杭打装置
【課題】掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができるとともに、施工精度の向上を図ることができる杭打装置を提供する。
【解決手段】複数種の作業体を上下動可能に支持するためのリーダー24を、軸線L方向に沿って3つの部分に分割する。中間分割部24bをブーム23に支持するとともに、上方分割部24a及び下方分割部24cを中間分割部24bに対して軸線Lを中心に回転可能に支持する。上方分割部24aと下方分割部24cとの間には、複数種の作業体を軸線Lを中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線L方向に沿って移動可能に支持する。中間分割部24bには、上方分割部24a及び下方分割部24cを回転させて1つの作業体を使用位置Uに選択配置するための回転機構35A,35Bを設ける。中間分割部24bには、使用位置Uに選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するためのガイドレール43を設ける。
【解決手段】複数種の作業体を上下動可能に支持するためのリーダー24を、軸線L方向に沿って3つの部分に分割する。中間分割部24bをブーム23に支持するとともに、上方分割部24a及び下方分割部24cを中間分割部24bに対して軸線Lを中心に回転可能に支持する。上方分割部24aと下方分割部24cとの間には、複数種の作業体を軸線Lを中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線L方向に沿って移動可能に支持する。中間分割部24bには、上方分割部24a及び下方分割部24cを回転させて1つの作業体を使用位置Uに選択配置するための回転機構35A,35Bを設ける。中間分割部24bには、使用位置Uに選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するためのガイドレール43を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、地面に杭打用の縦穴を掘削して、その縦穴に杭を打ち込むために用いられる杭打装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の杭打装置としては、例えば図13〜図18に示すような構成が知られている。この従来構成においては、図13に示すように、下部車体71上に上部車体72が旋回可能に搭載されている。上部車体72上には伸縮可能なブーム73が立設され、そのブーム73の先端にはリーダー74が中間部において軸を介して垂直面内において上下方向にのみ回動可能に支持されている。リーダー74の下端部と上部車体72との間には、リーダー74を直立状態に保持するための保持体75が設けられている。
【0003】
そして、通常、リーダー74には以下の構成が搭載される。すなわち、図13及び図14に示すように、前記リーダー74の外周には、対をなす2組のガイドレール76,77がリーダー74の長さ方向に沿って延びるように、かつ180度離れた反対側に位置するように配置されている。一方の対のガイドレール76にはオーガ駆動部78が上下動可能に支持され、そのオーガ駆動部78の下部には地面Eに杭打用の縦穴Hを掘削するためのスクリュー79が取り付けられている。リーダー74の下端側部には、スクリュー79の上下動を案内するためのスクリューガイド80が突設されている。そして、スクリュー79がオーガ駆動部78により回転されながら下方に移動されることにより、地面Eに杭打用の縦穴Hが掘削される。
【0004】
図14及び図15に示すように、他方のガイドレール77には杭保持部81が上下動可能に支持され、その杭保持部81には杭82が取り付けられる。杭保持部81の上方には地面Eの縦穴Hに杭82を打ち込むためのハンマ83が移動可能に支持されている。そして、ハンマ83によって杭保持部81が繰り返し殴打されることにより、杭82が地面Eの縦穴Hに打ち込まれる。
【0005】
さらに、従来の杭打装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成も提案されている。この従来構成においては、ブームの先端にリーダーがその上端部において吊り下げ状態で支持されている。そして、このリーダーに支持された作業体としてのスクリューの回転及び下方移動により、地面に杭打用の穴が掘削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前述した従来の杭打装置においては、次のような問題があった。
図13〜図15に示す従来の杭打装置においては、ブーム73の先端にリーダー74が垂直軸線を中心に回転されることなく固定的に支持されている。このため、スクリューによって穴を開けた後に、その穴にスクリューから180度離れた位置の杭を打つ場合、スクリューを穴から引き上げ、例えば上部車体72の向きを変更して、杭を穴に挿入する必要がある。従って、穴に対する杭の位置合わせが面倒で、高い作業効率を得ることは困難である。すなわち、図16に実線で示すように、スクリュー79を施工個所Pに対応配置して縦穴Hの掘削作業を行った後、同図に鎖線で示すように、上部車体72を旋回させ、杭82を縦穴Hに対応配置して杭打作業を行う必要があった。よって、作業が面倒で時間がかかるとともに、施工精度の低下を招いていた。特に、図16に示すように、建造物の壁Wに接近した壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、作業がいっそう困難である。
【0008】
また、この従来装置では、掘削作業と杭打作業との間で上部車体72を旋回させる必要があるため、図17に示すように、2つの建造物の壁Wが接近して配置された狭い空間において、一方の壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、掘削作業を行った後に上部車体72を旋回させることができない。よって、上部車体72を搭載した下部車体71を壁W間の空間に対して出し入れして、杭82を縦穴Hに位置合わせする必要があって、作業が一層煩雑になった。
【0009】
さらに、図18に示すように、建造物の壁Wが交差した隅角部の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同図に実線で示すように、上部車体72を一方の壁Wに近接した位置に配置して、掘削作業を行った後、同図に鎖線で示すように、下部車体71を移動させ、上部車体72を他方の壁Wに近接した位置に配置して、杭打作業を行う必要がある。よって、作業が一層煩雑になった。
【0010】
一方、特許文献1に記載の従来装置では、ブームの先端にリーダーがその上端部において吊り下げ状態で支持されている。このため、リーダーの長さが制限され、地面に深い縦穴を掘削して長い杭を打ち込んだりすることが困難であった。また、長いリーダーを使用して、深い縦穴の掘削及び長い杭の打ち込みに対応できるようにした場合には、ブームを大きく伸長可能な大型の上部車体を装備する必要があって、装置全体の構成が複雑で大型になった。しかも、車体の走行によってリーダーを搬送させる場合には、ブーム及びリーダーを水平にする必要があるが、ブームがリーダーの上端に連結されているため、長いリーダーの搬送が困難である。
【0011】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができるとともに、施工精度の向上を図ることができ、しかも搬送が容易な杭打装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は、ブームに支持されて直立されるリーダーと、そのリーダーに沿って上下動される複数種の作業体とを備えた杭打装置において、前記リーダーを軸線方向に沿って3つの部分に分割し、中間分割部を前記ブームに支持するとともに、上方分割部及び下方分割部を中間分割部に対して前記軸線を中心に回転可能に支持し、上方分割部と下方分割部との間には前記複数種の作業体を前記軸線を中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線方向に沿って移動可能に支持し、前記中間分割部には上方分割部及び下方分割部を回転させて1つの作業体を使用位置に選択配置するための回転手段を設け、前記中間分割部には使用位置に選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するための案内手段を設けたことを特徴としている。
【0013】
従って、この発明の杭打装置により掘削及び杭打作業を行う場合には、1つの作業体を使用位置に選択配置した状態で掘削作業を行った後に、リーダーの上方分割部及び下方分割部を回転させ、他の作業体を使用位置に選択配置して杭打作業を行えばよい。よって、従来装置のように、掘削作業と杭打作業との間で、上部車体を旋回させたり下部車体を移動させたりするという面倒な作業を行う必要がなく、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができる。しかも、リーダーの上方分割部及び下方分割部の回転により、杭を縦穴と対応する位置に配置することができるため、施工個所の縦穴に杭を正確に打ち込むことができて、施工精度の向上を図ることができる。
【0014】
また、前記の構成において、前記上方分割部と中間分割部との間には、上方分割部を所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段を設けるとよい。このように構成した場合には、複数種の作業体を使用位置に正確に位置決め配置することができて、施工精度を一層向上させることができる。
【0015】
さらに、前記の構成において、前記上方分割部の先端には前記各作業体と対応する複数のアームを設け、それらのアームには作業体を上下動させるワイヤのための定滑車を支持し、その定滑車と駆動源との間のワイヤを上方分割部内において前記軸線に沿って張設するとよい。このように構成した場合には、リーダーの上方分割部及び下方分割部の回転時に、ワイヤに捩れや絡みが発生するおそれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができるとともに、施工精度の向上を図ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の杭打装置における掘削時の状態を示す正面図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】同杭打装置における杭打時の状態を示す正面図。
【図4】図3の4−4線における部分拡大断面図。
【図5】図1の5−5線における部分拡大断面図。
【図6】図5の6−6線における断面図。
【図7】図1の7−7線における部分拡大断面図。
【図8】図1の掘削時における作業体上下動用のワイヤの案内構成を示す斜視図。
【図9】図3の杭打時における作業体上下動用のワイヤの案内構成を示す斜視図。
【図10】実施形態の杭打装置により壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図11】同杭打装置により図10とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図12】同杭打装置により図10及び図11とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図13】従来の杭打装置における掘削時の状態を示す正面図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】同杭打装置における杭打時の状態を示す部分正面図。
【図16】従来の杭打装置により壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図17】同杭打装置により図16とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図18】同杭打装置により図16及び図17とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を具体化した杭打装置の一実施形態を、図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、下部車体21上には上部車体22が旋回可能に搭載されている。上部車体22上には伸縮及び角度変更可能なブーム23が立設され、そのブーム23の先端にはリーダー支持部23aが設けられている。リーダー支持部23aには、円筒状のリーダー24が長さ方向の中間部におけるリーダー24の軸線L上においてその軸線Lと直交する方向に延びる支軸25を介して角度変更可能に支持されている。リーダー24の下端部と上部車体22との間には、リーダー24を直立状態に保持するための保持体26が設けられている。
【0019】
図1に示すように、前記リーダー24は軸線L方向に沿って3つの部24a,24b,24cに分割して構成されている。中間分割部24bは、前記ブーム23の先端のリーダー支持部23aに支軸25を介して支持されている。上方分割部24a及び下方分割部24cは、中間分割部24bの上端部及び下端部に対して軸線Lを中心に回転可能に支持されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aの外周には、それぞれ対をなす2組の支持レール27,28が所定角度間隔(実施形態においては90度)をおいた状態で軸線L方向に沿って平行に延びるように配置されている。一方の支持レール27には回転用モータを内蔵するオーガ駆動部29が上下動可能に支持され、そのオーガ駆動部29の下部には地面Eに杭打用の縦穴Hを掘削するための作業体としてのスクリュー30が取り付けられている。リーダー24の下方分割部24cの外周には、スクリュー30の上下動を案内するためのスクリューガイド31が突出固定されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記上方分割部24a上の他方の支持レール28には杭保持部32が上下動可能に支持され、その杭保持部32には杭33が吊り下げ状態で取り付けられる。杭保持部32の上方において、他方の支持レール28には地面Eの縦穴Hに杭33を打ち込むための別の作業体としてのハンマ34が移動可能に支持されている。なお、実施形態においては、リーダー24にスクリュー30と杭33及びハンマ34とが支持される例を示したが、杭33及びハンマ34に代えて、さらに別のスクリューを支持したり、ハンマを支持することなく杭33のみを支持したり、各種の形態を採用することが可能である。
【0022】
図1、図3、図5及び図7に示すように、前記リーダー24の中間分割部24bの上下両端内部には、回転手段としての上部回転機構35A及び下部回転機構35Bが配設されている。そして、この上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転されて、1つの作業体としてのスクリュー30またはハンマ34が使用位置Uに選択配置される。
【0023】
図5及び図7に示すように、前記上部回転機構35A及び下部回転機構35Bは、ほぼ同一の構造をなすように構成されている。すなわち、リーダー24の中間分割部24bの上下両端部には端板36が固定され、その端板36の上面または下面には内歯歯車37がベアリング38を介して回転可能に支持されている。内歯歯車37の上面または下面には円環状の連結板39が固定され、その連結板39の上面または下面にはリーダー24の上方分割部24aまたは下方分割部24cが端板40を介して取り付けられている。
【0024】
図5及び図7に示すように、前記中間分割部24bの上端内部または下端内部において、端板36には回転用モータ41が支持され、その回転用モータ41の回転軸には前記内歯歯車37に噛み合い可能な駆動歯車42が取り付けられている。そして、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bの回転用モータ41が同期して回転されることにより、駆動歯車42及び内歯歯車37を介して、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転される。
【0025】
図1、図3、図5及び図7に示すように、前記リーダー24の中間分割部24bの外周において、少なくともブーム23上のリーダー支持部23aと反対側の位置には、案内手段としての一対のガイドレール43が軸線L方向に沿って平行に延びるように配置されている。そして、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが回転されて、1つの作業体としてのスクリュー30またはハンマ34が使用位置Uに選択配置されたとき、その作業体を支持する一方の支持レール27,28がガイドレール43と連続する位置に配置される。この状態で、支持レール27,28及びガイドレール43により、スクリュー30またはハンマ34の軸線L方向への移動が案内される。
【0026】
図5及び図6に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aと中間分割部24bとの間には、上方分割部24aを所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段としての位置決め機構44が設けられている。すなわち、中間分割部24bの上端外周には位置決め用シリンダ45が配設され、そのピストンロッドの先端には位置決めピン46が軸線L方向に沿って出没可能に設けられている。上方分割部24aと中間分割部24bとの間の連結板39の外周には一対の位置決め板47,48が所定角度間隔をおいて突設され、それらの位置決め板47,48には位置決めピン46に係合可能な位置決め孔47a,48aが形成されている。
【0027】
図6に示すように、前記中間分割部24bの上端側のベアリング38の外周には、一対のストッパ49,50が所定角度間隔をおいて配設されている。そして、上部回転機構35Aにて上方分割部24aが軸線Lを中心に回転されたとき、いずれか一方の位置決め板47,48が対応するストッパ49,50と当接することにより、上方分割部24aの回転が規制される。この状態で、前記位置決め用シリンダ45のピストンロッドが突出動作されることにより、図5及び図6に示すように、位置決めピン46が一方の位置決め板47,48の位置決め孔47a,48aに係合されて、上方分割部24aが所定の回転位置に位置決めされる。
【0028】
図1、図3、図8及び図9に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aの上端には、作業体としてのスクリュー30及びハンマ34に対応する第1及び第2アーム51,52が固定されている。第1アーム51の先端には第1定滑車53及びガイドローラ54が回転可能に支持され、第2アーム52の先端には第2定滑車55が回転可能に支持されている。スクリュー30上のオーガ駆動部29には第1定滑車53に対応する第1動滑車56が回転可能に支持され、ハンマ34には第2定滑車55に対応する第2動滑車57が回転可能に支持されている。
【0029】
図1、図3、図8及び図9に示すように、前記上部車体22上には、駆動源としての第1ウインチ58及び第2ウインチ59が搭載されている。第1ウインチ58から延びる一対のワイヤ60,61は、ブーム23内に設けられたガイドローラ62A,62B、リーダー24の中間分割部24b内に設けられたガイドローラ62C、及び第1アーム51の基端内部に設けられたガイドローラ62Dを介して、第1定滑車53と第1動滑車56との間及びガイドローラ54上に導かれている。第2ウインチ59から延びる一対のワイヤ63は、ブーム23内に設けられたガイドローラ64A,64B、リーダー24の中間分割部24b内に設けられたガイドローラ64C、及び第2アーム52の基端内部に設けられたガイドローラ64Dを介して、第2定滑車55と第2動滑車57との間に導かれている。
【0030】
この場合、第1ウインチ58から延びる一対のワイヤ60,61は、ガイドローラ62C,62Dにより、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って張設されている。また、第2ウインチ59から延びるワイヤ63も、ガイドローラ64C,64Dにより、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って張設されている。これにより、図8及び図9に示すように、リーダー24の上方分割部24aが軸線Lを中心に回転された際に、ワイヤ60,61,63に捩れや絡みが発生しないように構成されている。
【0031】
そして、図1及び図8に示すように、スクリュー30と対応する第1アーム51が使用位置Uに配置された状態で、第1ウインチ58が作動されることにより、一方のワイヤ60を介してオーガ駆動部29が上下動されて、縦穴Hの掘削作業が行われる。この場合、他方のワイヤ61を介して杭33の取り込み作業等も行われる。また、図3及び図9に示すように、ハンマ34と対応する第2アーム52が使用位置Uに配置された状態で、第2ウインチ59が作動されることにより、ワイヤ63を介してハンマ34が上下動されて、縦穴Hに対する杭33の打ち込み作業が行われる。
【0032】
次に、前記のように構成された杭打装置の動作を説明する。
さて、この杭打装置を使用して、例えば図10に示すように、建造物の壁Wに接近した壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、同図に実線で示すように、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で、施工個所Pに対応配置される。この状態で、スクリュー30がオーガ駆動部29により回転されながら、支持レール27及びガイドレール43に沿って下方に移動されることにより、地面Eに杭打用の縦穴Hが掘削される。そして、この縦穴Hの掘削後に、ワイヤ61に杭33が吊り下げられて、縦穴Hに取り込まれる。
【0033】
その後、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転されて、図10に鎖線で示すように、ハンマ34が使用位置Uに選択配置される。この状態で、ハンマ34にて杭保持部32が繰り返し殴打されることにより、杭33が支持レール28及びガイドレール43に沿って下方に移動されて縦穴Hに打ち込まれる。
【0034】
また、図11に示すように、2つの建造物の壁Wが接近して配置された狭い空間において、一方の壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同図に実線で示すように、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で、地面Eに縦穴Hが掘削される。その後、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に回転されて、同図に鎖線で示すように、ハンマ34が使用位置Uに選択配置された状態で、縦穴Hに杭33が打ち込まれる。
【0035】
さらに、図12に示すように、建造物の壁Wが交差した隅角部の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同様に使用位置Uのスクリュー30により、地面Eに縦穴Hが掘削された後、ハンマ34が使用位置Uに置き換えられて、縦穴Hに杭33が打ち込まれる。
【0036】
従って、この実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1) この実施形態の杭打装置においては、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で掘削作業が行われた後に、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に回転され、ハンマ34が使用位置Uに選択配置されて杭打作業が行われる。よって、従来装置とは異なり、掘削作業と杭打作業との間で、上部車体を旋回させたり下部車体を移動させたりするという面倒な作業を行う必要がなく、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができる。しかも、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cの回転により、杭33を縦穴Hと対応する位置に配置することができるため、施工個所Pの縦穴Hに杭33を正確に打ち込むことができて、施工精度の向上を図ることができる。
【0037】
(2) この実施形態の杭打装置においては、リーダー24の上方分割部24aと中間分割部24bとの間に、上方分割部24aを所定の回転位置に位置決めするための位置決め機構44が設けられている。よって、上方分割部24aの回転時に、作業体としてのスクリュー30及びハンマ34を施工個所Pに正確に位置決め配置することができて、施工精度を一層向上させることができる。
【0038】
(3) この実施形態の杭打装置では、スクリュー30及びハンマ34を上下動させるためのワイヤ60,63が、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って延びるように構成されている。このため、リーダー24の上方分割部24aの回転時に、ワイヤ60,63に捩れや絡みが発生するおそれを抑制することができる。
【0039】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態において、複数の作業体を90度以外の間隔をおいて、例えば180度の間隔をおいてリーダー24に支持できるようにすること。
【0040】
・ 前記実施形態において、リーダー24を円筒形状以外の構成、例えば四角筒状に形成すること。
【符号の説明】
【0041】
22…上部車体、23…ブーム、24…リーダー、24a…上方分割部、24b…中間分割部、24c…下方分割部、27,28…支持レール、29…オーガ駆動部、30…作業体としてのスクリュー、31…スクリューガイド、32…杭保持部、33…杭、34…作業体としてのハンマ、35A…回転手段としての上部回転機構、35B…回転手段としての下部回転機構、37…内歯歯車、41…回転用モータ、42…駆動歯車、43…案内手段としてのガイドレール、44…位置決め手段としての位置決め機構、45…位置決め用シリンダ、46…位置決めピン、47,48…位置決め板、47a,48a…位置決め孔、51…第1アーム、52…第2アーム、53…第1定滑車、55…第2定滑車、58…駆動源としての第1ウインチ、59…駆動源としての第2ウインチ、60,61,63…ワイヤ、62A〜62D,64A〜64D…ガイドローラ、P…施工個所、E…地面、H…縦穴、L…軸線、U…使用位置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として、地面に杭打用の縦穴を掘削して、その縦穴に杭を打ち込むために用いられる杭打装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の杭打装置としては、例えば図13〜図18に示すような構成が知られている。この従来構成においては、図13に示すように、下部車体71上に上部車体72が旋回可能に搭載されている。上部車体72上には伸縮可能なブーム73が立設され、そのブーム73の先端にはリーダー74が中間部において軸を介して垂直面内において上下方向にのみ回動可能に支持されている。リーダー74の下端部と上部車体72との間には、リーダー74を直立状態に保持するための保持体75が設けられている。
【0003】
そして、通常、リーダー74には以下の構成が搭載される。すなわち、図13及び図14に示すように、前記リーダー74の外周には、対をなす2組のガイドレール76,77がリーダー74の長さ方向に沿って延びるように、かつ180度離れた反対側に位置するように配置されている。一方の対のガイドレール76にはオーガ駆動部78が上下動可能に支持され、そのオーガ駆動部78の下部には地面Eに杭打用の縦穴Hを掘削するためのスクリュー79が取り付けられている。リーダー74の下端側部には、スクリュー79の上下動を案内するためのスクリューガイド80が突設されている。そして、スクリュー79がオーガ駆動部78により回転されながら下方に移動されることにより、地面Eに杭打用の縦穴Hが掘削される。
【0004】
図14及び図15に示すように、他方のガイドレール77には杭保持部81が上下動可能に支持され、その杭保持部81には杭82が取り付けられる。杭保持部81の上方には地面Eの縦穴Hに杭82を打ち込むためのハンマ83が移動可能に支持されている。そして、ハンマ83によって杭保持部81が繰り返し殴打されることにより、杭82が地面Eの縦穴Hに打ち込まれる。
【0005】
さらに、従来の杭打装置としては、例えば特許文献1に開示されるような構成も提案されている。この従来構成においては、ブームの先端にリーダーがその上端部において吊り下げ状態で支持されている。そして、このリーダーに支持された作業体としてのスクリューの回転及び下方移動により、地面に杭打用の穴が掘削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−95405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前述した従来の杭打装置においては、次のような問題があった。
図13〜図15に示す従来の杭打装置においては、ブーム73の先端にリーダー74が垂直軸線を中心に回転されることなく固定的に支持されている。このため、スクリューによって穴を開けた後に、その穴にスクリューから180度離れた位置の杭を打つ場合、スクリューを穴から引き上げ、例えば上部車体72の向きを変更して、杭を穴に挿入する必要がある。従って、穴に対する杭の位置合わせが面倒で、高い作業効率を得ることは困難である。すなわち、図16に実線で示すように、スクリュー79を施工個所Pに対応配置して縦穴Hの掘削作業を行った後、同図に鎖線で示すように、上部車体72を旋回させ、杭82を縦穴Hに対応配置して杭打作業を行う必要があった。よって、作業が面倒で時間がかかるとともに、施工精度の低下を招いていた。特に、図16に示すように、建造物の壁Wに接近した壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、作業がいっそう困難である。
【0008】
また、この従来装置では、掘削作業と杭打作業との間で上部車体72を旋回させる必要があるため、図17に示すように、2つの建造物の壁Wが接近して配置された狭い空間において、一方の壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、掘削作業を行った後に上部車体72を旋回させることができない。よって、上部車体72を搭載した下部車体71を壁W間の空間に対して出し入れして、杭82を縦穴Hに位置合わせする必要があって、作業が一層煩雑になった。
【0009】
さらに、図18に示すように、建造物の壁Wが交差した隅角部の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同図に実線で示すように、上部車体72を一方の壁Wに近接した位置に配置して、掘削作業を行った後、同図に鎖線で示すように、下部車体71を移動させ、上部車体72を他方の壁Wに近接した位置に配置して、杭打作業を行う必要がある。よって、作業が一層煩雑になった。
【0010】
一方、特許文献1に記載の従来装置では、ブームの先端にリーダーがその上端部において吊り下げ状態で支持されている。このため、リーダーの長さが制限され、地面に深い縦穴を掘削して長い杭を打ち込んだりすることが困難であった。また、長いリーダーを使用して、深い縦穴の掘削及び長い杭の打ち込みに対応できるようにした場合には、ブームを大きく伸長可能な大型の上部車体を装備する必要があって、装置全体の構成が複雑で大型になった。しかも、車体の走行によってリーダーを搬送させる場合には、ブーム及びリーダーを水平にする必要があるが、ブームがリーダーの上端に連結されているため、長いリーダーの搬送が困難である。
【0011】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができるとともに、施工精度の向上を図ることができ、しかも搬送が容易な杭打装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明は、ブームに支持されて直立されるリーダーと、そのリーダーに沿って上下動される複数種の作業体とを備えた杭打装置において、前記リーダーを軸線方向に沿って3つの部分に分割し、中間分割部を前記ブームに支持するとともに、上方分割部及び下方分割部を中間分割部に対して前記軸線を中心に回転可能に支持し、上方分割部と下方分割部との間には前記複数種の作業体を前記軸線を中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線方向に沿って移動可能に支持し、前記中間分割部には上方分割部及び下方分割部を回転させて1つの作業体を使用位置に選択配置するための回転手段を設け、前記中間分割部には使用位置に選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するための案内手段を設けたことを特徴としている。
【0013】
従って、この発明の杭打装置により掘削及び杭打作業を行う場合には、1つの作業体を使用位置に選択配置した状態で掘削作業を行った後に、リーダーの上方分割部及び下方分割部を回転させ、他の作業体を使用位置に選択配置して杭打作業を行えばよい。よって、従来装置のように、掘削作業と杭打作業との間で、上部車体を旋回させたり下部車体を移動させたりするという面倒な作業を行う必要がなく、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができる。しかも、リーダーの上方分割部及び下方分割部の回転により、杭を縦穴と対応する位置に配置することができるため、施工個所の縦穴に杭を正確に打ち込むことができて、施工精度の向上を図ることができる。
【0014】
また、前記の構成において、前記上方分割部と中間分割部との間には、上方分割部を所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段を設けるとよい。このように構成した場合には、複数種の作業体を使用位置に正確に位置決め配置することができて、施工精度を一層向上させることができる。
【0015】
さらに、前記の構成において、前記上方分割部の先端には前記各作業体と対応する複数のアームを設け、それらのアームには作業体を上下動させるワイヤのための定滑車を支持し、その定滑車と駆動源との間のワイヤを上方分割部内において前記軸線に沿って張設するとよい。このように構成した場合には、リーダーの上方分割部及び下方分割部の回転時に、ワイヤに捩れや絡みが発生するおそれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができるとともに、施工精度の向上を図ることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態の杭打装置における掘削時の状態を示す正面図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】同杭打装置における杭打時の状態を示す正面図。
【図4】図3の4−4線における部分拡大断面図。
【図5】図1の5−5線における部分拡大断面図。
【図6】図5の6−6線における断面図。
【図7】図1の7−7線における部分拡大断面図。
【図8】図1の掘削時における作業体上下動用のワイヤの案内構成を示す斜視図。
【図9】図3の杭打時における作業体上下動用のワイヤの案内構成を示す斜視図。
【図10】実施形態の杭打装置により壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図11】同杭打装置により図10とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図12】同杭打装置により図10及び図11とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図13】従来の杭打装置における掘削時の状態を示す正面図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】同杭打装置における杭打時の状態を示す部分正面図。
【図16】従来の杭打装置により壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図17】同杭打装置により図16とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【図18】同杭打装置により図16及び図17とは異なった壁際の施工個所に掘削及び杭打作業を行う状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明を具体化した杭打装置の一実施形態を、図1〜図12に従って説明する。
図1に示すように、下部車体21上には上部車体22が旋回可能に搭載されている。上部車体22上には伸縮及び角度変更可能なブーム23が立設され、そのブーム23の先端にはリーダー支持部23aが設けられている。リーダー支持部23aには、円筒状のリーダー24が長さ方向の中間部におけるリーダー24の軸線L上においてその軸線Lと直交する方向に延びる支軸25を介して角度変更可能に支持されている。リーダー24の下端部と上部車体22との間には、リーダー24を直立状態に保持するための保持体26が設けられている。
【0019】
図1に示すように、前記リーダー24は軸線L方向に沿って3つの部24a,24b,24cに分割して構成されている。中間分割部24bは、前記ブーム23の先端のリーダー支持部23aに支軸25を介して支持されている。上方分割部24a及び下方分割部24cは、中間分割部24bの上端部及び下端部に対して軸線Lを中心に回転可能に支持されている。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aの外周には、それぞれ対をなす2組の支持レール27,28が所定角度間隔(実施形態においては90度)をおいた状態で軸線L方向に沿って平行に延びるように配置されている。一方の支持レール27には回転用モータを内蔵するオーガ駆動部29が上下動可能に支持され、そのオーガ駆動部29の下部には地面Eに杭打用の縦穴Hを掘削するための作業体としてのスクリュー30が取り付けられている。リーダー24の下方分割部24cの外周には、スクリュー30の上下動を案内するためのスクリューガイド31が突出固定されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記上方分割部24a上の他方の支持レール28には杭保持部32が上下動可能に支持され、その杭保持部32には杭33が吊り下げ状態で取り付けられる。杭保持部32の上方において、他方の支持レール28には地面Eの縦穴Hに杭33を打ち込むための別の作業体としてのハンマ34が移動可能に支持されている。なお、実施形態においては、リーダー24にスクリュー30と杭33及びハンマ34とが支持される例を示したが、杭33及びハンマ34に代えて、さらに別のスクリューを支持したり、ハンマを支持することなく杭33のみを支持したり、各種の形態を採用することが可能である。
【0022】
図1、図3、図5及び図7に示すように、前記リーダー24の中間分割部24bの上下両端内部には、回転手段としての上部回転機構35A及び下部回転機構35Bが配設されている。そして、この上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転されて、1つの作業体としてのスクリュー30またはハンマ34が使用位置Uに選択配置される。
【0023】
図5及び図7に示すように、前記上部回転機構35A及び下部回転機構35Bは、ほぼ同一の構造をなすように構成されている。すなわち、リーダー24の中間分割部24bの上下両端部には端板36が固定され、その端板36の上面または下面には内歯歯車37がベアリング38を介して回転可能に支持されている。内歯歯車37の上面または下面には円環状の連結板39が固定され、その連結板39の上面または下面にはリーダー24の上方分割部24aまたは下方分割部24cが端板40を介して取り付けられている。
【0024】
図5及び図7に示すように、前記中間分割部24bの上端内部または下端内部において、端板36には回転用モータ41が支持され、その回転用モータ41の回転軸には前記内歯歯車37に噛み合い可能な駆動歯車42が取り付けられている。そして、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bの回転用モータ41が同期して回転されることにより、駆動歯車42及び内歯歯車37を介して、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転される。
【0025】
図1、図3、図5及び図7に示すように、前記リーダー24の中間分割部24bの外周において、少なくともブーム23上のリーダー支持部23aと反対側の位置には、案内手段としての一対のガイドレール43が軸線L方向に沿って平行に延びるように配置されている。そして、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが回転されて、1つの作業体としてのスクリュー30またはハンマ34が使用位置Uに選択配置されたとき、その作業体を支持する一方の支持レール27,28がガイドレール43と連続する位置に配置される。この状態で、支持レール27,28及びガイドレール43により、スクリュー30またはハンマ34の軸線L方向への移動が案内される。
【0026】
図5及び図6に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aと中間分割部24bとの間には、上方分割部24aを所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段としての位置決め機構44が設けられている。すなわち、中間分割部24bの上端外周には位置決め用シリンダ45が配設され、そのピストンロッドの先端には位置決めピン46が軸線L方向に沿って出没可能に設けられている。上方分割部24aと中間分割部24bとの間の連結板39の外周には一対の位置決め板47,48が所定角度間隔をおいて突設され、それらの位置決め板47,48には位置決めピン46に係合可能な位置決め孔47a,48aが形成されている。
【0027】
図6に示すように、前記中間分割部24bの上端側のベアリング38の外周には、一対のストッパ49,50が所定角度間隔をおいて配設されている。そして、上部回転機構35Aにて上方分割部24aが軸線Lを中心に回転されたとき、いずれか一方の位置決め板47,48が対応するストッパ49,50と当接することにより、上方分割部24aの回転が規制される。この状態で、前記位置決め用シリンダ45のピストンロッドが突出動作されることにより、図5及び図6に示すように、位置決めピン46が一方の位置決め板47,48の位置決め孔47a,48aに係合されて、上方分割部24aが所定の回転位置に位置決めされる。
【0028】
図1、図3、図8及び図9に示すように、前記リーダー24の上方分割部24aの上端には、作業体としてのスクリュー30及びハンマ34に対応する第1及び第2アーム51,52が固定されている。第1アーム51の先端には第1定滑車53及びガイドローラ54が回転可能に支持され、第2アーム52の先端には第2定滑車55が回転可能に支持されている。スクリュー30上のオーガ駆動部29には第1定滑車53に対応する第1動滑車56が回転可能に支持され、ハンマ34には第2定滑車55に対応する第2動滑車57が回転可能に支持されている。
【0029】
図1、図3、図8及び図9に示すように、前記上部車体22上には、駆動源としての第1ウインチ58及び第2ウインチ59が搭載されている。第1ウインチ58から延びる一対のワイヤ60,61は、ブーム23内に設けられたガイドローラ62A,62B、リーダー24の中間分割部24b内に設けられたガイドローラ62C、及び第1アーム51の基端内部に設けられたガイドローラ62Dを介して、第1定滑車53と第1動滑車56との間及びガイドローラ54上に導かれている。第2ウインチ59から延びる一対のワイヤ63は、ブーム23内に設けられたガイドローラ64A,64B、リーダー24の中間分割部24b内に設けられたガイドローラ64C、及び第2アーム52の基端内部に設けられたガイドローラ64Dを介して、第2定滑車55と第2動滑車57との間に導かれている。
【0030】
この場合、第1ウインチ58から延びる一対のワイヤ60,61は、ガイドローラ62C,62Dにより、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って張設されている。また、第2ウインチ59から延びるワイヤ63も、ガイドローラ64C,64Dにより、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って張設されている。これにより、図8及び図9に示すように、リーダー24の上方分割部24aが軸線Lを中心に回転された際に、ワイヤ60,61,63に捩れや絡みが発生しないように構成されている。
【0031】
そして、図1及び図8に示すように、スクリュー30と対応する第1アーム51が使用位置Uに配置された状態で、第1ウインチ58が作動されることにより、一方のワイヤ60を介してオーガ駆動部29が上下動されて、縦穴Hの掘削作業が行われる。この場合、他方のワイヤ61を介して杭33の取り込み作業等も行われる。また、図3及び図9に示すように、ハンマ34と対応する第2アーム52が使用位置Uに配置された状態で、第2ウインチ59が作動されることにより、ワイヤ63を介してハンマ34が上下動されて、縦穴Hに対する杭33の打ち込み作業が行われる。
【0032】
次に、前記のように構成された杭打装置の動作を説明する。
さて、この杭打装置を使用して、例えば図10に示すように、建造物の壁Wに接近した壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合には、同図に実線で示すように、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で、施工個所Pに対応配置される。この状態で、スクリュー30がオーガ駆動部29により回転されながら、支持レール27及びガイドレール43に沿って下方に移動されることにより、地面Eに杭打用の縦穴Hが掘削される。そして、この縦穴Hの掘削後に、ワイヤ61に杭33が吊り下げられて、縦穴Hに取り込まれる。
【0033】
その後、上部回転機構35A及び下部回転機構35Bにより、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に一体的に回転されて、図10に鎖線で示すように、ハンマ34が使用位置Uに選択配置される。この状態で、ハンマ34にて杭保持部32が繰り返し殴打されることにより、杭33が支持レール28及びガイドレール43に沿って下方に移動されて縦穴Hに打ち込まれる。
【0034】
また、図11に示すように、2つの建造物の壁Wが接近して配置された狭い空間において、一方の壁際の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同図に実線で示すように、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で、地面Eに縦穴Hが掘削される。その後、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に回転されて、同図に鎖線で示すように、ハンマ34が使用位置Uに選択配置された状態で、縦穴Hに杭33が打ち込まれる。
【0035】
さらに、図12に示すように、建造物の壁Wが交差した隅角部の施工個所Pに掘削及び杭打作業を行う場合にも、同様に使用位置Uのスクリュー30により、地面Eに縦穴Hが掘削された後、ハンマ34が使用位置Uに置き換えられて、縦穴Hに杭33が打ち込まれる。
【0036】
従って、この実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1) この実施形態の杭打装置においては、スクリュー30が使用位置Uに配置された状態で掘削作業が行われた後に、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cが軸線Lを中心に回転され、ハンマ34が使用位置Uに選択配置されて杭打作業が行われる。よって、従来装置とは異なり、掘削作業と杭打作業との間で、上部車体を旋回させたり下部車体を移動させたりするという面倒な作業を行う必要がなく、掘削及び杭打作業を容易かつ能率的に行うことができる。しかも、リーダー24の上方分割部24a及び下方分割部24cの回転により、杭33を縦穴Hと対応する位置に配置することができるため、施工個所Pの縦穴Hに杭33を正確に打ち込むことができて、施工精度の向上を図ることができる。
【0037】
(2) この実施形態の杭打装置においては、リーダー24の上方分割部24aと中間分割部24bとの間に、上方分割部24aを所定の回転位置に位置決めするための位置決め機構44が設けられている。よって、上方分割部24aの回転時に、作業体としてのスクリュー30及びハンマ34を施工個所Pに正確に位置決め配置することができて、施工精度を一層向上させることができる。
【0038】
(3) この実施形態の杭打装置では、スクリュー30及びハンマ34を上下動させるためのワイヤ60,63が、リーダー24の上方分割部24a内において軸線Lの近傍に沿って延びるように構成されている。このため、リーダー24の上方分割部24aの回転時に、ワイヤ60,63に捩れや絡みが発生するおそれを抑制することができる。
【0039】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態において、複数の作業体を90度以外の間隔をおいて、例えば180度の間隔をおいてリーダー24に支持できるようにすること。
【0040】
・ 前記実施形態において、リーダー24を円筒形状以外の構成、例えば四角筒状に形成すること。
【符号の説明】
【0041】
22…上部車体、23…ブーム、24…リーダー、24a…上方分割部、24b…中間分割部、24c…下方分割部、27,28…支持レール、29…オーガ駆動部、30…作業体としてのスクリュー、31…スクリューガイド、32…杭保持部、33…杭、34…作業体としてのハンマ、35A…回転手段としての上部回転機構、35B…回転手段としての下部回転機構、37…内歯歯車、41…回転用モータ、42…駆動歯車、43…案内手段としてのガイドレール、44…位置決め手段としての位置決め機構、45…位置決め用シリンダ、46…位置決めピン、47,48…位置決め板、47a,48a…位置決め孔、51…第1アーム、52…第2アーム、53…第1定滑車、55…第2定滑車、58…駆動源としての第1ウインチ、59…駆動源としての第2ウインチ、60,61,63…ワイヤ、62A〜62D,64A〜64D…ガイドローラ、P…施工個所、E…地面、H…縦穴、L…軸線、U…使用位置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームに支持されて直立されるリーダーと、そのリーダーに沿って上下動される複数種の作業体とを備えた杭打装置において、
前記リーダーを軸線方向に沿って3つの部分に分割し、中間分割部を前記ブームに支持するとともに、上方分割部及び下方分割部を中間分割部に対して前記軸線を中心に回転可能に支持し、上方分割部と下方分割部との間には前記複数種の作業体を前記軸線を中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線方向に沿って移動可能に支持し、前記中間分割部には上方分割部及び下方分割部を回転させて1つの作業体を使用位置に選択配置するための回転手段を設け、前記中間分割部には使用位置に選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するための案内手段を設けたことを特徴とする杭打装置。
【請求項2】
前記上方分割部と中間分割部との間には、上方分割部を所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭打装置。
【請求項3】
前記上方分割部の先端には前記各作業体と対応する複数のアームを設け、それらのアームには作業体を上下動させるワイヤのための定滑車を支持し、その定滑車と駆動源との間のワイヤを上方分割部内において前記軸線に沿って張設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の杭打装置。
【請求項1】
ブームに支持されて直立されるリーダーと、そのリーダーに沿って上下動される複数種の作業体とを備えた杭打装置において、
前記リーダーを軸線方向に沿って3つの部分に分割し、中間分割部を前記ブームに支持するとともに、上方分割部及び下方分割部を中間分割部に対して前記軸線を中心に回転可能に支持し、上方分割部と下方分割部との間には前記複数種の作業体を前記軸線を中心とする円周方向へ所定角度間隔をおいた状態で軸線方向に沿って移動可能に支持し、前記中間分割部には上方分割部及び下方分割部を回転させて1つの作業体を使用位置に選択配置するための回転手段を設け、前記中間分割部には使用位置に選択配置された作業体の軸線方向への移動を案内するための案内手段を設けたことを特徴とする杭打装置。
【請求項2】
前記上方分割部と中間分割部との間には、上方分割部を所定の回転位置に位置決めするための位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭打装置。
【請求項3】
前記上方分割部の先端には前記各作業体と対応する複数のアームを設け、それらのアームには作業体を上下動させるワイヤのための定滑車を支持し、その定滑車と駆動源との間のワイヤを上方分割部内において前記軸線に沿って張設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の杭打装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−174482(P2010−174482A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17091(P2009−17091)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(591181920)大和機工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(591181920)大和機工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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