説明

栗皮抽出物を含む化粧料組成物

本発明は、栗皮抽出物を有効成分として含む、痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物に関する。本発明に係る化粧料組成物に含まれる栗皮抽出物は、本発明に係る一の実施例において、痒みの刺激源であるタンパク分解酵素活性受容体−2(PAR−2)の活性を抑制することにより、優れた痒み症の緩和又は抑制効果を発揮できることが確認されたところ、痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物の有効成分として適合して使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栗皮抽出物を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
痒みとは、掻きたいという欲求を誘発する不愉快な皮膚感覚と定義されており、痛み、触覚、冷たさ又は熱さといった生理的自己防御機序として、皮膚が外部からの有害な刺激にさらされたときに、これを認知させて皮膚を保護する役割をする。
【0003】
痒み症は、多様な皮膚疾患又は全身疾患においてよく表われる共通した症状の一種であり、じんましんや様々な薬物の副作用による急性の痒み症は容易に治癒され得るが、胆道閉鎖や腎臓疾患又はアトピー疾患といった重症の慢性の痒み症は、その治療が非常に難しいというのが実情である。
【0004】
痒みは、炎症や癌、代謝性疾患、感染、精神科的疾病、薬物投与又はストレス等、多様な原因によって誘発され、最近のいくつかの研究結果では、皮膚と末梢神経系及び中枢神経系の有機的連結が痒みを誘発させる刺激に対する反応や調節に深く関与していることを明らかにしている。
【0005】
最近、特定の感覚神経細胞とそれらの受容体が痒みに特異的に反応するということが明らかになり、痒みがもはや痛みの下位様相ではなく、感覚神経系の個別的感覚として受け入れられるようになっており、互いに異なる痒み媒介物質とそれらの受容体が多様な痒み誘発疾患に関与するものと考えられている(Steinhoff et al., Journal of Investigative Dermatology, 126, pp1705−1718, 2006)。
【0006】
これまでの痒み症研究のための実験においては主にヒスタミンが使用されてきたが、アトピーのような慢性の痒み症は、ヒスタミン依存的経路(pathway)によってというよりは、神経性原因によるものであるという主張が提起されており、このことは、なぜ抗ヒスタミンがアトピー疾患の痒み症に効果的でないのかということを説明している(Stander et al., Experimental Dermatology, 11, pp12−24, 2002)。
【0007】
また、第1世代抗ヒスタミン剤は、主に全身投与して使用するが、抗副交感作用があって鎮静作用を示し、第1世代抗ヒスタミン剤であるクロルフェニラミンは、局所投与時、アトピー性皮膚炎患者の痒みを抑制させることができないものと知られており(Munday et al., Dermatology, 205, pp40−45, 2002)、皮膚過敏反応の危険があるため、アトピー性皮膚炎への局所抗ヒスタミン剤の使用は勧奨されない。鎮静作用がない第2世代抗ヒスタミン剤であるエバスチンやターフェナジンは、シトクロム(cytochrome)P450活性を阻害する薬物(ketoconazole, erythromycin)と共に服用すると不整脈を引き起こすことがあり(Hey et al., Arzneimittelforschung, 46, pp159−163, 1996)、これと関連する副作用が起こる。
【0008】
したがって、効率的でありながら、副作用が少なく安全な痒み症緩和剤、特に、アトピーのような慢性の痒み症に有効な緩和剤の開発に対する必要性が急がれている状況である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Steinhoff et al., Journal of Investigative Dermatology, 126, pp1705−1718, 2006
【非特許文献2】Stander et al., Experimental Dermatology, 11, pp12−24, 2002
【非特許文献3】Munday et al., Dermatology, 205, pp40−45, 2002
【非特許文献4】Hey et al., Arzneimittelforschung, 46, pp159−163, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、従来から要請されてきた技術的課題を解決することを目的とする。具体的に、本発明の一実施例に係る目的は、栗皮抽出物を含む痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物、及び免疫抑制用化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的により、本発明に係る一実施例は、従来の痒み症治療剤が有する副作用を減らしつつも、優れた痒み症の抑制又は緩和の効果がある栗皮抽出物を有効成分として含む痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物に関する。
【0012】
本発明に係る一実施例は、栗皮抽出物を有効成分として含む皮膚障壁機能改善用化粧料組成物に関する。
本発明に係る一実施例は、栗皮抽出物を有効成分として含む免疫抑制用化粧料組成物に関する。
【0013】
本発明に係る一実施例は、栗皮抽出物を有効成分として含むアトピー性皮膚炎の改善又は治療用化粧料組成物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る化粧料組成物は、栗皮抽出物を有効成分として含むことにより、痒みの刺激源であるタンパク分解酵素活性受容体−2(Proteinase−Activated Receptor−2:PAR−2)の活性の抑制を通じて優れた痒み症の緩和又は抑制を発揮することができ、また栗皮抽出物の免疫抑制活性を通じて痒み症を誘発する原因になり得る免疫過敏性反応を根本的に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のPAR−2活性抑制効果(トリプシン処理)の測定結果を示したグラフである。
【図2】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のPAR−2活性抑制効果(SLIGKV処理)の測定結果を示したグラフである。
【図3】本発明の一実施例に係る、栗皮1,3−ブチレングリコール(BG)抽出物のPAR−2活性抑制効果(トリプシン、SLIGKV処理)の測定結果を示したグラフである。
【図4】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のTNF−α分泌減少効果を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のIL−6分泌減少効果を示したグラフである。
【図6】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のIL−1α分泌減少効果を示したグラフである。
【図7】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のIL−8分泌減少効果を示したグラフである。
【図8】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のGM−CSF分泌減少効果を示したグラフである。
【図9】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−6分泌減少効果を示したグラフである。
【図10】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−8分泌減少効果を示したグラフである。
【図11】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるGM−CSF分泌減少効果を示したグラフである。
【図12】本発明の一実施例に係る、栗皮抽出物のアトピー性皮膚炎患者に対する痒み症抑制効果を示したグラフである。
【図13】本発明の一実施例に係る、栗の内皮(渋皮)及び外皮(鬼皮)抽出物によるPAR−2活性抑制効果の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、栗皮抽出物を有効成分として含む痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物に関する。本出願の発明者らは、タンパク分解酵素活性受容体−2(PAR−2)を痒み症治療のターゲットとして、栗皮抽出物によるPAR−2の活性抑制の程度を測定した結果、後述する実施例において立証されたところのように、試験管内で優れたPAR−2拮抗作用を見せたことを確認し、また、アトピー性皮膚炎を病んでいる患者らに対して痒み抑制効果を示すことを確認した。
【0017】
前記痒み症は、掻痒症とも呼ばれ、このような痒み症の誘発原因又は形態は特に制限されないが、例えば、炎症性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、肌荒れによる皮膚炎、あせも、爛れ、凍傷、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬及び類乾癬からなる皮膚炎のうち一以上から誘発されるものであってよい。
【0018】
また、本発明は、栗皮抽出物を有効成分として含み、皮膚障壁機能改善効果を示す。これにより、皮膚障壁機能の低下によって発生する疾患又は痒みによって誘発された二次的な皮膚損傷を効果的に予防又は治療することができる。
【0019】
前記組成物は、例えば、アトピー性皮膚炎から由来する痒みによって発生した2次的な皮膚損傷に対し、皮膚障壁損傷の緩和又は皮膚障壁の回復力改善に有意な効果を示し、これを通じ、有意に皮膚障壁を改善させることができる。
【0020】
前記組成物は、特に、皮膚の保湿増進や皮膚の過角質化防止を通じて皮膚障壁を改善させることができ、後述する実施例を通じて立証されたところのように、本出願の発明者らは、無毛マウスにオキサゾロン(oxazolon)を処理したアレルギーモデルで実験を進行し、経皮水分損失量(transepidermal water loss、TEWL)と皮膚の厚さを測定した結果、栗皮抽出物が効果的な皮膚の保湿増進又は過角質化防止効果を示すことを確認した。
【0021】
さらに、本発明は、栗皮抽出物を有効成分として含む免疫抑制用化粧料組成物に関する。前記組成物は、例えば、アトピー、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)又はクローン病の治療のための組成物であってよく、その中でも、免疫過敏性反応であるアトピー疾患の予防又は治療のための組成物であってよい。
【0022】
アトピー疾患が皮膚の損傷等による急性段階から慢性疾患段階に発展するとき、免疫媒介物質の多様な分泌様相変化が観察されるが、アトピー疾患を患っている患者の損傷した皮膚において、多数のインターロイキンの濃度が増加することになる。また、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)は、アトピー性皮膚疾患患者の損傷した皮膚においてその分泌量が増加して、慢性炎症反応を引き起こすことが知られており、アトピー患者の免疫体系の不均衡を引き起こすようになる(Matsubara et al., FEBS Letters, 566, pp195−200, 2004)。
【0023】
これと関連し、本出願の発明者らは、栗皮抽出物が免疫過敏性反応と関連する腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1α(IL−1α)、インターロイキン−8(IL−8)又は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の発現を有意に減少させることができることを確認したところ、栗皮抽出物は、免疫抑制用化粧料組成物の有効成分に適する。
【0024】
特に、本発明は、栗皮抽出物を有効成分として含み、アトピー性皮膚炎の改善又は治療用化粧料組成物の有効成分に適する。
また、前記インターロイキン−6(IL−6)及びインターロイキン−8(IL−8)は、アトピー疾患において痒みを誘発する因子としても知られており、栗皮抽出物は、アトピー疾患由来の痒み症の予防及び治療のために効果的に使用され得る。
【0025】
前記栗皮は、栗の木の実を覆っている濃褐色の皮を意味し、本明細書において使用される栗皮抽出物は、栗の内皮(渋皮)、外皮及びこれらの混合物からなる群から選択された一以上の抽出物を意味するものであってよい。栗皮としては、栗の内皮(渋皮)を使用することができ、栗の外皮(鬼皮)が使用されてもよいが、特に、栗の外皮(鬼皮)抽出物を処理した群において優れたPAR−2拮抗作用を見せることを確認した。
【0026】
前記栗皮は、どのような種類の栗から由来する皮でも差し支えなく特に制限されないが、例えば、栗(Castanea crenata S. et Z., Castanea mollissima Bl., Castanea bulgaris)、 藥栗(Castanea Bungeana Bl)及び韓国グリ(Castanea crenata for. multicarpa(Uyeki)Chung)からなる群から選択された一以上の栗の皮であってよい。
【0027】
前記栗皮抽出物の抽出方法は特に制限されないが、例えば、水、炭素数1〜4の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール及びこれらの混合溶媒からなる群から選択された溶媒を通じて抽出されてよく、前記溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、ブタノール及びこれらの混合物からなる群から選択された一以上であってよく、好ましくは、前記栗皮抽出物は、10〜100%アルコール水溶液又は10〜100%1,3−ブチレングリコールから抽出されてよく、具体的に、栗皮20〜90%エタノール水溶液抽出物又は10〜70%1,3−ブチレングリコール抽出物であってよく、より具体的に、栗皮40〜90%エタノール水溶液抽出物又は10〜50%1,3−ブチレングリコール抽出物であってよく、さらに具体的に、栗皮60〜90%エタノール水溶液抽出物又は20〜40%1,3−ブチレングリコール抽出物であってよい。
【0028】
前記組成物に含まれる栗皮抽出物の含量は特に制限されないが、組成物の総重量を基準として0.005〜80重量%の含量で含まれてよく、好ましくは、0.01〜30重量%で含まれてよい。前記栗皮抽出物の含量が少なすぎると効果が微々たるものとなり、多すぎると剤形の安定度が低くなり得る。
【0029】
場合によって、痒み症の緩和又は抑制、及び免疫抑制のために栗皮抽出物と抗ヒスタミン、ステロイド、局所麻酔、免疫抑制剤のうち一又はそれ以上の物質との併用もまた可能である。
【0030】
従来、アトピー性皮膚炎及び痒み症緩和のための技術は、抗ヒスタミン剤の服用やステロイド製剤を外用剤として塗布するものであったが、これらの製剤の場合、一時的な治療効果を見せても直ちに再発するという短所を有しており、さらに、これら薬物を服用した場合、中枢神経障害、消化器障害などの副作用が報告されている。副腎皮質ホルモンであるステロイド製剤は、強力な消炎作用と免疫抑制作用で効果が優れているが副作用もまた深刻であり、免疫抑制剤であるタクロリムス水和物軟膏がアトピー性皮膚炎の治療に有効なものと報告されているが、皮膚癌を誘発したり、皮膚損傷部位に多量に体内吸収されたときには、腎臓障害を誘発するおそれがあり、安全性の側面において長期的使用が難しいというのが実情である。
【0031】
そこで、栗皮抽出物を有効成分として含む組成物と、抗ヒスタミン、ステロイド、局所麻酔、免疫抑制剤のうち一又はそれ以上を適切に併用する場合、痒み症の緩和又は抑制、及び免疫抑制等に副作用を伴うことなく、安全に大きな効果を示すことができる。
【0032】
前記化粧料組成物は、剤形は特に限定されず、目的に応じて化粧品の剤形を適宜選択してよい。例えば、柔軟化粧水(スキンローション及びミルクローション)、栄養化粧水、エッセンス、栄養クリーム、マッサージクリーム、パック、ゲル、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォータ、パウダー、ボディローション、ボディクリーム、ボディオイル、及びボディエッセンスからなる群から選択された一以上に剤形化することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0033】
前記有効成分の投与量の決定は、当業者の水準にあり、組成物の1日投与用量は、投与しようとする対象の進行程度、発病時期、年齢、健康状態、合併症等の多様な要因によって異なるが、成人を基準にすると、一般的には、前記組成物1〜500mg/kg、好ましくは30〜200mg/kgを1日1〜2回に分割して投与することができ、前記投与量は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳述するが、下記実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明のカテゴリがこれらにのみ限定されるものではない。
[実施例1]栗皮抽出物の製造
1−1)栗皮1,3−ブチレングリコール抽出物の製造
栗皮を、30%1,3−ブチレングリコール(1,3−buthylene glycol)を利用して、室温で3日間浸出させた。続いて、250メッシュ、3μm、1μm、0.5μmの大きさの濾過機で順次濾過した。その後、0〜4℃で3日間放置した後、0.5μm、0.3μm、0.2μmの大きさの濾過機で順次濾過し、栗皮1,3−ブチレングリコール抽出物を得た。
【0035】
1−2)栗皮エタノール抽出物の製造
栗皮を、70%エタノールを利用して、室温で3日間浸出させた。続いて、250メッシュ、3μm、1μm、0.5μm、0.3μm、0.2μmの大きさの濾過機で順次濾過した。その後、60℃で溶液を濃縮させた後、30℃で18時間真空乾燥を実施し、栗皮エタノール抽出物を粉末形態で得た。
【0036】
[試験例1]栗皮エタノール抽出物のPAR−2活性抑制効果(in vitro,トリプシン処理、HEK:ヒト表皮角化細胞)
実験一日前、角質形成細胞(細胞株名:HaCaT、入手先:ATCC)を96ウェルプレートに4×10cell/wellとなるように分株した後、37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した。24時間後、HBSS(Hanks’Balanced Salt solution)バッファーで96ウェルプレートを2回洗浄後、反応バッファー(2μM Fluo−4−AM, 20% pluronic acid, 2.5mM probenecid)を細胞に入れた。37℃、5%COインキュベーターで30分、室温で30分間反応させた後、HBSSバッファーで2回洗浄し、栗皮エタノール抽出物を細胞にそれぞれ1ppm、2ppm、5ppm、10ppm、20ppm、30ppm及び50ppmの濃度で処理した。10分間反応させた後、2U/mlトリプシンで処理し、80秒間、細胞内Ca2+濃度変化を測定した。細胞内Ca2+濃度変化の測定は、FlexStation3(Molecular Device,USA)を利用した。栗皮エタノール抽出物とトリプシン処理後、80秒間フレックス(flex)を測定して得られた値の最小値と最大値の差を求めた後、その値をトリプシン処理時の最小値と最大値の差と比較して抑制率を求めた。
【0037】
図1を参照すると、トリプシンによってPAR−2のN−末端でセリンシーケンスを切ってPAR−2が活性化されている場合、細胞内にカルシウムイオンが流入されるが、栗皮抽出物を処理した群の場合、PAR−2活性化が抑制されて、カルシウムイオンの流入が顕著に減少することを確認することができる。
【0038】
[試験例2]栗皮エタノール抽出物のPAR−2活性抑制効果(in vitro,SLIGKV処理、HEK:ヒト表皮角化細胞)
実験一日前、角質形成細胞(細胞株名:HaCaT、入手先:ATCC)を96ウェルプレートに4×10cell/wellとなるように分株した後、37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した。24時間後、HBSS(Hanks’Balanced Salt solution)バッファーで96ウェルプレートを2回洗浄後、反応バッファー(2μM Fluo−4−AM, 20% pluronic acid, 2.5mM probenecid)を細胞に入れた。37℃、5%COインキュベーターで30分、室温で30分間反応させた後、HBSSバッファーで2回洗浄し、栗皮エタノール抽出物を細胞にそれぞれ1ppm、2ppm、5ppm、10ppm、20ppm、30ppm及び50ppmの濃度で処理した。10分間反応させた後、5μM PAR−AP(SLIGKV)を処理し、80秒間、細胞内Ca2+濃度変化を測定した。細胞内Ca2+濃度変化の測定は、FlexStation3(Molecular Device,USA)を利用した。栗皮エタノール抽出物と5μM PAR−AP(SLIGKV)処理後、80秒間フレックス(flex)を測定して得られた値の最小値と最大値の差を求めた後、その値を5μM PAR−AP(SLIGKV)処理時の最小値と最大値の差と比較して抑制率を求めた。
【0039】
図2を参照すると、活性化ペプチドであるSLIGKV(Human)が直接的なリガンドとして作用してPAR−2が活性化されると、細胞内にカルシウムイオンが流入されるが、栗皮抽出物を処理した群の場合、PAR−2活性化が抑制されてカルシウムイオンの流入が顕著に減少することを確認することができる。
【0040】
[試験例3]栗皮1,3−ブチレングリコール(BG)抽出物のPAR−2活性抑制効果(in vitro,SLIGKV処理、HEK:ヒト表皮角化細胞)
実験一日前、角質形成細胞(細胞株名:HaCaT、入手先:ATCC)を96ウェルプレートに4×10cell/wellとなるように分株した後、37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した。24時間後、HBSS(Hanks’Balanced Salt solution)バッファーで96ウェルプレートを2回洗浄後、反応バッファー(2μM Fluo−4−AM, 20% pluronic acid, 2.5mM probenecid)を細胞に入れた。37℃、5%COインキュベーターで30分、室温で30分間反応させた後、HBSSバッファーで2回洗浄し、栗皮1,3−ブチレングリコール(BG)抽出物を細胞にそれぞれ0.1w/v%、0.5w/v%及び1w/v%の濃度で処理した。10分間反応させた後、2U/mlトリプシン又は5μM PAR−AP(SLIGKV)を処理し、80秒間、細胞内Ca2+濃度変化を測定した。細胞内Ca2+濃度変化の測定は、FlexStation3(Molecular Device,USA)を利用した。栗皮1,3−ブチレングリコール(BG)抽出物と2U/mlトリプシン又は5μM PAR−AP(SLIGKV)処理後、80秒間フレックス(flex)を測定して得られた値の最小値と最大値の差を求めた後、その値を2U/ml トリプシン又は5μM PAR−AP(SLIGKV)処理時の最小値と最大値の差と比較して抑制率を求めた。
【0041】
図3を参照すると、トリプシン又はPAR−2活性ペプチド(SLIGKV)による細胞内カルシウムイオンの流入が、栗皮抽出物の濃度が高くなるにつれて顕著に減少することを確認することができる。
【0042】
[試験例4]栗皮抽出物によるTNF−αの分泌減少
実験一日前、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、入手先:Lonza)を96ウェルプレートに5×10cell/wellとなるように分株した後、37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した。24時間後、PBSで細胞を2回洗い、セラムフリーKBM(keratinocyte basement media)に取り替えた。それぞれのウェルに栗皮を濃度別に処理し(10,25,50ppm)、30分間反応させた後、PGSA(10,50ppm)、LPS(1ppm)をそれぞれ処理した。24時間、37℃、5%COインキュベーターで培養した後、培養液を取ってTNF−αに対するELISAを行った。ELISAは、製造会社(BD science)の実験方法を利用した。
【0043】
図4を参照すると、栗皮がPGSAとLPSにより増加したTNF−αの分泌を著しく減少させることを観察することができる。
[試験例5]栗皮抽出物によるIL−6の分泌減少
IL−6に対するELISAを行ったことを除けば、試験例4と実質的に同じ方法を利用した。
【0044】
図5を参照すると、栗皮がPGSAとLPSによって増加したIL−6の分泌を懸隔に抑制させることを観察することができる。
[試験例6]栗皮抽出物によるIL−1αの分泌減少
IL−1αに対するELISAを行ったことを除けば、試験例4と実質的に同じ方法を利用した。
【0045】
図6を参照すると、栗皮がPGSAとLPSによって増加したIL−1αの分泌量を濃度に応じて減少させることを観察することができる。
[試験例7]栗皮抽出物によるIL−8の分泌減少
IL−8に対するELISAを行ったことを除けば、試験例4と実質的に同じ方法を利用した。
【0046】
図7を参照すると、栗皮がPGSAとLPSによって増加したIL−8の分泌を著しく減少させることを観察することができる。
[試験例8]栗皮抽出物によるGM−CSFの分泌減少
GM−CSFに対するELISAを行ったことを除けば、試験例4と実質的に同じ方法を利用した。
【0047】
図8を参照すると、栗皮の濃度が増加するにつれて、PGSAとLPSによって分泌されるGM−CSFの量が減少することを観察することができる。
[試験例9]栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−6の分泌抑制効果
実験一日前、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、入手先:Lonza)を96ウェルプレートに5×10cell/wellとなるように分株した後、37℃、5%COインキュベーターで24時間培養した。24時間後、PBSで細胞を2回洗い、セラムフリーKBMに取り替えた。それぞれのウェルに栗皮抽出物を濃度別に処理し(10,50ppm)、30分間反応させた後、トリプシン(10nM)又はPAR−2活性化ペプチド(SLIGKV,50μM)をそれぞれ処理した。24時間、37℃、5%COインキュベーターで培養した後、培養液を取ってIL−6に対するELISAを行った。ELISAは、製造会社(BD science)の実験方法を利用した。
【0048】
図9を参照すると、栗皮抽出物がトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−6の分泌を濃度依存的に抑制することを観察することができる。
[試験例10]栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−8の分泌抑制効果
IL−8に対するELISAを行ったことを除けば、試験例9と実質的に同じ方法を利用した。
【0049】
図10を参照すると、栗皮抽出物がトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるIL−8の分泌を濃度依存的に抑制することを観察することができる。
[試験例11]栗皮抽出物のトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるGM−CSFの分泌抑制効果
GM−CSFに対するELISAを行ったことを除けば、試験例9と実質的に同じ方法を利用した。
【0050】
図11を参照すると、栗皮抽出物がトリプシンと活性ペプチド(SLIGKV)によるGM−CSFの分泌を濃度依存的に抑制することを観察することができる。
[試験例12]アトピー性皮膚炎患者に対する栗皮抽出物の痒み症抑制効果
約2週間、10人のアトピー性皮膚炎患者を対象として栗皮抽出物(0.3%固形分濃度)を痒い部位に集中的に使用させた後、使用前と使用後の痒み程度を7点尺度のアンケート用紙にて測定し、痒み緩和効果を確認した。
【0051】
図12を参照すると、栗皮抽出物を2週間使用させた後、痒み程度が1点ずつ低くなったことを観察することができた。
[試験例13]栗皮エタノール抽出物の皮膚保湿効果測定
約2週間、10人のアトピー性皮膚炎患者を対象として栗皮抽出物(0.3%固形分濃度)を痒い部位に集中的に使用させた後、使用前と使用後の皮膚の潤い程度を7点尺度のアンケート用紙にて測定し、皮膚保湿効果を確認した。10人の点数を確認した結果、平均6点であって、抽出物の塗布後に皮膚に潤いがあると応答し、優れた皮膚保湿効果を示すことを観察することができた。
【0052】
[試験例14]栗の外皮エタノール抽出物と栗の内皮エタノール抽出物のPAR−2活性抑制効果の比較(in vitro,SLIGKV処理、HEK:ヒト表皮角化細胞)
栗の外皮と内皮を分離して乾燥した後、実施例1−2)と同じ方法で栗の外皮抽出物を製造し、栗の内皮抽出物もまた、実施例1−2)と同じ方法で製造した。試験例2と同じ方法を使用して、栗の外皮エタノール抽出物と栗の内皮エタノール抽出物のPAR−2活性抑制効果を測定し、下記のテーブル6及び図13に示した。
【0053】
【表1】

[試験例15]栗の外皮エタノール抽出物と栗の内皮エタノール抽出物のPAR−2の活性抑制効果の比較(in vitro,SLIGKV処理、HEK:ヒト表皮角化細胞)
栗の外皮(鬼皮)と内皮(渋皮)抽出物の濃度を、下記テーブル7に示すように処理したことを除けば、試験例14と同じ方法で、PAR−2活性抑制効果を測定した。
【0054】
【表2】

以下では、本発明に係る組成物の剤形例を説明するが、化粧料組成物は様々な剤形に応用可能であり、このことは、本発明を限定しようとするものではなく、単に具体的に説明しようとするものである。
【0055】
[剤形例1]柔軟化粧水(スキンローション)
下記テーブル1に記載された組成により、通常的な方法で柔軟化粧水を製造した。
【0056】
【表3】

[剤形例2]栄養化粧水(ミルクローション)
下記テーブル2に記載された組成により、通常的な方法で栄養化粧水を製造した。
【0057】
【表4】

[剤形例3]栄養クリーム
下記テーブル3に記載された組成により、通常的な方法で栄養クリームを製造した。
【0058】
【表5】

[剤形例4]マッサージクリーム
下記テーブル4に記載された組成により、通常的な方法でマッサージクリームを製造した。
【0059】
【表6】

[剤形例5]パック
下記テーブル5に記載された組成により、通常的な方法でパックを製造した。
【0060】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
栗皮抽出物を有効成分として含む、痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物。
【請求項2】
前記組成物は、炎症性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、肌荒れによる皮膚炎、あせも、爛れ、凍傷、接触性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬及び類乾癬からなる皮膚炎のいずれか一以上から誘発される痒み症を緩和若しくは抑制する、請求項1記載の痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物。
【請求項3】
前記組成物は、アトピー性皮膚炎から誘発される痒み症を緩和若しくは抑制する、請求項1記載の痒み症の緩和若しくは抑制用化粧料組成物。
【請求項4】
栗皮抽出物を有効成分として含む、皮膚障壁機能改善用化粧料組成物。
【請求項5】
前記組成物は、アトピー性皮膚炎から由来する皮膚障壁損傷の緩和若しくは皮膚障壁の回復力改善のためのものである、請求項4記載の皮膚障壁改善用化粧料組成物。
【請求項6】
前記組成物は、皮膚保湿増進又は皮膚過角質化防止のためのものである、請求項4記載の皮膚障壁改善用化粧料組成物。
【請求項7】
栗皮抽出物を有効成分として含む免疫抑制用化粧料組成物。
【請求項8】
前記組成物は、アトピー疾患の予防又は治療のためのものである、請求項7記載の免疫抑制用化粧料組成物。
【請求項9】
前記組成物は、アトピーの治療のためのものである、請求項7記載の免疫抑制用化粧料組成物。
【請求項10】
栗皮抽出物を有効成分として含む、アトピー性皮膚炎の改善若しくは治療用化粧料組成物。
【請求項11】
前記栗皮抽出物は、組成物の総重量を基準として0.005〜80重量%の含量で含まれる、請求項1〜10のいずれか一項記載の化粧料組成物。
【請求項12】
前記栗皮は、栗の内皮、外皮及びこれらの混合物からなる群から選択された一以上である、請求項1〜10のいずれか一項記載の化粧料組成物。
【請求項13】
前記栗皮は、栗の外皮(鬼皮)である、請求項12記載の化粧料組成物。
【請求項14】
前記栗皮抽出物は、水、炭素数1〜4の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール及びこれらの混合溶媒から選択された一以上の溶媒を通じて抽出されたものである、請求項1〜10のいずれか一項記載の化粧料組成物。
【請求項15】
前記栗皮抽出物は、水、メタノール、エタノール、ブタノール、1,3−ブチレングリコール及びこれらの混合物からなる群から選択された溶媒を通じて抽出されたものであり、請求項14記載の化粧料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−530700(P2012−530700A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515998(P2012−515998)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003984
【国際公開番号】WO2010/147441
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】