説明

柔軟性にすぐれたカチオン硬化性樹脂組成物

【課題】光学部品を接着する組成物において、光学部品の接着光学部品を接着するときにレンズを歪ませてしまい、光学性能が満足できないという問題点を解決すること。
【解決手段】スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択されるスチレン−ブタジエン系共重合体と、オキセタン化合物と、酸発生剤とを含む、カチオン硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー線を照射することにより又は熱により硬化する、柔軟性にすぐれたカチオン硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズ、例えば特許文献1に示す光ピックアップの対物レンズをレンズ鏡筒等に固定する場合、硬化物が硬い接着剤を用いると硬化時の応力でレンズが歪んでしまい光学性能を満足できない場合がある。この場合、硬化物が柔軟である接着剤でレンズを鏡筒等に固定することにより、レンズを歪ませずに固定できる。
【0003】
ノートパソコン等の小型、薄型化、軽量化が進み、このノートパソコンに搭載されるCDドライブやDVDドライブに使われる光ピックアップの光学系も小さく、薄く、軽くの方向に進んでいる。これにより、光学レンズとして薄いプラスチックレンズが使われるようになっている。プラスチックレンズの例としては日本ゼオン社製のゼオネックスに代表されるようなシクロオレフィンポリマーやポリプラスチック社製のTOPASのようなシクロオレフィンコポリマーなどがある。
【0004】
ゼオネックス接着用の接着組成物としてはポリブタジエン系エポキシ化合物(エポキシ変性ポリブタジエン)、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物又は脂環エポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれるエポキシ化合物と3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンとを含むカチオン重合組成物が特許文献2によって知られている。しかし、特許文献2に記載されたエポキシ樹脂は、弾性率が高いため光学レンズを固定するとレンズが歪んでしまい光学性能が満足できない。
【0005】
レンズ固定の生産性を考えると室温で硬化できるタイプの樹脂系がのぞましい。エネルギー線硬化タイプで汎用に使われるアクリル樹脂系のラジカル重合タイプは空気中の酸素による硬化阻害により表面硬化性が悪い為、表面タック(べた付き)があり、そのベタ付が原因で光学部品を汚してしまう不具合がおきやすい。エポキシ樹脂系のカチオン重合は酸素による硬化阻害がおきないので表面硬化性にもすぐれている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−302422号公報
【特許文献2】特開2001−131516号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「エポキシ樹脂ハンドブック」、236頁、昭和62年12月25日、初版1刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、光学部品を接着する組成物において、レンズを歪ませてしまい光学性能が満足できないという問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択されるスチレン−ブタジエン系共重合体、オキセタン化合物、及び酸発生剤を含むカチオン硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
レンズを歪ませずに接着固定するには、接着剤の硬化後の硬さがJIS K 6253で定めているタイプA硬度で85以下がのぞましい事を見出した。また、接着性も考慮すると、柔らかすぎると強度が低くなるのでタイプA硬度で20〜85がのぞましい事を見出した。
【0011】
スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択されるスチレン−ブタジエン系共重合体、オキセタン化合物、及び酸発生剤を含むカチオン硬化性樹脂組成物により、柔軟な硬化皮膜を得ることができることを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光学レンズを鏡筒に固定する際に、レンズを歪ませることなく接着できる硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択されるスチレン−ブタジエン系共重合体と、オキセタン化合物と、酸発生剤とを含む。
【0014】
本発明におけるスチレン−ブタジエン系共重合体は、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択される。
スチレン−ブタジエン共重合体は、スチレンとブタジエンの共重合体を意味し、ランダム構造であっても、ブロック構造であってもよいが、ブロック構造であることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体のスチレン含有量は、特に限定されないが、10〜90重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましく、10〜60重量%が特に好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体のMFRは、200℃、5kgで、1〜30(g/10分)であることが好ましく、4〜20(g/10分)であることがさらに好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の市販品として、JSR社製のTR1600、2000、2003、TR2250など、旭化成社製のL611などがある。
スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物とは、ポリスチレン及びポリブタジエン骨格を有する化合物の不飽和結合の一部もしくは全部がエポキシ化された化合物である。スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物のスチレン含有量は、10重量%〜60重量%がより好ましい。また、オキシラン酸素濃度は、0.5重量%〜2.0重量%であるのが好ましく、0.7重量%〜1.5重量%であるのがより好ましい。オキシラン酸素濃度は、HBr滴定によって求めた値である。
【0015】
スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物として、ダイセル工業社製エポフレンドCT310(スチレン含有40重量%、オキシラン酸素濃度0.7重量%)及びエポフレンドAT501(スチレン含有40重量%、オキシラン酸素濃度1.5重量%)などが挙げられる。
〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体は、C〜Cアルキル(メタ)アクリレートとスチレンとブタジエンのランダム又はブロック共重合体である。C〜Cアルキル(メタ)アクリレートにおけるC〜Cアルキルとしては、メチル、エチル、ブチルなどを挙げることができるが、メチルが好ましい。C〜Cアルキル(メタ)アクリレートとスチレンとブタジエンの重量%比は、特に限定されないが、45〜10:10〜70:45〜10が好ましく、40〜20:20〜60:40〜20 がより好ましい。C〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体のMFRは、200℃、49Nで、1〜8(g/10分)であることが好ましく、3〜6(g/10分)であることがさらに好ましい。C〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体の市販品としては、電気化学工業社製のTH−23、TH−21、TH−11、TP−801、TP−803などがある。
【0016】
オキセタン化合物は、分子内に少なくとも一つのオキセタン基を有する化合物である。このようなオキセタン化合物として、フェノキシ基を有するオキセタン、シクロヘキシルオキシ基を有するオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(OXA)、1,4−ビス〔{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル〕ベンゼン(XDO)、2−エチルヘキシルオキセタン(OXT−212(EHOX))、キシリレンビスオキセタン(OXT−121(XDO))、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221(DOX))、3−エチル−{(3−トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。かっこ内は、東亞合成社の品番を示す。
【0017】
フェノキシ基を有するオキセタン又はシクロヘキシルオキシ基を有するオキセタンは、式(1):
【化1】


(式中、R及びRは、水素又は炭素原子数1〜6のアルキルであり、
Lは、結合又は炭素原子数1〜6のアルキレンである。)
で示される、フェノキシ基を有するオキセタン又は、式(2):
【化2】


(式中、R、R及びLは、式(1)で定義されたとおりである。)
で示される、シクロヘキシルオキシ基を有するオキセタンである。
【0018】
炭素原子数1〜6のアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシルなどが挙げられる。炭素数1〜6のアルキレンとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンが挙げられる。
【0019】
このようなフェノキシ基を有するオキセタン又はシクロヘキシルオキシ基を有するオキセタンとしては、式(3):
【化3】


で示される3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、式(3):
【化4】


で示される、式(3)で示されるオキセタンのフェニル基を水添した3−(シクロヘキシルオキシ)メチルオキセタンが好ましい。
【0020】
本発明において、スチレン−ブタジエン系共重合体の含有量は、オキセタン化合物(例えばOXT−211及び/またはOXT−213)100重量部に対して、好ましくは5重量部〜40重量部、さらに好ましくは10重量部〜30重量部である。
【0021】
酸発生剤としては、エネルギー線を照射することで酸が発生するタイプ(「エネルギー線酸発生剤」という場合もある)でも良いし、熱で酸が発生するタイプ(「熱酸発生剤」という場合もある)でもよい。またはエネルギー線酸発生剤と熱酸発生剤を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
エネルギー線酸発生剤として、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩が挙げられる。
【0023】
スルホニウム塩として、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4−フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェートなどのヘキサフルオロホスフェート系スルホニウム塩;トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネートなどのヘキサフルオロアンチモネート系スルホニウム塩;トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4’−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート系スルホニウム塩が挙げられ、市販品としては、ユニオンカーバイド社製UVI−6970、UVI−6974、旭電化工業(株)社製SP−170、SP−171、SP−172、SP−150、SP−151、サンアプロ社製CPI−210Sが挙げられる。好ましくは、旭電化工業(株)社製SP−170、SP−172、サンアプロ社製CPI−210Sである。
【0024】
ヨードニウム塩として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられ、市販品としては、ローディア社製PI2074などが挙げられる。好ましくは、ローディア社製PI2074である。
【0025】
エネルギー線酸発生剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。エネルギー線酸発生剤の使用量はオキセタン化合物100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜10重量部、さらに好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0026】
熱酸発生剤として、例えば、エネルギー酸発生剤として例示されたヘキサフルオロアンチモネート系スルホニウム塩が挙げられ、市販品として三新化学社製、SI−60、SI−60L、SI−80、SI−80L、SI−100、SI−100L、日本曹達(株)社製CI−2624が挙げられる。熱酸発生剤は単独で使用してもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。熱酸発生剤の使用量は、オキセタン化合物100重量部に対して好ましくは0.5重量部〜10重量部、さらに好ましくは1重量部〜5重量部である。
【0027】
またエネルギー線で酸が発生するタイプと熱で酸が発生するタイプを組み合わせても良い。
【0028】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物以外の、シクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、又は更なるエポキシ樹脂などのエポキシ化合物、シランカップリング剤、フィラー、増感剤などの添加剤を含むことができる。
【0029】
シクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル工業社製、商品名EHPE3150)が挙げられる。シクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂の使用量は、オキセタン化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部〜15重量部であり、さらに好ましくは5重量部〜10重量部である。シクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂(例えばEHPE3150)は、硬化性を向上させ、硬化皮膜の表面のタック性を改善するために添加される。
【0030】
脂環式エポキシ樹脂とは、脂環を形成する炭素−炭素結合によって形成されるエポキシ基を少なくとも一つ有するエポキシ樹脂をいう。脂環式エポキシ樹脂として、例えば、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(CEL2000)、1,2:8,9ジエポキシリモネン(CEL3000)、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(CEL2021P)、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、水添ビフェニル型脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。脂環式エポキシ樹脂の使用量は、オキセタン化合物100重量部に対して、0重量部〜50重量部が好ましく、5重量部〜20重量部がより好ましい。脂環式エポキシ樹脂は、粘度調整や硬度調整のために使用される。
【0031】
脂肪族エポキシ樹脂として、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。脂肪族エポキシ樹脂の使用量は、オキセタン化合物100重量部に対して、0重量部〜50重量部が好ましく、5重量部〜20重量部がより好ましい。脂肪族エポキシ樹脂は、粘度調整や硬度調整のために使用される。
【0032】
更なるエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリブタジエン型エポキシ樹脂、ポリイソプレン型エポキシ樹脂などを例示することができる。これらの樹脂は、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。更なるエポキシ樹脂の使用量は、オキセタン化合物100重量部に対して、0重量部〜50重量部が好ましく、5重量部〜20重量部がより好ましい。
【0033】
シランカップリング剤を、接着付与のために使用してもよい。
【0034】
シランカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ジメトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジイソプロポキシシラン、ジエトキシジブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エトルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類を例示できる。これらのシランカップリング剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。シランカップリング剤の添加量は、オキセタン化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.5重量部〜5重量部である。
【0035】
エネルギー線酸発生剤を使用する場合は、硬化性向上のために増感剤を使用してもよい。
【0036】
増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ及びジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素など挙げられる。光増感剤として、具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノンのようなベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンのようなベンゾフェノン誘導体;2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンのようなチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノンのようなアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドンのようなアクリドン誘導体;その他、α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物などが挙げられる。市販品としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ダロキュアー(DAROCURE)TPO、イルガキュアー184、イルガキュアー651、イルガキュアー819、イルガキュアー127、イルガキュアー2959、イルガキュアー500、イルガキュアー369、イルガキュアー1800、イルガキュアー1700、日本シイベルへグナー社製KIP150、KIP100、EB3、日本化薬社製DETX−Sなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
増感剤の使用量は、増感剤がDETX−Sの場合は、オキセタン化合物100重量部に対して、0.005重量部〜0.1重量部であり、好ましくは0.01重量部〜0.05重量部である。エネルギー線源としてLED照射機を使用する場合は、オキセタン化合物100重量部に対して、0.02重量部〜0.05重量部が好ましい。その他の増感剤を使用する場合は、オキセタン化合物100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部、好ましくは0.5重量部〜3重量部である。エネルギー線源としてLED照射機を使用する場合は、オキセタン化合物100重量部に対して、0.5重量部〜3重量部が好ましい。
【0038】
本発明において、特に405nm、380nm、365nm等のLED照射を用いて硬化させる場合には、これらの増感剤を使用することは有効である。LED照射を用いて本発明のカチオン硬化性樹脂組成物を硬化させる方法は、本発明のカチオン硬化性樹脂組成物にエネルギー線源によりエネルギー線を照射する工程を含む。
【0039】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、JIS K6253で定めているタイプA硬度で通常85以下であり、好ましくは20〜85であり、より好ましくは25〜60である。このため、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は、弾性率が高くなりすぎず、光ピックアップレンズなどの光学レンズを歪ませずに接着固定することができる。
【0040】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、室温で硬化させることができ、柔軟な硬化皮膜が得られる。本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、CDドライブやDVDドライブなどに使用される光ピックアップの対物レンズのような光学レンズを歪ませずに固定することができるので、光学レンズの接着剤、及び光学装置の組み立て用の接着剤として有用である。
【実施例】
【0041】
本発明を実施例により説明する。表における含有量は、すべて重量部である。
【0042】
(実施例1〜6)
溶液の調製
表1に示される配合にしたがって、オキセタン化合物(OXT−211)に、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の少なくとも一部がエポキシ化された化合物(エポフレンドCT301又はエポフレンドAT501)及びシクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂(EHPE3150)を溶解させた。次いで、その溶液に、脂環式エポキシ樹脂(CEL2000)、エネルギー線酸発生剤(PI2074)、増感剤(イルガキュアー651)、及びシランカップリング剤(KBM403)を加え攪拌して、均一な溶液を得た。
【0043】
硬化皮膜の形成
得られた溶液を、PETフィルムの上で0.5mm厚になるように膜にした。エネルギー線源として、アイグラフィックス社製のメタルハライドランプ(商品名アイグランデージ)を用いて、1500mJ/cm(350nmオーク社製UV−M10で測定)でUV光を照射して塗布膜を硬化させた。硬化状態は、指触により確認した。なお、硬化状態は、FT-IRでエポキシ基やオキセタニル基の吸収の減少で確認することもできる。
【0044】
硬化物の評価
UV照射後の硬化物を一晩室温で放置し硬化物の硬度を測定した。得られた硬化物の硬度は、JIS K 6253で定めているタイプA硬度計及びタイプD硬度計で測定した。タイプA硬度計は、ゴムのような柔らかい硬化物の硬度の測定に使用され、タイプD硬度計は、それより硬いプラスチック類の硬度の測定に使用される。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
エポフレンドCT310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ダイセル工業社製)
エポフレンドAT501:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ダイセル工業社製)
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル工業社製)
CEL2000:ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル工業社製)
PI2074:ヨードニウム塩系エネルギー線酸発生剤(ローディア社製)
イルガキュアー651:α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
KBM403:シランカップリング剤(信越化学工業社製)
【0047】
(実施例7〜9)フェノキシオキセタンOXT−211とそのフェニル基を水添したオキセタンOXT−213の実験例
表2に示す配合にしたがって、実施例7〜9のカチオン硬化性樹脂組成物を調製した。実施例7〜9の組成物の硬化性を実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
エポフレンドCT310:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ダイセル工業社製)
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
OXT−213:3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタン(東亞合成社製)
CEL2021P:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル工業社製)
PI2074:ヨードニウム塩系光酸発生剤(ローディア社製)
イルガキュアー651:α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0050】
(実施例10〜15)365nm発光LED照射機での硬化実験
表3に示す配合にしたがって、実施例10〜15のカチオン硬化性樹脂組成物を調製した。LED照射機により、365nm(400mW/cm)のエネルギー線を6秒間照射して、硬化皮膜の硬化特性を、指触により確認した。結果を表3に示す。なお、アイグラフィック社製のメタルハライドランプを用いて、1500mJ/cmで照射した場合、実施例10〜実施例15の組成物はいずれも硬化した。
【0051】
【表3】

【0052】
×:未硬化
○:硬化
エポフレンドAT501:エポキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体(ダイセル工業社製)
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
CEL2000:ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル工業社製)
PI2074:ヨードニウム塩系光酸発生剤(ローディア社製)
DETX−S:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製)
イルガキュアー651:α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
【0053】
(実施例16〜20)
表4に示す配合に従って、実施例1〜6に準じて、カチオン硬化性樹脂組成物を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
TR2003:JSR社製スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン/ブタジエン比=43/57)
TH23:DENKA社製メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体
【0056】
(実施例21〜24)
表5に示す配合にしたがって、実施例1〜6に準じてカチオン硬化性樹脂組成物を製造した。これらの樹脂組成物の評価を、硬化をUV硬化から熱硬化(80℃×30分+120℃×1時間)に変えたことを除き、実施例1〜6と同様にして行った。その結果を表5に示す。
【0057】
【表5】

【0058】
SI−100L:三新化学社製 スルホニウム塩系熱酸発生剤
【0059】
(比較例1〜3)
表6に示す配合にしたがって、組成物を調製した。また、実施例1と同様にして、硬化皮膜の硬度を測定した。結果を表6に示す。
【0060】
【表6】

【0061】
EHPE3150:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(ダイセル工業社製)
EP850:DIC社製ビスフェノールAグリシジルエーテル
PB3600:ダイセル化学工業社製ポリブタジエン変性エポキシ樹脂
OXT−211:3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製)
CEL2000:ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(ダイセル工業社製)
PI2074:ヨードニウム塩系光酸発生剤(ローディア社製)
DETX−S:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬製)
KBM403:シランカップリング剤(信越化学工業社製)
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のカチオン硬化性樹脂組成物は、非常に柔らかい硬化物が得られるため、光学系における、光ピックアップレンズのような光学部品の固定に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレート−スチレン−ブタジエン共重合体からなる群から選択されるスチレン−ブタジエン系共重合体と、オキセタン化合物と、酸発生剤とを含む、カチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン−ブタジエン系共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体の二重結合の一部もしくはすべてがエポキシ化された化合物である、請求項1記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
オキセタン化合物が、フェノキシ基を有するオキセタン及び/又はシクロヘキシルオキシ基を有するオキセタンである、請求項1又は2記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
フェノキシ基を有するオキセタン及び/又はシクロヘキシルオキシ基を有するオキセタンが、式(3):
【化5】


で示される3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン及び/又は式(4):
【化6】


で示される3−(シクロヘキシルオキシ)メチル−3−エチルオキセタンである、請求項3記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
オキセタン化合物100重量部に対して、スチレン−ブタジエン系共重合体が、5〜40重量部である、請求項1〜4のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
酸発生剤が、エネルギー線酸発生剤及び/又は熱酸発生剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、シクロヘキサン骨格をもつエポキシ樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、光増感剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
光学レンズ固定用の接着剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
光ピックアップ装置組み立て用の接着剤である、請求項1〜8のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物を使用して組み立てた光学装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物を使用して組み立てた光ピックアップ装置。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項記載のカチオン硬化性樹脂組成物にLED照射機によりエネルギー線を照射する工程を含む、カチオン硬化性樹脂組成物の硬化方法。

【公開番号】特開2011−80044(P2011−80044A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198636(P2010−198636)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】