説明

材料選択による全反射多層光学の最適化

光学素子は、全反射により光子の方向を変えて伝播させる方向変換部を構成する第1の多層領域を備える。各多層領域は、第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料層と、第2の実屈折率n2及び第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料層と、上記高屈折率材料層と上記低屈折率材料層との間に配設され、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3をn1>n3>n2の関係で有するグレーディング層を備えたグレーディング領域とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の主題は、概して光学に関し、特に多層光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
X線放射等の光子放射を利用した多くの撮像応用技術では、必要なフラックスレベルがますます高くなっている。X線フラックスは、例えばX線源からのX線放射をフォーカスさせることによって増やすことができる。X線は、図1に示すように、界面12からの入射X線ビーム10を全反射させることによってフォーカス可能である。界面12は、通常は空気である第1の物質媒体14と通常は固体である第2の物質媒体16との間に形成可能である。図1では、第1物質媒体14の屈折率の実部がn14であり、第2物質媒体16の屈折率の実部がn16である。全反射は、n16<n14の場合であって、入射X線10が界面12と成す角度が全反射の臨界角θCRより小さい場合に実現可能である。
【0003】
臨界角θCRは、物質媒体14、16の屈折率及び入射X線ビーム10中の光子のエネルギーによって決まる。一般的に、X線エネルギーにおける物質の屈折率nは、n=1−δ+iβと表すことができる。ここで、(1−δ)の項は屈折率の実部であり、パラメータβは対応する材料の吸収係数に関連する。X線エネルギーの場合、屈折率の実部は極めて1に近いため、通常は1からの減少量δとして表される。この際、δは通常、10-6以下のオーダーである。可視波長の場合、屈折率の実部の差異(n14−n16)又は(δ16−δ14)が所与の光子エネルギーに対して最大となる時、臨界角θCRも最大となる。
【0004】
例えば、アルミニウムミラーに入射する12.4keVのX線放射の臨界角θCRは、2.7mrad(およそ0.15°)未満である。従って、例えばビーム幅wが5mmの入射X線ビーム10の方向を変えるには、図1に示すように、界面22の長さLが少なくとも185cmのコーティングされていない平面状アルミニウムミラーが必要となる。屈折率のみに基づいて材料を選択する従来の方法では、反射率がわずかに高くなるに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/174978号
【発明の概要】
【0006】
本発明では、紫外線、X線、ガンマ線エネルギー、更には、これまでに実現されているものよりも高いガンマ線エネルギーに対して、大きな臨界角で光子の反射を可能とし、これまでに実現されているものよりも大きな線源立体角に対して放射の収集を可能とする反射性多層構成に対するニーズがあることを認識している。
【0007】
本発明の一態様に係る光学素子は、全反射により光子の方向を変えて伝播させる方向変換部を構成する少なくとも1つの第1の多層領域を備える。各多層領域は、第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料層と、第2の実屈折率n2及び第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料層と、上記高屈折率材料層と上記低屈折率材料層との間に配設され、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3をn1>n3>n2の関係で有するグレーディング層を備えたグレーディング領域とを含む。
【0008】
本発明の別の態様に係る光学素子は、全反射により光子の方向を変えて伝播させる第1の方向変換部を構成する1つ又は複数の多層領域を備える。各多層領域は、第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料及び第2の実屈折率n2及び第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料のいずれかにより構成されたコアと、上記コアに被着され、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3をn1>n3>n2の関係で有するグレーディング層を備えたグレーディング領域と、上記グレーディング領域に被着され、上記高屈折率材料及び上記低屈折率材料の他方により構成された外層とを含む。
【0009】
本発明の更に別の態様に係る光学素子の製造方法は、第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料層を形成する工程と、上記第1実屈折率n1より小さな第2の実屈折率n2及び上記第1吸収係数β1より大きな第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料層を形成する工程と、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3を有するグレーディング材料を含むグレーディング領域を、n1>n3>n2の関係が成り立つとともに、上記高屈折率材料層及び上記低屈折率材料層が全反射により光子の方向を変えて伝播させるように、両屈折率材料層間に形成する工程と、を含む。
【0010】
実施形態に係るその他のシステム及び/又は方法については、添付図面及び以下の詳細な説明を参照すれば、当業者には明らかであろう。なお、このような付加的なシステム及び方法は全て、本発明の範囲内であって、添付の請求の範囲によって保護されるものとする。
【0011】
本発明は、紫外(UV)線、X線、又はガンマ線放射の方向を変えるのに適した多層光学素子を開示する。この光学素子の多層部分は、材料の屈折率の実部が素子内で高い値から低い値へと大略段階的となるように、屈折率に従って配置されている。また、反射率を改善するため、光子吸収の差異は、隣接多層材料間で大略最小化されている。このような開示を行うため、第1及び第2の層と異なる実屈折率又は吸収係数を有する材料が両層間に存在しない場合は、第1層が第2層に隣接するものと考える。
【0012】
本明細書に開示する方法及び素子においては、最低3つの異なる材料を多層スタックに用いることにより、連続層中で減少する実屈折率の層間の差異を最大化することによる現行方式よりも高い全反射率を得る。更に高い全反射率を提供する実施形態においては、実屈折率の最大化と同時に連続層間の光子吸収の変化が最小化される。また、各連続層が高い光子吸収特性を有する一方、実屈折率は層間で単調に減少する。これらの基準により、実屈折率及び光子吸収特性は、現行の反射性X線光学材料よりも緩やかに変化する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術に係る、界面で全反射された入射X線ビームを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、全反射により入射紫外線、X線、又はガンマ線ビームの方向を変えるのに適した多層材料スタックの一実施例を示す概略断面図である。
【図3】図2の多層材料スタックにおける第1及び第2の多層領域であって、それぞれが高屈折率材料層に被着されたグレーディング領域を有する多層領域の詳細な断面図である。
【図4】図3の多層領域の製造処理工程を示すフローチャートである。
【図5】図3の多層領域の概略等角図である。
【図6】図5の多層領域の別の実施形態であって、グレーディング領域の被着に低屈折率材料層を用いた場合の図である。
【図7】図6の多層領域の詳細な断面図である。
【図8】図7の多層領域の製造処理工程を示すフローチャートである。
【図9】高屈折率材料層、当該高屈折率材料層上のグレーディング領域、及び当該グレーディング領域上の低屈折率材料層を備え、方向変換部及び伝播部を含むように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図10】一端に曲面を有する平面状コア層の概略等角図である。
【図11】両端に曲面を有する平面状コア層の概略等角図である。
【図12】楔形状の平面状コア層の概略等角図である。
【図13】発散型紫外線、X線、又はガンマ線源の出力をコリメートな紫外線、X線、又はガンマ線ファンビームに成形する際に使用する複数の材料層を備えた平面状光学素子の詳細な概略等角図である。
【図14】別の多層領域を備えた図13の平面状光学素子の詳細な概略等角図である。
【図15】一端に凸曲面を有する平面状コア層の概略等角図である。
【図16】図15の平面状コアから作製した平面状光学素子の一実施例を示す詳細な概略等角図である。
【図17】アーチ形状の入力面を有する平面状コア層の概略等角図である。
【図18】アーチ形状の入力面よりも厚いアーチ形状の出力面を有する図17のコア層の別の実施形態を示す図である。
【図19】図18のコア層上に作製された平面状光学素子の別の実施例を示す詳細な概略等角図である。
【図20】鞍状面を構成する複数の隣接部分を有する図19の平面状光学素子の別の実施例を示す図である。
【図21】一般的な断面形状を有するコアの概略等角図である。
【図22】実質的に一様な厚さのコンフォーマル層を被着した図21のコアの概略等角図である。
【図23】様々な厚さの層を被着して円形断面を構成した図21のコアの概略等角図である。
【図24】入力面に凹面を有する光学素子の一部切り欠き概略等角図である。
【図25】入力面近傍に鞍状面を有するコアの概略等角図である。
【図26】発散型紫外線、X線、又はガンマ線源の出力をそれぞれコリメートな紫外線、X線、又はガンマ線ビームに成形する際に使用する複数の材料層を備えた円形断面の光学素子の詳細な概略等角図である。
【図27】別の複数の多層領域を備えた図26の光学素子の別の実施形態を示す図である。
【図28】高屈折率コア層が六角形の断面形状を有する図26の光学素子の別の実施例を示す図である。
【図29】高屈折率コア層の一部だけがグレーディング層に覆われた図28の光学素子の別の実施例を示す図である。
【図30】入射収束型紫外線、X線、又はガンマ線ビームを入力するように構成された図27の光学素子の別の実施例を示す図である。
【図31】歪曲入力面を備えた図30の光学素子の別の実施例を示す図である。
【図32】発散型紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に発散型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図33】平行又はコリメートな紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に収束型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図34】発散型紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に収束型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図35】収束型紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に発散型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図36】収束型紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に平行又はコリメートな紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図37】平行又はコリメートな紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に発散型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図38】収束型紫外線、X線、又はガンマ線ビーム入力から実質的に収束型の紫外線、X線、又はガンマ線ビーム出力を生成するように構成された単一の多層領域の別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図39】図38の単一の多層領域よりも焦点距離が短い図38の単一の多層領域の別の実施例を示す図である。
【図40】高屈折率層、低屈折率層、及び複数のグレーディング層を備えた多層領域を有し、当該高屈折率層又は異なる高屈折率層が各グレーディング層対の間に設けられた図3の多層材料スタックの別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図41】各多層領域が1又は複数の複合グレーディング層を有し、各複合グレーディング層が離散グレーディング副層を備え、各グレーディング副層が2つの構成材料を含み、各構成材料が異なる実屈折率を有する図3の多層材料スタックの別の実施例を示す詳細な断面図である。
【図42】グレーディング副層の2つの構成材料の分布が離散的ではない図41の多層材料スタックの別の実施例を示す詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、例えば全反射により入射光子ビーム40の方向を変えて反射光子ビーム42とするのに適した多層材料スタック30(正確な縮尺で図示したものではない)を示す概略断面図である。この入射光子ビーム40には、UVビーム、X線ビーム、又はガンマ線ビームが含まれていてもよい。以下に詳述するように、反射光子ビーム42は、実質的に発散型、コリメート、又は収束型の入力光子ビームから実質的にコリメート、発散型、又は収束型の光子ビームを形成したものであってもよい。多層材料スタック30は、図中、第1の多層領域32−1から第Nの多層領域32−Nで表される複数の多層領域を備えている。
【0015】
当然のことながら、多層材料スタック30を構成する多層領域の数には一切の制限がなく、多層材料スタック30の対象となる特定の用途によって決まる。多層材料スタック30は、何百又は何千という多層領域を備え得る。各多層領域32−1〜32−Nは、高屈折率層34、低屈折率層38、及びグレーディング領域36を備え、高屈折率層34と低屈折率層38との間には1又は複数のグレーディング層が設けられている。各多層領域を構成する材料層は、本明細書に記載の方法に従って選択及び配置される。また、多層材料スタック30は、第N多層領域32−Nからの光子放出を防止するため、その外面に光子不透過クラッド層44を備えていてもよい。
【0016】
当然のことながら、入射光子ビーム40の幅は、第1多層領域32−1の厚さより小さくても大きくてもよい。大きい場合は、入射光子ビーム40の異なる部分が通過して、他の多層領域32−2〜32−Nの一部又は全部により全反射されるため、反射光子ビーム42の対応する部分として多層材料スタック30から出射する。入射光子ビーム40の幅が第1多層領域32−1の厚さより小さい場合は、多層材料スタック30から得られるフラックスが減少する可能性があるものの、有用な方向変換機能を提供可能である。
【0017】
入射光子ビーム40は、明瞭化のため、第1多層領域32−1に入射して反射された部分だけを図示している。以下に詳述するように、上記様々な材料層として選択された材料は、各多層領域32−2〜32−Nに対して光子の全反射率が最大化されるような反射特性を有している。更に、本開示の構成によれば、UV線、X線、及びガンマ線に対する全反射の臨界角が従来技術よりも大きくなる。
【0018】
次に図3を参照する。図3には、第1及び第2の多層領域32−1、32−2のみを示している。各多層領域は複数の材料層を備え、各材料層は固有の実屈折率n、反射係数β、及び厚さtを有している。図示の例では、各多層領域32−1、32−2が(i)実屈折率n1、吸収係数β1、及び厚さt1を有する高屈折率層34、(ii)図中、グレーディング層36−1〜36−3で表される複数のグレーディング層を備えたグレーディング領域36、及び(iii)実屈折率n2、吸収係数β2、及び厚さt2を有し、グレーディング領域36上に配設された低屈折率層38を備える。
【0019】
第1のグレーディング層36−1を構成する材料は、実屈折率n3、吸収係数β3、及び厚さt3を有し、高屈折率層34上に配設されている。第2のグレーディング層36−2を構成する材料は、実屈折率n4、吸収係数β4、及び厚さt4を有し、第1グレーディング層36−1上に配設されている。そして、第3のグレーディング層36−3を構成する材料は、実屈折率n5、吸収係数β5、及び厚さt5を有し、第2グレーディング層36−2上に配設されている。高屈折率層34及び低屈折率層38の厚さは通常、出力ビームの所望の発散度に応じて、ナノメートルからミクロンのオーダーであってもよい。また、各グレーディング層36−1〜36−3の厚さについても通常、ナノメートルからミクロンのオーダーであってもよい。
【0020】
第2多層領域32−2の構成は、連続する各多層領域から第N多層領域32−Nに至るまで繰り返されていてもよい(不図示)。別の実施例においては、連続する多層領域中の一部又は全部の材料層の厚さが、第2多層領域32−2中の対応する材料層の厚さと異なっていてもよい。例えば、第1多層領域32−1中の高屈折率層34の厚さは、100ミクロンのオーダーであってもよい。一方、第2多層領域においては、数十ナノメートルのオーダーであってもよい。また、別の実施例においては、連続する多層領域中の一部又は全部の材料層の材料組成が、第2多層領域32−2中の対応する材料層の材料組成と異なっていてもよい。
【0021】
多層部分の材料選択は、特定の光子エネルギー応用技術に関する第1の基準を少なくとも満足する。この第1の基準によれば、多層領域中の5つの材料層を例に挙げると、各多層領域中の5つの材料層の実屈折率niは、隣接する2層間の屈折率の実部の差異(即ち、ni−ni±j)が入射光子エネルギーの特定の範囲に対して可能な限り大きくなるように規定される。この第1の基準に準拠すれば、ある材料層から隣接材料層への電子密度の急変を回避できるため、2つの材料を用いるシステムよりも材料層界面における反射率を高くすることができる。即ち、図示の例の場合は、然るべき材料選択により、特定のエネルギー範囲に対して値(n1−n3)、(n3−n4)、(n4−n5)、及び(n5−n2)が最大化される。
【0022】
第2の基準を満足すれば、多層スタックからの最適な反射が得られる。この第2の基準によれば、隣接する材料層間の吸収係数の差異は可能な限り最小化される。即ち、特定のエネルギー範囲に対して値(β3−β1)、(β4−β3)、(β5−β4)、及び(β2−β5)が最小化される。この第2の基準に準拠すれば、ある材料層から隣接材料層への質量密度の急変を回避でき、第1の基準と組み合わせれば、多層スタック全体からの反射率が改善される。従って、図示した特定の例の場合は、両基準を満足することによりn1>n3>n4>n5>n2及びβ2>β5>β4>β3>β1の関係が成り立って、反射率が高くなる。
【0023】
低屈折率層38の材料は、対応する多層領域32−Nが方向を変えるとともに遮断する必要のある最大光子エネルギーにより決定してもよい。また、この最大光子エネルギーの値は、多層材料スタック30の用途により決定してもよい。隣接層間の光子吸収の差異を最小化しつつ実屈折率の差異を最大化すれば、多層領域32−2等の多層領域全体からの全反射率が大きく改善される。当然のことながら、この反射率は、例えば(i)低屈折率層38が相対的に薄いと入射光子の一部が低屈折率層38を通過して次の多層領域に入射する、(ii)隣接材料層間の光子吸収特性に不整合がある、ことにより100%未満となる場合がある。
【0024】
この現象は、図3の概略断面図に見られる。図中、入射光子ビーム40の大部分は第2多層領域32−2で反射されているが、スプリアスビームレット42−6が次の多層領域(不図示)に入射する場合がある。なお、図3は正確な縮尺で図示したものではなく、材料層の厚さと入射光子ビーム40の入射角及び反射角は、明瞭化のため誇張表示している。入射光子ビーム40の第1の部分は、高屈折率層34と第1グレーディング層36−1との間に形成された第1の界面50で全反射され、第1のビームレット42−1として多層材料スタック30から出射する。
【0025】
入射光子ビーム40の第2の部分は、第2の界面52で反射され、第2のビームレット42−2として多層材料スタック30から出射する。一実施例においては、第2のビームレット42−2の強度が第1のビームレット42−1とは異なり、通常は低い強度である。例えば、強度が更に低い入射光子ビーム40の第3の部分は、第3の界面54で反射され、場合によっては強度が更に低い第3のビームレット42−3として多層材料スタック30から出射してもよい。同様に、強度が更に低い入射光子ビーム40の第4の部分は、第4の界面56で反射され、強度がより一層低い第4のビームレット42−4として出射してもよい。そして、図3では、強度がより一層低い入射光子ビーム40の第5の部分が第5の界面58で反射され、強度が更に低いビームレット42−5として出射してもよい。入射ビーム40の無視できるほど僅かな部分は、強度が非常に低いスプリアスビームレット42−6として次の多層領域(不図示)に入射する。
【0026】
2つの連続層間の吸収の差異を最小化しつつ実屈折率の差異を最大化する設計基準を使用する開示の方法によれば、各多層材料スタックからの全反射を実現するための臨界角が最大となって、多層スタック全体からの全反射条件(入射角<Θcritical)を満足する光子の割合も最大となり、更には、全反射に成功する光子の数、即ち、反射に際して吸収も伝播もされない光子の数も最大となる。連続層間の光子吸収の差異が上記基準に従って最小化されていない場合は、全反射される光子の割合が大幅に低下する可能性がある。
【0027】
図4のフローチャート70及び図5の光学素子90を更に参照して、本明細書に開示の実施例の設計属性を用いて光学素子を製造するプロセスを詳細に説明することができる。円筒状光学素子(後述)の場合は、例えばおよそ10keVのX線エネルギーの用途に対して、ベリリウム又はホウ素等の高屈折率材料を選択して高屈折率層を形成してもよい(ステップ72)。平面状光学素子90をおよそ200keV以上の高いエネルギーで使用する場合は、高屈折率コア材料を例えばシリコンとして最初の滑らかな平坦面を設け、その上に次の多層領域を形成することができる。
【0028】
この高屈折率材料の屈折率の実部(n1)は相対的に高い値とするのが好ましく、光子吸収係数(β1)は相対的に低い値とするのが好ましい。次に、イリジウム又は劣化ウラン等の低屈折率材料を選択して、低屈折率層を形成してもよい(ステップ74)。この低屈折率材料の屈折率の実部(n2)は相対的に低い値(即ち、n2<<n1)とするのが好ましく、光子吸収係数(β2)は相対的に高い値(即ち、β2>>β1)とするのが好ましい。
【0029】
次に、1〜N個の異なるグレーディング材料又は材料組成を選択して、各グレーディング層を形成してもよい(ステップ76)。N個の各グレーディング材料の屈折率の実部は、n2とn1の間の実屈折率値となるように選択してもよい。図示の実施形態では、N個の各グレーディング材料の光子吸収係数が低い光子吸収係数β1と高い光子吸収係数β2の間の値であれば都合が良い。次に、高屈折率材料を被着又はメッキさせて、高屈折率「コア」又は「初期」層を形成してもよい(ステップ78)。別の実施例においては、基板シートを予め形成又は作製しておき、フローチャート70の製造プロセスの開始点として提供するようにしてもよい。この場合は、基板シートを後で取り除くことによって、得られる光学素子の一部とならないようにしてもよい。
【0030】
最適な反射率の多層スタックを生成するため、以下の基準を満足する「スタッキング」シーケンスにより、実屈折率n3〜nN+2の3〜(N+2)個のグレーディング材料を高屈折率層又はコアに被着させてもよい(ステップ80)。
【0031】
1>n3>n4>・・・>nN+1>nN+2>n2 (1)
β1<β3<β4<・・・<βN+1<βN+2<β2 (2)
グレーディング材料に関して(ni−ni+1)を最大化(3<i<N+1) (3)
グレーディング材料と高屈折率材料及び低屈折率材料との間の遷移に関して(n1−n3)及び(nN+2−n2)を最大化 (4)
グレーディング材料に関して(βi+1−βi)を最小化(3<i<N+1) (5)
グレーディング材料と高屈折率材料及び低屈折率材料との間の遷移に関して(β3−β1)及び(β2−βN+2)を最小化 (6)
ステップ80で実行するプロセスにより、図3のグレーディング層36と類似する一連のグレーディング層が形成される。そして、最も外側のグレーディング層に低屈折率材料を被着又はメッキさせて、図3の第1多層領域32−1又は図5の多層領域92等の多層領域の製造を完了してもよい(ステップ82)。判定ステップ(ステップ84)では、更に多層領域を追加するか否かについての判定を行ってもよい。例えば、光学素子90(図5)では、最初の多層領域92に多層領域32−2を追加している。このように1又は複数の多層領域を追加する場合は、ステップ78に戻って、現在の最も外側の低屈折率材料層上に別の高屈折率材料層を被着又はメッキさせてもよい。この構成により、図示した通り、例えばグレーディング層36−1を通過してグレーディング層36−2に入射する入射角度で、入射光子ビーム40を多層領域32−1、32−2中で反射させるようにしてもよい。
【0032】
プロセスのステップ78〜82は、繰り返し実行して必要な数の多層領域を生成するようにしてもよい。判定ステップ84の応答がNOの場合は、図2の光子吸収層44等の光子不透過層を最も外側の低屈折率材料層上に任意で追加してもよい。YESの場合は、光子吸収層を設けずに製造プロセスを終了してもよい。
【0033】
このように、光学素子90は、従来技術よりも大きな線源立体角Ωに対してUV線、X線、及びガンマ線放射の収集及び方向変換が可能である。この素子を医療用撮像システムに適用すると、曝露時間及び患者線量を低減可能となり、画像解析が容易になるとともに、コンピュータトモグラフィ(CT)等の画像診断法の診断精度が改善される可能性がある。更に、X線用途の場合は、X線源を例えば2〜10倍低い出力で動作させることが可能となるため、X線源の寿命がより一層長くなる。
【0034】
図6に示す別の実施例において、光学素子100は、第1の多層領域102−2及び類似する第2の多層領域102−4を備えている。各多層領域102−2、102−4は、例えば図7に示す低屈折率材料を含む初期層104から作製してもよい。この光学素子100の低屈折率層104の材料は、図5の光学素子90と類似の基準を用いて、図8のフローチャート120のステップ122のように選択してもよい。次に、高屈折率層106の高屈折率材料を選択し(ステップ124)、グレーディング領域108の材料を選択してもよい(ステップ126)。
【0035】
次に、低屈折率材料を被着又は形成して、低屈折率層又はコア104を形成してもよい(ステップ128)。グレーディング層108−1、108−2、108−3は、高屈折率層106に隣接して最大の屈折率(n3)を有する材料及び低屈折率層104に隣接して最小の屈折率(n5)を有する材料により形成してもよい(ステップ130)。即ち、以下の基準が満たされる場合は、多層スタック全体からの反射率が最適となる。
【0036】
2<nN+2<nN+1<・・・<n4<n3<n1 (7)
β2>βN+2>βN+1>・・・>β4>β3>β1 (8)
グレーディング材料に関して(ni−ni+1)を最大化(3<i<N+1) (9)
グレーディング材料と高屈折率材料及び低屈折率材料との間の遷移に関して(n1−n3)及び(nN+2−n2)を最大化 (10)
グレーディング材料に関して(βi+1−βi)を最小化(3<i<N+1) (11)
グレーディング材料と高屈折率材料及び低屈折率材料との間の遷移に関して(β3−β1)及び(β2−βN+2)を最小化 (12)
高屈折率材料を被着させて高屈折率層106を形成した後(ステップ132)、判定ステップ(ステップ134)では、更に多層領域を形成するか否かについての判定を行う。YESの場合は、必要に応じてステップ128〜132を繰り返し、所望の場合は光子不透過クラッド層を追加する(ステップ136)。この構成により、図示した通り、例えばグレーディング層108−3を通過してグレーディング層108−2に入射する入射角度で、入射光子ビーム60を多層領域102−1、102−2中で反射させるようにしてもよい。
【0037】
図9は、高屈折率層142、低屈折率層144、及び高屈折率層142と低屈折率層144との間に配設された複数のグレーディング層152、154、156を有するグレーディング領域158を備えた単一の多層領域140の一実施例を示す概略断面図である。前述の通り、各材料層の厚さは、明瞭化のため誇張表示している。高屈折率層142と第1のグレーディング層152との間には、第1の反射界面162が形成されている。同様に、第1グレーディング層152と第2のグレーディング層154との間には第2の反射界面164が形成され、第2グレーディング層154と第3のグレーディング層156との間には第3の反射界面166が形成され、第3グレーディング層156と低屈折率層144との間には第4の反射界面168が形成されている。
【0038】
光子源170から発散型光子ビーム172を供給して、多層領域140の入力面146を照射するようにしてもよい。図中、光子ビーム172は、発散する5本の光子ビームレット172−0〜172−4として示しているが、当然のことながら、物理的には特定の放射立体角にわたって分布する連続ビームであって、本明細書の種々実施例の提示を容易化するために離散ビームレットとして表示しているに過ぎない。一実施例において、多層領域140は、大略図示の通りに構成された方向変換部174及び伝播部176を含むように構成されている。方向変換部174は、発散型光子ビーム172を実質的にコリメーションし、伝播部176を介して、実質的にコリメートなビーム178として所望の空間領域へと方向を変えるように機能する。
【0039】
第1反射界面162は、図9の断面図中の実質的に真っ直ぐな部分と連続する曲線部分を有するように表されている。当然のことながら、第1反射界面162は、物理的には光子ビームレット172−1を反射する表面を形成しており、以下に詳述するように、例えば平面、円筒面、円錐面、又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。反射界面164、166、168の断面についても同様に、方向変換部174では曲線として、伝播部176では直線として示されている。反射界面164、166、168の曲線部分は、以下に詳述するように、例えば発散型光子ビーム172をコリメート又は方向変換するための円筒面等の正曲率の物理面を表している。同様に、反射界面164、166、168の直線部分は、平面状、円筒状、又は平面と円筒面とを組み合わせた物理面を表している。
【0040】
光子ビーム172のコリメーションは、光子ビームレット172−0〜172−4の伝播経路を追跡することによって最もよく理解可能である。図示の通り、光子源170の中心は、高屈折率層142の中央を通る軸と大略一致する。第0の光子ビームレット172−0は、高屈折率層142を通過し、反射を受けずに第0のコリメートな光子ビームレット178−0として出射してもよい。これに対して、第1の光子ビームレット172−1は、最初の反射点182a及び最後の反射点182bで示すように、1又は複数回の全反射を受けつつ高屈折率層142を通過し、第1のコリメートな光子ビームレット178−1として出射してもよい。第2の光子ビームレット172−2は、第2反射界面164に対して臨界角未満で最初の反射点184aに衝突すると、第2反射界面164の曲線部分に沿って複数回の全反射を受けた後、第2のコリメートな光子ビームレット178−2として第1グレーディング層152から出射する。図中、これら複数回の全反射は、最初の反射点184a及び最後の反射点184bで表されている。これら最初の反射点184aと最後の反射点184bとの間で起こる中間の複数回の全反射については、明瞭化のため図示していない。
【0041】
一実施例において、最初の反射点184aと最後の反射点184bとの間の第2反射界面164の曲線部分の曲率は、反射界面164の両反射点間における第2光子ビームレット172−2の後続の全ての反射が臨界角未満で起こって全反射となるように規定される。
【0042】
同様に、第3の光子ビームレット172−3は、最初の反射点186aと最後の反射点186bとの間で複数回の全反射を受けてもよい。また、第4の光子ビームレット172−4は、最初の反射点188aと最後の反射点188bとの間で複数回の全反射を受けてもよい。第3及び第4の反射界面166、168の曲線部分の曲率は、複数回の全反射が方向変換部174中の反射界面166、168の部分に沿って起こるように規定される。一実施例においては、光子ビームレットが方向変換部174の対応する曲面に沿って何百回又は何千回と反射した後、多層領域140から出射するようにしてもよい。当業者には当然のことながら、コリメートな光子ビームレット178−1〜178−4の所望の軌道は、反射ビームレットが方向変換部174から伝播部176に入射する時、即ち、各層の曲線部分の接線がその後の直線部分と実質的に平行となる時に実現される。伝播部176は、概して任意の物理的長さを有していてもよく、単一の多層領域140の取り扱い又は一体化のための従来の物理サイズを提供するように規定することができる。
【0043】
高屈折率層142は、図10に示すように、一端に曲面又は円筒面148を有する大略平面状のコア又は基板として形成し、これによって、図9の多層領域140の方向変換部174における曲線界面を生成するようにしてもよい。また、図11に示すように、一端に第1の曲面194を有し、他端に第2の曲面196を有するコア層192等、その他のコア構成も考えられる。特定の光学素子のスタックには、図12のようなテーパー状コア198を使用してもよい。フローチャート70、120の方法に対しては、テーパー形状と1つ又は2つの曲面の両者を有する構成(不図示)等、その他のコア層構成を使用して、前述の通り、相対的に大きな光源立体角に対して相対的に高いエネルギーの入力放射を収集する光学素子を構成することもできる。
【0044】
図13は、光学素子200の概略等角図であって、入射面204を照射する発散型光子源170の出力とともに示している。光学素子200は、長手方向の対称面と平行な一連の面内を実質的に伝播するファン形状のコリメートな光子ビーム出力208を形成するのに使用してもよい。図9を参照して、図13の光学素子200は、高屈折率層206の両面にグレーディング領域158を被着させた後、各グレーディング領域158上に低屈折率層144を被着させて製造してもよい。当然のことながら、光学素子200は、本質的には多層領域140とそのミラー像とを1つずつ組み合わせたものである。
【0045】
光学素子200の高屈折率層206の両面への多層被着を繰り返すことによって、図14のような大型の光学素子210を形成してもよい。このように形成した光学素子210は、中心となる高屈折率層206を備え、その上に複数の多層領域212−1〜212−Nを繰り返し被着させることによって、大略図示の通り、何百、何千、又は何百万もの多層領域を平面状にスタックしている。多層領域212−1〜212−Nの一部は円筒面を含み、発散型入射光子ビームのコリメーションを行うように機能する方向変換部214を形成している。
【0046】
図15に示す別の実施例おいて、コア層220は、コア表面222の第2端よりも第1端が厚い実質的に平面状の層を備えていてもよい。図示の構成では、コア層220が凹状円筒部224を含んでおり、図16に示す光学素子230の製造が可能であるとともに、収束型放射ビームを受けるのに適した後述するその他光学素子の製造が可能である。光学素子230においては、コア表面222及びコア層220の両縁部226、228上にグレーディング層232、234、236、及び外側の低屈折率層238が形成されている。フローチャート70に従って、光学素子230に別の多層領域(不図示)を追加してもよい。
【0047】
図17には、アーチ形状の入力面242を有するコア層240の別の実施例を示している。コア層240は、実質的に一様な厚さを有することによって、その後に被着されるグレーディング層を収容する円筒形状面を提供するようにしてもよい。図18に示す別の実施例において、コア層250は、アーチ形状の入力面242よりも厚いアーチ形状の出力面246を有していてもよい。これにより、コア層250は、その後に被着されるグレーディング層に対して、縦軸252に沿って正曲率を有し、横軸254に沿って負曲率を有する鞍状面248を提供する。
【0048】
図19には、コア層244を備えた光学素子260を示している。コア層244の両面には、複数の平面状多層領域262−1〜262−Nを繰り返し被着させることによって、図14の光学素子210と同様に、何百、何千、又は何百万もの多層領域を平面状にスタックしている。多層領域262−1〜262−Nには、鞍状面248のような鞍状面を含んでいてもよい。図20に示す別の実施例において、光学素子270は、全体として鞍状面248と類似の鞍状面を近似するように成形された複数の隣接部分274を含む上側分割面272を有していてもよい。当業者には当然のことながら、分割面272は、鞍状面248よりも簡単に作製可能であってもよい。
【0049】
上記光学素子構成の別の実施例として、コア層34(図3)、コア層104(図7)、及びコア層142(図9)のいずれも、平面状ではなく棒状であってもよい。図21に示す棒状コア300は、図中、部分的に連続する複数の曲線部分及び直線部分を含む一般断面形状302で表される曲線断面形状又は多角形断面形状を含んでいてもよい。この棒状コアは、2次元閉領域を形成する任意の断面を有するように構成してもよい。閉領域の周囲は、連続であってもよいし、部分的に連続であってもよい。また、直線又は曲線を含んでいてもよい。この閉領域は、3次元方向に突き出して、これにより棒状コア自体を規定するようにしてもよい。棒状コア300上へのグレーディング層の作製は、図22に示すように、棒状コア300上に第1の一様なグレーディング層304を被着させる等、略一様な層を被着させることによって達成してもよい。あるいは、被覆グレーディング層は、図23に例示する棒状コア300上に被着させた第1の非一様グレーディング層306のように、1又は複数の非一様層として被着させることにより、外面を「均す」とともに略円形断面の光学素子を生成するようにしてもよい。
【0050】
本明細書に記載の光学素子は、平坦面、歪曲面、凸面、及び/又は凹面の部分を有する入力面及び/又は出力面を備えていてもよい。図24に示す光学素子310は、例えば縦軸に沿って変化する実質的に円形の断面形状を有し、その断面サイズは、長手方向中心近傍で最大となる。このように、光学素子310は、以下に詳述するように、発散型放射入力ビームを受けるように構成されていてもよい。一実施例において、光学素子310は、曲率がより明確となるように一部を切り欠いた図示の通り、凹状入力面316を含んでいる。この曲率314は、例えば円筒状、球状、楕円状、放物線状、又は双曲線状であってもよい。図に示してはいないが、出力面についても曲線状であってもよく、この場合は、その曲率が出力ビームの発散度に影響を及ぼす。
【0051】
光学素子310は、所望の最終形状をより簡単に実現できるよう、それに類似する形状の棒状コア(不図示)上に作製してもよい。即ち、棒状コアは、縦軸に沿って変化する実質的に円形の断面形状を有し、その断面サイズが棒状コアの長手方向中心近傍で最大となるにように構成してもよい。
【0052】
別の実施例において、図25に示す棒状コア320は、縦軸318に沿って変化する実質的に円形の断面形状を有するが、その断面サイズは、長手方向中心近傍で最小である。従って、棒状コア320は、入力面近傍で鞍状面328を形成していてもよい。当業者には当然のことながら、棒状コア320上に多層領域を被着させて製造した光学素子(不図示)は、断面サイズが素子の長手方向中心近傍で最小となる類似の円形断面形状を有していてもよい。
【0053】
図26は、発散型光子源170の出力を実質的にコリメートな光子ビーム322に成形する際に使用する光学素子330の概略等角図である。光子源170から出射した発散型光子ビーム172は、放射立体角Ωを有し、光学素子330の入力面334を照射している。図9も参照して、光学素子330は、単一の多層領域140を高屈折率層142周りに回転させたものと見なしてもよい。この構成では、高屈折率層が円形又は楕円形の断面を有する高屈折率円筒状コア332を構成していてもよい。グレーディング層152、154、156によって構成されたグレーディング領域は、高屈折率円筒状コア332を物理的に囲っている。なお、各層の厚さは、明瞭化のため誇張表示している。
【0054】
光学素子330の方向変換部174は、発散型光子ビーム172を実質的にコリメーションし、伝播部176を介して、光学素子330の縦軸に沿って所望の対象へと方向を変えるように機能する。外側の低屈折率層144の方向変換部174を構成する部分には、光学素子330の縦軸側に湾曲した凸面336が含まれる。これに対して、伝播部176は、光学素子330の縦軸と実質的に平行な軸の円筒面338を有する。
【0055】
光学素子330は、ベリリウム又はホウ素等の高屈折率材料を成形した円筒状繊維を高屈折率層コア332として製造を開始してもよい。そして、第1グレーディング層152、同心又は同一平面上のグレーディング層154、156等の後続する全ての素子層、及び外側の低屈折率層144は、気相堆積、サーマル又は超音速ジェット噴霧堆積、化学メッキプロセス、又は従来既知の類似プロセスの1又は複数の組み合わせによって、高屈折率層コア332に被着させてもよい。当然のことながら、被着又はメッキのプロセスは、必要に応じて継続することにより、実質的に複数の多層領域342−1〜342−Nを備えた図27の光学素子340を得ることができる。これにより、大きな放射立体角Ωからの放射の収集が可能になるとともに、大きな出力ビーム324が得られるようになる。
【0056】
図28は、図26の光学素子330の別の実施例である光学素子360の概略等角図である。図示の構成では、高屈折率コア362が六角形断面の棒状である。そして、実質的に円筒状のグレーディング層352、354、356が高屈折率コア362を物理的に囲い、外側の低屈折率層358がグレーディング層352〜356を囲っている。高屈折率コア362の断面形状は、光学素子360製造用の例えばベリリウム又はホウ素を含む高屈折率繊維の特定形状により決定してもよい。また、光学素子360の機能性に影響を及ぼさなければ、曲線又は多角形等の別の断面形状であってもよい。外側の低屈折率層358の入力面364に近い部分には、光学素子360の縦軸に対する凸面366が含まれる。また、光学素子360の出力ビーム326に近い部分には、正円筒面368が含まれる。
【0057】
光学素子360の別の実施例として、図29に示す変形光学素子370は、高屈折率コア362の一部にだけ被着を施している。外側の低屈折率層358及びグレーディング層352〜356は、六角形断面の高屈折率コア362の2つの上面及び2つの下面に被着されている。光学素子370の出力ビームには、上記光学素子360の出力ビーム326よりも多くのファンビームが含まれる。
【0058】
図30に示す光学素子380は、図27の光学素子340と類似する積層構造の中心多層領域コア382−0を備えている。これに続いて、入力面384で最もよく確認できる同心状の多層領域382−1〜382−Nを被着させることにより、何百、何千、又は何百万もの同心状多層領域を構成している。当業者には当然のことながら、光学素子の入力面384に近い部分には「鞍状」面386が含まれており、これによって、入力面384の直径は光学素子380の伝播部388よりも大きくなっている。この特殊な構成によって、以下に詳述するように、収束型入力ビーム(不図示)を実質的にコリメートな出力ビームへと変換できる可能性がある。図31に示す別の実施例において、光学素子390は、歪曲した入力面394、即ち、縦軸396に対して90°未満の入力面を備えていてもよい。入力面は、凹面、凸面(不図示)、又は複雑な曲面(不図示)において平面状又は曲線状308(図24)であってもよいし、これら形状の任意の組み合わせであってもよい。
【0059】
図32に示す本発明の別の態様において、光学素子400は、光子源170から出射した発散型入力光子ビーム172の方向を変えて第2の発散型光子ビーム174を生成するように構成されている。この光学素子400は、上記の高屈折率コア142又は高屈折率コア310等の高屈折率層を含む多層領域を備えている。また、高屈折率コア142、310上に配設された複数のグレーディング層402及びグレーディング層402上に配設された低屈折率層404を備えている。そして、複数の層間には曲線界面を備えている。光学素子400が光学素子330(図26)若しくは光学素子340(図27)に類似する棒状素子又は光学素子200(図13)若しくは光学素子210(図14)に類似する平面状素子を構成するように、低屈折率層404は、光学素子400の縦軸側に湾曲した凸面を形成している。
【0060】
図32に示すように、曲線状の反射界面414、416、418については、対応する光学素子の出力面におけるそれぞれの接線が素子光学軸と平行にはなっていないことが分かる。このことは、図9に示した類似構成の多層領域140において匹敵する反射界面164、166、168の曲線部分とは異なる。従って、図32の入力光子ビームレット172−1、172−2、172−3は、光学素子400内部で十分に方向変換されてコリメートビームを形成するようにはなっておらず、出力光子ビーム174は、入力光子ビーム172より発散度は低くなってはいるものの、依然として発散型のままである。これに対して、図9の発散型光子ビーム172は、光学素子の出力面における曲線状反射面の接線が素子光学軸と平行になる方向変換部174及び伝播部176の直線状反射面を通ることによって、実質的にコリメーションされる。
【0061】
図33は、実質的にコリメートな入力光子ビーム430の方向を変えて実質的に収束型の出力光子ビーム432を生成するように構成された光学素子420の一実施例を示している。明瞭化のため、光学素子420の複数のグレーディング領域層422を通過して対応する出力光子ビームレット432−1、432−2、432−3として出射する光子ビームレット430−1、430−2、430−3のみを図示している。入力光子ビームレット430−1、430−2、430−3の軌道は、光学素子420の方向変換部424で複数回の全反射を受けることによって方向が変わり、収束していることが分かる。当業者には当然のことながら、光学素子420の構成は、図9の多層領域140と同様であってもよいが、光子ビームレットが伝播部176に入射して方向変換部174から出射する点は異なる。
【0062】
図34に示す本発明の別の態様において、光学素子450は、発散型光子ビーム172の方向を変えて実質的に収束型の出力光子ビーム458を生成するように構成されている。この光学素子450は、第1の方向変換部452及び第2の方向変換部456を備え、更にはこれらに囲われた伝播部454を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。方向変換部452、456の低屈折率層462及びグレーディング層464、466、468は、光学素子450の高屈折率層460側に湾曲した反射面を有する。当然のことながら、光学素子450が棒状の場合はコア310を備えていてもよく、平面状の場合はコア層192を備えていてもよい。
【0063】
図35に示す本発明の別の態様において、光学素子480は、収束型光子ビーム470の方向を変えて発散型の出力光子ビーム472を生成するように構成されている。この光学素子480は、第1の方向変換部474及び第2の方向変換部478を備え、更には中間伝播部476を任意で備えている。光学素子480の低屈折率コア482は、コア層220(図16)又は棒状コア320(図25)と類似の形状を有し、素子出力側に鞍状の方向変換領域を追加したものである。図示の構成では、低屈折率コア482上にグレーディング領域486を配設してもよく、光学素子480の最上部又は外側に高屈折率層484を有する。
【0064】
方向変換部474、476の低屈折率コア482及びグレーディング領域486は、高屈折率層484側である上側又は外側に湾曲した反射面を有する。即ち、光学素子480が棒状素子を構成するように、高屈折率層484の下面は、光学素子480の縦軸から離れる方向に湾曲した凹面を構成している。また、光学素子480が平面状素子を構成するように、高屈折率層484は、縦軸から離れる方向に湾曲した円筒面を構成していてもよい。
【0065】
図36に示す本発明の更に別の態様において、光学素子500は、収束型光子ビーム470の方向を変えてコリメートな出力光子ビーム492を生成するように構成されている。この光学素子500は方向変換部502を備え、そのコア504には低屈折率材料を含む。この低屈折率材料は、コア層220又は棒状コア320のような形状であってもよい。また、最上層即ち外側層506には、高屈折率材料が含まれる。
【0066】
図37に示す本発明の更に別の態様において、光学素子510は、本質的にコリメートな光子ビーム494の方向を変えて発散型の出力光子ビーム496を生成するように構成されている。この光学素子510は方向変換部518を備え、そのコア512が低屈折率層を構成し、最上層即ち外側層が高屈折率層514を構成している。方向変換部518の低屈折率層512及び中間のグレーディング層は、光学素子510の高屈折率層514側である上側に湾曲した反射面を有する。
【0067】
図38に示す本発明の更に別の態様において、光学素子520は、収束型光子ビーム470の方向を変えて焦点534を有する別の収束型出力光子ビーム532を生成するように構成されている。この光学素子520は、高屈折率層522及び最上部即ち外側の低屈折率層524を備えている。低屈折率層524及び中間のグレーディング層526は、高屈折率層522側である下側に湾曲した反射面526−1、526−2、526−3を構成している。この光学素子520は、例えば焦点534の位置調節に使用可能である。また、焦点534のサイズ調節にも使用可能である。
【0068】
光学素子520の別の態様において、図39に示す光学素子540は、収束型光子ビーム470の方向を変えて、焦点534よりも素子からの距離が短い焦点538を有する更に収束型の出力光子ビーム536を生成するように構成されている。この光学素子540は、高屈折率層542と、光学素子520の中間グレーディング領域526よりも曲率が大きな反射面を有する中間のグレーディング領域544を囲う低屈折率層546とを備えている。あるいは、当業者には当然のことながら、光学素子540は、反射面526−1、526−2、526−3よりも曲率が大きな反射面544−1、544−2、544−3を備えることによって、焦点538の焦点距離が相対的に短くなるようにしてもよい。
【0069】
ここで、図40には、更に別の多層材料スタック570の一実施例を示しており、図中、多層領域572−1、572−2で表される複数の多層領域を備えている。これら多層領域のうちの1又は複数においては、高い実屈折率n1の材料で作製された高屈折率層574と低い実屈折率n2の材料で作製された低屈折率層576との間に配設された高反射性グレーディング領域580をそれぞれ備えていてもよい。この高反射性グレーディング領域580は、実屈折率n3及び吸収係数β3を有する第1のグレーディング層582と、実屈折率n4及び吸収係数β4を有する第2のグレーディング層584と、実屈折率n5及び吸収係数β5を有する第3のグレーディング層586とを備えている。一実施形態においては、n1>n3>n4>n5>n2及びβ1<β3<β4<β5<β2の関係が成り立つ。また、高反射性グレーディング領域580は、第1グレーディング層582と第2グレーディング層584との間に配設され、高い実屈折率n6の材料を含む第1の高屈折率グレーディング層592と、第2グレーディング層584と第3グレーディング層586との間に配設され、高い実屈折率n7の材料を含む第2の高屈折率グレーディング層594とを備え、n6>n3及びn7>n4の関係が成り立っている。一実施形態においては、最適な全反射を可能とするため、β3>β6及びβ4>β7の関係が成り立つ。
【0070】
当然のことながら、第1高屈折率グレーディング層592及び第2高屈折率グレーディング層594を構成する高屈折率材料は、高屈折率層574と同じ材料を含んでいてもよいし、異なる高屈折率材料であってもよい。この多層材料スタック570の構成によれば、高い実屈折率の材料層(即ち、光子吸収が相対的に低い領域)が高反射性グレーディング領域580内に配設されているため、全反射率が高くなる。この構成は、例えば図2、図3、図7、図9、及び図32〜図39に示した断面を有する実施形態に適用して、1つおきのグレーディング層を効果的に伝播層とすることにより、各光学素子の開口領域を大きくすることができる。
【0071】
次に、図41には、別の多層材料スタック600の一実施例を示しており、多層領域602−1、602−2で例示される複数の多層領域を備えている。これら多層領域のうちの1又は複数においては、グレーディング層604−1、604−3、及び複合グレーディング層604−2を含むグレーディング領域604を備えている。グレーディング層604−1は、固有の実屈折率n3及び吸収係数β3を有する第1の構成材料M1を含み、グレーディング層604−3は、固有の実屈折率n5及び吸収係数β5を有する第2の構成材料M2を含む。図示の実施例では、右側の詳細図に示すように、複合グレーディング層604−2が4つのグレーディング副層612〜618を備えている。
【0072】
図示の実施例の場合、4つの各グレーディング副層612〜618は、グレーディング層604−1とグレーディング層604−3との間で光学特性が単調な段階的遷移となるように、第1構成材料M1及び第2構成材料M2の両者が異なる組成物を含む。例えば、グレーディング副層612は、体積比およそ0.8の第1構成材料M1及び体積比およそ0.2の第2構成材料M2の混合物を含んでいてもよい。即ち、グレーディング副層612における第1構成材料M1の第2構成材料M2に対する割合は、体積比でおよそ4:1である。同様に、グレーディング副層614は、およそ0.6の第1構成材料M1及びおよそ0.4の第2構成材料M2を含んでいてもよい。また、グレーディング副層616は、およそ0.4の第1構成材料M1及びおよそ0.6の第2構成材料M2を含んでいてもよい。更に、グレーディング副層618は、およそ0.2の第1構成材料M1及びおよそ0.8の第2構成材料M2を含んでいてもよい。
【0073】
当然のことながら、各多層領域602−1、602−2は、2つ以上の複合グレーディング層を備えていてもよい。また、当然のことながら、1つの複合グレーディング層に2つ以上のグレーディング副層が含まれていてもよいし、各グレーディング副層における2つのグレーディング層構成材料の混合比は、上記例と異なる割合であってもよい。更に、当然のことながら、このような組成の段階的な変化は、高屈折率層及び低屈折率層に適用してもよいし、グレーディング層に限定される必要はない。一般的に、構成材料MAを含む層A及び構成材料MBを含む層Bを所与とすると、複合層Cは、層Aと層B間に作製するとともに、複数の副層C1、C2、・・・CNを含んでいてもよい。各副層C1、C2、・・・CNにおける層構成材料MAの割合は、層Aと層B間の連続する副層C1、C2、・・・CNにおいて減少するのが好ましい。また、層構成材料MBの割合は、層Aと層B間の連続する副層C1、C2、・・・CNにおいて増加するのが好ましい。
【0074】
図42には、多層材料スタック600の別の実施例である多層材料スタック620を示している。多層材料スタック620は、多層領域622−1及び多層領域622−2から第Nの多層領域(不図示)を含む複数の多層領域を備えている。これら多層領域のうちの1又は複数においては、複合グレーディング層624−2を含むグレーディング領域624を備えていてもよい。複合グレーディング層624−2は、第1の構成材料M1及び第2の構成材料M2の混合物を含む。第1構成材料M1及び第2構成材料M2は、複合グレーディング層624−2において異なるレベルで被着されているが、その割合は、低屈折率層626又は高屈折率層(不図示)からの距離zの関数として規定してもよい。例えば、複合グレーディング層624−2の任意の点における構成材料M1、M2の相対的な割合を、以下のようにパラメータzの関数として表すことができる。
【0075】
複合材料=f(z)M1+[1−f(z)]M2 (13)
ここで、f(z)は、構成材料M1、M2の構成比を指定する例えば線形関数、多項式関数、又は対数単調関数であってもよい。単調関数であれば、隣接する2つのグレーディング層624−1、624−3間における構成材料M1、M2の相対的な割合の組成変化が滑らかになる。
【0076】
当業者には当然のことながら、上記光学素子200、210、230、260、270、330、340、360、370、380、390のいずれも、上記多層領域構成の1又は複数を備えていてもよい。更に、各光学素子の中心層即ちコア層が高屈折率材料又は低屈折率材料のいずれかを含み、光学素子の外層が低屈折率材料又は高屈折率材料のいずれかを含んでいてもよい。更に、当然のことながら、本明細書に開示の様々なコア構成及び光学素子の実施形態においては、円形状断面又は平面状断面を有していたが、本発明の要旨を逸脱することなく、任意のコア形状及び光学素子構成を用いて、UV線、X線、又はガンマ線ビーム放射の方向変換を行うようにしてもよい。
【0077】
実施例を参照しながら本発明を記述したが、当業者には明らかなように、本発明の範囲から逸脱することなく、実施例に様々な改変を加えたり実施例の要素を等価物で置換したりできる。また、本発明の範囲から逸脱することなく、個々の状況に合わせて、本発明の教示に多くの修正を加えることができる。従って、本発明は、開示した発明を実施するための形態に限定されることなく、対象となる請求項の範囲内にあるあらゆる実施形態を包含する。更に、「第1」「第2」等の用語の使用は、重要度の順序を示すものではなく、或る要素を他の要素と区別するために用いられている。また、「少なくとも1つ」という表現の使用は、或る要素群のうちの1つ又は複数であることを意味する。
【0078】
本明細書では、例を用いて本発明を記述しているが、これによって当業者は、任意の装置又はシステムの作製、並びに任意の付随の方法の実施を含め、本発明を実施することができる。本発明の特許請求の範囲は、請求項に定義されているが、当業者に想到可能なその他の例も包含し得る。こうしたその他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を有する場合、或いは請求項の文言と実質的に相違ない等価の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全反射により光子の方向を変えて伝播させる第1の多層領域であって、
第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料層と、
第2の実屈折率n2及び第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料層と、
前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との間に配設され、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3をn1>n3>n2の関係で有するグレーディング層を備えたグレーディング領域と、
を含む第1多層領域を備えたことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
値(n1−n2)、(n1−n3)、及び(n3−n2)の少なくとも1つが最大であることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
β2>β3>β1の関係が成り立つことを特徴とする、請求項2に記載の光学素子。
【請求項4】
値(β2−β1)、(β2−β3)、及び(β3−β1)の少なくとも1つが最小であることを特徴とする、請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光子が10eV超のエネルギーを有することを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
前記グレーディング領域が、第4の実屈折率n4を有する材料により構成された第2のグレーディング層と、第5の実屈折率n5を有する材料により構成された第3のグレーディング層とを更に備え、n5>n3及びn5>n4の関係が成り立つとともに、当該第3グレーディング層が前記第1グレーディング層と当該第2グレーディング層との間に配設されたことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第2グレーディング層が第4の吸収係数β4を有し、前記第3グレーディング層が第5の吸収係数β5を有し、β3>β5及びβ4>β5の関係が成り立つことを特徴とする、請求項6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記高屈折率材料層がコアを備え、当該コアが曲線断面及び多角形断面のいずれかを有する円筒部を含み、前記グレーディング領域が当該高屈折率材料層の少なくとも一部を覆うように構成され、前記低屈折率材料層が当該グレーディング領域の少なくとも一部を覆うように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
前記第1多層領域の少なくとも一部を囲うように構成された第2多層領域を更に備えたことを特徴とする、請求項8に記載の光学素子。
【請求項10】
前記低屈折率材料層の少なくとも一部が、凸面、凹面、及び鞍状面の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の光学素子。
【請求項11】
前記低屈折率材料層が曲線断面及び多角形断面のいずれかを有する円筒コアを備え、前記グレーディング領域が当該低屈折率材料層の少なくとも一部を囲うように構成され、前記高屈折率材料層が当該グレーディング領域の少なくとも一部を囲うように構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項12】
前記高屈折率材料層が平面形状を含み、前記グレーディング領域が当該高屈折率材料層の第1の表面に被着され、前記低屈折率材料層が当該グレーディング領域に被着されたことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項13】
光子を受ける入力面及び光子を伝播させる出力面を更に備え、当該入力面及び出力面のいずれかの少なくとも一部がアーチ形状であることを特徴とする、請求項12に記載の光学素子。
【請求項14】
前記グレーディング領域が前記平面形状の少なくとも一表面にも被着されたことを特徴とする、請求項12に記載の光学素子。
【請求項15】
前記高屈折率材料層、前記グレーディング領域、及び前記低屈折率材料層のいずれかの少なくとも一部が円筒面を含むことを特徴とする、請求項14に記載の光学素子。
【請求項16】
前記円筒面が、光学素子の縦軸に沿って凸状の曲率及び凹状の曲率のいずれかを有することを特徴とする、請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
入力を受ける入力面を更に備え、当該入力面の少なくとも一部が平面、歪曲面、凸面、凹面、及び複雑曲面のいずれかを有することを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項18】
前記低屈折率材料層が平面形状を含み、前記グレーディング領域が当該平面形状の少なくとも1つの表面に被着され、前記高屈折率材料層が当該グレーディング領域の少なくとも一部に被着されたことを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項19】
前記グレーディング領域が複数のグレーディング副層を有する第2のグレーディング層を更に備え、当該各グレーディング副層が第1の構成材料及び第2の構成材料を含み、当該第1構成材料が第4の実屈折率n4及び第4の吸収係数β4を有し、当該第2構成材料が第5の実屈折率n5及び第5の吸収係数β5を有することを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項20】
前記第4実屈折率n4が前記第5実屈折率n5以上であり、前記第5吸収係数β5が前記第4吸収係数β4以上であることを特徴とする、請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
前記各屈折率材料層又はグレーディング副層が、隣接する屈折率材料層又はグレーディング副層における前記第1構成材料及び前記第2構成材料の体積組成比と異なる体積組成比で当該第1構成材料及び当該第2構成材料の組成物を含むことを特徴とする、請求項19に記載の光学素子。
【請求項22】
前記グレーディング領域が、体積比f(z)の第1の構成材料M1及び体積比[1−f(z)]の第2の構成材料M2の組成物を含む第2のグレーディング層を更に備え、当該第1構成材料M1が第4の実屈折率n4及び第4の吸収係数β4を有し、当該第2構成材料M2が第5の実屈折率n5及び第5の吸収係数β5を有し、当該組成物がf(z)M1+[1−f(z)]M2で与えられることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
【請求項23】
前記関数f(z)が線形関数、多項式関数、又は対数単調関数を含むことを特徴とする、請求項22に記載の光学素子。
【請求項24】
全反射により光子の方向を変えて伝播させる第1の方向変換部を構成する1又は複数の多層領域であって、
第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料と第2の実屈折率n2及び第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料のいずれかにより構成されたコアと、
前記コアに被着され、第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3をn1>n3>n2の関係で有するグレーディング層を備えたグレーディング領域と、
前記グレーディング領域に被着され、前記高屈折率材料及び前記低屈折率材料の他方により構成された外層と、
を含む各多層領域を備えたことを特徴とする光学素子。
【請求項25】
前記多層領域のいずれかの少なくとも一部が、平面、円筒面、凸面、凹面、及び鞍状面のいずれかを含むことを特徴とする、請求項24に記載の光学素子。
【請求項26】
値(n1−n2)、(n1−n3)、及び(n3−n2)の少なくとも1つが最大であることを特徴とする、請求項24に記載の光学素子。
【請求項27】
β2>β3>β1の関係が成り立つことを特徴とする、請求項26に記載の光学素子。
【請求項28】
値(β2−β1)、(β2−β3)、及び(β3−β1)の少なくとも1つが最小であることを特徴とする、請求項27に記載の光学素子。
【請求項29】
前記第1方向変換部を形成した伝播部を更に備え、当該第1方向変換部の入力面に入射した光子ビームが当該伝播部から出力されることを特徴とする、請求項24に記載の光学素子。
【請求項30】
前記伝播部が円筒形状及び平面形状のいずれかを含むことを特徴とする、請求項29に記載の光学素子。
【請求項31】
前記伝播部を形成した第2の方向変換部を更に備え、前記第1方向変換部の入力面に入射した光子ビームが当該第2方向変換部から出力されることを特徴とする、請求項24に記載の光学素子。
【請求項32】
前記第2方向変換部の一部が円筒面、凸面、凹面、複数の平面部分から成る組、及び鞍状面のいずれかを含むことを特徴とする、請求項31に記載の光学素子。
【請求項33】
第1の実屈折率n1及び第1の吸収係数β1を有する高屈折率材料層を形成する工程と、
前記第1実屈折率n1より小さな第2の実屈折率n2及び前記第1吸収係数β1より大きな第2の吸収係数β2を有する低屈折率材料層を形成する工程と、
第3の実屈折率n3及び第3の吸収係数β3を有するグレーディング材料を含むグレーディング領域を、n1>n3>n2の関係が成り立つとともに、前記高屈折率材料層及び前記低屈折率材料層が全反射により光子の方向を変えて伝播させるように、両屈折率材料層間に形成する工程と、
を含む光学素子の製造方法。
【請求項34】
隣接層間の実屈折率の差異が最大化されていることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
β2>β3>β1の関係が成り立つことを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
隣接層間の吸収係数の差異が最小化されていることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記グレーディング領域が複数のグレーディング副層を備え、当該副層の少なくとも1つが、n1>n4>n2の関係を満たす第4の実屈折率n4及びβ2>β4>β1の関係を満たす第4の吸収係数β4を有する第1の構成グレーディング材料と、n1>n5>n2の関係を満たす第5の実屈折率n5及び第5の吸収係数β5を有する第2の構成グレーディング材料との比例混合物により構成されたことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
第1のグレーディング副層における前記第1構成グレーディング材料と前記第2構成グレーディング材料との比例混合物が、別のグレーディング副層における当該第1構成グレーディング材料と当該第2構成グレーディング材料との比例混合物とは異なることを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記グレーディング領域を形成する工程が、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との間にグレーディング層を被着させる工程を更に含み、当該グレーディング層が、隣接する如何なるグレーディング層よりも大きな屈折率及び隣接する如何なるグレーディング層よりも小さな吸収係数を有する材料により構成されたことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記形成工程が、気相堆積、サーマルジェット噴霧堆積、超音波ジェット噴霧堆積、及び化学メッキの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2012−527649(P2012−527649A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511831(P2012−511831)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/028575
【国際公開番号】WO2010/135024
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】