検体分析装置
【課題】冷却された空気を試薬庫内で広く循環させて試薬庫内の空気を均一に冷却することができる検体分析装置を提供する。
【解決手段】検体分析装置1は、収容した試薬容器300内の試薬を冷却する試薬庫10を備える。試薬庫10は、ハウジング20と、ハウジング20内に配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブル21と、ハウジング20内の第1の試薬容器テーブル21の外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブル22と、第1,第2の試薬容器テーブル21,22を相対的に回転駆動する駆動部13と、ハウジング20内の空気を冷却する冷却部80と、冷却部80によって冷却された空気を循環させる送風部88とを備える。第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置される。
【解決手段】検体分析装置1は、収容した試薬容器300内の試薬を冷却する試薬庫10を備える。試薬庫10は、ハウジング20と、ハウジング20内に配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブル21と、ハウジング20内の第1の試薬容器テーブル21の外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブル22と、第1,第2の試薬容器テーブル21,22を相対的に回転駆動する駆動部13と、ハウジング20内の空気を冷却する冷却部80と、冷却部80によって冷却された空気を循環させる送風部88とを備える。第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、試薬庫内で冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の検体分析装置は、試薬庫の内部に内周側のトレイと外周側のトレイとを備え、それぞれのトレイを独立して回転駆動するように構成されている。また、特許文献1の検体分析装置は、試薬庫内の中央にファンを備え、このファンによって試薬庫内で冷却された空気を循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−8611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検体分析装置は、試薬庫内で内周側のトレイと外周側のトレイとを独立して回転させるために、内周側のトレイと外周側とのトレイとの間に隙間を設けている。そのため、ファンによって試薬庫の中央から外側へ流れる空気が内周側のトレイと外周側のトレイとの隙間から抜けてしまい、冷却された空気が試薬庫内の外周部まで到達し難く、当該試薬庫内の空気を均一に冷却することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑み、冷却された空気を試薬庫内で広く循環させて試薬庫内の空気を均一に冷却することができる検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置であって、
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、
前記試薬庫は、
ハウジングと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブルと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置され、前記第1の試薬容器テーブルの外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブルと、
前記第1の試薬容器テーブルと前記第2の試薬容器テーブルとを相対的に回転駆動する駆動部と、
前記ハウジング内の空気を冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された前記ハウジング内の空気を循環させる送風部と、を備えており、
前記第1の試薬容器テーブルの前記外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブルの前記内周縁部とが、上下方向に重複して配置されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1の試薬容器テーブルの外周縁部と、第2の試薬容器テーブルの内周縁部とが上下方向に重複して配置されているので、両試薬容器テーブルの間には上方から見て隙間が生じない。そのため、試薬容器テーブルの上方又は下方を流れる空気が両試薬容器テーブルの隙間から抜けてしまうのを抑制することができ、ハウジング内で広く空気を循環させてハウジング内の空気を均一に冷却することができる。
【0008】
前記第1の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面と、前記第2の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面とは、同一の高さに配置されていてもよい。
この構成によって、第1の試薬容器テーブルに載置された試薬容器と、第2の試薬容器テーブルに載置された試薬容器との高さを互いに同一にすることができる。そのため、試薬容器から試薬を吸引する装置を、いずれのテーブルに配置された試薬容器に対しても同様の態様で作動させることができ、当該装置の動作制御を簡素化することが可能となる。
【0009】
前記第1の試薬容器テーブルと、前記第2の試薬容器テーブルとは、互いに非接触であってもよい。
この構成によって、駆動部に対する負荷を小さくし、第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとを円滑に相対回転させることができる。
【0010】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方における空気の流れ方向に関して、上流側に位置する一方の前記試薬容器テーブルの前記縁部は、下流側に位置する他方の前記試薬容器テーブルの前記縁部よりも下側に配置されていることが好ましい。
このような構成によって、第1,第2の試薬容器テーブルの下方に流れる空気が、第1,第2の試薬容器テーブルの隙間から上方へ抜けてしまうのをより確実に抑制することができる。
【0011】
より具体的に、前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第1の試薬容器テーブルの内側から外側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部が、前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部よりも下側に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第2の試薬容器テーブルの外側から内側へ向かう径方向内方への空気の流れを生成し、
前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部が、前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部よりも下側に配置されていてもよい。
【0013】
前記駆動部は、前記ハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されていてもよい。
この構成によって、ハウジングから漏れた結露水等の水分が駆動部に付着するのを防止することができる。
【0014】
また、検体分析装置は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの少なくとも一方に前記駆動部の動力を伝達し、その一部が前記ハウジングを貫通して突出する動力伝達部と、
前記動力伝達部の一部と、この動力伝達部の一部に連結される前記駆動部の少なくとも一部とが収容され、前記ハウジングの内部空間とともに気密性が保たれた収容室と、を更に備えていてもよい。
駆動部がハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されている場合、この駆動部から試薬容器テーブルに動力を伝達する動力伝達部は、ハウジングを貫通して配置される場合があり、その貫通部を介してハウジング内の冷却された空気が外部に漏れると、冷却効率が著しく低下してしまう。そのため、本発明では、ハウジングから突出する動力伝達部の一部と、この動力伝達部の一部に連結される駆動部の少なくとも一部とを、ハウジングの内部空間とともに気密性が保持された収容室内に収容することによって、ハウジングから漏れた空気を収容室内で止めておくことができ、これによって冷却効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却された空気を試薬庫内で広く循環させ、試薬庫内の空気を均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される検体分析装置の概略構成図である。
【図3】試薬庫及び分注部を示す概略平面図である。
【図4】ハウジングの上面を開いた状態を示す概略平面図である。
【図5】図1に示される試薬庫を概略的に示す側面断面図である。
【図6】試薬庫の内底面を上方から見た水平断面図である。
【図7】試薬庫内の要部を拡大して概略的に示す側面断面図である。
【図8】立壁部材の一部を示す平面図である。
【図9】図6におけるA−A矢視断面図である。
【図10】図6におけるB−B矢視断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る検体分析装置1の全体構成を示す斜視図である。
【0018】
検体分析装置1は、例えば、血液凝固測定装置、免疫分析装置、又は生化学分析装置であり、人体から採取した検体と試薬とを混和して調製された測定試料に対して所定の測定を行い、その測定結果をもとに検体の分析を行う装置である。検体分析装置1は、測定装置2と、この測定装置2に電気的に接続された制御装置4とから構成されている。また、測定装置2の筐体5の内部には、試薬が収納された複数の試薬容器を収容し、保冷するための試薬庫10が設けられている。測定装置2の筐体5は、開閉可能なカバー体5Aを有しており、このカバー体5Aを開くことによって試薬庫10の少なくとも一部(前部)が露出可能とされている。
【0019】
図2は、図1に示される検体分析装置1の概略構成図である。検体分析装置1の測定装置2は、前記試薬庫10の他、検体供給部12、搬送駆動部13、分注部14、測定部15、読取部33、制御回路16等を備えている。検体供給部12は、検体を収納した検体容器(試験管等)が保持された検体ラックがセットされ、この検体ラックを搬送することによって各検体容器を所定の分注位置に位置づける機能を有している。搬送駆動部13は、試薬庫10内に収容された試薬容器を搬送して所定の分注位置に位置づける機能を有している。
【0020】
分注部14は、測定試料を調製するために、所定の分注位置に位置づけられた検体容器や試薬容器から検体や試薬を分注する機能を有する。図3は、試薬庫10及び分注部14を示す平面図である。図3に示されるように、分注部14は、複数の分注ユニット25〜29を有しており、各分注ユニット25〜29によって試薬庫10に収容された試薬容器内から試薬を分注することが可能である。
【0021】
1つの分注ユニット25を例に説明すると、分注ユニット25は、支持部25aと、この支持部25aによって基端部側が支持されるアーム25bと、アーム25bの先端部に設けられたピペット25cとを有している。アーム25bは、ステッピングモータ等の駆動部によって基端部を支点として水平方向に回転駆動されるとともに、上下方向に昇降駆動される。ピペット25cは、アーム25bの水平回動及び上下昇降により、試薬庫10の上面に形成された吸引孔71に挿入され、試薬庫10内の試薬容器300(図5参照)から試薬を吸引する。その他の分注ユニット26〜29も、分注ユニット25と略同様の構成を備えているため、詳細な説明は省略する。
【0022】
図2に示されるように、測定部15は、検体と試料とが混和されることによって調製された測定試料に対して所定の測定を行う機能を有している。
読取部33は、試薬庫10内に収納された試薬容器300や、この試薬容器300を保持する試薬容器ラック310,320(図5参照)に貼付されたバーコードを読み取るバーコードリーダからなる。読取部33は、試薬庫10の外側に配置されており、試薬庫10に形成されかつシャッタにより開閉されるスリット(図示省略)を介して試薬庫10内のバーコードを読み取ることが可能となっている。
【0023】
図2に示されるように、制御回路16は、CPU、ROM,RAM等のメモリー、通信インタフェース等を備えており、検体供給部12、試薬庫10、搬送駆動部13、分注部14、測定部15、及び読取部33等の動作を制御するとともに、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4との間で各種情報の送受信を行う機能を有している。
【0024】
図1に示されるように、制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、制御部4aと、表示部4bと、情報を入力するためのキーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、測定装置2の制御回路16に当該測定装置2の動作開始信号を送信するとともに、測定装置2で得られた測定結果についての情報を分析するための機能を有している。また、表示部4bは、制御部4aで得られた分析結果等を表示する機能を有している。
【0025】
[試薬庫10の詳細な構成]
図5は、試薬庫10を概略的に示す側面断面図である。
試薬庫10は、検体に添加される試薬を収容した試薬容器300を、低温(約10℃)で冷蔵保存するとともに、軸線Oを中心とする回転方向に搬送するために設けられている。試薬は、低温で保存されることによって変質が抑制される。また、試薬庫10は、ハウジング20と、このハウジング20内に配置され、試薬を収容した試薬容器300を載置させる試薬容器テーブル21,22とを備えている。
【0026】
試薬容器テーブル21,22は、円環状の第1の試薬容器テーブル21と、この第1の試薬容器テーブル21の径方向外側に、当該第1の試薬容器テーブル21と同心状に配置された円環形状の第2の試薬容器テーブル22とからなる。第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ、複数の試薬容器300を保持する第1の試薬容器ラック310および第2の試薬容器ラック320が着脱可能に配置されるように構成されている。
【0027】
第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ搬送駆動部13によって相対的に回転駆動される。より具体的には、第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ搬送駆動部13によって軸線Oを中心として時計回り方向および反時計回り方向の両方向に互いに独立して回転される。これにより、各試薬容器テーブル21,22に載置された試薬容器300が回転方向に搬送される。そして、試薬容器300を回転方向に搬送することによって、各試薬容器300を、分注ユニット25〜29による分注位置に配置することができる。搬送駆動部13の詳細な構成は後述する。
【0028】
図5に示されるように、試薬庫10のハウジング20は、ハウジング20の底部を構成する底壁63及びこの底壁63の外周から立ち上がる周壁(側壁)64を備えた有底円筒形状の本体部65と、この本体部65の上部開口を塞ぎ、当該試薬庫10の上壁として機能する蓋部66とを備えている。本体部65と蓋部66によって囲まれた密閉空間が冷却室とされ、この冷却室内の試薬容器テーブル21,22に載置された複数の試薬容器300は、その全体が周壁64によって径方向外側(水平方向の外側)から囲まれる。
【0029】
蓋部66は、図3に示されるように、本体部65の略後側半分を塞ぐ固定蓋67と、本体部65の略前側半分を塞ぐ開閉可能な可動蓋68とにより構成されている。可動蓋68は、固定蓋67の前縁にヒンジ部材69を介して揺動可能に連結されている。
【0030】
また、ハウジング20の蓋部66には、複数の吸引孔71が形成されており、この吸引孔71に、分注ユニット25〜29のピペット25cが挿入されるとともに、試薬庫10に収納された試薬容器300内の試薬が、試薬容器300の上部開口から吸引されるように構成されている。
【0031】
なお、試薬庫10に対する試薬の交換は、測定装置2のカバー体5A(図1参照)を開いて試薬庫10の前部側を露出し、可動蓋68を上方に開いて試薬庫10の前側半分を開放させることによって試薬容器ラック310,320ごとに行うことができる。図4は、蓋部66を開いた状態を示す試薬庫の平面図である。蓋部66を開くと、本体部65の内部が露出され、試薬容器300を保持した試薬容器ラック310,320の本体部65内への挿入と本体部65内からの取出とが可能となっている。
【0032】
図5に示されるように、ハウジング20の本体部65は、周壁(側壁)64と底壁63を備えている。また、底壁63は、中央部(伝熱層)78と外周部77とからなり、外周部77は、周壁64の下端に連なって形成されている。
【0033】
図6は、試薬庫10の内底面を上方から見た水平断面図である。図6に示されるように、ハウジング20の底壁63に設けられた伝熱層78は、平面視で多角形状(図示例では六角形状)に形成されている。また、図5及び図6に示されるように、伝熱層78は、その下面の一部が下方に露出しており、その露出面には冷却器80が設けられている。本実施の形態では、2個の冷却器80が、試薬庫10の中心軸線O(第1,第2の試薬容器テーブル21,22の回転中心)を中心に対称位置に配置されている。冷却器80は、熱伝導性の高い伝熱層78を直接的に冷却することによって、この伝熱層78自体を冷却媒体として用い、試薬庫10内の空気を冷却するように構成されている。なお、冷却器80としては、ペルチェ素子を用いたものに限らず、例えば伝熱層78を空冷または水冷によって冷却する構成であってもよい。また、伝熱層78の平面形状は多角形状に限らず円形状であってもよい。
【0034】
また、本体部65の周壁64の内側には、当該周壁64に沿って周方向に立壁部材81が設けられている。この立壁部材81は、図5に示されるように、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の上面よりも下方に位置し、周壁64の内側において当該周壁64の内面から離間して配置されている。また、図6に示されるように、立壁部材81は、平面視で略円形状に形成され、ハウジング20の略全周に亘って設けられている。なお、本実施の形態の立壁部材81は、帯状の板材を多角形状に屈曲することによって略円形状に形成されている。
【0035】
立壁部材81の下端部には、径方向内方へ突出する取付片81aが設けられており、この取付片81aを、伝熱層78の上面にネジ止めすることによって、立壁部材81が伝熱層78に接続されている。
【0036】
また、伝熱層78の上面には、ヒートシンク82が設けられている。このヒートシンク82は、アルミ等の熱伝導性の高い材料で形成され、多数の突起又はフィンを備えることによって表面積が増大している。ヒートシンク82は、図6に示されるように、2個の冷却器80の上方に対応する位置にそれぞれ設けられ、伝熱層78を介して冷却器80によって冷却される。
【0037】
図5に示されるように、試薬庫10において、第1の試薬容器テーブル21の中央部には、筒形状に形成された導風体21dが立設されており、この導風体21dの内部に、送風ファン(送風部)88が設けられている。送風ファン88は、導風体21dを空気の流通路とし、導風体21dの上方から吸い込んだ空気を導風体21dの下方へ吹き出すように構成されている。そのため、送風ファン88によって生成された空気流は、冷却器80によって直接的に冷却された伝熱層78に対して吹き付けられる。これによって空気流を効率よく冷却することができる。
【0038】
送風ファン88によって生成された空気流は、伝熱層78に吹き付けられた後、径方向外方へ流れ、立壁部材81に当たって上方へ向きが変えられることによって、試薬庫10の周壁64(内側面)と第2の試薬容器テーブル22との間を通って第2の試薬容器テーブル22の上方へ流れる。その後、この空気流は、蓋部66の下面に沿って径方向内方へ流れると共に、導風体21dの上部に吸い込まれ、再び送風ファン88によって下方へ吹き出され、試薬庫10の内部を循環する。第1,第2の試薬容器テーブル21,22に配置された試薬容器300内の試薬は、送風ファン88によって循環された空気によって、所望の温度、例えば約10℃に冷却される。
【0039】
図5に示されるように、第1,第2の試薬容器テーブル21,22は、搬送駆動部13によって回転駆動される。具体的に、搬送駆動部13は、ステッピングモータ等からなる第1駆動体97及び第2駆動体98を有している。この第1,第2駆動体97,98は、ハウジング20の側方に配置されており、第1,第2の試薬容器テーブル21,22に動力伝達機構99を介して接続されている。この動力伝達機構99は、第1従動プーリ100、第2従動プーリ101、第1駆動プーリ102、第2駆動プーリ103、第1伝動ベルト104、及び第2伝動ベルト105から構成されている。第1従動プーリ100及び第2従動プーリ101は、試薬庫10の中心軸線O上に配置され、互いに相対回転可能にハウジング20の底部に支持されている。また、第1従動プーリ100には第1の試薬容器テーブル21が連結され、第2従動プーリ101には第2の試薬容器テーブル22が連結されている。
【0040】
第1駆動プーリ102は、第1駆動体97の出力軸に取り付けられ、第2駆動プーリ103は、第2駆動体98の出力軸に取り付けられている。第1伝動ベルト104は、第1従動プーリ100と第1駆動プーリ102とに巻き掛けられ、第2伝動ベルト105は、第2従動プーリ101と第2駆動プーリ103とに巻き掛けられている。したがって、第1駆動体97を作動させることによって、第1駆動プーリ102、第1伝動ベルト104、第1従動プーリ100を介して第1の試薬容器テーブル21を回転させることができ、第2駆動体98を作動させることによって、第2駆動プーリ103、第2伝動ベルト105、第2従動プーリ101を介して第2の試薬容器テーブル22を回転させることができる。
【0041】
ハウジング20の周壁64には、第1伝動ベルト104と第2伝動ベルト105を通過させるための第1挿通口107と、第2挿通口108とが形成されている。また、試薬庫10の側方には、断熱材で囲まれるとともに気密性が保たれた収容室109が形成されており、この収容室109は第1挿通口107及び第2挿通口108を介して試薬庫10内に連通している。第1,第2駆動体97,98の各出力軸、第1,第2駆動プーリ102,103、第1,第2伝動ベルト104,105の一部は、この収容室109に配置されている。このため、第1,第2挿通口107,108からハウジング20内の冷却空気が漏れたとしても収容室109内で止めることができるため、ハウジング20内の冷却効率の低下を抑制することができる。
【0042】
また、第1駆動体97及び第2駆動体98は、試薬庫10の側方に配置されているため、試薬庫10内で発生した結露水が試薬庫10の下方に滲み出た場合等であっても第1駆動体97及び第2駆動体98に付着してしまうことはなく、第1駆動体97及び第2駆動体98の故障を防ぐことができる。
【0043】
なお、第1駆動体97及び第2駆動体98は、試薬庫10の側方に限らず、試薬庫10の外側であって下方を除く領域であればどこに配置してもよい。また、動力伝達機構99は、プーリと伝動ベルトとによる巻き掛け伝達機構とされているが、これに限らず、ギヤ伝達機構等の他の動力伝達機構を採用することができる。
【0044】
図7は、試薬庫10内の要部を拡大して概略的に示す側面断面図である。
図7に示されるように、第1の試薬容器テーブル21は、試薬容器300を載置する上面21hを有する第1載置部21aと、この第1載置部21aを下側から支持する第1支持部21bとを有しており、この第1支持部21bの中央部が第1従動プーリ100に一体回転可能に連結されている。また、第1支持部21bの中央寄り(送風ファン88の下方領域)には複数の第1開口21cが周方向に間隔をあけて形成されており、この第1開口21cを介して上下方向に空気の流通が可能となっている。第1支持部21bの外周端は、第1載置部21aの外周端よりも径方向外側に位置しており、したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部の上面側には、略L字状に凹む段部21eが形成されている。
【0045】
第2の試薬容器テーブル22は、試薬容器300を載置する上面22hを有する第2載置部22aと、この第2載置部22aを下側から支持する第2支持部22bとを有し、この第2支持部22bの中央側が第2従動プーリ101に一体回転可能に連結されている。また、第2支持部22bには複数の第2開口22cが周方向に間隔をあけて形成されており、この第2開口22cを介して上下方向に空気が流通可能となっている。
【0046】
第1の試薬容器テーブル21の外周端、すなわち、第1支持部22bの外周端は、第2の試薬容器テーブル22の内周端、すなわち、第2載置部22aの内周端よりも径方向外側に配置されている。そのため、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは、上下方向に重複(オーバーラップ)しており、平面視で両テーブル21,22の間には隙間が生じないようになっている。図7において、両テーブル21,22の重複寸法を符号tで示す。
【0047】
また、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部は、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部の下側に配置されている。すなわち、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方における空気の流れ方向Cを基準とすると、当該流れ方向Cの上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部が、同下流側に位置する第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。
【0048】
また、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部は、第1の試薬容器テーブルの段部21eに入り込むように配置され、第1の試薬容器テーブル21の上面と、第2の試薬容器テーブル22の上面とが互いに同じ高さに配置されている。したがって、両テーブル21,22に載置される試薬容器300の高さを同じにすることができ、この試薬容器300から試薬を吸引する分注ユニット25〜29(図3参照)におけるピペット25cの昇降ストロークを均一にすることができる。そのため、分注ユニット25〜29の動作制御を簡素化することができる。また、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは非接触とされており、平面視において両テーブル21,22の間に隙間はなくても、両テーブル21,22を少ない回転抵抗で円滑に回転させることができる。
【0049】
図6に示されるように、ハウジング20の底壁63に設けられた伝熱層78の外周側には、環状の第1周溝135が形成されている。この第1周溝135は、伝熱層78において発生した結露水を収集する機能を有している。第1周溝135は、伝熱層78と同様に平面視で多角形状(図示例では六角形状)に形成されている。また、第1周溝135の底面には、第1排水孔136が形成されている。
【0050】
図9は、図6におけるA−A矢視断面図である。第1排水孔136には、第1排水管137が接続されている。第1周溝135に貯まった結露水は、第1排水管137に接続された図示しないポンプを定期的に作動させることによって、第1排水孔136から排出される。
【0051】
図6に示されるように、試薬庫10の底壁63に設けられた伝熱層78は、その径方向外側の外周部77よりも高く形成されているため、伝熱層78と周壁64との間には、外周部77を底面とする第2周溝110が形成される。この第2周溝110は、立壁部材81の下方に位置している。したがって、伝熱層78の外周部で発生した結露水や立壁部材81で発生した結露水は、主に第2周溝110に収集される。
【0052】
第2周溝110には、第2排水孔121と第3排水孔131とが形成されている。図9に示されるように、第3排水孔131は、第2周溝110の底面(外周部77の上面)と面一に形成されており、この第3排水孔131には、第3排水管132が接続されている。そして、第3排水管132に接続されたポンプ(図示省略)を定期的に作動させることによって、第2周溝110に貯まった結露水が第3排水孔131から排出される。
【0053】
図10は、図6におけるB−B矢視断面図である。第2排水孔121の周縁には、第2周溝110の底面から上方へ突出する円筒状の堰123が形成されている。この堰123は、頂部の高さHが伝熱層78の上面よりも低く形成されている。また、第2排水孔121には第3配水管124が接続されている。そして、第2周溝110に堰123を超える量の結露水が貯まった場合には、結露水は堰123をオーバーフローして第2排水孔121から外部へ自然に排出されるようになっている。
【0054】
図11は、本発明の第2の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。本実施の形態では、第1の試薬容器テーブル21の外周端面の上下中央部に径方向内方へ凹む溝部21fが周方向に形成され、第2の試薬容器テーブル22の内周端面の上下中央部に径方向外方へ突出する突条部22fが周方向に形成され、この突条部22fが溝部21f内に挿入されている。したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置されている。また、矢印Cで示す空気の流れ方向に関して、上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部は、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。また、第1の試薬容器テーブル21と第2の試薬容器テーブル22の上面とは互いに同じ高さに配置されている。したがって、両テーブル21,22に載置される試薬容器300の高さを同じにすることができ、この試薬容器300から試薬を吸引する分注ユニット25〜29(図3参照)におけるピペット25cの昇降ストロークを均一にすることができる。そのため、分注ユニット25〜29の動作制御を簡素化することができる。
【0055】
図12は、本発明の第3の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。本実施の形態では、第1の試薬容器テーブル21の外周端面が斜めに傾斜する傾斜面21gとされている。より具体的には、当該外周端面21gは、上部側が下部側よりも径方向内側へ位置するように傾斜する傾斜面とされている。他方、第2の試薬容器テーブル22の内周端面は、第1の試薬容器テーブル21の外周端面21gと略平行な関係で傾斜する傾斜面22gとされている。したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置されている。また、矢印Cで示す空気の流れ方向に関して、上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部が、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。
【0056】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば、送風ファン88は、上方から下方へ流動する空気流を生成しているが、下方から上方へ流動する空気流を生成してもよい。また、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方における空気の流れは、ハウジング20の周壁64から中心軸線Oへ向いた径方向内方への流れであってもよい。この場合、本発明の第4の実施の形態を示す図13に示されるように、空気の流れ方向Cに関して上流側に位置する第2の試薬容器テーブル22の内周縁部を、同下流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部よりも下側に配置することによって、両試薬容器テーブル21,22の隙間から空気が抜けてしまうのをより抑制することができる。
【0058】
また、搬送駆動部13は、第1の試薬容器テーブル21と第2の試薬容器テーブル22のいずれか一方を回転させることによって、両試薬容器テーブル21,22を相対的に回動駆動するものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 検体分析装置
10 試薬庫
13 搬送駆動部
20 ハウジング
21 試薬容器テーブル
22 試薬容器テーブル
80 冷却器
88 送風ファン
99 動力伝達機構
300 試薬容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、試薬庫内で冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の検体分析装置は、試薬庫の内部に内周側のトレイと外周側のトレイとを備え、それぞれのトレイを独立して回転駆動するように構成されている。また、特許文献1の検体分析装置は、試薬庫内の中央にファンを備え、このファンによって試薬庫内で冷却された空気を循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−8611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検体分析装置は、試薬庫内で内周側のトレイと外周側のトレイとを独立して回転させるために、内周側のトレイと外周側とのトレイとの間に隙間を設けている。そのため、ファンによって試薬庫の中央から外側へ流れる空気が内周側のトレイと外周側のトレイとの隙間から抜けてしまい、冷却された空気が試薬庫内の外周部まで到達し難く、当該試薬庫内の空気を均一に冷却することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑み、冷却された空気を試薬庫内で広く循環させて試薬庫内の空気を均一に冷却することができる検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置であって、
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、
前記試薬庫は、
ハウジングと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブルと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置され、前記第1の試薬容器テーブルの外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブルと、
前記第1の試薬容器テーブルと前記第2の試薬容器テーブルとを相対的に回転駆動する駆動部と、
前記ハウジング内の空気を冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された前記ハウジング内の空気を循環させる送風部と、を備えており、
前記第1の試薬容器テーブルの前記外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブルの前記内周縁部とが、上下方向に重複して配置されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1の試薬容器テーブルの外周縁部と、第2の試薬容器テーブルの内周縁部とが上下方向に重複して配置されているので、両試薬容器テーブルの間には上方から見て隙間が生じない。そのため、試薬容器テーブルの上方又は下方を流れる空気が両試薬容器テーブルの隙間から抜けてしまうのを抑制することができ、ハウジング内で広く空気を循環させてハウジング内の空気を均一に冷却することができる。
【0008】
前記第1の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面と、前記第2の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面とは、同一の高さに配置されていてもよい。
この構成によって、第1の試薬容器テーブルに載置された試薬容器と、第2の試薬容器テーブルに載置された試薬容器との高さを互いに同一にすることができる。そのため、試薬容器から試薬を吸引する装置を、いずれのテーブルに配置された試薬容器に対しても同様の態様で作動させることができ、当該装置の動作制御を簡素化することが可能となる。
【0009】
前記第1の試薬容器テーブルと、前記第2の試薬容器テーブルとは、互いに非接触であってもよい。
この構成によって、駆動部に対する負荷を小さくし、第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとを円滑に相対回転させることができる。
【0010】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方における空気の流れ方向に関して、上流側に位置する一方の前記試薬容器テーブルの前記縁部は、下流側に位置する他方の前記試薬容器テーブルの前記縁部よりも下側に配置されていることが好ましい。
このような構成によって、第1,第2の試薬容器テーブルの下方に流れる空気が、第1,第2の試薬容器テーブルの隙間から上方へ抜けてしまうのをより確実に抑制することができる。
【0011】
より具体的に、前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第1の試薬容器テーブルの内側から外側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部が、前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部よりも下側に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第2の試薬容器テーブルの外側から内側へ向かう径方向内方への空気の流れを生成し、
前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部が、前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部よりも下側に配置されていてもよい。
【0013】
前記駆動部は、前記ハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されていてもよい。
この構成によって、ハウジングから漏れた結露水等の水分が駆動部に付着するのを防止することができる。
【0014】
また、検体分析装置は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの少なくとも一方に前記駆動部の動力を伝達し、その一部が前記ハウジングを貫通して突出する動力伝達部と、
前記動力伝達部の一部と、この動力伝達部の一部に連結される前記駆動部の少なくとも一部とが収容され、前記ハウジングの内部空間とともに気密性が保たれた収容室と、を更に備えていてもよい。
駆動部がハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されている場合、この駆動部から試薬容器テーブルに動力を伝達する動力伝達部は、ハウジングを貫通して配置される場合があり、その貫通部を介してハウジング内の冷却された空気が外部に漏れると、冷却効率が著しく低下してしまう。そのため、本発明では、ハウジングから突出する動力伝達部の一部と、この動力伝達部の一部に連結される駆動部の少なくとも一部とを、ハウジングの内部空間とともに気密性が保持された収容室内に収容することによって、ハウジングから漏れた空気を収容室内で止めておくことができ、これによって冷却効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冷却された空気を試薬庫内で広く循環させ、試薬庫内の空気を均一に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る検体分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示される検体分析装置の概略構成図である。
【図3】試薬庫及び分注部を示す概略平面図である。
【図4】ハウジングの上面を開いた状態を示す概略平面図である。
【図5】図1に示される試薬庫を概略的に示す側面断面図である。
【図6】試薬庫の内底面を上方から見た水平断面図である。
【図7】試薬庫内の要部を拡大して概略的に示す側面断面図である。
【図8】立壁部材の一部を示す平面図である。
【図9】図6におけるA−A矢視断面図である。
【図10】図6におけるB−B矢視断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る検体分析装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る検体分析装置1の全体構成を示す斜視図である。
【0018】
検体分析装置1は、例えば、血液凝固測定装置、免疫分析装置、又は生化学分析装置であり、人体から採取した検体と試薬とを混和して調製された測定試料に対して所定の測定を行い、その測定結果をもとに検体の分析を行う装置である。検体分析装置1は、測定装置2と、この測定装置2に電気的に接続された制御装置4とから構成されている。また、測定装置2の筐体5の内部には、試薬が収納された複数の試薬容器を収容し、保冷するための試薬庫10が設けられている。測定装置2の筐体5は、開閉可能なカバー体5Aを有しており、このカバー体5Aを開くことによって試薬庫10の少なくとも一部(前部)が露出可能とされている。
【0019】
図2は、図1に示される検体分析装置1の概略構成図である。検体分析装置1の測定装置2は、前記試薬庫10の他、検体供給部12、搬送駆動部13、分注部14、測定部15、読取部33、制御回路16等を備えている。検体供給部12は、検体を収納した検体容器(試験管等)が保持された検体ラックがセットされ、この検体ラックを搬送することによって各検体容器を所定の分注位置に位置づける機能を有している。搬送駆動部13は、試薬庫10内に収容された試薬容器を搬送して所定の分注位置に位置づける機能を有している。
【0020】
分注部14は、測定試料を調製するために、所定の分注位置に位置づけられた検体容器や試薬容器から検体や試薬を分注する機能を有する。図3は、試薬庫10及び分注部14を示す平面図である。図3に示されるように、分注部14は、複数の分注ユニット25〜29を有しており、各分注ユニット25〜29によって試薬庫10に収容された試薬容器内から試薬を分注することが可能である。
【0021】
1つの分注ユニット25を例に説明すると、分注ユニット25は、支持部25aと、この支持部25aによって基端部側が支持されるアーム25bと、アーム25bの先端部に設けられたピペット25cとを有している。アーム25bは、ステッピングモータ等の駆動部によって基端部を支点として水平方向に回転駆動されるとともに、上下方向に昇降駆動される。ピペット25cは、アーム25bの水平回動及び上下昇降により、試薬庫10の上面に形成された吸引孔71に挿入され、試薬庫10内の試薬容器300(図5参照)から試薬を吸引する。その他の分注ユニット26〜29も、分注ユニット25と略同様の構成を備えているため、詳細な説明は省略する。
【0022】
図2に示されるように、測定部15は、検体と試料とが混和されることによって調製された測定試料に対して所定の測定を行う機能を有している。
読取部33は、試薬庫10内に収納された試薬容器300や、この試薬容器300を保持する試薬容器ラック310,320(図5参照)に貼付されたバーコードを読み取るバーコードリーダからなる。読取部33は、試薬庫10の外側に配置されており、試薬庫10に形成されかつシャッタにより開閉されるスリット(図示省略)を介して試薬庫10内のバーコードを読み取ることが可能となっている。
【0023】
図2に示されるように、制御回路16は、CPU、ROM,RAM等のメモリー、通信インタフェース等を備えており、検体供給部12、試薬庫10、搬送駆動部13、分注部14、測定部15、及び読取部33等の動作を制御するとともに、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4との間で各種情報の送受信を行う機能を有している。
【0024】
図1に示されるように、制御装置4は、パーソナルコンピュータ401(PC)等からなり、制御部4aと、表示部4bと、情報を入力するためのキーボード4cとを含んでいる。制御部4aは、測定装置2の制御回路16に当該測定装置2の動作開始信号を送信するとともに、測定装置2で得られた測定結果についての情報を分析するための機能を有している。また、表示部4bは、制御部4aで得られた分析結果等を表示する機能を有している。
【0025】
[試薬庫10の詳細な構成]
図5は、試薬庫10を概略的に示す側面断面図である。
試薬庫10は、検体に添加される試薬を収容した試薬容器300を、低温(約10℃)で冷蔵保存するとともに、軸線Oを中心とする回転方向に搬送するために設けられている。試薬は、低温で保存されることによって変質が抑制される。また、試薬庫10は、ハウジング20と、このハウジング20内に配置され、試薬を収容した試薬容器300を載置させる試薬容器テーブル21,22とを備えている。
【0026】
試薬容器テーブル21,22は、円環状の第1の試薬容器テーブル21と、この第1の試薬容器テーブル21の径方向外側に、当該第1の試薬容器テーブル21と同心状に配置された円環形状の第2の試薬容器テーブル22とからなる。第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ、複数の試薬容器300を保持する第1の試薬容器ラック310および第2の試薬容器ラック320が着脱可能に配置されるように構成されている。
【0027】
第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ搬送駆動部13によって相対的に回転駆動される。より具体的には、第1の試薬容器テーブル21および第2の試薬容器テーブル22は、それぞれ搬送駆動部13によって軸線Oを中心として時計回り方向および反時計回り方向の両方向に互いに独立して回転される。これにより、各試薬容器テーブル21,22に載置された試薬容器300が回転方向に搬送される。そして、試薬容器300を回転方向に搬送することによって、各試薬容器300を、分注ユニット25〜29による分注位置に配置することができる。搬送駆動部13の詳細な構成は後述する。
【0028】
図5に示されるように、試薬庫10のハウジング20は、ハウジング20の底部を構成する底壁63及びこの底壁63の外周から立ち上がる周壁(側壁)64を備えた有底円筒形状の本体部65と、この本体部65の上部開口を塞ぎ、当該試薬庫10の上壁として機能する蓋部66とを備えている。本体部65と蓋部66によって囲まれた密閉空間が冷却室とされ、この冷却室内の試薬容器テーブル21,22に載置された複数の試薬容器300は、その全体が周壁64によって径方向外側(水平方向の外側)から囲まれる。
【0029】
蓋部66は、図3に示されるように、本体部65の略後側半分を塞ぐ固定蓋67と、本体部65の略前側半分を塞ぐ開閉可能な可動蓋68とにより構成されている。可動蓋68は、固定蓋67の前縁にヒンジ部材69を介して揺動可能に連結されている。
【0030】
また、ハウジング20の蓋部66には、複数の吸引孔71が形成されており、この吸引孔71に、分注ユニット25〜29のピペット25cが挿入されるとともに、試薬庫10に収納された試薬容器300内の試薬が、試薬容器300の上部開口から吸引されるように構成されている。
【0031】
なお、試薬庫10に対する試薬の交換は、測定装置2のカバー体5A(図1参照)を開いて試薬庫10の前部側を露出し、可動蓋68を上方に開いて試薬庫10の前側半分を開放させることによって試薬容器ラック310,320ごとに行うことができる。図4は、蓋部66を開いた状態を示す試薬庫の平面図である。蓋部66を開くと、本体部65の内部が露出され、試薬容器300を保持した試薬容器ラック310,320の本体部65内への挿入と本体部65内からの取出とが可能となっている。
【0032】
図5に示されるように、ハウジング20の本体部65は、周壁(側壁)64と底壁63を備えている。また、底壁63は、中央部(伝熱層)78と外周部77とからなり、外周部77は、周壁64の下端に連なって形成されている。
【0033】
図6は、試薬庫10の内底面を上方から見た水平断面図である。図6に示されるように、ハウジング20の底壁63に設けられた伝熱層78は、平面視で多角形状(図示例では六角形状)に形成されている。また、図5及び図6に示されるように、伝熱層78は、その下面の一部が下方に露出しており、その露出面には冷却器80が設けられている。本実施の形態では、2個の冷却器80が、試薬庫10の中心軸線O(第1,第2の試薬容器テーブル21,22の回転中心)を中心に対称位置に配置されている。冷却器80は、熱伝導性の高い伝熱層78を直接的に冷却することによって、この伝熱層78自体を冷却媒体として用い、試薬庫10内の空気を冷却するように構成されている。なお、冷却器80としては、ペルチェ素子を用いたものに限らず、例えば伝熱層78を空冷または水冷によって冷却する構成であってもよい。また、伝熱層78の平面形状は多角形状に限らず円形状であってもよい。
【0034】
また、本体部65の周壁64の内側には、当該周壁64に沿って周方向に立壁部材81が設けられている。この立壁部材81は、図5に示されるように、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の上面よりも下方に位置し、周壁64の内側において当該周壁64の内面から離間して配置されている。また、図6に示されるように、立壁部材81は、平面視で略円形状に形成され、ハウジング20の略全周に亘って設けられている。なお、本実施の形態の立壁部材81は、帯状の板材を多角形状に屈曲することによって略円形状に形成されている。
【0035】
立壁部材81の下端部には、径方向内方へ突出する取付片81aが設けられており、この取付片81aを、伝熱層78の上面にネジ止めすることによって、立壁部材81が伝熱層78に接続されている。
【0036】
また、伝熱層78の上面には、ヒートシンク82が設けられている。このヒートシンク82は、アルミ等の熱伝導性の高い材料で形成され、多数の突起又はフィンを備えることによって表面積が増大している。ヒートシンク82は、図6に示されるように、2個の冷却器80の上方に対応する位置にそれぞれ設けられ、伝熱層78を介して冷却器80によって冷却される。
【0037】
図5に示されるように、試薬庫10において、第1の試薬容器テーブル21の中央部には、筒形状に形成された導風体21dが立設されており、この導風体21dの内部に、送風ファン(送風部)88が設けられている。送風ファン88は、導風体21dを空気の流通路とし、導風体21dの上方から吸い込んだ空気を導風体21dの下方へ吹き出すように構成されている。そのため、送風ファン88によって生成された空気流は、冷却器80によって直接的に冷却された伝熱層78に対して吹き付けられる。これによって空気流を効率よく冷却することができる。
【0038】
送風ファン88によって生成された空気流は、伝熱層78に吹き付けられた後、径方向外方へ流れ、立壁部材81に当たって上方へ向きが変えられることによって、試薬庫10の周壁64(内側面)と第2の試薬容器テーブル22との間を通って第2の試薬容器テーブル22の上方へ流れる。その後、この空気流は、蓋部66の下面に沿って径方向内方へ流れると共に、導風体21dの上部に吸い込まれ、再び送風ファン88によって下方へ吹き出され、試薬庫10の内部を循環する。第1,第2の試薬容器テーブル21,22に配置された試薬容器300内の試薬は、送風ファン88によって循環された空気によって、所望の温度、例えば約10℃に冷却される。
【0039】
図5に示されるように、第1,第2の試薬容器テーブル21,22は、搬送駆動部13によって回転駆動される。具体的に、搬送駆動部13は、ステッピングモータ等からなる第1駆動体97及び第2駆動体98を有している。この第1,第2駆動体97,98は、ハウジング20の側方に配置されており、第1,第2の試薬容器テーブル21,22に動力伝達機構99を介して接続されている。この動力伝達機構99は、第1従動プーリ100、第2従動プーリ101、第1駆動プーリ102、第2駆動プーリ103、第1伝動ベルト104、及び第2伝動ベルト105から構成されている。第1従動プーリ100及び第2従動プーリ101は、試薬庫10の中心軸線O上に配置され、互いに相対回転可能にハウジング20の底部に支持されている。また、第1従動プーリ100には第1の試薬容器テーブル21が連結され、第2従動プーリ101には第2の試薬容器テーブル22が連結されている。
【0040】
第1駆動プーリ102は、第1駆動体97の出力軸に取り付けられ、第2駆動プーリ103は、第2駆動体98の出力軸に取り付けられている。第1伝動ベルト104は、第1従動プーリ100と第1駆動プーリ102とに巻き掛けられ、第2伝動ベルト105は、第2従動プーリ101と第2駆動プーリ103とに巻き掛けられている。したがって、第1駆動体97を作動させることによって、第1駆動プーリ102、第1伝動ベルト104、第1従動プーリ100を介して第1の試薬容器テーブル21を回転させることができ、第2駆動体98を作動させることによって、第2駆動プーリ103、第2伝動ベルト105、第2従動プーリ101を介して第2の試薬容器テーブル22を回転させることができる。
【0041】
ハウジング20の周壁64には、第1伝動ベルト104と第2伝動ベルト105を通過させるための第1挿通口107と、第2挿通口108とが形成されている。また、試薬庫10の側方には、断熱材で囲まれるとともに気密性が保たれた収容室109が形成されており、この収容室109は第1挿通口107及び第2挿通口108を介して試薬庫10内に連通している。第1,第2駆動体97,98の各出力軸、第1,第2駆動プーリ102,103、第1,第2伝動ベルト104,105の一部は、この収容室109に配置されている。このため、第1,第2挿通口107,108からハウジング20内の冷却空気が漏れたとしても収容室109内で止めることができるため、ハウジング20内の冷却効率の低下を抑制することができる。
【0042】
また、第1駆動体97及び第2駆動体98は、試薬庫10の側方に配置されているため、試薬庫10内で発生した結露水が試薬庫10の下方に滲み出た場合等であっても第1駆動体97及び第2駆動体98に付着してしまうことはなく、第1駆動体97及び第2駆動体98の故障を防ぐことができる。
【0043】
なお、第1駆動体97及び第2駆動体98は、試薬庫10の側方に限らず、試薬庫10の外側であって下方を除く領域であればどこに配置してもよい。また、動力伝達機構99は、プーリと伝動ベルトとによる巻き掛け伝達機構とされているが、これに限らず、ギヤ伝達機構等の他の動力伝達機構を採用することができる。
【0044】
図7は、試薬庫10内の要部を拡大して概略的に示す側面断面図である。
図7に示されるように、第1の試薬容器テーブル21は、試薬容器300を載置する上面21hを有する第1載置部21aと、この第1載置部21aを下側から支持する第1支持部21bとを有しており、この第1支持部21bの中央部が第1従動プーリ100に一体回転可能に連結されている。また、第1支持部21bの中央寄り(送風ファン88の下方領域)には複数の第1開口21cが周方向に間隔をあけて形成されており、この第1開口21cを介して上下方向に空気の流通が可能となっている。第1支持部21bの外周端は、第1載置部21aの外周端よりも径方向外側に位置しており、したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部の上面側には、略L字状に凹む段部21eが形成されている。
【0045】
第2の試薬容器テーブル22は、試薬容器300を載置する上面22hを有する第2載置部22aと、この第2載置部22aを下側から支持する第2支持部22bとを有し、この第2支持部22bの中央側が第2従動プーリ101に一体回転可能に連結されている。また、第2支持部22bには複数の第2開口22cが周方向に間隔をあけて形成されており、この第2開口22cを介して上下方向に空気が流通可能となっている。
【0046】
第1の試薬容器テーブル21の外周端、すなわち、第1支持部22bの外周端は、第2の試薬容器テーブル22の内周端、すなわち、第2載置部22aの内周端よりも径方向外側に配置されている。そのため、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは、上下方向に重複(オーバーラップ)しており、平面視で両テーブル21,22の間には隙間が生じないようになっている。図7において、両テーブル21,22の重複寸法を符号tで示す。
【0047】
また、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部は、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部の下側に配置されている。すなわち、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方における空気の流れ方向Cを基準とすると、当該流れ方向Cの上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部が、同下流側に位置する第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。
【0048】
また、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部は、第1の試薬容器テーブルの段部21eに入り込むように配置され、第1の試薬容器テーブル21の上面と、第2の試薬容器テーブル22の上面とが互いに同じ高さに配置されている。したがって、両テーブル21,22に載置される試薬容器300の高さを同じにすることができ、この試薬容器300から試薬を吸引する分注ユニット25〜29(図3参照)におけるピペット25cの昇降ストロークを均一にすることができる。そのため、分注ユニット25〜29の動作制御を簡素化することができる。また、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは非接触とされており、平面視において両テーブル21,22の間に隙間はなくても、両テーブル21,22を少ない回転抵抗で円滑に回転させることができる。
【0049】
図6に示されるように、ハウジング20の底壁63に設けられた伝熱層78の外周側には、環状の第1周溝135が形成されている。この第1周溝135は、伝熱層78において発生した結露水を収集する機能を有している。第1周溝135は、伝熱層78と同様に平面視で多角形状(図示例では六角形状)に形成されている。また、第1周溝135の底面には、第1排水孔136が形成されている。
【0050】
図9は、図6におけるA−A矢視断面図である。第1排水孔136には、第1排水管137が接続されている。第1周溝135に貯まった結露水は、第1排水管137に接続された図示しないポンプを定期的に作動させることによって、第1排水孔136から排出される。
【0051】
図6に示されるように、試薬庫10の底壁63に設けられた伝熱層78は、その径方向外側の外周部77よりも高く形成されているため、伝熱層78と周壁64との間には、外周部77を底面とする第2周溝110が形成される。この第2周溝110は、立壁部材81の下方に位置している。したがって、伝熱層78の外周部で発生した結露水や立壁部材81で発生した結露水は、主に第2周溝110に収集される。
【0052】
第2周溝110には、第2排水孔121と第3排水孔131とが形成されている。図9に示されるように、第3排水孔131は、第2周溝110の底面(外周部77の上面)と面一に形成されており、この第3排水孔131には、第3排水管132が接続されている。そして、第3排水管132に接続されたポンプ(図示省略)を定期的に作動させることによって、第2周溝110に貯まった結露水が第3排水孔131から排出される。
【0053】
図10は、図6におけるB−B矢視断面図である。第2排水孔121の周縁には、第2周溝110の底面から上方へ突出する円筒状の堰123が形成されている。この堰123は、頂部の高さHが伝熱層78の上面よりも低く形成されている。また、第2排水孔121には第3配水管124が接続されている。そして、第2周溝110に堰123を超える量の結露水が貯まった場合には、結露水は堰123をオーバーフローして第2排水孔121から外部へ自然に排出されるようになっている。
【0054】
図11は、本発明の第2の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。本実施の形態では、第1の試薬容器テーブル21の外周端面の上下中央部に径方向内方へ凹む溝部21fが周方向に形成され、第2の試薬容器テーブル22の内周端面の上下中央部に径方向外方へ突出する突条部22fが周方向に形成され、この突条部22fが溝部21f内に挿入されている。したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置されている。また、矢印Cで示す空気の流れ方向に関して、上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部は、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。また、第1の試薬容器テーブル21と第2の試薬容器テーブル22の上面とは互いに同じ高さに配置されている。したがって、両テーブル21,22に載置される試薬容器300の高さを同じにすることができ、この試薬容器300から試薬を吸引する分注ユニット25〜29(図3参照)におけるピペット25cの昇降ストロークを均一にすることができる。そのため、分注ユニット25〜29の動作制御を簡素化することができる。
【0055】
図12は、本発明の第3の実施の形態における第1の試薬容器テーブルと第2の試薬容器テーブルとの境界部を示す断面説明図である。本実施の形態では、第1の試薬容器テーブル21の外周端面が斜めに傾斜する傾斜面21gとされている。より具体的には、当該外周端面21gは、上部側が下部側よりも径方向内側へ位置するように傾斜する傾斜面とされている。他方、第2の試薬容器テーブル22の内周端面は、第1の試薬容器テーブル21の外周端面21gと略平行な関係で傾斜する傾斜面22gとされている。したがって、第1の試薬容器テーブル21の外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブル22の内周縁部とは上下方向に重複して配置されている。また、矢印Cで示す空気の流れ方向に関して、上流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部が、第2の試薬容器テーブル22の内周縁部よりも下側に配置されている。したがって、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方を流れる空気は、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の隙間を通って上方へ抜け難くなっている。そのため、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方においては、ハウジング20の中央部からハウジング20の周壁64に到る空気の流れを確実に生成することができ、ハウジング20内における空気の循環を適切に行うことができる。
【0056】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0057】
例えば、送風ファン88は、上方から下方へ流動する空気流を生成しているが、下方から上方へ流動する空気流を生成してもよい。また、第1,第2の試薬容器テーブル21,22の下方における空気の流れは、ハウジング20の周壁64から中心軸線Oへ向いた径方向内方への流れであってもよい。この場合、本発明の第4の実施の形態を示す図13に示されるように、空気の流れ方向Cに関して上流側に位置する第2の試薬容器テーブル22の内周縁部を、同下流側に位置する第1の試薬容器テーブル21の外周縁部よりも下側に配置することによって、両試薬容器テーブル21,22の隙間から空気が抜けてしまうのをより抑制することができる。
【0058】
また、搬送駆動部13は、第1の試薬容器テーブル21と第2の試薬容器テーブル22のいずれか一方を回転させることによって、両試薬容器テーブル21,22を相対的に回動駆動するものであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 検体分析装置
10 試薬庫
13 搬送駆動部
20 ハウジング
21 試薬容器テーブル
22 試薬容器テーブル
80 冷却器
88 送風ファン
99 動力伝達機構
300 試薬容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置であって、
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、
前記試薬庫は、
ハウジングと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブルと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置され、前記第1の試薬容器テーブルの外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブルと、
前記第1の試薬容器テーブルと前記第2の試薬容器テーブルとを相対的に回転駆動する駆動部と、
前記ハウジング内の空気を冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された前記ハウジング内の空気を循環させる送風部と、を備えており、
前記第1の試薬容器テーブルの前記外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブルの前記内周縁部とが、上下方向に重複して配置されている、検体分析装置。
【請求項2】
前記第1の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面と、前記第2の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面とが、同一の高さに配置されている請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記第1の試薬容器テーブルと、前記第2の試薬容器テーブルとが、互いに非接触である、請求項1又は2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方における空気の流れ方向に関して、上流側に位置する一方の前記試薬容器テーブルの前記縁部が、下流側に位置する他方の前記試薬容器テーブルの前記縁部よりも下側に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第1の試薬容器テーブルの内側から外側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部が、前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部よりも下側に配置されている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第2の試薬容器テーブルの外側から内側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部が、前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部よりも下側に配置されている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記駆動部が、前記ハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの少なくとも一方に対して前記駆動部の動力を伝達し、その一部が前記ハウジングを貫通して突出する動力伝達部と、
前記動力伝達部の前記一部と、この動力伝達部の前記一部に連結される前記駆動部の少なくとも一部とが収容され、前記ハウジングの内部空間とともに気密性が保たれた収容室と、を更に備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項1】
冷却された試薬を用いて検体を分析する検体分析装置であって、
試薬容器を収容し、収容した試薬容器内の試薬を冷却する試薬庫を備え、
前記試薬庫は、
ハウジングと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置された、外周縁部を有する第1の試薬容器テーブルと、
前記ハウジング内において当該ハウジングの底部から上方に間隔をあけて配置され、前記第1の試薬容器テーブルの外周側に配置された、内周縁部を有する環状の第2の試薬容器テーブルと、
前記第1の試薬容器テーブルと前記第2の試薬容器テーブルとを相対的に回転駆動する駆動部と、
前記ハウジング内の空気を冷却する冷却部と、
前記冷却部によって冷却された前記ハウジング内の空気を循環させる送風部と、を備えており、
前記第1の試薬容器テーブルの前記外周縁部と、前記第2の試薬容器テーブルの前記内周縁部とが、上下方向に重複して配置されている、検体分析装置。
【請求項2】
前記第1の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面と、前記第2の試薬容器テーブルの試薬容器を載置する上面とが、同一の高さに配置されている請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記第1の試薬容器テーブルと、前記第2の試薬容器テーブルとが、互いに非接触である、請求項1又は2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方における空気の流れ方向に関して、上流側に位置する一方の前記試薬容器テーブルの前記縁部が、下流側に位置する他方の前記試薬容器テーブルの前記縁部よりも下側に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第1の試薬容器テーブルの内側から外側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部が、前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部よりも下側に配置されている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記送風部は、前記第1の試薬容器テーブル及び第2の試薬容器テーブルの下方において、前記第2の試薬容器テーブルの外側から内側へ向かう空気の流れを生成し、
前記第2の試薬容器テーブルの内周縁部が、前記第1の試薬容器テーブルの外周縁部よりも下側に配置されている、請求項4に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記駆動部が、前記ハウジングの外側であって当該ハウジングの下方を除く領域に配置されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記第1の試薬容器テーブル及び前記第2の試薬容器テーブルの少なくとも一方に対して前記駆動部の動力を伝達し、その一部が前記ハウジングを貫通して突出する動力伝達部と、
前記動力伝達部の前記一部と、この動力伝達部の前記一部に連結される前記駆動部の少なくとも一部とが収容され、前記ハウジングの内部空間とともに気密性が保たれた収容室と、を更に備えている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−194072(P2012−194072A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58481(P2011−58481)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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