説明

棒状物品の直径測定システム及びその測定方法

【課題】移送経路上を移送される棒状物品のサンプリングから、その直径の測定を経て測定後の棒状物品を移送経路に戻すまでの一連のプロセスを迅速に行うことができる棒状物品の直径測定システム及びその測定方法を提供する。
【解決手段】フィルタロッドのための直径測定システムは、フィルタロッドFの移送コンベア2からサンプリング位置にて取出したフィルタロッドFを受渡し位置に移動する取出しヘッド10と、取出しヘッド10との間にてフィルタロッドFの受渡しをなし、受取ったフィルタロッドFを測定位置に移動させる受渡しヘッド12と、測定位置にて、フィルタロッドFがその軸線回りに回転されるとき、フィルタロッドFの直径をその全周に亘り、連続して測定する測定ヘッド24とを備え、取出しヘッド10はサンプリング位置と受渡し位置との間で往復動し、受渡し位置は受渡し位置と測定位置との間で往復動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフィルタシガレットの製造に使用されるフィルタロッド等の棒状物品の品質検査をなすために、棒状物品をサンプリングし、その直径を測定するシステム及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタロッドの品質を検査するシステムは、フィルタロッドを製造するフィルタ巻上機からフィルタロッドをサンプリングするサンプリング装置と、このサンプリング装置に風送管及び受取部を介して接続された品質測定装置とを備え、品質測定装置はサンプリングしたフィルタロッドの円周長(直径)や真円性等の品質を測定し、その測定結果を品質情報として出力する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5-49464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1のシステムの品質測定装置は、複数のフィルタ巻上機にてサンプリングしたフィルタロッドの品質測定に共用されている。それ故、1つのフィルタ巻上機からサンプリングしたフィルタロッドの品質測定が品質測定装置にて実際に実施されるまでに長い時間を要し、品質測定の結果を前記フィルタ巻上機に速やかに反映させることができない。
【0004】
また、品質測定装置は複数のフィルタ巻上機にそれぞれ受取部及び風送管を介して接続されているため、システム全体が大掛かりなものとなり、このようなシステムの導入は容易ではない。
更に、特許文献1のシステムの場合、サンプリングしたフィルタロッドは良品であっても廃棄処分されるため、フィルタロッドの歩留まりを悪化させる大きな要因となっている。
【0005】
本発明は上述の事情に基づいてされたもので、その目的とするところは、設置に大きなスペースを必要とせず、品質管理対象の1つとして棒状物品の直径を速やかに測定でき、しかも、棒状物品の歩留まり向上にも大きく貢献する棒状物品の直径測定システム及びその測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の棒状物品の直径測定システムは、棒状物品を横向きにして移送する移送経路の上方に設けられ、この移送経路に対するサンプリング位置にて移送経路から1本の棒状物品を解放可能に取出し、取出した棒状物品を保持した状態でサンプリング位置と測定位置との間にて往復移送する取出し装置と、測定位置にて、取出し装置により保持された前記棒状物品の直径をその全周に亘って連続的に測定する測定装置とを備える(請求項1)。
【0007】
請求項1の直径測定システムによれば、移送経路のサンプリング位置から取出し装置によって取出された1本の棒状物品は、サンプリング位置から測定位置に移送される。そして、測定位置にて、棒状物品の直径がその全周に亘って測定装置により測定された後、取出し装置と共に測定位置からサンプリング位置に戻され、このサンプリング位置にて取出し装置から解放され、移送経路に戻される。
【0008】
好ましくは、取出し装置は、サンプリング位置にて昇降し、移送経路から棒状物品を取出す取出しヘッドと、取出しヘッドとの間にて棒状物品の受渡しをなし、棒状物品を測定位置に供給する受渡しヘッドとを含み、取出しヘッドと受渡しヘッドとの間での棒状物品の受渡しが記サンプリング位置と測定位置との間に規定された受渡し位置にてなされ、取出しヘッド及び受渡しヘッドはサンプリング位置と受渡し位置との間及び受渡し位置と測定位置との間のそれぞれに往復動可能となっている(請求項2)。この場合、取出しヘッド及び受渡しヘッドは互い協働し、サンプリング位置と測定位置との間にて棒状物品を往復的に移送する。
【0009】
より具体的には、取出しヘッドは、回転軸線と、この回転軸線と直交する平面内を延び、棒状物品を吸引圧により吸着可能な吸着溝とを有し、回転軸線の回りに回転されることにより、吸着溝が下方を向いた水平姿勢と吸着溝が受渡し位置側を向いた鉛直姿勢との間にて姿勢変更可能である(請求項3)。
この場合、取出しヘッドは移送経路の上方のサンプリング位置にて、その吸着溝が下方を向いた水平姿勢をとる。この後、取出しヘッドは下降し、その吸着溝に移送経路から棒状物品を吸着して上昇し、これにより、棒状物品の取出しがなされる。この後、取出しヘッドはその回転軸線の回りに回転され、吸着溝が受渡し位置側を向いた鉛直姿勢に変更される。それ故、取出しヘッドがサンプリング位置から受渡し位置に移動したとき、受渡し位置にて、取出しヘッドの棒状物品は受渡しヘッド側を向いた鉛直姿勢となる。
【0010】
一方、受渡しヘッドは、棒状物品を吸引圧により吸着可能な鉛直姿勢の吸着溝を有し、この吸着溝は棒状物品の一部にて、その全周を露出させた状態で、棒状物品を吸着するのが好ましい(請求項4)。
この場合、受渡しヘッドがその吸着溝を受渡し位置側に向けた状態で、受渡し位置まで移動されたとき、受渡し位置にて、取出しヘッド及び受渡しヘッドの吸着溝は互いに向き合うことになり、取出しヘッドから受渡しヘッドへの棒状物品の受渡しがなされる。ここでの受渡しにて、棒状物品は受渡しヘッドの吸着溝に吸着して保持されるが、棒状物品の一部はその全周が露出した状態にある。
【0011】
更に、前述した取出しヘッドの吸着溝は、棒状物品の移送方向でみて下流側の開口縁が上流側の開口縁よりも突出した形状を有しているのが好ましい(請求項5)。この場合、取出しヘッドの吸着溝に棒状物品を吸着する際、吸着溝における下流側の開口縁は移送経路上での棒状物品の移送を阻害する障壁となって、吸着溝内に棒状物品を導くガイドとして機能する。
【0012】
それ故、取出しヘッドの吸着溝が上述の形状を有している場合、取出しヘッド及び受渡しヘッドが受渡し位置に向かう方向は互いに所定の角度を存して交差しているのが好ましい(請求項6)。この場合、受渡し位置にて、両ヘッドの吸着溝は干渉を避けて、互いに対しての近接が許容される。
更にまた、取出し装置は、取出しヘッド及び受渡しヘッドとの間にて棒状物品の受渡しがなされる際、棒状物品を渡す側の一方のヘッドの吸着溝に吸引圧に代えて圧縮空気を供給する切換え手段を更に含むことができる(請求項7)。この場合、棒状物品の受渡し時、一方のヘッドの吸着溝に供給される空気は、その吸着溝に残存する吸着力を打ち消す一方、棒状物品を受取る側の他方のヘッドの吸着溝の吸着力を補助する。
【0013】
本発明は棒状物品の直径測定方法をも提供し、この直径測定方法は、棒状物品を横向き状態で移送する移送経路から取出しヘッドにより1本の棒状物品を取出し、この後、取出した棒状物品を取出しヘッドと共に受渡し位置に移送し、この受渡し位置にて取出しヘッドから受渡しヘッドへの棒状物品の受渡しをなし、この後、受渡しヘッドに受取った棒状物品を受渡しヘッドと共に測定位置に移送し、この測定位置にて棒状物品の直径をその全周に亘って測定し、測定後、棒状物品を受渡しヘッドから取出しヘッドを経て移送経路に戻す各工程を備え(請求項8)、前述した請求項2のシステムと同様な作用を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜8の棒状物品の直径測定システム及びその測定方法は、移送経路に対する棒状物品の取出し動作から棒状物品の直径測定を経て、移送経路への棒状物品の戻し動作に至る一連の動作を連続して実施するから、棒状物品の直径測定を迅速に行え、その測定結果を移送経路の上流側、即ち、棒状物品の製造機に速やかに反映させることができる。
また、本発明のシステムは移送経路の上方のサンプリング位置と移送経路近傍の測定位置との間にて取出し装置を往復移動させるだけであるから、システムの設置に大きなスペースが要求されることはなく、しかも、測定後の棒状物品が移送経路に戻されることから、棒状物品の歩留まりを悪化させるようなこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の棒状物品の直径測定方法を実施する一実施例の測定システムの概略を示す。
一実施例の測定システムは、例えば棒状物品としてフィルタロッドを製造するロッド製造機に適用され、その製造直後にて、フィルタロッドの直径を測定する。ここで、フィルタロッドはフィルタシガレットの製造に使用され、所定の長さ毎に切断されて、フィルタシガレットのためのフィルタプラグを形成する。
【0016】
図1に示されているようにロッド製造機は移送経路としての移送コンベア2を備え、この移送コンベア2は製造されたフィルタロッドFを横向き状態で移送する。なお、図1の移送コンベア2上にはフィルタロッドFが1本しか図示されていないが、実際、移送コンベア2上のフィルタロッドFは積層状態にあり、この積層状態で箱詰め機に向けて移送される。
【0017】
一実施例の測定システム4は大きく分けて取出し装置6及び測定装置8を含み、取出し装置6は移送コンベア2の上方から側方に亘る領域に配置され、そして、測定装置8は移送コンベア2の側方に規定された測定位置に配置されている。
より詳しくは、取出し装置6は、取出しヘッド10及び受渡しヘッド12を含み、これらヘッド10,12は移送コンベア2の側方に互いに離間している。図1に示す状態にあるとき、取出しヘッド10は移送コンベア2の上方位置、即ち、サンプリング位置にあり、これに対し、受渡しヘッド12は測定位置にある。
【0018】
取出しヘッド10は回転軸14を介して昇降ブロック16に支持され、この昇降ブロック16は回転軸14を正逆回転させるモータ(図示しない)を内蔵している。それ故、モータが駆動されたとき、取出しヘッド10は回転軸14、即ち、その回転軸線の回りに例えば90°だけ正逆回転可能である。また、昇降ブロック16は昇降シリンダ18に支持され、この昇降シリンダ18の伸縮動作を受け、取出しヘッド10の上下に移動させることができる。
【0019】
更に、取出しヘッド10は吸着溝からなる取出し溝20を備え、この取出し溝20は回転軸14、即ち、移送コンベア2を横断する平面内を延びている。図1に示す状態にあるとき、取出し溝20は前述した受渡しヘッド12側を向いた鉛直姿勢にあるが、昇降ブロック16内のモータにより、下方、即ち、移送コンベア2側を向いた水平姿勢に姿勢変更可能である。
【0020】
それ故、取出し溝20が水平姿勢にある状態で、取出しヘッド10が移送コンベア2に向けて所定の距離だけ下降されれば、取出し溝20は移送コンベア2上を積層状態にして移送されているフィルタロッドFの流れに近接し、最上層を流れる1つのフィルタロッドFを水平に受入れて吸着する。この後、取出しヘッド10はサンプリング位置まで上昇し、そして、90°回転されることで、取出し溝20は図1に示す鉛直姿勢となる。従って、このとき、取出し溝20に吸着されたフィルタロッドFもまた受渡しヘッド12側を向いた鉛直姿勢となる。
【0021】
更に、上述した昇降シリンダ18は移送コンベア2を横断する前後方向に移動可能であって、昇降ブロック16と共に取出しヘッド10をサンプリング位置と受渡し位置との間にて往復動させることができる。この受渡し位置は、サンプリング位置と前述の測定位置との間に規定されている。
一方、受渡しヘッド12もまた移送コンベア2を横断する前後方向に移動可能であって、測定位置と受渡し位置との間にて往復動可能である。また、受渡しヘッド12は受渡し位置側を向いた受渡し溝22を有し、この受渡し溝22は取出し溝20と同様に吸着溝からなり、鉛直方向に延びている。即ち、受渡し溝22は鉛直姿勢となっている。
【0022】
従って、フィルタロッドFを鉛直姿勢にして吸着保持した取出しヘッド10が受渡し位置に移動される同時に、受渡しヘッド12もまた受渡し位置に移動されたとき、両ヘッド10,12の取出し溝20及び受渡し溝22は近接して向かい合い、取出し溝20から受渡し溝22へのフィルタロッドFの受渡し、即ち、乗り移りが可能となり、フィルタロッドFは受渡し溝22に吸着して保持される。
【0023】
ここで、受渡し溝22にフィルタロッドFが保持されたとき、フィルタロッドFの下端部は受渡し溝22、即ち、受渡しヘッド12から下方に突出し、その外面は全周に亘って露出した状態にある。
この後、取出しヘッド10は受渡し位置にて待機し、一方、フィルタロッドFを受取った受渡しヘッド12は受渡し位置から移動し、測定位置に戻る。この際、フィルタロッドFの下端部は測定装置8内に位置付けられ、この測定装置8にて、フィルタロッドFの直径はその全周に亘り、連続的に測定される。
【0024】
即ち、図1に示されるように測定装置8は測定ヘッド24を備え、この測定ヘッド24は、受渡しヘッド12が測定位置にあるとき、この受渡しヘッド12の下方に位置付けられるべく水平に配置されている。測定ヘッド24は開口部26を有し、この開口部26は受渡し位置側に向けて開口し、これにより、受渡しヘッド12がフィルタロッドFと共に測定位置に位置付けられたとき、フィルタロッドFの前述した下端部を受入れ可能である。
【0025】
一方、測定ヘッド24はその開口部26を挟んで発光部28及び受光部30を有し、発光部28は受光部30に向けて検出ビームを水平に出射する。ここで、検出ビームはフィルタロッドFの直径よりも充分に広い水平方向幅を有し、フィルタロッドFが測定位置に供給されたとき、即ち、フィルタロッドFの下端部が開口部26内にあるとき、フィルタロッドFの下端部は検出ビームの水平方向幅内に完全に位置付けられる。
【0026】
従って、フィルタロッドFの下端部はその直径に相当する分だけ検出ビームを遮蔽することから、受光部30は検出ビームの遮蔽部分を検出することで、フィルタロッドFの直径を測定することができる。
更に、測定装置8は、測定位置にあるフィルタロッドFをその軸線回りに回転させる回転機構32を備え、この回転機構32は受渡しヘッド12のヘッドサポート(図1では省略)に取付けられている。
【0027】
具体的には、回転機構32は、受渡しヘッド12における受渡し溝22の軸線上に配置された自転軸34を含み、この自転軸34はその上端に従動プーリ36を有すると共に、リンク38を介して受渡しヘッド12に連結されている。一方、受渡しヘッド12の近傍にはモータ40が配置され、このモータ40の出力軸に取付けた駆動プーリ42が無端状のベルト44を介して従動プーリ36に接続されている。
【0028】
従って、モータ40が駆動されたとき、モータ40の回転力は駆動プーリ42を介して自転軸34に伝達され、自転軸34を一方向に回転させる。自転軸34の回転はリンク38を介して受渡しヘッド12に伝達され、受渡しヘッド12は自転軸34を中心にして回転し、この結果、受渡し溝22に保持されたフィルタロッドFはその軸線回りに回転する。
【0029】
このようにしてフィルタロッドFが自転されれば、前述した測定ヘッド24はフィルタロッドFの直径をその全周に亘り連続して測定し、これにより、フィルタロッドFの平均直径及び平均円周長を算出し、この算出結果を前述したロッド製造機に出力する。
なお、ロッド製造機は、測定ヘッド24からの算出結果に基づき、製造すべきフィルタロッドFの直径を調整する調整機構を必要に応じて作動させ、フィルタロッドFの直径を許容範囲内に維持する。
【0030】
フィルタロッドFに対する測定が完了した後、受渡しヘッド12はフィルタロッドFと共に受渡し位置に移動し、この受渡し位置にて、前述した場合とは逆に受渡しヘッド12から取出しヘッド10にフィルタロッドFの受渡しがなされる。そして、フィルタロッドFを受取った取出しヘッド10は受渡し位置からサンプリング位置に移動し、このサンプリング位置にて90°回転してフィルタロッドFの姿勢を鉛直姿勢から水平姿勢に変更し、この状態で、移送コンベア2に向けて所定距離だけ下降して、その取出し溝20によるフィルタロッドFの吸着を解除し、取出しヘッド10から移送コンベア2にフィルタロッドFを戻す。
【0031】
この後、上述した測定システム4は移送コンベア2に対して、フィルタロッドFの取出しから測定を経て、その戻しをなす一連の測定プロセスを周期的に繰り返す。
次に、測定システム4の各構成要素について具体的に説明する。
先ず、図2、前述した移送コンベア2に対する測定システム4の具体的なレイアウトを示し、図2には、サンプリング位置と受渡し位置との間にて取出しヘッド10を往復動させる進退シリンダ46、そして、測定位置と受渡し位置との間にて受渡しヘッド12、つまり、そのヘッドサポート48を進退させる進退シリンダ50もまた併せて示されている。
【0032】
また、図2は、進退シリンダ46による取出しヘッド10の往復動方向Xと進退シリンダ50による受渡しヘッド12の往復動方向Yとが所定の角度を存して互いに交差することを明瞭に示している。
図3は取出しヘッド10をより詳細に示す。
取出しヘッド10は矩形の板状をなし、図3(a)でみて、その上部には挿通孔52が形成されている。この挿通孔52には前述した回転軸14が挿通され、この回転軸14は螺子孔54内にねじ込まれる止め螺子(図示しない)を介して取出しヘッド10に固定される。従って、取出しヘッド10は回転軸14に一体的に回転され、この回転軸14を介して昇降ブロック16に支持される。
【0033】
また、図3(a)でみて取出しヘッド10の下端面には前述した取出し溝20が形成され、この取出し溝20は断面でみて略半円形状をなし、フィルタロッドFの移送方向でみて上流側及び下流流側の開口縁56,58をそれぞれ有する。取出し溝20の底から下流側の開口縁58までの距離は上流側の開口縁56での場合よりも長く、また、フィルタロッドFの半径よりも所定の長さだけ長い。
【0034】
より詳しくは、下流側の開口縁58は、取出しヘッド10の下端面に残された端縁60と、この端縁60から突出する突出シート62の下縁64とから構成されており、突出シート62はフィルタロッドFの移送方向でみて、取出しヘッド10の背面に複数の取付け螺子(図示しない)を介して取付けられている。なお、図3(a)中、参照符号66は取付け螺子のための螺子孔を示す。
【0035】
一方、上流側の開口縁56は、取出しヘッド10の下端面に残された端縁を傾斜面として切欠いて形成され、取出し溝20と協働して下方に突出する山形形状をなしている。
更に、図3(b)から明らかなように取出しヘッド10内には吸引・ブロー通路68が形成されている。この吸引・ブロー通路68は取出し溝20と平行に延び、取出しヘッド10の一側面にて開口し、後述する空圧回路に接続されている。また、吸引・ブロー通路68からは複数の分岐通路70が分岐され、これら分岐通路70はと取出し溝20の底にて開口し、吸引・ブロー口をそれぞれ形成している。
【0036】
更に、前述した突出シート62は前述の取付螺子を挿通させる複数の挿通孔72を有しているが、これら挿通孔72は図3(c)から明らかなように長孔として形成されているのが好ましい。この場合、前述した端縁60からの突出シート62の下縁64の突出量、即ち、上流側の開口縁56に対する下流側の開口縁58の突出量を調整することができる。
【0037】
図4は、前述した測定装置8の構成をより具体的に示す。
受渡しヘッド12が測定位置にあるとき、ヘッドサポート48は測定ヘッド24の上方に配置され、進退シリンダ50により支持されている。回転機構32の自転軸34はヘッドサポート48の一端部を上下方向に貫通し、上下一対の軸受74を介してヘッドサポート48に回転自在に支持されている。
【0038】
なお、モータ40はヘッドサポート48の他端部に固定され、そして、進退シリンダ50及び測定ヘッド24のそれぞれは取付け台76,78を介して測定システム4の基台80に支持されている。
図4から明らかなように、自転軸34はヘッドサポート48から下方に突出し、その下端に偏心ディスク82が取付けられて、この偏心ディスク82に偏心ピン84を介して受渡しヘッド12が取付けられている。即ち、前述した回転機構32のリンク38は偏心ディスク82及び偏心ピン84から構成されている。
【0039】
図5は受渡しヘッド12の詳細を示す。
受渡しヘッド12は略角柱形状をなし、その上端から他端に向けて延びる孔を有する。この孔の上部は前述した偏心ピン84を受入れる装着孔86として形成され、そして、その下部は吸引・ブロー通路88として形成されている。また、受渡しヘッド12の上部には受渡しヘッド12に対して偏心ピン84を固定する止め螺子(図示しない)のための螺子孔90が上下に形成されている。一方、吸引・ブロー通路88から複数の分岐通路92が延び、これら分岐通路92は受渡し溝22の底に開口し、吸引・ブロー口をそれぞれ形成している。
【0040】
図5から明らかなように、受渡し溝22は受渡しヘッド12の一側面から突出した凸部94の先端面に形成され、断面でみて略半円形状をなしている。また、フィルタロッドFの移送方向でみて、受渡し溝22の下流側及び上流側の開口縁96,98を比べたとき、受渡し溝22の底から一方の開口縁96までの距離は他方の開口縁98での場合よりも長い。
【0041】
一方、前述した吸引・ブロー通路88は偏心ピン84、偏心ディスク82、自転軸34及びヘッドサポート48内を延びる内部通路(図示しない)を介して前述した空圧回路に接続されている。このような内部通路は受渡しヘッド12の回転に拘わらず、吸引・ブロー通路88と空圧回路との間の接続を常時確立する。
図6は空圧回路の詳細を示す。
【0042】
空圧回路は負圧源100を備え、この負圧源100からメイン吸引経路102が延び、このメイン吸引経路102から2本のサブ吸引経路104,106が分岐されている。一方のサブ吸引経路104は電磁制御弁108の1つの入力ポートRに接続され、この電磁制御弁108の出力ポートAは吸引・ブロー経路110を介して取出しヘッド10の吸引・ブロー通路68に接続されている。なお、吸引・ブロー経路110にはエアフィルタ112が介挿されている。
【0043】
また、他方のサブ吸引経路106は電磁制御弁114の1つの入力ポートRに接続され、この電磁制御弁114の出力ポートAは吸引・ブロー経路116を介して受渡しヘッド12の吸引・ブロー通路88に接続されている。吸引・ブロー経路116は前述の内部通路を含み、そして、吸引・ブロー経路116にもその途中にエアフィルタ118が介挿されている。
【0044】
図6から明らかなように電磁制御弁108,114は何れも3ポート2位置に方向切換弁であって、その残りの入力ポートPからは圧空経路120,122が延び、これら圧空経路120,122は圧空源にそれぞれ接続されている。圧空経路120には電磁制御弁108側から可変絞り124及び逆止弁付きの電磁開閉弁126順次介挿され、また、圧空経路122にもその電磁開閉弁114側から可変絞り128及び逆止弁付きの電磁開閉弁130が順次介挿されている。
【0045】
電磁制御弁108が図示の休止位置にあるとき、電磁制御弁108はサブ吸引経路104と吸引・ブロー経路110との間の接続を遮断する一方、吸引・ブロー経路110を圧空経路120に接続している。この状態で、電磁開閉弁126が図示の閉位置から開位置に切換えられると、圧空源から電磁開閉弁126、可変絞り124及び電磁制御弁108を通じて取出しヘッド10の吸引・ブロー通路68に圧縮空気が供給され、吸引・ブロー通路68内の圧縮空気は取出し溝20の吸引・ブロー口から噴出される。なお、ここでの圧縮空気の圧力は可変絞り124により所定圧に調整されている。
【0046】
また、同様に、電磁制御弁114が図示の休止位置にあるとき、電磁制御弁114はサブ吸引経路106と吸引・ブロー経路110の間の接続を遮断する一方、吸引・ブロー経路116を圧空経路122に接続する。それ故、この状態で、電磁開閉弁130が開位置に切り換えられると、この場合、可変絞り128により調圧された圧縮空気が吸引・ブロー経路116を介して受渡しヘッド12の吸引・ブロー通路88に供給され、吸引・ブロー通路88内の圧縮空気は受渡し溝22の吸引・ブロー口から噴出される。
【0047】
これに対し、電磁開閉弁126,130が共に図示の閉位置にあって、電磁制御弁108,114が図示の休止位置から吸引位置に切換えられると、負圧源100は吸引・ブロー経路110,116を通じて取出しヘッド10及び受渡しヘッド12の吸引・ブロー通路68,88内の空気を吸引し、これにより、取出しヘッド10の取出し溝20及び受渡しヘッド12の受渡し溝22に吸引圧が供給され、取出し溝20及び受渡し溝22は吸引力を発生する。
【0048】
従って、取出し溝20及び受渡し溝22には吸引圧及び圧縮空気の一方を選択的に切換えて供給することができ、電磁制御弁108,114及び電磁開閉弁126,130は吸引圧と圧縮空気との間での切換えをなす切換え手段を構成する。
更に、吸引・ブロー経路110,116には圧力センサ132,134がそれぞれ接続されており、これら圧力センサ132,134は前述の吸引力、即ち、吸引・ブロー通路68,88内の吸引圧が所定値に達したとき、オン信号を出力する。
【0049】
次に、本実施例の測定システム4が備える利点について更に詳述する。
図7は、移送コンベア2上を移送されるフィルタロッドFの積層流れから、その最上層の1本のフィルタロッドFが取出しヘッド10の取出し溝20に吸着された直後の状態を示す。なお、このとき、取出しヘッド10側の電磁制御弁108は吸引位置に切換えられており、取出し溝20に吸引圧が供給されていることは言うまでもない。
【0050】
前述したように取出し溝20の下流側の開口縁58は上流側の開口縁56に比べて、下方に大きく突出していることから、取出しヘッド10が移送コンベア2に向けて所定位置まで下降されると、先ず、開口縁58がフィルタロッドFの積層流れに到達し、下流側の開口縁58は最上層にあるフィルタロッドFの流れを堰き止める機能を発揮する。それ故、堰き止められたフィルタロッドFは取出し溝20からの吸引圧を受けることで、取出し溝20内に向かうように導かれ、取出し溝20に確実に吸着される。
【0051】
なお、ここでのフィルタロッドFの吸着は圧力センサ132にて検出することができ、この圧力センサ132からのオン信号を受け、取出しヘッド10は吸着したフィルタロッドFと共に上昇する。
また、取出し溝20における上流側の開口縁56は前述したように山形をなしていることから、フィルタロッドFは取出し溝20に正確に填り込むことができる。この点、図8に示されるように上流側の開口縁56aが平坦縁に形成されていると、取出し溝20にその軸線からずれた状態でフィルタロッドFが吸着されてしまうことがあるが、このような不具合は本実施例の開口縁56により確実に防止される。
【0052】
一方、図9は、受渡し位置にて、取出しヘッド10の取出し溝20から受渡しヘッド12の受渡し溝22にフィルタロッドFが受け渡された直後の状態を示す。図9から明らかなように取出しヘッド10の往復動方向Xと受渡しヘッド12の往復動方向Yとは互いに交差する関係にあることから、取出しヘッド10及び受渡しヘッド12は取出し溝20の開口縁58と受渡し溝22の開口縁96との干渉を避けつつ、取出し溝20の開口縁56と受渡し溝22の開口縁98とを互いに近接させることができる。それ故、取出し溝20と受渡し溝22との間でのフィルタロッドFの受渡しを確実になすことができる。
【0053】
ここで、取出し溝20から受渡し溝22へのフィルタロッドFの受渡しがなされるとき、受渡し溝22に吸引圧が供給されるのに対し、取出し溝20への吸引圧の供給は停止されるが、これに加えて、取出し溝20には圧空源から調圧された圧縮空気が供給される。このような圧縮空気の供給は取出し溝20に残存する吸引圧、即ち、取出しヘッド10の吸引・ブロー通路68内の負圧を速やかに打ち消し、しかも、取出し溝20から圧縮空気を噴出させることから、フィルタロッドFは取出し溝20から押出し力を受ける一方、受渡し溝22から吸引力を受けることなり、受渡し位置でのフィルタロッドFの受渡しは確実且つ安定してなされる。
【0054】
なお、受渡し溝22にフィルタロッドFが吸着されたとき、この吸着は前述した圧力センサ134により検出され、圧力センサ134からのオン信号の出力を受け、受渡しヘッド12は受渡し位置から測定位置に向けて移動する。
上述の受渡し作用は、受渡しヘッド12から取出しヘッド10にフィルタロッドFが受け渡される場合にも同様に発揮され、ここでのフィルタロッドFの受渡しもまた確実且つ安定して実施される。
【0055】
また、図9には測定位置にて、受渡しヘッド12が受渡し溝22の軸線、即ち、吸着してフィルタロッドFの軸線回りに回転することも併せて示されている。
更に、一実施例の測定システム4の場合、フィルタロッドFを取出しヘッド10により取出した後、取出しヘッド10と受渡しヘッド12との間にてフィルタロッドFの受渡しをなすようにしたから、取出しヘッド10側の回転機構や往復動機構と、受渡しヘッド12側の回転機構及び往復動機構とを分離して構築でき、これら回転機構及び往復動機構が受け持つ負担の軽減を図ることができる。この結果、回転機構及び往復動機構の作動を高速化することができ、フィルタロッドF1本当たりに要する測定時間の大幅な短縮が可能となる。
【0056】
本発明は上述した一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、取出し溝20における下流側の開口端58は取出しヘッド10自体、即ち、前述した端縁60を延長することでも形成可能であるが、突出シート62により形成することで、その突出量を容易に調整することができる。
また、測定ヘッド24が回転可能であれば、取出しヘッド10はサンプリング位置と測定位置との間にて往復するだけで済み、この場合、フィルタロッドFの受渡しは不要となる。
【0057】
更に、図10に示されるように本発明の測定システムは、移送コンベア2の直下に押上げプッシャ136を備えることができ、この押上げプッシャ136はサンプリング位置に対応して位置付けられている。押上げプッシャ136はその上面がフィルタロッドFの径に応じた波状をなし、エアシリンダ138の伸縮動作を受けて上下動可能である。
取出しヘッド10が下降してフィルタロッドFの取出し、つまり、そのサンプリングがなされるとき、押上げプッシャ136は上昇して移送コンベア2上おけるフィルタロッドFの積層流れをサンプリング位置にて盛り上げ、それ故、取出しヘッド10はフィルタロッドFの積層流れ内に侵入することなく、フィルタロッドFを容易に取出すことができる。
【0058】
最後に、本発明の測定システム及び方法は、前述したフィルタロッドFに限らず、種々の棒状物品に対しても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一実施例の測定システムの概略図である。
【図2】図1の測定システムを具体的に示し、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図3】取出しヘッドを示し、(a)はその背面図、(b)は図3(a)中、b−b線に沿う断面図、(c)は図3(a)の突出シートの詳細を示す図である。
【図4】図1中の測定装置をより具体的に示し、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【図5】受渡しヘッドを示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその縦断面図である。
【図6】取出しヘッド及び受渡しヘッドのための空圧回路を示した図である。
【図7】取出し溝における下流側の開口縁の機能を説明するための図である。
【図8】図7の取出しヘッドと対比するため、異なる取出しヘッドを示した図である。
【図9】受渡し位置での取出しヘッドと受渡しヘッドとの間でのフィルタロッドの受渡しを説明するための図である。
【図10】移送コンベアの直下に配置された押上げプッシャを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
2 移送コンベア(移送経路)
6 取出し装置
8 測定装置
10 取出しヘッド
12 受渡しヘッド
14 回転軸(回転軸線)
20 取出し溝(吸着溝)
22 受渡し溝(吸着溝)
24 測定ヘッド
56,58 開口縁
108,114 電磁制御弁(切換え手段)
126,130 電磁開閉弁(切換え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状物品を横向き状態で移送する移送経路の上方に設けられ、前記移送経路に対するサンプリング位置にて前記移送経路から1本の棒状物品を解放可能に取出し、取出した棒状物品を保持した状態で前記サンプリング位置と移送経路近傍の測定位置との間にて往復移送する取出し装置と、
前記測定位置にて、前記取出し装置により保持された前記棒状物品の直径をその全周に亘って連続的に測定する測定装置と
を具備したことを特徴とする棒状物品の直径測定システム。
【請求項2】
前記取出し装置は、
前記サンプリング位置にて昇降し、前記移送経路から棒状物品を取出す取出しヘッドと、
前記取出しヘッドとの間にて棒状物品の受渡しをなし、前記棒状物品を前記測定位置に供給する受渡しヘッドと
を含み、
前記取出しヘッドと前記受渡しヘッドとの間での前記棒状物品の受渡しは、前記サンプリング位置と前記測定位置との間に規定された受渡し位置にてなされ、前記取出しヘッド及び前記受渡しヘッドは前記サンプリング位置と前記受渡し位置との間及び前記受渡し位置と前記測定位置との間のそれぞれに往復動可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項3】
前記取出しヘッドは、
回転軸線と、
前記回転軸線と直交する平面内を延び、棒状物品を吸引圧より吸着可能な吸着溝と
を有し、
前記回転軸線の回りに回転されることにより、前記吸着溝が下方を向いた水平姿勢と前記吸着溝が前記受渡し位置側を向いた鉛直姿勢との間にて姿勢変更可能である、
ことを特徴とする請求項2に記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項4】
前記受渡しヘッドは、棒状物品を吸引圧により吸着可能な鉛直姿勢の吸着溝を有し、この吸着溝は前記棒状物品の一部にて、その全周を露出させた状態で、棒状物品を吸着する、ことを特徴とする請求項3に記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項5】
前記取出しヘッドの吸着溝は、前記棒状物品の移送方向でみて下流側の開口縁が上流側の開口縁よりも突出した形状を有する、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項6】
前記取出しヘッド及び前記受渡しヘッドにおける前記往復動の方向は互いに所定の角度を存して交差している、ことを特徴する請求項5に記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項7】
前記取出し装置は、前記取出しヘッド及び前記受渡しヘッドとの間にて棒状物品の受渡しがなされる際、前記棒状物品を渡す側となる一方のヘッドの吸着溝に吸引圧に代えて圧縮空気を供給する切換え手段を更に含む、ことを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の棒状物品の直径測定システム。
【請求項8】
棒状物品を横向き状態で移送する移送経路から取出しヘッドにより1本の棒状物品を取出し、この後、取出した棒状物品を前記取出しヘッドと共に受渡し位置に移送し、
前記受渡し位置にて前記取出しヘッドから受渡しヘッドへの前記棒状物品の受渡しをなし、この後、前記受渡しヘッドに受取った棒状物品を前記受渡しヘッドと共に移送経路近傍の測定位置に移送し、
前記測定位置にて前記棒状物品の直径をその全周に亘って測定し、
測定後、前記棒状物品を前記受渡しヘッドから前記取出しヘッドを経て前記移送経路に戻す、
ことを特徴とする棒状物品の直径測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−128102(P2009−128102A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301450(P2007−301450)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000229793)日本フィルター工業株式会社 (3)
【出願人】(592118686)ジェイティエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】