柱上変圧器ケースの錆落し装置
【課題】柱上変圧器のケースの底面に発生した錆を落す作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】軸線方向を鉛直方向に向け、底面を下方に向けた柱上変圧器のケースTを下方から支える退避可能な可動テーブル2と、可動テーブルの上に支持されたケースをクランプするクランプ機構3と、クランプされたケースの下方に昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持されていて、ケースの底面に回転研削ブラシを接触させてケースの底面を研削する研削装置6とを備え、可動テーブル2をクランプされたケースTの下方から退避させた状態で研削装置6をX−Y移動装置により水平面上でXY方向に移動させることにより回転研削ブラシをケースの底面に沿って移動させながら、ケースの底面全体の錆落しを行う。
【解決手段】軸線方向を鉛直方向に向け、底面を下方に向けた柱上変圧器のケースTを下方から支える退避可能な可動テーブル2と、可動テーブルの上に支持されたケースをクランプするクランプ機構3と、クランプされたケースの下方に昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持されていて、ケースの底面に回転研削ブラシを接触させてケースの底面を研削する研削装置6とを備え、可動テーブル2をクランプされたケースTの下方から退避させた状態で研削装置6をX−Y移動装置により水平面上でXY方向に移動させることにより回転研削ブラシをケースの底面に沿って移動させながら、ケースの底面全体の錆落しを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱上変圧器の修理を行う際にそのケースの底面に発生した錆や劣化した塗膜を除去する処理を行う柱上変圧器ケースの錆落し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱上変圧器は風雨に曝されるため、そのケースの外面に施された塗膜が劣化したり、錆が発生したりし易い。特にケースの底面で塗膜の劣化や錆の発生が生じ易い。そのため、変圧器を修理する際には、ケース底面の錆の除去や、劣化した塗膜の除去を行っている。本明細書では、錆を除去する処理だけでなく、劣化した塗膜を除去する処理をも含めた意味で「錆落し」という語を用いるものとする。
【0003】
従来は、手作業によりケースの底面にグラインダやヤスリを当てて錆の除去や塗膜の除去を行っているが、錆や塗膜を除去する作業を行う際には微細な粉塵が大量に発生して空気中を漂うため、作業者の健康を害するおそれがある。また中身が入った柱上変圧器のケースの底面の錆や塗膜を除去する際には、長時間上向きの姿勢で作業を行う必要があるため、作業者にかかる肉体的な負担が大きくなるという問題があった。
【0004】
変圧器のケースにショットブラスト処理を行うことにより、塗膜や錆の除去を行う方法も行われているが、この方法では、ケースの底面のみの錆取り処理を行うことはできない。そのため、ショットブラスト処理による場合には、ケース内に中身(変圧器本体)を入れたままの状態でケースの底面に対して錆取り処理を行えば済む場合であっても、ケース内から中身を取り出すとともにケースから放熱器を取り外した状態にして処理を行う必要があり面倒である。柱上変圧器のケースの底面にのみ錆が発生している場合には、ケースの底面の錆落しだけを行えばよいので、ケース内の中身が入っている状態で錆落し処理を行うようにすることが好ましい。
【0005】
鋼管の錆落しに関しては、特許文献1に示されたように、軸線を水平方向に向けて台車上に配置された管の外周にワイヤブラシを当てて錆落しをする錆落し装置が提案されているが、特許文献1に示された装置を柱上変圧器のケースの錆落しに用いることはできない。
【0006】
ケース内に中身が入ったままで、しかも作業者の健康を害することなく、また作業者に大きな肉体的負担をかけることなく、ケースの底面の錆落し処理を行うためには、ケースの底面を下方に向けた状態で、その底面の錆を落す作業を、機械的に行い得る装置を開発する必要があるが、このような錆落し装置について記載された先行技術文献は見出すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−30378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、中身が入った柱上変圧器のケースの底面の錆落し処理を行う場合、従来はもっぱら人手により錆落し作業を行っていたため、作業能率が悪いだけでなく、飛散する大量の塵埃により作業員の健康が損なわれるおそれがあった。また上向きの姿勢での作業を長時間行う必要があったため、作業者にかかる肉体的な負担が過大になるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、柱上変圧器のケースの底面を下方に向けた状態で行うケースの底面の錆落し処理を人手に頼ることなく、機械的に行うことができる柱上変圧器ケースの錆落し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、柱上変圧器のケースの底面に発生した錆を落す柱上変圧器ケースの錆落し装置に係わるものである。本発明に係わる錆落し装置は、上方に開口した機器収容空間を内側に有する支持フレームと、水平方向に沿って第1の位置と該第1の位置から離れた第2の位置との間を変位し得るように支持フレームの上部にガイド機構を介して支持されていて、第1の位置にあるときに上記機器収容空間の開口部の上方に位置してケースを支えるべく待機した状態になり、第2の位置にあるときに機器収容空間の開口部の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる可動テーブルと、可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構と、第1の位置にある可動テーブルの上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられたケースをクランプして支持フレームに対して固定するクランプ機構と、可動テーブルが第2の位置にあるときにクランプ機構によりクランプされているケースの底面に作業用開口部を通して当接して該ケースの底面を研削する回転研削ブラシを備えて、機器収容空間内で上下方向への変位と水平面に沿った互いに直交するX方向及びY方向への変位とを行い得るように、昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持フレームに支持された研削装置とを備えて、昇降装置により研削装置を上昇させて回転研削ブラシを上記作業用開口部を通してケースの底面に当接させた状態で、X−Y移動装置によって研削装置を水平方向に移動させることにより回転研削ブラシをケースの底面に沿って移動させながら、該回転研削ブラシによりケースの底面を研削してケースの底面の錆を落すように構成されている。
【0011】
上記のように構成すると、可動テーブルを第1の位置に位置させた状態で、該可動テーブルの上に、ケースをその底面を下に向けた状態で保持させることができ、この状態でクランプ機構により、ケースをクランプして保持することができる。またケースをクランプした後、可動テーブルを第2の位置に変位させることにより、クランプされたケースの底面を下方の作業用開口部に臨ませることができ、昇降装置により研削装置を上昇させることにより、研削装置の回転研削ブラシをケースの底面に当てることができる。この状態で、回転研削ブラシを回転させながら、X−Y移動装置により研削装置を互いに直交するX方向及びY方向に適宜に移動させることにより、ケースの底面全体の錆落し処理を行わせることができる。
【0012】
ケースの底面の錆落しが終了した後は、可動テーブルを第1の位置に移動させて、ケースの底面を可動テーブルで支えることができるため、クランプ機構によるケースのクランプを解除することができ、ケースのクランプを解除した後、処理済のケースを搬出することができる。
【0013】
上記の一連の動作は、可動テーブル駆動機構と、クランプ機構と、X−Y移動装置とを所定の順序で動作させることにより行うことができる。これらの各部の動作は手動による遠隔操作により行ってもよく、所定のシーケンスで自動的に行わせてもよい。
【0014】
上記の一連の動作を自動的に行わせるには、可動テーブルが第1の位置に移動させられている状態にあることが確認されている状態で該可動テーブル上にケースが載せられるのを待つ過程と、該可動テーブルの上に処理するケースが載せられたことが検出されたときにクランプ機構を動作させて可動テーブル上のケースをクランプする過程と、ケースがクランプ機構によりクランプされたことが確認されたときに可動テーブルを第2の位置に移動させてクランプされているケースの底面の下方の作業用空間を開放する過程と、昇降装置により研削装置を上昇させて回転研削ブラシをケースの底面に接触させる過程と、回転研削ブラシによりケースの底面の全体を研削するようにX−Y移動装置を制御する過程と、ケース底面全体の研削が終了した後に昇降装置に下降動作を行わせて研削装置を下降させる過程と、研削装置の下降動作が完了した時に可動テーブルを第1の位置に移動させてケースの底面を支える過程と、クランプ機構によるケースのクランプを解除する過程と、可動テーブルの上のケースが搬出されるのを待つ過程とを順次行わせるべく、可動テベーブル駆動機構と、クランプ機構と、昇降装置と、X−Y移動装置とを所定のシーケンスで動作させるように制御する制御部を設ければよい。
【0015】
本発明の好ましい態様では、上記可動テーブルが、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るように支持された第1及び第2のテーブル半部からなっていて、両テーブル半部が最も接近した位置及び最も離間した位置がそれぞれ前記可動テーブルの第1の位置及び第2の位置となるように構成される。
【0016】
また第1及び第2のテーブル半部は、回転中心軸線をそれぞれの移動方向に対して直角な方向に向けた状態で両テーブル半部の移動方向に並設された複数のローラを備えていて、該複数のローラが前記ケースの底部を受け止めるように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記のように構成すると、ケースをクランプ機構によりクランプした後可動テーブルを第2の位置に移動させる動作、及びケース底面の錆落処理が完了した後可動テーブルを第1の位置に移動させる動作を行わせる際に、可動テーブルのローラが回転して可動テーブルの移動を容易にするため、可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせることができる。
【0018】
なお可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせるための手段はローラに限定されるものではない。例えば、可動テーブルまたはクランプ機構を上下方向に僅かに変位させ得るように構成しておいて、可動テーブルを移動させる際に、可動テーブルとクランプ機構にクランプされているケースの底面との間に僅かな隙間を形成するようにしても、可動テーブルの移動を円滑に行わせることができる。
【0019】
上記研削装置は、鉛直方向に伸びる旋回軸の上端に取り付けられた旋回アームと、前記旋回軸を回転駆動する回転駆動機構と、回転研削ブラシと該回転研削ブラシを回転駆動するモータとを有して回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させた状態で旋回アームに搭載された電動ブラシとを備えた構成とするのが好ましい。この場合、電動ブラシは、回転研削ブラシの作用部分の旋回軸の中心軸線に対するオフセット量を調整し得る支持機構を介して旋回アームに取り付けられていることが好ましい。
【0020】
上記のように回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させておくと、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を行うことができるため、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また上記のように、回転研削ブラシの作用部分を、旋回軸の中心軸線に対してオフセットした位置に配置しておくと、旋回アームを旋回させることにより、回転研削ブラシの作用部分を旋回軸の中心軸線の回りに旋回させることができるため、研削装置6をX−Y移動装置により左右に移動させる過程で、研削ブラシにより研削する範囲を拡大して錆落し作業を能率よく進めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、錆落し処理を行うケースを、その底面を下方に向けてクランプした状態で、研削装置の回転研削ブラシを下方からケースの底面に当てて、ケースの底面の錆落し処理を行わせるようにしたので、柱上変圧器のケースの底面の錆落し処理を、ケースに中身が入ったままの状態で行うことができる。
【0022】
また研削装置を昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持して、回転研削ブラシをケースの底面に所定の接触圧力で接する位置まで上昇させた状態で、水平方向に自在に移動させることができるようにしたので、回転研削ブラシをケース底面の全体に亘って移動させてケースの底面の錆落し処理を行わせることができる。
【0023】
本発明によれば、作業者が工具を手に持って錆落し処理を行うのではなく、電動ブラシをX−Y移動装置により機械的に動かして錆落し処理を行わせるので、遠隔操作により錆落し処理を進めるように作業環境を整えることができ、発生する塵埃に作業者が曝されることなく、また作業者に無理な姿勢での長時間作業を強いることなく、錆落し作業を行うことができる。
【0024】
特に、請求項3に記載された発明によれば、回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させたので、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を可能にして、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また電動ブラシを旋回アームに搭載して、回転研削ブラシの作用部分を旋回軸に対してオフセットさせることにより、該回転研削ブラシの作用部分を、旋回軸を中心として旋回させることができるようにしたので、回転研削ブラシにより研削される部分の面積を拡大して、錆落し作業を能率よく進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係わる錆落し装置の斜視図である。
【図2】同錆落し装置の平面図である。
【図3】同錆落し装置の正面図である。
【図4】同錆落し装置の右側面図である。
【図5】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の斜視図である。
【図6】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の平面図である。
【図7】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の正面図である。
【図8】同錆落し装置で用いる研削装置の正面図である。
【図9】同錆落し装置で用いる研削装置の一部を省略して示した正面図である。
【図10】同錆落し装置で用いる研削装置の一部を断面して示した側面図である。
【図11】同錆落し装置によりケースの底面の錆落し処理を行う際の研削回転ブラシの変位のさせ方の一例を説明する説明図である。
【図12】同錆落し装置によりケースの底面の錆落し処理を行う際の研削回転ブラシの変位のさせ方の他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の一実施形態に係わる柱上変圧器ケースの錆落し装置を詳細に説明する。
図1ないし図4は、本実施形態の錆落し装置の全体的な構成を示したもので、これらの図において、Tは底面の錆落し処理を行う柱上変圧器のケースである。ケースTは、円筒状に形成されて下端開口部及び上端開口部がそれぞれ底板及び蓋板により閉じられたたケース本体T1と、ケース本体T1の周壁部に取付けられた放熱器T2とを有している。ケースTの内部には変圧器本体が絶縁油と共に収容されている。ケースTの上部には、ブッシングが取り付けられているが、ブッシングの図示は省略されている。
【0027】
1は、上方に開口した機器収容空間100を内側に有する支持フレームである。図示の支持フレーム1は、形鋼材を矩形状に枠組して構成したベース101と、ベース101の四隅に、鉛直方向に起立させた状態で下端が固定された4本の支柱102と、隣り合う支柱102の上端間を連結するようにして、支柱102の上端に固定された横桟部103と、支柱102の上端に固定されて内部の機器収容空間100を塞ぐ長方形の上面板104とを有し、上面板104の中央部に、内側の機器収容空間100を上方に開口させる円形の開口部105(図1参照)が形成されている。
【0028】
図1ないし図3において、2は機器収容空間100の開口部105に退避可能な状態で配置された可動テーブルである。可動テーブル2は、水平方向に沿って第1の位置(図1、図2及び図3に実線で示されている位置)と該第1の位置から離れた第2の位置(図3に鎖線で示された位置)との間を変位し得るように支持フレーム1の上部にガイド機構を介して支持されていて、第1の位置にあるときに機器収容空間100の開口部105の上方に位置して、底面の錆落し処理を行うケースTを支えるべく待機した状態になり、第2の位置にあるときに機器収容空間100の開口部105の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる。
【0029】
図示の例では、可動テーブル2が、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るようにしてフレーム1の上端に支持された第1及び第2のテーブル半部201及び202からなっていて、図1、図2及び図3に実線で示されているように、両テーブル半部201及び202が最も接近した位置にある状態を、可動テーブル1が第1の位置に位置した状態とし、図3に鎖線で示したように両テーブル半部201及び202が最も離間した位置にある状態を可動テーブル1が第2の位置にある状態としている。
【0030】
図示の例では、支持フレーム1の上面板104の上に、支持フレームの長手方向に互いに平行に延びる一対のガイドレール203,203が固定されて、これらのガイドレールにより第1及び第2のスライド板204及び205がスライド自在に支持され、第1及びだい2のスライド板204及び205の上にそれぞれ第1及び第2のテーブル半部201及び202が支持されている。
【0031】
第1及び第2のテーブル半部201及び202は、長方形状の枠体の内側に、回転中心軸線を両テーブル半部の移動方向に対して直角な方向に向けた複数のローラ206を、両テーブル半部の移動方向に並べて配置して、各ローラ206をそれぞれの枠体に回転自在に支持した構造を有している。第1及び第2のテーブル半部201及び202にそれぞれ設けられた複数のローラ206,206,…は、それぞれの上端が同一の水平面上に位置するように設けられていて、一連のローラ206,206,…がケースTの底部に接して該ケースを受け止める。
【0032】
支持フレーム1の上面には第1及び第2の可動テーブル駆動用流体圧シリンダ211及び212がそれぞれのピストンを第1及び第2のテーブル半部201及び202の移動方向に向けた状態で取り付けられ、これらの流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドの先端がそれぞれ第1及び第2のテーブル半部201及び202に固定されている。流体圧シリンダ211及び212により、可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構が構成されている。流体圧シリンダ211及び212としては、エアシリンダを用いることができる。
【0033】
流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドを前進させることにより、第1及び第2のテーブル半部201及び202を互いに接近する方向に移動させて、可動テーブル2を第1の位置に位置させた状態とすることができ、流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドを後退させることにより、第1及び第2のテーブル半部201及び202を互いに離れる方向に移動させて、可動テーブル2を第2の位置に位置させた状態とすることができる。可動テーブル2は、第1の位置にあるとき(テーブル半部201及び202が最も接近した状態にあるとき)に、支持フレームの機器収容空間100の開口部105の上方に配置された状態(開口部105をほぼ塞いだ状態)になって、錆落し処理を行うケースTを下方から支えることができる状態になる。また可動テーブル2が第2の位置にあるとき(テーブル半部201及び202が最も離れた状態にあるとき)には、該可動テーブル2がケースTの下方から退避した状態になることにより、開口部105の少なくとも一部(本実施形態では、開口部105の大部分)を開放して、ケースTの底面の下方に作業用開口部を形成する。
【0034】
支持フレーム1の上面には、逆L字型の支持部材301が固定されていて、この支持部材により固定側クランプ具302が支持されている。クランプ具302は、水平方向に伸びる板状部302aを備えて、この板状部302aにV字形の切り欠き302bを形成した構造を有している。
【0035】
支持フレーム1の上面にはまた流体圧シリンダ303が、そのピストンロッドを固定側クランプ具302側に向けた状態で取り付けられていて、シリンダ303のピストンロッドの先端に可動側クランプ具304が取り付けられている。可動側クランプ具304は、固定側クランプ具302と同様に、水平方向に伸びる板状部304aを備えて、この板状部にV字形の切り欠き304bが形成され、固定側クランプ具302及び可動側クランプ具304が、同一の水平面上に、それぞれの切り欠き302b及び304bを対向させた状態で配置されている。
【0036】
可動側クランプ具304は、流体圧シリンダ303により駆動されて、固定側クランプ具302に接近する方向と、固定側クランプ具302から離れる方向とに、水平方向に沿って往復変位させられる。本実施形態では、流体圧シリンダ303としてエアシリンダが用いられている。固定側クランプ具302と、流体圧シリンダ303と、可動側クランプ具303とにより、第1の位置にある可動テーブル2の上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられたケースTをクランプして支持フレーム1に対して固定するクランプ機構3が構成されている。固定側クランプ具302及び可動側クランプ具303は、それぞれの切り欠き302b及び304bが円筒状のケース本体T1の下端寄りの部分の外周に当接することにより、ケースTを、その底部を下方に向け、その軸線を鉛直方向に向けた状態でしっかりとクランプする。
【0037】
上記のようにして底面の錆落し処理を行うケースTを支持フレーム1に対して固定した後、流体圧シリンダ211及び212を駆動して、図3に鎖線で示したようにテーブル半部204及び205を退避位置に移動させることにより、可動テーブル2をケースTの下方から退避させて、ケースTの下方に作業用開口部を形成することができる。
【0038】
支持フレーム1の内側の機器収容空間100には、昇降装置4(図4,図5及び図7参照)と、この昇降装置により昇降させられるX−Y移動装置5と、昇降装置4によりX−Y移動装置5とともに上下動させられ、X−Y移動装置5により水平方向に沿って互いに直交するX方向とY方向とに変位させられる研削装置6とが配置されている。
【0039】
昇降装置4は、モータにより駆動されるパンタグラフ機構(図7参照)により上下動させられる昇降台402を備えていて、支持フレーム1の下部に支持されている。
【0040】
X−Y移動装置5は、図5に示すように、昇降台402の上に固定された支持板403の上に支持されたY方向移動機構501と、Y方向移動機構501の上に支持されたX方向移動機構502とからなっている。
【0041】
Y方向移動機構501は、Y方向(支持フレーム1の長手方向)に延びるように設けられて支持板403に回転自在に支持されたネジ棒503と、支持板403に固定されてネジ棒503を回転駆動するサーボモータ504と、支持板403の上に支持されたガイドレール506及び507によりY方向に移動自在に支持された可動板508と、可動板508の下部に固定されてネジ棒503に螺合されたナットとを備え、モータ504の回転をネジ棒503と該ネジ棒に螺合されたナットとからなるネジ機構により直線変位に変換して、可動板508をY方向に往復移動させる。上記ネジ機構は、ボールネジを用いて構成するのが好ましい。錆落し処理の際に発生する塵がネジ機構に付着するのを防ぐため、ネジ機構を覆うように、可動板508の変位に伴って伸縮する蛇腹式のカバー509が取り付けられている。
【0042】
X方向移動機構502は、X方向に伸びるように設けられて可動板508に回転自在に支持されたネジ棒510と、可動板508に支持されたサーボモータ511の回転をネジ棒510に伝達するタイミングベルトを用いたベルト伝動機構512と、可動板508に固定されたガイドレール513及び514によりX方向に移動自在に支持された可動板515と、可動板515の下部に固定されてネジ棒510に螺合されたナット516とにより構成されていて、モータ511の回転をネジ棒510とナット516とからなるネジ機構により直線変位に変換して、可動板515をY方向に対して直角なX方向に往復移動させる。可動板515は、モータ511の回転をネジ棒510とナット516とからなるネジ機構によりX方向に移動させられると共に、Y方向移動機構501の可動板508の移動に伴って、Y方向にも移動させられる。X方向移動機構502のネジ機構を覆うように、可動板515のX方向への変位に伴って伸縮するカバー517が取り付けられている。ネジ棒510及びナット516により構成されるネジ機構も、ボールネジを用いて構成することが好ましい。
【0043】
X−Y移動装置5の可動板515の上に研削装置6が支持されている。図8ないし図10に示されているように、研削装置6は、正方形状の板からなっていて、板面を水平方向に向けた状態で配置される下部フレーム601と、同じく板面を水平方向に向けた状態で配置されて、下部フレーム601の四隅に設けられた支持脚602を介して、下部フレーム601に対して支持された正方形状の板状の上部フレーム604とを備えている。
【0044】
各支持脚602は、図10に示されているように、上下に延びる孔を内部に有して上部フレーム604に上端が固定された支持ブロック602Aと、支持ブロック602Aの内部の孔と、支持ブロック602Aの内部の孔に整合するようにして上部フレーム604の四隅に形成された孔とにスライド自在に嵌合されて下端が下部フレーム601に固定された円柱状の支柱602Bと、後記する回転研削ブラシに接触圧力を与えるために、支柱602Bに嵌合されて下部フレーム601と支持ブロック602Aとの間に配置された圧縮バネ602Cと、上部フレーム支柱602Bの上端に固定されたストッパ602Dとを備えていて、上部フレーム604をバネ602Cを介して支持している。4つの支持脚の支持ブロック602Aのうち、隣り合う2つの支持ブロックの下端に板606が結合され、この板606と下部フレーム601との間にショックアブソーバ605が配置されている。
【0045】
上部フレーム604には軸受け装置607(図9参照)が取り付けられて、この軸受け装置により鉛直方向に伸びる旋回軸608が回転自在に支持され、旋回軸608の上端に旋回アーム609が固定されている。旋回軸608には、旋回アーム609の下方に位置させて、大歯車611が取り付けられている。上部フレーム604にはまた、軸受け装置620が取り付けられて、この軸受け装置620により、鉛直方向に伸びる駆動軸が支持され、軸受け装置620の下端に、駆動軸を回転駆動するモータ621が取り付けられている。軸受け装置620により支持された駆動軸の上端に小歯車622が取り付けられ、この小歯車622が大歯車611に噛み合わされている。大歯車611と、小歯車622とにより、モータ621の回転を減速して旋回軸608に伝達する減速機625が構成されている。下部フレーム601の一部には、モータ621の下端を収容する切り欠き601a(図9参照)が形成されている。上部フレーム604には、減速機625を覆う防塵カバー626が取付けられている。
【0046】
旋回アーム609には、該旋回アームの回動中心に対して偏心させた位置に配置された支持機構615により、電動ブラシ630が支持されている。電動ブラシ630は、内部にモータが収容された筒状のハウジング631と、ハウジング631の先端に取り付けられた減速機ケース632内に収容されてモータの回転を減速する減速機と、減速機ケース632から上方に導出された回転軸633と、回転軸633に取り付けられた回転研削ブラシ635とを備えている。
【0047】
支持機構615は、ハウジング631の下半部に嵌合されるように形成されて旋回アーム609に固定された第1の半部615Aと、ハウジング631の上半部に嵌合されるように形成されて第1の半部615Bに突き合わされた第2の半部615Bと、第1の半部615Aと第2の半部615Bとを引き寄せるように締結するネジ615Cとを備えていて、第1の半部615Aと第2の半部615Bとの間に電動ブラシ630のハウジング631を挟んだ状態で、電動ブラシ630を斜めに支持するように構成されている。
【0048】
電動ブラシ630は、支持機構615により、電動ブラシ635が取り付けられた先端部630aが後端部630bよりも高い位置に配置されるように傾けられていて、回転軸633が鉛直方向(旋回軸608の中心軸線O−Oの方向)に対して一定角度θだけ傾斜した状態で配置されている。
【0049】
回転研削ブラシ635は、回転軸633に固定されたカップ状の基部635aの周壁部に、金属ワイヤからなる多数のブラシ毛635bを円錐面に沿うように並べて支持した構造を有する周知の研削ブラシからなっている。回転研削ブラシ635は、その回転軸633が鉛直方向に対して一定角度θだけ傾斜させられていることにより、そのブラシ毛の部分の先端部の周方向の一部のみが研削作用を行う作用部分Pとして、上方に水平に配置されたケースTの底面に接触させられる。このように、回転研削ブラシを傾斜させて、ブラシ毛の部分の先端部の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分Pとしてケースの底面に接触させるようにすると、ブラシ毛の部分の直径よりも更に小さい部分を削ることが可能になるため、通常ケースTの底面の外周部に形成されている環状の突出部の内側ぎりぎりの領域まで研削することが可能になる。
【0050】
回転研削ブラシ635は、その作用部分Pが旋回軸608の中心軸線に対して一定距離dだけオフセットした状態で配置される。支持機構615は、回転研削ブラシ635の作用部分Pの旋回軸の中心軸線O−Oに対するオフセット量dを調整し得る機能を有している。即ち、ネジ615Cを緩めて、電動ブラシ630の位置をずらすことにより、オフセット量dを調整し得るようになっている。
【0051】
上記のように、回転研削ブラシ635の作用部分Pを旋回中心に対してオフセットした位置に配置することにより、旋回アーム609の旋回に伴って、回転研削ブラシ635の作用部分Pを、旋回中心軸線O−Oを中心として旋回させることができるようになっている。このように構成しておくと、回転研削ブラシが研削する範囲を広くして、錆落し作業を能率よく進めることができる。
【0052】
軸受け装置607の下端には、旋回運動を行う電動ブラシ630のモータに給電するためのブラシ装置640が取り付けられている。ブラシ装置640は、旋回軸608とともに回転するように設けられて図示しない配線により電動ブラシ630のモータに接続されたスリップリングと、このスリップリングに摺動接触するように設けられて図示しない電源に接続されたブラシとを備えていて、図示しない電源からブラシ装置640と図示しない配線とを通して電動ブラシ630のモータに給電されるようになっている。
【0053】
下部フレーム601にはまた、支持ブロック602Aの下端を検出することによりバネ602Cの撓み量を検出するセンサ650が取付けられている。センサ650は、支持ブロック602Aの下端を検出するリミットスイッチ等からなっていて、昇降装置4により研削装置6を上昇させて回転研削ブラシ635をケースTの底面に当接させる過程で、ケースTの底面から研削装置に与えられる反力により支持ブロック602Aがバネ602Cの付勢力に抗して下方に所定量変位したときに、支持ブロック602Aの下端を検出することにより、バネ602Cの撓み量が所定量になったこと(回転研削ブラシ635がケースTの底面に所定の圧力で接触したこと)を検出する。回転研削ブラシの接触圧力を調整し得るようにするため、センサ650の上下位置を適宜に調整できるようになっている。
【0054】
上記の研削装置6は、下部フレーム601をX−Y移動装置5の可動板515に固定することにより、XーY移動装置5に取付けられる。研削装置6は、可動テーブル2が第2の位置にあって、クランプ機構3によりクランプされているケースTの下に作業用開口部が形成されている状態で、回転研削ブラシ635を該作業用開口部を通してケースTの底面に接触させることによりケースTの底面を研削する。
【0055】
柱上変圧器のケースTの底面の錆落し処理を行う際には、図1に示したように、可動テーブル2を第1の位置に位置させて、支持フレーム1内の機器収容空間の開口部を塞いだ状態で、可動テーブル2の上に、ケースTを、その底面を下に向けた状態で保持させる。この作業は、天井クレーン等の搬送手段(図示せず。)を用いて行う。可動テーブル2の上にケースTを保持させた状態でクランプ機構3により、ケースTをクランプする。ケースTをクランプした後、可動テーブル2を図3に鎖線で示された第2の位置に変位させることにより、クランプされたケースTの下方に作業用開口部を開口させ、ケースTの底面をその作業用開口部に臨ませる。
【0056】
次いで、昇降装置4を駆動して、センサ650が支持ブロック602Aの下端を検出するまで研削装置6を上昇させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分PをケースTの底面に所定の圧力で当接させる。この状態で、モータ621を回転させて旋回アーム609を旋回させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分Pを一方向に旋回させるとともに、回転研削ブラシ635を回転軸633を中心として回転させながら、X−Y移動装置5により研削装置6を互いに直交するX方向及びY方向に適宜に移動させることにより、回転研削ブラシ635をケースTの底面に沿って所定のパターンで移動させて、ケースTの底面全体の錆落し処理を行わせる。
【0057】
回転研削ブラシによりケースTの底面を研削して錆落しを行う際の研削ブラシの移動パターンの一例を図11及び図12に示した。この例による場合には、先ず図11に示すパターンで回転研削ブラシを移動させることにより、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行う。この処理においては、旋回アーム609を一方向に旋回させて、回転研削ブラシ635を旋回中心軸線O−Oの回りに旋回させるとともに、回転軸633を中心に回転させながら、回転研削ブラシ635を、X−Y移動装置5により図11に示した矢印に沿って(ケースTの中心を通る一つの直線と平行な方向に沿って)往復直線移動させる動作を、回転研削ブラシを、ケースの径方向に一定距離Δbずつシフトさせながら繰り返し行うことにより、ケースTの外周寄りの領域を除いたほぼ半部の領域の錆落し作業を行う。回転研削ブラシを矢印に沿って移動させる際の移動量cは、錆落し処理を行う領域の半径aと、半径aと回転研削ブラシのシフト量Δbとから演算される距離b(=a−Δb)とから、c=(a2−b2)1/2の演算を行うことにより求めることができる。ケースの他の半部の領域についても、同様のパターンで回転研削ブラシを移動させることにより、錆落し処理を行う。必要に応じて、上記の動作を繰り返すことにより、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行う。
【0058】
図11に示すパターンで回転研削ブラシを移動させて、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行った後、回転軸633を中心に回転している回転研削ブラシ635を旋回軸608の回りに旋回させながら、図12に示すように、ケースTの周方向に連続移動させる動作を、移動の軌跡の円の半径を徐々に小さくしながら繰り返すことにより、ケースTの底面の外周寄りの領域の錆落し作業を行う。
【0059】
ケースの底面の錆落しが終了した後は、昇降装置4を駆動して研削装置6を下方に設定された退避位置まで下降させ、可動テーブル2を図1に示された第1の位置に移動させて可動テーブル2によりケースTの底面を支える。次いでクランプ機構3によるケースTのクランプを解除する。ケースTのクランプを解除した後、処理済のケースTを吊り上げて搬出する。
【0060】
上記の一連の動作は、シリンダ211及び212からなる可動テーブル駆動機構と、クランプ機構3と、X−Y移動装置とを所定の順序で動作させることにより行うことができる。これらの各部の動作は手動による遠隔操作により行ってもよく、所定のシーケンスで自動的に行わせてもよい。
【0061】
上記の一連の動作を自動的に行わせる場合には、各部の動作の完了を検出するリミットスイッチ等のセンサを設けておいて、可動テーブル2が図1に示す第1の位置に移動させられている状態にあることが確認されている状態で該可動テーブル2上にケースTが載せられるのを待つ過程と、可動テーブル2の上に処理するケースTが載せられたことが検出されたときにクランプ機構3を動作させて可動テーブル2上のケースTをクランプする過程と、ケースTがクランプ機構によりクランプされたことが確認されたときに可動テーブルを第2の位置に移動させてクランプされているケースの底面の下方の作業用空間を開放する過程と、昇降装置4により、センサ650が検出動作を行うまで研削装置を上昇させて回転研削ブラシ635をケースの底面に所定の圧力で接触させる過程と、回転研削ブラシ635によりケースの底面の全体を研削するようにX−Y移動装置5を制御する過程と、ケース底面全体の研削が終了した後に昇降装置4に下降動作を行わせて研削装置を退避位置まで下降させる過程と、研削装置6の下降動作が完了した時に可動テーブル2を第1の位置に移動させて、錆落し処理が終了したケースTの底面を支える過程と、クランプ機構3によるケースTのクランプを解除する過程と、可動テーブル2の上のケースが搬出されるのを待つ過程とを順次行わせるべく、可動テベーブル駆動機構と、クランプ機構3と、昇降装置4と、X−Y移動装置5とを所定のシーケンスで動作させるように制御する制御部を設ける。
【0062】
本実施形態においては、回転研削ブラシ635のブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分PとしてケースTの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させてあることにより、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を行うことができるため、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また回転研削ブラシの作用部分Pを、旋回軸の中心軸線O−Oに対してオフセットした位置に配置して、旋回アーム609を旋回させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分Pを旋回軸の中心軸線の回りに旋回させることができるようにしたため、研削装置6をX−Y移動装置により左右に移動させる過程で、研削ブラシにより研削する範囲を拡大して錆落し作業を能率よく進めることができる。
【0063】
上記の実施形態のように、可動テーブルにローラ206を取り付けておくと、ケースをクランプ機構によりクランプした後可動テーブルを第2の位置に移動させる動作、及びケース底面の錆落処理が完了した後可動テーブルを第1の位置に移動させる動作を行わせる際に、可動テーブルのローラ206が回転して可動テーブルの移動を容易にするため、可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせることができる。
【0064】
なお可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせるための手段はローラに限定されるものではない。例えば、可動テーブルまたはクランプ機構を上下方向に僅かに変位させ得るように構成しておいて、可動テーブルを移動させる際に、可動テーブルとクランプ機構にクランプされているケースの底面との間に僅かな隙間を形成するようにしても、可動テーブルの移動を円滑に行わせることができる。
【0065】
上記の実施形態では、回転研削ブラシを旋回させる駆動源として電動モータ620を用いたが油圧モータを用いてもよい。その他の回転駆動源も油圧モータで置き換えることができる。
【0066】
上記の実施形態では、回転研削ブラシの接触圧力を得るためにバネ602Cを用い、振動を吸収するためにショックアブソーバ605を設けているが、これらに代えて、エアシリンダを用いてもよい。即ち研削装置6の上部フレーム604を下部フレーム601に対して上下動自在に支持して、上部フレーム604と下部フレーム601との間にエアシリンダを介在させるようにしてもよい。
【0067】
上記の説明では、錆落し処理を行う際に、回転研削ブラシを一方向に旋回させるとしたが、旋回アーム609を駆動するモータ621としてサーボモータを用いることにより、回転研削ブラシを一定の角度範囲で往復旋回させる動作を行わせることも可能である。
【0068】
上記の実施形態では、装置をコンパクトに構成するために、可動テーブル2を第1のテーブル半部201と第2のテーブル半部202とにより構成したが、可動テーブルを一つのテーブルにより構成して、該可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに移動させるようにしてもよい。
【0069】
上記の実施形態では、クランプ機構3を固定側クランプ具と可動側クランプ具とにより構成したが、クランプ機構を構成する両クランプ具を共に可動とするように構成することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 支持フレーム
100 機器収容空間
105 開口部
2 可動テーブル
211,212 流体圧シリンダ(可動テーブル駆動機構)
3 クランプ機構
302 固定側クランプ具
302 可動側クランプ具
303 流体圧シリンダ
4 昇降装置
5 X−Y移動装置
6 研削装置
601 下部フレーム
602 支持脚
604 上部フレーム
608 旋回軸
621 モータ
625 減速機構
630 電動ブラシ
635 回転研削ブラシ
P 回転研削ブラシの作用部分
T 柱上変圧器のケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱上変圧器の修理を行う際にそのケースの底面に発生した錆や劣化した塗膜を除去する処理を行う柱上変圧器ケースの錆落し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱上変圧器は風雨に曝されるため、そのケースの外面に施された塗膜が劣化したり、錆が発生したりし易い。特にケースの底面で塗膜の劣化や錆の発生が生じ易い。そのため、変圧器を修理する際には、ケース底面の錆の除去や、劣化した塗膜の除去を行っている。本明細書では、錆を除去する処理だけでなく、劣化した塗膜を除去する処理をも含めた意味で「錆落し」という語を用いるものとする。
【0003】
従来は、手作業によりケースの底面にグラインダやヤスリを当てて錆の除去や塗膜の除去を行っているが、錆や塗膜を除去する作業を行う際には微細な粉塵が大量に発生して空気中を漂うため、作業者の健康を害するおそれがある。また中身が入った柱上変圧器のケースの底面の錆や塗膜を除去する際には、長時間上向きの姿勢で作業を行う必要があるため、作業者にかかる肉体的な負担が大きくなるという問題があった。
【0004】
変圧器のケースにショットブラスト処理を行うことにより、塗膜や錆の除去を行う方法も行われているが、この方法では、ケースの底面のみの錆取り処理を行うことはできない。そのため、ショットブラスト処理による場合には、ケース内に中身(変圧器本体)を入れたままの状態でケースの底面に対して錆取り処理を行えば済む場合であっても、ケース内から中身を取り出すとともにケースから放熱器を取り外した状態にして処理を行う必要があり面倒である。柱上変圧器のケースの底面にのみ錆が発生している場合には、ケースの底面の錆落しだけを行えばよいので、ケース内の中身が入っている状態で錆落し処理を行うようにすることが好ましい。
【0005】
鋼管の錆落しに関しては、特許文献1に示されたように、軸線を水平方向に向けて台車上に配置された管の外周にワイヤブラシを当てて錆落しをする錆落し装置が提案されているが、特許文献1に示された装置を柱上変圧器のケースの錆落しに用いることはできない。
【0006】
ケース内に中身が入ったままで、しかも作業者の健康を害することなく、また作業者に大きな肉体的負担をかけることなく、ケースの底面の錆落し処理を行うためには、ケースの底面を下方に向けた状態で、その底面の錆を落す作業を、機械的に行い得る装置を開発する必要があるが、このような錆落し装置について記載された先行技術文献は見出すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−30378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、中身が入った柱上変圧器のケースの底面の錆落し処理を行う場合、従来はもっぱら人手により錆落し作業を行っていたため、作業能率が悪いだけでなく、飛散する大量の塵埃により作業員の健康が損なわれるおそれがあった。また上向きの姿勢での作業を長時間行う必要があったため、作業者にかかる肉体的な負担が過大になるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、柱上変圧器のケースの底面を下方に向けた状態で行うケースの底面の錆落し処理を人手に頼ることなく、機械的に行うことができる柱上変圧器ケースの錆落し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、柱上変圧器のケースの底面に発生した錆を落す柱上変圧器ケースの錆落し装置に係わるものである。本発明に係わる錆落し装置は、上方に開口した機器収容空間を内側に有する支持フレームと、水平方向に沿って第1の位置と該第1の位置から離れた第2の位置との間を変位し得るように支持フレームの上部にガイド機構を介して支持されていて、第1の位置にあるときに上記機器収容空間の開口部の上方に位置してケースを支えるべく待機した状態になり、第2の位置にあるときに機器収容空間の開口部の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる可動テーブルと、可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構と、第1の位置にある可動テーブルの上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられたケースをクランプして支持フレームに対して固定するクランプ機構と、可動テーブルが第2の位置にあるときにクランプ機構によりクランプされているケースの底面に作業用開口部を通して当接して該ケースの底面を研削する回転研削ブラシを備えて、機器収容空間内で上下方向への変位と水平面に沿った互いに直交するX方向及びY方向への変位とを行い得るように、昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持フレームに支持された研削装置とを備えて、昇降装置により研削装置を上昇させて回転研削ブラシを上記作業用開口部を通してケースの底面に当接させた状態で、X−Y移動装置によって研削装置を水平方向に移動させることにより回転研削ブラシをケースの底面に沿って移動させながら、該回転研削ブラシによりケースの底面を研削してケースの底面の錆を落すように構成されている。
【0011】
上記のように構成すると、可動テーブルを第1の位置に位置させた状態で、該可動テーブルの上に、ケースをその底面を下に向けた状態で保持させることができ、この状態でクランプ機構により、ケースをクランプして保持することができる。またケースをクランプした後、可動テーブルを第2の位置に変位させることにより、クランプされたケースの底面を下方の作業用開口部に臨ませることができ、昇降装置により研削装置を上昇させることにより、研削装置の回転研削ブラシをケースの底面に当てることができる。この状態で、回転研削ブラシを回転させながら、X−Y移動装置により研削装置を互いに直交するX方向及びY方向に適宜に移動させることにより、ケースの底面全体の錆落し処理を行わせることができる。
【0012】
ケースの底面の錆落しが終了した後は、可動テーブルを第1の位置に移動させて、ケースの底面を可動テーブルで支えることができるため、クランプ機構によるケースのクランプを解除することができ、ケースのクランプを解除した後、処理済のケースを搬出することができる。
【0013】
上記の一連の動作は、可動テーブル駆動機構と、クランプ機構と、X−Y移動装置とを所定の順序で動作させることにより行うことができる。これらの各部の動作は手動による遠隔操作により行ってもよく、所定のシーケンスで自動的に行わせてもよい。
【0014】
上記の一連の動作を自動的に行わせるには、可動テーブルが第1の位置に移動させられている状態にあることが確認されている状態で該可動テーブル上にケースが載せられるのを待つ過程と、該可動テーブルの上に処理するケースが載せられたことが検出されたときにクランプ機構を動作させて可動テーブル上のケースをクランプする過程と、ケースがクランプ機構によりクランプされたことが確認されたときに可動テーブルを第2の位置に移動させてクランプされているケースの底面の下方の作業用空間を開放する過程と、昇降装置により研削装置を上昇させて回転研削ブラシをケースの底面に接触させる過程と、回転研削ブラシによりケースの底面の全体を研削するようにX−Y移動装置を制御する過程と、ケース底面全体の研削が終了した後に昇降装置に下降動作を行わせて研削装置を下降させる過程と、研削装置の下降動作が完了した時に可動テーブルを第1の位置に移動させてケースの底面を支える過程と、クランプ機構によるケースのクランプを解除する過程と、可動テーブルの上のケースが搬出されるのを待つ過程とを順次行わせるべく、可動テベーブル駆動機構と、クランプ機構と、昇降装置と、X−Y移動装置とを所定のシーケンスで動作させるように制御する制御部を設ければよい。
【0015】
本発明の好ましい態様では、上記可動テーブルが、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るように支持された第1及び第2のテーブル半部からなっていて、両テーブル半部が最も接近した位置及び最も離間した位置がそれぞれ前記可動テーブルの第1の位置及び第2の位置となるように構成される。
【0016】
また第1及び第2のテーブル半部は、回転中心軸線をそれぞれの移動方向に対して直角な方向に向けた状態で両テーブル半部の移動方向に並設された複数のローラを備えていて、該複数のローラが前記ケースの底部を受け止めるように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記のように構成すると、ケースをクランプ機構によりクランプした後可動テーブルを第2の位置に移動させる動作、及びケース底面の錆落処理が完了した後可動テーブルを第1の位置に移動させる動作を行わせる際に、可動テーブルのローラが回転して可動テーブルの移動を容易にするため、可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせることができる。
【0018】
なお可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせるための手段はローラに限定されるものではない。例えば、可動テーブルまたはクランプ機構を上下方向に僅かに変位させ得るように構成しておいて、可動テーブルを移動させる際に、可動テーブルとクランプ機構にクランプされているケースの底面との間に僅かな隙間を形成するようにしても、可動テーブルの移動を円滑に行わせることができる。
【0019】
上記研削装置は、鉛直方向に伸びる旋回軸の上端に取り付けられた旋回アームと、前記旋回軸を回転駆動する回転駆動機構と、回転研削ブラシと該回転研削ブラシを回転駆動するモータとを有して回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させた状態で旋回アームに搭載された電動ブラシとを備えた構成とするのが好ましい。この場合、電動ブラシは、回転研削ブラシの作用部分の旋回軸の中心軸線に対するオフセット量を調整し得る支持機構を介して旋回アームに取り付けられていることが好ましい。
【0020】
上記のように回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させておくと、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を行うことができるため、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また上記のように、回転研削ブラシの作用部分を、旋回軸の中心軸線に対してオフセットした位置に配置しておくと、旋回アームを旋回させることにより、回転研削ブラシの作用部分を旋回軸の中心軸線の回りに旋回させることができるため、研削装置6をX−Y移動装置により左右に移動させる過程で、研削ブラシにより研削する範囲を拡大して錆落し作業を能率よく進めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、錆落し処理を行うケースを、その底面を下方に向けてクランプした状態で、研削装置の回転研削ブラシを下方からケースの底面に当てて、ケースの底面の錆落し処理を行わせるようにしたので、柱上変圧器のケースの底面の錆落し処理を、ケースに中身が入ったままの状態で行うことができる。
【0022】
また研削装置を昇降装置とX−Y移動装置とを介して支持して、回転研削ブラシをケースの底面に所定の接触圧力で接する位置まで上昇させた状態で、水平方向に自在に移動させることができるようにしたので、回転研削ブラシをケース底面の全体に亘って移動させてケースの底面の錆落し処理を行わせることができる。
【0023】
本発明によれば、作業者が工具を手に持って錆落し処理を行うのではなく、電動ブラシをX−Y移動装置により機械的に動かして錆落し処理を行わせるので、遠隔操作により錆落し処理を進めるように作業環境を整えることができ、発生する塵埃に作業者が曝されることなく、また作業者に無理な姿勢での長時間作業を強いることなく、錆落し作業を行うことができる。
【0024】
特に、請求項3に記載された発明によれば、回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分としてケースの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させたので、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を可能にして、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また電動ブラシを旋回アームに搭載して、回転研削ブラシの作用部分を旋回軸に対してオフセットさせることにより、該回転研削ブラシの作用部分を、旋回軸を中心として旋回させることができるようにしたので、回転研削ブラシにより研削される部分の面積を拡大して、錆落し作業を能率よく進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係わる錆落し装置の斜視図である。
【図2】同錆落し装置の平面図である。
【図3】同錆落し装置の正面図である。
【図4】同錆落し装置の右側面図である。
【図5】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の斜視図である。
【図6】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の平面図である。
【図7】同錆落し装置で用いるX−Y移動装置の正面図である。
【図8】同錆落し装置で用いる研削装置の正面図である。
【図9】同錆落し装置で用いる研削装置の一部を省略して示した正面図である。
【図10】同錆落し装置で用いる研削装置の一部を断面して示した側面図である。
【図11】同錆落し装置によりケースの底面の錆落し処理を行う際の研削回転ブラシの変位のさせ方の一例を説明する説明図である。
【図12】同錆落し装置によりケースの底面の錆落し処理を行う際の研削回転ブラシの変位のさせ方の他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の一実施形態に係わる柱上変圧器ケースの錆落し装置を詳細に説明する。
図1ないし図4は、本実施形態の錆落し装置の全体的な構成を示したもので、これらの図において、Tは底面の錆落し処理を行う柱上変圧器のケースである。ケースTは、円筒状に形成されて下端開口部及び上端開口部がそれぞれ底板及び蓋板により閉じられたたケース本体T1と、ケース本体T1の周壁部に取付けられた放熱器T2とを有している。ケースTの内部には変圧器本体が絶縁油と共に収容されている。ケースTの上部には、ブッシングが取り付けられているが、ブッシングの図示は省略されている。
【0027】
1は、上方に開口した機器収容空間100を内側に有する支持フレームである。図示の支持フレーム1は、形鋼材を矩形状に枠組して構成したベース101と、ベース101の四隅に、鉛直方向に起立させた状態で下端が固定された4本の支柱102と、隣り合う支柱102の上端間を連結するようにして、支柱102の上端に固定された横桟部103と、支柱102の上端に固定されて内部の機器収容空間100を塞ぐ長方形の上面板104とを有し、上面板104の中央部に、内側の機器収容空間100を上方に開口させる円形の開口部105(図1参照)が形成されている。
【0028】
図1ないし図3において、2は機器収容空間100の開口部105に退避可能な状態で配置された可動テーブルである。可動テーブル2は、水平方向に沿って第1の位置(図1、図2及び図3に実線で示されている位置)と該第1の位置から離れた第2の位置(図3に鎖線で示された位置)との間を変位し得るように支持フレーム1の上部にガイド機構を介して支持されていて、第1の位置にあるときに機器収容空間100の開口部105の上方に位置して、底面の錆落し処理を行うケースTを支えるべく待機した状態になり、第2の位置にあるときに機器収容空間100の開口部105の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる。
【0029】
図示の例では、可動テーブル2が、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るようにしてフレーム1の上端に支持された第1及び第2のテーブル半部201及び202からなっていて、図1、図2及び図3に実線で示されているように、両テーブル半部201及び202が最も接近した位置にある状態を、可動テーブル1が第1の位置に位置した状態とし、図3に鎖線で示したように両テーブル半部201及び202が最も離間した位置にある状態を可動テーブル1が第2の位置にある状態としている。
【0030】
図示の例では、支持フレーム1の上面板104の上に、支持フレームの長手方向に互いに平行に延びる一対のガイドレール203,203が固定されて、これらのガイドレールにより第1及び第2のスライド板204及び205がスライド自在に支持され、第1及びだい2のスライド板204及び205の上にそれぞれ第1及び第2のテーブル半部201及び202が支持されている。
【0031】
第1及び第2のテーブル半部201及び202は、長方形状の枠体の内側に、回転中心軸線を両テーブル半部の移動方向に対して直角な方向に向けた複数のローラ206を、両テーブル半部の移動方向に並べて配置して、各ローラ206をそれぞれの枠体に回転自在に支持した構造を有している。第1及び第2のテーブル半部201及び202にそれぞれ設けられた複数のローラ206,206,…は、それぞれの上端が同一の水平面上に位置するように設けられていて、一連のローラ206,206,…がケースTの底部に接して該ケースを受け止める。
【0032】
支持フレーム1の上面には第1及び第2の可動テーブル駆動用流体圧シリンダ211及び212がそれぞれのピストンを第1及び第2のテーブル半部201及び202の移動方向に向けた状態で取り付けられ、これらの流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドの先端がそれぞれ第1及び第2のテーブル半部201及び202に固定されている。流体圧シリンダ211及び212により、可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構が構成されている。流体圧シリンダ211及び212としては、エアシリンダを用いることができる。
【0033】
流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドを前進させることにより、第1及び第2のテーブル半部201及び202を互いに接近する方向に移動させて、可動テーブル2を第1の位置に位置させた状態とすることができ、流体圧シリンダ211及び212のピストンロッドを後退させることにより、第1及び第2のテーブル半部201及び202を互いに離れる方向に移動させて、可動テーブル2を第2の位置に位置させた状態とすることができる。可動テーブル2は、第1の位置にあるとき(テーブル半部201及び202が最も接近した状態にあるとき)に、支持フレームの機器収容空間100の開口部105の上方に配置された状態(開口部105をほぼ塞いだ状態)になって、錆落し処理を行うケースTを下方から支えることができる状態になる。また可動テーブル2が第2の位置にあるとき(テーブル半部201及び202が最も離れた状態にあるとき)には、該可動テーブル2がケースTの下方から退避した状態になることにより、開口部105の少なくとも一部(本実施形態では、開口部105の大部分)を開放して、ケースTの底面の下方に作業用開口部を形成する。
【0034】
支持フレーム1の上面には、逆L字型の支持部材301が固定されていて、この支持部材により固定側クランプ具302が支持されている。クランプ具302は、水平方向に伸びる板状部302aを備えて、この板状部302aにV字形の切り欠き302bを形成した構造を有している。
【0035】
支持フレーム1の上面にはまた流体圧シリンダ303が、そのピストンロッドを固定側クランプ具302側に向けた状態で取り付けられていて、シリンダ303のピストンロッドの先端に可動側クランプ具304が取り付けられている。可動側クランプ具304は、固定側クランプ具302と同様に、水平方向に伸びる板状部304aを備えて、この板状部にV字形の切り欠き304bが形成され、固定側クランプ具302及び可動側クランプ具304が、同一の水平面上に、それぞれの切り欠き302b及び304bを対向させた状態で配置されている。
【0036】
可動側クランプ具304は、流体圧シリンダ303により駆動されて、固定側クランプ具302に接近する方向と、固定側クランプ具302から離れる方向とに、水平方向に沿って往復変位させられる。本実施形態では、流体圧シリンダ303としてエアシリンダが用いられている。固定側クランプ具302と、流体圧シリンダ303と、可動側クランプ具303とにより、第1の位置にある可動テーブル2の上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられたケースTをクランプして支持フレーム1に対して固定するクランプ機構3が構成されている。固定側クランプ具302及び可動側クランプ具303は、それぞれの切り欠き302b及び304bが円筒状のケース本体T1の下端寄りの部分の外周に当接することにより、ケースTを、その底部を下方に向け、その軸線を鉛直方向に向けた状態でしっかりとクランプする。
【0037】
上記のようにして底面の錆落し処理を行うケースTを支持フレーム1に対して固定した後、流体圧シリンダ211及び212を駆動して、図3に鎖線で示したようにテーブル半部204及び205を退避位置に移動させることにより、可動テーブル2をケースTの下方から退避させて、ケースTの下方に作業用開口部を形成することができる。
【0038】
支持フレーム1の内側の機器収容空間100には、昇降装置4(図4,図5及び図7参照)と、この昇降装置により昇降させられるX−Y移動装置5と、昇降装置4によりX−Y移動装置5とともに上下動させられ、X−Y移動装置5により水平方向に沿って互いに直交するX方向とY方向とに変位させられる研削装置6とが配置されている。
【0039】
昇降装置4は、モータにより駆動されるパンタグラフ機構(図7参照)により上下動させられる昇降台402を備えていて、支持フレーム1の下部に支持されている。
【0040】
X−Y移動装置5は、図5に示すように、昇降台402の上に固定された支持板403の上に支持されたY方向移動機構501と、Y方向移動機構501の上に支持されたX方向移動機構502とからなっている。
【0041】
Y方向移動機構501は、Y方向(支持フレーム1の長手方向)に延びるように設けられて支持板403に回転自在に支持されたネジ棒503と、支持板403に固定されてネジ棒503を回転駆動するサーボモータ504と、支持板403の上に支持されたガイドレール506及び507によりY方向に移動自在に支持された可動板508と、可動板508の下部に固定されてネジ棒503に螺合されたナットとを備え、モータ504の回転をネジ棒503と該ネジ棒に螺合されたナットとからなるネジ機構により直線変位に変換して、可動板508をY方向に往復移動させる。上記ネジ機構は、ボールネジを用いて構成するのが好ましい。錆落し処理の際に発生する塵がネジ機構に付着するのを防ぐため、ネジ機構を覆うように、可動板508の変位に伴って伸縮する蛇腹式のカバー509が取り付けられている。
【0042】
X方向移動機構502は、X方向に伸びるように設けられて可動板508に回転自在に支持されたネジ棒510と、可動板508に支持されたサーボモータ511の回転をネジ棒510に伝達するタイミングベルトを用いたベルト伝動機構512と、可動板508に固定されたガイドレール513及び514によりX方向に移動自在に支持された可動板515と、可動板515の下部に固定されてネジ棒510に螺合されたナット516とにより構成されていて、モータ511の回転をネジ棒510とナット516とからなるネジ機構により直線変位に変換して、可動板515をY方向に対して直角なX方向に往復移動させる。可動板515は、モータ511の回転をネジ棒510とナット516とからなるネジ機構によりX方向に移動させられると共に、Y方向移動機構501の可動板508の移動に伴って、Y方向にも移動させられる。X方向移動機構502のネジ機構を覆うように、可動板515のX方向への変位に伴って伸縮するカバー517が取り付けられている。ネジ棒510及びナット516により構成されるネジ機構も、ボールネジを用いて構成することが好ましい。
【0043】
X−Y移動装置5の可動板515の上に研削装置6が支持されている。図8ないし図10に示されているように、研削装置6は、正方形状の板からなっていて、板面を水平方向に向けた状態で配置される下部フレーム601と、同じく板面を水平方向に向けた状態で配置されて、下部フレーム601の四隅に設けられた支持脚602を介して、下部フレーム601に対して支持された正方形状の板状の上部フレーム604とを備えている。
【0044】
各支持脚602は、図10に示されているように、上下に延びる孔を内部に有して上部フレーム604に上端が固定された支持ブロック602Aと、支持ブロック602Aの内部の孔と、支持ブロック602Aの内部の孔に整合するようにして上部フレーム604の四隅に形成された孔とにスライド自在に嵌合されて下端が下部フレーム601に固定された円柱状の支柱602Bと、後記する回転研削ブラシに接触圧力を与えるために、支柱602Bに嵌合されて下部フレーム601と支持ブロック602Aとの間に配置された圧縮バネ602Cと、上部フレーム支柱602Bの上端に固定されたストッパ602Dとを備えていて、上部フレーム604をバネ602Cを介して支持している。4つの支持脚の支持ブロック602Aのうち、隣り合う2つの支持ブロックの下端に板606が結合され、この板606と下部フレーム601との間にショックアブソーバ605が配置されている。
【0045】
上部フレーム604には軸受け装置607(図9参照)が取り付けられて、この軸受け装置により鉛直方向に伸びる旋回軸608が回転自在に支持され、旋回軸608の上端に旋回アーム609が固定されている。旋回軸608には、旋回アーム609の下方に位置させて、大歯車611が取り付けられている。上部フレーム604にはまた、軸受け装置620が取り付けられて、この軸受け装置620により、鉛直方向に伸びる駆動軸が支持され、軸受け装置620の下端に、駆動軸を回転駆動するモータ621が取り付けられている。軸受け装置620により支持された駆動軸の上端に小歯車622が取り付けられ、この小歯車622が大歯車611に噛み合わされている。大歯車611と、小歯車622とにより、モータ621の回転を減速して旋回軸608に伝達する減速機625が構成されている。下部フレーム601の一部には、モータ621の下端を収容する切り欠き601a(図9参照)が形成されている。上部フレーム604には、減速機625を覆う防塵カバー626が取付けられている。
【0046】
旋回アーム609には、該旋回アームの回動中心に対して偏心させた位置に配置された支持機構615により、電動ブラシ630が支持されている。電動ブラシ630は、内部にモータが収容された筒状のハウジング631と、ハウジング631の先端に取り付けられた減速機ケース632内に収容されてモータの回転を減速する減速機と、減速機ケース632から上方に導出された回転軸633と、回転軸633に取り付けられた回転研削ブラシ635とを備えている。
【0047】
支持機構615は、ハウジング631の下半部に嵌合されるように形成されて旋回アーム609に固定された第1の半部615Aと、ハウジング631の上半部に嵌合されるように形成されて第1の半部615Bに突き合わされた第2の半部615Bと、第1の半部615Aと第2の半部615Bとを引き寄せるように締結するネジ615Cとを備えていて、第1の半部615Aと第2の半部615Bとの間に電動ブラシ630のハウジング631を挟んだ状態で、電動ブラシ630を斜めに支持するように構成されている。
【0048】
電動ブラシ630は、支持機構615により、電動ブラシ635が取り付けられた先端部630aが後端部630bよりも高い位置に配置されるように傾けられていて、回転軸633が鉛直方向(旋回軸608の中心軸線O−Oの方向)に対して一定角度θだけ傾斜した状態で配置されている。
【0049】
回転研削ブラシ635は、回転軸633に固定されたカップ状の基部635aの周壁部に、金属ワイヤからなる多数のブラシ毛635bを円錐面に沿うように並べて支持した構造を有する周知の研削ブラシからなっている。回転研削ブラシ635は、その回転軸633が鉛直方向に対して一定角度θだけ傾斜させられていることにより、そのブラシ毛の部分の先端部の周方向の一部のみが研削作用を行う作用部分Pとして、上方に水平に配置されたケースTの底面に接触させられる。このように、回転研削ブラシを傾斜させて、ブラシ毛の部分の先端部の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分Pとしてケースの底面に接触させるようにすると、ブラシ毛の部分の直径よりも更に小さい部分を削ることが可能になるため、通常ケースTの底面の外周部に形成されている環状の突出部の内側ぎりぎりの領域まで研削することが可能になる。
【0050】
回転研削ブラシ635は、その作用部分Pが旋回軸608の中心軸線に対して一定距離dだけオフセットした状態で配置される。支持機構615は、回転研削ブラシ635の作用部分Pの旋回軸の中心軸線O−Oに対するオフセット量dを調整し得る機能を有している。即ち、ネジ615Cを緩めて、電動ブラシ630の位置をずらすことにより、オフセット量dを調整し得るようになっている。
【0051】
上記のように、回転研削ブラシ635の作用部分Pを旋回中心に対してオフセットした位置に配置することにより、旋回アーム609の旋回に伴って、回転研削ブラシ635の作用部分Pを、旋回中心軸線O−Oを中心として旋回させることができるようになっている。このように構成しておくと、回転研削ブラシが研削する範囲を広くして、錆落し作業を能率よく進めることができる。
【0052】
軸受け装置607の下端には、旋回運動を行う電動ブラシ630のモータに給電するためのブラシ装置640が取り付けられている。ブラシ装置640は、旋回軸608とともに回転するように設けられて図示しない配線により電動ブラシ630のモータに接続されたスリップリングと、このスリップリングに摺動接触するように設けられて図示しない電源に接続されたブラシとを備えていて、図示しない電源からブラシ装置640と図示しない配線とを通して電動ブラシ630のモータに給電されるようになっている。
【0053】
下部フレーム601にはまた、支持ブロック602Aの下端を検出することによりバネ602Cの撓み量を検出するセンサ650が取付けられている。センサ650は、支持ブロック602Aの下端を検出するリミットスイッチ等からなっていて、昇降装置4により研削装置6を上昇させて回転研削ブラシ635をケースTの底面に当接させる過程で、ケースTの底面から研削装置に与えられる反力により支持ブロック602Aがバネ602Cの付勢力に抗して下方に所定量変位したときに、支持ブロック602Aの下端を検出することにより、バネ602Cの撓み量が所定量になったこと(回転研削ブラシ635がケースTの底面に所定の圧力で接触したこと)を検出する。回転研削ブラシの接触圧力を調整し得るようにするため、センサ650の上下位置を適宜に調整できるようになっている。
【0054】
上記の研削装置6は、下部フレーム601をX−Y移動装置5の可動板515に固定することにより、XーY移動装置5に取付けられる。研削装置6は、可動テーブル2が第2の位置にあって、クランプ機構3によりクランプされているケースTの下に作業用開口部が形成されている状態で、回転研削ブラシ635を該作業用開口部を通してケースTの底面に接触させることによりケースTの底面を研削する。
【0055】
柱上変圧器のケースTの底面の錆落し処理を行う際には、図1に示したように、可動テーブル2を第1の位置に位置させて、支持フレーム1内の機器収容空間の開口部を塞いだ状態で、可動テーブル2の上に、ケースTを、その底面を下に向けた状態で保持させる。この作業は、天井クレーン等の搬送手段(図示せず。)を用いて行う。可動テーブル2の上にケースTを保持させた状態でクランプ機構3により、ケースTをクランプする。ケースTをクランプした後、可動テーブル2を図3に鎖線で示された第2の位置に変位させることにより、クランプされたケースTの下方に作業用開口部を開口させ、ケースTの底面をその作業用開口部に臨ませる。
【0056】
次いで、昇降装置4を駆動して、センサ650が支持ブロック602Aの下端を検出するまで研削装置6を上昇させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分PをケースTの底面に所定の圧力で当接させる。この状態で、モータ621を回転させて旋回アーム609を旋回させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分Pを一方向に旋回させるとともに、回転研削ブラシ635を回転軸633を中心として回転させながら、X−Y移動装置5により研削装置6を互いに直交するX方向及びY方向に適宜に移動させることにより、回転研削ブラシ635をケースTの底面に沿って所定のパターンで移動させて、ケースTの底面全体の錆落し処理を行わせる。
【0057】
回転研削ブラシによりケースTの底面を研削して錆落しを行う際の研削ブラシの移動パターンの一例を図11及び図12に示した。この例による場合には、先ず図11に示すパターンで回転研削ブラシを移動させることにより、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行う。この処理においては、旋回アーム609を一方向に旋回させて、回転研削ブラシ635を旋回中心軸線O−Oの回りに旋回させるとともに、回転軸633を中心に回転させながら、回転研削ブラシ635を、X−Y移動装置5により図11に示した矢印に沿って(ケースTの中心を通る一つの直線と平行な方向に沿って)往復直線移動させる動作を、回転研削ブラシを、ケースの径方向に一定距離Δbずつシフトさせながら繰り返し行うことにより、ケースTの外周寄りの領域を除いたほぼ半部の領域の錆落し作業を行う。回転研削ブラシを矢印に沿って移動させる際の移動量cは、錆落し処理を行う領域の半径aと、半径aと回転研削ブラシのシフト量Δbとから演算される距離b(=a−Δb)とから、c=(a2−b2)1/2の演算を行うことにより求めることができる。ケースの他の半部の領域についても、同様のパターンで回転研削ブラシを移動させることにより、錆落し処理を行う。必要に応じて、上記の動作を繰り返すことにより、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行う。
【0058】
図11に示すパターンで回転研削ブラシを移動させて、ケースTの底面の外周寄りの領域を除いた領域の錆落し処理を行った後、回転軸633を中心に回転している回転研削ブラシ635を旋回軸608の回りに旋回させながら、図12に示すように、ケースTの周方向に連続移動させる動作を、移動の軌跡の円の半径を徐々に小さくしながら繰り返すことにより、ケースTの底面の外周寄りの領域の錆落し作業を行う。
【0059】
ケースの底面の錆落しが終了した後は、昇降装置4を駆動して研削装置6を下方に設定された退避位置まで下降させ、可動テーブル2を図1に示された第1の位置に移動させて可動テーブル2によりケースTの底面を支える。次いでクランプ機構3によるケースTのクランプを解除する。ケースTのクランプを解除した後、処理済のケースTを吊り上げて搬出する。
【0060】
上記の一連の動作は、シリンダ211及び212からなる可動テーブル駆動機構と、クランプ機構3と、X−Y移動装置とを所定の順序で動作させることにより行うことができる。これらの各部の動作は手動による遠隔操作により行ってもよく、所定のシーケンスで自動的に行わせてもよい。
【0061】
上記の一連の動作を自動的に行わせる場合には、各部の動作の完了を検出するリミットスイッチ等のセンサを設けておいて、可動テーブル2が図1に示す第1の位置に移動させられている状態にあることが確認されている状態で該可動テーブル2上にケースTが載せられるのを待つ過程と、可動テーブル2の上に処理するケースTが載せられたことが検出されたときにクランプ機構3を動作させて可動テーブル2上のケースTをクランプする過程と、ケースTがクランプ機構によりクランプされたことが確認されたときに可動テーブルを第2の位置に移動させてクランプされているケースの底面の下方の作業用空間を開放する過程と、昇降装置4により、センサ650が検出動作を行うまで研削装置を上昇させて回転研削ブラシ635をケースの底面に所定の圧力で接触させる過程と、回転研削ブラシ635によりケースの底面の全体を研削するようにX−Y移動装置5を制御する過程と、ケース底面全体の研削が終了した後に昇降装置4に下降動作を行わせて研削装置を退避位置まで下降させる過程と、研削装置6の下降動作が完了した時に可動テーブル2を第1の位置に移動させて、錆落し処理が終了したケースTの底面を支える過程と、クランプ機構3によるケースTのクランプを解除する過程と、可動テーブル2の上のケースが搬出されるのを待つ過程とを順次行わせるべく、可動テベーブル駆動機構と、クランプ機構3と、昇降装置4と、X−Y移動装置5とを所定のシーケンスで動作させるように制御する制御部を設ける。
【0062】
本実施形態においては、回転研削ブラシ635のブラシ毛部分の先端部の周方向の一部のみを作用部分PとしてケースTの底面に接触させるように回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させてあることにより、回転研削ブラシのブラシ毛の部分の直径よりも小さい直径を有する部分の研削を行うことができるため、タンクの底面の隅々まで研削を行わせることができ、未処理部分が残されるのを防ぐことができる。また回転研削ブラシの作用部分Pを、旋回軸の中心軸線O−Oに対してオフセットした位置に配置して、旋回アーム609を旋回させることにより、回転研削ブラシ635の作用部分Pを旋回軸の中心軸線の回りに旋回させることができるようにしたため、研削装置6をX−Y移動装置により左右に移動させる過程で、研削ブラシにより研削する範囲を拡大して錆落し作業を能率よく進めることができる。
【0063】
上記の実施形態のように、可動テーブルにローラ206を取り付けておくと、ケースをクランプ機構によりクランプした後可動テーブルを第2の位置に移動させる動作、及びケース底面の錆落処理が完了した後可動テーブルを第1の位置に移動させる動作を行わせる際に、可動テーブルのローラ206が回転して可動テーブルの移動を容易にするため、可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせることができる。
【0064】
なお可動テーブルを第1の位置及び第2の位置に移動させる動作を円滑に行わせるための手段はローラに限定されるものではない。例えば、可動テーブルまたはクランプ機構を上下方向に僅かに変位させ得るように構成しておいて、可動テーブルを移動させる際に、可動テーブルとクランプ機構にクランプされているケースの底面との間に僅かな隙間を形成するようにしても、可動テーブルの移動を円滑に行わせることができる。
【0065】
上記の実施形態では、回転研削ブラシを旋回させる駆動源として電動モータ620を用いたが油圧モータを用いてもよい。その他の回転駆動源も油圧モータで置き換えることができる。
【0066】
上記の実施形態では、回転研削ブラシの接触圧力を得るためにバネ602Cを用い、振動を吸収するためにショックアブソーバ605を設けているが、これらに代えて、エアシリンダを用いてもよい。即ち研削装置6の上部フレーム604を下部フレーム601に対して上下動自在に支持して、上部フレーム604と下部フレーム601との間にエアシリンダを介在させるようにしてもよい。
【0067】
上記の説明では、錆落し処理を行う際に、回転研削ブラシを一方向に旋回させるとしたが、旋回アーム609を駆動するモータ621としてサーボモータを用いることにより、回転研削ブラシを一定の角度範囲で往復旋回させる動作を行わせることも可能である。
【0068】
上記の実施形態では、装置をコンパクトに構成するために、可動テーブル2を第1のテーブル半部201と第2のテーブル半部202とにより構成したが、可動テーブルを一つのテーブルにより構成して、該可動テーブルを第1の位置と第2の位置とに移動させるようにしてもよい。
【0069】
上記の実施形態では、クランプ機構3を固定側クランプ具と可動側クランプ具とにより構成したが、クランプ機構を構成する両クランプ具を共に可動とするように構成することもできる。
【符号の説明】
【0070】
1 支持フレーム
100 機器収容空間
105 開口部
2 可動テーブル
211,212 流体圧シリンダ(可動テーブル駆動機構)
3 クランプ機構
302 固定側クランプ具
302 可動側クランプ具
303 流体圧シリンダ
4 昇降装置
5 X−Y移動装置
6 研削装置
601 下部フレーム
602 支持脚
604 上部フレーム
608 旋回軸
621 モータ
625 減速機構
630 電動ブラシ
635 回転研削ブラシ
P 回転研削ブラシの作用部分
T 柱上変圧器のケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱上変圧器のケースの底面に発生した錆を落す柱上変圧器ケースの錆落し装置であって、
上方に開口した機器収容空間を内側に有する支持フレームと、
水平方向に沿って第1の位置と該第1の位置から離れた第2の位置との間を変位し得るように前記支持フレームの上部にガイド機構を介して支持されていて、前記第1の位置にあるときに前記機器収容空間の開口部の上方に位置して前記ケースを支えるべく待機した状態になり、前記第2の位置にあるときに前記機器収容空間の開口部の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる可動テーブルと、
前記可動テーブルを前記第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構と、
前記第1の位置にある前記可動テーブルの上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられた前記ケースをクランプして前記支持フレームに対して固定するクランプ機構と、
前記可動テーブルが第2の位置にあるときに前記クランプ機構によりクランプされているケースの底面に前記作業用開口部を通して当接して該ケースの底面を研削する回転研削ブラシを備えて、前記機器収容空間内で上下方向への変位と水平面に沿った互いに直交するX方向及びY方向への変位とを行い得るように、前記機器収容空間内で昇降装置とX−Y移動装置とを介して前記支持フレームに支持された研削装置と、
を具備し、
前記昇降装置により前記研削装置を上昇させて前記回転研削ブラシを前記作業用開口部を通して前記ケースの底面に当接させた状態で、前記X−Y移動装置によって前記研削装置を水平方向に移動させることにより前記回転研削ブラシを前記ケースの底面に沿って移動させながら、該回転研削ブラシにより前記ケースの底面を研削して前記ケースの底面の錆を落すように構成されていること、
を特徴とする柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【請求項2】
前記可動テーブルは、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るように支持された第1及び第2のテーブル半部からなっていて、両テーブル半部が最も接近した位置及び最も離間した位置がそれぞれ前記可動テーブルの第1の位置及び第2の位置となるように構成され、
前記第1及び第2のテーブル半部は、回転中心軸線をそれぞれの移動方向に対して直角な方向に向けた状態で両テーブル半部の移動方向に並設された複数のローラを備えていて、該複数のローラが前記ケースの底部を受け止めるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【請求項3】
前記研削装置は、鉛直方向に伸びる旋回軸の上端に取り付けられた旋回アームと、前記旋回軸を回転駆動する回転駆動機構と、前記回転研削ブラシと該回転研削ブラシを回転駆動するモータとを有して前記回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分として前記ケースの底面に接触させるように前記回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させた状態で前記旋回アームに搭載された電動ブラシとを備え、
前記電動ブラシは、前記回転研削ブラシの前記作用部分の前記旋回軸の中心軸線に対するオフセット量を調整し得る支持機構を介して前記旋回アームに取り付けられていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【請求項1】
柱上変圧器のケースの底面に発生した錆を落す柱上変圧器ケースの錆落し装置であって、
上方に開口した機器収容空間を内側に有する支持フレームと、
水平方向に沿って第1の位置と該第1の位置から離れた第2の位置との間を変位し得るように前記支持フレームの上部にガイド機構を介して支持されていて、前記第1の位置にあるときに前記機器収容空間の開口部の上方に位置して前記ケースを支えるべく待機した状態になり、前記第2の位置にあるときに前記機器収容空間の開口部の少なくとも一部を作業用開口部として開放した状態になる可動テーブルと、
前記可動テーブルを前記第1の位置と第2の位置とに変位させる可動テーブル駆動機構と、
前記第1の位置にある前記可動テーブルの上に底面を下にし、中心軸線を鉛直方向に向けて載せられた前記ケースをクランプして前記支持フレームに対して固定するクランプ機構と、
前記可動テーブルが第2の位置にあるときに前記クランプ機構によりクランプされているケースの底面に前記作業用開口部を通して当接して該ケースの底面を研削する回転研削ブラシを備えて、前記機器収容空間内で上下方向への変位と水平面に沿った互いに直交するX方向及びY方向への変位とを行い得るように、前記機器収容空間内で昇降装置とX−Y移動装置とを介して前記支持フレームに支持された研削装置と、
を具備し、
前記昇降装置により前記研削装置を上昇させて前記回転研削ブラシを前記作業用開口部を通して前記ケースの底面に当接させた状態で、前記X−Y移動装置によって前記研削装置を水平方向に移動させることにより前記回転研削ブラシを前記ケースの底面に沿って移動させながら、該回転研削ブラシにより前記ケースの底面を研削して前記ケースの底面の錆を落すように構成されていること、
を特徴とする柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【請求項2】
前記可動テーブルは、水平面に沿って互いに接近する方向と離間する方向とに変位し得るように支持された第1及び第2のテーブル半部からなっていて、両テーブル半部が最も接近した位置及び最も離間した位置がそれぞれ前記可動テーブルの第1の位置及び第2の位置となるように構成され、
前記第1及び第2のテーブル半部は、回転中心軸線をそれぞれの移動方向に対して直角な方向に向けた状態で両テーブル半部の移動方向に並設された複数のローラを備えていて、該複数のローラが前記ケースの底部を受け止めるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【請求項3】
前記研削装置は、鉛直方向に伸びる旋回軸の上端に取り付けられた旋回アームと、前記旋回軸を回転駆動する回転駆動機構と、前記回転研削ブラシと該回転研削ブラシを回転駆動するモータとを有して前記回転研削ブラシのブラシ毛部分の先端の周方向の一部のみを研削作用を行う作用部分として前記ケースの底面に接触させるように前記回転研削ブラシの回転軸を鉛直方向に対して傾斜させた状態で前記旋回アームに搭載された電動ブラシとを備え、
前記電動ブラシは、前記回転研削ブラシの前記作用部分の前記旋回軸の中心軸線に対するオフセット量を調整し得る支持機構を介して前記旋回アームに取り付けられていること、
を特徴とする請求項1または2に記載の柱上変圧器ケースの錆落し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−212787(P2011−212787A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83083(P2010−83083)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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