説明

検出装置及び検出方法

【課題】より高い精度で異物や不良品の検出を行う。
【解決手段】異状検査システム100(検出装置)は、検査対象物3を撮像する光源ユニット10及び検出ユニット20と、撮像により得られたスペクトル画像をサポートベクターマシンを用いて解析し検査対象物3中に混在する異物または不良品を検出する分析ユニット30と、を備える。この異状検査システム100では、サポートベクターマシンを用いてスペクトル画像を解析して、異物また不良品を検出するため、従来の主成分分析と比較して、例えば正常部分と異状部分とのスペクトルの差が微弱であっても検出が可能となるため、より高い精度で異状部分の検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する検出装置及びこの検出装置による検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工ライン上を流れる検査対象物に混在する異物や不良品の検知を目的として、検査対象物を撮像した後、その画像データを分析して異常の有無を判断することが行われている。例えば、特許文献1では、照射手段を用いて近赤外光を検査対象物に対して照射し、検査対象物からの反射光を平面分光器により平面分光した後撮像することで反射光スペクトルデータを取得し、この反射スペクトルデータを主成分分析法により分析することで異種品を検出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/038443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の主成分分析法を用いて異物や不良品を検出する場合、スペクトルを構成する各プロットの分散が最大になるように主成分を決定して分析を行う。したがって、仮に、ノイズ成分の割合が高い状態で測定したスペクトルを用いたために、検査対象物のスペクトルに対する異物や不良品のスペクトルの差が微弱である場合には、この微弱なスペクトルの差を用いて主成分が決定されるため、異物や不良品の判別性能が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、より高い精度で異物や不良品の検出を行うことが可能な検出装置及びこの検出装置を用いた検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る検出装置は、検査対象物を撮像して得られたスペクトル画像に基づいて、該検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する装置であって、検査対象物を撮像する撮像部と、撮像部による撮像により得られたスペクトル画像を、サポートベクターマシンを用いて解析し、検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の検出装置によれば、サポートベクターマシンを用いてスペクトル画像を解析して、異物また不良品を検出するため、従来の主成分分析と比較して、例えば正常部分と異状部分とのスペクトルの差が微弱であっても検出が可能となるため、より高い精度で異状部分の検出を行うことができる。
【0008】
ここで、検査対象物と撮像部との間に、撮像部の視野領域を変更するための可動ミラーを有する態様とすることができる。この場合、検査対象物に対する撮像範囲の変更を容易に行うことが可能となる。
【0009】
また、撮像部に入射する光を分光する波長可変フィルタを有する態様としてもよい。さらに、検査対象物に対して光を照射する波長可変光源を有する態様とすることもできる。
【0010】
また、本発明に係る検出方法は、検査対象物を撮像して得られたスペクトル画像に基づいて、該検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する方法であって、スペクトル画像に含まれる各画素のスペクトルについてサポートベクターマシンを用いて解析し、この結果に基づいて各画素における異物または不良品の有無を判定する判定ステップを含むことを特徴とする。
【0011】
ここで、判定ステップの前に、スペクトル画像に含まれる全画素に対して、スペクトル強度の線形結合を計算し、予め設定された閾値と比較することにより検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、判定ステップにおいて、抽出ステップにおいて抽出されたスペクトルについて解析を行う態様とすることができる。
【0012】
また、判定ステップの前に、スペクトル画像に含まれる全画素に対して、任意の波長のスペクトル強度を四則演算し、予め設定された閾値と比較することにより検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、判定ステップにおいて、抽出ステップにおいて抽出されたスペクトルについて解析を行う態様としてもよい。
【0013】
このように抽出ステップにおいて検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出するステップをさらに備えることで、全ての画素、すなわち、検査対象物ではない背景等を撮像した画素のスペクトルに対してサポートベクターマシンを用いた解析を行う場合と比較して、検出に係る作業量や計算コストを大幅に削減することができるため、より高速に検出を行うことが可能となる。
【0014】
さらに、判定ステップの前に、スペクトル画像に含まれる全画素に対して、画素ごとに線形サポートベクターマシンを用いることで検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、判定ステップにおいて、抽出ステップにおいて抽出したスペクトルについて非線形サポートベクターマシンを用いて解析を行う態様とすることもできる。
【0015】
上記の構成を有する場合、サポートベクターマシンでも作業量が少ない線形サポートベクターマシンを用いてまず検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出し、その後非線形サポートベクターマシンを用いて検査対象物を撮像した画素のスペクトルの解析を行う構成とすることで、検出に係る作業量や計算コストを大幅に削減することができるため、より高速に検出を行うことが可能となる。
【0016】
また、判定ステップの後に、判定ステップにおいて異物または不良品が有ると判定された画素に対して、この画素を含む所定の範囲内に、異物または不良品が有ると判定された画素が所定数以上含まれているか否かの判定を行うステップをさらに含む態様としてもよい。
【0017】
この場合、周囲の画素の判定結果を併せて参照することにより、異物または不良品が有ると判定された理由が偶発的なノイズであるのか、または、本当に異物または不良品が有ると推測されるのか、を判断することができるため、より高精度に検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より高い精度で異物や不良品の検出を行うことが可能な検出装置及びこの検出装置を用いた検出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る異状検査システムの構成を示す図である。
【図2】ハイパースペクトル画像についてその概略を説明する図である。
【図3】本実施形態に係る異状検査システムの他の構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係る異状検査システムの他の構成を示す図である。
【図5】本実施形態に係る異状検査システムの他の構成を示す図である。
【図6】分析ユニットの概略構成図である。
【図7】分析ユニットにおいてSVMを用いた識別を行う前に行われる学習方法を示すフローチャートである。
【図8】分析ユニットにおける画像データの分析方法を示すフローチャートである。
【図9】分析ユニットにおける最終判定方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(異状検査システム(検出装置)の構成)
本発明に係る画像データ分析装置を含んで構成される異状検査システム100について図1を用いて説明する。本実施形態に係る異状検査システム100は、ベルトコンベア2上に分散載置された検査対象物3(図1では検査対象物の載置位置を示す)に混入した異物や検査対象物3の変質等の異状の有無を検査する装置である。本実施形態に係る異状検査システム100の検査対象物3としては、食品や医薬品等の原材料や製品等が挙げられる。そしてこれらの検査対象物3に付着する異物としては、毛髪等の生体由来物や、製造装置等に由来する金属や、夾雑物等が挙げられる。また、検査対象物3の変質等の異状は、検査対象物3に含まれる水分や糖分の量などを測定することにより検出することができる。異状検査システム100は、測定光を検査対象物3に対して照射することにより得られる拡散反射光のスペクトルを測定し、そのスペクトルに基づいて検査対象物3に付着した異物や変質等の異状を検出する。このため、異状検査システム100は、光源ユニット10、検出ユニット20(撮像部)、及び分析ユニット30(制御部)を備える。
【0022】
光源ユニット10は、一定の波長帯域を有する測定光を、ベルトコンベア2上における所定の照射領域A1へ向けて照射する。光源ユニット10が照射する測定光の波長範囲は、検査対象物3や、検出対象となる検査対象物3に付着した異物や変質等の異状に応じて適宜選択される。測定光として近赤外光を用いる場合、具体的には、波長範囲が800nm〜2500nmの光が好適に用いられるが、近赤外光に代えて可視光を測定光として用いることも可能である。なお、本実施形態では、スーパーコンティニューム(SC)光を発生する光源11(SC光源)を含む光源ユニット10について説明する
【0023】
照射領域A1とは、検査対象物3を載置するベルトコンベア2の表面(載置面2b)の一部の領域である。この照射領域A1は、載置面2bの進行方向2a(図1のy軸方向)と垂直な幅方向(x軸方向)に広がり、載置面2bの一方の端から他方の端までを覆うライン状に延びる領域である。そして、照射領域A1の延在方向に垂直な方向(y軸方向)における照射領域A1の幅は10mm以下とされる。
【0024】
光源ユニット10は、SC光を出射する光源11と、照射部12と、光源11と照射部12とを接続する光ファイバ13と、を備える。光源11は、近赤外光としてSC光を発生させる。さらに具体的には、SC光源である光源11は、種光源及び非線形媒質を備え、種光源から出射される光を非線形媒質に入力し、非線形媒質中における非線形光学効果によりスペクトルを広帯域に広げてSC光を出力する。
【0025】
光源11により発生された近赤外光(SC光)は、光ファイバ13の一方の端面へ入射される。この近赤外光は、光ファイバ13のコア領域を導波し、もう一方の端面から照射部12に対して出射される。
【0026】
照射部12は、光ファイバ13の端面から出射される近赤外光(SC光)を検査対象物3が載置される照射領域A1に対して照射する。照射部12は、光ファイバ13から出射される近赤外光を入射して、照射領域A1に対応した1次元のライン状に出射するため、照射部12としてシリンドリカルレンズが好適に用いられる。このように照射部12においてライン状に整形された近赤外光L1が、照射部12から照射領域A1に対して照射される。
【0027】
光源ユニット10から出力された近赤外光L1は、照射領域A1上に載置された検査対象物3により拡散反射される。そして、その一部が、拡散反射光L2として検出ユニット20に入射する。
【0028】
検出ユニット20は、ハイパースペクトル画像を取得するハイパースペクトルセンサとしての機能を有する。ここで、本実施形態におけるハイパースペクトル画像について図2を用いて説明する。図2は、ハイパースペクトル画像についてその概略を説明する図である。図2に示すように、ハイパースペクトル画像とは、N個の画素P〜Pにより構成されている画像である。図2ではそのうちの一例として2個の画素P及びPについて具体的に示している。画素P及びPには、それぞれ複数の強度データからなるスペクトル情報S及びSが含まれている。この強度データとは、特定の波長(又は波長帯域)におけるスペクトル強度を示すデータであり、図2では、15個の強度データがスペクトル情報S及びSとして保持されていて、これらを重ね合わせた状態で示している。このように、ハイパースペクトル画像Hは、画像を構成する画素毎に、それぞれ複数の強度データを持つという特徴から、画像としての二次元的要素と、スペクトルデータとしての要素をあわせ持った三次元的構成のデータである。なお、本実施形態では、ハイパースペクトル画像Hとは、1画素あたり少なくとも5つの波長帯域における強度データを保有している画素によって構成された画像のことをいう。なお、図2では検査対象物3もあわせて示している。すなわち、図2においてPは検査対象物3を撮像した画素であり、Pは背景(例えば、ベルトコンベア)を撮像した画素である。
【0029】
図1に戻り、本実施形態に係る検出ユニット20は、カメラレンズ24と、スリット21と、分光器22と、受光部23と、を備える。この検出ユニット20は、その視野領域20sがベルトコンベア2の進行方向2aと垂直な方向(x軸方向)に延びている。検出ユニット20の視野領域20sは、載置面2bの照射領域A1に含まれるライン状の領域であって、スリット21を通過した拡散反射光L2が受光部23上に像を結ぶ領域である。
【0030】
スリット21は、照射領域A1の延在方向(x軸方向)と平行な方向に開口が設けられる。検出ユニット20のスリット21に入射した拡散反射光L2は、分光器22へ入射する。
【0031】
分光器22は、スリット21の長手方向、すなわち照射領域A1の延在方向に垂直な方向(y軸方向)に拡散反射光L2を分光する。分光器22により分光された光は、受光部23によって受光される。
【0032】
受光部23は、複数の受光素子が2次元に配列された受光面を備え、各受光素子が光を受光する。これにより、受光部23がベルトコンベア2上の幅方向(x軸方向)に沿った各位置で反射した拡散反射光L2の各波長の光をそれぞれ受光することとなる。各受光素子は、受光した光の強度に応じた信号を位置と波長とからなる二次元平面状の一点に関する情報として出力する。この受光部23の受光素子から出力される信号が、ハイパースペクトル画像に係る画像データとして、検出ユニット20から分析ユニット30に送られる。
【0033】
分析ユニット30(画像データ分析装置)は、入力された信号により拡散反射光L2のスペクトルを得て、この得られたスペクトルに基づいて検査を行う。検査対象物3に含まれる異物を検出する場合は、次のような原理で検査を行う。異物は、光源11から出力される測定光(本実施形態では近赤外光)の波長範囲において吸収帯域を有する。そこで、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2によるハイパースペクトル画像Hにおいて画素毎に含まれて複数の強度データにより構成されるスペクトル情報を参照し、異物に由来する特定の吸収ピークを検出することにより、異物を検出する。また、検査対象物3に含まれる水分や糖分の量を測定する場合は、次のような原理で検査を行う。例えば、糖分は波長1500nm付近と波長2100nm付近に吸収ピークを有するので、検査対象物3中に糖分が含まれる場合は、これらの波長の前後少なくとも100nmの範囲の近赤外光を照射し、拡散反射光L2のスペクトルを分析することで、食品中の糖分に由来するピークを検出することができる。糖分に由来するピークの位置や強度から、糖分の種類やその含有量を求めることができ、検査対象物3の異状を検出したり、品質を評価したりすることができる。そして、この分析ユニット30による分析の結果は、例えば分析ユニット30に接続されるモニタや、プリンタ等に出力することによって、この異状検査システム100のオペレータに通知される。
【0034】
この分析ユニット30は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置であるRAM(RandomAccess Memory)及びROM(Read Only Memory)、検出ユニット等の他の機器との間の通信を行う通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、分析ユニット30としての機能が発揮される。その分析ユニット30による分析処理の概要やその具体的な手法については後述する。
【0035】
なお、上記の異状検査システム100のうち、光源ユニット10、検出ユニット20の構成は種々の変更を行うことができる。以下、光源ユニット10及び検出ユニット20の変形例について説明する。
【0036】
(変形例−1)
図3は、異状検査システム200の構成を示す概略構成図である。図3に示す異状検査システムが、上記異状検査システム100と異なる点は以下の通りである。すなわち、検査対象物3と検出ユニット20との間に可動式ミラーからなるミラースキャナ40が設けられ、このミラースキャナ40が回転することにより、視野領域20sを移動させる構成を備えている点である。なお、分析ユニット30は異状検査システム100と同様に検出ユニット20に対して接続しているが、図3では図示していない。
【0037】
この異状検査システム200においては、検査対象物3は搭載台Bに載せられて移動する。そして、異状検査システム200による検査が行われている間は、搭載台Bは所定の測定領域で停止する。そして、搭載台Bが停止し、検査対象物3の移動も停止している間に、光源ユニット10が近赤外光L1を出力すると共に、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2を検出ユニット20において検出する。また、ミラースキャナ40が回転することにより、視野領域20sが変更されることで、複数の視野領域における検査対象物3の拡散反射光を検出ユニット20で検出することができる。
【0038】
このように、異状検査システム200の構成によれば、分析中は検査対象物3を移動させることなく、ミラースキャナ4の駆動によって、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2によるハイパースペクトル画像Hを得ることができる。
【0039】
(変形例−2)
図4は、異状検査システム300の構成を示す概略構成図である。図4に示す異状検査システムが、図1の異状検査システム100と異なる点は以下の通りである。すなわち、光源ユニット10において、光源11AがSC光源ではなく波長可変光源である点、及び、光源11Aからの出射された光をライン状に整形する照射部12が設けられていない点である。また、光源11Aとして波長可変光源が設けられているため、異常検査システム300の検出ユニット20には分光器22が設けられていない。
【0040】
また、この異状検査システム300では、光源11Aは分析ユニット30と接続され、光源11Aから出力する光の波長を分析ユニット30で制御する構成となる。
【0041】
この異状検査システム300においては、検査対象物3はベルトコンベア2に載せられて移動する。そして、異状検査システム300による検査が行われている間は、ベルトコンベア2は所定の測定領域で停止する。そして、ベルトコンベア2が停止し、検査対象物3の移動も停止している間に、光源ユニット10が近赤外光L1を所定の照射領域A2へ向けて出力すると共に、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2を検出ユニット20において検出する。そして、分析ユニット30の制御により光源11Aから出力する光の波長を変化させることで、検査対象物により拡散反射した拡散反射光L2によるハイパースペクトル画像Hを得ることができる。なお、検査対象物3の測定領域を変更する場合には、ベルトコンベア2を移動させる。
【0042】
(変形例−3)
図5は、異状検査システム400の構成を示す概略構成図である。図5に示す異状検査システムが、図1の異状検査システム100と異なる点は以下の通りである。すなわち、光源ユニット10において、光源11BがSC光源ではない点、及び、光源11Aからの出射された光をライン状に整形する照射部12が設けられていない点、さらに検出ユニット20のスリット21と検査対象物3との間に波長可変フィルタ50が設けられている点である。また、波長可変フィルタ50が設けられているため、異常検査システム300の検出ユニット20には分光器22が設けられていない。
【0043】
この波長可変フィルタ50は、透過光の波長を切り替えることが可能なフィルタである。そして、波長可変フィルタ50は分析ユニット30と接続され、波長可変フィルタ50を透過させる光の波長を分析ユニット30で制御する構成となる。波長可変フィルタ50としては、例えば液晶チューナブルフィルタが好適に用いられる。
【0044】
この異状検査システム400においては、検査対象物3はベルトコンベア2に載せられて移動する。そして、異状検査システム400による検査が行われている間は、ベルトコンベア2は所定の測定領域で停止する。そして、ベルトコンベア2が停止し、検査対象物3の移動も停止している間に、光源ユニット10が近赤外光L1を出力すると共に、検査対象物3により拡散反射した拡散反射光L2を検出ユニット20において検出する。そして、分析ユニット30の制御により波長可変フィルタ50を透過する光の波長を変化させることで、検査対象物により拡散反射した拡散反射光L2によるハイパースペクトル画像Hを得ることができる。なお、検査対象物3の測定領域を変更する場合には、ベルトコンベア2を移動させる。
【0045】
上記の変形例1〜3のように、ハイパースペクトル画像Hを撮像するための光源ユニット10、検出ユニット20の構成は適宜変更することができる。
【0046】
(異状検査システムによる検出方法)
次に、上記の異状検査システムにより撮像されたハイパースペクトル画像を用いて異状の有無を判別する方法について説明する。この異状の有無の判別については、分析ユニット30において行われる。
【0047】
分析ユニットにおける異状の有無の判別の方法は、大きく分けて
(1)スペクトル画像に含まれる各画素における検査対象物のスペクトルを抽出する抽出ステップ、
(2)各画素のスペクトルについてサポートベクターマシンを用いて解析し、この結果に基づいて前記各画素における異物または不良品の有無を判定する判定ステップ
の2ステップが含まれる。以下、各ステップについて説明する。
【0048】
(抽出ステップ)
ハイパースペクトル画像には、検査対象物を撮像した画素と背景(例えばベルトコンベア2)を撮像した画素とが含まれる。この抽出ステップでは、ハイパースペクトル画像を撮像した全画素から検査対象物を撮像した画素を抽出する処理が行われる。この抽出ステップについて、以下の3つの方法を採用することができる。
【0049】
(抽出ステップ−1:線形結合)
図2のハイパースペクトル画像を用いて線形結合を用いた抽出方法について説明する。図2のスペクトル情報Sにおいて、強度Snjとは、P画素に係るスペクトル情報のうち、j番目の波長のスペクトル強度を指す。線形結合による抽出の方法としてはこの強度Sijと、予め設定した波長j及び予め設定した係数α及び予め設定した閾値βを用いて
Σαij<β
の関係を満たした場合に、この画素は背景を撮像した画素であると判断する方法である。
【0050】
具体的には、例えば、画素P及びPについて上記計算を行い、
αn1+αn3+αn7≧β
αm1+αm3+αm7<β
という結果が得られたとする。するとこの結果に基づき、Pは検査対象物3を撮像した画素であると判断し、Pは背景を撮像した画素であると判断する。この計算を全ての画素に対して行うことにより、検査対象物を撮像した画素を特定し、この画素のスペクトルが抽出される。なお、抽出に使用する波長、係数α及び閾値βを予め定める方法としては、予め検査対象物となるもの(食品)及び背景のハイパースペクトル画像を撮像し、この画像から検査対象物と背景とを区別することが可能な特徴的な波長や変数を求める方法等を用いることができる。
【0051】
(抽出ステップ−2:四則演算)
次に、図2のハイパースペクトル画像を用いて四則演算を用いた抽出方法について説明する。四則演算による抽出の方法としてはスペクトル情報の強度Sijと、予め設定した波長j及び波長h及び予め設定した閾値βを用いて
ij/Sih<β
の関係を満たした場合に、この画素は背景を撮像した画素であると判断する方法である。
【0052】
具体的には、例えば、画素P及びPについて上記計算を行い、
n4/Sn1≧β
m4/Sm1<β
という結果が得られたとする。するとこの結果に基づき、Pは検査対象物3を撮像した画素であると判断し、Pは背景を撮像した画素であると判断する。この計算を全ての画素に対して行うことにより、検査対象物を撮像した画素を特定し、この画素のスペクトルが抽出される。なお、抽出に使用する波長及び閾値βを予め定める方法としては、予め検査対象物となるもの(食品)及び背景のハイパースペクトル画像を撮像し、この画像から検査対象物と背景とを区別することが可能な特徴的な波長及び閾値を求める方法等を用いることができる。
【0053】
(抽出ステップ−3:線形サポートベクターマシン)
(分析ステップ)
抽出ステップの第3の方法として、サポートベクターマシンを用いた抽出方法が挙げられる。さらに分析ステップでは、検査対象物を撮像した各画素に対して、サポートベクターマシンを用いた分析が行われる。したがって以下では、これらのステップをまとめ、サポートベクターマシンを用いた分析について説明する。
【0054】
分析ユニット30で行われる、サポートベクターマシン(Support Vector Machines:SVM)を用いた分析とは、特定の検出対象の有無の判定を行う手法であり、区別したい2つの対象のサンプルの画像データを学習用データとして学習することによって、それらに対する識別境界を生成する公知の識別アルゴリズムである。そして、SVMには、識別境界が特徴量に関する線形関数で表現される線形SVM(Linear Support Vector Machines:LSVM)と、非線形関数で表現される非線形SVM(Kernel Support Vector Machines:KSVM)の2種類がある。線形SVMによる識別は、非線形SVMと比べて精度は劣るものの計算量が小さいため、リアルタイム処理に適用しやすい。一方、非線形SVMによる識別は、線形SVMと比べて高精度だが計算量が大きく、その計算量はパラメータ調整による識別精度の向上とともに増大する傾向がある。詳細は後述するが、本実施形態の分析ユニット30では、線形SVMと非線形SVMの両方を用いることにより、高精度且つ高速な識別を実現している。
【0055】
SVMによる分析を行うための分析ユニット30の構成について図6を用いて説明する。図6に示すように、分析ユニット30は、学習用画像データ格納部31と、SVM学習部32と、線形SVM識別用パラメータ格納部33と、非線形SVM識別用パラメータ格納部34と、画像データ取得部41と、線形識別部42と、非線形識別部43と、識別結果格納部44と、最終判定部45と、判定結果出力部46と、を含んで構成される。これらのうち、学習用画像データ格納部31、SVM学習部32、線形SVM識別用パラメータ格納部33、及び非線形SVM識別用パラメータ格納部34は、検査対象物3に含まれる検出対象の識別に用いるパラメータを生成・格納する機能を有する。そして、画像データ取得部41、線形識別部42、非線形識別部43、識別結果格納部44、最終判定部45、及び判定結果出力部46は、検査対象物3を撮像した画像データを用いた分析を行う機能を有する。
【0056】
まず、学習用画像データ格納部31は、検査対象物3や検出対象となる物質等の画像データを格納する。例えば、検査対象物3が豆であり、異状検査システム100を用いて、検査対象物3である豆に付着した毛髪を異物として検出するためには、分析ユニット30では検査対象物3である豆の画像データと、異物として識別したい毛髪(検出対象)の画像データとを用いて学習し、予め識別境界を定めておく必要がある。学習用画像データ格納部31は、この分析ユニット30のSVMが学習を行うために用いる画像データを格納する。なお、本実施形態のように分析ユニット30による分析対象となる画像データがハイパースペクトル画像である場合には、学習用データとしても同様のハイパースペクトル画像が用いられる。
【0057】
SVM学習部32は、検査対象物と検出対象となる物質(区別したい2つの対象)の画像データを用いて識別境界を算出する機能を有する。この処理は、例えば分析ユニット30のオペレータが区別したい2つの対象(本実施形態では豆と毛髪)の画像データを指定し、これらの画像データを用いた識別境界の算出を指示することにより行われる。このSVM学習部32は、区別したい2つの対象の画像データを用いて、画素毎のスペクトル情報を構成する強度データを特徴量として、線形SVMによる識別に用いられる線形SVM識別用パラメータと、非線形SVMによる識別に用いられる非線形SVM識別用パラメータと、の2種類のパラメータを生成する。このとき、SVM学習部32では、検出対象である毛髪を撮像した画素に含まれる強度データを「オブジェクトデータ」として認識し、このオブジェクトデータに該当するか否かを判断するためのパラメータを生成する方法によって線形SVM識別用パラメータと非線形SVM識別用パラメータとが生成される。
【0058】
なお、SVM学習部32によって生成される線形SVM識別用パラメータ及び非線形SVM識別用パラメータは、オペレータの指示に基づいて識別精度を変更して生成することができる。この識別精度は、SVMを用いて行う分析の回数や、分析結果として取得したい情報の種類によって適宜変更される。上述のように、線形SVMは非線形SVMに比べて識別精度は劣るが識別処理に要する計算量が小さいことから、本実施形態では、線形SVMにおいて予めフィルタリングを行うことで、検出対象(毛髪)である可能性が著しく低い画素に対しては非線形SVMによる識別を行わないことを目的としているため、線形SVMによる識別の際に用いられるパラメータとして、検出対象を撮像した画素が非線形SVMによる識別の対象から外れないようにより粗い精度のパラメータが生成される。SVM学習部32によって生成された線形SVM識別用パラメータは、線形SVM識別用パラメータ格納部33に格納される。また、非線形SVM識別用パラメータは、非線形SVM識別用パラメータ格納部34に格納される。
【0059】
線形SVM識別用パラメータ格納部33及び非線形SVM識別用パラメータ34は、線形SVM識別用パラメータ及び非線形SVM識別用パラメータをそれぞれ格納する機能を有する。線形SVM識別用パラメータ格納部33及び非線形SVM識別用パラメータ34に格納される各パラメータは、線形SVMや非線形SVMを用いた識別を行う際にそれぞれ用いられる。
【0060】
画像データ取得部41は、図1に示す検出ユニット20からの画像データを取得する機能を有する。ここで画像データ取得部41が取得する画像データとは、上述の検査対象物3を撮像したハイパースペクトル画像に係る画像データである。画像データ取得部41により取得された画像データは、線形識別部42に送られる。
【0061】
線形識別部42は、画像データに含まれる画素の強度データを特徴量として、線形SVMを用いて、当該画素の強度データがオブジェクトデータ(検出対象であることを示すデータ)であるか否かを画素毎に識別する機能を有する。線形識別部42では、全画素を対象として、線形SVM識別用パラメータ格納部33に格納された線形SVM識別用パラメータを用いて、強度データがオブジェクトデータであるか否かの識別を画素毎に行う。この結果、線形識別部42により強度データがオブジェクトデータであると判断された画素については、その画素を特定する情報及びその画素の強度データが非線形識別部43へ送られる。なお、線形識別部42により強度データがオブジェクトデータではないと判断された画素については、その画素を特定する情報とその識別結果が最終判定部45へ送られる。
【0062】
非線形識別部43は、線形識別部42から送られた画素の強度データを用いて、非線形SVMを用いて、当該画素の強度データがオブジェクトデータであるか否かを画素毎に識別する機能を有する。非線形識別部43では、線形識別部42において「強度データがオブジェクトデータであると識別された画素」のみを対象として、非線形SVM識別用パラメータ格納部34に格納された非線形SVM識別用パラメータを用いて、強度データがオブジェクトデータであるか否かの識別を画素毎に行う。そして、非線形識別部43による識別の結果は、画素を特定する情報と対応付けて識別結果格納部44へ送られる。また、画素を特定する情報と非線形識別部43による識別の結果は、最終判定部45へも送られる。
【0063】
識別結果格納部44は、非線形識別部43による識別の結果を画素を特定する情報と対応付けて格納する機能を有する。識別結果格納部44に格納された情報は、最終判定部45による判定の際に用いられる。
【0064】
最終判定部45は、線形識別部42及び非線形識別部43から送られた画素を特定する情報及びその識別結果と、識別結果格納部44に格納される識別結果とを参照し、画像データにおいて特定の画素を含む複数の画素のうち、強度データがオブジェクトデータであると非線形識別部43により識別された画素が所定数以上である場合に、当該特定の画素を含む複数の画素により構成される領域に検出対象があると判定する機能を有する。
【0065】
ここで、毛髪のように検出対象の大きさが画像データを構成する画素よりも大きい場合には、近接する複数の画素において同様の識別結果が得られる、すなわち、非線形識別部43において強度データがオブジェクトデータであると識別されると考えられる。一方、例えば画像データの撮像時に偶発的に発生したノイズに由来した強度データがオブジェクトデータであると識別される可能性もあるが、この場合には、近接する画素において同様の結果が得られる可能性は低いと考えられる。したがって、最終判定部45では、例えば、5画素×5画素の25画素のうち、強度データがオブジェクトデータであり、検出対象を撮像した識別される画素が3個以上まとまって存在する場合に、当該領域が検出対象を撮像した領域であるとの判定を下す。なお、最終判定部45による上記の判定方法は、あくまで単純化した一例であり、さらに複雑で識別能力の高い判定アルゴリズムが組み込まれていてもよい。最終判定部45による判定の結果は、判定結果出力部46へ送られる。
【0066】
判定結果出力部46は、最終判定部45による判定結果を出力する機能を有する。出力方法としては、例えば分析ユニット30に接続されるモニタに出力する方法や、プリンタに出力する方法等が挙げられる。なお、判定結果の出力の際には、検出ユニット20により得られた画像データを用いて2次元画像として出力する方法やその他の種々の方法を用いることができる。
【0067】
次に、本実施形態の異状検査システム100を構成する分析ユニット30によって、ハイパースペクトル画像の画像データを分析する方法について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、分析ユニット30においてSVMを用いた識別を行う前に行われる学習方法を示すフローチャートであり、図8は、分析ユニット30における画像データの分析方法を示すフローチャートである。上述のように、図7に示す分析ユニット30による学習は、検査対象物3を撮像した画像データの識別を行う前に行われる。
【0068】
まず、図7に示すように、分析ユニット30の学習用画像データ格納部31に格納された学習用画像データを用いて、SVM学習部32において学習が行われる(S01)。この学習用画像データを用いた学習の結果、線形SVM識別用パラメータと、非線形SVM識別用パラメータとが生成される。次に、SVM学習部32において生成された線形SVM識別用パラメータ及び非線形SVM識別用パラメータは、それぞれ線形SVM識別用パラメータ格納部33及び非線形SVM識別用パラメータ格納部34に格納される(S02)。以上により、検査対象物3を撮像した画像データを分析するための前処理が完了する。なお、分析ユニット30における学習用画像データを用いた学習は、画像データの分析の前のどの時点で行われていてもよい。すなわち、予め多種類のパラメータを一度に生成しておいてもよいし、画像データの分析の直前に学習を行う態様としてもよい。
【0069】
次に、図8に示すように、分析ユニット30の画像データ取得部41により、検査対象物3を撮像した画像データが取得される(S11、画像データ取得ステップ)。次に、この画像データを用いて、線形識別部42により線形SVMによる識別が画素毎に行われる(S12、線形識別ステップ)。この線形SVMによる識別は画像データに含まれる全画素を対象として行われ、その結果、強度データがオブジェクトデータである(TRUE)か、オブジェクトデータではない(FALSE)かが画素毎に判断される(S13、線形識別ステップ)。ここで、強度データがオブジェクトデータではない(FALSE)と判断された画素の識別結果は、最終判定部45に送られる。また、強度データがオブジェクトデータである(TRUE)と判断された画素については、その画素の強度データが非線形識別部43へ送られる。
【0070】
このうち、非線形識別部43へ送られた強度データについては、非線形識別部43により非線形SVMによる識別が画素毎に行われる(S13、非線形識別ステップ)。ここでも、線形識別部42による識別と同様に、強度データがオブジェクトデータである(TRUE)か、オブジェクトデータではない(FALSE)かが画素毎に判断される。そして、その結果は、識別結果格納部44に格納されると共に、最終判定部45へ送られ、最終判定部45による最終判定が行われる(S15、判定ステップ)。この最終判定部45による最終判定は、具体的には、画像データにおいて特定の画素を含む複数の画素のうち、強度データがオブジェクトデータであると非線形識別部43により識別された画素が所定数以上である場合に、当該特定の画素を含む複数の画素により構成される領域に検出対象があると判定する。
【0071】
例えば、図9に示すように、画素P11〜Pのうち、斜線で示した画素のみがオブジェクトデータである(TRUE)と判断されたとする。ここで、判断基準を「縦横それぞれ3ピクセル(すなわち9ピクセル)中にオブジェクトデータである(TRUE)と判断された画素が5ピクセル以上ある場合に、検出対象ありと判断する」と定めた場合、図9に示す画素のうち、P35、P36、P45、P69が検出対象が含まれる(異状がある)画素と最終判定部45において判定される。そして、この最終判定部45による判定結果は、判定結果出力部46に送られて、結果の出力が行われる(S16、出力ステップ)。以上により、分析ユニット30による画像データの分析に係る一連の処理が終了する。
【0072】
なお、抽出ステップ−3として、SVMを利用する場合には、非線形SVMによる識別は行わない。すなわち、線形SVMによる識別(S12)の結果に基づいて、各画素が検査対象物を撮像した画素であるか、背景を撮像した画素であるかの判断が行われる。これは、検査対象物と背景の区別は、検査対象物における正常部分と異状部分の区別に比べて容易であり、且つ、全画素に対してSVMを用いた分析を行うことによる作業量の増加を抑制するためである。また、抽出ステップにおいて線形SVMを使用した分析を行った場合、分析ステップでは線形SVMを使用した分析を省略することとしてもよい。
【0073】
以上のように、本実施形態に係る異状検査システム100(検出装置)及びこの異状検査システム100による検出方法によれば、サポートベクターマシンを用いてスペクトル画像を解析して、異物また不良品を検出するため、従来の主成分分析と比較して、例えば正常部分と異状部分とのスペクトルの差が微弱であっても検出が可能となるため、より高い精度で異状部分の検出を行うことができる。
【0074】
ここで、また、本実施形態に係る検出方法では、抽出ステップにおいて検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出するステップを備えているため、全ての画素、すなわち、検査対象物ではない背景等を撮像した画素のスペクトルに対してサポートベクターマシンを用いた解析を行う場合と比較して、検出に係る作業量や計算コストを大幅に削減することができるため、より高速に検出を行うことが可能となる。
【0075】
また、抽出ステップ−3で示したように、線形サポートベクターマシンを用いて抽出ステップを行う場合であっても、サポートベクターマシンでも作業量が少ない線形サポートベクターマシンを用いてまず検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出し、その後非線形サポートベクターマシンを用いて検査対象物を撮像した画素のスペクトルの解析を行う構成とすることで、検出に係る作業量や計算コストを大幅に削減することができるため、より高速に検出を行うことが可能となる。
【0076】
さらに、上記の検出方法では、判定ステップにおいて異物または不良品が有ると判定された画素に対して、この画素を含む所定の範囲内に、異物または不良品が有ると判定された画素が所定数以上含まれているか否かの判定を行うステップがあるため、異物または不良品が有ると判定された理由が偶発的なノイズであるのか、または、本当に異物または不良品が有ると推測されるのか、を判断することができるため、より高精度に検出を行うことができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、異状分析システム100に分析ユニット30が組み込まれた構成について説明したが、本発明に係る画像データ分析装置は、例えば、他の工業製品の異状分析や、生体組織の疾患部位の観察等を行うシステムに組み込んで利用することもできる。また、分析ユニット30は、上記実施形態のように画像データの撮像を行う検出ユニット20と接続されている必要はなく、単体で使用することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、分析ユニット30の画像データ取得部41において取得される画像データには加工が施されていないが、予めデータ加工が施された画像データを画像データ取得部41で取得する態様とすることもできる。画像データに施されるデータ加工とは、例えば、画像データが保持する画素毎の強度データを規格化しておく加工や、隣接するデータとの間で差分を取る等の数値的な処理のことをいう。このように、画像データに所定のデータ加工を予め施しておくことで、分析ユニット30による分析をより効率よく行うことが可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、線形識別部42における線形SVMによる識別と、非線形識別部43における非線形SVMによる識別と、はそれぞれ1種類のパラメータを用いて識別が行われる態様について説明したが、線形識別部42及び非線形識別部43のそれぞれにおいて、複数の互いに異なるパラメータを用いて識別を行う態様としてもよい。また、その場合には、複数のパラメータを用いた識別結果をあわせることで強度データがオブジェクトデータであるか否か(TRUE/FALSEのいずれか)を判断する態様としてもよい。具体的には、例えば、線形識別部42では3種類の互いに異なるパラメータを用いて線形SVMによる識別を行い、非線形識別部43では2種類の互いに異なるパラメータを用いて線形SVMによる識別を行う構成とすることができる。この場合、線形識別部42では3種類の線形SVMによる識別の全てにおいてTRUEと判定された場合に、線形識別部42による識別の結果がオブジェクトデータであるとし、非線形識別部43では2種類の非線形SVMのどちらか一方でTRUEと判定された場合に、非線形識別部43による識別の結果がオブジェクトデータであるとする、という方法が挙げられる。
【0081】
また、上記実施形態では、最終判定部45は、近接する複数の画素の識別の結果を考慮した最終判定を行う態様について説明したが、最終判定部45では、非線形識別部43による画素毎の識別の結果のみに基づいて判定を行う態様でもよい。
【符号の説明】
【0082】
100,200,300,400…異状検査システム、2…ベルトコンベア、3…検査対象物、10…光源ユニット、11,11A…光源、12…照射部、13…光ファイバ、20…検出ユニット、21…スリット、22…分光器、23…受光部、24…カメラレンズ、30…分析ユニット、40…ミラースキャナ、50…波長可変フィルタ。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮像して得られたスペクトル画像に基づいて、該検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する装置であって、
前記検査対象物を撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像により得られたスペクトル画像を、サポートベクターマシンを用いて解析し、前記検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する制御部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検査対象物と前記撮像部との間に、前記撮像部の視野領域を変更するための可動ミラーを有することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記撮像部に入射する光を分光する波長可変フィルタを有することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項4】
前記検査対象物に対して光を照射する波長可変光源を有することを特徴とする請求項1記載の検出装置。
【請求項5】
検査対象物を撮像して得られたスペクトル画像に基づいて、該検査対象物中に混在する異物または不良品を検出する方法であって、
前記検査対象物を撮像した画素のスペクトルについてサポートベクターマシンを用いて解析し、この結果に基づいて前記各画素における異物または不良品の有無を判定する判定ステップを含むことを特徴とする検出方法。
【請求項6】
前記判定ステップの前に、前記スペクトル画像に含まれる全画素に対して、スペクトル強度の線形結合を計算し、予め設定された閾値と比較することにより検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、
前記判定ステップにおいて、前記抽出ステップにおいて抽出されたスペクトルについて解析を行うことを特徴とする請求項5記載の検出方法。
【請求項7】
前記判定ステップの前に、前記スペクトル画像に含まれる全画素に対して、任意の波長のスペクトル強度を四則演算し、予め設定された閾値と比較することにより検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、
前記判定ステップにおいて、前記抽出ステップにおいて抽出されたスペクトルについて解析を行うことを特徴とする請求項5記載の検出方法。
【請求項8】
前記判定ステップの前に、前記スペクトル画像に含まれる全画素に対して、画素ごとに線形サポートベクターマシンを用いることで検査対象物を撮像した画素のスペクトルを抽出する抽出ステップを備え、
前記判定ステップにおいて、前記抽出ステップにおいて抽出したスペクトルについて非線形サポートベクターマシンを用いて解析を行う
ことを特徴とする請求項5記載の検出方法。
【請求項9】
前記判定ステップの後に、前記判定ステップにおいて異物または不良品が有ると判定された画素に対して、この画素を含む所定の範囲内に、異物または不良品が有ると判定された画素が所定数以上含まれているか否かの判定を行うステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の検出方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−98181(P2012−98181A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246599(P2010−246599)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】