説明

杖およびコミュニケーション方法

【課題】杖に取り付けた加速度センサ情報に基づいて、高齢者の日々の暮らしを見守るとともに杖を動かす事によって合図式コミュニケーションを取る。
【解決手段】杖10に、2軸を有する加速度センサ、例えば少なくとも杖の軸方向(X)に作用する重力に相当する信号と、杖の軸に直交する方向(Y)に作用する重力に相当する信号とを出力する加速度センサを有したセンサモジュール11と、前記センサモジュール11のセンサ出力に基づいて、杖10の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析モジュール13と、前記センサ解析モジュール13の解析結果を、通信可能範囲内に設けられた、表示モジュール23を有する見守りPC20に送信する無線通信機能モジュール15とを設け、見守りPC20の通信機能モジュール21により受信した前記解析結果を表示モジュール23により表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者が日常使用する杖を利用したコミュニケーションシステムに係り、杖およびコミュニケーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化が急速に進み、高齢者に対するサービスが盛んに登場している。高齢者向けのサービスとしては、要介護者向けのサービスが一般的には考えられている。しかし、高齢者と言っても、食生活の充実や医療技術の発展等によって、健康な人達は多くなっており、その人達が充実した生活を送るためのサポートするサービスも必要となっている。
【0003】
ただ、健康であるとはいえ、高齢者の場合には、ちょっとした事が大きな問題を引き起こすこともあり、特に、足腰が弱く杖を利用している高齢者にとって、小さな事故を起こさないように、あるいは、起きた時に迅速に対応することが大切である。そのような背景の中、見守りサービスが注目を浴びている。
【0004】
特に、お互いに負担をかけることなく、インターネットを利用して離れた家族を見守るサービスは、例えば下記非特許文献1、2および特許文献1に記載のものが提案されている。
【非特許文献1】見守りホットライン、象印マホービン株式会社 URL:http://www.mimamori.net/ 最終アクセス日:2008年2月14日
【非特許文献2】見守り&トラッキング、株式会社ユビテック URL:http://www.ubiteq.co.jp/products/tracking.html 最終アクセス日:2008年2月14日
【特許文献1】特開2006−85609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1には、日常的に利用するポットの使用状況を離れた家族に伝える事により、お互いに負担の少ない見守りサービスが提案されている。また非特許文献2には、GPS付き携帯電話を利用して、屋内外を問わず高齢者の居場所を事前に登録した相手に伝えるサービスが提案されている。また特許文献1には、高齢者見守りシステムとして、杖に加速度センサや傾斜センサを取り付けることによって、高齢者の異常を検知するシステムが提案されている。
【0006】
上記のように、高齢者見守り手段を固定して利用するような物に取り付ける場合には、その周辺にいる時にのみ有効で、利用場所が限定されてしまう。しかし、杖を利用している高齢者といえども行動範囲は広く、家の中だけや施設の中でのサービスでは限界がある。
【0007】
また、高齢者を屋外で見守るようなシステムでも、異常の場合のみ送るサービスが多い。このために、見守り側がその情報を日常的に見る訳ではないために、実際の緊急事態には情報の見方がわからないと言った問題が起きる。
【0008】
特に、健康な高齢者にとって危険な状態は日々起きる事は少ない。見守られる側も日常的に見守る事に興味を持てるようなコミュニケーション機能が必要である。一方で、GPSのように行動を常に把握されるようなシステムではプライバシーの観点から抵抗感が強くなる。
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、高齢者が日常的に持って行動する杖に着目し、杖に取り付けた加速度センサ情報に基づいて、高齢者の日々の暮らしの見守りと杖を動かす事によって合図式コミュニケーションを取る、杖およびコミュニケーション方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1記載の杖は、杖に設けられ、2軸を有する加速度センサと、前記加速度センサのセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、前記センサ解析手段の解析結果を、通信可能範囲内に設けられた、表示手段を有する見守り装置に送信する無線通信手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また請求項2記載の杖は、請求項1において、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0012】
また請求項3に記載の杖は、杖に設けられ、2軸を有する加速度センサと、前記加速度センサのセンサ出力を、該センサ出力に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、前記センサ解析手段の解析結果を表示する表示手段とを有し、通信可能範囲内に設けられた見守り装置に送信する無線通信手段と、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
また請求項4記載の杖は、請求項1ないし3のいずれか1項において、杖の利用者の状態および利用者が行う合図と、杖に設けられた加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報を記憶する記憶手段を有し、前記解析手段は、前記加速度センサのセンサ出力と前記記憶手段に記憶されているセンサ出力パターンとを比較し、該比較結果に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を判別することを特徴としている。
【0014】
また請求項5記載の杖は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記センサ解析手段により解析されたデータを蓄積する解析結果データベースを備え、前記見守り装置の表示手段は、杖の利用者の状態および利用者が行う合図をグラフ化して表示する機能を有し、前記解析結果データベースに蓄積されたデータに基づいて表示を行うことを特徴としている。
【0015】
また、請求項6記載のコミュニケーション方法は、杖に設けられた加速度センサが、静的加速度と動的加速度に相当する信号を検出する検出ステップと、センサ解析手段が、前記検出ステップにより検出されたセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析ステップと、無線通信手段が、前記センサ解析ステップにより解析された解析結果を、通信可能範囲内に設けられた、表示手段を有する見守り装置に送信する無線通信ステップと、見守り装置の表示手段が、前記無線通信ステップにより送信された前記解析結果を表示する表示ステップとを備えたことを特徴としている。
【0016】
また請求項7記載のコミュニケーション方法は、請求項6において、杖に設けられた情報伝達手段が、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達ステップをさらに備えたことを特徴としている。
【0017】
また請求項8に記載のコミュニケーション方法は、杖に設けられた加速度センサが、静的加速度と動的加速度に相当する信号を検出する検出ステップと、杖に設けられた無線通信手段が、前記検出ステップにより検出されたセンサ出力を、該センサ出力に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、前記センサ解析手段の解析結果を表示する表示手段とを有し、通信可能範囲内に設けられた見守り装置に送信する無線通信ステップと、杖に設けられた情報伝達手段が、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達ステップと、見守り装置に設けられたセンサ解析手段が、前記無線通信ステップにより送信された加速度センサのセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析ステップと、見守り装置に設けられた表示手段が、前記センサ解析ステップにより解析された解析結果を表示する表示ステップとを備えたことを特徴としている。
【0018】
また請求項9記載のコミュニケーション方法は、請求項6ないし8のいずれか1項において、前記センサ解析ステップは、杖の利用者の状態および利用者が行う合図と、杖に設けられた加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報を記憶した記憶手段の情報を参照し、該参照したセンサ出力パターンと前記検出ステップにより検出された加速度センサのセンサ出力とを比較し、該比較結果に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を判別することを特徴としている。
【0019】
また請求項10記載のコミュニケーション方法は、請求項6ないし9のいずれか1項において、解析結果データベースが、前記センサ解析ステップにより解析されたデータを蓄積するデータ蓄積ステップをさらに備え、前記表示ステップは、前記データ蓄積ステップにより蓄積されたデータに基づいて表示を行うことを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、日常的に杖を利用する高齢者を対象として、杖の動きによってその状態を検知し、見守る者にその情報を伝えるサービスを実現するシステムを構築することができる。すなわち、杖に取り付けた加速度センサ情報を解析することによって、杖を持って移動している人がどのような状態にいるのか検出し、その検出結果を遠隔地にいる見守る者に伝える杖による見守りシステムである。
【0021】
また、杖を持っている人がコミュニケーションを取りたい場合には、杖を特徴的に動かす事によって、通常の杖の動作とは異なる動きを加速度センサ情報より検出し、見守る側へその動かし方に関連した合図を送る事によって、コミュニケーションを取る事が可能となる。また、見守る側は、高齢者の合図を確認することや、こちらからも合図を送る事によって、日常的に気軽にコミュニケーションを取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
(1)請求項1〜10に記載の発明によれば、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を容易に解析し、見守り装置側で表示することができる。このため杖の利用者と見守り装置側とでコミュニケーションをとることができる。
(2)請求項2〜5、7〜10に記載の発明によれば、情報伝達手段によって、杖と見守り装置との間で情報、例えばマイク、スピーカによる音声、LED(発光ダイオード)による光およびバイブレータによる振動等の情報を授受することができ、これによってコミュニケーション機能が向上する。
(3)請求項4、9に記載の発明によれば、加速度センサのセンサ出力と記憶手段に記憶されているセンサ出力パターンを比較するので、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を確実に判別することができる。
(4)請求項5、10に記載の発明によれば、解析結果データベースに蓄積されたデータに基づいて表示を行うので、特定の期間や過去における杖の利用者の状態および利用者が行う合図等も容易に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。
【0024】
図1は本発明を適用した杖による合図式コミュニケーションシステムの一例である。図1において、杖10には、動きを検知するために2軸以上を取得する事が可能な加速度センサであり、静的加速度と動的加速度に相当する信号を出力する加速度センサを持つセンサモジュール11が取り付けられている。この加速度センサは、少なくとも杖10の軸方向Xに作用する重力に相当する信号と、杖10の軸に直交する方向Yに作用する重力に相当する信号とを出力する。
【0025】
12は、杖10に設けられ、前記センサモジュール11により取得した加速度センサ情報を保存するセンサ情報データベースである。
【0026】
13は、杖10に設けられ、センサ情報データベース12に保存された加速度センサ情報に基づいて、杖10の利用者の状態および利用者が行う合図を解析する、センサ解析手段としてのセンサ解析モジュールである。
【0027】
尚このセンサ解析モジュール13は、例えば、杖10の利用者の状態および利用者が行う合図と、加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報が格納された図示省略のメモリ(記憶手段)を有し、前記加速度センサ情報とメモリ内のセンサ出力パターンとを比較することにより前記解析を行う。
【0028】
14は、杖10に設けられ、センサ解析モジュール13により解析されたデータを蓄積する解析結果データベースである。
【0029】
15は、杖10に設けられ、前記解析結果(センサ解析モジュール13の出力又は解析結果データベース14のデータ)を見守りPC(パーソナルコンピュータ)20へ送信する無線通信機能モジュールである。
【0030】
見守りPC20は、杖10の無線通信機能モジュール15と通信可能な範囲内に設置され、該無線通信機能モジュール15と通信を行う通信機能モジュール21と、通信機能モジュール21を介して送信された前記加速度センサ情報の解析結果を保持する解析結果データベース22と、該解析結果データベース22に保持された解析結果をディスプレイ等に表示する表示モジュール(表示手段)23とを備えている。
【0031】
図2は杖10の他の実施例の構成を示しており、図1と同一部分は同一符号をもって示している。図2では、杖10に、マイク、スピーカ、LED、バイブレータ等の機能を有した情報伝達モジュール(情報伝達手段)16をさらに設け、コミュニケーション機能を高めている。
【0032】
尚図2のように情報伝達モジュール16を設けた実施例の場合、見守りPC20には、該見守りPC20側から合図や連絡を送るための情報伝達手段(例えば図示省略のボタン等)が設けられる。
【0033】
また、杖10の利用者が、常に無線通信状態の良好なエリアに居る場合は全てのセンサ情報を見守りPC20に送ることが可能であるため、例えば図3に示すように、見守りPC20側で前記加速度センサ情報を解析するように構成してもよい。
【0034】
図3において図1、図2と同一部分は同一符号をもって示している。図3において図1と異なる点は、杖10に設けていた前記センサ情報データベース12およびセンサ解析モジュール13を見守りPC20に設けた点にある。
【0035】
したがって、杖10の無線通信機能モジュール15はセンサモジュール11の加速度センサ情報を見守りPC20に送信し、見守りPC20側では通信機能モジュール21により受信した前記加速度センサ情報をセンサ情報データベース12に保存し、該保存された加速度センサ情報に基づいてセンサ解析モジュール13が前記解析を行い、その解析結果を解析結果データベース22に保存するように構成している。
【0036】
図1〜図3のように構成されたシステムにおいて、杖10と見守りPC20間の無線通信は、無線LAN、特定省電力無線、微弱無線、BLUETOOTH(登録商標)などが利用できる。無線通信距離に応じて、受信機(見守りPC20)が必要になるが、通信距離が数kmのものを利用すれば、都会であれば、駅毎に受信機を置くことにより広範囲をカバーすることができる。
【0037】
また、BLUETOOTH(登録商標)のような比較的通信距離の短いものでも、BLUETOOTH(登録商標)対応の携帯電話を利用することによって、携帯電話を通して広域網に情報を伝達する。伝達する情報としては、杖10を持つ人を特定するためのID情報と共に現在のステータス情報を送信する。また、情報伝達モジュール16を設けてコミュニケーション機能を高めた場合(図2、図3)には、音声での通話も可能となる。
【0038】
センサモジュール11では、50Hz以上の間隔で2軸以上の加速度をセンシングする。1軸は杖10を立てた鉛直方向(X方向)に、もう1軸は杖10に直交する方向(Y方向)になるように取り付ける。そのセンシング情報をセンサ情報データベース12にて保存する。保存するデータは、杖10を持っている人を特定するためのID情報、センシングされた時刻情報、加速度センサ情報である。センサ情報データベース12は、数十秒分のデータを貯めるだけの容量が最低必要である。容量が一杯になった場合には、古いデータから順次新しいデータに書換えられる。
【0039】
センサ解析モジュール13では、α秒毎(α>0)にセンサ情報データベース12上の情報の過去β秒毎(β>10)のデータ(図4〜図6のセンサ出力波形データ)から、特徴的な動きを抽出する事によって、普段の歩いている行動なのか、合図を送ろうとしている状態なのか、静止している状態なのかを推測する。
【0040】
判別方法は、例えば、歩いている場合には、図4に示すように、垂直方向のXに重力(1G)がかかっている状態において、XaG(0.5>Xa>0.1)変化があった時に同時に、杖10の進行方向のYにYaG(0.5>=Ya>Xa)以上の変化があった場合で、かつ、2秒以内にXがXbG(Xb>2)以上になった時が1歩分であり、これがβ秒間に連続して起きていれば歩いている状態である。
【0041】
合図を送る場合には、通常使用では余りしないような特徴的な動かし方を複数回行う。その特徴的な動きを判別する事によって、どのような合図を送ったのかを推測する。例えば、杖10を縦向き、横向きをk回(k>2)以上繰り返すことによって気分が良い状態という合図と定義する。この時には、図5に示すように、XとYの値の比較において、X>Yの状態がTa秒間(3>Ta>0.5)続いた後に、Y>Xの状態がTa秒間(3>Ta>0.5)続くという状態がβ秒間にk回以上続く状態の時に合図の信号となる。
【0042】
また、横向きにした杖をt回(t>2)上下した場合には、連絡が欲しいという合図と定義する。この場合には、図6に示すように、Y>Xの状態において、Tb秒間(3>Tb>0.5)の最大値、最小値の差がXはXc(0.5>Xc)以内であり、YはYc(Yc>0.5)以上の状態がβ秒間にt回以上続く状態の時に合図の信号となる。また、kやtの回数によって、その度合いを表す事も可能である。
【0043】
杖10を縦横にする場合には、重力1Gがかかる軸が変わるので、1G辺りを取る軸が、例えば、X軸、Y軸と交互に変わる(図5)。また、横向きにした杖を上下すると、横向きにした状態で重力がかかるY軸が連続的に大きく変化する(図6)。
【0044】
また、この他にも杖を投げるや回転させるといった行動と合図とを関連させることも可能である。更に、上記以外にもβ秒間に加速度が一定以上反応していない場合には静止状態、一定以上反応している場合には運動状態とする。
【0045】
したがって、センサ解析モジュール13のメモリ(図示省略)に、前述した杖10の利用者の各状態や合図と、加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報を予め格納しておき、センサ情報データベース12に保存したセンサ情報とメモリ内のセンサ出力パターンとを比較することで解析が実行される。
【0046】
以上のような解析結果を、解析結果データベース14にID情報、対象データの開始時刻とともに保存する。また、その情報は無線通信機能モジュール15を通して、見守りPC20へと送信する。
【0047】
受信者側の見守りPC20では、送られてきた情報に基づいて、それに関連したアニメーションを表示する。例えば、歩いている状態、止まっている状態、活動状態をそれぞれに合わせたアニメーション画像をPC(表示モジュール23)の画面上に表示する。また、特定の合図が送られてきた場合には、PCの画面で知らせるだけでなく、音声でも知らせる(PCの機能により音声出力させる)。合図は一時的な表示ではなく、例えば数分以上に表示させる。また、必要に応じて過去の状態を表示させる事も可能である。1日毎に表示させる事によって、日々の暮らしを見守る事が可能となる。
【0048】
すなわち例えば図7に示すように、見守りPC20側では、解析結果に基づいて、単位時間あたりに歩いていた時間の合計と、歩いていなかった状態で杖10が静止していなかった時間を積算して、棒グラフ化し、日々の杖の使用状況を確認する。また、合図が送られてきた時間には、グラフ上のその時間の位置に目印(図7の白丸印、黒丸印)を表示する。これらの杖10の使用状態や合図のタイミングによって、高齢者の一日の行動状態の違いを比較することができる。
【0049】
また、朝起きた時やご飯を食べる時に合図を送るように決めておけば、その合図がなかった時にのみ連絡を取ることにするなど、簡単な合図だけでも有効なコミュニケーションになる。また杖10に情報伝達モジュール16を設けている場合(図2、図3)には、見守りPC20側からも合図や連絡を送る事ができる。
【0050】
例えば、情報伝達手段として構成されたPC上の決められたボタン(図示省略)を押す事によって、杖10の情報伝達モジュール16内のLEDを例えば数分間光らせる事が可能となる。また、PC上の音声連絡用のボタン(図示省略)を押す事によって、杖10の情報伝達モジュール16内のスピーカーやマイクを利用する事が可能になり、杖10を持っている人と連絡を取ることも可能となる。
【0051】
以上の機能は杖に限らず、コミュニケーション棒として利用することによって、杖をあまり使わない室内環境等や杖を使わない人達でも利用する事は可能である。
【0052】
本発明のコミュニケーション方法は、例えば前記図1〜図3のシステムで述べた動作を実行するものであり、図1のシステムに適用した場合の処理の手順を以下に述べる。
【0053】
(1−1)まず杖10に設けられたセンサモジュール11が前記2軸の加速度を検出する。
【0054】
(1−2)次に前記センサ出力がセンサ情報データベース12に格納される。
【0055】
(1−3)次にセンサ解析モジュール13がセンサ情報データベース12のセンサ出力と、メモリ(図示省略)内の前述したセンサ出力パターンとを比較して解析を行う。
【0056】
(1−4)次に前記解析結果が解析結果データベース14に格納される。
【0057】
(1−5)次に無線通信機能モジュール15が、解析結果データベース14又はセンサ解析モジュール13の解析結果を見守りPC20に送信する。
【0058】
(1−6)次に見守りPC20の通信機能モジュール21が、前記送信された解析結果を受信する。
【0059】
(1−7)次に前記受信された解析結果が解析結果データベース22に保存される。
【0060】
(1−8)次に表示モジュール23が、解析結果データベース22内の解析結果を表示する。
【0061】
また本発明のコミュニケーション方法を図2のシステムに適用した場合は、前記(1−1)〜(1−8)の処理の他に、さらに、
(2−1)情報伝達モジュール16が、見守りPC20との間で、例えばマイク、スピーカによる音声、LEDによる光、バイブレータによる振動等の情報の授受を行う処理が実行される。
【0062】
次に本発明のコミュニケーション方法を図3のシステムに適用した場合の処理の手順を述べる。
【0063】
(3−1)まず杖10に設けられたセンサモジュール11が前記2軸の加速度を検出する。
【0064】
(3−2)無線通信機能モジュール15が前記加速度センサ情報を見守りPC20に送信する。
【0065】
(3−3)情報伝達モジュール16は、随時、見守りPC20との間で、例えばマイク、スピーカによる音声、LEDによる光、バイブレータによる振動等の情報の授受を行う処理を実行する。
【0066】
(3−4)次に見守りPC20の通信機能モジュール21が、前記送信された加速度センサ情報(センサ出力)を受信する。
【0067】
(3−5)次に前記受信されたセンサ出力がセンサ情報データベース12に格納される。
【0068】
(3−6)次にセンサ解析モジュール13がセンサ情報データベース12のセンサ出力と、メモリ(図示省略)内の前述したセンサ出力パターンとを比較して解析を行う。
【0069】
(3−7)次に前記解析結果が解析結果データベース22に格納される。
【0070】
(3−8)次に表示モジュール23が、解析結果データベース22内の解析結果を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態例を示すシステム構成図。
【図2】本発明の他の実施形態例を示す杖の構成図。
【図3】本発明の他の実施形態例を示すシステム構成図。
【図4】本発明の実施形態例における通常歩行時の加速度センサの出力波形図。
【図5】本発明の実施形態例において、杖を縦向きと横向きとに繰り返した場合の加速度センサの出力波形図。
【図6】本発明の実施形態例において、横向きにした杖を上下に動かした場合の加速度センサの出力波形図。
【図7】本発明の実施形態例における表示手段の表示例を示す説明図。
【符号の説明】
【0072】
10…杖、11…センサモジュール、12…センサ情報データベース、13…センサ解析モジュール、14,22…解析結果データベース、15…無線通信機能モジュール、16…情報伝達モジュール、20…見守りPC、21…通信機能モジュール、23…表示モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杖に設けられ、2軸を有する加速度センサと、
前記加速度センサのセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、
前記センサ解析手段の解析結果を、通信可能範囲内に設けられた、表示手段を有する見守り装置に送信する無線通信手段と
を備えたことを特徴とする杖。
【請求項2】
前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項3】
杖に設けられ、2軸を有する加速度センサと、
前記加速度センサのセンサ出力を、該センサ出力に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、前記センサ解析手段の解析結果を表示する表示手段とを有し、通信可能範囲内に設けられた見守り装置に送信する無線通信手段と、
前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達手段と
を備えたことを特徴とする杖。
【請求項4】
杖の利用者の状態および利用者が行う合図と、杖に設けられた加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報を記憶する記憶手段を有し、
前記解析手段は、前記加速度センサのセンサ出力と前記記憶手段に記憶されているセンサ出力パターンとを比較し、該比較結果に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を判別することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の杖。
【請求項5】
前記センサ解析手段により解析されたデータを蓄積する解析結果データベースを備え、
前記見守り装置の表示手段は、杖の利用者の状態および利用者が行う合図をグラフ化して表示する機能を有し、前記解析結果データベースに蓄積されたデータに基づいて表示を行う
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の杖。
【請求項6】
杖に設けられた加速度センサが、静的加速度と動的加速度に相当する信号を検出する検出ステップと、
センサ解析手段が、前記検出ステップにより検出されたセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析ステップと、
無線通信手段が、前記センサ解析ステップにより解析された解析結果を、通信可能範囲内に設けられた、表示手段を有する見守り装置に送信する無線通信ステップと、
見守り装置の表示手段が、前記無線通信ステップにより送信された前記解析結果を表示する表示ステップと
を備えたことを特徴とするコミュニケーション方法。
【請求項7】
杖に設けられた情報伝達手段が、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載のコミュニケーション方法。
【請求項8】
杖に設けられた加速度センサが、静的加速度と動的加速度に相当する信号を検出する検出ステップと、
杖に設けられた無線通信手段が、前記検出ステップにより検出されたセンサ出力を、該センサ出力に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析手段と、前記センサ解析手段の解析結果を表示する表示手段とを有し、通信可能範囲内に設けられた見守り装置に送信する無線通信ステップと、
杖に設けられた情報伝達手段が、前記見守り装置との間で情報の授受を行う情報伝達ステップと、
見守り装置に設けられたセンサ解析手段が、前記無線通信ステップにより送信された加速度センサのセンサ出力に基づいて、杖の利用者の状態および利用者が行う合図を解析するセンサ解析ステップと、
見守り装置に設けられた表示手段が、前記センサ解析ステップにより解析された解析結果を表示する表示ステップと
を備えたことを特徴とするコミュニケーション方法。
【請求項9】
前記センサ解析ステップは、杖の利用者の状態および利用者が行う合図と、杖に設けられた加速度センサの出力を解析したセンサ出力パターンとを関連付けた情報を記憶した記憶手段の情報を参照し、該参照したセンサ出力パターンと前記検出ステップにより検出された加速度センサのセンサ出力とを比較し、該比較結果に基づいて杖の利用者の状態および利用者が行う合図を判別することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載のコミュニケーション方法。
【請求項10】
解析結果データベースが、前記センサ解析ステップにより解析されたデータを蓄積するデータ蓄積ステップをさらに備え、
前記表示ステップは、前記データ蓄積ステップにより蓄積されたデータに基づいて表示を行う
ことを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載のコミュニケーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−199319(P2009−199319A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40094(P2008−40094)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】