説明

柱と梁の差込型継手

【課題】鉄骨接合構造の溶接・加工を削減し、接合部に耐震機能を付加し、建築物の階高変更・用途変更を可能にする柱と梁の継ぎ手構造の提供。
【解決手段】梁を差込型のサヤ管継ぎ手として柱は切断、加工のない通し柱とするともに、サヤ管の差込部分をステンレス板による摩擦接合にして摩擦すべりによる制震機能を加え、継ぎ手部分のクサビ・ボルトによる分解機能により脱着可能にする。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】
鉄骨接合構造の溶接・加工を削減し、安全性能を安定させる工業化の摩擦接合の差込型継手により、専門技能工減少に役立て、建築の長期耐用を可能にする階高・用途変更や移転性・部材再利用などを可能にする新たな建築・不動産付加価値を創る。また、建物所有者・保険事業者が求める社会制度に噛み合う安全性に基づく、性能・安全評価並びに保証・補償制度などに適応できる建築技術に役立てる。
【背景技術】
【0002】
柱と梁の接合技術は構造基準を満たす経済性の追求技術で溶接だらけであったが、耐震技術の進歩から高層建物や大型建物には免震・制震技術が普及しているが、中低層建築分野には従来の溶接だらけの性能不安定な構造が主流であり、設計・製作・建設システム・業界の総合的で明確な原因と責任が見えにくい部分技術で、社会一般人の理解が得難い建物全体の不安要素である。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1に、中低層建築物の溶接だらけの接合部を差込型継手に転換させ接合部の溶接と加工を削減し、接合性能の安定性を高め専門技能工減少対策に役立てる。
【0004】
第2は、中低層建築に共通する地震の揺れを受けにくい構造をつくる為に、柱と継手の空隙部に一定剛性と制震機能をつくり、構造の安全性が建物の安全性に直結する総合技術として集約させ、一般人が理解でき社会制度に適応する安全評価と安心な、構造の接合を越えた建物全体の多様な機能に関連させる要所技術に造り込む。
【0005】
第3に、差込部の脱着・位置替えによる階高変更並びに用途替え・移築・柱梁部材の再利用を容易にさせる次世代の建築付加価値に役立てる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1は、差込型継手と通柱を採用し柱の切断・加工を無くし新たな摩擦接合に置換え、柱鋼材と梁鋼材を継手に直結させ、鋼材強度をフルに活かせ、パネルゾーンを造る板材・ガス・人件費並びに性能不安定要素となる人為的作業を削減して、サヤ管による差込継手の性能を安定化させる工業化部品に転換する。(図1)
【0007】
第2の制震機能は、差込型継手の柱とサヤ管の空隙と装着材による間接的応力伝達、並びにサヤ管ツバ部の摩擦滑り・サヤ管形状の違う応力の流れと変形を反映させる制震機能を加え、中低層建築の固有振動周期に共通する、揺れにくい粘りのある耐震構造に造り込む。
【0008】
第3は、差込継手の脱着を、柱とサヤ管の空隙部に装着する部材の脱着を設計し、接合手順と逆手順の分解機能をつくる。
(図3.図4)
【0009】
各請求項について、
(請求項1)は、柱構造用鋼材(丸パイプ・角パイプ)が継手サヤ管内を貫通させ通柱を3〜4階の長さとし、その柱の加工が皆無となり、梁鋼材(H型鋼)はボルト穴加工のみとし、継手に直結(ボルト締め)して溶接だらけの接合から脱却し、(図1〜4)
【0010】
サヤ管上下部のクサビ(図2−ハ)・ボルト締め(図3−イ〜ハ)並びに複合クサビ(粘弾性体+ステンレス板)・噛合わせ具・粒体で摩擦接合部をつくり、
【0011】
制震機能は、サヤ管内面空隙に皿バネ付きボルト・粘弾性体・粒体・形状記憶合金やサヤ管の部材変形並びに粒体ズレを制震機能に活かせる。
【0013】
(請求項2)の脱着手段は、クサビの装着を容易にする勾配・固定の安定化の垂直水平部並びに柱摩擦面の凹凸と柱に締め付けるネジボルトを組合わせ、皿バネ付きボルトを締め付け柱間に装着時クリアランスをつくり、定位置でボルトを緩め皿バネでボルト頭を柱面に密着させ、また、粒体を空隙に流し込み密開閉し脱着を機能させる(図4−ニ)。また、粘弾性体をサヤ管内面にステンレス板を柱面に装着する複合クサビ接合面の脱着性をボルト締めの相対操作、並びに空隙部に粒体を密開閉して摩擦力の脱着を担保し、サヤ管下部のクサビ(図4−ニ)の勾配面はサヤ管の誘導と変型噛み合わせを起こし、水平部で定位置に摩擦接合させ、ジグザグ噛み合わ面と柱をボルト締めにより、クサビを柱に強固に定着させる。装着手順の逆が脱接合の手順とする。
【0014】
(請求項3)のツバ部の制震機能は、ツバ(外ダイヤフラム)と梁を接合するガセットプレートの間に滑リ材のステンレス板を両面に取り付け(図4−ホ)、伸縮性ボルトや皿バネによるボルト締めにより一定水平力を越えた時の滑りとブレーキ性を設計し制震機能にする。
ツバ面を滑り易くして狭い面で性能を確保し、継手部材内に様々な機能が集約できる効果と性能の安定に役立てる。
【0015】
(請求項4)は、制震性能を大きくする追加手段である。
【0016】
(請求項5)は、柱とサヤ管の形状・角度違う組み合わせ(図2−ハ〜ヘ)により、エネルギーの流れを変え、剛性・減衰性を機能させる新たな手段並びに柱と継手サヤ管の隙間をボルト締め・凹凸噛み合わせとして脱着装置の性能と手段の選択性を広める手段である。また、隙間が大きく(図2−ハ〜ニ)噛み合わせ具の装着・組合わせを容易にする手段でもあり、回転・上下運動が利用でき、工場・現場作業が楽になる。
【0017】
(請求項6)は、請求項1〜5継手のサヤ管を正8角形鋼管にして、(請求項5)の機能に加え、梁の取り付け箇所並びに角度を増やし、架構形状に変化を付ける手段であり、丸柱・角柱の選択と円弧形・多角形の建築が簡単に創れる。
【0018】
(請求項7)上・下鋼管の内周をリング状クサビで拘束接合するもので、T型断面を柱形状リング状に形成し、クサビ垂直面の凹凸と柱外部からのボルト締めを加え接合効果を高め、継手水平部を鋼管柱外面上下に突起させ外側への接合離れを防止する。
【作用】
【0018】
柱と梁鋼材の切断・加工・溶接作業が不必要になり、接合性能のバラツキと加工工程の材料・加工・エネルギーや作業空間が不要になり、今後の専門技能工不足対策となる。建物の安全・安心・経済性・労働性は継手に集約される。また、継手に制震機能が加わり地震の揺れを抑制する生活の安全と安心が生まれ、更に、長期耐用型建築に役立つ接合部の脱着・位置替えにより階高変更・解体・移築・部材の再利用ができる。
【効果】
【0019】
建築の安全性と経済性が高まり、構造的根拠と責任が明確になり、長期耐用から省資源・省エネルギー・温暖化防止・解体公害防止・用途転換建築化・移転可能建築化・安全評価と保険制度の補償など不動産の新たな付加価値と財産性の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 通し柱を貫通させるサヤ管付き差し込み継手の架構概要図
【図2】 (イ) 角パイプ柱と角パイプサヤ管継手−平面図 (回転剛性に有効・継手突起が最少) (ロ) 丸パイプ柱と丸パイプサヤ管継手−平面図 (回転が起こる・隙間が平均化される) (ハ) 丸パイプ柱と角パイプサヤ管継手−平面図 (隙間が大きく接合手段の可能性が大・組立て容易) (ニ) 角型柱と角型サヤ管を45度回転させた継手−平面図 (応力が45度に分散・減衰性が大・組立て容易) (接合手段に図(ル)・(ヲ)が使える (ホ) 角パイプ柱と丸パイプサヤ管継手 (柱配置と梁の角度を自由に決められ変型建物が容易になる) (ヘ) 角パイプ柱と8角パイプサヤ管継手 (梁の取付8箇所・8角形の建物が容易)
【図3】 (イ) 角パイプ柱と角型サヤ管をボルトで固定させる平面図 (皿バネの伸縮性が制震に役立つ) (ロ) 角型柱に対し角形サヤ管を45度傾けた接合平面図 (サヤ管の変形と梁から柱への入力角が変わり制震に役立つ) (空隙が大きく接合手段の選択性が広まる) (ハ) 柱とサヤ管縦断面図 (サヤ管下部のクサビで上下のズレを固定させ、ボルトは空隙を保ち、水平力により皿バネ効果で空隙が伸縮(制震機能)する。サヤ管下部のクサビが垂直加重の多くを負担させる為に柱外周に装着させ柱接触面をジグザグの摩擦力効果を高める加工とボルトによる柱面の強固な定着とサヤ管内面の圧入クサビ効果に造る (ニ) 柱とサヤ管を45度傾け空隙を利用した角型固定断面図 (大きな空隙にダボ型などの装着が可能になる) (ホ) 柱とサヤ管の空隙をボルトで偏ら脱着を容易にする (ヘ) 上下鋼管柱のクサビによる脱着式継手
【図4】 柱とサヤ管の挿入・固定動作区分図 (イ) 定位置接合型 パイプ柱(丸・角)と45度傾いたサヤ管のボルト締め図 (ロ) 回転・水平接合型 (ハ) 上下接合型 サヤ管下端割込み型クサビ並びにダボ型 断面図 クサビの柱接触面の凹凸とサヤ管の食込みを作用させるテーパ付部と垂直部を備えたL型クサビ断面 (ニ) 割込み型クサビ並びに皿バネボルトの伸縮でサヤ管の装着クリアランスを確保して脱着を容易にさせる (ホ) サヤ管ツバ部と梁の取付き断面図 継手ツバ部面にステンレス板2枚を挟みガセットプレートをボルト締めし、一定の水平力が越えるとsus面が滑り減衰性を発揮する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱を貫通させるサヤ管のある継手であり、柱とサヤ管との空隙に摩擦制御による制震機能を造る為に、クサビ・ボルト・噛合わせ具・粒体・形状記憶合金・粘弾性体などの素材・形状を選択・組合わせ装着し、サヤ管外周に梁の取付くツバ部を具備した柱と梁の差込型継手構造。
【請求項2】
請求項1継手の、柱と継手接合部の脱着可能な差込型継手構造。
【請求項3】
請求項1・2継手構造のツバ部と梁接合のガセットプレート間に滑り材とブレーキ材を挿入する継手であり、伸縮性ボルト又は、皿バネ弾力によるボルト締めにより、継手と梁の接合水平力を制御する制震機能を備えた差込型継手構造。
【請求項4】
請求項1〜3継手と梁の接合で、梁の上・下面とガセットプレート間に滑り材とブレーキ材を設け接合水平力を制御させる差込型継手。
【請求項5】
請求項1〜4それぞれの差込型継手の直角正4辺形サヤ管4隅の対角線と梁軸線を合わせ、丸柱並びに直角正4辺形の柱四隅の外周部をサヤ管4辺中央部に内接させる差込型継手構造。
【請求項6】
請求項1〜5継手のサヤ管を、丸パイプ並びに8角形鋼管にして、4辺形の柱並びに丸パイプ柱を内接させる差込型継手構造。
【請求項7】
上下鋼管柱のクサビ型継手であり、上・下柱の内面に渡る装着が容易な傾斜面と固定効果を強める垂直面を有し、上・下柱間の接合位置を決める柱内面垂直部から水平に鋼管外面を越える水平部を一体化させたT型又は水平部が垂直部を越えて柱中心側に突出した、上・下鋼管柱のリング状継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−51527(P2007−51527A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267622(P2005−267622)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(593063552)株式会社ライト建築事務所 (6)
【Fターム(参考)】