説明

架橋ポリイミド、それを含む組成物及びその製造方法

耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れたポリイミドの性質を維持し、さらに、誘電率が公知のポリイミドよりも低い、新規なポリイミド、それを含む組成物及びその製造方法が開示されている。本発明のポリイミドは、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを、触媒の存在下、重縮合させることにより製造された、誘電率が2.7以下の架橋ポリイミドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、架橋ポリイミド、それを含む組成物、その製造方法及びその用途に関する。本発明の架橋ポリイミドは、従来の線状・結晶性ポリイミドと同様に、耐熱性、絶縁性、機械特性にすぐれると同時に、非結晶性、架橋によってそれよりも更に接着性、寸法安定性、耐薬品性(ひび割れ防止)、熱分解性に優れていて、フィルム、多層基板、多層積層品、成型品として利用することができ、宇宙航空産業、電気・電子部品、車輛部品として有用な材料である。特に、本発明の架橋ポリイミドは、誘電率が低く、電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品として特に有用である。
【背景技術】
集積回路はその微細な加工技術の進歩によって高集積化、多機能化、高密度化され、飛躍的な高性能化の一途をたどっている。その結果、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力が増大するだけでなく、遅延時間が増大し、デバイスの信号スピードが低下する大きな原因となっている。その解決策の一つとして、配線周辺を低誘電率の層間絶縁膜で被うことによって、寄生容量を下げ、デバイスの高速化に対応することができる。層間絶縁膜は2001年には0.25μm幅となり、更に0.18μmの幅の層間絶縁膜となる。この際、低誘電率の膜が要求されている。ポリイミドは耐熱性、電気絶縁性、機械強度がすぐれているが、従来のポリイミドの誘電率は3.5〜3.0である。低誘電率化のためにフッ素原子の導入や微細な空気孔を導入し、又はフラーレン系の多孔質材料を導入する方法も試みられているが、ポリイミドの品質の劣化となるためポリイミド膜自身による低誘電率化が求められている。
一方、線状高分子と分子構造が大きく異なったデンドリマー(dendrimers)、デンドロン(dendrons)、多分岐ポリマー(hyperbranched polymers)が合成され、機能と構造の両面から注目を集めている(「デンドリマーの科学と機能」(岡田鉦彦編)アイピーシー(東京)2000年)。
デンドリマーは規則的樹木状の多分岐構造をもつ高分子であって、化学構造、分子量、分子形状、分子の大きさが厳密に制御される。デンドリマーとしてのポリイミドの報告例は少ないが、AB型及びAB型の多分岐ポリイミドの報告がある(Macromolecules(2000)33、1114;Macromolecules(2000)33、6937;Macromolecules(2001)34、3910;Macromolecules(2002)35、5372))。いずれも、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を合成し、ついで高温処理(300℃)、化学処理(無水酢酸とピリジンに浸漬)によってイミド化する二段階反応を用いる。多分岐ポリイミドとして、トリアミン(tris−4−aminophenyl)amineと酸ジ無水物を用いて、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を生成し、ついで加熱処理又は化学処理によってHyperbranched Polyimidesを合成した(Macromolecules(2000)33、4639)。また、多分岐ポリマーはデンドリマーと類似の性質を示し、低粘性、高溶解性、非結晶性、多官能性の特徴を示す(Macromolecules(2000)33、4639;Macromolecules(2002)35、3732)。
【発明の開示】
本発明の目的は、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れたポリイミドの性質を維持し、さらに、誘電率が公知のポリイミドよりも低い、新規なポリイミド、それを含む組成物及びその製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、従来の線状・結晶性ポリイミドと同様に、耐熱性、絶縁性、機械特性にすぐれると同時に、それよりも更に接着性、寸法安定性、耐薬品性(ひび割れ防止)及び/又は熱分解性に優れていて、フィルム、多層基板、多層積層品、成型品等として利用することが可能な新規な架橋ポリイミドを含む組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れたポリイミドの性質を維持し、さらに、誘電率が公知のポリイミドよりも低い、新規なポリイミドを絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材として含む、電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品を提供することである。
本願発明者は、鋭意研究の結果、本願発明者らが先に発明した、トルエン又はキシレンを含む溶媒中において、触媒を用いた、テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族ジアミンから直接ポリイミドを形成するポリイミドの製造方法において、テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族ジアミンとの反応にテトラアミンを共存させることにより、ポリイミドに架橋構造及び環化構造が付与され、公知の線状ポリイミドと同様に、耐熱性、絶縁性、機械特性にすぐれると同時に、それよりも更に誘電率が低いポリイミドを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを、触媒の存在下、重縮合させることにより製造された、誘電率が2.7以下の架橋ポリイミドを提供する。また、本発明は、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを、トルエン又はキシレンを含有する極性溶媒中で触媒の存在下、加熱して縮合させることを含む、架橋ポリイミドを含む組成物の製造方法を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の方法により製造された架橋ポリイミド組成物を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の、誘電率が2.7以下の架橋ポリイミドを含む絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材を含む、電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品を提供する。
本発明により、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性に優れたポリイミドの性質を維持し、さらに、誘電率が公知のポリイミドよりも低い、新規なポリイミドが初めて提供された。特にジアミノシロキサン含有ポリイミドは1.9〜2.2の超低誘電率を示し、高密度、高集積化回路に特に必要とされ、層間絶縁膜、積層品、多層フレキシブル基板に有用である。また、本発明のポリイミドは、通常、室温でゲル状であるが、線状ポリイミド溶液と混合するか、線状ポリイミド溶液中で架橋反応ポリイミドを生成すると、均一な溶液となる。
また、本発明の方法により製造された組成物中の架橋ポリイミドは、非結晶ポリイミドで密着性、寸法安定性、高い熱分解への抵抗にすぐれ、耐候性、耐薬品性(ひび割れ防止)にすぐれている。フィルム、積層品、多層フレキシブル基板、表面保護膜、太陽電池、油送管の内部保護(ひび割れ防止)等に利用することができる。
また、本発明の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品では、絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材として、従来のポリイミドよりも誘電率が低いポリイミドが用いられるので、デバイスの消費電力を少なくし、信号スピードを大きくし、信号の伝送損失を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で製造したポリイミドフィルムの誘電率の測定波長と誘電率又はタンジェントδの測定値の関係を示す図である。
図2は、実施例8で製造したポリイミドフィルムの誘電率の測定波長と誘電率又はタンジェントδの測定値の関係を示す図である。
図3は、SiOの誘電率の測定波長と誘電率又はタンジェントδの測定値の関係を示す図である。
図4は、空気の誘電率の測定波長と誘電率又はタンジェントδの測定値の関係を示す図である。
図5は、ビス−(3,4−ジアミノベンゾイル)−ピペラジンのNMRを示す。
図6は、実施例17のirスペクトルを示す。
図7は、実施例14の分子量分布曲線を示す。
図8は、実施例15の分子量分布曲線を示す。
図9は、実施例14のTG−GTA曲線を示す。
図10は、参考例2のTG−GTA曲線を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
上記の通り、本発明の架橋ポリイミドは、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを重縮合させることにより製造される。テトラアミンをアミン成分の一部として用いることにより、架橋構造が生成し、また、それによって大環化構造が生じる(これについては後で詳述する)。そして、この架橋・大環化構造によって、これまでに考えられなかった低誘電率のポリイミドが得られる。
本発明のポリイミドの誘電率は、2.7以下、好ましくは2.2以下である。誘電率の下限は、特に限定しないが、約1.9のものが得られている。したがって、本発明の誘電率の範囲は、通常、約1.9〜2.7、好ましくは約1.9〜2.2である。誘電率の測定は、下記実施例に具体的に記載するような常法により行うことができる。すなわち、市販のLCRメーターを用い、その取り扱い説明書に記載された常法により行うことができる。下記実施例では、周波数1000KHz及び周波数3000KHzにおける誘電率を測定しており、両者の測定結果はほぼ一致しているが、1000KHz及び3000KHzの周波数のいずれかで測定した誘電率が2.7以下であれば、本発明における誘電率についての要件を満足するものと解釈する。
本発明のポリイミドの製造に用いられるテトラアミンは、テトラアミンであれば架橋構造及び大環化構造(後述)を形成することができるので何ら限定されないが、本発明の効果をより優れたものとする観点から、芳香族テトラアミン、特に2個ないし4個のベンゼン環を含むテトラアミンが好ましく、特に、4個のベンゼン環を含むテトラアミンが好ましい。また、基本骨格に対して、4つのアミノ基が左右及び上下対称(化学式に記載した場合に、いずれかの方向から見て左右及び上下対称になる)に付いているテトラアミン(以下、「H型テトラアミン」ということがある)が好ましく、下記構造式(1)で示されるビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ピペラジン(以下、「BDP」と呼ぶことがある)が最も好ましい。なお、BDPは、下記合成例に具体的に記載するように、N−メチルピロリドン(NMP)中で、3,5−ジアミノ安息香酸とピペラジンとを反応させる公知の方法により製造することができる。BDPの他に好ましいテトラアミンの例として、下記構造式(2)で示されるビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、下記構造式(3)で示されるビス(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ジフェニルスルホン、下記構造式(4)で示されるビス(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ビフェニル、下記構造式(5)で示されるビス(9,9’−4−アミノフェニル)−2,7−ジアミノ−フルオレン及び下記構造式(6)で示されるビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ジアミノベンゼンを挙げることができる。これらのテトラアミンの製造方法自体も公知であり、下記合成例に具体的に記載されている。


なお、テトラアミンは、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。
本発明のポリイミドの製造に用いられるテトラカルボン酸ジ無水物は、特に限定されるものではなく、公知のポリイミドの製造に用いられているいずれのテトラカルボン酸ジ無水物であってもよい。好ましい例として、ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、ピロメリット酸ジ無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)プロパンニ無水物、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物、ビス(カルボキシフェニル)スルホンニ無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)エーテルニ無水物、チオフェンテトラカルボン酸ジ無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物等の芳香族酸ジ無水物等をあげることができる。テトラカルボン酸ジ無水物は、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。
本発明のポリイミドの製造に用いられる芳香族ジアミンは、特に限定されるものではなく、公知のポリイミドの製造に用いられているいずれの芳香族ジアミンであってもよい。好ましい例として、1,4−ベンゼンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、2,4−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−アミノ−3,3’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、4,4’−メチレンビス(ベンゼンアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以後m−DADEという)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチリジン−4,4’−ビス(ベンゼンアミン)、3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、2,2−ビス(4(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(m−TPEという)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDAという)が用いられる。芳香族ジアミンは、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。
更に、ジアミノシロキサンも使用することができる。「ジアミノシロキサン」は、ポリイミドの主鎖を構成する部分が、シロキサン構造から成るジアミンを意味する。シロキサン構造のケイ素原子の数は、1〜50程度が好ましい。シロキサン構造中の各ケイ素原子は、1又は2個の低級(C−C)アルキル基及び/又は低級(C−C)アルコキシ基で置換されていてもよい。好ましい例として、下記一般式(7)で示すものを挙げることができる。

(ただし、式中、R、R、R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシル基、R及びRは、互いに独立に、単結合(すなわちNHとSiとが結合)、炭素数1〜6のアルキレン基又は−R−O−(ただし、Rは炭素数1〜6のアルキレン基)、nは0〜49の整数を表す)。
一般式(7)で表されるジアミノシロキサンのうち、特に好ましいものとして、下記構造式(8)に示すものを挙げることができる。

(ただし、nは0〜49の整数を表す)
ジアミノシロキサンのアミン価(化合物の分子量をアミノ基の数で除した値)が200〜1000程度のものが好ましい。
なお、ジアミノシロキサンは、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。
下記実施例に具体的に示されるように、ジアミノシロキサンをジアミン成分の1つとして用いることにより、特に低い誘電率、すなわち、1.9〜2.2程度の極めて低い誘電率を有するポリイミドを得ることができる。ポリイミドがジアミノシロキサンを含む場合、ジアミノシロキサンの全ジアミン成分中の含有量は、特に限定されないが、9〜40モル%が好ましく、さらに18〜30モル%が好ましい。なお、本発明のポリイミドがジアミノシロキサンを含まない場合には、誘電率は約2.4〜2.7である。従って、本発明は、また、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを、トルエン又はキシレンを含有する極性溶媒中で触媒の存在下、加熱して縮合させる際に、ジアミン成分の一部として、ジアミノシロキサンを用いることにより、製造される架橋ポリイミドの誘電率を1.9ないし2.2に低下させる、架橋ポリイミドの誘電率を低下させる方法をも提供するものである。
本発明のポリイミドの製造に用いられる触媒としては、酸−塩基二成分触媒を好ましく用いることができる。酸によりイミド化反応が触媒され、塩基の存在により酸は容易に溶媒に溶ける。酸としては、200℃程度に加熱することにより容易に熱分解又は気化して飛散するものが好ましく、好ましい具体例として、シュウ酸、マロン酸、ギ酸、ピルビン酸及びクロトン酸を挙げることができる。例えば、シュウ酸及びマロン酸は、加熱するとそれぞれ以下のように熱分解して飛散する。200℃程度に加熱することにより容易に熱分解又は気化して飛散する酸は、成形時の過熱により飛散させて成形物から除去することができるので好ましい。これらの酸は、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。

酸−塩基二成分触媒の塩基としては、酸触媒を溶媒に溶かすことができる塩基であれば特に限定されないが、ピリジン及びメチルモルフォリンのような複素環式アミンが好ましい。塩基は、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。
また、化学反応により酸を生じる、ラクトン−塩基二成分触媒も好ましく用いることができる。ラクトンと塩基と水との次の平衡反応を利用した触媒系を用いて行なうことができる。
{ラクトン}+{塩基}+{水} = {酸基}{塩基}
この{酸基}{塩基}系を触媒として、140〜180℃に加熱してポリイミド溶液を得ることができる。イミド化反応により生成する水は、反応溶媒であるトルエン又はキシレンと共沸させて反応系外へ除く。反応系のイミド化が終了した時点で、{酸基}{塩基}はラクトンと塩基になり、触媒作用を失うと同時にトルエンと共に反応系外へ除かれる。この方法によるポリイミド溶液は、上記触媒物質が、反応後のポリイミド溶液に含まれないため高純度のポリイミド溶液として、そのまま基材フィルム上に塗布することができる。ここで、ラクトンとしては、γ−バレロラクトンが好ましく、塩基としては、ピリジン及びメチルモルフォリンのような複素環式アミンが好ましい。なお、例として、γ−バレロラクトンとピリジンの反応を下記に示す。

上記した二成分触媒の酸又はラクトンの添加量は、特に限定されないが、反応開始時における酸又はラクトンの濃度はテトラカルボン酸ジ無水物の濃度に対して5〜30モル%、好ましくは5〜20モル%程度であり、塩基の濃度は酸又はラクトンに対して100〜200モル%程度が好ましい。
反応に用いる溶媒は、トルエン又はキシレンを含む極性溶媒である。トルエン又はキシレンを含むことにより、イミド化により生じる水を、トルエン又はキシレンと共沸させて反応系外に除くことができる。なお、トルエンとキシレンを混合して用いることも可能である。極性溶媒は、特に限定されないが、好ましい例として、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して用いることも可能である。
上記イミド化反応に供するテトラカルボン酸ジ無水物とアミン成分(ジアミン及びテトラアミン)との混合比率(酸/アミン)は、モル比で1.05〜0.95程度が好ましい。また、反応開始時における反応混合物全体中のテトラカルボン酸ジ無水物の濃度は4〜16重量%程度が好ましく、酸又はラクトンの濃度は0.2〜0.6重量%程度が好ましく、塩基の濃度は0.3〜0.9重量%程度が好ましく、トルエン又はキシレンの濃度は6〜15重量%程度が好ましい。また、反応時間は特に限定されず、製造しようとするポリイミドの分子量等により異なるが、通常3〜15時間程度である。また、反応は撹拌下に行なうことが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、160℃〜200℃が好ましい。なお、上記のように酸を触媒として用いる場合には、反応温度は、酸の熱分解温度又は気化温度よりも低くすることが好ましい。
上記の反応により、テトラカルボン酸ジ無水物とアミン成分(ジアミン及びテトラアミン)が直接イミド化反応してポリイミドが生成される。そして、テトラアミンが架橋剤として機能することにより、架橋ポリイミドが形成される。また、この架橋により、大きな環化構造が形成されるものと考えられる。これらの架橋、大環化構造により、本発明のポリイミドは、公知の線状ポリイミドよりも低い誘電率を与える。なお、架橋、大環化構造の形成は、後述する逐次反応により合成する共重合体の製造方法の説明において説明する。
本発明のポリイミドは、ホモポリマー(テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンがそれぞれ1種類)であってもよいし、共重合体であってもよい。特に、複数の所望のテトラカルボン酸ジ無水物及び/又は複数の所望の芳香族ジアミンを用いて、逐次反応により共重合体とすることにより、接着性や寸法安定性の付与、低誘電率化等の任意の所望の性質又は機能をポリイミドに付与することができるので好ましい。したがって、本発明の好ましい1態様では、逐次反応により共重合ポリイミドが製造される(以下、逐次反応により製造される共重合ポリイミドを便宜的に「逐次合成共重合ポリイミド」と呼ぶことがある)。
逐次合成共重合ポリイミドを製造する場合には、先ず、上記方法により、テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物(A)及び芳香族ジアミン(B)を反応させてイミドオリゴマーを生成させる。なお、イミドオリゴマーは、上記方法において、反応時間を、通常、60〜120分間程度、好ましくは60〜90分間程度とすることにより生成させることができる。次いで、テトラカルボン酸ジ無水物(A)及び芳香族ジアミン(B)を加えてさらに反応させる。このような逐次反応により、逐次合成共重合体が形成される。なお、所望により、さらに第3のテトラカルボン酸ジ無水物(A)及び芳香族ジアミン(B)を加えて反応させてもよい。さらに第4以降のテトラカルボン酸ジ無水物及び/又は芳香族ジアミンを添加することも可能である。最終的には、テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族アミンは、1:0.95〜1.05のモル比で用いることが好ましい。添加順及び添加量を規制して逐次反応を行うことにより、所望の高分子量の逐次合成共重合ポリイミドを生成させることができる。
イミドオリゴマーの形成について例を挙げて説明する。1モルのH型テトラアミンと4モルのテトラカルボン酸ジ無水物及び4モルの芳香族ジアミンとを下記反応式に示すように反応させると、イミドオリゴマー[I]が生成する。

(ただし、式中、Aはテトラカルボン酸ジ無水物、Bは芳香族ジアミンを示す)
また、H型テトラアミン1モルと8モルのテトラカルボン酸ジ無水物と4モルの芳香族ジアミンとを下記反応式に示すように反応させると、イミドオリゴマー[II]が生成する。

(ただし、式中、Aはテトラカルボン酸ジ無水物、Bは芳香族ジアミンを示す)
イミドオリゴマー[I]又は[II]の生成に用いられるテトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンは、何ら限定されないが、有効なテトラカルボン酸ジ無水物の好ましい例として、ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物(BPDAという)、ビロメリット酸ジ無水物(PMDAという)及びビス(ジカルボキシフェニル)エーテル(ODPAという)を挙げることができる。また、イミドオリゴマー[I]又は[II]の生成に有効な芳香族ジアミンの好ましい例として、ジアミノトルエン(DATという)、ジアミノジフェニルエーテル(DADEという)、9.9−(4−アミノフェニル)フルオレン(FDAという)及びビス(4−アミノフェノキシ)−1.3−ベンゼン(mTPEという)を挙げることができる。
次に、生成されたイミドオリゴマー[I]又は[II]と、逐次反応によって、更に第2のテトラカルボン酸ジ無水物(A)と第2の芳香族ジアミン(B)とを反応させると、下記のように共重合中間体[III]又は[IV]が形成される。

上記は基本的な反応であるが、この変形として、例えば下記のような共重合中間体[V]又は[VI]を生成させてもよい。

上記のように、1モルのH型テトラアミンに対して反応させる、テトラカルボン酸ジ無水物のモル数と、芳香族ジアミンのモル数に2モルの差を設けることにより、共重合中間体の4つの末端のうち、2つをテトラカルボン酸ジ無水物残基に、2つを芳香族ジアミン残基にすることができる。共重合中間体[III]ないし[VI]のような、4つの末端のうち、2つがテトラカルボン酸ジ無水物残基で、2つが芳香族ジアミン残基である共重合体中間体を、便宜的に下記式[VII]で表す。

(ただし、式中、aは末端のテトラカルボン酸ジ無水物残基、bは末端の芳香族ジアミン残基を表す)
次いで、このような共重合中間体同士が次のように反応して、架橋構造が形成され、架橋共重合ポリイミドが形成される。また、上記架橋構造の形成に伴い、下記反応式に示すように、大環化構造が形成されると考えられる。下記のような環状構造を、「大環化」構造と呼んでいるのは、ベンゼン環やピペラジン環のような、モノマー化合物自体に含まれる環状構造と区別するためである。

(ただし、式中の円は、形成された大環化構造の部分を強調するために記載したものであり、芳香環のような共鳴二重結合を示すものではない)
上記イミドオリゴマーに、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを加えて逐次反応させることにより、上記した共重合中間体を経てこのような、架橋・大環化構造を形成させる反応の条件は、特に限定されないが、通常、160℃〜200℃で3時間〜15時間程度反応させることが好ましい。用いる触媒や反応溶媒は、上記の通りである。
上記共重合中間体を経由して架橋・環化ポリイミドの生成は、分子量が大きくなるにつれ架橋と環化反応を併発して分子量分布が広がりを示し、Mw/Mnの比が2を越して大きくなる。分子量分布曲線が単一な山の形から二つ以上の山を示すことがある。
なお、架橋・大環化構造の形成を、一般式[VII]で示される共重合中間体を経由する共重合架橋ポリイミドを例に挙げて説明したが、ホモポリマーの場合や、1モルのイミドオリゴマーに添加するテトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンのモル数が上記に例示したモル数と異なっている場合であっても、上記と同様なメカニズムにより、上記した架橋、大環化構造を少なくとも部分的に含むポリイミドが生成される。
架橋・環化ポリイミドの溶液は、反応中は均一な溶液であるが、室温にすると通常、ゲルが折出する。再び100〜180℃に加熱すると低粘度の溶液となる。
室温で溶液状態のポリイミドにするためには、架橋・大環化ポリイミド溶液と線状ポリイミド溶液を混合して溶解すると室温で安定なポリイミド溶液となる。また、線状ポリイミド中で架橋環化ポリイミドを生成すると、室温で安定な液状組成物とすることができる。なお、線状ポリイミド溶液は、テトラアミンを用いずに上記した本発明の製造方法を行うことにより製造することができ、このような線状ポリイミド溶液の製造方法自体は公知である(米国特許第5502143号)。この場合、混合溶液中の架橋ポリイミドと線状ポリイミドとの混合比率は、特に限定されず、用いる架橋ポリイミド及び線状ポリイミドの性質並びに所望する混合物の性質に応じて任意に選択することができるが、通常、モル比で20:80〜80:20程度である。
架橋ポリイミドと線状ポリイミドの混合物を含む組成物の製造方法として、上記した、機械的混合、すなわち、調製した架橋ポリイミド溶液と、線状ポリイミド溶液とを機械的に混合する方法(このようにして得られた組成物を便宜的に「機械的混合ポリイミド組成物」と呼ぶことがある)に加え、(1)上記本発明の方法により製造した架橋ポリイミド組成物(上記共重合中間体の段階でもよい)に、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを加えて縮合反応を行う方法、及び(2)線状ポリイミド組成物中で、上記本発明の製造方法を行い、架橋ポリイミドを生成させる方法がある。なお、このように縮合反応を一方のポリイミド組成物中で行って製造した、架橋ポリイミドと線状ポリイミドの両者を含む組成物を便宜的に「混合反応型ポリイミド組成物」と呼ぶことがある)。なお、機械的混合ポリイミド組成物は、不均質となる恐れがあり、以下に詳述する混合反応型ポリイミド組成物がより好ましい。
(1)の方法では、後から添加したテトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンは、互いに反応して線状ポリイミドを生じ、組成物は、架橋ポリイミドと線状ポリイミドとの混合物になる。もっとも、架橋ポリイミドと線状ポリイミドとは絡み合っていると考えられる。この場合、後から添加するテトラカルボン酸ジ無水物の量は、任意に設定できるが、架橋ポリイミドと線状ポリイミドとの混合物は重量比にして通常、20/80〜80/20程度、好ましくは25/75〜60/40程度である。なお、反応は、上記と同様、通常、160℃〜200℃で3時間〜10時間程度行うことが好ましい。
(2)の方法では、線状ポリイミド組成物中で、テトラアミンを用いる上記本発明の製造方法を行い、架橋ポリイミドを生成させる。この場合、線状ポリイミド組成物は、上記本発明の方法においてテトラアミンを用いない方法(米国特許第5502143号)により製造することができる。線状ポリイミドの分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量として2万5千〜40万が好ましく、さらに好ましくは3万〜20万である。架橋ポリイミドと線状ポリイミドとは絡み合っていると考えられる。反応条件は、上記と同様、通常、160℃〜200℃で3時間〜10時間程度が好ましい。また、添加するテトラアミンの量は、適宜選択できるが、通常、線状ポリイミドを構成するテトラカルボン酸ジ無水物(モノマー換算)1モルに対して8/1〜12/1モル程度が適当である。
なお、架橋ポリイミドと線状ポリイミドの混合物は、テトラアミンに対して、上記した逐次合成反応よりも過剰量のテトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを反応させることによっても生じる。このようなものも本発明の範囲に含まれる。すなわち、上記本発明の製造方法により得られる組成物には、架橋されなかった線状ポリイミドを含むものも包含される。もっとも、所望の特性を的確に発現させるためには、上記のような逐次合成共重合体とすることが好ましい。
二種のポリイミドの機械的混合ポリイミド溶液と、二種のポリイミドの混合反応型ポリイミド溶液とは、化学的、物理的特性に違いがある。二種の機械的混合ポリイミド、混合反応型ポリイミドも強いフィルム特性を示す。180℃で乾燥したポリイミドは、PCT試験(120℃飽和水蒸気中48時間)では合格しない。220℃で2時間以上加熱したポリイミドフィルムは、PCT試験に合格する。
本発明の架橋ポリイミドは、他の結晶性エンジニヤリングプラスチックと混合して複合材料とすることができる。例えば、ナイロン、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等である。また、極性溶媒に可溶のポリマー・・・ナイロン、フッ素樹脂、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリウレタンと共溶した溶液にして、エンジニヤリングプラスチックの改質をすることができる。
本発明の組成物は、室温で安定なポリイミド溶液にすることにより加工が容易となり、スピンコート、流延法によるフィルム、多層基板、積層品等を容易に製造することができる。
上記した、本発明の架橋ポリイミド組成物に光酸発生剤を配合することにより、感光性ポリイミド組成物にすることができる。光酸発生剤は、光を照射すると酸が発生する化合物であり、この酸によりポリイミドが溶解される。したがって、ポリイミドをフィルム状にし、所望のパターン形状を有するフォトマスクを介して選択露光すると、フィルムのパターニングを行うことができる。ポリイミド組成物に光酸発生剤を配合して感光性を付与する技術自体は既に本出願人が先に特許出願して公知となっており(WO99/19771)、この技術を本発明の組成物にそのまま適用することができる。
すなわち、光酸発生剤とは、光線又は電子線の照射を受けると酸を発生する化合物である。酸の作用により、ポリイミドは分解されてアルカリ可溶性になるので、本発明で採用される光酸発生剤は特に限定されず、光線又は電子線の照射を受けると酸を発生するいずれの化合物をも用いることができる。好ましい光酸発生剤として感光性キノンジアジド化合物及びオニウム塩を挙げることができる。
感光性キノンジアジド化合物の好ましい例として、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホンの低分子芳香族ヒドロキシ化合物、例えば2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン並びに2−及び4−メチル−フェノール、4,4‘−ヒドロキシ−プロパンのエステルを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
オニウム塩の好ましい例として、アリールジアゾニウム塩、例えば4(N−フェニル)アミノフェニルジアゾニウム塩、ジアリールハロニウム塩、例えばジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、例えばビス{4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル}スルフィド、ビスヘキサフルオロアンチモナートを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
前記光酸発生剤を前記ポリイミドの重量に対し10から50重量%含むことが好ましい。
本発明の感光性架橋ポリイミド組成物の溶液を基体上にキャストして60〜90℃に加熱してフィルム状にした後、マスクを通して光照射した後、アルカリ溶液でエッチングをしてポジ型画像を形成することにより、パターン化ポリイミドフィルムを得ることができる。通常、紫外線が用いられるが、高エネルギー放射線、例えば、X線または電子ビーム或いは超高圧水銀灯の高出力発振線等を使用することもできる。照射又は露光はマスクを介して行うが、輻射線ビームを感光性ポリイミド層の表面に当てることもできる。普通、輻射は、250〜450nm、好ましくは300〜400nmの範囲における波長を発する紫外線ランプを用いて行われる。露光は単色、又は多色的な方法を用いても良い。市販で入手できる輻射装置、例えば接触および層間露光器、走査投光型装置、またはウェハーステッパーを使用することが望ましい。
露光後、パターンはフォトレジスト層の照射域を、アルカリ水溶液性の現像液で感光性層を処理することにより、照射域の部分を取り除く事ができる。これら処理は、例えば、浸漬するか又は加圧噴霧することにより基材の露光部分を溶出させることによって可能となる。現像液として用いるアルカリとしては、特に限定されないが、アミノエタノールのようなアミノアルコール、メチルモルホリン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ジメチルアミノエタノール、水酸化テトラメチルアンモニウム等を挙げることができ、また、これらのアルカリの現像液中の濃度は、特に限定されないが、通常30〜5重量%程度である。
これらの現像時間は、露光エネルギー、現像液の強さ、現像の形式、予備乾燥温度、及び現像剤の処理温度等に依存する。一般には、浸漬現像においては、1〜10分間程度であり、噴霧現像処理では10〜60秒間程度である。現像は、不活性溶剤、例えばイソプロパノール、又は脱イオン水中への浸漬又はそれらの噴霧によって停止される。
本発明のポジ型感光性ポリイミド組成物を用い、0.5〜200ミクロンの層の厚さを有するポリイミド被膜、及び鋭い輪郭のつけられたレリーフ構造を作ることができる。
先に詳述した架橋ポリイミドを構成する単位の一部として、アニオン性基を有する単位を含ませることにより、ポリイミドを電着することが可能になる。アニオン性基とは、電着組成物の溶媒(後述)中でアニオンになる基であり、好ましくはカルボキシル基又はその塩である。アニオン性基は、シロキサン含有ジアミンやテトラカルボン酸ニ無水物成分が有していてもよいが、アニオン性基を有するジアミンをジアミン成分の1つとして用いることが好ましい。ポリイミドの耐熱性、被電着物との密着性、重合度向上のためこのようなアニオン性基含有ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンの例として、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノフェニル酢酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノパラトルイル酸、3,5−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸、1,4−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸等の芳香族ジアミノカルボン酸を挙げることができ、3,5−ジアミノ安息香酸が特に好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンは、単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて用いることもできる。なお、シロキサン含有ジアミンがアニオン性基を有している場合には、ジアミン成分は、シロキサン含有ジアミンのみであってもかまわない。ポリイミドがアニオン性基を有する場合、アニオン性基を有する単位の含量は、ポリイミド分子中10〜70モル%程度が好ましい。
電着液に被塗物である銅箔(正極)及びステンレス板(負極)をそれぞれ浸漬して、両電極間に直流電源より電流を流すことにより電着を行うことができる。
さらに、電着用ポリイミド組成物に、上記した光酸発生剤を添加することにより、電着後にフォトリソグラフィーを行なうことにより、ポジ型画像を形成することができる。
架橋ポリイミドは非結晶で密着性にすぐれ、寸法安定性が良い。架橋構造のため、ひび割れ等の耐薬品性が強く熱分解に抵抗する。引張り強度は強いが、引き裂きに弱い。高分子量の線状ポリイミド溶液中で架橋・環化ポリイミドの生成を行ったポリイミドからえられるポリイミドフィルムは、引張り強さ、引裂き強さも十分にあり、更に耐候性にすぐれる。これらの特性を利用して、多層基板、積層品、油送管の内部の保護、太陽電池用、表面保護膜として利用することができる。
また、本発明の誘電率が2.7以下、好ましくは1.9ないし2.2の架橋ポリイミドは、絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材として、超低誘電率架橋ポリイミドを含む電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品に好ましく用いられる。
2.7以下の誘電率を有する特定の架橋ポリイミドから成る絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材を含む、電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品である。ここで、絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材としては、(1)半導体素子の層間絶縁膜、(2)積層板、多層回路基板若しくはフレキシブル銅張り積層板の基板、(3)又は半導体チップコーティング用フィルムを挙げることができる。また、半導体チップコーティング用フィルムとしては、パッシベーション膜、α線遮蔽膜及びバッファーコート膜を挙げることができる。以下、これらについてさらに詳細に説明する。
(1)低誘電率層間絶縁膜について
層間絶縁膜は、LSI等の多層配線の配線層間を電気的に分離する絶縁膜をいう。絶縁性と共に耐熱性、耐薬品性(耐ハンダ耐熱性)等にすぐれたポリイミドが利用されている。しかし、通常のポリイミドのKAPTON(商品名)やUpilex(商品名)は誘電率が3.3付近であり、今後、微細加工が要求されるにつれて低誘電率のポリイミドが要求されている。
本発明で用いられる低誘電率を示す架橋ポリイミドは、ポリイミドとしての特性を有しながら誘電率が2.7以下、特に1.9〜2.3の超低誘電率を示す。この低誘電率膜を半導体素子及び多層配線板の層間絶縁膜として適用することにより、低誘電率、高絶縁耐圧による優れた電気特性を示し、信号伝搬遅延時間の低減などの高性能化が達成される。ここで、半導体素子とは、(i)半導体化合物の集積回路素子、(ii)混成集積回路、(iii)発光ダイオード、(iv)電荷結合素子等をいう。より詳細には、ダイオード、トランジスタ、化合物半導体、サーミスタ、バリスタ、サイリスタなどの個別半導体、DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)、EPROM(イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、マスクROM(マスク・リード・オンリー・メモリ)、EEPROM(エレクトリカル・イレイザブル・プログラマブル・リード・オンリー・メモリ)、フラッシュメモリなどの記憶素子、マイクロプロセッサ、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、ASIC(アプリケーション・スペシフィック集積回路)などの理論回路素子、MMIC(モノリシック・マイクロウェーブ集積回路)に代表される化合物半導体などの集積回路素子、混成集積回路(ハイブリッドIC)、発光ダイオード、電荷結合素子などの光電変換素子などを意味する。
層間絶縁膜を作製する際のポリイミド組成物の塗布方法としては、スピンコート法、ディッピング法、ポッティング法、ダイコート法、スプレーコート法等が挙げられ、コーティング対象である物品の形状、必要膜厚などから適宜選択すればよい。ポリイミド組成物を半導体素子層間絶縁膜に適用する場合、膜厚の面内分布の均一性からスピンコート法が好ましい。多層配線板層間絶縁膜に適用する場合、スピンコート法とともに、より高い液歩留りである方法として、ダイコート法が好ましい。
(2)積層板、多層回路基板について
電子機器などのプリント配線基板や回転機のスロット絶縁などに用いられる耐熱性のある低誘電率ポリイミド絶縁フィルム等である。従来よりプラスチックフィルムは、高い絶縁性能を有するために信頼性の必要な部品、部材としてケーブル被覆絶縁、プリント配線基板、回転機のスロット絶縁など電子・電気機器や、フィルムコンデンサなど電子部品に応用されている。このようなプラスチック絶縁フィルムの開発の経緯は、機器絶縁としては、耐環境性に優れたプラスチック材料のフィルム開発が進められ、特に耐熱性の優れたエンジニアリングプラスチックの合成開発が進められてきた。また、フィルムコンデンサなどの電子部品としては、プラスチック材料の耐熱性の開発に加えて、さらに高い静電容量を得るために誘電率の大きな材料開発が進められてきた。最近では、高度情報化社会に対応した大量の情報を蓄積し、高速に処理、高速に伝達するための電子機器では、プラスチック材料にも高性能化が要求されている。特に、高周波化に対応した電気的特性として、低誘電率化、低誘電正接化が求められている。さらに、モータ等の回転機を有する機器では、高効率化、高機能化のため精密制御できるインバータ制御が行われている。そして、絶縁部材における高周波成分の漏洩電流の増加が生じるために、電気的特性としてそれを防ぐ低誘電率化が求められている。
本発明に用いられる架橋ポリイミドは、誘電率が2.7以下と極めて低く、それでいてポリイミド本来の優れた電気絶縁性、寸法安定性、耐薬品性等を備えているので、多層プリント配線基板等の多層回路基板や積層板として用いることにより、消費電力を下げ、信号の高速化等を図ることができる。
(3)フレキシブル銅張板の基板
低誘電率フレキシブル銅基板は、その柔軟性、軽量性、薄型性が、電子機器の小型化、軽量化にマッチし、急速に需要を伸ばしている。
フレキシブル銅張積層板の材料には、優れた特性を備えたポリイミド系と汎用特性のポリエステル系が主として使用され、一部、ガラス・エポキシ樹脂系が使用されている。全芳香族ポリイミドフィルムは、−269〜+400℃の極低温から超高温まで安定であり、プラスチックの中で最高の耐熱性・耐寒性を備えている。最近、フレキシブル配線板にも、リジッド配線板と同様に、部品を直接搭載することが主流になってきた。半導体チップやコンデンサーや抵抗体などの部品を搭載した後、半田リフロー工程で240〜270℃の高温に曝される。これに耐えうる材料として、ポリイミドが最適である。
本発明に用いられる架橋ポリイミドは、直接イミド化された溶液であるため、加工性がよい。更に、低誘電率であるため、微細加工用の銅張基板としてすぐれている。
フレキシブル回路板には3層構造と2層構造がある。3層構造のフレキシブル回路板に(以下、3層FPCまたは3層フレキ)は、ポリイミドフィルムと銅箔を接着剤で張り合わせた構成となっている。2層構造のフレキシブル回路板(以下、2層FPCまたは2層フレキ)は接着剤を用いず、銅箔とポリイミドフィルムだけから構成されている。
(A)2層フレキの製造方法
2層フレキは多用な方法で製造される。2層FPCの製造方法は、ポリイミド前駆体ワニスを銅箔上に塗布し、乾燥し、硬化させるキャスティング法、ポリイミドフィルム上に銅を析出させるスパッタリング法、メッキ法などがある。キャスティング法は、銅箔として電解箔(表面に凹凸があり接着に好都合)だけでなく、圧延箔(屈曲性が高い)やその他各種の金属箔を使用することができる。またキャスティング法で製造された2層FPCは、ポリイミドフィルムと銅との密着性が優れ、耐熱性、難燃性、電気特性、耐薬品性にも優れている。スパッタリング法やメッキ法は、銅の厚みを任意にコントロールできるという特徴がある。非常に薄い銅層にすれば、極細線のファインパターンを容易に作成することができる。しかし既存の平滑なポリイミドフィルム上に銅を析出させるので、銅とフィルムの接着力がやや弱いという問題がある。
(B)2層フレキの特徴
3層FPCは接着剤が存在するために、短時間の熱処理には絶えることができても、長時間の熱処理には接着材が劣化して、信頼性が低下するという問題点があった。また接着層があるために、銅マイグレーションやメッキ液の染み込みの問題もあった。これに対して2層FPCでは接着剤を用いないため、上記欠点を全てクリヤーしている。
2層FPCは次のような特徴を備えている。耐熱性が優れ難燃性である。誘電率、誘電正接が小さく、周波数依存性、温度依存性が少ない。表面抵抗率、体積抵抗率が大きく、各種の処理に対して安定である。イオン性不純物が少なく、信頼性が高い。寸法変化率が小さく、XY方向の変化率がほぼ同じである。引き剥がし強度の熱による劣化が小さい。ワイヤーボンディングを容易に行うことができる。
このように、2層FPCは非常に高度な性能を有しており、高屈曲性を要求されるハードディスクドライブやフレキシブルディスクドライブ、プリンター等に使用されている。また、高耐熱性を要求される自動車のエンジンルーム内や耐薬品性を要求されるガソリンタンクレベルセンサー等にも使用されている。
従来のKAPTON(商品名)型のポリイミドを使用すれば、ポリイミドの前駆体のポリアミック酸を銅箔上にコートして、300℃以上に加熱して銅基板を作る。接着性と加工性に難点があり、マイグレーションの現象が認められる。
これに対し、本発明のフレキシブル銅張板の基板は、すでにイミド化したワニスを銅基板上にキャストして作成するため、250℃の低温処理ですむ。低誘電率1.9〜2.3で微細加工に適し、更に銅のマイグレーションが殆ど観察されない利点がある。
フレキシブル回路基板の多層化技術の開発
電子機器の軽薄短小化、商機能化に対応し、フレキシブル回路板の高密度実装化、高信頼性化が求められ、多層化が盛んに行われるようになってきた。中でも、コンタクトレス配線を可能とするリジッド・フレックス多層配線板とオールフレックス多層配線板は、ダウンサイジング効果でけでなく、信頼性の向上やトータルコストの削減に顕著な効果があり、多方面で使用されるようになってきた。
フレキシブル回路板は今後ますます高多層化に向かうものと考えられ、10層以上のものも現れるであろう。その際、1層当りの厚みは0.1mm以下になり、配線もピン間5本以上にファイン化し、スルホールは直径が0.3mm以下になるものと考えられる。
半導体チップコーティング用ポリイミド
半導体業界の技術開発課題は、半導体デバイスの更なる高集積化、デバイス製造工程の生産性の向上、および作業環境の安全・無公害化である。高集積化された256MbitDRAMの量産が開始され、チップが大型化され、アルミ配線回路は益々微細化されてきた。これにともない半導体デバイスの信頼性の向上が益々重要な問題になってきた。生産性の向上のために、ウエハーサイズが大型化され、半導体の製造工程数の削減、作業中のチップの損傷防止などによる歩留まり向上が問題になってきた。さらには半導体デバイスの表面実装化の本格化にともない、半導体の素子表面の保護手段も重要な問題になってきた。
これらの問題を解決するために、ポリイミドが多量に使用されている。その理由は、(1)封止樹脂の硬化収縮や表面実装時の熱衝撃にもとづく、素子表面の微細アルミ回路のスライド防止やパッケージのクラック防止、(2)チップ表面の酸化珪素などの無機パッシベーション膜のクラック防止、(3)多層アルミ回路の層間絶縁と、素子表面の回路段差の平坦化による断線防止などに、ポリイミドの使用効果が著しいためである。半導体コーティング用ポリイミドの主な用途は下記の通りである。
<パッシベーション膜>
パッシベーション膜は素子表面に25μmの厚さに形成される。パッシベーション膜は素子表面を外界の汚染から防止し、素子表面を安定化させることを目的とする。当初は無機材料が使用されていたが、被覆性が良好でピンホールなどの塗膜欠陥が無く、作業性の良いポリイミドが使用されるようになった。ところが最近、非常に高度な耐湿性を要求される超LSIになってから、ポリイミドの耐湿レベルでは不十分となり、再び無機のパッシベーション膜が使われるようになった。この無機膜の上に、後述するバッファーコート膜としてのポリイミドが使用される。
<α線遮蔽膜>
樹脂封止材料の中の、主として無機充填剤に含まれているウランやトリウムから放出されるα線は、素子の電荷を反転させ、記憶情報を誤動作させる。この現象をソフトエラーという。素子の高速化が進むにつれて、セル面積が減少し、情報保持電流が減少した。これによりソフトエラーを引き起こす危険性がますます高くなってきた。α線に対するメモリの誤動作対策としては、チップ上にポリイミド保護膜を形成してα線を遮蔽する方法が有効である。50μm程度の保護膜はソフトエラー率を著しく減少させる。ポリイミドがα線遮蔽膜として有効な理由はウランやトリウムの含有量が0.03ppb以下と少ないためである。
<バッファーコート膜>
半導体デバイスは表面実装時に高温の溶融ハンダに曝される。この時、半導体デバイスは封止材料の熱膨張による熱応力を受け、無機パッシベーション膜(例えばPhosphosilicate glass(PSG))を圧迫してパッシベーション膜にクラックを発生させる。するとクラックから素子内部に水分が侵入し、半導体デバイスは不良となる。封止材料と無機パッシベーション膜との界面の応力集中を防ぐために、この界面に緩衝層を設ける必要がある。緩衝層としてPSG膜上に、2〜3μmのポリイミド膜を形成すると、ハンダ浸漬後の耐湿信頼性が大幅に向上する。
<層間絶縁膜>
半導体素子の高集積化方法の1つに配線の多層化技術がある。第1層の配線と第2層の配線の層間絶縁膜として無機材料(例えばCVD−SiO2(Chemical vapor deposition−SiO2))を使用すると、無機材料はどの部分も同じ厚さに堆積するため、第1層配線の段差形成が層間絶縁膜上にもそのまま残り、段差のある構造ができる。このため、この膜の上に形成される第2層配線は肩の部分で断線が生じやすくなる。これに対して、ポリイミドのような有機材料を層間絶縁膜として使用すると、ポリイミドの流動性によって、第1層配線上部の段差形状がならされて平坦化し、この上に形成される第2層配線にも段差ができず、断線の恐れがなくなる。
チップコーティング用ポリイミドの種類とその特徴
高分子化合物を半導体装置の絶縁膜に使用する試みは、1970年頃から米国で実施された。しかし、この試みは高分子化合物の耐熱性の不足やイオン性不純物が多すぎて実用化されなかった。1973年になり、高耐熱で高純度のPolyimide isoindoloquinazoline dione(PID)が日立製作所により開発され、初めて高分子化合物が半導体素子の一部として使用されるようになった。半導体用高分子絶縁膜は次のような特性を備えていなければならない。(1)製造時の熱処理に耐えるだけの耐熱性を有すること。(2)塗布する基材(無機膜、有機封止材料など)に対する密着性が良いこと。(3)イオン性不純物が少なく、半導体の特性を損なわないこと。この他の望ましい特性として、低膨張率性、低応力性、低吸水性、低誘電率、良塗布作業性、易微細加工性、厚膜形成性、低温硬化性などが上げられる。
ポリイミドは上記の要求特性を最もよく満足させる樹脂であった。ポリイミドは耐熱性、電気特性、機械特性が優れ、イオン性不純物が少なく、パターンの加工性も良好であった。
チップコーティング膜として架橋ポリイミドを使用する利点は、低誘電率であること、密着性にすぐれること、マイグレーションが観察されないことである。加工性の利点と共に従来のポリイミドに比較してすぐれた特性を示す。
以下、いくつかの実施例をあげて本発明を詳しく説明する。なお、種々の酸ジ無水物、芳香族ジアミンの組合せによって、種々の特性のある重縮合ポリイミドがえられるから、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例の溶液の一部をジメチルホルムアミドに希釈し、高速液体クロマトグラフィー(東ソー製品)で分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を示す。ポリスチレン換算の分子量を示す。Mw/Mn、Mz/Mnで分子量の分散、架橋を示す。
島津製作所製熱分析装置GTA−50によって熱分析を行い、5%分解温度、10%分解温度、600℃における残存量(%)を示す。
パーキンエルマー製の赤外線分析装置スペクトラルを用いて赤外線吸収スペクトルを測定した。1785cm−1はイミド結合、1720cm−1は−CO−NH−結合、オキサゾールは1651cm−1に吸収がある。
ポリイミドフィルムの誘電率の測定は、プレシジョンLCRメーター、4285A(Agilent社製品)を使用した。誘電率測定用電極の読み取りの精度をあげるために、マイクロメーターをデジタル式に変更し、フィルム厚を1μmまで読み取りができるようにした。説明書に従って測定した。簡易で精度よく測定できる電極非接触法を採用した。ポリイミドフィルムの厚みは約50μm以上とし、周波数(kHz)は75、100、200、300、500、800、1000、2000、3000、5000の各周波数で測定し、誘電率及びtangent deltaを求めた。
【実施例1】
ステンレススチール製の碇型撹拌器をつけたガラス製の3つ口セパラブルフラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管をとりつけ、500ml/分で窒素を流しながら、上記フラスコをシリコンオイル浴につけて、加熱、撹拌した。
BDP10.92g(0.03モル)(分子量364.39)、ビフェニルカルボン酸ジ無水物(BPDAという)35.31g(0.12モル)(分子量294.22)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.12モル)(分子量200.2)、無水シュウ酸1.35g、ピリジン4.8g、N−メチルピロリドン(NMPという)450g、トルエン50gを仕込んだ。窒素を流しながら、180℃、180rpmの撹拌を60分間行った後、空冷(30分)し、ビス−(ジカルボキシフェニル)−スルホンニ無水物(ODPAという)37.23g(0.12モル)(分子量312.22)、4,4’−ジアミノフェノキシ−1,3−ベンゼン(mTPEという)(0.06モル)(分子量292.3)、NMP531g、トルエン50gを加え、160℃、180rpmで撹拌しながら、6時間10分間加熱した。10%濃度のポリイミド液を加えた。一夜放置するとゲル状である。GPCによる分子量を測定(ポリスチレン換算)。M=32,600、Mn=13,600、Mw=53,500、Mz=127,100、Mw/Mn=3.9、Mz/Mn=9.3。熱分解の測定で、485℃で5%分解。
【実施例2】
実施例1と同様に操作した。
BDP7.28g(0.02モル)、BPDA23.52g(0.08モル)、9,9’−ビス−(4−アミノフェニル)フルオレン(FDAという)30.76g(0.08モル)、無水シュウ酸0.90g、ピリジン3.2g、NMP261g、トルエン50gを加え、180℃、170rpmで90分間加熱、撹拌した。空冷し、ODPA24.8g(0.08モル)、ビス(3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニル)スルホンニ無水物(HO−SOABという)11.22g(0.04モル)、NMP261g、トルエン30gを加え、180℃、165rpmで7時間反応し、15重量%濃度のポリイミド溶液を得た。一夜放置するとゲル状を示した。M=21,700、Mn=12,600、Mw=28,900、Mz=55,800、Mw/Mn=2.30。熱分解温度を測定。5%分解は388℃、10%分解は480℃、600℃における残量76%。
【実施例3】
実施例1と同様に操作した。
BDP10.92g、BPDA35.31g、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(mDADEという)(分子量200.2)24.0g、無水シュウ酸1.35g、ピリジン4.8g、NMP450g、トルエン50gを加え、窒素を流しながら、180℃、180rpmで90分間加熱、撹拌した。空冷し、ODPA37.23g、ジアミノシロキサン(上記構造式(8)、アミン価425)51g、トルエン120g、NMP399gを加えた。この際、先ずジアミノシロキサンとトルエンを加え、ついでODPA、NMPを加えた。直ちにゲルが発生した。180℃、20rpmで20分間加熱、撹拌すると、均一液となった。ついで、180℃、170rpmで10時間20分間加熱、撹拌した。23.2%濃度のポリイミド溶液を得た。室温でゲルであった。GPC測定により、M=18,000、Mn=11,800、Mw=39,800、Mz=122,000、Mw/Mn=3.37。熱分析により、5%分解は461℃、10%分解は482℃、600℃での残量は58%。
【実施例4】
実施例1と同様に操作した。
BDP10.92g、BPDA35.31g、m−DADE24.0g、無水シュウ酸1.35g、ピリジン4.8g、NMP450g、トルエン50gを加えた。180℃、180rpmで60分間加熱、撹拌して空冷した。これに、ジアミノシロキサン(上記構造式(8)、アミン価425)51gとトルエン120gを加え、ついでODPA37.23gとNMP399gを加えた。10分後、ゲルが析出するため、180℃にして20分間ゆっくり撹拌すると、溶液となった。180℃、160rpmで10時間20分間加熱、撹拌した。23.2%濃度のポリイミド溶液をえた。室温でゲル化した。GPC測定によると、M=16,500、Mn=9,100、Mw=17,600、Mz=27,800、Mw/Mn=1.94。熱測定によると、5%分解減量は437℃、10%分解減量は470℃、600℃における残量は56%。
【実施例5】
混合反応を実施した。実施例1と同様に操作した。
線状ポリイミド溶液の調整。
ODPA62.044g(0.02モル)、ジアミノトルエン12.22g(0.01モル)、バレロラクトン2g、ピリジン4g、NMP30g、トルエン50gを加えた。180℃、165rpmで90分間反応した。空冷後、BPDA29.42g(0.01モル)、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン69.60g(0.02モル)、NMP350g、トルエン50gを加え、30分間室温で撹拌し、ついでNMP200gを加え、175℃、170rpmで4時間20分間反応した。15重量%濃度の線状ポリイミド溶液を得た。GPC測定により、M=50,300、Mn=26,600、Mw=54,300、Mz=90,900、Mw/Mn=2.14、Mz/Mn=3.41。
上記線状ポリイミド液(15%)を100gとり、実施例3と同様の組成のポリイミドを重縮合した。
BDP1.21g、BPDA3.92g、m−DADE2.67g、バレロラクトン0.4g、ピリジン0.8g、NMP50g、トルエン30gを加え、室温で撹拌した。均一液にした後、180℃、170rpmで90分間加熱、撹拌した。空冷後、ジアミノシロキサン(上記構造式(8)、アミン価425)5.7g、トルエン30gを加え、ついでODPA4.14g、NMP50gを加えた。180℃の浴に10分間つけて、160rpmで撹拌すると、溶液になった。180℃、165rpmで4時間35分間加熱、撹拌した。室温にしても溶液であった。GPCによる分子量測定した。M=33,300、Mn=17,700、Mw=52,100、Mz=114,100、Mw/Mn=2.94。熱分析を行った。5%減量は461℃、10%減量は485℃、600℃における残存量は72%。
【実施例6】
実施例3と同様の組成のポリイミドと線状ポリイミドの混合反応を行った。
BDP3.64g、BPDA11.77g、m−DADE8.0g、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP150g、トルエン30gを加え、窒素中で180℃、160rpmで60分間反応した。室温に冷やして、ODPA12.41g、ジアミノシロキサン(上記構造式(8)、アミン価425)17.0g、トルエン60g、NMP135gを加えて、ゲルが発生した。180℃、170rpmの撹拌で20分間で均一液となった。180℃、165rpmで6時間45分間反応した。このポリイミド混合反応液は室温で液状であった。GPCにより分子量を測定した。M=18,000、Mn=11,800、Mw=39,400、Mz=122,000、Mw/Mn=3.37、Mz/Mn=10.3。熱分析によると、5%減量は461℃、10%減量は482℃、600℃における残量は58%であり、この液(15重量%濃度)の100gをとり、この液に下記の化合物を加えて混合反応した。
ODPA6.02g、ジアミノトルエン1.22g、バレロラクトン0.4g、ピリジン0.8g、NMP30g、トルエン30gを加えた。180℃、170rpmで60分間反応した。空冷して、BPDA2.94g、FDA6.96g、NMP35g、トルエン30gを加え、180℃、165rpmで4時間25分間反応した。この混合反応液の分子量は、M=71,900、Mn=28,400、Mw=75,800、Mz=132,300、Mw/Mn=2.66、Mz/Mn=6.15であった。このポリイミドをフィルム化して熱分析した。5%分解は475℃、10%分解は504℃、600℃における残量は75%であった。
【実施例7】
実施例5で合成した線状ポリイミド(15重量%濃度)と、実施例6で合成したテトラアミンを含む架橋環状ポリイミド(15重量%濃度)とをそれぞれ100gずつ混合し撹拌すると、室温で液状を示した。
【実施例8】
BDP3.64g、BPDA11.77g、m−DADE8.0g、無水シュウ酸0.45g、ピリジン1.6g、NMP150g、トルエン30gを加えて、窒素中で180℃、165rpmで60分間反応した。室温に冷却して、BPDA11.77g、ジアミノシロキサン(アミン価425)17.0g、トルエン60g、NMP84gを加えて撹拌し、ゲルを溶解させた。この液を、180℃、165rpmで5時間30分間反応した。室温に冷やすとゲル状となった。GPC測定による分子量の測定を行った。M=16,500、Mn=9,100、Mw=17,600、Mz=27,800、Mw/Mn=1.94、Mz/Mn=3.05。熱分析を行った。5%分解温度は437℃、10%分解温度は470℃であり、600℃における残量は56%である。
【実施例9】
実施例1〜8までのポリイミド液をガラス板上にバーコーダーでコートし、赤外線オーブン中、90℃、90分間加熱した。ポリイミド膜をガラス板よりはぎとり、ステンレス枠板にフィルムをはり、キャップで固定した。これを赤外線オーブン中、180℃2時間、220℃1時間加熱した。このポリイミドフィルムは約50μm以上の厚みである。Agilent社製プレシジョンLCRメーター4285を用いて誘電率を測定した。1000khzと3000kHzの誘電率とtanδを表1に示す。

Frequency(kHz)と誘電率及びtangent deltaの関係を、実施例1、実施例8、SiO、空気についてそれぞれ図1〜4に示す。
テトラアミンの合成例
A)ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ピペラジン
3,5−ジアミノ安息香酸134g、ピペラジン34.4g、NMP51g、トルエン40gをセパラブルフラスコに入れ、実施例1と同じ装置を用いて、窒素を通じて160℃、170rpmで2時間加熱、撹拌した。一夜放置すると結晶が析出した。吸引ろ過し、エタノールで洗った。
B)ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
3,5−ジニトロベンゾイルクロリド10.1g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.0g、NMP60g、トルエン40gを三つ口フラスコに入れ、150℃、165rpmで3時間加熱、撹拌した。一夜放置すると結晶が析出した。ろ過し、エタノールで洗った(12.2g)。
生成したビス[3,5−ジニトロベンゾイル]−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル11.8g、メトキシペンタノール70gの液にPd/C 0.2gを入れ、130℃にて撹拌しながら、ヒドラジン1水塩(NH・NH・HO)4.5gをゆっくり添加(2時間)した。一夜放置すると結晶が析出した。ろ過し、エタノール洗浄した。
C)ビス[3,5−ジアミノフェニル]−2,2’−オキサゾール−ジフェニルスルホン
3,5−ジニトロベンゾイルクロリド50g、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン24.1g、NMP170g、トルエン30g、ピリジン10gを三つ口フラスコに入れた。150℃、160rpmで2時間30分加熱、撹拌した。反応後、メタノールと水を加え放置すると沈殿が析出した。ろ過して、エタノールで洗った(73.6g)。
生成したビス(3,5−ジニトロフェニル)−2,2’−オキサゾール−ジフェニルスルホンをNMPにとかしてPd/Cを入れ、ヒドラジン1水物で130℃で還元、ろ過して、メタノールと水を加えて沈殿を生成した。ろ過、メタノールで洗った。
D)2,7−ジアミノ−9,9’−ジ(4−アミノフェニル)−フルオレン
2,7−ジニトロフルオレン37.3gg、p−トルエンスルホン酸8.6g、スルホラン130ml、トルエン30mlを加えて、140℃、90分加熱、撹拌した。反応液を10%KOH水溶液に加えると沈殿が析出した。デカントし、更に熱水で3回デカントした。メタノールを加えて沈殿をろ過し、メタノールで洗った(74g)。
生成した9,9’−ジ(4−アミノフェニル)−2,7−ジニトロフルオレン15g、NMP50g、トルエン30gを140℃に加熱、溶解し、Pd/Cを加え撹拌しながら、ヒドラジン1水塩6.8gとトルエン10gの混合液をゆっくり滴下(2時間)ろ過し(Pd/cを除く)、プロパノールと水を加えて沈殿を生成した。ろ過し、プロパノールで洗った(6.4g)。
E)ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ジアミノベンゼン
アニリン5.5gをNMP150gに溶かし、これに3,5−ジニトロベンゾイルクロリド25gをゆっくり加えてよくかきまぜた。これにピリジン10g、トルエン20gの混合液をゆっくり加えた。窒素中で、150℃、180rpmで100分間加熱、撹拌した。放置すると結晶が出始めるので、メタノール45gを加え、よくかきまぜ一夜放置した。析出した結晶をろ過し、メタノールで洗い、33gを得た。このジニトロ化合物をNMP中、活性炭パラジウムの存在下、ヒドラジン還元して目的物を得た。
【実施例10】
ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量468.46)2.34g、BPDA5.89g、m−DADE4g、無水シュウ酸0.2g、ピリジン0.8g、NMP80g、トルエン30gを三つ口フラスコに仕込んだ。180℃、180rpmで60分間反応して、空冷し、ODPA6.20g、mTPE2.93g、NMP53g、トルエン10gを加え、180℃、180rpmで6時間10分間反応した。ゲル状化合物であった。GPCで分子量を測定した。M=11,100、Mn=12,900、Mw=55,100、Mz=209,100、Mw/Mn=4.27。
【実施例11】
ビス(3,5−ジアミノ−フェニル)−2,2’−オキサゾール−ジフェニルスルホン5.13g、BPDA11.77g、m−DADE8.0g、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP200g、トルエン30gを加えて、窒素中、180℃、180rpmで60分間反応して、空冷し、ODPA12.41g、mTPE5.85g、NMP163g、トルエン20gを加えて、180℃、6時間20分間反応した。GPCの測定によって、M=16,200、Mn=13,200、Mw=44,700、Mz=157,300、Mw/Mn=3.37、Mz/Mn=11.96。
【実施例12】
ビス(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−オキサゾール−4,4’−ジフェニルスルホン5.13g、BPDA11.77g、m−DADE8.0g、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP200g、トルエン30gを三つ口フラスコに入れて、180℃、180rpmで90分間反応した。ついで空冷して、ODPA12.41g、ジアミノシロキサン(上記構造式(8)、アミン価425)17.0g、NMP91g、トルエン50gを加えて、180℃、180rpmで6時間反応してゲル状化合物をえた。M=12,000、Mn=9,800、Mw=17,700、Mz=33,200、Mw/Mn=1.81。
【実施例13】
2,7−ジアミノ−9,9’−ビス(4−アミノフェニル)−フルオレン2.06g、BPDA5.89g、m−DADE4.0g、無水シュウ酸0.2g、ピリジン0.8g、NMP80g、トルエン30gを三つ口フラスコに入れ、180℃、180rpmで60分間反応して、空冷し、ODPA6.20g、mTPE2.93g、NMP40g、トルエン20gを加え、180℃、180rpmで16時間反応した。M=23,700、Mn=14,300、Mw=28,900、Mz=52,700、Mw/Mn=2.03。
合成例 BDPの合成
ステンレススチール製の碇型撹拌器をとりつけたガラス製のセパラブル3つ口フラスコに、水分分離トラップを備えた玉付冷却管をとりつけた。500ml/分で窒素ガスを通しながら、上記フラスコをシリコンオイル浴につけて、加熱、撹拌した。3,5−ジアミノ安息香酸(分子量152.15)134g(0.881モル)、ピペラジン(分子量86.14)34.4g(0.40モル)、N−メチルピロリドン(以後NMPという)410g、トルエン40gを、2Lの3つ口ガラス容器に入れて、窒素を通しながら撹拌した。シリコン浴につけて160℃、170rpmで3時間30分間加熱撹拌した。ついで、NMP100gを加えて一夜放置すると、結晶が析出した。吸引ろ過しエタノールで洗い、ついで乾燥した。
収量137g(Mw364.4)(94%)m.p.[125−130℃]
NMRの図を図1に示す。
【実施例14】
合成例に示した容器を使用した。
BDP(分子量364.39)3.64g(10ミリモル)、ピロメリット酸ジ無水物(分子量218.13)8.73g(40ミリモル)、2,4−ジアミノトルエン(分子量122.17)4.88g(40ミリモル)、γ−バレロラクトン(分子量100.12)0.8g(8ミリモル)、ピリジン(分子量79.10)1.6g(20ミリモル)、NMP150g、トルエン30gを500mlの3つ口フラスコ中に入れて、Nを通じながら撹拌した。シリコン浴につけて、175℃、170rpmで90分間加熱撹拌した。30分間空冷して、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以後BTDAという)(分子量322.13)12.89g(40ミリモル)、ビス−(3−アミノフェノキシ)−4−フェルニル)スルホン(分子量432.5)8.65g(20ミリモル)、NMP173g、トルエン30gを加えて、加熱、撹拌して反応した。
シリコン浴中、1/2液だけ浸して、170℃、175rpmで25分加温すると均一液となった。ついで反応液をシリコン浴中に十分に浸して、170℃、180rpmで8時間55分加熱撹拌した。反応中、トルエンと共に水が留去してトラップ中にたまった。反応2時間後にトルエン−水の留分を除去して加熱を続けた。反応液の一部をガラス板上にとり、90℃×30分間乾燥器に入れて乾かすと、強いポリイミド膜が生成していた。10%NMP溶液中のポリイミドが生成、一夜放置するとゲル状となった。
この溶液の一部をジメチルホルムアミドに希釈し、高速液体クロマトグラフィー(東ソー製品)で分子量及び分子量分布を測定した。ポリスチレン換算の分子量は、最多分子量(M)25,600、数平均分子量(Mn)5,600、重量平均分子量(Mw)155,300、Z平均分子量(Mz)765,600、Mw/Mn27.8、Mz/Mn137。GPCによる分子量分布図を図3に示す。島津製作所製熱分析装置TGA−50を用いて熱分析を行った。5%重量減430℃、10%重量減517℃、600℃における残量76%であった。熱分析の図を図5に示す。
【実施例15】
実施例14と同様の操作によって合成した。
BDP(分子量364.39)3.64g(10ミリモル)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物(以後BPDAという)11.70g(40ミリモル)、3,5−ジアミノトルエン4.88g(40ミリモル)、バレロラクトン0.8g(8ミリモル)、ピリジン1.6g(20ミリモル)、NMP150g、トルエン30gを加えて、N中撹拌した。シリコン浴につけて、180℃、170rpmで90分間反応し、オリゴマーを生成した。空冷30分、ついでゆっくり撹拌(130rpm)しながら、ビス(ジカルボキシフェニル)エーテル無水物(ODPAという)(分子量312.22)3.64g(40ミリモル)、ビス−3−アミノフェノキシ−1,4−ベンゼン(mTPEという)(分子量292.3)5.85g(20ミリモル)、NMP52g、トルエン20gを加えるとゲルが析出した。NMP100gを加えて、175℃、130rpmで加熱撹拌すると溶液となった。170℃、175rpmで5時間25分加熱撹拌した。2時間後よりトルエン−水の共沸混合物は系外に除いた。この液の一部をとりガラス板上に流延し、90℃、30分間加熱すると、強いフィルムとなった。一夜放置すると、反応液はゲル状を呈した。9.5%濃度のポリイミド液を生成した。
分子量及び分子量分布をGPCで測定、図4に分子量測定のGPCの図を示す。最多分子量(M)32,800、数平均分子量(Mn)9,000、重量平均分子量(Mw)50,800、Z平均分子量(Mz)135,000、Mw/Mn=5.61、Mz/Mn=15.1。熱量分析による測定で、5%重量減は401℃、10%重量減は509℃、600℃における残量は75%であった。赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【実施例16】
実施例14と同様に操作した。
BDP3.64g(10ミリモル)、BPDA11.76g(40ミリモル)、9.9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDAという)(分子量348.5)15.38g(40ミリモル)、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP200g、トルエン30gを加え、窒素気流中、180℃、180rpmで60分間加熱撹拌した。室温で3時間撹拌し、ついでODPA(分子量310.22)12.40g(40ミリモル)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(分子量280.27)5.61g(20ミリモル)、NMP214g、トルエン50gを室温で加えた。反応液の1/2量をシリコン浴に浸して、180℃、130rpmで15分間加熱すると均一液となった。180℃、180rpmで24時間20分間加熱撹拌した。この液の一部をとりガラス板上に流延し、90℃、30分間加熱すると、強いフィルムであった。10%濃度ポリイミド溶液であった。一夜放置すると、ゲル状を呈した。
反応液の一部をとりGPCによる分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)20,400、数平均分子量(Mn)5,600、重量平均分子量(Mw)19,600、Z平均分子量(Mz)38,500、Mw/Mn=3.50、Mz/Mn=6.87。
熱分析を行った。5%重量減は391℃、10%重量減は483℃、600℃における残量は75%であった。
【実施例17】
実施例14と同様に操作した。ステンレススチール製の碇型撹拌器をとりつけたガラス製の3つ口セパラブルフラスコに、25ml容量の水分分離トラップを備えた玉付冷却管をとりつけた。500ml/分のNガスを流しながら、上記フラスコをシリコンオイル浴につけて、加熱、撹拌した。
BDP3.64g、BPDA11.77g(40ミリモル)、ジアミノトルエン8.0g(40ミリモル)、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP150g、トルエン30gを加えて、180℃、175rpmで70分間加熱撹拌した。トルエン−水が共沸して水分分離器にたまった。これを除去した。空冷後、130rpmに撹拌しながら、ODPA(分子量310.23)18.6g(60ミリモル)、FDA6.97g(20ミリモル)、mTPE5.85g(20ミリモル)、NMP52g、トルエン20gを加えた。ゲルが析出するため、液の1/2を浸して、180℃、120rpm、20分で均一液となった。180℃、175rpmで9時間5分反応した。強いフィルムを生成した。10%濃度のポリイミド溶液であった。一夜放置すると、ゲル状を呈した。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定。最多分子量(M)26,800、数平均分子量(Mn)5,900、重量平均分子量(Mw)114,700、Z平均分子量(Mz)604,000、Mw/Mn=19.6、Mz/Mn=103。熱分析を行った。5%減量は350℃、10%減量は492℃、600℃における残量は72%。
【実施例18】
実施例17に準じた。
BPDA23.54g(80ミリモル)、ジアミノトルエン4.88g(40ミリモル)、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP200g、トルエン30gを加えて、180℃、170rpmで60分間加熱してイミドオリゴマーを生成した。空冷撹拌して、BDP3.64g(10ミリモル)、NMP50gを加えた。ビス(ジカルボキシフェニル)エーテルニ無水物(以後ODPAという)6.21g(20ミリモル)、mTPE11.7g(40ミリモル)、NMP100g、トルエン30gを加えて、170℃、175rpmで5時間40分間加熱、撹拌した。液の一部をとりテストすると、強いフィルムが生成した。10%濃度のポリイミド溶液であった。一夜放置すると、ゲル状を呈した。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)24,800、数平均分子量(Mn)12,200、重量平均分子量(Mw)24,400、Z平均分子量(Mz)39,600、Mw/Mn=2.00、Mz/Mn=3.25。TGA−50による熱分析によって、5%減量は407℃、10%減量は525℃、600℃における残量は78%。
【実施例19】
実施例17に準じた。
BDP7.28g(20ミリモル)、BPDA23.54g(80ミリモル)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.2)16.0g(80ミリモル)、シュウ酸無水物(分子量90.04)0.9g(10ミリモル)、ピリジン(分子量79.10)3.2g(40ミリモル)、NMP300g、トルエン50gを加えた(シュウ酸は溶解し難いので、ピリジンとNMPとを加えて加温して溶解させて加えた)。180℃、175rpmで6時間加熱、撹拌し、ポリイミドオリゴマーを生成した。1時間空冷し、ODPA24.82g(40ミリモル)、mTPE11.70g(20ミリモル)、NMP354g、トルエン30gを加え、180℃、180rpmで6時間加熱、撹拌した。10%のポリイミド溶液を得た。この液の一部をとりテストすると、強いフィルムを生成した。一夜放置すると、ゲル状を呈した。
GPCによる測定によって、最多分子量(M)33,500、数平均分子量(Mn)12,500、重量平均分子量(Mw)118,500、Z平均分子量(Mz)486,900、Mw/Mn=9.47、Mz/Mn=38.9。
重量分析により、5%減量は332℃。
【実施例20】
実施例17に準じた。
BDP3.64g(10ミリモル)、BPDA11.77g(40ミリモル)、m−DADE8.0g(40ミリモル)、バレロラクトン0.8g、ピリジン1.6g、NMP150g、トルエン30gを加えて、180℃、165rpmで6時間加熱、撹拌した。60分間空冷して、ジアミノシロキサン(信越化学製、アミン当量425)17.0g(20ミリモル)、トルエン60gを加えて撹拌した。ついでODPA12.41g(40ミリモル)、NMP133gを加えて撹拌した。ゲル状を呈したので、180℃、70rpm、20分間加熱して液状にした。180℃、165rpmで6時間45分間反応した。液の一部をとりテストすると、フィルムが生成した。ガラス板上、90℃、1時間で加熱してガラスよりフィルムをはぎとり、鉄枠にピンでとめて、180℃、2時間乾燥した。更に、220℃、2時間乾燥して強いフィルムを得た。(ガラス板上、180℃に加熱すると、ポリイミドフィルムは剥離しない。180℃加熱のフィルムはPCTテストに不合格であり、220℃、2時間加熱したフィルムはPCTテスト(120℃、24時間)でもフィルム状を示し合格。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)13,200、数平均分子量(Mn)8,150、重量平均分子量(Mw)22,600、Z平均分子量(Mz)31,700、Mw/Mn=1.55、Mz/Mn=1.79。熱分析により、5%減量は461℃、10%減量は482℃、600℃での残量は76%。
参考例1 線状ポリイミドの合成
実施例17に準じた。
BPDA41.19g(140ミリモル)、FDA73.1g(210ミリモル)、バレロラクトン3.5g(35ミリモル)、ピリジン6.3g(79ミリモル)、NMP400g、トルエン53gを加えて、180℃、170rpmで60分間反応してイミドオリゴマーにした。空冷して、BPDA41.19g(140ミリモル)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(分子量280.27)19.62g(70ミリモル)、NMP336g、トルエン20gを加えて、オイルバス中加熱撹拌して溶液にした。180℃、170rpmで4時間10分間反応した。17%濃度のポリイミド溶液を得た。一夜放置しても、ポリイミドは溶液であった。
GPC測定により、最多分子量(M)43,400、数平均分子量(Mn)21,200、重量平均分子量(Mw)47,800、Z平均分子量(Mz)82,600、Mw/Mn=2.25、Mz/Mn=3.89。
参考例2 線状ポリイミドの合成
ODPA62.044g(200ミリモル)、ジアミノトルエン12.22g(100ミリモル)、バレロラクトン3g、ピリジン4.8g、NMP300g、トルエン50gを加えて、180℃、165rpmで60分間反応してイミドオリゴマーとした。空冷して、これにBPDA29.42g(100ミリモル)、FDA69.60g(200ミリモル)、NMP550g、トルエン50gを加え、175℃、170rpmで4時間20分間反応、撹拌した。反応終了後、NMP70gを追加した。15%のポリイミド溶液となった。
GPCによる分子量及び分子量分布の測定では、最多分子量(M)71,900、数平均分子量(Mn)28,400、重量平均分子量(Mw)75,800、Z平均分子量(Mz)132,300、Mw/Mn=2.66、Mz/Mn=4.65。熱量分析の結果、5%減量は518℃、10%減量は552℃、600℃の残量は殆どなし。TG−GTAの図を図6に示す。
実施例21 混合重合
参考例1の線状ポリイミド溶液210g(ポリイミド35.7g含有)中で、実施例15の反応を行った。すなわち、BDP3.64g、ジアミノトルエン4.88g、BPDA11.77g、シュウ酸0.45g(5ミリモル)、ピリジン1.6g(20ミリモル)、NMP150g、トルエン30gを加え、180℃、180rpmで60分間反応し、30分室温にした。ついでODPA12.41g、mTPE5.85g、NMP150g、トルエン20gを加え、180℃、175rpmにて4時間25分間反応した。均一溶液であり、一夜放置しても室温で安定な溶液を保った。
分子量及び分子量分布の測定により、最多分子量(M)97,400、数平均分子量(Mn)13,000、重量平均分子量(Mw)65,300、Z平均分子量(Mz)151,100、Mw/Mn=5.0、Mz/Mn=11.6。TG−GTA測定の結果、5%減量は465℃、10%減量は548℃であり、600℃における残存量は86%であった。
実施例22 混合重合
実施例15のポリイミド溶液175g(30gポリイミドを含有)中で、参考例1の反応を行った。すなわち、実施例15の10%ポリイミド溶液中に、BPDA8.23g、FDA14.63g、シュウ酸0.45g、ピリジン1.6g、NMP150g、トルエン40gを加えた。180℃、130rpmでゆっくり撹拌すると約10分で溶液となった。180℃、155rpmで60分間反応した。30分間空冷して、BPDA8.23g、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン3.92g、NMP150g、トルエン20gを加え、180℃、170rpmで4時間25分間反応した。反応液を一夜放置しても、室温で安定なポリイミド溶液であった。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定。最多分子量(M)80,200、数平均分子量(Mn)27,800、重量平均分子量(Mw)96,400、Z平均分子量(Mz)195,700、Mw/Mn=3.47、Mz/Mn=7.05。TGの測定の結果、5%減量は424℃、10%減量は528℃であり、600℃の残量は83%であった。
実施例23 混合重合
実施例19の10%ポリイミド溶液200g(ポリイミド含量20g)中に、BDP2.28g、ピロメリット酸ジ無水物5.46g、ジアミノトルエン3.65g、シュウ酸0.5g、ピリジン1.0g、NMP94g、トルエン40gを加え、180℃に加温してとかす。ついで180℃、175rpmで75分間反応した。室温に30分冷やして、BPDA7.36g、mTPE3.65g、NMP86g、トルエン20gを加えて、180℃、160rpmで6時間45分間反応した。一夜放置すると、ゲル状を示した。この溶液からポリイミドフィルムがえられた。
GPCによる分子量及び分子量分布の測定をした。最多分子量(M)30,900、数平均分子量(Mn)11,600、重量平均分子量(Mw)74,700、Z平均分子量(Mz)223,100、Mw/Mn=6.43、Mz/Mn=19.2。
参考例3 混合反応
参考例1の15%ポリイミド溶液200g(ポリイミド含量30g)中で、参考例2のイミド化反応を行った。線状ポリイミドの混合反応であった。すなわち、参考例1のポリイミド200gに、ODPA11.48g、ジアミノトルエン2.26g、シュウ酸0.4g、ピリジン0.8g、NMP56g、トルエン40gを加えた。180℃、170rpmにて70分間反応した。30分間空冷して、BPDA5.44g、FDA12.88g、NMP65g、トルエン20gを加えた。180℃、160rpmで5時間30分間反応した。強いポリイミドフィルムがえられた。室温に放置すると、安定なポリイミド溶液であった。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)63,500、数平均分子量(Mn)19,100、重量平均分子量(Mw)62,000、Z平均分子量(Mz)110,700、Mw/Mn=3.25、Mz/Mn=5.80。熱分析を行った。5%減量は440℃、10%減量は550℃、600℃における残存量は85%であった。
実施例24 混合反応
実施例16の10%ポリイミド140g(ポリイミド含量14g)中で、参考例2のイミド化反応を行った。すなわち、ODPA7.63g、ジアミノトルエン1.50g、シュウ酸0.45g、ピリジン1.6g、NMP100g、トルエン40gを加え、180℃、165rpmにて60分間反応した。室温に冷やし、BPDA3.62g、FDA8.56g、NMP100g、トルエン30gを加え、180℃、165rpmで6時間45分間反応した。反応物を一夜放置すると、ゲル状を示した。
分子量、分子量分布を測定した。最多分子量(M)27,600、数平均分子量(Mn)13,300、重量平均分子量(Mw)53,100、Z平均分子量(Mz)143,300、Mw/Mn=3.47、Mz/Mn=9.35。熱分析を行った。5%減量は418℃、10%減量は545℃。
実施例25 混合反応
実施例20のジアミノシラン含有15%ポリイミド溶液100g(ポリイミド含量15g)中で、参考例2の反応を行った。すなわち、ODPA6.02g、ジアミノトルエン1.22g、バレロラクトン0.4g、ピリジン0.8g、NMP30g、トルエン30gを加えて、180℃、170rpmで60分間反応した。60分間空冷して、BPDA2.94g、FDA6.96g、NMP35g、トルエン30gを加え、半浴にして10分間加熱すると均一液となった。180℃、165rpmで4時間25分反応した。室温に一夜放置しても安定な均一液であり、強いポリイミドフィルムを生成していた。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定。最多分子量(M)25,900、数平均分子量(Mn)14,000、重量平均分子量(Mw)28,700、Z平均分子量(Mz)68,600、Mw/Mn=2.06、Mz/Mn=4.92。熱分析によると、5%減量は445℃、10%減量は501℃であり、600℃での残存量は82%。
【実施例26】
参考例2の15%ポリイミド溶液100g(ポリイミド15g含有)中で、実施例20を行った。すなわち、BDP1.21g、BPDA3.92g、m−DADE2.67g、バレロラクトン0.4g、ピリジン0.8g、NMP50g、トルエン30gを加え、180℃、100rpmで10分間加温、撹拌させて、180℃、170rpmで60分間反応した。10分間空冷して、ジリコンジアミン(アミン価425)5.7g、トルエン30gを加え、ついでODPA4.14g、NMP50gを加えた。半浴で160rpmで10分間加熱すると均一液となった。180℃、160rpmで4時間25分間反応した。一夜放置しても均一なポリイミド溶液であった。
GPCによる分子量及び分子量分布を測定した。最多分子量(M)33,300、数平均分子量(Mn)17,700、重量平均分子量(Mw)52,100、Z平均分子量(Mz)114,100、Mw/Mn=2.94、Mz/Mn=6.44。熱分析によると、5%の減量は450℃、10%の減量は487℃であり、600℃での残存量は76%。
【実施例27】
実施例22〜26の二種ポリイミドの混合反応系と比較のため、2種のポリイミドを等量づつ撹拌によって混合した。室温で安定な溶液状態を示した。重量平均分子量(Mw)、分布(Mw/Mn)及び熱分析の結果を下記表2に対比して示す。

混合反応のポリイミドと機械的混合のポリイミドの特性が異なる。特に混合反応ポリイミドの分子量分布Mw/Mnが大きくなる。ポリイミドのPCTテストでは、180℃、2時間乾燥したポリイミドは、120℃、24時間で分解しているが、220℃、2時間乾燥したポリイミドは、120℃、24時間でも安定であった。架橋ポリイミド同士の混合では、ポリイミドの性質の改良は小さい。線状ポリイミド中で架橋反応によるポリイミドは、フィルムの強さその他にすぐれる。混合ポリイミドも改質される。架橋反応ポリイミド中での線状ポリイミドの反応では、分子量の上昇が小さい。
実施例28 ポリイミドの感光実験
実施例22でえられたポリイミド溶液(10%)に、ポリイミドに対して20%のナフトキノシジアジドPC−5を添加した。シリコンウェハー上にKBM−903(信越化学社製アミノシランカップリング剤)をスピンコートした(1000rpm×20秒、ついで1500rpmで20秒)。ついで10分間90℃で焼成した。この上に感光剤PC−5を含有するポリイミド溶液をスピンコートした。1000rpmで20秒、5000rpmで20秒。えられたポリイミド膜の厚みは1.88μmであった。感光性塗布膜の上にポジ型フォトマスク用のテストパターンをおき、2kw超高圧水銀灯照射装置で380mj照射した。塗布膜をA現像液(アミノエタノール:NMP:水=1:1:1)中、7分間現像した後、脱イオン交換水で水洗し、赤外線乾燥器中で90℃30分、200℃で30分間乾燥した後、解像度を観察した。3μmのラインアンドスペースのシャープなポジ型画像が確認された。
実施例29 感光性ポリイミドテスト
実施例23でえられたポリイミドに、ナフトキノシジアジドPC−5をポリイミドに対し20%添加した。シリコンウェハー上にKBM−903(信越化学社製アミノシランカップリング剤)を1500rpmでコートして、90℃で焼成10分間。この上にポリイミド溶液を1000rpm×20秒、5500rpm×20秒、スピンコートし、赤外線乾燥器中で90℃、10分プリベークした。膜厚は0.94μmであった。この上にポジ型フォトマスク用のテストパターンをおき、実施例28と同様に処理した。現像液中9分間浸漬して、3μmのポジ型線像が確認された。
【実施例30】
実施例21において、ジアミノトルエンの代りに、3,5−ジアミノ安息香酸を用いて得られた混合共重合ポリイミド溶液に、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、アニソール等の溶液を加え、中和剤としてN−メチルモルホリンを加えて、水で希釈して電着液を調整した。電着液に被塗物である銅箔(正極)及びステンレス板(負極)をそれぞれ浸漬して、両電極間に直流電源より電流を流して、アニオン電着実験を行った。電着後、銅箔をN−メチルピロリドン一水溶液、ついで水溶液で洗浄して定着を行い、赤外線熱風乾燥炉中90℃/10分間乾燥し、ついで200℃30分間加熱乾燥してポリイミド電着膜を得た。
【実施例31】
<電着塗装法による感光性ポリイミド膜の形成について>
上記電着ポリイミド溶液中に光酸発生剤ナフトキノンジアジドを混合し、上記と同様に電着液を調整した。電着実験によって銅箔上にポリイミド膜を析出した。水洗後、赤外線熱風乾燥炉中で90℃/10分間乾燥した。この膜の上にマスクを被せ、高圧Hg−Xeランプにより光照射した後、アミノエタノール含有の現像液で現像を行ってポジ型画像が形成した。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンを、触媒の存在下、重縮合させることにより製造された、誘電率が2.7以下の架橋ポリイミド。
【請求項2】
前記テトラアミンが芳香族テトラアミンである請求項1記載のポリイミド。
【請求項3】
前記芳香族テトラアミンが、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ピペラジン、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス−(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ジフェニルスルホン、ビス(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ビフェニル及び2,7−ジアミノ−9,9’−(ビス−4−アミノフェニル)フルオレン、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ジアミノベンゼンから成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項2記載のポリイミド。
【請求項4】
ジアミン成分の一部として、ジアミノシロキサンを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリイミド。
【請求項5】
テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを、触媒の存在下、縮合させることによりポリイミドオリゴマーを生成させ、次いで、テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族ジアミンとを反応させることを含む、逐次反応により製造された請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリイミド。
【請求項6】
1モルの前記テトラアミンに対して反応させる、テトラカルボン酸ジ無水物のモル数と、芳香族ジアミンのモル数に2モルの差を設けて製造された請求項5記載のポリイミド。
【請求項7】
1モルの前記テトラアミンに対し、4モルの前記テトラカルボン酸ジ無水物と4モルの前記芳香族ジアミンとを重縮合させてポリイミドオリゴマーとし、ついで4モルのテトラカルボン酸ジ無水物と2モルの芳香族ジアミンとを反応させることを含む方法により製造された請求項6記載のポリイミド。
【請求項8】
1モルの前記テトラアミンに対し、8モルの前記テトラカルボン酸ジ無水物と4モルの前記ジアミンとを、重縮合させてポリイミドオリゴマーとし、ついで2モルのテトラカルボン酸ジ無水物と4モルの芳香族ジアミンとを反応させることを含む方法により製造された請求項6記載のポリイミド。
【請求項9】
ポリスチレン換算重量平均分子量が1万5千ないし30万である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のポリイミド。
【請求項10】
誘電率が1.9〜2.2である請求項1ないし9のいずれか1項に記載のポリイミド。
【請求項11】
テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを、トルエン又はキシレンを含有する極性溶媒中で触媒の存在下、加熱して縮合させることを含む、架橋ポリイミドを含む組成物の製造方法。
【請求項12】
前記テトラアミンが芳香族テトラアミンである請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記芳香族テトラアミンが、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ピペラジン、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス−(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ジフェニルスルホン、ビス(3,5−ジアミノフェニル)−2,2’−ジオキサゾール−4,4’−ビフェニル及び2,7−ジアミノ−9,9’−(ビス−4−アミノフェニル)フルオレン、ビス(3,5−ジアミノベンゾイル)−1,4−ジアミノベンゼンから成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項12記載の方法。
【請求項14】
ジアミン成分の一部として、ジアミノシロキサンを含む請求項11ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が、シュウ酸、マロン酸、ギ酸及びピルビン酸から成る群より選ばれる酸と塩基、又はラクトンと塩基の二成分系触媒である請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が、シュウ酸と塩基、又はラクトンと塩基の二成分系触媒である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記二成分系触媒の存在下で、160〜200℃に加熱して直接イミド化する請求項16記載の方法。
【請求項18】
テトラアミン、テトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを、触媒の存在下、縮合させることによりポリイミドオリゴマーを生成させ、次いで、テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族ジアミンとを反応させることを含む、逐次反応による請求項11ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
1モルの前記テトラアミンに対して反応させる、テトラカルボン酸ジ無水物のモル数と、芳香族ジアミンのモル数に2モルの差を設けて製造された請求項17記載の方法。
【請求項20】
1モルの前記テトラアミンに対し、4モルの前記テトラカルボン酸ジ無水物と4モルの前記芳香族ジアミンとを重縮合させてポリイミドオリゴマーとし、ついで4モルのテトラカルボン酸ジ無水物と2モルの芳香族ジアミンとを反応させることを含む請求項19記載の方法。
【請求項21】
1モルの前記テトラアミンに対し、8モルの前記テトラカルボン酸ジ無水物と4モルの前記ジアミンとを、重縮合させてポリイミドオリゴマーとし、ついで2モルのテトラカルボン酸ジ無水物と4モルの芳香族ジアミンとを反応させることを含む請求項19記載の方法。
【請求項22】
請求項11ないし21のいずれか1項に記載の方法により製造したポリイミド組成物に、さらにテトラカルボン酸ジ無水物及び芳香族ジアミンとを加えて混合し重縮合させることを含む架橋ポリイミド組成物の製造方法。
【請求項23】
請求項11記載の方法においてテトラアミンを含まない方法により製造された線状ポリイミド組成物中において、請求項11ないし21のいずれか1項に記載の方法を行うことを含む、架橋ポリイミド組成物の製造方法。
【請求項24】
請求項11ないし22のいずれか1項に記載の方法により製造された架橋ポリイミド組成物。
【請求項25】
組成物中の架橋ポリイミドのスチレン換算重量平均分子量が1万5千ないし30万である請求項24記載のポリイミド組成物。
【請求項26】
請求項11記載の方法においてテトラアミンを含まない方法により製造された線状ポリイミドをさらに含み、室温で溶液状である請求項24又は25記載の架橋ポリイミド組成物。
【請求項27】
請求項24ないし26のいずれか1項に記載の組成物中に光酸発生剤をさらに含む、感光性架橋ポリイミド組成物。
【請求項28】
請求項27記載の感光性架橋ポリイミド組成物の溶液を基体上にキャストして60〜90℃に加熱してフィルム状にした後、マスクを通して光照射した後、アルカリ溶液でエッチングをしてポジ型画像を形成することを含む、パターン化ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法により製造されたパターン化ポリイミドフィルム。
【請求項30】
請求項1ないし10架橋ポリイミドを含む絶縁材若しくは絶縁性基板又は保護材を含む、電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項31】
前記架橋ポリイミドが、(1)半導体素子の層間絶縁膜、(2)積層板、多層回路基板若しくはフレキシブル銅張板の基板、(3)又は半導体チップコーティング用フィルムとして用いられる請求項30記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項32】
前記半導体チップコーティング用フィルムは、パッシベーション膜、α線遮蔽膜又はバッファーコート膜である請求項31記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項33】
前記架橋ポリイミドは、光酸発生剤を含むポジ型感光性ポリイミドであり、前記絶縁材又は保護材は、フォトリソグラフィーにより形成される請求項30ないし32のいずれか1項に記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項34】
前記絶縁材又は保護材は、スクリーン印刷により形成される請求項30ないし32のいずれか1項に記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項35】
前記架橋ポリイミドは、アニオン性基を有する単位を含み、前記絶縁材又は保護材は、電着により形成される請求項30ないし32のいずれか1項に記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。
【請求項36】
水溶液中で陰イオンになる基がカルボキシル基又はその塩である請求項35記載の電気機器若しくは電子機器又はそれらの部品。

【国際公開番号】WO2004/087793
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504206(P2005−504206)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004305
【国際出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(397025417)株式会社ピーアイ技術研究所 (50)
【Fターム(参考)】