説明

板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法並びに板状物の切線加工装置及び切線加工方法

【課題】本発明は、板状物の搬送量を正確に検出することができる板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法、並びに、板状物を精度よく切線加工することができる板状物の切線加工装置及び切線加工方法を提供する。
【解決手段】本発明は、帯状板ガラスGに当接される第1ロール102が熱膨縮して角速度(ω)が変動しても、第1ロール102の周速度(Vt)は不変であること、すなわち、第1ロール102の周速度(Vt)は第1ロール102の直径、角速度に影響されないことに着目してなされたものである。すなわち、本発明の搬送量検出装置100によれば、雰囲気温度によって直径が変動する第1ロール102の表面に、第2ロール104を当接して、第1ロール102の不変な周速度(Vt)で第2ロールを回転させ、第2ロール104の角速度(ω)回転量に応じてエンコーダ106から発生するパルス信号に基づいて、帯状板ガラスGの搬送量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法並びに板状物の切線加工装置及び切線加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FPD(Flat Panel Display)用ガラス基板、建築用ガラス板等に用いられるガラス板の製造方法として、特許文献1等に開示されたフロート法と称される製法が知られている。このフロート法は、溶融錫浴内の錫上に溶融ガラスを流し込み、溶融ガラスを錫上で広げてガラスリボンをつくり、最終的に所定の板厚を有する帯状板ガラスに成形する製法である。溶融錫浴で成形された帯状板ガラスは、溶融錫浴の下流側に設置された徐冷部に引き出され、ここで所定の温度まで冷却された後、ローラコンベア等の搬送手段により切り折り装置に連続搬送されて所望サイズのガラス板に切り折りされる。切り折りされたガラス板は、ローラコンベアによって所定の収容部に搬送され、ここでパレット等に一枚ずつ収容され、製品として又は中間製品として採板される。
【0003】
前記切り折り装置は、帯状板ガラスの搬送方向上流側に設置された切線加工装置と、その下流側に設置された折り装置とから構成される。また、前記切線加工装置は、帯状板ガラスの搬送方向上流側に設置された縦切線加工機と、その下流側に設置された横切線加工機とから構成され、縦切線加工機のカッターによって帯状板ガラスの搬送方向に平行な縦切線を帯状板ガラスに加工し、その下流側で横切線加工機のカッターによって帯状板ガラスの搬送方向に直交する横切線を帯状板ガラスに加工する。
【0004】
切線加工は、異サイズ切りと称される方法で、レアーで徐冷された帯状板ガラスからサイズの異なる複数のガラス板を一度に無駄なく採板する目的で実施されている。この切線加工方法は、縦切線加工機を複数台並設し、更に縦切り線加工機の下流側に横切線加工機を設置し、各々の切線加工機のカッターの切線加工動作をON/OFF制御(例えば、帯状板ガラス搬送速度に同期したモーション制御)することにより、搬送中の帯状板ガラスから複数の所望サイズのガラス板を採板するための切線を帯状板ガラスに加工する方法である。
【0005】
この異サイズ切りの切線加工方法においては、カッターの切線加工開始時期を精細に制御する必要があり、そのために帯状板ガラスの搬送速度が検出されている。搬送速度の検出装置としては、搬送中の帯状板ガラスにロールを当接し、帯状板ガラスの搬送に追従して回転する前記ロールの回転量に基づいて帯状板ガラス搬送速度を検知する搬送量検出装置が知られている。この搬送量検出装置は、ロールの回転量をエンコーダによって検出し、エンコーダから出力されるパルス数をパルスカウンタによってカウントする。そして、カウントしたパルス数が、切線加工開始時期として予め記憶された所定のパルス数となったときに、カッターによる切線加工を開始するように制御部がカッター駆動部を制御するものである。
【0006】
なお、前記ロールは、金属製のロール本体と、このロール本体の外周面にライニング加工されたゴム製又は樹脂製のシートとから構成される。このシートが緩衝材となり、帯状板ガラスの表面にロールが接触することによる傷が付かないようにしている。
【0007】
なお、特許文献2には、帯状板ガラスではないが、フィルム(板状物)の搬送量検出装置が開示されている。この搬送量検出装置は、フィルムの搬送に従動して回転するフリーローラと、このフリーローラの回転を検出するエンコーダとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−277131号公報
【特許文献2】特開2007−130810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の搬送量検出装置は、雰囲気温度の変動に応じてロールが熱膨縮し、ロールの直径及び角速度(ω)が変化する。このため、ロールの回転量が変動するので、板状物の搬送量を正確に検出することができないという問題があった。
【0010】
特に、ロール本体の外周面にゴム製又は樹脂製のシートを被覆した、帯状板ガラス用のローラの場合、前記シートが熱膨縮し易い材質のために前記問題が発生し易い。よって、この問題に起因してカッターの切線加工開始時期に誤差が発生するので、切り折りされたガラス板の寸法がばらついてしまうという問題があった。すなわち、帯状板ガラスの搬送方向におけるガラス板の寸法精度が落ちるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、板状物の搬送量を正確に検出することができる板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法、並びに、板状物を精度よく切線加工することができる板状物の切線加工装置及び切線加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、搬送される板状物に当接して回転する第1ロールと、前記第1ロールに当接して回転する第2ロールと、前記第2ロールの回転量に応じて信号を発生する信号発生器と、を備えたことを特徴とする板状物の搬送量検出装置を提供する。
【0013】
本発明は、前記目的を達成するために、搬送される板状物に第1ロールを当接させて該第1ロールを回転させるとともに、前記第1ロールに当接する第2ロールを回転させ、前記第2ロールの回転量に応じて発生する信号から前記板状物の搬送量を検出することを特徴とする板状物の搬送量検出方法を提供する。
【0014】
本発明は、板状物に当接される第1ロールが熱膨縮して角速度が変動しても、第1ロールの周速度は不変であること、すなわち、第1ロールの周速度は第1ロールの直径、角速度に影響されないことに着目してなされたものである。
【0015】
本発明によれば、雰囲気温度によって直径が変動する第1ロールの表面に、第2ロールを当接して、第1ロールの不変な周速度で第2ロールを回転させ、第2ロールの回転量に応じて発生する信号から板状物の搬送量を検出する。これにより、本発明の板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法によれば、板状物の搬送量を正確に検出することができる。なお、第2ロールは、低熱膨張材料で製作されていることが好ましい。
【0016】
本発明の前記第2ロールは、熱膨張率が12×10−6/℃以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の前記第2ロールは、熱膨張率が8×10−6/℃以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は、前記目的を達成するために、搬送される板状物に当接して回転する第1ロールと、前記第1ロールに当接して回転する第2ロールと、前記第2ロールの回転量に応じて信号を発生する信号発生器と、ガイドフレームに沿って走行し、前記板状物を切線加工する切線加工機と、前記信号に基づいて前記切線加工機による前記板状物の切線加工開始時期を制御する制御装置と、を備えたことを特徴とする板状物の切線加工装置を提供する。
【0019】
本発明は、前記目的を達成するために、搬送される板状物に第1ロールを当接させて該第1ロールを回転させるとともに、前記第1ロールに当接する第2ロールを回転させ、前記第2ロールの回転量に応じて発生する信号に基づいて、板状物を切線加工する切線加工機による前記板状物の切線加工開始時期を制御することを特徴とする板状物の切線加工方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、雰囲気温度によって直径が変動する第1ロールの表面に、第2ロールを当接して、第1ロールの不変な周速度で第2ロールを回転させ、第2ロールの回転量に応じて発生する信号に基づいて切線加工機による板状物の切線加工開始時期を制御する。したがって、本発明の板状物の切線加工装置及び切線加工方法によれば、板状物を精度よく切線加工することができるので、切線加工された板状物の、板状物の搬送方向における寸法精度が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の板状物の搬送量検出装置及び搬送量検出方法によれば、板状物の搬送量を正確に検出することができる。
【0022】
本発明の板状物の切線加工装置及び切線加工方法によれば、板状物を精度よく切線加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る帯状板ガラスの切線加工装置の要部を示した斜視図
【図2】図1に示した切線加工装置の平面図
【図3】異サイズ切りによる切線加工方法を説明するために用いた図
【図4】実施の形態の切線加工装置の構成を示したブロック図
【図5】実施の形態の搬送量検出装置の構成を示したブロック図
【図6】第2ロールを鉛直方向に対して傾斜した位置に配置したロールの配置図
【図7】第2ロールを第1ロールの真横に配置したロールの配置図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る板状物の搬送量検出装置、及び搬送量検出方法、並びに板状物の切線加工装置、及び切線加工方法の好ましい実施の形態を詳説する。
【0025】
図1は、実施の形態に係る帯状板ガラスGの搬送量検出装置100が適用された、実施の形態の帯状板ガラスGの切線加工装置10の斜視図である。図2は、図1に示した切線加工装置10の平面図である。
【0026】
図1、図2に示す切線加工装置10は、帯状板ガラスGの搬送方向上流側に設置された、フロート法による帯状板ガラス製造装置(不図示)から、ローラコンベア12によって連続的に搬送されてくる帯状板ガラスGに縦切線、及び横切線を加工する、いわゆる異サイズ切りと称される切線加工方法に対応した切線加工装置である。
【0027】
この切線加工装置10の各カッターの動作が、実施の形態の搬送量検出装置100によって検出された帯状板ガラスGの搬送量に基づいて制御される。これについては後述する。なお、搬送量検出装置100を設置する主たる目的は、切線加工装置10によって切線加工されたガラス板の、帯状板ガラスGの搬送方向における寸法精度を向上させる点にあり、このために、帯状板ガラスGの搬送量が搬送量検出装置100によって正確に検出されている。
【0028】
切線加工装置10の帯状板ガラスGの搬送方向下流側には、ガラス折り装置(不図示)が設置され、このガラス折り装置の後段には、ガラス折り装置によって折り割りされたガラス板を、サイズに応じた収容部に振り分け搬送するローラコンベア(不図示)が設置されている。
【0029】
なお、実施の形態の板状物の搬送量検出装置100の構成、及び搬送量検出装置100による帯状板ガラスGの搬送量検出方法については後述する。また、切線加工装置10、前記帯状板ガラス製造装置、前記ローラコンベア、前記ガラス折り装置、及び折りが終了したガラス板を収容部に振り分け搬送し採板する前記ローラコンベア、及びそれらを用いた帯状板ガラスの製造装置は、公知技術のとおりである。更に、実施の形態の帯状板ガラスGは、FPD用ガラス基板に使用されるものであってもよく、太陽電池用ガラス板、照明用ガラス板、建築用ガラス板、又は自動車窓用ガラス板に使用されるものであってもよい。また、対象とする板状物は帯状板ガラスGに限定されるものではなく、矩形状のガラス板であってもよい。板状物の材質も限定されず、樹脂製、又は金属製の板状物であって連続的に搬送される板状物であれば、実施の形態の板状物の搬送量検出装置100を適用することができる。更にまた、帯状板ガラスGの製造装置は、フロート法による製造装置に限定されるものではなく、フュージョン法等の他の製造装置であってもよい。
【0030】
以下、異サイズ切りを行う切線加工装置10について説明するが、切線加工装置10は異サイズ切りに限定されるものではない。すなわち、帯状板ガラスGの搬送方向におけるガラス板の寸法精度を向上させることができる切線加工装置であれば、いわゆる横切線のみ帯状板ガラスGに加工する切線加工装置(図1において、横切線加工機16のみ備えた切線加工装置)にも適用できる。よって、異サイズ切りを行う切線加工装置10は、あくまで一例である。
【0031】
切線加工装置10は、帯状板ガラスGの搬送方向上流側に設置された縦切線加工機14と、その下流側に設置された横切線加工機16とから構成される。この縦切線加工機14によって帯状板ガラスGの搬送方向に平行な縦切線が帯状板ガラスGに加工され、その下流側で横切線加工機16により帯状板ガラスの搬送方向に直交する横切線が帯状板ガラスGに加工される。
【0032】
縦切線加工機14は、帯状板ガラスGの幅方向に設置された複数台のカッター18、18…を備えている。これらのカッター18、18…は、ローラコンベア12によって搬送中の帯状板ガラスGに対し、周知の進退移動手段によって進退移動され、進出移動されることにより帯状板ガラスGに所定の押圧力で押圧される。これによって、帯状板ガラスGの搬送方向に平行な縦切線が帯状板ガラスGに加工される。
【0033】
一方、横切線加工機16は、一枚のカッター20を備えており、このカッター20が帯状板ガラスGの搬送速度に同期して帯状板ガラスGの搬送方向に対して斜行移動されることにより、帯状板ガラスGの搬送方向に直交する方向の横切線が帯状板ガラスGに加工される。なお、図1、図2中の矢印Aは、帯状板ガラスGの搬送方向を示している。
【0034】
ここで、図3を参照して異サイズ切りと称される切線加工方法について説明する。
【0035】
この切線加工方法は、搬送中の帯状板ガラスGから2種類のサイズの異なる矩形状ガラス板G1、2を採板するための縦切線CV1〜5、及び横切線CH6〜11を、搬送中の帯状板ガラスGに加工する方法である。なお、採板されるガラス板のサイズは2種類に限定されるものではなく、3種類以上であってもよい。また、図3中の矢印Aは、帯状板ガラスGの搬送方向を示している。
【0036】
図3に示す縦切線CV1、2は、前記帯状板ガラス製造装置の溶融錫浴において縁ロールが当接された縁ガラスG5を、製品となる帯状板ガラスから切除するために加工されたものであり、縦切線加工機14のカッター18、18…のうち両側に配置された2台のカッター18、18によって加工される。この2台のカッター18、18は、帯状板ガラスGに対し所定の押圧力がかけられた状態で常時当接され、これによって、連続搬送されてくる帯状板ガラスGに、折り割りに良好な切込み深さの縦切線CV1、2が連続的に加工される。
【0037】
縦切線CV3、4は、ガラス板G1、G1…を採板するために加工されたものであり、縦切線加工機14のカッター18、18…のうち内側に配置された2台のカッター18、18によって加工される。この2台のカッター18、18は、進退移動手段により帯状板ガラスGの搬送速度に同期して搬送中の帯状板ガラスGに対し進退(上下)移動される。すなわち、縦切線CV3、4を加工する2台のカッター18、18は、切線加工開始点P1、P1に向けて進出移動されて帯状板ガラスGに当接され、その後、帯状板ガラスGに対し所定の押圧力がかけられた状態で当接を継続し、切線加工終了点P2、P2に到達したところで帯状板ガラスGから退避移動される。これによって、連続搬送されてくる帯状板ガラスGに、折り割りに良好な切込み深さの縦切線CV3、4が加工される。
【0038】
縦切線CV5は、ガラス板G1よりも大きいサイズのガラス板G2を採板するために加工されたものであり、縦切線加工機14のカッター18、18…のうち中央に配置されたカッター18によって加工される。このカッター18も同様に、進退移動手段により帯状板ガラスGの搬送速度に同期して搬送中の帯状板ガラスGに対し進退(上下)移動される。すなわち、縦切線CV5を加工するカッター18は、切線加工開始点P3に向けて進出移動されて帯状板ガラスGに当接され、その後、帯状板ガラスGに対し所定の押圧力がかけられた状態で当接を継続し、切線加工終了点P4に到達したところで帯状板ガラスGから退避移動される。これによって、連続搬送されてくる帯状板ガラスGに、折り割りに良好な切込み深さの縦切線CV5が加工される。
【0039】
縦切線CV3〜5を加工するための3台のカッター18の進出開始時期(切線加工開始時期)、及び退避開始時期が、実施の形態の搬送量検出装置100(図1参照)によって制御されている。これについては後述する。
【0040】
一方、横切線CH6〜9は、ガラス板G1を採板するために加工されたものであり、横切線加工機16のカッター20によって順次1本ずつ加工される。カッター20を斜行移動させるモータ64(図4参照)は、帯状板ガラスGの搬送速度に同期してその斜行移動速度が制御装置56によってモーション制御されており、これによって、帯状板ガラスGの搬送方向に直交する方向の横切線CH6〜9が帯状板ガラスGに加工される。また、カッター20は、エアシリンダ等のアクチュエータによって帯状板ガラスGに対し上下移動自在に設けられている。このアクチュエータによってカッター20は、良好な切込み深さの横切線CH6〜9を加工するために、切線加工開始点P5の所定量手前位置において予め下降が開始される。この後、カッター20はモータ64の駆動力により、ガイドフレーム21に沿って帯状板ガラスG上を斜行移動される。これによって、横切線CH6〜9が加工される。この後、カッター20は、切線加工終了点P6を所定量通過後に前記アクチュエータによって帯状板ガラスGから上昇移動され、その後、元の切線待機位置(図1、図2の実線で示した位置)に前記モータ64によって復帰移動される。
【0041】
図3に示す横切線CH10、11は、ガラス板G2を採板するために加工されたものであり、横切線加工機16のカッター20によって加工される。このカッター20の動作は、横切線CH6〜9を加工する動作と同様であるので説明は省略する。
【0042】
横切線CH6〜11を加工するためのカッター20の斜行移動開始時期(切線加工開始時期)が、実施の形態の搬送量検出装置100(図1参照)によって制御されている。これについては後述する。
【0043】
このように縦切線を加工するカッター18、18…及び横切線を加工するカッター20の上記動作によって、搬送中の帯状板ガラスGから2種類のサイズの異なる矩形状のガラス板G1、2を採板するための縦切線CV1〜5、及び横切線CH6〜11が、搬送中の帯状板ガラスGに加工される。
【0044】
異サイズ切りの切線加工方法においては、帯状板ガラスGから可能な限り多くのサイズの異なるガラス板を無駄なく採板するために、指定の各サイズのガラス板の採板予定に従って縦切線加工機14による縦切線CV3〜5の端部と横切線加工機16による横切線CH6〜11との距離を可能な限り小さくすることが望まれている。よって、前記距離を小さくするためには、縦切線CV3〜5を加工する縦切線加工機14のカッター18及び横切線CH6〜11を加工する横切線加工機16のカッター20の切線加工動作のON/OFF制御を、すなわち、搬送中の帯状板ガラスGに対するカッター18、20の進退移動制御を、精細に行う必要があり、それが実施の形態の搬送量検出装置100(図1参照)によって実行されている。
【0045】
カッター18の進退移動手段は、図4に示すようにサーボモータ24を備えており、このサーボモータ24及びカッター18は、不図示の送り手段を介して図1の梁部(ガイドフレーム)26に所定の間隔をもって取り付けられている。この梁部26は、ローラコンベア12に跨設されるとともに帯状板ガラスGの搬送方向に直交する方向に設置されている。また、前記送り手段であるボールねじ装置は、中空の梁部26内に設けられ、このボールねじ装置が駆動されることにより、梁部26に形成された水平なスリット28内においてカッター18が進退移動手段を介してスライド移動される。これによって、帯状板ガラスGの搬送方向に直交する方向のカッター18の位置が調整される。
【0046】
サーボモータ24は、帯状板ガラスGに縦切線を加工するために、カッター18を下降移動させ、帯状板ガラスGに対する押圧力を発生させる。このサーボモータ24のトルクは、図4に示すサーボアンプ54を介して制御装置56により制御されている。したがって、サーボモータ24のトルクを、制御装置56によって制御することにより、帯状板ガラスGに対するカッター18の押圧力が設定される。
【0047】
また、制御装置56には、サーボモータ24に加えられる電流値を示す信号(サーボモータ24のトルクを示す信号)が電流検出器60から加えられるデータとともに、サーボモータ24の回転位置、又は回転速度を示すパルス信号がパルスジェネレータ(PG)62からサーボアンプ54を経由し加えられている。制御装置56は、パルスジェネレータ(PG)62からのパルス信号をカウントすることにより、サーボモータ24の回転位置を検出することができ、また、所定時間内に加えられるパルス信号をカウントすることにより、サーボモータ24の回転速度を検出することができる。更に、制御装置56は、電流検出器60からのトルクを示す信号、又はパルスジェネレータ(PG)62からのパルス信号に基づいて、サーボモータ24をトルク制御するためのトルク指令信号をサーボアンプ54に出力する。サーボアンプ54は、前記指令信号に基づいてサーボモータ24をトルク制御する。
【0048】
更にまた制御装置56は、実施の形態の搬送量検出装置100から出力されるライン速度(帯状板ガラスGの搬送速度)に基づき、サーボモータ24によるカッター18の進退移動時期を制御するとともに、モータ64によるカッター20の切線加工開始時期を制御する。これによって、制御装置56は、異サイズ切りの切線加工をカッター18、20によって実行させる。
【0049】
次に、前記の如く構成された帯状板ガラスGの切線加工装置10の動作について説明する。
【0050】
切線加工装置10は、ローラコンベア12によって搬送中の帯状板ガラスGに、カッター18、18…によって帯状板ガラスGの搬送方向に平行な縦切線CV3〜5(図3参照:以降、縦切線CV1、2の説明は省略する)を加工する。そして、帯状板ガラスGに対するカッター18の進退移動手段として、応答性の高いサーボモータ24を使用し、このサーボモータ24を制御装置56によってトルク制御することにより、帯状板ガラスGに対するカッター18の押圧力を制御して帯状板ガラスGに縦切線CV3〜5を加工する。
【0051】
次に、実施の形態の搬送量検出装置100について説明する。
【0052】
この搬送量検出装置100は、図1、図2、図5に示すように、搬送中の帯状板ガラスGに当接して回転する第1ロール102と、この第1ロール102に当接して回転する第2ロール104とを備えるとともに、図5の如く第2ロール104の回転量に応じてパルス信号を発生するエンコーダ(信号発生器)106を備えている。
【0053】
すなわち、この搬送量検出装置100による帯状板ガラスGの搬送量検出方法は、搬送中の帯状板ガラスGに第1ロール102を当接させて、第1ロール102を帯状板ガラスGの搬送に追従させて回転させるとともに、第1ロール102に当接する第2ロール104を第1ロール102に追従させて回転させ、第2ロール104の回転量に応じて、エンコーダ106から発生するパルス信号に基づいて、帯状板ガラスGの搬送量を検出するものである。
【0054】
第1ロール102は、金属製のロール本体108と、ロール本体108の外周面にライニング加工されたゴム製又は樹脂製のシート110とから構成される。このシート110が緩衝材となり、帯状板ガラスGの表面に第1ロール102が接触することによる傷が付かないようにしている。また、シート110が帯状板ガラスGの表面に密着することから、帯状板ガラスGに対する第1ロール102の滑りが防止されるので、帯状板ガラスGの搬送量の検出精度が高められている。
【0055】
実施の形態の搬送量検出装置100は、帯状板ガラスGにシート110を介して当接される第1ロール102が熱膨縮して角速度(ω)が変動しても、第1ロール102の周速度(Vt)は不変であること、すなわち、第1ロール102の周速度(Vt)は第1ロール102の直径、角速度に影響されないことに着目してなされたものである。
【0056】
すなわち、実施の形態の搬送量検出装置100によれば、雰囲気温度によって直径が変動する第1ロール102のシート110の表面に、第2ロール104を当接して、第1ロール102の不変な周速度(Vt)で第2ロールを回転させ、第2ロール104の角速度(ω)回転量に応じてエンコーダ106から発生するパルス信号に基づいて、帯状板ガラスGの搬送量を検出する。
【0057】
これにより、実施の形態の搬送量検出装置100によれば、帯状板ガラスGの搬送量を正確に検出することができ、結果的に、切線加工されたガラス板の、帯状板ガラスGの搬送方向における寸法精度が向上する。なお、第2ロール104は、低熱膨張材料で製作されることが好ましいが、これに限定されるものではない。すなわち、第2ロール104は、熱膨張率(線膨張率)が12×10−6/℃以下でよく、8×10−6/℃以下であることが好ましい。また、1×10−6/℃以下の低熱膨張材料で製作することがより好ましい。第2ロール104の熱膨張率が12×10−6/℃以下、8×10−6/℃以下、1×10−6/℃以下であれば、雰囲気温度が1℃変化したときの帯板状ガラスGの搬送方向の長さ1mにおける寸法精度(寸法誤差)は、それぞれ0.012mm以下、0.008mm以下、0.001mm以下にできる。
【0058】
第2ロールの材質は、前記熱膨張率を満たすものであれば特に限定されず、鉄、炭素鋼、クロム鋼、ステンレス鋼(SUS410)、チタン、白金、インバー、スーパーインバー、又はステンレスインバー等が挙げられる。
【0059】
一方、この搬送量検出装置100が適用された帯状板ガラスGの切線加工装置10によれば、第2ロール104の回転量をエンコーダ106によって検出し、エンコーダ106から出力されるパルス数をパルスカウンタ112によってカウントする。一方で、制御装置56の記憶部(不図示)には、切線加工開始時期として判断される所定のパルス数が予め記憶されている。
【0060】
そして、パルスカウンタ112によってカウントされたパルス数が、前記記憶部に記憶されている前記所定のパルス数となったときに、カッター18、20による切線加工を開始するように制御装置56がカッター18のサーボモータ24を制御するとともに、カッター20のモータ20を制御する。
【0061】
また、前記記憶部には、縦切線CV1〜5の長さに対応するパルス数が記憶されている。そのパルス数がパルスカウンタ112によってカウントされたタイミングで、制御装置56が、カッター18のサーボモータ24を制御して、カッター18を帯状板ガラスGから退避移動させる。
【0062】
このように実施の形態の切線加工装置10によれば、帯状板ガラスGの搬送量を正確に検出することができる搬送量検出装置100を使用し、この搬送量検出装置100から出力される信号に基づいてカッター18、20の切線加工開始時期、及びカッター18の退避移動時期を判断するようにしたので、帯状板ガラスGを精度よく切線加工することができる。
【0063】
また、切線加工装置10の下流側に設置されているガラス折り装置(不図示)のガラス折り時期についても、搬送量検出装置100からの搬送量情報に基づいて制御することが好ましい。これにより、帯状板ガラスGを縦切線CV3〜5と横切線CH6〜11とに沿って正確に折ることができる。
【0064】
なお、実施の形態では、第1ロール102の鉛直方向上方に第2ロール104を配置したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、第2ロール104を鉛直方向に対して傾斜した位置、又は図7に示すように、第1ロール102の真横に配置してもよい。
【符号の説明】
【0065】
G…帯状板ガラス、10…切線加工装置、12…ローラコンベア、14…縦切線加工機、16…横切線加工機、18…カッター、20…カッター、21…ガイドフレーム、22…平行リンク機構、24…サーボモータ、26…梁部、28…スリット、30…支持板、32…ボールナット部、34、36、38、40…回動軸、42、44…回動アーム、46…カッター支持ロッド、48…上部ブラケット、50…下部ブラケット、52…衝撃緩衝部材、54…サーボアンプ、56…制御装置、58…ライン速度検出器、60…電流検出器、62…パルスジェネレータ(PG)、64…モータ、100…搬送量検出装置、102…第1ロール、104…第2ロール、106…エンコーダ、108…ロール本体、110…シート、112…パルスカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される板状物に当接して回転する第1ロールと、
前記第1ロールに当接して回転する第2ロールと、
前記第2ロールの回転量に応じて信号を発生する信号発生器と、
を備えたことを特徴とする板状物の搬送量検出装置。
【請求項2】
前記第2ロールは、熱膨張率が12×10−6/℃以下である請求項1に記載の板状物の搬送量検出装置。
【請求項3】
前記第2ロールは、熱膨張率が8×10−6/℃以下である請求項1に記載の板状物の搬送量検出装置。
【請求項4】
搬送される板状物に第1ロールを当接させて該第1ロールを回転させるとともに、前記第1ロールに当接する第2ロールを回転させ、前記第2ロールの回転量に応じて発生する信号から前記板状物の搬送量を検出することを特徴とする板状物の搬送量検出方法。
【請求項5】
搬送される板状物に当接して回転する第1ロールと、
前記第1ロールに当接して回転する第2ロールと、
前記第2ロールの回転量に応じて信号を発生する信号発生器と、
ガイドフレームに沿って走行し、前記板状物を切線加工する切線加工機と、
前記信号に基づいて前記切線加工機による前記板状物の切線加工開始時期を制御する制御装置と、
を備えたことを特徴とする板状物の切線加工装置。
【請求項6】
搬送される板状物に第1ロールを当接させて該第1ロールを回転させるとともに、前記第1ロールに当接する第2ロールを回転させ、前記第2ロールの回転量に応じて発生する信号に基づいて、板状物を切線加工する切線加工機による前記板状物の切線加工開始時期を制御することを特徴とする板状物の切線加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−12123(P2012−12123A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147495(P2010−147495)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】