説明

架橋性含フッ素共重合体及び架橋性含フッ素共重合体組成物

【解決手段】式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)、不飽和二塩基酸無水物(2)及びエーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(3)(但し、式(1)の化合物を除く。)を共重合してなる、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体並びに、上記共重合体と架橋剤を含む、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の共重合体組成物。化合物(1)40〜60モル%と、不飽和二塩基酸無水物(2)10〜40モル%と、フッ素化オレフィン(3)10〜40モル%(全共重合成分の合計を100モル%)の量で共重合してなるものが好ましい。
【効果】熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体、その製法及び架橋性含フッ素共重合体組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性含フッ素共重合体及び架橋性含フッ素共重合体組成物に関し、さらに詳しくは、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体、その製法及び架橋性含フッ素共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器や電気機器における配線やデバイスの高密度化に伴い、電子材料の用途に低誘電率材料が求められ、さらに形状の自由性、生産性、軽量性に優れた高分子材料が求められている。
【0003】
また、上記電子機器等に取付けられる各種表示装置の視認性を向上させるため、これら表示装置の表面には、通常、低屈折率の反射防止膜が設けられている。反射防止膜を有する表示装置を製造する上で、高分子材料の溶液を電子機器用表示板などの表面に直接塗付することにより、反射防止用の皮膜を形成できれば効率が良い。
【0004】
そして、このような被膜形成用の高分子材料としては、溶媒に可溶性であり基質に塗布・付着が可能であり、また、熱、光架橋にて膜成形可能であり、低誘電率、低屈折率の架橋性の材料であることが望まれる。
【0005】
このような観点から種々の高分子材料について検討すると、含フッ素共重合体は他のハイドロカーボン系共重合体に比して、低誘電率化、低屈折率化が期待できる。
しかしながら、含フッ素共重合体は、一般に基材表面との密着性が悪いため、極性基を導入してその密着性を改善し、また耐久性を高めるためには架橋性基の導入と効率的架橋系の構築が必要である。
【0006】
ところで、皮膜成形用含フッ素共重合体としては、その用途に応じてレジスト用、絶縁膜用、塗料用など、種々のタイプのものがこれまでに開発されており、このような含フッ素共重合体の製造の際には、得られる含フッ素共重合体に架橋点を導入し、また相手基材表面との密着性を向上させるための官能基を有するものとして不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸類がフッ素系モノマーと共に用いられている。
【0007】
得られる共重合体がカルボニル基をその側鎖に持つことにより、架橋性や相手基材との表面密着性に効果が有るが、フッ素化オレフィンとカルボン酸モノマー、及びカルボン酸無水物モノマーとの共重合反応を行い、高収率でこのような共重合体(樹脂)を得ることは困難である。
【0008】
フッ素化オレフィンと不飽和カルボン酸モノマーとの共重合体は、柔軟性、溶解性が低く、また共重合体の製造時における上記フッ素化オレフィンと不飽和カルボン酸モノマーとの共重合性の低さから、共重合性モノマーとしてフッ素化オレフィンと不飽和カルボン酸モノマーの他に、アルキルビニルエーテルを加えて共重合させることが多く、その結果、得られる共重合体中におけるフッ素含有量が下がり、共重合体の誘電率、屈折率を低くすることは困難である。
【0009】
このため、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体、及び、このような架橋性含フッ素共重合体を含有し、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る架
橋性含フッ素共重合体組成物が求められていた。
【0010】
なお、特公昭55−146446号公報(特許文献1)には、X(CF(CHOCH=CH[XはH,FまたはCF(CF)CFであり、nは1又は2、mは1から10の整数]で表わされるフルオロアルキルビニルエーテルと無水マレイン酸との交互共重合体が開示されている。該公報に重合例として開示されている、上記式中、n=1、X=H、m=8であるH(CFCFCHOCH=CHと無水マレイン酸との共重合体を得るには、無溶媒下で24時間、これらモノマーを共重合反応させることが必要であり、また共重合体の収率は83.3%であった。また各々の単量体は交互共重合性を有するため、得られる共重合体の架橋基量の調整ができず、またフッ素含量にはおのずと上限が有り低誘電率化、低屈折率化への対応が難しい。
【0011】
特開平11−193312号公報(特許文献2)にフッ素化オレフィンと無水マレイン酸の共重合例が示されているが、重合用溶媒として超臨界二酸化炭素もしくは超臨界ヘキサフルオロプロピレンを用いる方法により共重合反応を達成している。しかしながら、この共重合法の工業化には高価な製造装置が必要と考えられる。
【特許文献1】特公昭55−146446号公報
【特許文献2】特開平11−193312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体を提供することを目的としている。
【0013】
また、本発明は、このような架橋性含フッ素共重合体を含有し、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る架橋性含フッ素共重合体組成物を提供することを目的としている。
【0014】
また、本発明は、上記架橋性含フッ素共重合体を高収率で得られるような架橋性含フッ素共重合体の製造法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体は、
式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル、不飽和二塩基酸無水物及びエーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(但し、式(1)の化合物を除く。)を含む共重合性モノマーを共重合してなる、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体である。
【0016】
また、本発明に係る、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体の製造法は、
式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル、不飽和二塩基酸無水物及びエーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(但し、式(1)の化合物を除く。)を含む共重合性モノマーを共重合させることを特徴としている。
【0017】
上記いずれの本発明においても、上記不飽和二塩基酸無水物が無水マレイン酸であることが好ましい。
また、上記何れの本発明においても、上記フッ素化オレフィンがヘキサフルオロプロペ
ンであることが好ましい。
【0018】
上記何れの本発明においても、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)と、不飽和二塩基酸無水物と、フッ素化オレフィンとを、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル40〜60mol%、不飽和二塩基酸無水物10〜40mol%、およびフッ素化オレフィン10〜40mol%(但し、これら共重合成分を含む全共重合成分の合計を100モル%とする。)の量で共重合させることが好ましい。
【0019】
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体組成物は、低誘電率、低屈折率の膜を形成用のものであって、上記の何れかに記載の架橋性含フッ素共重合体および架橋剤を含んでいる。
本発明の架橋性含フッ素共重合体組成物では、上記架橋剤がエポキシ基含有化合物であることが好ましく、また、上記エポキシ基含有化合物が含フッ素ビスフェノールA型ジグリシジル化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体及びこのような架橋性含フッ素共重合体を含有し、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る架橋性含フッ素共重合体組成物が提供される。
【0021】
本発明によれば、収率良く架橋性含フッ素共重合体を得られるような、架橋性含フッ素共重合体の製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る架橋性含フッ素共重合体および架橋性含フッ素共重合体組成物について具体的に説明する。
[架橋性含フッ素共重合体]
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体は、少なくとも、式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(以下、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)とも言う。)と、不飽和二塩基酸無水物と、エーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(但し、式(1)の化合物を除く。以下同様。)とを含む共重合性モノマーを共重合してなる。
【0023】
本発明の好ましい態様においては、実質上、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)と不飽和二塩基酸無水物とフッ素化オレフィンのみからなる架橋性含フッ素共重合体であることが樹脂中のフッ素量の増加を図ることができ、側鎖官能器量の増加を図ることができる点から望ましい。
【0024】
<パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)>
本発明で用いられる、式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテルは、WO92/05135(PCT/US91/04523)に開示されている方法で合成可能である。
【0025】
このようなパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)としては、具体的には、パーフルオロエチル−エチル−ビニルエーテル(n=1)、パーフルオロブチル−エチル−ビニルエーテル(n=2)、パーフルオロヘキシル−エチル−ビニルエーテル(n=3)、パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(n=4、「FAVE」と略記)が挙げられ、これらのうちではパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(n=
4)が、得られる共重合体中におけるフッ素量の増加を図ることができ、かつ蒸留などによる精製もできるため好ましい。なお、n=4からn=1へと小さくなるに連れて、フッ素側鎖(特にRf部分)のフッ素量によってもたらされる樹脂中のフッ素量増加の効果が少なくなり、またn=4を超えると蒸留など精製が難しくなる。
【0026】
本発明では、これらパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)を1種単独で用いてもよく2種以上併用しても良い。
<不飽和二塩基酸無水物>
不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ムコン酸、3−ビニルフタル酸無水物、4−ビニルフタル酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸など、不飽和カルボン酸の酸無水物が挙げられ、これらのうちでは無水マレイン酸(「MAn」と略記)が好ましい。
【0027】
これらの不飽和二塩基酸無水物は1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
なお、本発明では、得られた共重合体中における、上記不飽和二塩基酸無水物由来の成分単位中の酸無水物基を加水分解させて、カルボキシル基に変換させることができる。
【0028】
また、上記のようにして生じた共重合体中におけるカルボキシル基に、さらにアルコールを反応させることにより、エステル基に変換させることができる。
<フッ素化オレフィン>
フッ素化オレフィン(式(1)の化合物を除く。)としては、エーテル結合を有していてもよく、ヘキサフルオロプロピレンの他、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレンなどのフルオロオレフィン(オレフィンの炭素数:C2〜10、好ましくはC2〜5);
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)などのパーフルオロアルキルビニルエーテルもしくはパーフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル(アルキル基の炭素数1〜5、アルコキシ基の炭素数1〜5)あるいは、
式:CH=CH−O−Rf[Rfは、水素原子の少なくとも一部がフッ素置換された、C1〜5のアルキル基もしくは総炭素数2〜10のアルコキシアルキル基(アルコキシ基の炭素数1〜5,アルキル基の炭素数1〜5)を示す。]で表わされるフルオロアルキルビニルエーテル(但し、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)を除く。)、もしくはフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル(アルコキシ基およびアルキル基の炭素数はそれぞれ1〜5)が挙げられる。
【0029】
これらのフッ素化オレフィンのうちでは、上記フルオロオレフィンが好ましく、特に、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」と略記)に代表される、エーテル結合を有しない上記フルオロオレフィンが望ましい。
【0030】
本発明においては、これらフッ素化オレフィンを1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
<その他の共重合性モノマー>
本発明では、必須成分となる上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)と不飽和二塩基酸無水物とフッ素化オレフィンとに加えて、さらに、上記した以外の不飽和カルボン酸類、不飽和エーテル類等を共重合性モノマーとして用いても良い。
【0031】
不飽和カルボン酸類としては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、イタコン酸などの不飽和モノまたはジカルボン酸;
(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタン酸などのヒドロキシ脂肪酸の(メタ)アクリレート;
4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシフタル酸、3−(メタ)アクリロイルオキシフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシイソフタル酸、5−(メタ)アクリロイルオキシイソフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシテレフタル酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸の(メタ)アクリレート;
コハク酸モノ(4−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル、イソフタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル、テトラヒドロイソフタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル、テトラヒドロテレフタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エチルなどのカルボン酸のモノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル;
イタコン酸のモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノ−i−プロピル、モノブチル、モノ−sec−ブチル、モノ−tert−ブチルなどの不飽和カルボン酸のモノアルキルエステル;
などが挙げられる。
【0032】
これらの不飽和カルボン酸類は1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
不飽和エーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルまたはシクロアルキルビニルエーテル;
2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸機含有ビニルエーテル;
2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸機含有アリルエーテル等が挙げられる。
【0033】
これらの不飽和エーテル類は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
<共重合反応>
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体は、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)好ましくは式(1)中、n=4のパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテルと、不飽和二塩基酸無水物好ましくは無水マレイン酸と、フッ素化オレフィン好ましくはヘキサフルオロプロペンとに加えて、必要により、さらに、上記した以外の不飽和カルボン酸類、不飽和エーテル類等の共重合性モノマーを共重合させて得られているが、このような共重合反応は、通常、溶媒中で、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤などの存在下に行われる。
【0034】
上記共重合反応は、通常0〜100℃、好ましくは50〜80℃の温度で、通常0.01〜0.9MPa、好ましくは0.01〜0.7MPaの圧力下に、通常、4〜24時間、好ましくは6〜10時間行われる。また、反応は、反応器内の空気を窒素置換し、非酸素雰囲気下に行うことが望ましい。
【0035】
ここで、用いられる共重合用モノマーの配合比について、共重合比の点からさらに詳説
する。
例えば、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)の1種であるパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(「FAVE」と略記)と、不飽和二塩基酸無水物の1種である無水マレイン酸(「MAn」と略記)と、フッ素化オレフィンの1種であるヘキサフルオロプロペン(「HFP」と略記)とを共重合反応させると、共重合反応機構上では、無水マレイン酸は単独で重合せず、ビニル基に電子供与基が付くオレフィン類との交互共重合が知られているように、無水マレイン酸(MAn)成分単位とヘキサフルオロプロペン(HFP)成分単位とは、互いに直接結合しておらず、例えば、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)由来の成分単位(1)を介して、無水マレイン酸(MAn)成分単位とヘキサフルオロプロペン(HFP)成分単位とが交互に配列した共重合体、すなわち、「・・・・・・−(1)−(MAn)−(1)−(HFP)−(1)−(MAn)−(1)−(HFP)−(1)−・・・・・・」などを形成すると考えられる。
【0036】
そのため、本発明の架橋性含フッ素共重合体を製造する際には、反応機構上、上記例では、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)2モルに対して、無水マレイン酸(MAn)とヘキサフルオロプロペン(HFP)とがぞれぞれ1モルづつとなるモル比(換言すれば、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)50モル%に対して、無水マレイン酸25モル%、ヘキサフルオロプロペン25モル%)で交互共重合し、同上のモル比の交互共重合体が形成されると考えられる。
【0037】
実際には、本発明では、このような共重合反応の際には、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)は、通常10〜90モル%好ましくは40〜60モル%の量で、不飽和二塩基酸無水物は、通常5〜50mol%好ましくは10〜40モル%の量で、およびフッ素化オレフィンは、通常5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%(但し、全共重合成分の合計を100モル%とする。)の量で用いて反応させることが好ましい。
【0038】
その他の共重合性モノマーは、本発明の目的に反しない限り、低価格化、有機溶剤への溶解性の観点から、40モル%以下の量で共重合させても良い。
なお、上記共重合反応の際におけるパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(FAVE)に代表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)の共重合比率が上記範囲を超えると有機溶剤に対して溶解性が悪化し、また上記範囲に満たないと重合収率が悪化する傾向がある。
【0039】
また、無水マレイン酸に代表される不飽和二塩基酸無水物の共重合比が上記範囲を超えると得られる塗膜の誘電率、屈折率が低くなり、また上記範囲に満たないと相手基材への密着性が悪くなり、また架橋皮膜を形成した際、架橋密度を十分に上げることができず膜強度、耐久性などが不十分となる傾向がある。
【0040】
また、ヘキサフルオロプロペンに代表されるフッ素化オレフィンの共重合比率が上記範囲に満たないと、得られる塗膜の誘電率、屈折率が高くなり、また、上記範囲を超えると、得られる塗膜は、相手基材との密着性が低下し、特に上記範囲を超えてフッ素化オレフィンの共重合比率が高くなり過ぎると、得られる含フッ素共重合体の有機溶媒への溶解性が低下する傾向がある。
【0041】
<溶媒>
溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル等のエステル類;
メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のア
ルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;
N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系プロトン性極性溶媒;
3−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等のアルコキシエステル類;
エチレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピオングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等の(ジ)グリコールアルキルエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピオングリコールモノメチルエーテル、プロピオングリコールモノエチルエーテル、ジプロピオングリコールモノメチルエーテル、ジプロピオングリコールモノエチルエーテル等の(ジ)グリコールモノアルキルエーテル類;
プロピオングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート類のグリコールモノアルキルエーテルエステル類;
シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;
等が挙げられる。
【0042】
またこれら溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
これらの溶媒の配合量は特に限定されないが、溶媒は、例えば、前記共重合性モノマーの合計100重量部に対して、100〜900重量部の量で用いられる。
【0043】
<ラジカル重合開始剤>
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4’−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4’−メチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;
ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシピバレート、1,1−ビス−(tert−ブチルパーオキシシ)クロヘキサン等の有機過酸化物;
等が挙げられる。
【0044】
これらのラジカル重合開始剤の配合量は上記共重合反応を促進し得る限り特に限定されないが、ラジカル重合開始剤は、例えば、前記共重合性モノマーの合計100重量部に対して、1〜20重量部の量で用いられる。
【0045】
<共重合体の物性など>
このように共重合してなる架橋性含フッ素共重合体においては、各共重合性モノマー由来の成分単位は、ほぼ、用いられた各共重合性モノマー量に対応する量比で存在している。なお、二塩基酸無水物(無水マレイン酸)の反応条件、電子供与性基を持つオレフィン類と交互共重合するという前提条件を満たす仕込モル比で重合を行なえば、得られるフッ素共重合体は、仕込モノマーの成分量比に由来する成分単位比となる。
【0046】
すなわち、本発明の架橋性含フッ素共重合体においては、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)由来の成分単位(1)は、通常10〜90モル%好ましく
は40〜60モル%の量で、不飽和二塩基酸無水物由来の成分単位は、通常5〜50モル%好ましくは10〜40モル%の量で、およびフッ素化オレフィン由来の成分単位は、通常5〜50モル%、好ましくは10〜40モル%(但し、共重合体中に含まれる全成分単位の合計を100モル%とする。)の量で存在していることが望ましい。
【0047】
なお、その他の成分単位は、40モル%以下の量で存在していてもよい。
共重合体中における各成分単位の含有量(モル比)は、元素分析と、F−NMRを用いることにより以下のようにして算出される。
【0048】
例えば、パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(FAVE)/無水マレイン酸(MAn)/ヘキサフルオロプロペン(HFP)−3元共重合体を酸素置換フラスコ内で燃焼し、イオン化したフッ素イオンに対し、フッ素イオンと複合錯体を形成させたときに、長波長側に吸収極大を持つ複合錯体を形成する「ドータイト・アルフッソン」(同人化薬研究所製)水溶液を使用し、波長620nmでの光透過率を日本分光(株)製、V−570型分光光度計を用いて求めた。前もって作成した検量線を使用しフッ素イオン量を求め、樹脂単位重量中のフッ素量を求めた。(アリザリンコンプレクソン法)
また、上記パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(FAVE)/無水マレイン酸(MAn)/ヘキサフルオロプロペン(HFP)−3元共重合体に対しF−NMR分析(分析法は「実施例」を参照)を行ない、得られるHFP由来のピークとFAVE由来のピークとを比較し、上記元素分析で求めた、樹脂単位量中のフッ素量と、F−NMRで求めたフッ素化オレフィンのパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(FAVE)単位、ヘキサフルオロプロペン(HFP)単位の比から、単位樹脂中のそれぞれの成分単位の比を求め、残りを無水マレイン酸単位とした。
【0049】
また、このような架橋性含フッ素共重合体においては、例えば、下記式(A)に示すように、用いられた各共重合性モノマーの炭素−炭素二重結合部位(C=C)が単結合(C−C)となって生じた成分単位(ユニット)である、パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)由来の成分単位(1)と、不飽和二塩基酸無水物(例:無水マレイン酸(MAn))由来の成分単位(MAn)と、フッ素化オレフィン(例:ヘキサフルオロプロペン(HFP))由来の成分単位(HFP)とが、好ましくは下記式(A)で示すように成分単位(1)を介して成分単位(MAn)と成分単位(HFP)とが交互に介在するように配列して、下記式(A)中、(カッコ)で示すC−C単結合部位で互いに結合して連結していると考えられる。
【0050】
なお、本発明においては、用いられる各成分単位の量比等にも依るが、成分単位(1)と成分単位(1)の間に成分単位(MAn)または(HFP)が任意の順序で介在するように配列していてもよく、また成分単位(1)等が複数個づつ連続してブロック状に配列していてもよい。
【0051】
【化1】

【0052】
(なお、式(A)において、成分単位(1)中のRfは前記式(1)に同じ。)
このような架橋性含フッ素共重合体についてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1000〜20000(2万)、好ましくは2000〜10000である。
【0053】
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体は、光酸発生剤、架橋剤などの存在下に、熱、光照射にて架橋し、製膜可能であり、得られた硬化塗膜は、低誘電率(例:2.5〜3.2)、低屈折率(例:1.34〜1.42)を有し、ガラス基材やシリコーン基材に対する残存升目が80個以上、好ましくは95個以上と、密着性(測定法:JISK5400
に準拠した碁盤目試験に依る。)に優れている。
【0054】
本発明の架橋性含フッ素共重合体は、溶剤可溶性を示し、前記共重合体の製造時に用いた溶媒、例えば、(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン)などの溶剤に良好に溶解可能である。
【0055】
なお、本発明では、架橋性含フッ素共重合体(樹脂)中の二塩基酸無水物基に対して、架橋性官能器付与等の目的で、必要により、加水分解させることでカルボキシル基に変換し、またこのカルボキシル基にアルコールを反応させることによりエステル基に変換してもよい。
【0056】
[架橋性含フッ素共重合体組成物]
本発明に係る架橋性含フッ素共重合体組成物は、上記の何れかに記載の架橋性含フッ素共重合体および架橋剤を含んでいる。
【0057】
このような架橋性含フッ素共重合体組成物は、熱、光などにて硬化し、例えば、製膜も可能であり、低誘電率、低屈折率の膜(硬化膜)を形成し得る。
この硬化膜は、ガラス基材、シリコン基材(Si単結晶のSi基板、シリコンsilicon基板)、有機高分子材料などに被着可能であり、特にガラス基材、シリコン基材に対する付着性に優れている。
【0058】
この架橋性含フッ素共重合体組成物が、さらに、光酸発生剤(感光剤)を含むと、光硬化も、より効率的に進行可能となる。なお、この架橋性含フッ素共重合体組成物には、溶剤、表面密着性付与のためのシランカップリング剤などが必要により適宜量で含まれていてもよい。
【0059】
<架橋剤>
架橋剤としては、エポキシ基含有化合物類、イソシアナート基含有化合物類、メチロール化メラミン類、メチロール化グアナミン類などが使用でき、特にエポキシ基含有化合物が好ましい。
【0060】
架橋剤として使用できるエポキシ基含有化合物としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が用いられる。このようなエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0061】
エポキシ基含有化合物としてより好ましくは、2,2’−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等の含フッ素エポキシ基含有化合物が好適に用られる。
【0062】
本発明の架橋性含フッ素共重合体組成物では、上記架橋剤がエポキシ基含有化合物であることが好ましく、また、上記エポキシ基含有化合物が含フッ素ビスフェノールA型ジグリシジル化合物であることが好ましい。
【0063】
このような架橋剤は、架橋性含フッ素共重合体組成物中の架橋性含フッ素共重合体100重量部に対して、通常、1〜50重量部、好ましくは5〜20重量部の量で用いられることが望ましい。
【0064】
なお、本発明では、架橋性含フッ素共重合体(樹脂)中の二塩基酸無水物基を加水分解させてカルボキシル基に変換し、またこの二塩基酸無水物基にアリルアルコールなどアルコールを反応させることによりエステル基に変換し、官能基を導入している場合には、架橋剤としては、同上、または官能基との反応性を考慮し、より適した架橋剤が用いられる。
【0065】
<光酸発生剤(感光剤)>
光酸発生剤(光酸発生成分、感光剤とも言う。)としては、たとえば、トリクロロメチル−s−トリアジン類、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、第4アンモニウム塩類、スルホン酸エステル類等を用いることができ、1種単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。
【0066】
このような光酸発生剤は、架橋性含フッ素共重合体組成物中の架橋性含フッ素共重合体100重量部に対して、通常、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の量で用いられることが望ましい。
[発明の効果]
本発明によれば、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る、溶剤可溶性の架橋性含フッ素共重合体が提供される。
【0067】
また、本発明によれば、このような架橋性含フッ素共重合体を含有し、熱、光照射にて架橋し製膜可能であり、低誘電率、低屈折率の膜を形成し得る架橋性含フッ素共重合体組成物が提供される。
【0068】
本発明においては、二塩基酸無水物とフッ素化オレフィンとの共重合の際に、フッ素化ビニルエーテル(RfCHCHOCH=CH[Rf=−(CFCFF、n=1〜4])を配合し共重合させており、二塩基酸無水物とフッ素化オレフィンのみを共
重合させる場合に比して、高収率で上記架橋性含フッ素共重合体を製造できる。
【0069】
特に、フッ素化オレフィンとしてヘキサフルオロプロペン(ヘキサフルオロプロピレン)を用いると、架橋基となる二塩基酸無水物基を含有した架橋性含フッ素共重合体中のフッ素含有量を増加させることができ、形成された皮膜の誘電率、屈折率をより小さくすることができる。
[実施例]
以下、本発明に係る架橋性含フッ素共重合体及び架橋性含フッ素共重合体組成物について実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、係る実施例により何ら、限定的に解されるべきではない。
誘電率の測定法:
基板に塗布した共重合体融解物あるいは共重合体溶液を、140℃で30minで硬化させ、得た膜厚5μのフィルムに対し、ヒューレットパッカード社製「16451B電極」、「4285AプレシジョンLCRメーター」を使用し、誘電率の測定を行なった。
屈折率の測定法:
基板に塗布した共重合体融解物あるいは共重合体溶液を、140℃で30minで硬化させ、得られた膜厚5μのフィルムについて、アタゴ社製アッベ屈折計使用し、波長589nmで屈折率の測定を行なった。
【実施例1】
【0070】
<架橋性含フッ素共重合体>
内容量500mlの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブにパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル80g(0.16モル)、無水マレイン酸8g(0.08モル)、酢酸エチル200g(2.27モル)、過酸化ラウロイル4g(0.01モル)を仕込み、窒素置換で酸素を除去後ヘキサフルオロプロピレン12g(0.08モル)を仕込み、加熱して昇温を開始した。オートクレーブ内温70℃で内圧は0.01MPaとなり、その後、同温度(70℃)および同内圧(0.01MPa)下に、7時間攪拌を継続した。
【0071】
このように7時間攪拌した後、オートクレーブを冷却し、反応を終了させた。室温(約25)℃にまで内温が下がったのを確認し、残存モノマーをパージ(放出)し、反応混合物を回収した。その後n−ヘキサンで再沈を行い、収率83%で含フッ素共重合体83.2gを得た。
【0072】
該含フッ素共重合体について、ドータイト・アルフッソン(同人化薬研究所製)水溶液を使用した「アリザリンコンプレクソン法」、による元素分析でフッ素含有量を求め、F−NMR(機種:JNM−LA300、製造元:日本電子データム株式会社)を使用し、パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル単位とヘキサフルオロプロピレン単位の比を求め、フッ素含有量とF−NMRの結果から、得られた共重合体(樹脂)中の各成分単位の組成比(モル比)を求めた。
【0073】
含フッ素共重合体中に含まれている各成分単位のモル比は、パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:無水マレイン酸単位=52:26:22(成分単位のモル比)であった。
【0074】
該共重合体につい求めた、ゲルパーミューションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、6000であった。
【実施例2】
【0075】
<架橋性含フッ素共重合体>
内容量500mlの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブにパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル80g(0.16モル)、無水マレイン酸3g(0.03モル)、酢酸エチル200g(2.27モル)、過酸化ラウロイル4g(0.01モル)を仕込み、窒素置換で酸素を除去後、ヘキサフルオロプロピレン18g(0.12モル)仕込み昇温を開始した。
【0076】
実施例1と同様に内温70℃で内圧は0.01MPaとなり、その後7時間攪拌した。
このように7時間攪拌を継続した後、オートクレーブを冷却し、反応を終了させた。室温にまでオートクレーブ内温が下がったのを確認し、残存モノマーをパージ(放出)し、反応混合物を回収した。
【0077】
その後、n−ヘキサンで反応混合物の再沈を行い、収率87.3%で含フッ素共重合体88.2gを得た。
上記実施例1と同様にして、共重合体中の各成分単位の組成比(モル比)を求めたところ、モル比はパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル単位:ヘキサフルオロプロピレン単位:無水マレイン酸単位=53:39:8(モル比)であった。
【0078】
樹脂成分組成比分析は上記実施例1と同様に行った。また数平均分子量はMn=6400であった。
【実施例3】
【0079】
<架橋性含フッ素共重合体>
内容量500mlの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブにパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル80g(0.16モル)、無水マレイン酸15g(0.15モル)、酢酸エチル200g(2.27モル)、過酸化ラウロイル4g(0.01モル)を仕込み、窒素置換で酸素を除去後、ヘキサフルオロプロピレン3g(0.02モル)仕込み昇温を開始した。内温70℃で内圧は上がらなかった。その後7時間攪拌した。7時間経過後オートクレーブを冷却し、反応を終了させた。室温にまで内温が下がったのを確認し、残存モノマーを放出し、反応混合物を回収した。その後n−ヘキサンで再沈を行い、収率83%で含フッ素共重合体81.5gを得た。
【0080】
上記実施例1と同様に分析した結果、モル比はパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル成分単位:ヘキサフルオロプロピレン成分単位:無水マレイン酸成分単位=53:7:40(モル比)であった。樹脂中成分組成比分析は上記実施例1と同様に行った。数平均分子量はMn=5900であった。
【実施例4】
【0081】
<架橋性含フッ素共重合体組成物>
実施例1で得られた含フッ素共重合体100重量部、及び2,2’−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン20重量部を全体の固形分濃度が40wt%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、ガラス基板、及びシリコン基板(Si単結晶のSi基板(シリコンsilicon基板))上にそれぞれ塗付し、140℃で30分間加熱し、硬化処理を行った。
【0082】
得られた膜成形物(乾燥膜の厚さ:5μm(厚))に対して、屈折率、誘電率、密着性を評価した。
その結果、誘電率=2.8、 屈折率n=1.36となった。
【0083】
なお、密着性評価は「JIS K 5400」に準拠して、以下の方法で行った。
すなわち、乾燥塗膜が形成された上記各基板上の塗膜にカッターで切り込みを入れて、
1mm角のマス目を100個作り、この塗膜上にセロテープ(登録商標)(R)を圧着させてから急速に剥がし、100個の升目のうち何個残るかで基材に対する塗膜の密着性を評価した。
【0084】
その結果、残存升目/升目全体(100個)は、ガラス基板では、100個/100個となり、シリコン基板では、100個/100個となり、何れの基板に対しても密着性は良好であった。
【実施例5】
【0085】
<架橋性含フッ素共重合体組成物>
実施例4において、実施例2の樹脂を用いた以外は実施例4と同様にして共重合体溶液を調製し、上記と同様に塗膜を形成してその評価を行なった。
【0086】
その結果、誘電率=2.7、屈折率n=1.35、密着性評価はガラス基板=90/100、シリコン基板=80/100となり、密着性は実施例1の樹脂と比較し、やや劣る結果となった。
【実施例6】
【0087】
<架橋性含フッ素共重合体組成物>
実施例4において、実施例3の樹脂を用いた以外は実施例4と同様にして共重合体溶液を調製し、上記と同様に塗膜を形成してその評価を行なった。
【0088】
その結果、誘電率=3.0、屈折率n=1.38、密着性評価はガラス基板=100/100、シリコン基板=100/100となり、実施例5(実施例2の樹脂を使用)に比して誘電率、屈折率は僅かに劣るものの、密着性は実施例5と同様に良好であった。
[比較例1]
内容量300mlのセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、パーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル(「FAVE」と略記)50g(0.10モル)、無水マレイン酸(「MAn」と略記)9.5g(0.10モル)、酢酸エチル130g(1.48モル)、過酸化ラウロイル3g(0.0075モル)を仕込み昇温を開始し、70℃で8時間攪拌を継続した後、冷却し反応を終了した。室温まで内温が低下したことを確認し、反応混合物を回収し、n−ヘキサンで再沈精製を行い、収率96%で共重合体96.2gを得た。元素分析よりパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル単位:無水マレイン酸単位=51:49の交互共重合体であることを確認した。ゲルパーミューションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量はMn=5200であった。
[比較例2]
内容量500mlの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブにパーフルオロオクチル−エチル−ビニルエーテル80g(0.16モル)、酢酸エチル200g(2.27モル)、過酸化ラウロイル4g(0.01モル)を仕込み、窒素置換で酸素を除去後、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」と略記)12g(0.08モル)を仕込み、加熱して昇温を開始した。オートクレーブ内温70℃で内圧は0.01MPaとなり、その後、同温度(70℃)および同内圧(0.01MPa)下に、7時間攪拌を継続した。
【0089】
このように7時間攪拌した後、オートクレーブを冷却し、反応を終了させた。室温(約25)℃にまで内温が下がったのを確認し、残存モノマーをパージし、反応混合物を回収した。その後n−ヘキサンで再沈を行い、収率86%で含フッ素共重合体79.1gを得た。
【0090】
該含フッ素共重合体について、上記実施例1同様の方法を用いて求めた、
含フッ素共重合体中に含まれている各成分単位のモル比は、パーフルオロオクチル−エチ
ル−ビニルエーテル単位:ヘキサフルオロプロピレン単位=54:46(成分単位のモル比)であった。
【0091】
該共重合体について求めた、ゲルパーミューションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、6900であった。
[比較例3]
<架橋性含フッ素共重合体組成物>
実施例4において、比較例1の樹脂を用いた以外は実施例4と同様にして共重合体溶液を調製し、上記と同様に塗膜を形成したその評価を行った。
【0092】
その結果、誘電率=3.5、屈折率n=1.46、密着性評価はガラス基板=100/100、シリコン基板=100/100となり実施例4と同様であったが、誘電率、屈折率は悪化した。
[比較例4]
<架橋性含フッ素共重合体組成物>
実施例4において、比較例2の樹脂を用いた以外は実施例4と同様にして共重合体溶液の調製を試みた。しかしながら、この共重合体(樹脂)の溶媒に対する溶解性が悪く、溶解は不可能だった。
【0093】
そこで、比較例2の樹脂のみについて加熱して融解させ、膜厚5μフィルム化を行ない、電気特性を調べたところ、誘電率=2.6、屈折率n=1.35となった。
これら実施例1〜6、比較例1〜4に示す結果を併せて表1に示す。
【0094】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル、不飽和二塩基酸無水物及びエーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(但し、式(1)の化合物を除く。)を含む共重合性モノマーを共重合してなる、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体。
【請求項2】
上記不飽和二塩基酸無水物が無水マレイン酸である請求項1記載の架橋性含フッ素共重合体。
【請求項3】
上記フッ素化オレフィンがヘキサフルオロプロペンである請求項1〜2の何れかに記載の架橋性含フッ素共重合体。
【請求項4】
上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル(1)と、不飽和二塩基酸無水物と、フッ素化オレフィンとを、上記パーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル40〜60モル%、不飽和二塩基酸無水物10〜40モル%、およびフッ素化オレフィン10〜40モル%(但し、全共重合成分の合計を100モル%とする。)の量で共重合してなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の架橋性含フッ素共重合体。
【請求項5】
式(1):RfCHCHOCH=CH[Rf:−(CFCFF、n:1〜4]で表されるパーフルオロアルキル−エチル−ビニルエーテル、不飽和二塩基酸無水物及びエーテル結合を有していてもよいフッ素化オレフィン(但し、式(1)の化合物を除く。)を含む共重合性モノマーを共重合させることを特徴とする、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体の製造法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れかに記載の架橋性含フッ素共重合体および架橋剤を含む、低誘電率、低屈折率の膜を形成用の架橋性含フッ素共重合体組成物。
【請求項7】
上記架橋剤がエポキシ基含有化合物である請求項6に記載の架橋性含フッ素共重合体組成物。
【請求項8】
上記エポキシ基含有化合物が含フッ素ビスフェノールA型ジグリシジル化合物である請求項7に記載の架橋性含フッ素共重合体組成物。
【請求項9】
請求項1〜4の架橋性含フッ素共重合体および請求項6〜8架橋性含フッ素共重合体組成物のうちの何れかを架橋してなる反射防止膜。
【請求項10】
請求項1〜4の架橋性含フッ素共重合体および請求項6〜8架橋性含フッ素共重合体組成物のうちの何れかを架橋してなる、低誘電率、低屈折率の膜。

【公開番号】特開2007−119790(P2007−119790A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344664(P2006−344664)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【分割の表示】特願2003−49794(P2003−49794)の分割
【原出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】