説明

椅子

【課題】着座によって背もたれの少なくともランバーサポート部が前進動し得る椅子において、ユーザーフレンドリー性を高める。
【手段】座の下降動を背もたれの前進動に変換する連動装置は、揺動フレームに固定された受け部材35に配置した第2連動リンク39と、この第2連動リンク39に従動して回動する第3連動リンク41を有している。第2連動リンク39の回動力はばね40を介して第3連動リンク41に伝えられる。受け部材35には、座等に設けたレバーで操作されるロック装置60を配置している。ワイヤー70の操作により、ロック装置60のロック体67が第3連動リンク41における前向き張り出し部41aの下方に出入りする。これにより、第3連動リンク41は回動可能状態と回動不能状態とに切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、人が着座すると座が下降動して背もたれの少なくともランバーサポート部が前進動し得る椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれを備えた椅子において、着座した人の腰部(腰椎や骨盤)を後ろから支えることの重要性が認識されており、そこで、背もたれにランバーサポート機能を持たせることが提案されかつ実施されている。この場合、人は深く腰掛けることによってランバーサポート機能が発揮されるようになっている。
【0003】
他方、例えば人がオフィス等で各種作業を行うために椅子を使用する場合、必ずしも深く腰掛けるとは限らず、浅く腰掛けることはよくある。そして従来の椅子では、人が浅く腰掛ける(或いは深く腰掛けない)とランバーサポート機能は発揮されないという問題があった。そこで本願出願人は、先の出願(特許文献1)において、人が着座すると背もたれの少なくともランバーサポート部が大きく前進する椅子を提案した。
【特許文献1】特願2005−237660号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、人が浅く腰掛けてもランバーサポート機能が的確に発揮される利点がある。特に、着座によって座が後退しつつ下降するように動くと、ランバーサポート部が前進するのみならず身体が背もたれに近づくため、自動的に深座りするような状態になってとくに好適であると言える。他方、椅子を使用する人の好みは様々であり、場合によっては背もたれが前進しない状態を欲することも推測される。
【0005】
本願発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、使用者の好みに的確に応え得るユーザーフレンドリー性の高い椅子を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、人が腰掛けると下降動する座と、着座した人の腰を支え得るランバーサポート部を有する背もたれとを備えており、前記座の下降動にて背もたれの少なくともランバーサポート部が前進可能になっており、更に、前記背もたれの前進動を阻止又は規制するロック装置が設けられている。
【0007】
本願発明は様々に展開できる。その例を請求項2で挙げている。請求項2では、請求項1の構成に加えて、脚で支持された支持ベースと、前記支持ベースに後傾動可能に連結された揺動フレームと、前記揺動フレームの後傾動を弾性的に支持するばね手段とを備えており、前記座は支持リンクを介して支持ベースと揺動フレームとに連結されており、人が着座すると支持リンクが後傾動することで座の下降動が許容されている。
【0008】
また、前記揺動フレームには背もたれの裏側において上向きに延びるバックフレームが設けられており、背もたれの上部はバックフレームに取付けられており、背もたれのランバーサポート部は、前記揺動フレームに配置した連動機構に連結されており、座が下降すると連動機構を介してランバーサポート部が前進動するようになっている。
【0009】
更に、前記連動機構は複数の回動式連動リンクを備えていて一つの連動リンクの回動がばねを介して隣の連動リンクを従動させるようになっており、そして、一つの連動リンクの動きがばねを介して隣の連動リンクに伝達されるようになっており、前記ばねにて回動させられる連動リンクが前記ロック装置に設けられた可動式ロック体にて回動可能状態と回動不能状態とに切り替えられるようになっている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、例えば、背もたれは着座によって前進する状態と前進しない状態とに切り替えられるため、ユーザーは好みに応じていずれかの態様を選択することができ、このため椅子の使い勝手が格段にしている。なお、背もたれのロック態様としては、全く前進しない状態に阻止させる場合は、前進動する距離(ストローク)を抑制する場合との両方を含んでいる。
【0011】
背もたれの前進動を阻止する手段には様々の方法があり得るが、請求項2のように構成すると、一つの連動リンクは座の下降動によって常に回動しつつ、他の連動リンクは回動する状態と回動しない状態とに切り替えられており、このため、座の下降動を阻害することなく背もたれの前進等を止めることができる。また、背もたれが前進動可能な状態であっても、人が深く腰掛けると背もたれは殆ど前進しない。すなわち、座は常に一定量だけ下降するが、背もたれの前進量は腰掛けの深さの具合によって相違するのであり、両者のギャップはばねの変形によって吸収されるのである。従って、請求項2の構成は特に好適であると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は事務用等の回転椅子に適用している
(1).椅子の概略
まず、図1〜図6に基づいて椅子の概略を説明する。図1は椅子の全体的な斜視図、図2のうち(A)は椅子の正面図、(B)は椅子の側面図、図3は椅子の背面図、図4は座の支持構造を示す一部破断分離側面図、図5は図4の V-V視分離平面図、図6は連動関係を示す模式図である。
【0013】
椅子は、脚1と座2と背もたれ3とを備えている。脚1は、水平状に延びる枝足4の群と脚支柱(ガスシリンダ)5とを備えており、脚支柱5の上端には上向きに開口した金属板製のベース6が取り付けられている。図4に示すように、座2は、樹脂製の座インナーシェル(座板)2aとこれを下方から支える座アウターシェル2bを備えており、座インナーシェル(座板)2aの上面にはクッションが張られている。なお、座インナーシェル2aは例えばねじで座アウターシェル2bに固定されている。
【0014】
座2の前寄り部分は、左右のフロント支持リンク7と左右横長の第1支軸8とを介してベース6に連結されている。第1支軸8はスライド軸と言い換えても良い。座アウターシェル2bの前部には、フロント支持リンク7を左右両側から挟む左右一対ずつのフロントブラケット9が一体に形成されており、フロントブラケット9とフロント支持リンク7とはフロントピン10によって相対回動可能に連結されている。
【0015】
ベース6の左右両側には、側面視後傾姿勢でかつベース6の後方に延びる左右一対の揺動フレーム11が配置されており、左右揺動フレーム11の後端に背面視略四角形のバックフレーム12が固定されている。本実施形態では、揺動フレーム11とバックフレーム12とで背支持フレームが構成されている。なお、揺動フレーム11とバックフレーム12とは一体構造とすることも可能であり、また、バックフレーム12は背支柱と言い換えることも可能である。
【0016】
揺動フレーム11は、その前端部を中心にして後傾動するようにベース6の後部に第2支軸13で連結されている。そして、座2の後部と揺動フレーム11とは左右一対のリア支持リンク14を介して相対回動可能に連結されている。本実施形態では、フロント支軸リンク6とリア支持リンク14とで座下降許容装置の中核を成している。リア支持リンク14の上端部は座アウターシェル6に設けたリアブラケット部15にリアピン16で連結されている。
【0017】
人が着座していないニュートラル状態では、フロント支持リンク7及びリア支持リンク14は側面視で鉛直線に対してやや後傾しており、このため、人が着座すると支持リンク7,14が後傾し、これに伴って座2は側面視での姿勢は殆ど変えることなく下降しつつ後退する(或いは斜め後方にスライドする)。
【0018】
背もたれ3は、柔軟性を持った樹脂部材の単体からなっているが、勿論、インナーショルにクッションを張った構造も採用できる。背もたれ3の前面と後面とには多数の縦長リブ17が略等しい間隔で形成されている。背もたれ3は上下各部位とも平面視で前向き凹状に緩く湾曲している。また、非着座状態において背もたれ3の下端は座2の近くに位置しており、かつ、背もたれ3の下部は側面視で前向き凸状に緩い曲率で湾曲したランバーサポート部3aになっている。
【0019】
背板17の上端部はバックフレーム12に離反不能に取り付けられており、他方、背もたれ3のランバーサポート部3aのその左右両端部が第5連動リンク18に連結され、ランバーサポート部3aの下端部で且つ左右中間寄り部位は第4連動リンク19に連結されており、座2が下降及び後退するとランバーサポート部3aは大きく前進動する。第4連動リンク19及び第5連動リンク18は連動装置の一部を構成している。
【0020】
(2).ベースの周辺部の詳細
次に、ベース6を中心にした部分の構成を説明する。既述のとおりベース6は上向きに開口した箱状に形成されており、その内部でかつ後部に補強ブラケット21が固着されており、ベース6と補強ブラケット21とに固着したブッシュ22(図4参照)に脚支柱5の上端を嵌着している。
【0021】
ベース6の左右側板の前部には、第1支軸8が略前後方向にスライド自在に嵌まる側面視角形の長穴24が空いている。長穴24には樹脂製のブッシュ25が空いている。ブッシュ25にはスライダー26が外側から回転不能でスライド自在に嵌まっており、左右のスライダー26に第1支軸8が嵌まっている。そして、第1支軸8はスライダー26に固定されている。
【0022】
ベース6の内部には左右2個のロッキング用ばね(圧縮コイルばね)27が前後方向に延びる姿勢で配置されており、第1支軸8には前ばね受け28が後方から嵌め込まれており、他方、前記補強ブラケット21には、固定式後部ばね受け29を支える受け壁21aが形成されている。支持ベース6の側面から突出した操作ロッド30を回転操作するとロッキング用ばね27の初期弾性力が変化する。図5に示すように、軸受け体26には戻し用ばね31を嵌め込んまれている(或いは、戻し用ばね31はフロント支持リンク7の空所に内蔵されている。例えば図5に示すように、揺動フレーム11はブッシュ32を介してベース6の側板に嵌まっている。第2支軸13は、ビスやスナップリング(図示せず)によって揺動フレーム11に抜け不能に保持されている。
【0023】
左右の揺動フレーム11は、第2支軸13よりもある程度後方の部位において連結軸33で連結されており、連動軸32と第1支軸8とは左右の連動部材34でで連結されている。図5に示すように、揺動フレーム11には連結軸33が嵌まる軸受け部11aが形成されている。図2(B)や図3に部分的に示すように、左右の揺動フレーム11の間には連動装置を配置するための受け部材35が配置されている。
【0024】
受け部材35は両揺動フレーム11にねじで固定されており、かつ、リア支持リンク14の下部は受け部材35に駆動軸36で連結されている。従って、リア支持リンク14は揺動フレーム11に相対回動可能に連結されているのと同じ状態になっている。座2は着座によって下降動するが、人が着座しただけでは揺動フレーム11は後傾しない。
【0025】
図6に示すように、座2の下降動をランバーサポート部3aの前進動に変換するための連動装置(連動機構)は、駆動軸36に相対回転不能に固定された第1連動リンク38と、第1連動リンク38によって従動的に回動する第2連動リンク39と、第2連動リンク39が回動すると連動ばね40を介して従動的に回動する第3連動リンク41と、既述の第4連動リンク19及び第5連動リンク18を備えている。
【0026】
第1連動リンク38は回動支点から後ろ向きに延びており、第2連動リンク39は回動支点から手前側に延びており、連動用ばね40は第2連動リンク39に取付けられている。第3連動リンク41は第2連動リンク39と共通した回動支点になっており、回動支点から上向きに延びている。第4連動リンク19は第3連動リンク41の上下中途高さ位置に連結されており、第5連動リンク18は第3連動リンク41の上端部に連結されている。人が着座して座2が下降すると、各連動リンクが玉突き的に回動し、そして、背もたれ3のランバーサポート部3aが大きく(例えば50〜100mm前後)前進する。
【0027】
(3).連動装置の具体的構造
次に、連動装置の具体的構造を図7〜図11に基づいて説明する。図7及び図8は主要部材の分離斜視図、図9は分離平面図、図10は部分的な分離平面図、図11は縦断側面図である。
【0028】
受け部材35は上向きに開口した箱状になっており、その前部には駆動軸36とリア支持リンク14とが回転可能に嵌まっており、後端部には第2連動リンク39が回動自在に連結されている。本実施形態では駆動軸36は丸棒を使用しており、その両端に平坦面を形成することでリア支持リンク14が相対回転不能に連結されている。また、第2連動リンク39は左右の段付きブッシュ42(図10参照)及び第2ピン43を介して受け部材35に連結されている。
【0029】
例えば図8から理解できるように、本実施形態の第1連動リンク38は金属板製で左右の側板43bを有する正面視略コ字状に形成されている。そして、側板38aに、第1ピン44が嵌まり得る後ろ向き開口の長溝45を形成している。第1連動リンク38は駆動軸36に溶接によって固着されている。
【0030】
第2連動リンク39は金属板製であり、全体として略下向き開口コ字状に形成されている。第2連動リンク39を構成する左右側板39bは前向きに延長されており、延長部が第1ピン43で受け部材35に連結されている。
【0031】
第2連動リンク39の天板39bには下向き片45が切り起こしによって形成されており、下向き片45と一方の側板39aとにピン46を介して筒体47を取り付け、筒体47に連動用ばね40が外側から嵌まっている。
【0032】
連動用ばね40は荷重がコイルの巻き方向に作用するねじりばねであり、一端部40aと他端部40bとはともにコイルの接線方向に延びている。そして、例えば図11に明示するように、連動用ばね40の一端部40aは第2連動リンク39の天板39bに下方から当接している。また、第3連動リンク41の下端部には前向き張り出し部41aが形成されており、連動用ばね40の他端部40bは第3連動リンク41の前向き張り出し部41aに上方から当たっている。従って、第2連動リンク39の回動は連動用ばね41を介して第3連動リンク41に伝えられる。
【0033】
第3連動リンク41における前向き張り出し部41aには、下向きのストッパー溝41bが形成されている一方、第2連動リンク39には、第3連動リンク41の左右側板41aには、ストッパー溝41bに嵌まり込むストッパーピン49を装架している。第3連動リンク41の前向き張り出し部41aは連動用ばね40でストッパーピン49に押されており、このため、第3連動リンク41と第2連動リンク39に対してガタ付きのない状態に従動する。
【0034】
第2連動リンク39の左右側板39aには、相対向するコ字状の樋状ガイド部39cが一体に形成されており、左右の樋状ガイド部39cに樹脂製スライダー50(図10参照)を介して前記第1ピン44が摺動自在に嵌まっており、かつ、既述のとおり第1ピン44は第1連動リンク38の長溝45に嵌まっている。従って、第1連動リンク38が回動すると第1ピン44を介して第2連動リンク39が回動する。
【0035】
本実施形態では、第1連動リンク38の回動に対して抵抗を付与するダンパー手段を備えている。このダンパー手段は、例えば図8に示すように、左右一対のロータリーダンパー52と、左右のロータリーダンパー52の間に配置したアーム体53とで構成されている。ロータリーダンパー52は粘性流体を使用したものである。
【0036】
ロータリーダンパー52は、受け部材35に形成した受け凹所53に嵌め入れられて蓋54で抜け不能に保持されており、その固定軸52aは受け部材35に形成した縦溝55に回転不能に嵌め入れられており、可動軸52bはアーム体53に対して相対回動しない状態に嵌め込まれている。アーム体53の上端には第1ピン44が嵌まっている。
【0037】
従って、第1連動リンク38が倒れ回動すると、その回動に対してロータリーダンパー52が抵抗として作用する。このため、座2はじんわりと下降動して人に違和感を与えることはない。ロータリーダンパー52は第1連動リンク38の戻り回動に対しても抵抗を付与するが、倒れ回動のときよりは抵抗は軽くなっている(オイルが速やかに逃げるようになっている。)
(4).ロック装置
図11に示すように、第3連動リンク41における前向き張り出し部41aと受け部材35の底面35aとの間にはある程度の隙間が空いている。そして、この隙間にロック装置のロック体が出入りすることにより、第3連動リンク41は回動可能な状態と回動不能な状態とに切り替わるようになっている。次に、図12以下の図面を参照してロック装置を説明する。
【0038】
図12はロック装置60を構成する部材の斜視図、図13のうち(A)はロック装置60の一部の部材を取り付けた状態での受け部材35の平面図、(B)は(A)のB−B視断面図、図14のうち(A)はロック装置60のフリー状態(ロック解除状態)での平面図、(B)は(A)のB−B視図、図15はロック装置60の分離平面図、図16はロック装置60の部材の重なり合いを示す分離正断面図、図17は組み立てた状態での図15の XVII-XVII視断面図、図18(A)はロック状態でのロック装置60の平面図、(B)は第3連動リンク41を表示した状態での(A)のB−B視断面図である。
【0039】
ロック装置60は、受け部材35にビス62で固定されたベース体61と、その上面に前後スライド自在に配置した主スライダー63と、主スライダー63に装着した補助スライダー64と、主ばね65及び補助ばね66と、ベース体61に回動自在に取り付けたロック体67とで構成されている。
【0040】
ベース体61は略板状で前後方向に延びる形態であり、平面視で第2連動リンク39と部分的に重なる状態で受け部材35の端寄り部位に配置されている。そして、ベース体61は、その後端に設けて後ろ向き開口の凹所68を受け部材35の前向きリブ69aに嵌め入れることにより、後ろ向きリブ69bに1本のビス62でずれ不能に保持されている。
【0041】
また、ベース体61のうち手前寄り部位には、ワイヤー70が摺動自在に嵌め入れられたチューブ71の端部を係止するためのホールド部72が形成されている。ホールド部72は外向き(横向き)に開口しており、これに、チューブ71の端部に固定したホルダー部73を強制的に(ホールド部72を弾性変形させて)嵌め込んでいる。ホルダー部73は係合溝73aを有している。
【0042】
ベース体61は前後方向に延びるスライド面61aを備えており、スライド面61aに主スライダー63が重なっている。主スライダー63は上向きに開口した箱状に形成されており、その後端に形成した爪部74とベース体61の後端に形成した爪部75とに主ばね65が装架されている。従って、主スライダー63は主ばね65で常に後ろ向きに引っ張られている。主ばね65のばね力は補助ばね66のばね力よりも小さく設定している。
【0043】
例えば図17に示すように、ベース体61のうちスライド面61aの外縁部は薄肉部となるように肉盗み部76が形成されている一方、主スライダー63には、ガイド手段の一例として、ベース体61の肉盗み部76に入り込む抱持部77が形成されており、このため主スライダー63は上下離反不能に保持されている。
【0044】
補助スライダー64は中空円形でその後部には四角形のフランジ64aが形成されており、主スライダー63の内部に摺動自在に嵌め入れられられている。また、フランジ64aに左右に突出した突起64bを形成しており、この突起64bが主スライダー63に形成されたスリット78に強制的に嵌め入れられている。このため、補助スライダー64は主スライダー63の内部に抜け不能に保持されている。
【0045】
そして、補助スライダー64には補助ばね66が被嵌しており、このため、補助スライダー64は補助ばね66で後ろ向きに付勢されている。更に、補助スライダー64にはワイヤー70の端部に固定したボール79が嵌め入れられている。補助スライダー64には、ワイヤー70を逃がすためのスリット80が前後に長く形成されており、また、主スライダー63の前壁にもワイヤー70を通す逃がし用スリット80が形成されている。
【0046】
ベース体61には、スライド面61aから受け部材35に向けて突出した張り出し部61bが一体に形成されており、張り出し部には上下に貫通した軸穴82が空いている。他方、ロック体67はベース体61の張り出し部61bに上方から重なるアーム部67aが一体に形成されており、更に、補助スライダー64には、ロック体67のアーム部67aに上方から重なるフランジ片64aが一体に形成されており、これらベース体61の張り出し部61bとロック体67のアーム部67aと補助スライダー64のフランジ片64aとは連結ピン83で相対動可能に連結されている。
【0047】
この場合、補助スライダー64のフランジ片64aにおいて連結ピン83が嵌まる穴は長穴84になっており、従って、主スライダー63の前後スライドは許容されている。また、ロック体67のアーム部57aには、連結ピン83が嵌まる大径穴85と、この大径穴85に連通した細巾のスリット86が形成されている。従って、ロック体67は連結ピン83を中心にして回動可能である。
【0048】
更に、主スライダー63におけるフランジ片64aのうち長穴84の外側には下向きの突起87が形成されており、この突起87がロック体67におけるアーム部67aのスリット86に嵌まっている。このため、主スライダー63が前後にスライドすると、ロック体67は突起87の押圧作用により、連結ピン83を中心にして回動し得る。
【0049】
ベース体61における張り出し部61bの周縁の下面に段部88が形成されている一方、ロック体67には、段部88に入り込むストッパー部67bが形成されている。このため、ロック体67は上向きに起きることなく回動する。
【0050】
主スライダー63が後退し切った状態では、ロック体67は図18に示すように第3連動リンク41における前向き張り出し部41aの下方に位置しており、このため、第3連動リンク41は前傾不能に保持されており、その結果、背もたれ3のランバーサポート部3aも前進動しない。そして、連動用ばね40が弾性変形することによって第2連動リンク39の前傾動が許容されており、このため座2の下降動には支障はない。主スライダー63を前進させ切ると、ロック体67は第3連動リンク41手前に移動し、このため第3連動リンク41が傾動可能なフリー状態になる。
【0051】
ワイヤー70を操作するためのレバー89は、図2(B)に示すように、リア支持リンク14の上部が連結されているリアピン16と同軸に配置している。そして、ロック状態においてレバー89を操作することがあり、この場合、単に主スライダー63を主ばね65で引いているだけの構成では、人が背もたれ3にもたれ掛かる等して第3連動リンク41が前傾し勝手になっていると、ロック体67は回動不能になっており、その状態でレバー89を操作してもレバー89が動かないと人に故障と間違われたり、力をかけ過ぎてレバー89を破損したりする虞がある。
【0052】
これに対して本実施形態のように補助スライダー64と補助ばね65とを設けると、ロック体67が回動不能の状態でレバー89を引くと補助スライダー64がスライドすることによってレバー89の回動が許容されるため、レバー89の破損事故を防止できる。また、第3連動リンク41に対する力が解除されるとロック体67はロック解除姿勢に回動する。
【0053】
なお、レバー89はロック姿勢とロック解除姿勢とに選択的に保持する必要があるが、その手段としては、図19に示すように、レバー89に設けたストッパー90を座アウターシェル6に形成した2つの凹所91に選択的に嵌め込むようにしている。
【0054】
(5).操作レバー及びワイヤーの好適配置態様
既述のように、ランバーロック用のチューブ入りワイヤー70はアウターシェル2bの上面に引き出されているが、ワイヤー70を通すための穴はアウターシェル2bの前後中途部に形成されており、このため、図2(B)に示すように、ワイヤー70(或いはチューブ71)は、側面視では横向き開口U字状のように大きく湾曲した状態になっている。
【0055】
他方、アウターシェルに昇降操作用レバーを取付けてワイヤーをアウターシェルの上面箇所に引き出すことは例えば特開平11−56516号公報や実開平2−136551号公報に開示されている。しかし、これらのものは、レバーは椅子の正面視で前後方向に延びる軸心回りに回動する状態でアウターシェルに取付けられており、従って、ワイヤーのうちレバーに取り付いた部分はアウターシェルの上面箇所では左右方向に延びる状態になっており、このため、ワイヤーがアウターシェルの下方において前後方向に延びていると、ワイヤーがねじれた状態になってチューブとの抵抗が大きくなるため、スムースな動きが阻害される虞があり、これを防止するにはワイヤーの長さを十分に長くして曲がりの曲率半径を大きくする必要がある。
【0056】
これに対して本実施形態のように、操作レバー89を左右横長の軸心回りに回動するようにアウターシェルに取り付けると、ワイヤーはU字状の自然な状態に曲がるだけであるため、過度に長さを長くすることなくスムースな動きを確保できる利点がある。この点は、請求項とは関係なく独立した発明たり得る。もちろん、レバーの種類はランバーロック用には限らず、例えば背もたれ3の動きを規制する(例えばロッキング可能状態とロッキング不能状態とに切り替えるための)ロッキングロック用のレバーにも適用できる。なお、ワイヤーで操作されるロッキンクロック機構部は、支持ベースの内部に配置されることが多い。
【0057】
また、レバーは必ずしもピン16に取り付ける必要はないのであり、アウターシェルにレバー取付け用の専用の軸受け部を形成することも可能である(この場合、レバーはピンで止めても良いし、U字形でかつ開口部がくびれた軸受け部にレバーに一体形成した軸部を嵌め込むことも可能である。)。
【0058】
更に、ランバーロック用やロッキングロック用のレバーは、本実施形態のようにアウターシェルの後部(前後中間点よりも後ろ側)に配置するのが好ましい。その理由としては、着座状態で人の腕は座の後ろ寄りに位置しているため自然な状態でレバーを操作できることと、ロッキングした状態でも自然な状態で操作できること、が挙げられる。
【0059】
(6).その他
本願発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々に具体化できる。例えばどの部材の動きを止めることで背もたれの前進動を阻止するかは必要に応じて任意に選択できる。例えば、ロック体で座の下降動を停止させることも可能である。勿論、座を下降させる構造はリンクを使用することには限らず、直動式のガイド手段やシリンダを使用するといったことも可能である。
【0060】
また、連動装置としては連動リンクを使用したものには限らず、ワイヤーを使用したものやシリンダ(空圧又は油圧)を使用したものなど限定はないのであり、連動装置の構造の違いによってロック装置の構造も異なってくる。
【0061】
また、背もたれの前進状態の切り替え態様としては、前進し切った状態に保持するたことや、前進動し得る範囲(ストローク)を調節すること、或いは、背もたれが前後動しない停止位置を調節することも可能である(この場合は、ガスシリンダを使用すると任意の前進位置にロックできる利点がある。)。このように、本願発明における背もたれの前後動の規制態様には様々のバリエーションがある。また、背もたれを全体的に前進させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は椅子の全体的な斜視図である。
【図2】(A)は椅子の正面図、(B)は椅子の側面図である。
【図3】椅子の背面図である。
【図4】座の支持構造を示す一部破断分離側面図である。
【図5】図4の V-V視分離平面図である。
【図6】座と背もたれとの連動関係を示す模式図である。
【図7】連動装置の主要部材の分離斜視図である。
【図8】連動装置の主要部材の分離平面図である。
【図9】連動装置の主要部材の分離平面図である。
【図10】連動装置の主要部材の分離平面図である。
【図11】ロック装置の縦断側面図である。
【図12】ロック装置を構成する部材の斜視図である。
【図13】(A)はロック装置60の一部の部材を取り付けた状態での受け部材35の平面図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【図14】(A)はロック装置60のフリー状態(ロック解除状態)での平面図、(B)は(A)のB−B視図である。
【図15】ロック装置の分離平面図である。
【図16】ロック装置の部材の重なり合いを示す分離正断面図である。
【図17】組み立てた状態での図15の XVII-XVII視断面図である。
【図18】(A)はロック状態でのロック装置の平面図、(B)は第3連動リンク41を表示した状態での(A)のB−B視断面図である。
【図19】レバーの取付け構造を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0063】
2 座
3 背もたれ
3a ランバーサポート部
11 揺動フレーム
12 バックフレーム
18 第5連動リンク
19 第2連動リンク
35 受け部材
36 駆動軸
38 第1連動リンク
39 第2連動リンク
40 連動用ばね
41 第3連動リンク
60 ロック装置(ランバーロック装置)
61 ベース体
63 主スライダー
64 補助スライダー
65,66 ばね
67 ロック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が腰掛けると下降動する座と、着座した人の腰を支え得るランバーサポート部を有する背もたれとを備えており、前記座の下降動にて背もたれの少なくともランバーサポート部が前進可能になっており、更に、前記背もたれの前進動を阻止又は規制するロック装置が設けられている、
椅子。
【請求項2】
更に、脚で支持された支持ベースと、前記支持ベースに後傾動可能に連結された揺動フレームと、前記揺動フレームの後傾動を弾性的に支持するばね手段とを備えており、前記座は支持リンクを介して支持ベースと揺動フレームとに連結されており、人が着座すると支持リンクが後傾動することで座の下降動が許容されている一方、
前記揺動フレームには背もたれの裏側において上向きに延びるバックフレームが設けられており、背もたれの上部はバックフレームに取付けられており、背もたれのランバーサポート部は、前記揺動フレームに配置した連動機構に連結されており、座が下降すると連動機構を介してランバーサポート部が前進動するようになっており、
更に、前記連動機構は複数の回動式連動リンクを備えていて一つの連動リンクの回動がばねを介して隣の連動リンクを従動させるようになっており、そして、一つの連動リンクの動きがばねを介して隣の連動リンクに伝達されるようになっており、前記ばねにて回動させられる連動リンクが前記ロック装置に設けられた可動式ロック体にて回動可能状態と回動不能状態とに切り替えられるようになっている、
請求項1に記載した椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−80089(P2008−80089A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351103(P2006−351103)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】