハイドレート(Imalgene 5000, Rhone Merieux, Lyon, France)のi.p.注射で麻酔した。右坐骨神経を、中大腿位で外科的に露出させ、坐骨神経の三叉の5mm付近で粉砕した。当該神経を止血ピンセット(幅1.5mm、Koenig, Strasbourg, France)で、各粉砕間が90度回転で30秒間、2回粉砕した。
【0166】
実験及び薬理学的処理の計画
筋電図検査(EMG)試験を、手術日(ベースライン)前に1回行い、そして2週間隔週で以下の操作を行った:
【0167】
神経粉砕手術の日は0日(D)として考えた。試験は粉砕後4日間行った。
【0168】
体重及び生存率は毎日記録した。
【0169】
神経傷害の日から当該実験の終わりまで、mクラステリン(HEK細胞由来の組み換えmクラステリン)又は4−メチルカテコールを、腹腔内(i.p.)注射経路により毎日投与した。オステオポンチンの毎日の注射は、皮下(s.c.)的に行った。
【0170】
2週間目に、グループ当たり4匹の動物を犠牲とし、そして形態の分析を行うために坐骨神経を解剖した。
【0171】
電気生理学的記録
Neuromatic 2000M 筋電計(EMG)(Dantec, Les Ulis, France)を使用して、電気生理学的記録を行った。マウスを100mg/kgのケタミンクロルハイドレート(Imalgene 500(登録商標), Rhone Merieux, Lyon, France)の腹腔内注射により麻酔した。ヒーティングランプにより、通常の体温を30℃に維持し、そして高いところに設置した接触温度計(Quick, Bioblock Scientific, Illkirch, France)により調節した。
【0172】
化合物の筋活動電位(CMAP)を、過最大強度(12.8mA)で坐骨神経の0.2msの1回の刺激後、腓腹筋において計測した。振幅(mV)、潜時(ms)、及び持続時間(脱分極及び再分極セッションに必要とされる時間)の活動電位を計測した。振幅は、活性運動単位の数を示しており、一方遠心性の潜時は、間接的に、運動神経伝導及び神経筋伝達速度を反映する。
【0173】
形態計測分析
形態計測分析は、神経粉砕後2週間行った。グループ当たり任意に選択した4匹の動物を当該分析のために使用した。マウスを100mg/kgのケタミンクロルハイドレート Imalgene 500(登録商標)により麻酔した。坐骨神経の5mmの断片を、組織学的に切除した。当該組織を、リン酸バッファー溶液(pH=7.4)中の4%グルタルアルデヒド水溶液(Sigma, L'isle d'Abeau-Chesnes, France)で一昼夜固定させ、そして使用するまで、30%スクロース中4℃で維持した。当該神経を、リン酸バッファー中の2%オスミウムテトロキシド(Sigma, L'Isle d'Abeau-Chesnes, France)で2時間固定し、そしてシリアルアルコール溶液中で脱水し、そしてエポン(Epon)に包埋した。それから、包埋した組織を重合のために3日間70℃に置いた。1.5μmの横径切片をミクロトームで作成し、そして1%トルイジンブルー(Sigma, L'isle d'Abeau-Chesnes, France)で2分間染色し、そして脱水し、オイキット(Eukitt)中に乗せた。クロス切片は、粉砕部位の中央で得られた。形態計測分析及び線維カウントは、セミ自動化デジタルイメージ分析ソフトウェア(Biocom, France)を使用して神経切片の全領域において行った。多小葉軸索原形質及び/又は不規則髄鞘を示すミエリン化線維は、先の再生プロセスの線維として考えられる。以下のパラメーターを計算した:軸索面積、ミエリン面積、及び線維面積(軸索及びミエリン面積)。
【0174】
データ分析
データのグローバル分析は、ある因子、又は分散分析(ANOVA)及びワンウェイANOVAの反復測定、並びにノンパラメトリック検定(Mann whitney検定)を使用して行った。適当な場合には、ダネット検定を更に使用した。有意水準は、p<0.05に設定した。結果は、平均値の平均値±標準誤差(s.e.m.)として示した。
【0175】
結果
神経粉砕手順後、全ての動物が生存した。本実験を通して数匹のマウスが死んだ:2日目、神経粉砕/オステオポンチングループ由来のマウス8匹、及び1mg/kgにおける神経粉砕/mクラステリングループ由来のマウス12匹;7日目、神経粉砕/媒体グループ由来のマウス9匹、及び1mg/kgにおける神経粉砕/mクラステリングループ由来のマウス9匹は麻酔薬が原因である。
【0176】
動物の体重
図2に示す通り、手術後2〜3日間において、全ての動物が、これらの体重において僅かな減少を示した。それから、動物はこれらの体重の回復を示した。未処理のマウスと比較した場合、mクラステリンでの異なる処理は粉砕された坐骨神経を有するマウスの体重において、いかなる有意な変化も誘導しなかった。
【0177】
電気生理学的測定
複合筋活動電位の振幅(図3):
偽手術した動物において、本実験を通してCMAP振幅において有意な変化はなかった。反対に、偽手術した動物のそれぞれのレベルと比較した場合、坐骨神経の粉砕は、D7及びD14において>90%の減少を伴うCMAP振幅の顕著な減少を誘導した。粉砕した坐骨神経を有するマウスを300μg/kg若しくは1mg/kgにおけるクラステリン、又は100μg/kgのオステオポンチンで処理した場合、これらは未処理マウスにおけるレベルと比較して、CMAP振幅において有意な増加(約1.5倍)を示した。同様に、4−MC処理もまた、神経粉砕を伴うマウスのCMAP振幅を増強するが、クラステリン又はオステオポンチンよりは低い程度である。
【0178】
複合筋活動電位の潜時(図4):
偽手術動物において、本実験を通してCMAP潜時の悪化はなかった。反対に、粉砕した坐骨神経を有するマウスは偽手術マウスよりも1.2倍以上のCMAP潜時を示した。クラステリン又はオステオポンチンを与えた粉砕した坐骨神経を有するマウスにおいて、CMAP潜時値は、未処理マウスのものと比較して有意に減少した。7日目、0.3mg/kgのクラステリン及び0.1mg/kgのオステオポンチンでの処理後、当該効果を観察することができた。14日目、両濃度のクラステリンは有効であった。
【0179】
複合筋活動電位の持続時間(図5)
偽手術動物において、CMAP持続時間は、ベースライン値に対する有意な変化はなかった。反対に、粉砕した坐骨神経を有するマウスはCMAP持続期の有意な延長を示し、特に、D14において偽手術動物より3倍以上の持続時間を示した。
【0180】
粉砕した坐骨神経を有するマウスを300μg/kgにおけるクラステリン又はオステオポンチンで処理した場合、これらは、神経粉砕を伴う媒体処理動物と比較して、CMAP持続時間の有意な減少を示した。
【0181】
形態計測分析
形態計測分析は、14日目の実験の終了後に行った。
【0182】
再生(図6)及び非再生線維(図7)のパーセンテージ
図6に示すように、偽手術動物(コントロール)の坐骨神経における再生のパーセンテージは、<20%であった。坐骨神経を粉砕した場合、再生線維の比率は60%以上に有意に増加した(粉砕/媒体)。未処理グループと比較して、300μg/kg又は1mg/kgのクラステリンの処理は再生線維の比率の有意な減少を誘導した。
【0183】
逆に、偽手術動物(コントロール)における非再生線維の比率は、粉砕した坐骨神経を有する未処理マウス(粉砕/媒体)の2倍以上であった(図7)。300μg/kg又は1mg/kgにおけるクラステリンの処理は、非再生線維の濃度において有意な増加を誘導した。
【0184】
結論
神経粉砕モデルは、末梢神経障害の極めて顕著なモデルである。神経粉砕の直後、力学的な傷害により、大きな直径を有するほとんどの線維が喪失し、CMAP振幅において強力な減少が導かれる。CMAP潜時はすぐに影響されないが、二次的な免疫介在性再生(マクロファージ、顆粒球)による小径線維の追加的な再生により、14日目に増加を示す。CMAP持続時間は7日目に増加し、そして14日目にピークに達する。21日目(示されていない)において、粉砕破壊は、神経障害の状態に関係する興味深い追加的なプロセスである再生を許容する。
【0185】
クラステリンは、全ての計測したパラメーターにおいて、マウスの神経粉砕モデルにおいて保護的効果を示した。粉砕2週間後に行われた形態学的な実験は、再生線維のパーセンテージの有意な減少、及び全線維数の増加を示す。クラステリンは、当該実験において使用されたコントロール分子である4−メチルカテコールと同じぐらい有効である。機能及び組織回復における肯定的な効果は、以下のクラステリン効果が原因となりうる:
−二次免疫介在性再生に由来する線維の直接的な保護;
−促進された軸索の再ミエリン化及び保護;
−促進された損傷した軸索の再生/出芽;
−マクロファージによる増加したミエリン細片の浄化;
−軸索切断に対するマクロファージ応答の調節。
【0186】
実施例3:坐骨神経粉砕後、クラステリンの皮下投与は機能回復を促進する。
【0187】
序論
神経再生におけるクラステリン処理の長時間の持続効果の実験のために、マウスの2番目のグループを、HEK細胞において産出された組み換えヒトクラステリンの投与を毎日、4週間処理した(5回/週、s.c.)。
【0188】
材料及び方法
マウスは以下のように6グループ(n=6)に分けた:
(a)媒体神経粉砕手術グループ;
(b)神経粉砕/h−IL6(30μg/kg);
(c)神経粉砕/hクラステリン(0.1mg/kg);
(d)神経粉砕/hクラステリン(300μg/kg);
(e)神経粉砕/hクラステリン(1mg/kg)。
【0189】
動物に、組み替えマウスクラステリンの腹腔内注射の代わりに、HEK細胞中で産出された組み替えヒトクラステリン(hクラステリン)を皮下注射(100μl/マウス)したことを除き、実施例2に説明した手順を行った。上記媒体は、NaCl 0.9%、BSA 0.02%とした。ポジティブコントロールは、組み換えヒトIL−6(30μg/kg、s.c.)とした。電気筋運動記録及び体重パラメーターは前述の通りに評価した。
【0190】
電気生理学的記録
過最大強度(12.8mA)で坐骨神経を0.2msで一回刺激後、複合筋活動電位(CMAP)を腓腹筋において計測した。多様なパラメーター、即ち、活動電位の振幅(mV)、潜時時間(ms)、及び持続時間を粉砕側(同側)の腓腹筋及び反対側(対側)の腓腹筋における粉砕後、0、7、14、21、及び28日目に前述の通り評価した。
【0191】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性
実施例3で説明した処理から4週間後、マウスを麻酔し、そして犠牲にした。対側及び同側の腓腹筋を収集し、そして神経細胞の神経支配の指標であるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性を分析した。当該ChAT活性は、非放射性アセチル−CoAを省略し、そして0.05μClに従う0.25nmolの3H−アセチル−CoAを添加したことを除き、Contreras等により説明されているプロトコール(Contreras et al., 1995)に従い測定した。
【0192】
神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)
NF−H及びそのリン酸化形態は、軸索の突然変異の指標である(Riederer et al., 1996)。実施例3に説明した処理から4週間後、マウスを麻酔し、そして犠牲にした。神経を集出し、そして3倍洗浄バッファーで抽出し、そして試料をタンパク質含量のためにタンパク質アッセイキット(Pierce)により、そしてNF−H定量化のためにサンドイッチELISAにより処理した。
【0193】
NF−H ELISAのために使用したプロトコールは以下である:獲得抗体、マウスモノクローナル抗体SMI31(抗−NF−Hリン酸化 1/2500;Sternberger)をPBS中において4℃で一昼夜インキュベートした。当該プレートは、PBS含有1%BSAで1時間ブロックした。試料と共に2時間インキュベート後、検出抗体であるウサギポリクローナルN4142抗−NF(1/1000;Sigma)を、PBS−BSA中に希釈し、そして2時間インキュベートし、そして抗−ウサギHRP接合抗体(1/3000、Sigma;PBS−BSA中で希釈、1時間)と共にインキュベーション後、ペルオキシダーゼにより明らかにした。492nmにおいて読まれた各吸光度は、ウシNF−H(Sigma)の標準曲線を示し、それから各試料のタンパク質の含量を得た。
【0194】
結果
電気生理学的測定
複合筋活動電位の振幅(図8):
粉砕から1週間後、CMAP振幅は、IL−6(30μg/kg)、hクラステリン(100、300、又は1000μg/kg)で処理した動物において、又は媒体処理グループにおいて有意な変化はなかった。15日〜28日目、hクラステリン及びIL−6で処理した粉砕した坐骨神経を有するマウスは、CMAP振幅の累進的な増加を示した。4週間後、クラステリンで処理したマウスのCMAP振幅は、未処理マウスにおけるレベルと比較して極めて有意な増加を示した。
【0195】
複合筋活動電位の潜時:
複合筋活動電位の潜時は、媒体、組み換えヒトIL−6(30μg/kg)、hクラステリン(100、300、又は1000μg/kg)で処理した神経障害マウスにおいて測定した。同側及び対側の測定は、坐骨神経の傷害から1、2、3、又は4週間後に行った。結果は以下の表(表1)において示す:
【0196】
表1
【表4】
【0197】
0.1mg/kgのクラステリンで治療した7DACにおけるマウスを除き、本実験を通して、対側におけるCMAP潜時の悪化はなかった。反対に、同側におけるCMAP潜時は、粉砕後増加した。IL−6及びクラステリンで処理したマウスにおいて、同側CMAP潜時は、未処理マウスのものと比較して有意に減少した。21及び28DACにおいて、組み換えIL−6及びクラステリン投与(1及び0.3mg/kg)は、潜時の回復を有意に向上した。
【0198】
複合筋活動電位の持続時間
上述の潜時におけるように、複合筋活動電位の持続時間を対側及び同側における全てのグループで測定し、そして結果を以下の表2に示す。
【0199】
表2
【表5】
【0200】
媒体処理グループにおいて、同側CMAPの持続時間は粉砕後増加し、そして4週間後、反対側の値に戻った。クラステリン処理(1及び0.3mg/kg)は、CMAP持続時間の全体的な増加を減少し、そして回復を促進した。
【0201】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性(図9):
粉砕から4週間後、同側の腓腹筋におけるChAT活性(図9a)は、完全には回復しなかった。クラステリン処理は、腓腹筋におけるChAT活性の回復を僅かに支持した。hクラステリンで処理したマウスの反対側の筋肉におけるChAT量は、媒体で処理した動物(図9b)と比較して増加を示した。
【0202】
神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)(図10):
粉砕から4週間後、媒体処理グループにおいて、坐骨神経の近位部分(粉砕部位上:図10b)、及び末端部位(粉砕部位下;図10c)におけるNF−Hのレベルは、反対側神経(図10a)におけるNF−Hのレベルと比較して差異はなかった。クラステリン処理は、粉砕神経の反対側及び近位部位におけるNF−Hの量を増加した。
【0203】
結論
これらの結果は、処理の15日後に得られたように(実施例2)、神経−粉砕モデルの処理におけるクラステリンの有用な効果を強調した。処理の時間に依存して、当該効果は、複合筋活動電位(CMAP)の全ての実験パラメーター、即ち、潜伏期間、持続時間、振幅において明らかとされた。クラステリン処理は、また、粉砕側及び反対側の神経においてChAT及びNF−H量を増加した。有害な影響は、体重の増加において観察されなかった(データ無し)。
【0204】
実施例4:クラステリンは、海馬切片培養の成熟において、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)形成を刺激する。
序論
傷害又は疾患後の神経再生の調節は、軸索の出芽及び伸長だけでなく、新たなミエリン合成も必要とする。ミエリン化は、例えば、正常な神経伝導及び興奮毒性又は免疫性攻撃に対する軸索保護のために必要である。ミエリン修復は、主に個体発生現象の繰り返しであるため(Capello et al., 1997 ; Kuhn et al., 1993)、発生ミエリン化を模倣するために、器官型海馬切片培養が使用される。より正確に、成熟したオリゴデンドロサイト及びシュワン細胞の代表的なタンパク質であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)のをELISAによりモニターした。
【0205】
材料及び方法
器官型海馬切片培養
器官型海馬切片培養は、Stoppini等の方法に従い調製した(Stoppini et al., 1991)。手短には、海馬は、5日齢のC57/Bl6マウスから得た。Mcillvain 組織チョッパーを使用して、500ミクロン厚の切片にカットした。それから、切片を1mlの培養培地(50%MEM、25%HBSS、25%馬血清)を含む6ウェルプレートに置いたMillicell−CMの挿入断片上に配置した。培養は、5%CO2中35℃で6日間維持し、それから33℃にした。培地は3日ごとに変えた。
【0206】
発生ミエリン化
試験管内において最初の3週間に通常発生するミエリン化を増大させるためのクラステリンの能力を試験した。
【0207】
7日目〜17日目まで、切片を、馬血清(25%)を含む培地中において、mクラステリン(1μg/ml、100ng/ml及び10ng/ml)で最初に処理した。処理は、2日ごとに更新した。
【0208】
処理の終わりにおいて(即ち、処理の3、6、及び10日目、それぞれ、試験管内において10、13、及び17日目に相当する)、切片(グループ当たり6切片)を3倍洗浄バッファー中に溶かし、そしてMBP量をMBP ELISAにより分析した。
【0209】
当該実験は2回行い、そして結果は図11に示す。
【0210】
これらの実験を、組み替えマウスクラステリンに代えて、HEK又はCHO細胞中で産出された組み換えヒトクラステリンで再現した場合、同様の結果を得た(データ無し)。
【0211】
MBP ELISA
異なる時間における溶解後、タンパク質含量のためにタンパク質アッセイキット(Piece)により、そしてMBPの定量化のためにサンドウィッチELISAにより処理した。
【0212】
MBP−ELISAのプロトコールは、以下とした。獲得抗体、マウスモノクローナル抗体抗−MBP(1/5000;Chemicon)をPBS中において希釈し、そして4℃で一昼夜インキュベートした。当該プレートは、1%BSAを含むPBSで1時間ブロックした。BPSで希釈した試料を2時間インキュベートした。検出抗体であるウサギポリクローナル抗−MBP(1/300;Zymed)を、PBS−BSA中で希釈し、そして2時間インキュベートし、そして抗−ウサギHRP接合抗体(1/3000、Sigma;PBS−BSA中希釈、1時間)でインキュベーション後、ペルオキシダーゼにより明らかにした。492nmにおいて読まれた各吸光度は、MBP(Invitrogen)の標準曲線を示し、それから各試料のタンパク質含有量を得た。
【0213】
結果
培養開始時において、P4マウスの海馬切片(出生後4日)は、検出可能なレベルのMBPを発現しなかった。海馬切片が成熟すると、ELISAにより検出されたMBPのレベルは、試験管内において21日後に安定なレベルに達するまでに増加した(DIV、データ無し)。
【0214】
タンパク質の添加の3日後に行ったMBP−ELISAにより評価された通り、7、10、又は14DIVにおける10、100、及び1000ng/mlの組み換えhクラステリンの上記培養培地への添加は、海馬切片培養のMBP量を増加させた。1μg/mlのmクラステリンで処理した切片のMBP量を図11に示す。当該MBPの増加は、ミエリン発生が終了する21DIVにおいて、もはや可視的でなかった(データ無し)。
【0215】
同様の結果が、mクラステリンの他の濃度(10及び100ng/ml)及びhクラステリン(データ無し)で得られた。
【0216】
結論
クラステリンは、海馬切片培養中において、成熟した海馬切片において検出された全量に影響することなく、MBP形成を刺激した。
【0217】
実施例5:クラステリンは、ベビーハムスター補体を伴う抗−MOG抗体により、海馬切片の脱ミエリン化を保護する。
序論
慢性炎症性脱ミエリン化多発性神経障害(CIDP)及びギランバレー症候群(GBS)の特徴であるミエリンの崩壊は、ミエリン成分を含む神経に対する自己免疫応答の存在が原因であると考えられている(Ho et al., 1998 ; Kwa et al., 2003 ; Steck et al., 1998)。抗体誘導性脱ミエリン化を模倣するために、器官型海馬切片培養がベビーハムスター補体との組み合わせにおいて抗−MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)抗体により2日間処理されている試験管内系を設定した。アイソタイプが一致するコントロール免疫グロブリン処理は有意な脱ミエリン化を誘導しなかったため、当該処理は特異的な脱ミエリン化をもたらす。当該系は、当該パラダイムにおけるクラステリンの保護的な効果を試験するために使用され、クラステリンは脱ミエリン化処理の1日前、及び同時に添加され、当該MBPレベルをELISAによりモニターした(詳細は実施例4を参照のこと)。
【0218】
材料及び方法
脱ミエリン化プロトコール
実施例4の説明により調製された切片(器官型海馬切片培養セクション)を、試験管内(DIV)における21日後に生じる発生ミエリン化の終了時に処理した。
【0219】
脱ミエリン化は、切片を25%ウマ血清含有培地において、ベビーウサギ補体(バッチに依存1/60−1/30;CL−3441, Cedarlane)と会合した抗−MOG抗体で2日間処理することにより誘導した。
【0220】
コントロールとして、切片を抗体と関連性のないIgG1(60μg/ml;M−7894, Sigma)で処理し、そして補体又は切片は未処理とした。
【0221】
処理の終了時において、切片(グループ当たり5切片)を、3倍洗浄バッファーに溶解し、そしてミエリンレベル量をMBP ELISAにより分析した。
【0222】
1μg/ml、100ng/ml、又は10ng/mlの組み換えマウスクラステリンを、脱ミエリン化処理の前に24時間適用し、並びに処理時において添加した(3日間の総量)。
【0223】
当該実験は3回行い、そして結果は図12に示す。
【0224】
これらの実験を、組み替えマウスクラステリンに代えて、HEK又はCHO細胞中で産出された組み換えヒトクラステリンで再現した場合、同様の結果を得た(データ無し)。
【0225】
結果
当該実験の結果は図12に示す。10ng/mlと同じぐらい低濃度のクラステリンを、抗−MOG/補体処理時において培地に添加すると、脱ミエリン化に対して有意に保護した。
【0226】
結論
脱ミエリン化モデルに介在される自己免疫において、クラステリンは、抗−MOG及び補体により誘導される脱ミエリン化を保護する。
【0227】
実施例6:クラステリン及びヘパリンの共−注射
序論
血清中、クラステリンは多様なタンパク質(Trougakos 及びGonos (Trougakos and Gonos, 2002)並びに Jones及びJomary (Jones and Jomary, 2002)により概説されている)と結合し、そして多様な推定上の結合部位(図1を参照のこと、Rosenberg 及び Silkensenに基づく,1995)を供することが知られている。これらの中で4つはヘパリン結合ドメインとして考えられる。クラステリンの生物学的利用能におけるこれらのヘパリン結合ドメインの関連性を研究するために、Liquemine(Roche)の場合におけるヘパリンの効果をクラステリン薬学動態において試験した。
【0228】
材料及び方法
第一実験
8週齢のC57Bl6である20gの雌の3つのグループ(3マウス/グループ)を以下の通りi.v.注射した:
−グループ1:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(300μg/kg)の注射5分前における100μlのNaCl 0.9%中のヘパリン(7500U/kg)。
−グループ2:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(300μg/kg)とヘパリン(7500U/kg)の混合溶液。
−グループ3:300μg/kgのhクラステリンのみ。
【0229】
クラステリン注射の5及び30分後に血液をチューブに採取した。グループ3に属するマウスの血液をヘパリン有り又は無し(+/−ヘパリン)のいずれかのチューブに採取した。それからクラステリンの存在を上述のELISA試験において実験した。
【0230】
第二実験
8週齢のC57Bl6の20gの雌の3グループ(4マウス/グループ)を以下のようにi.v.注射した。
−グループ1:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(1mg/kg)の注射5分前における100μlのNaCl 0.9%中のヘパリン(7500U/kg)。グループ1は、100μlのNaCl 0.9%中のクラステリン(1mg/kg)+ヘパリン(7500U/kg)の混合溶液を受けた。
−グループ2:1mg/kgのhクラステリンのみ。ヘパリン(7500U/kg)は、hクラステリンの注射から28分後に注射した(採血時である30分の2分前)。
−グループ3:1mg/kgのhクラステリンのみ。
【0231】
クラステリン注射の30分後、血液を採取した。それから血清中のクラステリンレベルを上述のELISA試験を使用してモニターした。
【0232】
クラステリンELISA
サンドイッチELISAを、捕獲抗体としてモノクローナル抗体41D(1/1000−50μl,Upstate N.05−354)を使用して発色させた。残渣の結合部位は、ブロッキングバッファー(0.5MのNaCl中、1%BSA(フラクションV)/0.1%Tween−20)中でRTにおいて遮断した。組み換えヒトクラステリンを含有する血清試料は、PBS中で連続希釈において試験した。続いてPBS/0.05%Tween−20において4回洗浄した。タグ−ビオチン接合体(1/1000,Qiagen N.34440)を暴露抗体として使用した。暴露抗体の存在は、Streptavidin−HRP(PBS中、1/5000,DAKO P0397)によりRTにおいて1時間モニターし、続いてOPD反応(Sigma)を行った。
【0233】
結果
図13Aに示すように、ヘパリンを伴うクラステリン(ヘパリン混合クラステリン)のプレインキュベーション、又はクラステリン注射前のヘパリン(クラステリン前に注射されたヘパリン)のプレインキュベーションは、クラステリン生物学的利用能を顕著に増加したが(p<0.005)、反対に、ヘパリンを含むチューブへのクラステリンの採取は、検出されたクラステリンのレベルを変化しなかった。
【0234】
2回目の採血(第二実験のグループ2、図13)の前にヘパリンを投与した場合、血清中の測定されたクラステリンレベルは、ヘパリンをクラステリンと共に共−注射した場合よりも有意に低かった(p<0.05)。それにもかかわらず、血液採取の前に注射したヘパリンは、クラステリンのみと比較して(p<0.1)検出可能なクラステリンのレベルを僅かに増加した。
【0235】
結論
ヘパリン投与は、クラステリンの生物学的利用能を有意に向上した(図13A)。しかしながら、十分な効果を得るためには、ヘパリンは、クラステリン送達の前、又は同時に注射する必要がある(図13B)。
【0236】
引用
【表6】
【表7】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】図1は、クラステリンの構造を模式的に示す(Rosenberg 及び Silkensen に基づく, 1995)。(A)は前駆体ポリペプチド、(B)は成熟ポリペプチドを表し、ここで、これはこれらの中心付近の5つのジスルフィド架橋により逆平行的に結合されたα(34〜36kDa)及びβ(36〜39kDa)により形成される75〜80kDaのヘテロ二量体糖タンパク質である、(C)はヒトクラステリン前駆体の配列を示す。
【0238】
【図2】図2は、腹腔内的に投与した(i.p.)媒体(○)、300μg/kg(▽)又は1mg/kg(□)のmクラステリンで処置した坐骨神経粉砕により誘導された神経障害マウスのグラム(g)における体重を示す。コントロール:健康なマウス(●)。
【0239】
【図3】図3は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kgの皮下注射(s.c.)のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリボルト(mV)における振幅を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0240】
【図4】図4は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kg s.c.のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリ秒(ms)における潜時を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0241】
【図5】図5は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kg s.c.のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリ秒(ms)における持続時間を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0242】
【図6】図6は、媒体、300μg/kg又は1mg/kg i.p.のmクラステリンで処理した神経障害マウスにおける再生線維のパーセンテージを示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0243】
【図7】図7は、媒体、300μg/kg又は1mg/kg i.p.のmクラステリンで処理した神経障害マウスにおける非再生線維のパーセンテージを示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0244】
【図8】図8は、媒体、100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kg s.c.の組み替えhクラステリン、及び30μg/kg s.c.のポジティブコントロール化合物(組み換えhIL−6)で処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリボルト(ms)における振幅を示す。記録は、坐骨神経傷害の1、2、3、又は4週間後に行った。データはmVにおける全振幅の平均値±標準誤差として表す;グループ当たりn=6マウス。#p<0.01、*p<0.05、**p<0.01。
【0245】
【図9】図9は、媒体、30μg/kgの組み換えヒトIL−6、又は100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kgの組み換えhクラステリンでs.c.4週間処理した神経障害マウスの対側(a)及び同側(b)腓腹筋中のマイクログラムタンパク質(cpm/μgタンパク質)によるcpm(分当たりのカウント)におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性を示す。グループ当たりn=6マウス。#p<0.1。
【0246】
【図10】図10は、媒体、30μg/kgの組み換えヒトIL−6、又は100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kgの組み換えhクラステリン s.c.処理の4週間後の(a)坐骨神経対側における、並びに坐骨神経の同側の(b)近位(粉砕部の上)及び(c)遠位(粉砕部の下)部分におけるマイクログラムのタンパク質当たりのナノグラム(ngのNF−H/mg タンパク質)における、神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)量を示す。グループ当たりn=6マウス。**p<0.01。
【0247】
【図11】図11は、マイクログラムのタンパク質当たりのピコグラム(pg MBP/μg 全タンパク質)において、試験管内(DIV)の10、13、及び17日目に対応する3、6、及び10日目の処理(T3、T6、及びT10)における1μg/mlの組み換えmクラステリンで処理した器官型海馬切片のミエリン塩基性タンパク質(MBP)量を示す。コントロールグループには、通常の媒体(50%のMEM、25%のHBSS、25%の馬血清)を与えた。HEK又はCHO細胞由来の組み換えヒトクラステリンを使用する場合、同様の結果が得られる(データ無し)。データは全MBPの平均値±標準誤差として表す;exp=2、グループ当たりn=12。p<0.001***。
【0248】
【図12】図12は、補体との組み合わせにおける抗−MOG(抗−ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)抗体(IgG抗−MOG+補体)により、又は非−関連アイソタイプ適合免疫グロブリンIgG及び補体(IgGコントロール+補体)により誘導された特異的な脱ミエリン化後、10、100、及び1000ng/mlの組み換えmクラステリンで処理した器官型海馬切片のマイクログラムのタンパク質当たりのピコグラム(pg MBP/μg tot prot)におけるMBP量を示す。コントロールとして、非処理グループは通常の媒体(50%のMEM、25%のHBSS、25%の馬血清)を与えた。mクラステリンは、21DIV(試験管内における日数)において、抗体の添加前及び処理時において24時間適用した。exp=3、n=15、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0249】
HEK又はCHO細胞由来の組み換えヒトクラステリンを使用する場合、同様な結果が得られる(データ無し)。
【0250】
【図13A】図13Aは、ヘパリン(7500U/kg)の存在下又は不存在下における組み替えhクラステリン(300μg/kg)の血管内(i.v.)注射の5又は30分後の、ELISAにより検出されたミリリットル当たりのナノグラム(ng/ml)におけるhクラステリンの血清中濃度を示す。
【0251】
A.ヘパリンをクラステリンの5分前(クラステリン前に注射されたヘパリン)、又はクラステリンと同時(ヘパリンと混合したクラステリン)に投与した。コントロールとして、マウスにクラステリン単独(クラステリン)で注射し、そして当該血液をチューブ+/−ヘパリンに採取した(ヘパリン中に採取されたクラステリン)。n=3 マウス/グループ、***p<0.005。
【0252】
【図13B】図13Bは、ヘパリン(7500U/kg)の存在下又は不存在下における組み替えhクラステリン(300μg/kg)の血管内(i.v.)注射の5又は30分後の、ELISAにより検出されたミリリットル当たりのナノグラム(ng/ml)におけるhクラステリンの血清中濃度を示す。
【0253】
B.血液採取前のヘパリン(7500U/kg)投与の効果。グループ1:クラステリン(1mg/kg)5分前にヘパリンを投与した。グループ2:クラステリン(1mg/kg)28分後にヘパリンを投与した。グループ3:クラステリン(1mg/kg)のみ。a:グループ1に対する分散分析単因子検定。b:グループ2に対する分散分析単因子検定。n=4 マウス/グループ、#p<0.1、*p<0.05、**p<0.01。N−アセチルへパリン投与で同様の結果が得られた(データ無し)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、抹消神経系の神経疾患の分野におけるものである。これは、神経保護、神経ミエリン化、及び細胞を産出するミエリンの産出又は再生に関する。より好ましくは、本発明は、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢神経疾患は、末梢神経系(PNS)又はPNSを支持する末梢グリアに関する障害である。末梢神経障害は、最も一般的な末梢神経疾患の1つである。
【0003】
末梢神経障害は、感覚喪失、筋肉衰弱及び萎縮、深部腱反射の減少、並びに血管運動症状の単独又はいずれかの組み合わせにおける症候群である。
【0004】
上記疾患は、単一の神経(単神経障害)、別々の領域中の2又は複数の神経(多発性単神経障害)、又は同時に多くの神経(多発性神経障害)に影響しうる。軸索(例えば、糖尿病、ライム病、又は尿毒若しくは毒素を伴う場合)、又は髄鞘若しくはシュワン細胞(例えば、急性又は慢性の炎症性多発神経障害、白質萎縮症、又はギランバレー症候群における)が最初に影響される。小さな無髄及び有髄線維に対する損傷は、先ず温度覚及び痛覚の喪失をもたらし、大きな有髄線維に対する損傷は運動若しくは固有感覚の欠陥をもたらす。いくつかの神経障害(例えば、導入された毒性、ダプソンの使用、ダニ刺され、ポルフィリン症、ギランバレー症候群が原因である)は、最初に運動線維に影響する:他のもの(例えば、癌の後根神経節炎、ライ病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒が原因である)は最初に、後根神経節、又は感覚線維に影響し、感覚症状を生じる。時折、脳神経もまた関係する(例えば、ギランバレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリア)。関連する様態の確認は当該原因の決定を助ける。
【0005】
外傷は、単神経に対する局所型の傷害の最も一般的な原因である。激しい筋肉動作、又は関節の無理な過伸展は、反復性の小さな外傷として局所的な神経障害を生じさせる(例えば、小さな道具できつく掴むこと、エアーハンマーからの過剰な振動)。圧力又はエントラップメント麻痺は、通常、骨の隆起における(例えば、細身又は悪液性の人及びしばしばアルコール依存症の人における熟眠中、又は麻酔中)、又は細管における(例えば、手根管症候群における)表層神経(尺骨、橈骨、腓骨)に影響する。圧力麻痺はまた、腫瘍、骨過形成、ギブス、松葉杖、又は遷延痙攣姿勢(例えば、ガーデニング)によりもたらされる。神経中への出血、及び寒冷又は放射線への暴露は神経障害を生じさせうる。単神経障害は、直接的な腫瘍の浸潤によりもたらされうる。
【0006】
PNSの外傷性神経の傷害は、手術(例えば、手術的な前立腺切除)において発生しうる。神経−節約前立腺切除において、神経への損傷を防ぐために、海綿体神経のコースを認識するために、手術中に海面体神経の刺激がされ、そして神経損傷を避けながら外科医を誘導する(Klotz and Herschorn, 1998)。急性の前立腺切除による性交不能の結果の評価研究は、1つ又は両方の陰核海綿体を部分的なに又は完全に切除した場合、以前に性交可能であった男性503人中212人(42%)が性交不能に苦しむことを示した。当該性交不能の割合は、神経が無傷で残された場合、24%に減少する(Quinlan et al, 1991b ; Quinlan et al, 1991a)。
【0007】
多発性単神経障害は、コラーゲン性血管疾患(例えば、結節性多発性動脈炎、SLE、シューグレン症候群、RA)、サルコイドーシス、代謝疾患(例えば、糖尿業、アミロイド症)、又は感染症(例えば、ライム病、HIV感染)に対して通常続発性である。微生物は、神経への直接的な侵入により多発性単神経障害を起こしうる(例えば、ライ病)。
【0008】
急性熱性疾患が原因の多発性傷害は、毒素(例えば、ジフテリアにおいて)、又は自己免疫応答(例えば、ギランバレー症候群において)によりもたらされ、しばしば免疫化を伴う多発性神経障害もまた、おそらく自己免疫性である。
【0009】
毒性薬剤は一般的に多発性神経障害を生じさせるが、しばしば単神経障害も生じさせる。これらは、エメチン、ヘキソバルビタール、バルビタール、クロロブタノール、スルホンアミド、フェニトイン、ニトロフラントイン、ビンカアルカロイド、重金属、カーボンモノキシド、トリオルトクレシルホスフェート、オルトジニトロフェノール、多くの溶媒、他の工業性毒物、及びいくつかのAIDS薬物(例えば、ザルシタビン、ジダノシン)を含む。
【0010】
栄養欠乏及び代謝疾患は、多発性神経障害をもたらしうる。ビタミンB欠乏はしばしば当該原因である(例えば、アルコール依存症、脚気、悪性貧血、イソニアジド誘導性ピリドキシン欠乏、吸収不良症候群、及び悪阻において)。多発性神経疾患はまた、甲状腺機能低下症、ポルフィリン症、サルコイドーシス、アミロイド症、及び尿毒症においても発生する。糖尿病は、感覚運動末端多発性神経障害(最も一般的)、多発性単神経障害、及び局所的単神経障害(例えば、眼球運動、又は外転脳神経の障害)の原因となりうる。
【0011】
悪性疾患は、モノクローナル免疫グロブリン血症(多発性骨髄腫、リンパ腫)、アミロイド侵入又は栄養欠乏を介して、多発性神経障害又は腫瘍随伴症候群として生じうる。
【0012】
特定の単神経障害:単一性及び多発性単神経障害は、影響された神経の分布における痛み、衰弱、及び知覚異常により特徴付けられる。多発性単神経障害は、非対称性である;当該神経は、突然に又は進行的に関与されうる。多くの神経の広範な関与は、多発性神経障害を装いうる。
【0013】
尺骨神経麻痺は、しばしば肘における反復した折り曲げ、又は子供の頃の骨折後の不均整な骨の成長による肘の尺骨溝における神経への外傷により引き起こされる(遅発性尺骨麻痺)。また、尺骨神経は、肘トンネルにおいて圧迫されうる。小指及び薬指の内側半分における知覚異常及び感覚欠陥が発生する;親指内転筋、小指内転筋、及び骨間筋は、弱体化及び萎縮する。重度な慢性尺骨麻痺はワシ手奇形を生じさせる。神経伝導の研究は、当該障害の部位を特定することができる。保守的な治療は外科的修復が試みられる前に試みるべきである。
【0014】
手根トンネル症候群は、横断表面手根靭帯と手を曲げる前腕筋の縦方向の腱の間の手首の掌側における正中神経の圧迫によりもたらされる。それは片面側又は両側であってよい。当該圧迫は、手の橈骨手掌側における知覚異常及び手首及び手掌における痛みを生じさせる:時々、痛みは前腕及び肩における圧迫部位の近位に発生する。痛みは、夜間により厳しい痛みとなりうる。第一第三指の手掌側における感覚欠陥は以下を起こしうる:親指外転及び反転を制御する筋肉を弱体化及び萎縮させる。当該症候群は、頚部の神経根障害によるC−6根圧迫と区別すべきである。
【0015】
腓骨神経麻痺は、通常、腓骨頚部の外側の神経の圧迫により発生する。それは最も一般的には、痩せている寝たきりの患者において、及び足を習慣的に組む痩せた人において生じる。足背屈弱体化及び外転(尖足)が発生する。たまに、感覚欠陥が、下腿の前外側及び足の背側、又は1番目と2番目の中足骨の間の趾間において起こる。圧迫された神経障害の治療は、通常保守的である(例えば、足を組むのを避ける)。不完全な神経障害は、通常臨床的に従い、そして通常自然に向上する。回復しない場合、外科的な診査が指摘されるであろう。
【0016】
橈骨神経麻痺(Saturday night palsy)は、例えば、酔っている間又は熟睡中腕を椅子の背にもたれされるような上腕骨に対する神経の圧迫により引き起こされる。症状は、手首及び指伸筋の弱体化(垂手)、並びにたまに1番目の背面骨間筋の背側にわたる感覚喪失を含む。治療は圧迫性腓骨神経障害のものと同様である。
【0017】
多発性神経障害は、比較的対称的であり、しばしば同時に感覚、運動、及び血管運動線維に影響する。これらは、軸索又は髄鞘に影響し、そしていずれかの形態において、急性(例えば、ギランバレー症候群)又は慢性(例えば、腎不全)であってよい。
【0018】
代謝疾患(例えば、糖尿病)又は腎不全が原因の多発性神経障害は、ゆっくりと、しばしば、何ヶ月も何年にもわたり発達する。それは、頻繁に、しばしば近位よりも遠位においてより重篤である、脚の感覚異常で始まる。末梢性刺痛、痺れ感、灼熱痛、又は関節における固有受容性感覚及び振動性感覚の欠陥がしばしば顕著である。痛みはしばしば夜間に悪化し、そして発症した部位を触ることにより、又は温度変化により悪化しうる。重篤な場合、典型的には手袋・靴下型分布を伴い感覚喪失の客観的な徴候がある。アキレス及び他の深部腱反射は減少するか又は存在しない。固有受容性欠陥における無痛性潰瘍は、歩行運動異常を誘導しうる。運動関与は末端筋肉の低下及び萎縮をもたらす。
【0019】
自律神経系は、追加的に又は選択的に関係し、夜間の下痢、尿及び糞便失調、性交不能、又は体位性低血圧を導く。血管運動性の症状は変化する。皮膚は、時々、浅黒い変色を伴うが、通常より蒼白及び乾燥していてもよく、発汗は過剰となりうる。栄養性変化(滑らか及び光沢のある皮膚、窪み又は隆線がある爪、骨粗鬆症)は重篤であり、遅延型である場合が通常である。
【0020】
栄養性多発性神経障害は、通常、アルコール中毒及び栄養不良における。最初の軸索障害は、もっとも長く且つ大きな神経において二次的な脱ミエリン化及び軸索破壊を導く。当該原因が、チアミン、又は他のビタミン(例えば、ピリドキシン、パントテン酸、葉酸)の欠乏によるものかは明確ではない。ピリドキシン欠乏による神経障害は、通常、TBのためのイソニアジドを摂取する人においてのみ発生する;ピリドキシンが欠乏又は依存している乳児は痙攣しうる。末端の萎縮及び全身性の脱力感は、通常、潜行性であるが、時々、感覚喪失、麻痺、及び痛みにより付随され急速に進行しうる。ふくらはぎ及び足における痛み、痙攣、寒気、熱気、及び痺れは、触れることにより悪化しうる。複数のビタミンは病因が不明な場合与えられるが、これらは証明された利点を有さない。
【0021】
稀に、専ら感覚多発性神経障害は、末梢性の痛み及び知覚異常を伴って開始し、そして全ての形態の感覚の喪失に対して中枢的に進行する。それは癌腫(特には、気管支原性)の遠隔的な影響として、過剰量のピリドキシン摂取(>0.5g/日)後に、及びアミロイド症、甲状腺機能低下症、骨髄腫、及び尿毒症において発生する。当該ピリドキシン誘導神経障害はピリドキシンが中断されると回復する。
【0022】
遺伝性神経障害は、感覚運動神経障害又は感覚神経障害として分類される。シャルコー‐マリー-ツース病は、最も一般的な遺伝性感覚運動神経障害である。一般的でない感覚運動神経障害は、誕生において始まり、そして重度の能力障害をもたらす。稀な感覚神経障害において、末梢性の痛み及び温度感覚の欠如は、振動性及び位置感覚の欠如よりもより顕著である。主な問題は、頻繁な感染及び骨髄炎を伴う、痛みの非感受性が原因の遠心性神経離断である。
【0023】
遺伝性運動及び感覚神経障害I型及びII型(シャルコー‐マリー-ツース病、腓骨筋肉萎縮症)は、比較的一般的な、通常、最初に腓骨及び末端脚筋肉における低下及び萎縮により特徴付けられる常染色体優性疾患である。また、患者は他の変性疾患(フリートライヒ運動失調)、又はこれらの家族歴を有しうる。尖足及び遅進行性末端筋の萎縮を伴う幼少期の中盤に本I型を有する患者は「コウノトリ足」を生じる。手の内因性筋肉の萎縮は後で始まる。振動、痛み、及び温度の感覚は、手袋・靴下型において減少する。深部腱反射は存在しない。高遠心性神経弓状又は槌状足指は、ほとんど発症していない疾患を有する家族において、唯一の徴候となりうる。神経圧迫速度はゆっくりであり、そして末端潜時は延長される。分節性脱ミエリン化及び再ミエリン化が生じる。拡大した末梢神経は触診できる。当該疾患はゆっくりと進行し、そして寿命に影響しない。II型疾患は、よりゆっくりと進行し、人生の後半において通常発生する脱力感を伴う。患者は比較的正常な神経圧迫速度を有するが、潜在性が誘起した低い振幅を有する。組織診は、ウォーラー変性を示す。
【0024】
遺伝性の運動及び感覚神経障害III 型(肥大間質性神経障害、ドゥジュリーヌ‐ソッタ病)である、稀な常染色体劣性疾患は、進行性虚弱及び感覚喪失及び深部腱反射の不存在を伴う幼少期において開始する。初期において、それはシャルコー‐マリー-ツース病に似ているが、運動性脱力感は急速に進行する。脱ミエリン化及び再ミエリン化が生じ、拡大した末梢神経を生じ、そして神経組織診においてタマネギ茎が確認された。
【0025】
特徴的な運動脱力、足変形、家族歴、及び電気生理学的異常の特徴的な分布は、診断を確認する。遺伝的分析は利用可能であるが特別な治療法はない。疾患の進行のために若い患者を準備するための職業的カウンセリングは有用となりうる。装具の補助は尖足を矯正する;足を安定化するための整形手術は助けとなりうる。
【0026】
脊髄損傷は、多くの病院の対麻痺及び四肢麻痺の入院を説明する。80%以上が交通事故によるものとして引き起こされる。損傷の2つの主なグループが臨床的に認識される:開放性損傷及び非開放性損傷。
【0027】
開放性損傷は、脊髄及び脊髄神経根の直接的な外傷が原因となる。穿孔性傷害は広範な破壊及び出血を生じうる。非開放性損傷は、最も脊髄傷害を説明し、そして通常、脊柱の骨折/脱臼に関係し、通常放射線学的に実証できる。当該索の傷害は、骨の損傷の程度に依存し、そして2つの主な段階において考えることができる:第一の損傷は、挫傷、神経線維横切、及び出血壊死であり、そして第二の損傷は、硬膜外血腫、感染、及び浮腫である。
【0028】
索の損傷後の影響は、以下を含む:損傷した神経線維の上行及び下行順変性、外傷後の脊髄空洞症、及び対麻痺の全身性効果、例えば、尿路及び胸感染、床ずれ、筋肉るいそう。
【0029】
脱ミエリン化は、神経インパルス伝導において機能的な減少又は妨害に結びつける。
【0030】
多重膜髄鞘は、脂質中に豊富であり、そしてタンパク質中で不十分なグリア細胞原形質膜の特異的なドメインである。それは軸索を補助し、そして電荷が周りの組織に流れ出だすことを防ぐことにより神経系において電気シグナル伝導の有効性を向上する。ランビエ絞輪は、飛躍伝導が発生する軸索に沿う鞘中の部位である。
【0031】
再ミエリン化の過程は、損傷を修復するために抗炎症性経路と一緒に働くことができ、そして軸索を横切及び死から保護する。
【0032】
シュワン細胞は、末梢神経神経系において補助的な役割を供する末梢性グリア細胞であり、衛星細胞に属する。シュワン細胞は、末梢性軸索のシャフトを個々に包み、軸索のセグメントに沿った層又は髄鞘を形成する。シュワン細胞は、主に脂肪の脂質により構成される;当該脂肪は絶縁体として働き、これにより、軸索に沿った活動電位の伝達速度を上げる。
【0033】
また、シュワン細胞は、末梢神経系において神経細胞の再生を進行するために不可欠である。軸索が瀕死である場合、その周りのシュワン細胞はその消化において助ける。これは、連続的なシュワン細胞により形成された空のチャンネルを離し、新たな軸索は、1日当たり3〜4ミリメートルの速さで重篤末端から成長できる。
【0034】
神経障害は、通常、影響されたPNSの神経細胞型について選択的であり(例えば、感覚と自律神経)、そしてまた、実際に神経細胞のサブタイプに選択的である(小と大)。末梢神経の軸索切断は、神経親和性因子の神経保護効果を評価するために、最も一般的には動物モデルが使用される。外傷性神経傷害、神経叢傷害、及び根破壊は、深刻な事故の合併症である。更に、ミエリン損傷の原因となりうる末梢神経における圧迫は、しばしば疾患、例えば、手根管症候群において見られ、又は脊柱整形合併症に付随する。軸索切断は、細胞死のような、損傷した神経細胞において軸索伝導速度が減少され、そして神経障害状態に対する神経伝達物質レベルが変化する減少を生じさせる(McMahon and Priestley, 1995)。粉砕破壊は、神経障害の状態に関する興味深い追加的なプロセスである再生を許容する(McMahon and Priestley, 1995)。
【0035】
細胞神経生物学における基礎的な問題は、傷害又は疾患後の神経再生の調節である。機能的な神経再生は、軸索の出芽及び伸長だけでなく、新たなミエリン合成を必要とする。再ミエリン化は、正常な神経伝導の修復、及び新たな神経変性免疫の攻撃からの軸索の保護に必要である。神経変性疾患における研究の第一の目的は、究極的には、神経細胞死を防ぎ、神経細胞の表現型を維持し、そして神経細胞及びミエリンの損傷を回復する処置を発達させることである。軸索切断された脊髄運動神経細胞の完全な再生に関係する分子及び細胞メカニズムを解明する多くの研究が捧げられてきた(Fawcett and Keynes, 1990 ; Funakoshi et al., 1993)。神経栄養因子及び対応するレセプターの傷害誘導性発現は、神経再生能において重要な役割を果たすことができる。以前の研究は、様々なペプチド及び非ペプチド化合物、例えば、インスリン様成長因子(IGF−1)、ACTH( Lewis et al., 1993 ; Strand et al., 1993)、テストステロン(Jones, 1993)、SR57746A(Fournier et ai.. 1993)、及び4−メチルカテコール(Hanaoka et al., 1992 ; Kaechi et al, 1993)による神経再生の有意な向上を示してきた。
【0036】
クラステリンは、アポリポタンパク質J、SGP−2、TRPM−2、及びSP−40,40としても知られている細胞外タンパク質である。これは、ほとんど偏在性の組織分布を有し、そしてそれが精製された原料に従い多くの名前が与えられている(Trougakos及びGonos(Trougakos and Gonos, 2002)、Jones及びJomary(Jones and Jomary, 2002)において概説されている)。その偏在的な発現及びその関連する血清の存在量にも関わらず(100ug/ml)、クラステリンの本当の機能は、解明を残す。クラステリンのいくつかの生物学的な役割は、結合性C9補体(Tschopp et al., 1993)、実験された動物モデルに依存するアポトーシス促進活性又は抗−アポトーシス活性(Han et al., 2001; Wehrli et al., 2001)、進行の制限、及びより最近のシャペロン特性(Poon et al., 2002)による補体カスケードを阻害する能力において提唱された。アルツハイマー病におけるクラステリンの神経保護の役割もまた、示差されてきた(Giannakopoulos et al., 1998)。その主要な形態である75〜80kDaのヘテロ二量体は、単一の転写物から得られる。それから当該ポリペプチド鎖は、22塩基長の分泌シグナルペプチドを除去するために、そして続いて227/228残渣間において、各鎖の中央に位置する5つのシステイン結合により構築されるアルファとベータの2本の鎖を産出するためにタンパク分解的に切断される。また、当該ポリペプチドは、グリコシル化部位及び核局在化シグナル配列を含む。その分解は、低密度リポタンパク質レセプターファミリーのメンバーである、エンドサイトーシスレセプター gp330/メガリン/LRP2により媒介されているようである。
【0037】
ヘパリンは、スルファミン架橋を有する硫酸化D−グルコサミン及びD−グルクロン酸の同じ部分を形成する高酸性ムコ多糖である。当該分子量は6000〜20000の範囲である。ヘパリンは、脊椎動物の肝臓、肺、マスト細胞等中で発生し、そして得られる。その機能は未知であるが、生体内及び試験管内において、多くの異なる塩の形態において血液凝固を防ぐために使用さる(Medical Subject Headings (MESH), http ://www. nlm. nih. gov/mesh/meshhome. html)。ヘパリンナトリウム(取引名:リポヘパリン及びリキアエミン(Liquaemin))は、血栓症の治療における抗凝固剤として使用される。
【0038】
ヘパリン画分である低分子量ヘパリン(LMWHs)もまた存在する。これらは、通常4000〜6000kDaの分子量を有する。これらの低分子量分画は、有効な抗凝固剤である。これらの投与は、出血のリスクを減少し、これらはより長い半減期を有し、そしてこれらの血小板相互作用は、非分画ヘパリンと比較して減少される。また、これらは、手術後の主な肺塞栓症に対する有効な予防法を供する(Medical Subject Headings (MESH), http ://www. nlm. nih. gov/mesh/meshhome. html)。LMWHsは、例えば、ナドロパリン、N−アセチルヘパリン、アルデパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、レビパリン、チンザパリンであってよい。
【0039】
他のヘパリンは、ヘパリノイドを含む。これらは、天然及び合成の類似した構造の高硫酸化多糖類である。ヘパリノイド調製物、例えば、ダナパロイドナトリウムは、抗凝固剤及び抗炎症剤としての使用を含む広範囲の投与に使用されており、そして、これらは、脂質低下特性を有することが要求されてきた(Martindale, The Extra Pharmacopoeia, 30th, p232)。
【0040】
インターフェロンは、抗炎症性、抗ウイルス性、及び抗増殖性を示すサイトカインのサブクラスである。生化学的及び免疫学的特性に基づき、天然のヒトインターフェロンは、3つのクラスに分類される:インターフェロンアルファ(白血球)、インターフェロンベータ(線維芽細胞)、及びインターフェロンガンマ(免疫性)である。アルファ−インターフェロンは、有毛細胞白血病、性病いぼ、カポジ肉腫(一般的に後天性免疫不全症候群(AIDS)に苦しむ患者を悩ます癌)、及び慢性非A型肝炎、非B型肝炎のために、現在米国及び他の国々に認可されている。
【0041】
更に、インターフェロン(IFNs)は、ウイルスの感染に対する応答において身体により産出される糖タンパク質である。これらは、保護された細胞中においてウイルスの分裂増殖を阻害する。低分子量のタンパク質の存在において、IFNは、これらの作用において、著しく非特異的である。即ち、あるウイルスにより誘導されたIFNは、広範な他のウイルスに対して有効である。しかしながら、これらは種特異性である。即ち、ある種により誘導されたIFNは、同じ又は近い関係にある種である細胞においてのみ抗ウイルス活性を刺激するであろう。IFNは、これらの潜在的な抗腫瘍及び抗ウイルス活性のために活用すべきサイトカインの第一のグループである。
【0042】
3つの主要なIFNは、IFN−α、IFN−β、及びIFN−γを意味する。このような主要な種類のIFNは、先ず、これらの起源の細胞に従い分類される(白血球、線維芽細胞、又はT細胞)。しかしながら、いくつかの種類は、1つの細胞により産出されうることが明らかとなった。それゆえ、現在、白血球IFNはIFN−α、線維芽細胞IFNは、IFN−β、及びT細胞IFNはIFN−γと呼ばれる。また、「Namalwa」細胞株(バーキットリンパ腫に由来)において産出される4番目の種類のIFNである、リンパ芽球腫IFNが存在し、白血球及び線維芽細胞IFNの両方の混合体を産出するようである。
【0043】
上記インターフェロン単位は、ウイルス傷害に対する50%の細胞を保護するために必要な量として定義される(任意)IFN活性の尺度として報告されてきた。
【0044】
IFNの全てのクラスはいくつかの別の種類を含む。IFN−β及びIFN−γは、それぞれ、単一の遺伝子の生産物である。個々の種類の違いは、主に、グリコシル化の違いが原因である。
【0045】
IFN−αは、最も多様なグループであり、約15種類を含む。染色体9において、少なくとも23のメンバーを含み、その15が活性であり、そして転写されるIFN−α遺伝子のクラスターが存在する。成熟IFN−αはグリコシル化されていない。
【0046】
IFN−α及びIFN−βは類似した生物活性を伴い、全て同じ長さ(165又は166アミノ酸)である。IFN−γは長さにおいて146のアミノ酸であり、そして密接ではないα及びβクラスに似ている。唯一、IFN−γはマクロファージを活性化し、又はキラーT細胞の突然変異を誘導することができる。効果において、これらが腫瘍に対する生物の応答において効果を有し、免疫調節を介して認識を及ぼすことから、これらの新しい種類の治療剤は生物応答修飾因子(BRM)と呼ぶことができる。
【0047】
特に、ヒト線維芽細胞インターフェロン(IFN−β)は抗ウイルス活性を有し、そしてまた、腫瘍性細胞に対する天然キラー細胞を刺激することができる。それは、ウイルス及び2本鎖RNAにより誘導される約20,000Daのポリペプチドである。組み換えDNA技術によりクローンされた線維芽細胞の遺伝子の核酸配列から、Derynck等は、当該タンパク質の完全アミノ酸配列を推定した(Derynck et al., 1980)。それは166のアミノ酸長である。
【0048】
Shepard等は、その抗ウイルス活性を破壊する塩基842における突然変異(141位におけるCys→Ser)、及びヌクレオチド1119〜1121の欠失を伴う変異体クローンを説明した(Shepard et al., 1981)。
【0049】
Mark等は、17位においてアミノ酸をCys→Serに転換させる塩基469(T)を(A)で置換することにより人工突然変異タンパク質を挿入した(Mark et al, 1984)。結果として生じたIFN−βは、「未変性」IFN−βと同様に活性であり、そして長期間の保存(−70℃)において安定であることが報告された。
【0050】
IFNがこれらの効果を及ぼすメカニズムは、完全には理解されていない。しかしながら、ほとんどの場合、これらは一定の遺伝子の誘導又は転写に影響することにより作用し、従って免疫系に影響する。試験管内による研究は、IFNが約20の遺伝子生産物を誘導又は抑制する能力があることを示した。
【0051】
オステオポンチン(OPN)は、骨及び歯のミネラル化された細胞外又はトリックスの顕著な成分である高リン酸化シアロタンパク質である。OPNは、ポリアスパラギン酸配列、及びヒドロキシアパタイト結合性を媒介するSer/Thrリン酸化部位、及び細胞接着/シグナリングを媒介する高保存RGDモチーフの存在により特徴付けられる。オステオポンチン阻害因子は、MS、多様な免疫不全、及び癌を誘導する感染症、障害、及び疾患の治療に有用な上記を説明してきた(WO00/63241)。オステオポンチン又はオステオポンチン活性のアゴニストの使用は、神経疾患の治療及び/又は予防のための薬物の製造のために、W002/92122において要求されている。
【0052】
Bonnard A等は、ラット坐骨神経粉砕後の破壊部位におけるクラステリンmRNA発現の増加を観察した(Bonnard et al., 1997)。
【0053】
クラステリンによるPNS疾患の治療は、未だ当業界において考慮されていない。
【発明の開示】
【0054】
発明の概要
本発明の目的は、新規な末梢神経疾患の治療及び/又は予防方法を供することである。
【0055】
本発明は、末梢神経障害の動物モデルにおいてタンパク質クラステリンが有利な効果を有することの発見に基づく。
【0056】
従って、本発明は、末梢神経疾患、例えば、末梢神経系(PNS)の外傷性神経傷害、及び末梢神経障害におけるクラステリン又はクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【0057】
また、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリンを含んで成る核酸分子及び発現ベクター、並びにクラステリンを発現する細胞の使用も本発明の範囲である。
【0058】
本発明は、更に、クラステリン、及びヘパリン又はインターフェロン又はオステオポンチン、任意的な1又は複数の医薬的に受容可能な賦形剤を一緒に含んで成る医薬組成物組成物を供する。
【0059】
本発明の2番目の観点において、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のために、クラステリンは、ヘパリン、インターフェロン、又はオステオポンチンとの組み合わせにおいて使用することができる。
【0060】
発明の詳細な説明
本発明の枠組みにおいて、クラステリンの投与が、末梢神経疾患の生体内動物モデルにおいて有利な効果を有することが発見された。神経障害を誘導された坐骨神経粉砕マウスモデルにおいて、神経再生に関する全ての生理的及び形態的パラメーター、完全性及び生命力はクラステリンの投与により肯定的に影響された。
【0061】
従って、本発明は、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、円順列変異誘導体(circularly permutated derivative)、又はこれらの塩、あるいはクラステリン活性のアゴニストの使用に関する。
【0062】
本明細書において使用される「クラステリン」の語は、完全長の成熟ヒトクラステリン、又はいずれかのクラステリンサブユニット、又はこれらのフラグメントに関する。ヒトクラステリンの配列は、本明細書において、添付配列の一覧の配列番号1及び添付図の図1Cとして報告される。更に、本発明において使用される「クラステリン」は、クラステリン活性を維持するために十分な同一性を有する限り、そして生じた分子がヒトにおいて免疫原生とならない限り、動物、例えば、マウス、ウシ、ブタ、ネコ、又はヒツジ由来のいずれかのクラステリンに関する。
【0063】
更に、本明細書において使用される「クラステリン」の語は、生物活性突然変異タンパク質及びフラグメント、例えば、天然クラステリンのアルファ及びベータサブユニットに関する。
【0064】
更に、本明細書において使用される「クラステリン」の語は、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、又は円順列変異誘導体、あるいはこれらの塩を包含する。これらのアイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、又は円順列変異誘導体は、クラステリンの生物活性を保持する。好ましくは、これらは、野生型クラステリンと比較して向上した生物活性を有する。
【0065】
本明細書において使用される「クラステリン活性のアゴニスト」は、クラステリン活性を刺激又は模倣する分子、例えば、クラステリンレセプターのアゴニスト抗体、又はクラステリンレセプターを介してシグナリングを活性化する小分子量アゴニストに関する。クラステリンレセプターは、おそらく、例えば、gp330/メガリン/LRP2である(Kounnas et al., 1995)。刺激因子又はエンハンサーであるこのようなレセプターのいずれかのアゴニストは、本明細書中に使用される「クラステリン活性のアゴニスト」の語により包含される。
【0066】
更に、本明細書において使用される「クラステリン活性のアゴニスト」は、クラステリン媒介活性を増強する薬剤、例えば、上記クラステリン活性を模倣する小分子量化合物を意味する。
【0067】
本明細書において使用される「治療」及び「予防」の語は、1又は複数の末梢神経疾患の症状又は原因、並びに末梢神経疾患に付随する症状、疾患、又は合併症の予防、阻害、減弱、又は回復として理解すべきである。末梢神経疾患を「治療」する場合、本発明に従う物質は、疾患の発病後に与えられ、「予防」は患者において注意できる疾患の徴候の前に当該物質を投与することに関する。
【0068】
本明細書において使用される「末梢神経疾患」の語は、「背景技術」に詳説したものを含む、全ての既知の末梢神経疾患若しくは障害、又はPNSの傷害を包含する。
【0069】
末梢神経疾患は、PNSの機能障害に関する障害、例えば、神経伝達、神経外傷、PNS感染、PNSの脱ミエリン化性疾患、又はPNSの神経障害に関する疾患を含んで成る。
【0070】
好ましくは、本発明の末梢神経疾患は、末梢神経系の外傷性神経傷害、RNSの脱ミエリン化性疾患、及び末梢神経変性疾患、及び末梢神経神経障害から成る群から選択される。
【0071】
外傷性神経傷害は、上述の「背景技術」において説明したPNSに関連してもよい。
【0072】
末梢神経傷害は、感覚喪失、筋肉虚弱及び萎縮の症候群、深在性腱反射、及び血管運動症状単独又はいずれかの組み合わせに関してもよい。
【0073】
神経障害は、単一の神経(単神経障害)、別々の領域における2又は複数の神経(多発性単神経障害)、又は同時に多くの神経(多発性神経障害)に影響しうる。軸索(例えば、糖尿病、ライム病、又は尿毒症若しくは毒素を伴う疾患における)、髄鞘、又はシュワン細胞(例えば、急性若しくは慢性炎症性多発性神経障害、白質萎縮症、又はギランバレー症候群において)が最初に影響されうる。更に、本発明に関する治療できる神経障害は、例えば、導入された毒素、ダプソンの使用、ダニ刺され、ポルフィリン症、ギランバレー症候群が原因であってよく、そして、これらは最初に運動線維に影響しうる。他のもの、例えば、癌の後根神経節、ライ病、AIDS、糖尿病、又は慢性ピリドキシン中毒が原因のものは、最初に後根神経節又は感覚線維に影響し、感覚症状を生じうる。また、脳神経は、例えば、ギランバレー症候群、ライム病、糖尿病、及びジフテリアに関係しうる。
【0074】
更に、末梢神経疾患は、異常なミエリン化を伴う神経障害、例えば、上述の「背景技術」で説明したものの1つ、並びに手根トンネル症候群を含んで成る。外傷性神経傷害は、脊柱整形合併症により達成され、そしてこれらはまた、本発明に関連する疾患の範囲内である。
【0075】
更に、末梢神経疾患は、先天性代謝疾患が原因であってよい。従って、本発明の好ましい態様において、当該末梢神経疾患は先天性代謝欠陥が原因である。
【0076】
更に好ましい態様において、当該末梢神経疾患は末梢神経障害であり、最も好ましくは糖尿病性神経障害である。また、神経障害に関する化学療法は、好ましくは、本発明に関する。
【0077】
「糖尿病性神経障害」の語は、糖尿病性神経障害のいずれかの形態、又は糖尿病性神経障害、又は上述の「背景技術」に説明されるような神経に影響する糖尿業の合併症を付随し、あるいは引き起こされる1又は複数の症状又は障害に関する。糖尿病性神経障害は、多発性神経障害であってよい。糖尿病性多発性神経障害において、多くの神経が同時に影響される。また、当該糖尿病性神経障害は単神経障害であってもよい。局所的な単神経障害において、例えば、当該疾患は、単一の神経、例えば、眼球運動又は外転脳神経に影響する。また、それは、別々の領域において2又は複数の神経が影響される多発性単神経障害であってもよい。
【0078】
より更なる好ましい態様において、上記末梢神経疾患は末梢神経系(PNS)の脱ミエリン化疾患である。後者は、疾患、例えば、慢性炎症性脱ミエリン化多発神経根筋障害(CIDP)及び急性単相性障害、例えば、ギランバレー症候群と名付けられる炎症性脱ミエリン化多発神経根筋障害を含んで成る。
【0079】
好ましくは、上記クラステリンは以下から成る群から選択されるペプチド又はタンパク質から選択される:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
j)(a)〜(f)のいずれかの、塩又はアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション又は円順列変異誘導体。
【0080】
活性フラクション又はフラグメントは、いずれかのクラステリンの一部又はドメイン、例えば、分離した、あるいはジスルフィド橋を介して互いに結合した、直接的に融合した、あるいは適当なリンカーを介して融合したアルファ鎖又はベータ鎖を含んで成る。また、活性フラクションは、クラステリンの特異的なグリコシル化又はシアル酸付加形態を含んで成る。
【0081】
当業者は、クラステリンのより小さな部分、又はその2つのサブユニットが、例えば、クラステリンの機能のために必要とされる必須アミノ酸残基を含んで成る活性ペプチドが、その機能を発揮するために十分となりうることを認識するであろう。
【0082】
更に、当業者は、クラステリンの突然変異タンパク質、塩、アイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、クラステリンの活性フラクション又は円順列変異誘導体が、同等、あるいはより優れたクラステリンの生物活性を保持することを認識するであろう。当該クラステリン及び突然変異タンパク質、アイソフォーム、融合タンパク質若しくは機能的誘導体、活性フラクション若しくはフラグメント、円順列変異誘導体、又はこれらの塩は、共培養アッセイにおいて測定できる。
【0083】
好ましい活性フラクションは、完全長クラステリンと同等又はより優れた活性を有し、あるいは更なる有利、例えば、より優れた安定性、又はより低い毒性若しくは免疫原生を有し、あるいは、これらは大量に産出すること、あるいは精製することが容易である。当業者は、突然変異タンパク質、活性フラグメント及び機能的誘導体が、適当なプラスミドにおいて、対応するcDNAをクローン化し、そして上述の通り、共培養アッセイにおいてこれらを試験することにより産出することができることを認識するであろう。
【0084】
本発明に従うタンパク質は、グリコシル化型又は非グリコシル化型であってよく、これらは、天然原料、例えば、体液に由来してよく、又はこれらは、好ましくは、組み換え的に産出することができる。組み換え体の発現は、原核生物発現系、例えば、大腸菌(E.coli)において、又は昆虫細胞において、そして好ましくは、哺乳動物発現系、例えば、CHO細胞又はHEK細胞において行うことができる。
【0085】
本明細書において使用される「突然変異タンパク質」の語は、野生型クラステリンと比較して、生じた生産物の活性が相当に変化することなく、天然クラステリンの1又は複数のアミノ酸残基が、異なるアミノ酸残基で置換され、又は欠失し、又は1又は複数のアミノ酸残基がクラステリンの天然配列に追加さているクラステリンの類似体を意味する。これらの突然変異タンパク質は、既知の合成法、及び/又は部位誘導変異誘発技術、あるいはこれらに適当ないずれかの他の既知の技術により調製される。
【0086】
本発明に従い使用できるクラステリンの突然変異タンパク質、又はこれらをコードする核酸は、過度な実験法によることなく、本明細書に存在する技術及びガイダンスに基づき、当業者により慣習的に得ることが可能な置換ペプチド又はポリヌクレオチドとして実質的に一致する配列の有限なセットを含む。
【0087】
本発明に従う突然変異タンパク質は、核酸、例えば、本発明に従い、中又は高ストリンジェント条件下においてDNA又はRNAとハイブリダイズし、クラステリンをコードするDNA又はRNAによりコードされるタンパク質を含む。「ストリンジェント条件」の語は、当業者が慣習的に「ストリンジェント」として意味するハイブリダイゼーション、続く洗浄条件を意味する。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, supra, Interscience, N. Y. , §§6.3 and 6.4 (1987, 1992)、及びSambrook et al. (Sambrook, J. C, Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。
【0088】
制限することなく、ストリンジェント条件の例は、例えば、2×SSC及び0.5%SDSで5分間、2×SSC及び0.1%SDSで15分間;0.1×SSC及び0.5%SDSで37℃において30〜60分間、それから0.1×SSC及び0.5%SDSで68℃において30〜60分間の実験下のハイブリッドの培養Tm以下の12〜20℃の洗浄条件を含む。当業者は、ストリンジェント条件もまた、DNA配列、オリゴヌクレオチドプローブ(例えば、10〜40塩基)、又は混合オリゴヌクレオチドプローブの長さに依存することを理解する。混合プローブが使用される場合、SSCの代わりに塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)を使用することが好ましい。Ausubel,supraを参照のこと。
【0089】
好ましい態様において、いずれかのこのような突然変異タンパク質は、添付した配列表の配列番号1と少なくとも40%の同一性又は相同性を有する。より好ましくは、その少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は最も好ましくは少なくとも90%の同一性又は相同性を有する。
【0090】
同一性は、2又は複数のポリペプチド配列、あるいは2又は複数のポリヌクレオチド配列間の関係に反映し、当該配列を比較することにより決定される。一般的に、同一性は、それぞれ、比較される配列の長さにわたって、2つのポリヌクレオチド、又は2つのポリペプチドが一致する正確なヌクレオチドに対するヌクレオチド、又はアミノ酸に対するアミノ酸を意味する。
【0091】
正確な一致が存在しない配列のために、「%同一性」を測定してもよい。一般的に、比較すべき2つの配列は、配列間の最大相関を与えるように並べられる。これは、アライメントの程度を増強するために一方のいずれか、又は両方の配列に「ギャップ」を挿入することを含んでよい。%同一性は、比較される各配列の完全長にわたって決定することができ(いわゆる、グローバルアライメント)、同一又は極めて類似した長さの、又はより短く定義された長さにわたる配列に特に安定であり(いわゆる、ローカルアライメント)、不等な長さの配列により安定である。
【0092】
2又は複数の配列の同一性又は相同性を比較する方法は、当業界において周知である。従って、例えば、ウィスコンシン配列分析パッケージ(Wisconsin Sequence Analysis Package)、バージョン9.1において入手可能なプログラム(Devereux et al., 1984)、例えば、プログラムBESTFIT及びGAPを2つのポリヌクレオチド間の%同一性及び、2つのポリペプチド配列間の%同一性及び%相同性を決定するために使用することができる。BESTFITは、SmithとWatermanの「ローカルホモロジー」アルゴリズムを使用し(Smith and Waterman, 1981)、そして、2つの配列間の類似性の最良な単一領域を発見する。配列間の同一性及び/又は類似性を決定するための他のプログラムもまた、当業界において既知であり、例えば、プログラムのBLASTファミリー(Altschul et al., 1990; Altschul et al., 1997、www. ncbi. nlm. nih. gov においてNCBIのホームページを介して構築されれる)、及びFASTA(Pearson, 1990 ; Pearson and Lipman, 1988)がある。
【0093】
本発明に従う突然変異タンパク質の好ましい変化は、「保存的な」置換として知られる。クラステリンポリペプチドの保存的なアミノ酸置換は、グループのメンバー間の置換基が分子の生物活性を保存するであろう、十分に類似の物理化学的な特性を有するグループにおける同義アミノ酸を含んでよい。また、アミノ酸の挿入及び欠失は、特に、当該挿入又は欠失が少数、例えば、30以下、そして好ましくは10以下のアミノ酸のみを含み、そして、機能的構造に重大なアミノ酸、例えば、システイン残基を除去又は置換しない場合、これらの機能を変化することなく上に定義した配列中で作製することができる。このような欠失、及び/又は挿入により産出されたタンパク質及び突然変異タンパク質は、本発明の範囲内である。
【0094】
好ましくは、上記同義アミノ酸グループは、表Iに定義したものである。より好ましくは、上記同義アミノ酸グループは表IIに定義したものであり;そして、最も好ましくは上記同義アミノ酸グループは表III に定義したものである。
【0095】
表I
同義アミノ酸の好ましいグループ
【表1】
【0096】
表II
同義アミノ酸のより好ましいグループ
【表2】
【0097】
表III
同義アミノ酸の最も好ましいグループ
【表3】
【0098】
本発明に使用するためのクラステリンの突然変異タンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質を得るために使用することができるタンパク質中のアミノ酸置換基の産出例は、いずれかの既知の方法、例えば、Mark等の米国特許第4,959,314号、第4,588,585号、及び第4,737,462号;Koths等の第5,116,943号、Namen等の第4,965,195号;Chong等の第4,879,111号、及びLee等の第5,017,691号に示される方法を含む;そして、リジン置換タンパク質は米国特許第4,904,584号(Shawetai)に示されている。
【0099】
「融合タンパク質」の語は、クラステリン、又は突然変異タンパク質若しくはこれらのフラグメントを含んで成るポリペプチドであり、他のタンパク質に融合され、例えば、体液中で延長された滞留時間を有するポリペプチドを意味する。従って、クラステリンは他のタンパク質、ポリペプチド等、例えば、免疫グロブリン、又はこれらのフラグメントと融合してもよい。免疫グロブリンFc部は、二量体又は多量体Ig融合タンパク質の産出に特に安定である。クラステリンのアルファ−及びベータ鎖は、例えば、IgFcタンパク質により二量体化されたクラステリンのアルファ−及びベータ−鎖を産出するように免疫グロブリンの一部と結合していてもよい。
【0100】
本明細書において使用される「機能的誘導体」は、当業界において既知の方法により、残基の側鎖、又はN−若しくはC−末端基において生じる官能基から調製することができるクラステリンの誘導体、及びこれらの突然変異タンパク質及び融合タンパク質を網羅し、そしてこれらが医薬的な受容可能である限り、即ち、これらが実質的にクラステリンの活性に類似したタンパク質の活性を破壊することなく、そしてそれを含む組成物において毒性特性を与えない限り本発明中に包含される。
【0101】
これらの誘導体は、例えば、抗原部位を遮蔽し、そして体液中のクラステリンの滞留を延長することができるポリエチレングリコール側鎖を含んでよい。他の誘導体は、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニア又は第1級若しくは第2級アミンとの反応によるカルボキシル基のアミド、アシル部(例えば、アルカノイル又は炭素環式アロイル基)により形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又はアシル部で形成されるヒドロキシル基(例えば、セリル又はスレオニル残基の)O−アシル誘導体を含む。
【0102】
本発明のクラステリン、突然変異タンパク質、及び融合タンパク質の「活性フラクション」は、いかなるタンパク質分子のポリペプチド鎖のフラグメント又は前駆体のみ、又は例えば、糖若しくはリン酸残基と結合する分子若しくは残基、又はタンパク質分子の凝集体、又はこれらによる糖残基を網羅し、但し上記フラクションは実質的にクラステリンに対して類似する活性を有する。
【0103】
本明細書における「塩」の語は、カルボキシル基の塩及びクラステリン分子のアミノ基の酸添加塩の両方、又はこれらの類似体を意味する。カルボキシル基の塩は、当業界に既知の方法により形成することができ、そして無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、三価鉄、又は亜鉛塩等を含み、そして、例えば、アミン、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、又はリジン、ピペリジン、プロカイン等で形成されるものとして有機塩基を伴う塩を含む。酸添加塩は、例えば、無機酸、例えば、塩酸、又は硫酸を伴う塩、及び有機酸、例えば、酢酸、又はシュウ酸を伴う塩を含む。当然に、いかなるこれらの塩も、本発明に関するクラステリンの生物活性、即ち、末梢神経疾患における神経保護の効果を維持していなければならない。
【0104】
クラステリンの機能的誘導体は、タンパク質の特性、例えば、安定性、半減期、生物学的利用能、ヒトの身体による耐性、又は免疫原生を向上させるためにポリマーと接合してもよい。当該目的を達成するために、クラステリンは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)と結合してもよい。PEG化は、例えば、WO92/13095に説明される既知の方法により行うことができる。
【0105】
このように、本発明の好ましい態様は、クラステリンがPEG化されている。
【0106】
本発明の更に好ましい態様は、融合タンパク質が免疫グロブリン(Ig)融合を含んで成る。当該融合は、直接的に、あるいは、長さにおいて1〜3アミノ酸残基の長さ又はそれより長い程度、例えば、長さにおいて13アミノ酸残基の短いリンカーペプチドを介してもよい。上記リンカーは、例えば、配列E−F−M(Glu−Phe−Met)のトリペプチド、又は、例えば、クラステリン配列及び免疫グロブリン配列間に導入されたGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metを含んで成る、13アミノ酸のリンカー配列であってよい。生じた融合タンパク質は、向上した特性、例えば、体液中の延長された滞留時間(半減期)、又は向上した特異活性、向上した発現レベルを有する。また、Ig融合は、融合タンパク質の精製を促進することができる。
【0107】
更なる他の好ましい態様において、クラステリン、又は一方若しくは両方のサブユニットは、Ig分子の定常部と融合している。好ましくは、例えば、ヒトIgG1のCH2及びCH3のような重鎖領域と融合している。他のIg分子のアイソフォームもまた、本発明に従う融合タンパク質の産出に安定である。例えば、アイソフォームIgG2若しくはIgG4、又は、例えば、IgMのような他のIgクラスである。融合タンパク質は、単量体若しくは多量体、ヘテロ−若しくはホモ多量体であってよい。融合タンパク質の免疫グロブリン部分は、補体結合性若しくは補体カスケード、又はFcレセプターとの結合を活性化しない方法において、更に修飾されていてもよい。
【0108】
更に、本発明は、同時に、順番に、又は別々に使用される、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及び免疫抑制剤との組み合わせの使用に関する。免疫抑制剤は、ステロイド、メトトレキセート、シクロホスファミド、抗白血球抗体(例えば、CAMPATH−1)等であってよい。
【0109】
本発明は、更に、クラステリン及びIL−6の組み合わせに関する。
【0110】
ヘパリン投与は、クラステリン生物活性を著しく向上することが示され、従って、本発明は、更に、同時に、順番に、又は別々に使用に使用される、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びヘパリンの組み合わせの使用に関する。
【0111】
本明細書において使用される「ヘパリン」は、当業界において既知の全てのヘパリン及びヘパリノイド、例えば、「背景技術」において説明されたもの、例えば、低分子量ヘパリン(LMWH)を意味する。
【0112】
本発明は、更に、同時に、順番に、又は別々に使用される末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びインターフェロンの組み合わせの使用に関する。
【0113】
本特許出願において使用される「インターフェロン」の語は、例えば、上述の「背景技術」に記載したいずれかの種類のIFNを含んで成る文献において定義されるいかなる分子も含むことを意図する。当該インターフェロンは、好ましくはヒトであるが、生物活性がヒトインターフェロンと類似し、そして当該分子がヒトにおいて免疫原生でない限り、他の種由来のものであってよい。
【0114】
特に、IFN−α、IFN−β、及びIFN−γのいずれかの種類は、上記定義に含まれる。IFN−βは、本発明に従う好ましいIFNである。
【0115】
本発明において使用される「インターフェロン−ベータ(IFN−β)」は、生物液からの単離により得られる、あるいは原核生物又は真核生物宿主細胞DNA組み換え技術により得られるヒト線維芽細胞インターフェロン、並びにその塩、機能的誘導体、変異体、類似体、及びフラグメントを含むことが意図される。
【0116】
また、インターフェロンは、タンパク質の安定性を向上させるためにポリマーと接合してもよい。インターフェロンβ及びポリオールポリエチレングリコール(PEG)間の接合は、例えば、W099/55377において説明されている。
【0117】
本発明の他の好ましい態様において、インターフェロンはインターフェロン−β(IFN−β)であり、より好ましくはIFN−β1aである。
【0118】
クラステリンは、好ましくは、インターフェロンと同時に、順番に、又は別々に使用される。
【0119】
更に、本発明は、同時に、順番に、又は別々に使用される末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン及びオステオポンチンの組み合わせの使用に関する。
【0120】
また、本明細書において使用される「オステオポンチン」は、オステオポンチンの突然変異タンパク質、フラグメント、活性フラクション、及び機能的誘導体を包含する。これらのタンパク質は、例えば、WO02/092122において説明されている。
【0121】
本発明の好ましい態様において、クラステリンは約0.001〜100mg/kg体重、又は約1〜10mg/kg体重、又は約5mg/kg体重の量において使用される。
【0122】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のため医薬の製造のための核酸の使用に関し、ここで、当該核酸分子は、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;又は(a)〜(f)のいずれかのアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、又は円順列変異誘導体。
【0123】
当該核酸は、例えば、裸の核酸分子として、例えば、筋肉注射により投与することができる。
【0124】
それは、更に、ベクター配列、例えば、ヒトの身体において、好ましくは適当な細胞又は組織において核酸分子によりコードされる遺伝子の発現のために有用なウイルス配列を含んで成る。
【0125】
従って、好ましい態様において、核酸分子は、更に、発現ベクター配列を含んで成る。発現ベクター配列は、当業界において周知であり、これらは、更に、注目の遺伝子の発現に役立つエレメントを含んで成る。これらは、制御配列、例えば、プロモーター若しくはエンハンサー配列、選択マーカー配列、増殖の開始点等を含んで成ってよい。遺伝子治療のアプローチは、従って、疾患の治療及び/又は予防のために使用される。有利には、クラステリンの発現は、生体内におけるものであろう。
【0126】
本発明の好ましい態様において、上記発現ベクターは、筋肉内注射により投与することができる。
【0127】
クラステリンの発現のために通常サイレントである、あるいは十分でないクラステリン量を発現する細胞におけるクラステリンの内在性の生成物の誘導及び/又は増強のためのベクターの使用もまた本発明に従い考慮される。上記ベクターは、クラステリンを発現するために所望する細胞において制御配列機能を含んで成ってよい。このような制御配列は、例えば、プロモーター又はエンハンサーでよい。当該制御配列は、それから相同的組み換えによりゲノムの適当な場所に導入することができ、従って、制御配列と誘導又は増強されることが必要とされる発現遺伝子を結合することが可能である。
【0128】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造においてクラステリンを生産するために遺伝子的に改変された細胞の使用に関する。
【0129】
本発明は、更に、末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリンを産出するために遺伝子的に改変された細胞に関する。従って、細胞治療的なアプローチは、薬剤を人体の適当な部分に伝達するために使用することができる。
【0130】
本発明は、更に、特に末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のヘパリン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0131】
本発明は、更に、特に末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のインターフェロン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0132】
本発明は、更に特に、末梢神経疾患の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物であって、治療的有効量のクラステリン及び治療的有効量のオステオポンチン、更に任意的に治療的有効量の免疫抑制剤を含んで成る医薬組成物に関する。
【0133】
「医薬的に受容可能」の定義は、活性成分の生物活性の有効性を妨害せず、そしてそれを投与された宿主に対して毒性でないいかなる担体も包含することを意味する。例えば、非経口的な投与のために、当該活性タンパク質は、媒体、例えば、食塩水、ブドウ糖溶液、血清アルブミン、及びリンゲル液における注射のための単位薬用量形態において処方することができる。
【0134】
本発明に従う医薬組成物の活性成分は、多様な方法において個々に投与することができる。当該投与経路は、皮内、経皮(例えば、徐放性製剤)、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、硬膜外、局所的、くも膜下腔内、直腸、及び鼻腔内経路を含む。治療的に有効ないずれの他の投与経路も使用することができ、例えば、上皮又は内皮組織を通した吸収、又は生体内において発現及び分泌される活性剤が生じる活性剤をコードするDNA分子が患者に投与される(例えば、ベクターを介して)遺伝子治療により使用することができる。更に、本発明に従うタンパク質は、生物活性剤の他の成分、例えば、医薬的に受容可能な界面活性剤、賦形剤、担体、希釈剤、及び媒体と一緒に投与することができる。
【0135】
非経口(例えば、血管内、皮下、筋肉内)投与のために、活性タンパク質は、医薬的に受容可能な非経口媒体(例えば、水、食塩水、ブドウ糖溶液)、懸濁液、乳濁液、又は凍結乾燥化粉末、及び等張性(例えば、マンニトール)又は化学安定性(例えば、防腐剤及びバッファー)を維持する添加剤を付随した溶液として処方することができる。当該製剤は、慣習的に使用される技術により無菌化される。
【0136】
また、本発明に従う活性タンパク質の生物学的利用能は、ヒトの身体において当該分子の半減期を向上させる接合手順を使用して、例えば、PCT特許出願WO92/13095号において説明されるように、当該分子をポリエチレングリコールと結合させることにより改良することができる。
【0137】
治療的有効量の活性タンパク質は、タンパク質の種類、タンパク質の親和性、アンタゴニストにより示されるいずれかの残基の細胞傷害活性、投与経路、患者の臨床的状態(内在性クラステリン活性の非毒性レベルの維持の望ましさを含む)を含む多くの可変性の機能であろう。
【0138】
「治療意的有効量」は、投与された場合、クラステリンが、末梢神経疾患において有利な効果を発揮するよう量である。個々に対する単一又は複数の用量として投与される薬用量は、クラステリンの薬物動態学的な特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ)、症状の程度、併用処理、治療の頻度、及び所望する効果を含む因子の多様性に依存して変化するであろう。
【0139】
クラステリンは、約0.001〜10mg/kg体重、又は約0.01〜5mg/kg体重、又は約0.1〜3mg/kg体重、又は約1〜2mg/kg体重において好ましく使用することができる。更に好ましいクラステリンの量は、約0.1〜1000μg/kg体重、又は約1〜100μg/kg体重、又は約10〜50μg/kg体重である。
【0140】
本発明に従う好ましい投与経路は、皮下経路による投与である。筋肉内投与は、本発明に従う更に好ましい投与経路である。
【0141】
更に好ましい態様において、クラステリンは、毎日、又は1日おきに投与される。
【0142】
毎日の用量は、通常、所望する結果を得るために有効な分割用量又は懸濁化放出形態において与えられる。2回目の、又は引き続く投与は、個々に対して投与された最初の、又は前の用量と同じか、それ以下か、又はそれ以上の薬用量において行うことができる。
【0143】
本発明に従い、クラステリンは、治療的有効量において好ましくはインターフェロンを伴い、個々に対して予防的に又は治療的に、他の治療的投与剤又は薬剤(例えば、複数の薬剤投与剤)の前に、同時に、あるいはその後に投与することができる。他の治療剤の後に投与される活性剤は、同じ又は異なる成分において投与することができる。
【0144】
更に、本発明は、有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、任意的な医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0145】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0146】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0147】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチン、任意的に医薬的に受容可能な担体を一緒に、これらを必要とする患者に対して投与することを含んで成る末梢神経疾患の治療方法に関する。
【0148】
雑誌文献、又は要約、又は出版された若しくは出版されていない米国若しくは外国の特許出願、出版された米国若しくは外国の特許、又はいずれかの他の引例は、全て本明細書の引例として組み入れられており、引用された引例中の全てのデータ、表、図、及び文書を含む。更に、本明細書に引用した引例中の引用した全ての引例の内容もまた、引例により組み入れられている。
【0149】
既知の方法工程、慣習的な方法工程、既知の方法、又は慣習的な方法に関する引例は、関連技術において本発明の観点、説明、又は態様が開示され、教示され、又は示差されていることを容認するものではない。
【0150】
本明細書の態様の先の説明は、本発明の一般的な特性を完全に明らかにするであろうから、第三者は、当業者の知識(本明細書中に引用した引例の内容を含む)を適用することにより、過度の実験をすることなく、本発明の一般的な概念から離れることなく、多様な出願、例えば、明細書の態様を容易に修正及び/又は応用することができる。従って、このような応用及び修正は、本明細書に存在する教え及びガイダンスに基づき、開示された態様と同じ範囲を意味することを意図する。本明細書中の言い回し及び用語は、説明の目的のためであると理解すべきであり、本明細書の用語又は言い回しは、本明細書に存在する教え及びガイダンスに明るい当業者により、当業者の知識と組み合わせて解釈すべきものとして制限されない。
【0151】
本発明が説明されたことにより、説明の方法により供される以下の実施例によって、より容易に理解されるが、本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0152】
実施例1:クラステリンの組み換え発現
タグ化組み換え型の、マウス又は組み換えヒトクラステリン(それぞれ、mクラステリン及びhクラステリン)をHEK細胞中で発現させ、そして以下に従い精製した:
【0153】
C末端タグを伴う組み換えタンパク質を含む培養培地試料(100ml)を、一定容量のコールドバッファーA(50mMのNaH2PO4;600mMのNaCl;8.7%(w/v)グリセロール、pH7.5)で、最終容量を200mlに希釈した。当該試料を、0.22μm無菌フィルター(Millipore,500mlフィルターユニット)を通してろ過し、そして無菌角培養ビン(Nalgene)に4℃で保った。
【0154】
精製は、自動試料充填器(Labomatic)に接続したVISIONワークステーション(バイオシステムに適用させた)において4℃で行った。当該精製手順は、2つの一連の工程である、タグに特異的なアフィニティークロマトグラフィー、続いてSephadex G−25メディア(Amersham Pharmacia)カラム(1.0×10cm)におけるろ過から構成された。
【0155】
最初のクロマトグラフィー工程は、1.6ml画分において収集された溶出されたタンパク質をもたらした。
【0156】
2番目のクロマトグラフィー工程のために、Sephadex G−25 ゲルろ過カラムを、2mlのバッファーD(1.137MのNaCl:2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;pH7.2)で再生し、続いて4カラム容量のバッファーC(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;20%(w/v)グリセロール;pH7.4)で平衡化した。最初の工程のアフィニティーカラムから溶出されたピーク画分を、VISIONに組み込んだ試料充填機を介して自動的にSephadex G−25カラムに充填し、そして当該タンパク質を流速2ml/分においてバッファーCで溶出させた。当該脱塩した試料を2.2ml分画に回収した。当該分画を0.22μmの無菌遠心分離フィルター(Millipore)を通してろ過し、凍結させ、そして−80℃で保存した。一定分量の試料を、クーマシー染色及び抗−タグ抗体でのウェスタンブロットによりSDS−PAGE(4〜12%NuPAGEゲル; Novex)において分析した。
【0157】
クーマシー染色。上記NuPAGEゲルを、0.1%クーマシーブルー R250染色液(30%メタノール、10%酢酸)中、室温で1時間染色し、続いてバックグランドが透明になり、そして当該タンパク質のバンドが明確に見えるまで、20%メタノール、7.5%酢酸で脱染した。
【0158】
ウェスタンブロット。電気泳動後、上記タンパク質を、290mAにおいて4℃で1時間、上記ゲルからニトロセルロース膜へと電気転写させた。当該膜を、室温で1時間、バッファーE(137mMのNaCl;2.7mMのKCl;1.5mMのKH2PO4;8mMのNa2HPO4;0.1%Tween20,pH7.4)中の5%粉乳でブロックし、そして続いて、バッファーE中の2.5%粉乳において2つのウサギポリクローナル抗−タグ抗体(G−18及びH−15,各0.2μg/ml; Santa Cruz)の混合物と共に、4℃で一昼夜インキュベートした。更に室温で1時間のインキュベーション後、当該膜をバッファーE(3×10分)洗浄し、それから、2.5%粉乳を含むバッファーEにおいて1/3000に希釈された二次的なHRP−接合抗−ウサギ抗体(DAKO, HRP 0399)と共に、室温で2時間インキュベートした。バッファーE(3×10分)洗浄した後、当該膜をECLキット(Amersham Pharmacia)で1分間発色させた。続いて、当該膜をハイパーフィルム(Amersham Pharmacia)に暴露し、当該フィルムを現像し、そしてウェスタンブロットのイメージを視覚的に分析した。
【0159】
タンパク質アッセイ。上記タンパク質濃度を、スタンダードとしてウシ血清アルブミンと共にBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して測定した。平均タンパク質回収量は、培養意培地100ml当たり216μgの精製クラステリンであった。
【0160】
非還元SDS PAGE精製タンパク質の分析は、当該組み換えタンパク質が未変性のクラステリンのヘテロ二量体構造を有することを示した(図なし)。
【0161】
実施例2:マウスの坐骨神経粉砕によるクラステリンの保護効果
略語
CMAP:複合筋活動電位
DAC:粉砕後日数
DIV:試験管内での日数
EMG:筋電図検査
IGF−1:インシュリン様成長因子
i.p.:腹腔内
i.v.:血管内
s.c.:皮下
s.e.m.:平均値の標準誤差
vs:対
【0162】
序文
本実験は、異なる用量のクラステリンで処理したマウスにおける神経再生を評価するために行った。当該モデルにおいて、神経細胞及び軸索(感覚及び運動神経)の生存及び再生における、ミエリン化又はマクロファージ炎症におけるクラステリンの肯定的な効果は運動機能の回復に導くことができた。当該再生は、感覚機能の回復及び形態学的な実験に従い計測することができる。従って、本実験において、電気生理学的な記録及び組織形態計測的な分析を並行して行った。
【0163】
材料及び方法
動物
72匹の8週齢の雌のC57bl/6 RJマウス(Elevage Janvier, Le Genest-St-Isle, France)を使用した。これらは6つのグループに分けた(n=12):(a)媒体 偽手術グループ;(b)媒体 神経粉砕手術グループ;(c)神経粉砕/mクラステリン(300μg/kg);(d)神経粉砕/mクラステリン(1000μg/kg);(e)神経粉砕/4−メチルカテコール(10μg/kg);(f)神経粉砕/オステオポンチン(100μg/kg)。オステオポンチンは(OPN)は、骨及び歯のミエリン化細胞外マトリックスの顕著な成分である高リン酸化シアロタンパク質である。その使用又はその活性のアゴニストの使用は、神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためにWO/02092122において主張されている。
【0164】
これらは、グループ飼育し(ケージ当たり12匹の動物)、そして調節された温度(21〜22℃)で部屋を維持し、そして、餌及び水を自由に得られるように明−暗サイクル(12時間/12時間)を繰り返した。全ての実験は、最初の指針に一致して行った。
【0165】
坐骨神経の破壊
上記動物を60mg/kgのケタミンクロルハイドレート(Imalgene 5000, Rhone Merieux, Lyon, France)のi.p.注射で麻酔した。右坐骨神経を、中大腿位で外科的に露出させ、坐骨神経の三叉の5mm付近で粉砕した。当該神経を止血ピンセット(幅1.5mm、Koenig, Strasbourg, France)で、各粉砕間が90度回転で30秒間、2回粉砕した。
【0166】
実験及び薬理学的処理の計画
筋電図検査(EMG)試験を、手術日(ベースライン)前に1回行い、そして2週間隔週で以下の操作を行った:
【0167】
神経粉砕手術の日は0日(D)として考えた。試験は粉砕後4日間行った。
【0168】
体重及び生存率は毎日記録した。
【0169】
神経傷害の日から当該実験の終わりまで、mクラステリン(HEK細胞由来の組み換えmクラステリン)又は4−メチルカテコールを、腹腔内(i.p.)注射経路により毎日投与した。オステオポンチンの毎日の注射は、皮下(s.c.)的に行った。
【0170】
2週間目に、グループ当たり4匹の動物を犠牲とし、そして形態の分析を行うために坐骨神経を解剖した。
【0171】
電気生理学的記録
Neuromatic 2000M 筋電計(EMG)(Dantec, Les Ulis, France)を使用して、電気生理学的記録を行った。マウスを100mg/kgのケタミンクロルハイドレート(Imalgene 500(登録商標), Rhone Merieux, Lyon, France)の腹腔内注射により麻酔した。ヒーティングランプにより、通常の体温を30℃に維持し、そして高いところに設置した接触温度計(Quick, Bioblock Scientific, Illkirch, France)により調節した。
【0172】
化合物の筋活動電位(CMAP)を、過最大強度(12.8mA)で坐骨神経の0.2msの1回の刺激後、腓腹筋において計測した。振幅(mV)、潜時(ms)、及び持続時間(脱分極及び再分極セッションに必要とされる時間)の活動電位を計測した。振幅は、活性運動単位の数を示しており、一方遠心性の潜時は、間接的に、運動神経伝導及び神経筋伝達速度を反映する。
【0173】
形態計測分析
形態計測分析は、神経粉砕後2週間行った。グループ当たり任意に選択した4匹の動物を当該分析のために使用した。マウスを100mg/kgのケタミンクロルハイドレート Imalgene 500(登録商標)により麻酔した。坐骨神経の5mmの断片を、組織学的に切除した。当該組織を、リン酸バッファー溶液(pH=7.4)中の4%グルタルアルデヒド水溶液(Sigma, L'isle d'Abeau-Chesnes, France)で一昼夜固定させ、そして使用するまで、30%スクロース中4℃で維持した。当該神経を、リン酸バッファー中の2%オスミウムテトロキシド(Sigma, L'Isle d'Abeau-Chesnes, France)で2時間固定し、そしてシリアルアルコール溶液中で脱水し、そしてエポン(Epon)に包埋した。それから、包埋した組織を重合のために3日間70℃に置いた。1.5μmの横径切片をミクロトームで作成し、そして1%トルイジンブルー(Sigma, L'isle d'Abeau-Chesnes, France)で2分間染色し、そして脱水し、オイキット(Eukitt)中に乗せた。クロス切片は、粉砕部位の中央で得られた。形態計測分析及び線維カウントは、セミ自動化デジタルイメージ分析ソフトウェア(Biocom, France)を使用して神経切片の全領域において行った。多小葉軸索原形質及び/又は不規則髄鞘を示すミエリン化線維は、先の再生プロセスの線維として考えられる。以下のパラメーターを計算した:軸索面積、ミエリン面積、及び線維面積(軸索及びミエリン面積)。
【0174】
データ分析
データのグローバル分析は、ある因子、又は分散分析(ANOVA)及びワンウェイANOVAの反復測定、並びにノンパラメトリック検定(Mann whitney検定)を使用して行った。適当な場合には、ダネット検定を更に使用した。有意水準は、p<0.05に設定した。結果は、平均値の平均値±標準誤差(s.e.m.)として示した。
【0175】
結果
神経粉砕手順後、全ての動物が生存した。本実験を通して数匹のマウスが死んだ:2日目、神経粉砕/オステオポンチングループ由来のマウス8匹、及び1mg/kgにおける神経粉砕/mクラステリングループ由来のマウス12匹;7日目、神経粉砕/媒体グループ由来のマウス9匹、及び1mg/kgにおける神経粉砕/mクラステリングループ由来のマウス9匹は麻酔薬が原因である。
【0176】
動物の体重
図2に示す通り、手術後2〜3日間において、全ての動物が、これらの体重において僅かな減少を示した。それから、動物はこれらの体重の回復を示した。未処理のマウスと比較した場合、mクラステリンでの異なる処理は粉砕された坐骨神経を有するマウスの体重において、いかなる有意な変化も誘導しなかった。
【0177】
電気生理学的測定
複合筋活動電位の振幅(図3):
偽手術した動物において、本実験を通してCMAP振幅において有意な変化はなかった。反対に、偽手術した動物のそれぞれのレベルと比較した場合、坐骨神経の粉砕は、D7及びD14において>90%の減少を伴うCMAP振幅の顕著な減少を誘導した。粉砕した坐骨神経を有するマウスを300μg/kg若しくは1mg/kgにおけるクラステリン、又は100μg/kgのオステオポンチンで処理した場合、これらは未処理マウスにおけるレベルと比較して、CMAP振幅において有意な増加(約1.5倍)を示した。同様に、4−MC処理もまた、神経粉砕を伴うマウスのCMAP振幅を増強するが、クラステリン又はオステオポンチンよりは低い程度である。
【0178】
複合筋活動電位の潜時(図4):
偽手術動物において、本実験を通してCMAP潜時の悪化はなかった。反対に、粉砕した坐骨神経を有するマウスは偽手術マウスよりも1.2倍以上のCMAP潜時を示した。クラステリン又はオステオポンチンを与えた粉砕した坐骨神経を有するマウスにおいて、CMAP潜時値は、未処理マウスのものと比較して有意に減少した。7日目、0.3mg/kgのクラステリン及び0.1mg/kgのオステオポンチンでの処理後、当該効果を観察することができた。14日目、両濃度のクラステリンは有効であった。
【0179】
複合筋活動電位の持続時間(図5)
偽手術動物において、CMAP持続時間は、ベースライン値に対する有意な変化はなかった。反対に、粉砕した坐骨神経を有するマウスはCMAP持続期の有意な延長を示し、特に、D14において偽手術動物より3倍以上の持続時間を示した。
【0180】
粉砕した坐骨神経を有するマウスを300μg/kgにおけるクラステリン又はオステオポンチンで処理した場合、これらは、神経粉砕を伴う媒体処理動物と比較して、CMAP持続時間の有意な減少を示した。
【0181】
形態計測分析
形態計測分析は、14日目の実験の終了後に行った。
【0182】
再生(図6)及び非再生線維(図7)のパーセンテージ
図6に示すように、偽手術動物(コントロール)の坐骨神経における再生のパーセンテージは、<20%であった。坐骨神経を粉砕した場合、再生線維の比率は60%以上に有意に増加した(粉砕/媒体)。未処理グループと比較して、300μg/kg又は1mg/kgのクラステリンの処理は再生線維の比率の有意な減少を誘導した。
【0183】
逆に、偽手術動物(コントロール)における非再生線維の比率は、粉砕した坐骨神経を有する未処理マウス(粉砕/媒体)の2倍以上であった(図7)。300μg/kg又は1mg/kgにおけるクラステリンの処理は、非再生線維の濃度において有意な増加を誘導した。
【0184】
結論
神経粉砕モデルは、末梢神経障害の極めて顕著なモデルである。神経粉砕の直後、力学的な傷害により、大きな直径を有するほとんどの線維が喪失し、CMAP振幅において強力な減少が導かれる。CMAP潜時はすぐに影響されないが、二次的な免疫介在性再生(マクロファージ、顆粒球)による小径線維の追加的な再生により、14日目に増加を示す。CMAP持続時間は7日目に増加し、そして14日目にピークに達する。21日目(示されていない)において、粉砕破壊は、神経障害の状態に関係する興味深い追加的なプロセスである再生を許容する。
【0185】
クラステリンは、全ての計測したパラメーターにおいて、マウスの神経粉砕モデルにおいて保護的効果を示した。粉砕2週間後に行われた形態学的な実験は、再生線維のパーセンテージの有意な減少、及び全線維数の増加を示す。クラステリンは、当該実験において使用されたコントロール分子である4−メチルカテコールと同じぐらい有効である。機能及び組織回復における肯定的な効果は、以下のクラステリン効果が原因となりうる:
−二次免疫介在性再生に由来する線維の直接的な保護;
−促進された軸索の再ミエリン化及び保護;
−促進された損傷した軸索の再生/出芽;
−マクロファージによる増加したミエリン細片の浄化;
−軸索切断に対するマクロファージ応答の調節。
【0186】
実施例3:坐骨神経粉砕後、クラステリンの皮下投与は機能回復を促進する。
【0187】
序論
神経再生におけるクラステリン処理の長時間の持続効果の実験のために、マウスの2番目のグループを、HEK細胞において産出された組み換えヒトクラステリンの投与を毎日、4週間処理した(5回/週、s.c.)。
【0188】
材料及び方法
マウスは以下のように6グループ(n=6)に分けた:
(a)媒体神経粉砕手術グループ;
(b)神経粉砕/h−IL6(30μg/kg);
(c)神経粉砕/hクラステリン(0.1mg/kg);
(d)神経粉砕/hクラステリン(300μg/kg);
(e)神経粉砕/hクラステリン(1mg/kg)。
【0189】
動物に、組み替えマウスクラステリンの腹腔内注射の代わりに、HEK細胞中で産出された組み替えヒトクラステリン(hクラステリン)を皮下注射(100μl/マウス)したことを除き、実施例2に説明した手順を行った。上記媒体は、NaCl 0.9%、BSA 0.02%とした。ポジティブコントロールは、組み換えヒトIL−6(30μg/kg、s.c.)とした。電気筋運動記録及び体重パラメーターは前述の通りに評価した。
【0190】
電気生理学的記録
過最大強度(12.8mA)で坐骨神経を0.2msで一回刺激後、複合筋活動電位(CMAP)を腓腹筋において計測した。多様なパラメーター、即ち、活動電位の振幅(mV)、潜時時間(ms)、及び持続時間を粉砕側(同側)の腓腹筋及び反対側(対側)の腓腹筋における粉砕後、0、7、14、21、及び28日目に前述の通り評価した。
【0191】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性
実施例3で説明した処理から4週間後、マウスを麻酔し、そして犠牲にした。対側及び同側の腓腹筋を収集し、そして神経細胞の神経支配の指標であるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性を分析した。当該ChAT活性は、非放射性アセチル−CoAを省略し、そして0.05μClに従う0.25nmolの3H−アセチル−CoAを添加したことを除き、Contreras等により説明されているプロトコール(Contreras et al., 1995)に従い測定した。
【0192】
神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)
NF−H及びそのリン酸化形態は、軸索の突然変異の指標である(Riederer et al., 1996)。実施例3に説明した処理から4週間後、マウスを麻酔し、そして犠牲にした。神経を集出し、そして3倍洗浄バッファーで抽出し、そして試料をタンパク質含量のためにタンパク質アッセイキット(Pierce)により、そしてNF−H定量化のためにサンドイッチELISAにより処理した。
【0193】
NF−H ELISAのために使用したプロトコールは以下である:獲得抗体、マウスモノクローナル抗体SMI31(抗−NF−Hリン酸化 1/2500;Sternberger)をPBS中において4℃で一昼夜インキュベートした。当該プレートは、PBS含有1%BSAで1時間ブロックした。試料と共に2時間インキュベート後、検出抗体であるウサギポリクローナルN4142抗−NF(1/1000;Sigma)を、PBS−BSA中に希釈し、そして2時間インキュベートし、そして抗−ウサギHRP接合抗体(1/3000、Sigma;PBS−BSA中で希釈、1時間)と共にインキュベーション後、ペルオキシダーゼにより明らかにした。492nmにおいて読まれた各吸光度は、ウシNF−H(Sigma)の標準曲線を示し、それから各試料のタンパク質の含量を得た。
【0194】
結果
電気生理学的測定
複合筋活動電位の振幅(図8):
粉砕から1週間後、CMAP振幅は、IL−6(30μg/kg)、hクラステリン(100、300、又は1000μg/kg)で処理した動物において、又は媒体処理グループにおいて有意な変化はなかった。15日〜28日目、hクラステリン及びIL−6で処理した粉砕した坐骨神経を有するマウスは、CMAP振幅の累進的な増加を示した。4週間後、クラステリンで処理したマウスのCMAP振幅は、未処理マウスにおけるレベルと比較して極めて有意な増加を示した。
【0195】
複合筋活動電位の潜時:
複合筋活動電位の潜時は、媒体、組み換えヒトIL−6(30μg/kg)、hクラステリン(100、300、又は1000μg/kg)で処理した神経障害マウスにおいて測定した。同側及び対側の測定は、坐骨神経の傷害から1、2、3、又は4週間後に行った。結果は以下の表(表1)において示す:
【0196】
表1
【表4】
【0197】
0.1mg/kgのクラステリンで治療した7DACにおけるマウスを除き、本実験を通して、対側におけるCMAP潜時の悪化はなかった。反対に、同側におけるCMAP潜時は、粉砕後増加した。IL−6及びクラステリンで処理したマウスにおいて、同側CMAP潜時は、未処理マウスのものと比較して有意に減少した。21及び28DACにおいて、組み換えIL−6及びクラステリン投与(1及び0.3mg/kg)は、潜時の回復を有意に向上した。
【0198】
複合筋活動電位の持続時間
上述の潜時におけるように、複合筋活動電位の持続時間を対側及び同側における全てのグループで測定し、そして結果を以下の表2に示す。
【0199】
表2
【表5】
【0200】
媒体処理グループにおいて、同側CMAPの持続時間は粉砕後増加し、そして4週間後、反対側の値に戻った。クラステリン処理(1及び0.3mg/kg)は、CMAP持続時間の全体的な増加を減少し、そして回復を促進した。
【0201】
コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性(図9):
粉砕から4週間後、同側の腓腹筋におけるChAT活性(図9a)は、完全には回復しなかった。クラステリン処理は、腓腹筋におけるChAT活性の回復を僅かに支持した。hクラステリンで処理したマウスの反対側の筋肉におけるChAT量は、媒体で処理した動物(図9b)と比較して増加を示した。
【0202】
神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)(図10):
粉砕から4週間後、媒体処理グループにおいて、坐骨神経の近位部分(粉砕部位上:図10b)、及び末端部位(粉砕部位下;図10c)におけるNF−Hのレベルは、反対側神経(図10a)におけるNF−Hのレベルと比較して差異はなかった。クラステリン処理は、粉砕神経の反対側及び近位部位におけるNF−Hの量を増加した。
【0203】
結論
これらの結果は、処理の15日後に得られたように(実施例2)、神経−粉砕モデルの処理におけるクラステリンの有用な効果を強調した。処理の時間に依存して、当該効果は、複合筋活動電位(CMAP)の全ての実験パラメーター、即ち、潜伏期間、持続時間、振幅において明らかとされた。クラステリン処理は、また、粉砕側及び反対側の神経においてChAT及びNF−H量を増加した。有害な影響は、体重の増加において観察されなかった(データ無し)。
【0204】
実施例4:クラステリンは、海馬切片培養の成熟において、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)形成を刺激する。
序論
傷害又は疾患後の神経再生の調節は、軸索の出芽及び伸長だけでなく、新たなミエリン合成も必要とする。ミエリン化は、例えば、正常な神経伝導及び興奮毒性又は免疫性攻撃に対する軸索保護のために必要である。ミエリン修復は、主に個体発生現象の繰り返しであるため(Capello et al., 1997 ; Kuhn et al., 1993)、発生ミエリン化を模倣するために、器官型海馬切片培養が使用される。より正確に、成熟したオリゴデンドロサイト及びシュワン細胞の代表的なタンパク質であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)のをELISAによりモニターした。
【0205】
材料及び方法
器官型海馬切片培養
器官型海馬切片培養は、Stoppini等の方法に従い調製した(Stoppini et al., 1991)。手短には、海馬は、5日齢のC57/Bl6マウスから得た。Mcillvain 組織チョッパーを使用して、500ミクロン厚の切片にカットした。それから、切片を1mlの培養培地(50%MEM、25%HBSS、25%馬血清)を含む6ウェルプレートに置いたMillicell−CMの挿入断片上に配置した。培養は、5%CO2中35℃で6日間維持し、それから33℃にした。培地は3日ごとに変えた。
【0206】
発生ミエリン化
試験管内において最初の3週間に通常発生するミエリン化を増大させるためのクラステリンの能力を試験した。
【0207】
7日目〜17日目まで、切片を、馬血清(25%)を含む培地中において、mクラステリン(1μg/ml、100ng/ml及び10ng/ml)で最初に処理した。処理は、2日ごとに更新した。
【0208】
処理の終わりにおいて(即ち、処理の3、6、及び10日目、それぞれ、試験管内において10、13、及び17日目に相当する)、切片(グループ当たり6切片)を3倍洗浄バッファー中に溶かし、そしてMBP量をMBP ELISAにより分析した。
【0209】
当該実験は2回行い、そして結果は図11に示す。
【0210】
これらの実験を、組み替えマウスクラステリンに代えて、HEK又はCHO細胞中で産出された組み換えヒトクラステリンで再現した場合、同様の結果を得た(データ無し)。
【0211】
MBP ELISA
異なる時間における溶解後、タンパク質含量のためにタンパク質アッセイキット(Piece)により、そしてMBPの定量化のためにサンドウィッチELISAにより処理した。
【0212】
MBP−ELISAのプロトコールは、以下とした。獲得抗体、マウスモノクローナル抗体抗−MBP(1/5000;Chemicon)をPBS中において希釈し、そして4℃で一昼夜インキュベートした。当該プレートは、1%BSAを含むPBSで1時間ブロックした。BPSで希釈した試料を2時間インキュベートした。検出抗体であるウサギポリクローナル抗−MBP(1/300;Zymed)を、PBS−BSA中で希釈し、そして2時間インキュベートし、そして抗−ウサギHRP接合抗体(1/3000、Sigma;PBS−BSA中希釈、1時間)でインキュベーション後、ペルオキシダーゼにより明らかにした。492nmにおいて読まれた各吸光度は、MBP(Invitrogen)の標準曲線を示し、それから各試料のタンパク質含有量を得た。
【0213】
結果
培養開始時において、P4マウスの海馬切片(出生後4日)は、検出可能なレベルのMBPを発現しなかった。海馬切片が成熟すると、ELISAにより検出されたMBPのレベルは、試験管内において21日後に安定なレベルに達するまでに増加した(DIV、データ無し)。
【0214】
タンパク質の添加の3日後に行ったMBP−ELISAにより評価された通り、7、10、又は14DIVにおける10、100、及び1000ng/mlの組み換えhクラステリンの上記培養培地への添加は、海馬切片培養のMBP量を増加させた。1μg/mlのmクラステリンで処理した切片のMBP量を図11に示す。当該MBPの増加は、ミエリン発生が終了する21DIVにおいて、もはや可視的でなかった(データ無し)。
【0215】
同様の結果が、mクラステリンの他の濃度(10及び100ng/ml)及びhクラステリン(データ無し)で得られた。
【0216】
結論
クラステリンは、海馬切片培養中において、成熟した海馬切片において検出された全量に影響することなく、MBP形成を刺激した。
【0217】
実施例5:クラステリンは、ベビーハムスター補体を伴う抗−MOG抗体により、海馬切片の脱ミエリン化を保護する。
序論
慢性炎症性脱ミエリン化多発性神経障害(CIDP)及びギランバレー症候群(GBS)の特徴であるミエリンの崩壊は、ミエリン成分を含む神経に対する自己免疫応答の存在が原因であると考えられている(Ho et al., 1998 ; Kwa et al., 2003 ; Steck et al., 1998)。抗体誘導性脱ミエリン化を模倣するために、器官型海馬切片培養がベビーハムスター補体との組み合わせにおいて抗−MOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)抗体により2日間処理されている試験管内系を設定した。アイソタイプが一致するコントロール免疫グロブリン処理は有意な脱ミエリン化を誘導しなかったため、当該処理は特異的な脱ミエリン化をもたらす。当該系は、当該パラダイムにおけるクラステリンの保護的な効果を試験するために使用され、クラステリンは脱ミエリン化処理の1日前、及び同時に添加され、当該MBPレベルをELISAによりモニターした(詳細は実施例4を参照のこと)。
【0218】
材料及び方法
脱ミエリン化プロトコール
実施例4の説明により調製された切片(器官型海馬切片培養セクション)を、試験管内(DIV)における21日後に生じる発生ミエリン化の終了時に処理した。
【0219】
脱ミエリン化は、切片を25%ウマ血清含有培地において、ベビーウサギ補体(バッチに依存1/60−1/30;CL−3441, Cedarlane)と会合した抗−MOG抗体で2日間処理することにより誘導した。
【0220】
コントロールとして、切片を抗体と関連性のないIgG1(60μg/ml;M−7894, Sigma)で処理し、そして補体又は切片は未処理とした。
【0221】
処理の終了時において、切片(グループ当たり5切片)を、3倍洗浄バッファーに溶解し、そしてミエリンレベル量をMBP ELISAにより分析した。
【0222】
1μg/ml、100ng/ml、又は10ng/mlの組み換えマウスクラステリンを、脱ミエリン化処理の前に24時間適用し、並びに処理時において添加した(3日間の総量)。
【0223】
当該実験は3回行い、そして結果は図12に示す。
【0224】
これらの実験を、組み替えマウスクラステリンに代えて、HEK又はCHO細胞中で産出された組み換えヒトクラステリンで再現した場合、同様の結果を得た(データ無し)。
【0225】
結果
当該実験の結果は図12に示す。10ng/mlと同じぐらい低濃度のクラステリンを、抗−MOG/補体処理時において培地に添加すると、脱ミエリン化に対して有意に保護した。
【0226】
結論
脱ミエリン化モデルに介在される自己免疫において、クラステリンは、抗−MOG及び補体により誘導される脱ミエリン化を保護する。
【0227】
実施例6:クラステリン及びヘパリンの共−注射
序論
血清中、クラステリンは多様なタンパク質(Trougakos 及びGonos (Trougakos and Gonos, 2002)並びに Jones及びJomary (Jones and Jomary, 2002)により概説されている)と結合し、そして多様な推定上の結合部位(図1を参照のこと、Rosenberg 及び Silkensenに基づく,1995)を供することが知られている。これらの中で4つはヘパリン結合ドメインとして考えられる。クラステリンの生物学的利用能におけるこれらのヘパリン結合ドメインの関連性を研究するために、Liquemine(Roche)の場合におけるヘパリンの効果をクラステリン薬学動態において試験した。
【0228】
材料及び方法
第一実験
8週齢のC57Bl6である20gの雌の3つのグループ(3マウス/グループ)を以下の通りi.v.注射した:
−グループ1:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(300μg/kg)の注射5分前における100μlのNaCl 0.9%中のヘパリン(7500U/kg)。
−グループ2:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(300μg/kg)とヘパリン(7500U/kg)の混合溶液。
−グループ3:300μg/kgのhクラステリンのみ。
【0229】
クラステリン注射の5及び30分後に血液をチューブに採取した。グループ3に属するマウスの血液をヘパリン有り又は無し(+/−ヘパリン)のいずれかのチューブに採取した。それからクラステリンの存在を上述のELISA試験において実験した。
【0230】
第二実験
8週齢のC57Bl6の20gの雌の3グループ(4マウス/グループ)を以下のようにi.v.注射した。
−グループ1:100μlのNaCl 0.9%中のhクラステリン(1mg/kg)の注射5分前における100μlのNaCl 0.9%中のヘパリン(7500U/kg)。グループ1は、100μlのNaCl 0.9%中のクラステリン(1mg/kg)+ヘパリン(7500U/kg)の混合溶液を受けた。
−グループ2:1mg/kgのhクラステリンのみ。ヘパリン(7500U/kg)は、hクラステリンの注射から28分後に注射した(採血時である30分の2分前)。
−グループ3:1mg/kgのhクラステリンのみ。
【0231】
クラステリン注射の30分後、血液を採取した。それから血清中のクラステリンレベルを上述のELISA試験を使用してモニターした。
【0232】
クラステリンELISA
サンドイッチELISAを、捕獲抗体としてモノクローナル抗体41D(1/1000−50μl,Upstate N.05−354)を使用して発色させた。残渣の結合部位は、ブロッキングバッファー(0.5MのNaCl中、1%BSA(フラクションV)/0.1%Tween−20)中でRTにおいて遮断した。組み換えヒトクラステリンを含有する血清試料は、PBS中で連続希釈において試験した。続いてPBS/0.05%Tween−20において4回洗浄した。タグ−ビオチン接合体(1/1000,Qiagen N.34440)を暴露抗体として使用した。暴露抗体の存在は、Streptavidin−HRP(PBS中、1/5000,DAKO P0397)によりRTにおいて1時間モニターし、続いてOPD反応(Sigma)を行った。
【0233】
結果
図13Aに示すように、ヘパリンを伴うクラステリン(ヘパリン混合クラステリン)のプレインキュベーション、又はクラステリン注射前のヘパリン(クラステリン前に注射されたヘパリン)のプレインキュベーションは、クラステリン生物学的利用能を顕著に増加したが(p<0.005)、反対に、ヘパリンを含むチューブへのクラステリンの採取は、検出されたクラステリンのレベルを変化しなかった。
【0234】
2回目の採血(第二実験のグループ2、図13)の前にヘパリンを投与した場合、血清中の測定されたクラステリンレベルは、ヘパリンをクラステリンと共に共−注射した場合よりも有意に低かった(p<0.05)。それにもかかわらず、血液採取の前に注射したヘパリンは、クラステリンのみと比較して(p<0.1)検出可能なクラステリンのレベルを僅かに増加した。
【0235】
結論
ヘパリン投与は、クラステリンの生物学的利用能を有意に向上した(図13A)。しかしながら、十分な効果を得るためには、ヘパリンは、クラステリン送達の前、又は同時に注射する必要がある(図13B)。
【0236】
引用
【表6】
【表7】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】図1は、クラステリンの構造を模式的に示す(Rosenberg 及び Silkensen に基づく, 1995)。(A)は前駆体ポリペプチド、(B)は成熟ポリペプチドを表し、ここで、これはこれらの中心付近の5つのジスルフィド架橋により逆平行的に結合されたα(34〜36kDa)及びβ(36〜39kDa)により形成される75〜80kDaのヘテロ二量体糖タンパク質である、(C)はヒトクラステリン前駆体の配列を示す。
【0238】
【図2】図2は、腹腔内的に投与した(i.p.)媒体(○)、300μg/kg(▽)又は1mg/kg(□)のmクラステリンで処置した坐骨神経粉砕により誘導された神経障害マウスのグラム(g)における体重を示す。コントロール:健康なマウス(●)。
【0239】
【図3】図3は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kgの皮下注射(s.c.)のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリボルト(mV)における振幅を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0240】
【図4】図4は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kg s.c.のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリ秒(ms)における潜時を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0241】
【図5】図5は、媒体、300μg/kg若しくは1mg/kg i.p.のmクラステリン、0.01μg/kgのポジティブコントロール化合物(4−MC)、又は100μg/kg s.c.のオステオポンチンで処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリ秒(ms)における持続時間を示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0242】
【図6】図6は、媒体、300μg/kg又は1mg/kg i.p.のmクラステリンで処理した神経障害マウスにおける再生線維のパーセンテージを示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0243】
【図7】図7は、媒体、300μg/kg又は1mg/kg i.p.のmクラステリンで処理した神経障害マウスにおける非再生線維のパーセンテージを示す。コントロール:偽手術したマウス。
【0244】
【図8】図8は、媒体、100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kg s.c.の組み替えhクラステリン、及び30μg/kg s.c.のポジティブコントロール化合物(組み換えhIL−6)で処理した神経障害マウスにおける複合筋活動電位のミリボルト(ms)における振幅を示す。記録は、坐骨神経傷害の1、2、3、又は4週間後に行った。データはmVにおける全振幅の平均値±標準誤差として表す;グループ当たりn=6マウス。#p<0.01、*p<0.05、**p<0.01。
【0245】
【図9】図9は、媒体、30μg/kgの組み換えヒトIL−6、又は100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kgの組み換えhクラステリンでs.c.4週間処理した神経障害マウスの対側(a)及び同側(b)腓腹筋中のマイクログラムタンパク質(cpm/μgタンパク質)によるcpm(分当たりのカウント)におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性を示す。グループ当たりn=6マウス。#p<0.1。
【0246】
【図10】図10は、媒体、30μg/kgの組み換えヒトIL−6、又は100μg/kg、300μg/kg若しくは1000μg/kgの組み換えhクラステリン s.c.処理の4週間後の(a)坐骨神経対側における、並びに坐骨神経の同側の(b)近位(粉砕部の上)及び(c)遠位(粉砕部の下)部分におけるマイクログラムのタンパク質当たりのナノグラム(ngのNF−H/mg タンパク質)における、神経フィラメント−高分子量形態(NF−H)量を示す。グループ当たりn=6マウス。**p<0.01。
【0247】
【図11】図11は、マイクログラムのタンパク質当たりのピコグラム(pg MBP/μg 全タンパク質)において、試験管内(DIV)の10、13、及び17日目に対応する3、6、及び10日目の処理(T3、T6、及びT10)における1μg/mlの組み換えmクラステリンで処理した器官型海馬切片のミエリン塩基性タンパク質(MBP)量を示す。コントロールグループには、通常の媒体(50%のMEM、25%のHBSS、25%の馬血清)を与えた。HEK又はCHO細胞由来の組み換えヒトクラステリンを使用する場合、同様の結果が得られる(データ無し)。データは全MBPの平均値±標準誤差として表す;exp=2、グループ当たりn=12。p<0.001***。
【0248】
【図12】図12は、補体との組み合わせにおける抗−MOG(抗−ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)抗体(IgG抗−MOG+補体)により、又は非−関連アイソタイプ適合免疫グロブリンIgG及び補体(IgGコントロール+補体)により誘導された特異的な脱ミエリン化後、10、100、及び1000ng/mlの組み換えmクラステリンで処理した器官型海馬切片のマイクログラムのタンパク質当たりのピコグラム(pg MBP/μg tot prot)におけるMBP量を示す。コントロールとして、非処理グループは通常の媒体(50%のMEM、25%のHBSS、25%の馬血清)を与えた。mクラステリンは、21DIV(試験管内における日数)において、抗体の添加前及び処理時において24時間適用した。exp=3、n=15、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0249】
HEK又はCHO細胞由来の組み換えヒトクラステリンを使用する場合、同様な結果が得られる(データ無し)。
【0250】
【図13A】図13Aは、ヘパリン(7500U/kg)の存在下又は不存在下における組み替えhクラステリン(300μg/kg)の血管内(i.v.)注射の5又は30分後の、ELISAにより検出されたミリリットル当たりのナノグラム(ng/ml)におけるhクラステリンの血清中濃度を示す。
【0251】
A.ヘパリンをクラステリンの5分前(クラステリン前に注射されたヘパリン)、又はクラステリンと同時(ヘパリンと混合したクラステリン)に投与した。コントロールとして、マウスにクラステリン単独(クラステリン)で注射し、そして当該血液をチューブ+/−ヘパリンに採取した(ヘパリン中に採取されたクラステリン)。n=3 マウス/グループ、***p<0.005。
【0252】
【図13B】図13Bは、ヘパリン(7500U/kg)の存在下又は不存在下における組み替えhクラステリン(300μg/kg)の血管内(i.v.)注射の5又は30分後の、ELISAにより検出されたミリリットル当たりのナノグラム(ng/ml)におけるhクラステリンの血清中濃度を示す。
【0253】
B.血液採取前のヘパリン(7500U/kg)投与の効果。グループ1:クラステリン(1mg/kg)5分前にヘパリンを投与した。グループ2:クラステリン(1mg/kg)28分後にヘパリンを投与した。グループ3:クラステリン(1mg/kg)のみ。a:グループ1に対する分散分析単因子検定。b:グループ2に対する分散分析単因子検定。n=4 マウス/グループ、#p<0.1、*p<0.05、**p<0.01。N−アセチルへパリン投与で同様の結果が得られた(データ無し)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、円順列変異誘導体、又はこれらの塩、あるいはクラステリン活性のアゴニストの使用。
【請求項2】
上記末梢神経疾患が、末梢神経系(PNS)の外傷性神経傷害、PNSの脱ミエリン化性疾患、末梢神経障害、及び末梢神経変性疾患から成る群から選択される疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記末梢神経疾患が、先天性代謝疾患により生じる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記末梢神経疾患が、末梢神経障害である、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記末梢神経障害が糖尿病性神経障害である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
上記末梢神経障害が化学療法−誘導性神経障害である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
上記クラステリンが、以下から成る群から選択される、上記請求項のいずれか一項に記載の使用:
(a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
(b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
(c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
(d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
(e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
(f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
(g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
(h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
(i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
(j)(a)〜(f)のいずれかの塩又はアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション又は円順列変異誘導体。
【請求項8】
上記機能的誘導体がPEG部分を含んで成る、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
上記融合タンパク質が、免疫グロブリン(Ig)融合を含んで成る、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
上記医薬が、同時に、順番に、又は別々に使用するヘパリンを更に含んで成る、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記医薬が、同時に、順番に、又は別々に使用するインターフェロン及び/又はオステオポンチンを更に含んで成る、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
上記インターフェロンがインターフェロン−βである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
上記クラステリンが、約0.001〜100mg/kg体重、又は約1〜10mg/kg体重、又は約5mg/kg体重の量において使用される、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための核酸分子の使用であって、当該核酸分子が、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る核酸分子の使用:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;又は(a)〜(f)のいずれかのアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、又は円順列変異誘導体。
【請求項15】
上記核酸分子が、更に発現ベクター配列を含んで成る、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、細胞におけるクラステリンの内在性生成物、又はクラステリン活性のアゴニストを誘導及び/又は増強するためのベクターの使用。
【請求項17】
遺伝子治療のための、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、クラステリン、又はクラステリン活性のアゴニストを産出するために遺伝子改変された細胞の使用。
【請求項19】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項20】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項21】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項22】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニストを、これらを必要とする患者に対して、任意的に医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項23】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリンを、これらを必要とする患者に対して、任意的に医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項24】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロンを、これらを必要とする患者に対して、任意的な医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項25】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチンを、これらを必要とする患者に対して、任意的な医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項1】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のためのクラステリン、アイソフォーム、突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、円順列変異誘導体、又はこれらの塩、あるいはクラステリン活性のアゴニストの使用。
【請求項2】
上記末梢神経疾患が、末梢神経系(PNS)の外傷性神経傷害、PNSの脱ミエリン化性疾患、末梢神経障害、及び末梢神経変性疾患から成る群から選択される疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
上記末梢神経疾患が、先天性代謝疾患により生じる、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記末梢神経疾患が、末梢神経障害である、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記末梢神経障害が糖尿病性神経障害である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
上記末梢神経障害が化学療法−誘導性神経障害である、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
上記クラステリンが、以下から成る群から選択される、上記請求項のいずれか一項に記載の使用:
(a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
(b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
(c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
(d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
(e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
(f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
(g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
(h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
(i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
(j)(a)〜(f)のいずれかの塩又はアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション又は円順列変異誘導体。
【請求項8】
上記機能的誘導体がPEG部分を含んで成る、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
上記融合タンパク質が、免疫グロブリン(Ig)融合を含んで成る、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
上記医薬が、同時に、順番に、又は別々に使用するヘパリンを更に含んで成る、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記医薬が、同時に、順番に、又は別々に使用するインターフェロン及び/又はオステオポンチンを更に含んで成る、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
上記インターフェロンがインターフェロン−βである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
上記クラステリンが、約0.001〜100mg/kg体重、又は約1〜10mg/kg体重、又は約5mg/kg体重の量において使用される、上記請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための核酸分子の使用であって、当該核酸分子が、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含んで成るポリペプチドをコードする核酸配列を含んで成る核酸分子の使用:
a)配列番号1を含んで成るポリペプチド;
b)配列番号1のアミノ酸23〜449を含んで成るポリペプチド;
c)配列番号1のアミノ酸35〜449を含んで成るポリペプチド;
d)配列番号1のアミノ酸23〜227を含んで成るポリペプチド;
e)配列番号1のアミノ酸35〜227を含んで成るポリペプチド;
f)配列番号1のアミノ酸228〜449を含んで成るポリペプチド;
g)(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質、ここで、当該アミノ酸配列が、(a)〜(f)中の少なくとも1つの配列に対して、少なくとも40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は90%の同一性を有する;
h)中ストリンジェント条件下、又は高ストリンジェント条件下において、(a)〜(f)のいずれかをコードする未変性DNA配列の補体とハイブリダイズするDNA配列によりコードされる(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;
i)上記アミノ酸配列中のいずれかの変化が、(a)〜(f)におけるアミノ酸配列に対して保存的なアミノ酸置換である(a)〜(f)のいずれかの突然変異タンパク質;又は(a)〜(f)のいずれかのアイソフォーム、融合タンパク質、機能的誘導体、活性フラクション、又は円順列変異誘導体。
【請求項15】
上記核酸分子が、更に発現ベクター配列を含んで成る、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、細胞におけるクラステリンの内在性生成物、又はクラステリン活性のアゴニストを誘導及び/又は増強するためのベクターの使用。
【請求項17】
遺伝子治療のための、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における、クラステリン、又はクラステリン活性のアゴニストを産出するために遺伝子改変された細胞の使用。
【請求項19】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項20】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項21】
末梢神経疾患の治療及び/又は予防のための、クラステリン又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチンを、任意的に1又は複数の医薬組成物的に受容可能な賦形剤と一緒に含んで成る医薬組成物。
【請求項22】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニストを、これらを必要とする患者に対して、任意的に医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項23】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びヘパリンを、これらを必要とする患者に対して、任意的に医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項24】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びインターフェロンを、これらを必要とする患者に対して、任意的な医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【請求項25】
有効量のクラステリン、又はクラステリン活性のアゴニスト、及びオステオポンチンを、これらを必要とする患者に対して、任意的な医薬的に受容可能な担体と一緒に投与することを含んで成る、末梢神経疾患の治療方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【公表番号】特表2006−523199(P2006−523199A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505495(P2006−505495)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050372
【国際公開番号】WO2004/084932
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050372
【国際公開番号】WO2004/084932
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]