説明

検出装置

【課題】レーダによる物体検知範囲を広角範囲、または狭角範囲を切り替えて使用できるようにする。
【解決手段】アンテナ37−1は、電波を照射して送信信号を送信し、第1の間隔で1列ずつのアンテナが配置されたアンテナ51−2,51−3の対は、送信信号のうち、反射されてくる電波を受信し、第1の間隔よりも広い第2の間隔で、アンテナ51−1,51−2を1本のアンテナとし、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナとしたときのそれらの対は、送信信号のうち、反射されてくる電波を受信し、受信部12は、アンテナ51−2,51−3の対、または、アンテナ51−1,51−2とアンテナ51−3,51−4とをそれぞれ1本のアンテナとした対により受信された電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13は、受信信号をサンプリングすることにより、物体を検出する。本発明は、車両安全装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、特に、レーダによる物体検知範囲を広角範囲、または狭角範囲との切り替えて使用できるようにした検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車と他車との間の相対速度や距離を測定するセンサとして、2周波CW(Continuous Wave)方式のセンサが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。すなわち、この2周波CW方式のセンサは、受信された搬送波に対するドップラ信号の周波数(以下、ドップラ周波数と称する)や位相を検出し、それらを利用して、自車と他車との相対速度や距離を測定する。
【0003】
また、自車と他車との相対的な位置を示す角度を測定するセンサとして、モノパルス方式のセンサが知られている。
【0004】
このように、2周波CW方式のセンサを用いて自車と他車との距離を測定し、モノパルス方式のセンサにより自車と他車との角度を測定することで、接近する他車の存在する位置を検出することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3203600号公報
【特許文献2】特開2004−69693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、広角度に設定された検知範囲に存在する物体を検知するためには、水平方向に広角度な指向性を備えた受信アンテナが必要となる。しかしながら、検知範囲の両脇に壁がある場合、水平方向指向性が広いことにより、本来検出すべき物体ではない壁の反射による影響が大きくなる。また、広角に物体が存在しない、もしくは、広角を必要としない、例えば、後方プリクラッシュ安全装置などに対しては、水平方向の検知範囲の指向性は狭角として、感度の受信アンテナが必要となる。
【0007】
この結果、広角度の検知範囲にも、狭角度の検知範囲にも対応するレーダ装置を用いた装置を構成するには、検知範囲の異なる複数の受信アンテナを設けるようにしなければならず、装置構成が大型化すると共にコスト高となる恐れがあった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、アンテナの持つ指向性を、高角度にも、狭角度にも切り替えて使用できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面の検出装置は、物体を検出する検出装置にであって、所定の範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対からなり、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信する第1の受信アンテナと、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対からなり、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信する第2の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナ、または、前記第2の受信アンテナにより受信された前記電波より受信信号を生成する受信手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、サンプリングすることにより、物体を検出する検出手段とを含む。
【0010】
送信手段とは、例えば、送信部であり、所定の範囲に電波を照射することにより、送信信号を送信する。
【0011】
第1の受信アンテナとは、例えば、第1の間隔で1列ずつ配置されたアンテナ対であり、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信するアンテナである。また、第2の受信アンテナとは、例えば、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対であり、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信する。
【0012】
すなわち、第2の受信アンテナは、第1の受信アンテナよりも、アンテナ対の間隔が広いため、より狭角の検知範囲における物体から反射される電波を受信することが可能となる。また、第2の受信アンテナは、第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対から構成されるため、第1の受信アンテナよりも高い受信感度を確保することが可能となる。このため、第1の受信アンテナと、第2の受信アンテナを切り替えて使用することにより、広角の指向性を必要とする検知範囲と、狭角の指向性を必要とする検知範囲とを切り替えて、電波を受信することが可能となる。
【0013】
受信手段とは、例えば、受信部であり、第1の受信アンテナ、または、第2の受信アンテナにより受信された電波に基づいて、受信信号を生成し、検出手段を構成する、例えば、衝突予備動作用信号処理部、または、車線変更警告要信号処理部に出力する。
【0014】
検出手段とは、例えば、衝突予備動作用信号処理部、または、車線変更警告要信号処理部であり、受信信号に基づいて、物体の速度、距離、および角度を求めることが可能となる。このため、車線変更警告要信号処理部は、広角の指向性で、かつ、標準的な感度の電波に基づいた受信信号により、水平方向に対して比較的広い範囲であって、近傍の検知範囲における物体を検知することが可能となり、衝突予備動作用信号処理部は、狭角の指向性で、かつ、高感度の電波に基づいた受信信号により、水平方向に対して比較的狭い範囲であって、遠方までの検知範囲における物体を検知することが可能となる。
【0015】
前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対は、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を挟んで、第2の間隔で配置され、前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対と、それぞれ前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対とを接続、または非接続に切り替える接続切替手段をさらに含ませるようにすることができ、前記第2の受信アンテナには、前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対と、それぞれ前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対とが前記接続切替手段により接続されることにより、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対から構成されるようにすることができる。
【0016】
前記第1の受信アンテナ、および前記第2の受信アンテナには、前記接続切替手段が非接続状態の場合、前記第1の受信アンテナとして機能させ、前記接続切替手段が接続状態の場合、前記第2の受信アンテナとして機能させるようにすることができる。
【0017】
接続切替手段とは、例えば、RFスイッチであり、RFスイッチの接続、または、非接続を切り替えることにより、第2の受信アンテナのうち、第1の受信アンテナを除いたアンテナ対と、前記第1の受信アンテナのアンテナ対とを、接続、または、非接続とすることで、第1の受信アンテナと第2の受信アンテナとを切り替えることが可能となる。
【0018】
前記送信手段には、第1の角度範囲であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲に電波を照射するように構成された第1の送信アンテナと、前記第1の角度範囲よりも広角の第2の角度範囲であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成された第2の送信アンテナと、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナとを切り替える送信アンテナ切替手段と、前記接続切替手段の接続、または、非接続、並びに、前記アンテナ切替手段による前記第1の送信アンテナ、または前記第2の送信アンテナとの切り替えを同期して指示する切替信号を生成する切替信号生成手段をさらに含ませるようにすることができる。
【0019】
第1の送信アンテナとは、第1の角度範囲であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲に電波を照射するように構成されたアンテナであり、第2の送信アンテナとは、前記第1の角度範囲よりも広角の第2の角度範囲であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成されたアンテナであり、アンテナ切替手段とは、例えば、RFスイッチであり、切替信号生成手段とは、例えば、エリア切替部である。
【0020】
すなわち、エリア切替部により生成される切替手段により、アンテナ切替手段を構成するRFスイッチと、接続切替手段を構成するRFスイッチとが同期して切り替えられることにより、第1の送信アンテナにより比較的高角の検知範囲に対して電波が送信される場合、第1の受信アンテナが比較的広角の検知範囲の電波を受信し、第2の送信アンテナにより比較的狭角の検知範囲に対して電波が送信される場合、第2の受信アンテナが比較的狭角の検知範囲の電波を受信するようになるので、送信される電波の検知範囲に適合した検知範囲の電波を受信することが可能となる。
【0021】
前記検出手段には、前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1のサンプリング検出手段と、前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2のサンプリング検出手段とを含ませるようにすることができ、前記切替信号に基づいて、前記第1の受信アンテナにより受信された前記電波より生成された受信信号を、前記第1のサンプリング検出手段に切り替えて出力し、前記第2の受信アンテナにより受信された前記電波より生成された受信信号を、前記第2のサンプリング検出手段に切り替えて出力する切替出力手段とをさらに含ませるようにすることができる。
【0022】
第1のサンプリング検出手段とは、例えば、車線変更警告要信号処理部であり、第2のサンプリング検出手段とは、衝突予備動作用信号処理部であり、切替出力手段とは、例えば、切替部である。
【0023】
すなわち、切替部は、切替信号に同期して、第1の送信アンテナにより比較的高角の検知範囲に対して電波が送信される場合、第1の受信アンテナが比較的広角の検知範囲の電波を受信するとき、受信信号を車線変更警告要信号処理部に出力し、一方、第2の送信アンテナにより比較的狭角の検知範囲に対して電波が送信される場合、第2の受信アンテナが比較的狭角の検知範囲の電波を受信するとき、衝突予備動作用信号処理部に供給することが可能となる。
【0024】
このため、車線変更警告要信号処理部は、広角の指向性で、かつ、標準的な感度の電波に基づいた受信信号により、水平方向に対して比較的広い範囲であって、近傍の検知範囲における物体を検知することが可能となり、衝突予備動作用信号処理部は、狭角の指向性で、かつ、高感度の電波に基づいた受信信号により、水平方向に対して比較的狭い範囲であって、遠方までの検知範囲における物体を検知することが可能となる。
【0025】
本発明の一側面においては、所定の範囲に電波を照射するように構成されたアンテナにより、前記電波を照射することにより送信信号が送信され、第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対からなる第1の受信アンテナにより、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波が受信され、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対からなる第2の受信アンテナにより、送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波が受信され、前記第1の受信アンテナ、または、前記第2の受信アンテナにより受信された前記電波より受信信号が生成され、生成された受信信号が、サンプリングされることにより、物体が検出される。
【0026】
以上により、簡単な構成により、アンテナの持つ指向性を、高角度にも、狭角度にも切り替えて使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡単な構成により、レーダによる水平方向に対して広角の検知範囲、
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用したレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【図2】図1の送信部により照射される電波の強度分布である。
【図3】アンテナの構成例を説明する図である。
【図4】狭角広角切替処理を説明するフローチャートである。
【図5】計測処理を説明するフローチャートである。
【図6】計測処理を説明する図である。
【図7】振分部の動作を説明する図である。
【図8】受信部におけるアンテナの経路差を説明する図である。
【図9】衝突予備動作用信号処理を説明するフローチャートである。
【図10】車線変更警告用信号処理を説明するフローチャートである。
【図11】車線変更警告用信号処理を説明する図である。
【図12】汎用のパーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。または狭角の検知範囲を切り替えて使用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係るレーダ装置の一実施の形態の構成を示す図である。
【0030】
レーダ装置1は、車両に搭載され、車両の後方範囲(ほぼ真後ろであって、比較的遠い部分を含む範囲)に相対速度が所定の速度以上の高速で接近する車両を検出して、衝突を予期して、衝突に備えた予備的な動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ機能と、車両の側面後方範囲(走行中の走行車線からみて、左右に隣接する走行車線における後方の比較的近い部分を含む範囲)で、走行している車両を検出し、車線変更時に危険があるとき警告を発する、いわゆる車線変更支援機能(車線変更警告機能)とを備えたものである。
【0031】
レーダ装置1は、送信部11、受信部12、衝突予備動作用信号処理部13、衝突予備動作制御部14、車線変更警告用信号処理部15、および車線変更警告動作制御部16とから構成されている。
【0032】
送信部11は、2周波CW(Continuous Wave)からなる電波を送信信号として発生し照射する。受信部12は、送信部11より送信された送信信号である電波のうち、物体により反射されてくる電波を受信して、受信した電波より受信信号を生成し、衝突予備動作用信号処理部13、および車線変更警告用信号処理部15のそれぞれに供給する。
【0033】
衝突予備動作用信号処理部13は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的短い周期でサンプリングし、後方からの他車の接近を検出して、衝突の有無を判定し、判定結果に応じて、衝突予備動作制御部14に対して衝突予備動作を実行させる。衝突予備動作制御部14は、例えば、音声警告装置、シートベルト、エアバッグ、または可動式ヘッドレストなどのいわゆる衝突時に乗員を保護する衝突保護機器の動作を制御し、衝突予備動作用信号処理部13より衝突予備動作を実施するように指示が出されると、音声により衝突の発生を事前警告して注意を促し、シートベルトを引き上げて乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の乗員の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを動作させて乗員の頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった動作を実行させる。
【0034】
車線変更警告用信号処理部15は、受信部12より供給されてくる受信信号を比較的長い周期でサンプリングし、側面後方からの他車の存在位置を認識し、車線変更に際しての危険の有無を判定し、判定結果に応じて、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告の動作を実行させる。車線変更警告動作制御部16は、車線変更警告用信号処理部15より警告を促すように指示を受けた場合、例えば、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように乗員が着座する座席を振動させることにより、車線変更を実施すると危険な状態であることを警告する。
【0035】
次に、送信部11の詳細な構成について説明する。
【0036】
送信部11は、発振部31、周波数切替部32、増幅部33、3分岐部34、増幅部35、RFスイッチ36、アンテナ37−1,37−2、およびエリア切替部38より構成されている。
【0037】
発振部31は、周波数切替部32から所定の間隔で供給されてくる切替信号に基づいて、数10GHz帯の周波数f1のCW信号と、周波数f1と数MHz異なる周波数f2のCW信号とを搬送波として切り替えて発生し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に供給する。周波数切替部32は、発振部31に発振すべき周波数の切替を指示する切替信号を供給すると共に、受信部12にも切替信号を供給する。
【0038】
3分岐部34は、増幅部33より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を受信部12、および、増幅部35のそれぞれに分岐して供給する。増幅部35は、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号として、RFスイッチ36を介して、アンテナ37−1または37−2より電波として出力する。
【0039】
RFスイッチ36は、エリア切替部38より供給されてくる狭角切替信号、または広角切替信号に基づいて、アンテナ37−1または、アンテナ37−2のいずれかに切り替えて、3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号を送信信号として電波として出力させる。
【0040】
アンテナ37−1および37−2は、車両本体の後方中央部付近に設けられており、それぞれ、図2で示されるような範囲Z1,Z2からなる強度分布特性の電波を送信信号として出力する。図2においては、図中下方向が車両C1の進行方向であり、車両C1の後方中央部付近に設けられたアンテナA(図1におけるアンテナ37−1,37−2,51−1乃至51−4が一体となって構成されている)から電波が発せられているときの強度分布特性が示されている。
【0041】
図2のアンテナ37−1の強度分布特性を示す範囲Z1は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度αで、かつ、比較的遠い位置までを含む図中の斜線部の範囲である。また、アンテナ37−2の強度分布特性を示す範囲Z2は、アンテナAの存在する位置から後方正面を中央とした、水平方向に角度β(>α)で、かつ、比較的近い位置までを含む図中の無地の範囲である。尚、図2においては、車両C1が、車線L1乃至L3のうちの車線L2を図中の下方向に走行している状態が示されている。また、範囲Z1,Z2においては、図2で示されるように、それぞれが重複する範囲が存在する。
【0042】
エリア切替部38は、所定の時間間隔で、狭角切替信号、または広角切替信号を発生し、RFスイッチ36、受信部12のRFスイッチ52−1,52−2、および切替部63−1乃至63−3に供給する。
【0043】
次に、受信部12の構成について説明する。
【0044】
受信部12は、アンテナ51−1乃至51−4、RFスイッチ52−1,52−2、加算部53、減算部54、LNA(Low Noise Amplifier)55−1,55−2、混合器56−1,56−2、振分部57,58、LPF(Low Pass Filter)59−1乃至59−3、増幅部60−1乃至60−3、ADC(Analog Digital Converter)61−1乃至61−3、および切替部62−1乃至62−3から構成されている。
【0045】
アンテナ51−1乃至51−4は、送信部11のアンテナ37−1,37−2より照射された送信信号としての電波のうち、車両、または、人間などの物体に反射してくる電波を順次して受信し、受信した電波に対応する信号をそれぞれ加算部53および減算部54に供給する。尚、上述したように送信信号は、周波数f1,f2が順次切り替えられて送信されるが、物体が移動している場合、反射によって、周波数f1,f2に対応して、ドップラ周波数fd1,fd2が発生することになる。このため、アンテナ51−1乃至51−4により受信される電波は、周波数f1+fd1のCW信号に対応するものと、周波数f2+fd2のCW信号に対応するものとが、送信信号におけるf1,f2周波数の切替タイミングど同期して、順次切り替えられて受信されることになる。
【0046】
より詳細には、アンテナ51−1乃至51−4は、図3で示されるように、それぞれ4個のパッチアンテナから構成されており、水平方向に所定の間隔で、垂直方向に略直立している。図3においては、図中の水平方向がアンテナ51−1乃至51−4の水平方向を示し、図中の垂直方向がアンテナ51−1乃至51−4の垂直方向を示している。また、アンテナ51−1,51−2は、RFスイッチ52−1に、アンテナ51−3,51−4は、RFスイッチ52−2に、それぞれ接続されており、開放状態でも、それぞれアンテナ51−2,51−3と接続されている。
【0047】
したがって、RFスイッチ52−1,52−2が開放状態の場合、図3の左部で示されるように、アンテナ51−1乃至51−4のうち、アンテナ51−2,51−3により電波が受信され、受信された信号が、それぞれRFスイッチ52−1,52−2を介して、加算部53および減算部54に出力される。
【0048】
また、RFスイッチ52−1,52−2が接続状態の場合、図3の右部で示されるように、アンテナ51−1乃至51−4のうち、アンテナ51−1および51−2で受信された電波の信号が重畳された信号、並びに、アンテナ51−3および51−4のそれぞれで受信された電波の信号が重畳された信号が、それぞれRFスイッチ52−1,52−2を介して、加算部53および減算部54に出力される。
【0049】
1列ずつのアンテナ対からなる受信アンテナを用いて電波を受信する場合、一般にアンテナ対のそれぞれの間隔が狭いほど広角の検知範囲からの電波を受信し易く、アンテナ対のそれぞれの間隔が広いほど狭角の検知範囲からの電波を受信し易くなる。また、それぞれの複数列のアンテナ対を構成する受信アンテナの場合、列数が多いほど、受信感度が向上することが知られている。
【0050】
このため、RFスイッチ52−1,52−2が開放されている状態の場合、アンテナ間隔は、図3の左部で示されるように、アンテナ51−2,52−3間の距離L1となる。一方、RFスイッチ52−1,52−2が接続された場合、アンテナ51−1,51−2を、1本のアンテナとして見ることができ、同様に、アンテナ51−3,51−4を、1本のアンテナとして見ることができる。したがって、図3の右部で示されるように、アンテナ51−1,51−2間の重心位置と、アンテナ51−3,51−4間の重心位置との距離L2(>L1)が、アンテナ対の間隔となり、さらに、各2本ずつのアンテナで構成されるため、RFスイッチ52−1,52−2が開放されている状態における検知範囲および受信感度について比較すると、より狭角の検知範囲からの電波を、高感度で受信し易い構造とすることができる。
【0051】
また、RFスイッチ52−1,52−2は、送信部11のエリア切替部38より供給されてくる狭角切替信号、および広角切替信号に同期して接続、および開放が制御される。
【0052】
したがって、エリア切替部38が狭角切替信号を出力している場合、送信部11のRFスイッチ36にも狭角切替信号が供給されるため、アンテナ37−1から電波が送信され、対応する電波の強度分布範囲である範囲Z1、すなわち、狭角の検知範囲で、比較的離れている範囲に電波が送信される。このとき、アンテナ51−1乃至51−4は、RFスイッチ52−1,52−2が接続されるので、2本ずつのアンテナ対により、アンテナ間隔が距離L2となるため、狭角で、かつ、比較的離れている範囲Z1において、存在する物体により反射される電波が受信し易くなる。
【0053】
一方、エリア切替部38が広角切替信号を出力している場合、送信部11のRFスイッチ36にも広角切替信号が供給されるため、アンテナ37−2から電波が送信され、対応する電波の強度分布範囲である範囲Z2、すなわち、広角の検知範囲に電波が送信される。このとき、アンテナ51−1乃至51−4は、RFスイッチ52−1,52−2が開放されるので、アンテナ51−2,52−3のそれぞれ1本ずつのアンテナ対により、アンテナ間隔が距離L1(<L2)となるため、広角で、かつ、標準的な距離の範囲Z2において、存在する物体により反射される電波が受信し易くなる。
【0054】
また、送信部11および受信部12の構成を含むレーダ装置1は、一体のパッケージとして構成され、車両の後部略中央部に搭載されるものであり、車両の大きさからみて、アンテナ51−1乃至51−4と、アンテナ37−1,37−2とは、実質的に略同位置に配置されるものである。このため、アンテナ51−1乃至51−4は、アンテナ37−1,37−2で出力された送信信号としての電波のうち、物体により反射され、略同一の位置に反射されて戻ってくる電波を受信する。
【0055】
加算部53は、アンテナ51−1乃至51−4より供給されてくる信号を加算して、f1和信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の和信号)、およびf2和信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の和信号)としてLNA55−1に供給する。減算部54は、アンテナ51−1乃至51−4より供給されてくる信号を減算して、差信号(周波数f1のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd1を含む周波数(f1+fd1)の差信号)、およびf2差信号(周波数f2のCW信号が反射することにより受信されたドップラ周波数fd2を含む周波数(f2+fd2)の差信号)としてLNA55−1に供給する。
【0056】
LNA55−1,55−2は、それぞれ加算部53および減算部54より供給されてくるf1和信号またはf2和信号、およびf1差信号、またはf2差信号を、それぞれ後段の混合器56−1,56−2に3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号のレベルと同程度にまで増幅し、混合器56−1,56−2に供給する。
【0057】
混合器56−1,56−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる周波数f1またはf2のCW信号と、LNA55−1,55−2のそれぞれから供給されてくるf1和信号およびf1差信号、または、f2和信号およびf2差信号とを混合し、それぞれ振分部57,58に供給する。尚、f1和信号およびf1差信号が、周波数f1のCW信号と混合された信号については、それぞれfd1和信号およびfd1差信号と称するものとし、f2和信号およびf2差信号が、周波数f2のCW信号と混合された信号については、それぞれfd2和信号およびfd2差信号と称するものとする。
【0058】
振分部57は、混合器56−1より供給されてくる信号を、切替信号に対応して、LPF59−1,59−2に周波数ごとに、それぞれfd1和信号およびfd2和信号として振り分けて出力する。振分部58は、それぞれ混合器56−2より供給されてくるfd1差信号、およびfd2差信号のうち、切替信号に対応して、fd1差信号のみをLPF59−3に振り分けて出力する。
【0059】
LPF59−1乃至59−3は、それぞれ振分部57,58より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を平滑化した後、増幅部60−1乃至60−3に供給する。増幅部60−1乃至60−3は、それぞれLPF59−1乃至59−3より供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、および、fd1差信号を増幅して、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化されて、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、デジタル信号に変換し、受信信号として、それぞれ切替部62−1乃至62−3に供給する。
【0060】
切替部62−1乃至62−3は、送信部11のエリア切替部38より供給されてくる狭角切替信号、および広角切替信号に基づいて、fd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号のそれぞれのデジタル信号を、適切な検知範囲に対応して、衝突予備動作用信号制御部13、または車線変更警告用信号処理部15に供給する。より具体的には、切替部62−1乃至62−3は、狭角切替信号が供給されてきているとき、fd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号のそれぞれのデジタル信号を衝突予備動作用信号制御部13に供給し、広角切替信号が供給されてきているとき、fd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号のそれぞれのデジタル信号を車線変更警告用信号処理部15に供給する。
【0061】
次に、衝突予備動作用信号処理部13の構成について説明する。
【0062】
衝突予備動作用信号処理部13は、FFT(Fast Fourier transform:高速フーリエ変換部)71−1乃至71−3、衝突判定用FFTタイミング制御部72、ドップラ周波数算出部73、距離算出部74、角度算出部75、衝突判定部76より構成されている。
【0063】
FFT71−1乃至71−3は、衝突判定用FFTタイミング制御部72からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74および角度算出部75に供給し、FFT71−2は、fd2和信号のスペクトル結果から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給し、FFT71−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0064】
衝突判定用FFTタイミング制御部72は、内蔵するカウンタ72aを所定時間ごとに加算し、所定時間T1が経過したところで、FFT71−1乃至71−3に対してFFT処理を実行するように指示する。
【0065】
ドップラ周波数算出部73は、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に供給する。
【0066】
距離算出部74は、FFT71−1,71−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2差信号、並びにドップラ周波数算出部73より供給されてくる速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2差信号との位相差の情報から、物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0067】
角度算出部75は、FFT71−1からのfd1和信号とFFT71−3からのfd1差信号、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号とfd1差信号との強度比から物体の存在する位置の角度θ1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0068】
衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、ドップラ周波数算出部73より供給されてきた速度v1が所定速度V1以上であるか否かを判定させる。衝突判定部76は、速度v1が所定速度V1より高速である場合、範囲判定部76bを制御して、距離D1、および角度θ1に基づいて、衝突の可能性のある所定範囲内に車両が存在するか否かを判定させる。そして、衝突判定部76は、範囲判定部76により所定範囲内に車両が存在すると判定された場合、衝突の可能性があると判定し、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実行させる。
【0069】
次に、車線変更警告用信号処理部15の構成について説明する。
【0070】
車線変更警告用信号処理部15は、FFT91−1乃至91−3、車線変更警告用FFTタイミング制御部92、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、角度算出部95、車線変更警告判定部96より構成されている。
【0071】
FFT91−1乃至91−3は、車線変更警告用FFTタイミング制御部92からの制御信号に基づいて、受信部12より受信信号としてそれぞれに供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を順次サンプリングして、FFT処理し、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94および角度算出部95に供給し、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給し、FFT91−3が、fd1差分信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0072】
車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、内蔵するカウンタ92aを所定時間ごとに加算し、所定時間T2(>T1)が経過したところで、FFT91−1乃至91−3に対してFFT処理を実行するように指示する。ここで、所定時間T2は、所定時間T1よりも長い時間が設定されており、FFT91−1乃至91−3によるFFT処理は、FFT71−1乃至71−3によるFFT処理よりもサンプリング時間が長くなるように設定されている。
【0073】
ドップラ周波数算出部93は、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号に基づいて、ドップラ周波数fd2を算出すると共に、求められたドップラ周波数fd2から検出物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に供給する。
【0074】
距離算出部94は、FFT91−1,91−2より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにドップラ周波数算出部93より供給されてくる速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd2和信号の位相差の情報から、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0075】
角度算出部95は、FFT91−1,91−3より供給されてくるfd1和信号およびfd1差信号、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号およびfd1差信号の強度比から、物体の存在する位置の角度θ2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0076】
車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、ドップラ周波数算出部93より供給されてきた速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)以上であるか否かを判定させる。車線変更警告判定部96は、速度v2が所定速度VaまたはVb(<Va)より高速である場合、範囲判定部96bを制御して、距離D2、および角度θ2に基づいて、速度対範囲テーブル96dに、所定速度Va<v2、または、Va>v2>Vbのそれぞれに対応して予め記憶されている警告範囲W1、または、警告範囲W2(警告範囲W1より近傍の狭い範囲)内で、物体が存在するか否かを判定させる。そして、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bにより警告範囲W1またはW2内に物体が存在すると判定した場合、車線変更に危険の可能性があるとみなし、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実行させる。
【0077】
また、車線変更警告判定部96は、速度v2、距離D2、および角度θ2を記憶するデータ記憶部96cを備えている。例えば、直前まで警告範囲内に車両が存在すると判定されていたが、車両の存在が検出されていない状態に切り替わった場合、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、受信信号では検出できない範囲であって、警告範囲を含む範囲である、いわゆるブラインドスポットにおける車両の存在位置を推定させ、再び範囲判定部96bを制御して、警告範囲に存在するか否かを判定させる。この際、推定されたブラインドスポット内の存在位置に基づいて、車両が所定範囲に存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、ブラインドスポットに入ったと推定される最後に検出されたタイミングから所定時間以上経過しているか否か、すなわち、ブラインドスポットに入ってから所定時間経過したか否かを判定させ、所定時間が経過していないければ、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作を実行させる。一方、ブラインドスポットに入ってから所定時間以上経過していた場合、車線変更警告判定部96は、警告範囲から離脱したものとみなし、車線変更警告動作を停止させる(車線変更警告動作をさせない)。
【0078】
図4のフローチャートを参照して、エリア切替部38による狭角広角切替処理について説明する。
【0079】
ステップS1において、エリア切替部38は、狭角切替信号を生成し、送信部11のRFスイッチ36、受信部12のRFスイッチ52−1,52−2、および切替部62−1乃至62−3に供給する。
【0080】
ステップS2において、エリア切替部38は、切替時間Tnが経過したか否かを判定し、切替時間Tnが経過したと判定されるまで、同様の処理を繰り返す。そして、ステップS2において、切替時間Tnが経過した場合、ステップS3において、エリア切替部38は、広角切替信号を生成し、送信部11のRFスイッチ36、受信部12のRFスイッチ52−1,52−2、および切替部62−1乃至62−3に供給する。
【0081】
ステップS4において、エリア切替部38は、切替時間Twが経過したか否かを判定し、切替時間Twが経過したと判定されるまで、同様の処理を繰り返す。そして、ステップS4において、切替時間Twが経過した場合、処理は、ステップS1に戻る。
【0082】
すなわち、以上の処理によりエリア切替部38は、狭角切替信号を供給してから切替時間Tnが経過すると、広角切替信号を供給する。そして、エリア切替部38は、切替時間Twが経過すると、狭角切替信号を供給し、同様の処理を繰り返す。尚、この切替時間Tn,Twは、同一の時間であってもよいし、それ以外の時間であってもよい。
【0083】
次に、図5のフローチャートを参照して、図1のレーダ装置1による物体の計測処理について説明する。
【0084】
ステップS11において、発振部31は、周波数切替部32からの切替信号に基づいて、f1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかを発振し、増幅部33で増幅させて3分岐部34に出力させる。このとき、周波数切替部32は、同一の切替信号を受信部12にも供給する。3分岐部34は、増幅部33より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号を分岐して、受信部12および増幅部35にそれぞれ供給する。そして、増幅部35は、3分岐部34より供給されてきたf1周波数のCW信号、または、f2周波数のCW信号のいずれかのCW信号をRFスイッチ36に供給する。
【0085】
ステップS12において、RFスイッチ36は、エリア切替部38より狭角切替信号が供給されてきているか否かを判定する。ステップS12において、例えば、図4のフローチャートを参照して説明したステップS1の処理により、エリア切替部38より狭角切替信号が供給されてきている場合、ステップS13において、RFスイッチ36は、狭角で遠方までの電波強度分布となるアンテナ37−1に切り替えて接続し、アンテナ37−1より電波を出力することにより、狭角の検知範囲に送信信号として送信する。このとき、アンテナ37−1より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2の範囲Z1で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z1からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0086】
ステップS13の処理により出力された電波としての送信信号は、図2の範囲Z1で示される強度分布により出力されるため、範囲Z1から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。すなわち、送信信号は、上述の通り、図6の上部で示されるように、アンテナA(図6では、アンテナ37−1,37−2,51−1乃至51−4を一体化したものとし簡略化して表現している)より順次周波数f1およびf2のCW信号が切り替えられて出力される。このため、物体である車両C1で反射されると、それぞれの周波数のCW信号に対応してドップラ周波数fd1またはfd2が発生することにより、図6の下部で示されるように、順次周波数f1+fd1、または、f2+fd2のCW信号として反射され、この反射波となる電波が受信されることになる。
【0087】
そこで、ステップS14において、RFスイッチ52−1,52−2は、送信部11のエリア切替部38より供給されてくる狭角切替信号に基づいて、図3の右部で示されるように、アンテナ51−1,51−2、およびアンテナ51−3,51−4をそれぞれ接続し、送信部11のアンテナ37−1で送信された電波のうち、図2の範囲Z1で示される狭角検知範囲内に存在する物体により反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部53、および減算部54にそれぞれ供給する。
【0088】
すなわち、狭角切替信号に基づいて、範囲Z1で示される強度分布で、送信部11のアンテナ37−1により送信信号の電波が送信されると共に、受信部12のアンテナ51−1乃至51−4は、狭角検知範囲となる範囲Z1内に存在する物体から反射される電波を受信し易い状態に制御される。これにより、送信部11により送信信号として送信される電波の電波強度分布と、受信部12により受信し易い電波強度分布とが一致することに加えて、2本ずつのアンテナ対を用いて電波を受信するため、範囲Z1内における物体により反射される電波を高感度で適切に受信することが可能となる。
【0089】
一方、ステップS12において、例えば、図4のフローチャートを参照して説明したステップS3の処理により、エリア切替部38より広角切替信号が供給されてきている場合、ステップS15において、RFスイッチ36は、広角で比較的近傍範囲の電波強度分布となるアンテナ37−2に切り替えて接続し、アンテナ37−2より電波を出力することにより、広角の検知範囲に送信信号として送信する。このとき、アンテナ37−2より送信された送信信号としての電波は、例えば、図2の範囲Z2で示されるような強度分布で出力される。尚、図2における範囲Z2からなる形状は、厳密なものである必要はなく、概ね同様の形状となるような強度分布となるように送信されれば良いものである。
【0090】
ステップS15の処理により出力された電波としての送信信号は、図2の範囲Z2で示される強度分布により出力されるため、範囲Z2から構成される範囲に物体(車両)が存在する場合、その物体により反射される。
【0091】
そこで、ステップS16において、RFスイッチ52−1,52−2は、送信部11のエリア切替部38より供給されてくる広角切替信号に基づいて、図3の左部で示されるように、アンテナ51−1,51−2、およびアンテナ51−3,51−4のそれぞれ接続を開放し、送信部11のアンテナ37−2で送信された電波のうち、図2の範囲Z2で示される広角検知範囲内に存在する物体により反射されてくる電波を受信し、受信した電波に対応する信号を加算部53、および減算部54にそれぞれ供給する。
【0092】
すなわち、広角切替信号に基づいて、範囲Z2で示される強度分布で、送信部11のアンテナ37−2により送信信号の電波が送信されると共に、受信部12のアンテナ51−1乃至51−4は、RFスイッチ52−1,52−2が開放されることにより、アンテナ51−2,51−3のみで受信するため、広角検知範囲となる範囲Z2内に存在する物体から反射される電波を受信し易い状態に制御される。これにより、送信部11により送信信号として送信される電波の電波強度分布と、受信部12により受信し易い電波強度分布とが一致するため、範囲Z2内における物体により反射される電波を適切に受信することが可能となる。
【0093】
ステップS17において、加算部53は、アンテナ51−1乃至51−4より供給されてきた受信信号を相互に加算してf1和信号またはf2和信号を生成し、LNA55−1に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器56−1に出力させる。
【0094】
ステップS18において、減算部54は、アンテナ51−1乃至51−4より供給されてきた受信信号を相互に減算してf1差信号、またはf2差信号を生成し、LNA55−2に出力し、所定の電圧まで増幅して混合器56−2に出力させる。
【0095】
ステップS19において、混合器56−1は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、和信号とを混合し、和信号の混合信号として振分部57に出力する。また、混合器56−2は、送信部11の3分岐部34より供給されてくる送信信号と、差信号とを混合し、差信号の混合信号として振分部58に出力する。
【0096】
尚、このステップS12乃至S19の処理は、フローチャートの表記として異なるタイミングで処理されるものとされているが、実際の処理は、ほぼ同時に処理されており、実質的に並列処理されているものである。
【0097】
ステップS20において、振分部57は、送信部11の周波数切替部32より、後述するステップS26の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd1和信号をLPF59−1に供給し、切替信号が、周波数f2に対応する切替信号のとき、対応する和信号であるfd2和信号をLPF59−2に供給する。また、振分部58は、送信部11の周波数切替部32よりステップS26の処理で供給されてくる切替信号が、周波数f1に対応する切替信号のときのみ、対応する差信号であるfd1差信号をLPF59−3に供給する。
【0098】
すなわち、図7の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図7の左中段で示されるように、振分部57には、切替信号に対応して、混合器56−1より周波数f1に対応する和信号であるfd1和信号、および周波数f2に対応する和信号であるfd2和信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部57は、切替信号が周波数f1に対応するHiのとき、図7の右上段で示されるように、fd1和信号をLPF59−1に供給し、切替信号が周波数f2に対応するLowのとき、図7の右中段で示されるように、fd2和信号をLPF59−2に供給する。
【0099】
また、図7の左上段で示されるように、周波数切替部32が、切替信号として、周波数f1のときHiを、周波数f2のときLowを出力する場合、図7の左下段で示されるように、振分部58には、切替信号に対応して、混合器56−2より周波数f1に対応する差信号であるfd1差信号、および周波数f2に対応する差信号であるfd2差信号が交互に順次供給されてくる。このとき、振分部58は、切替信号が周波数f1に対応するHiのときのみ、図7の右下段で示されるように、fd1差信号をLPF59−3に供給する。
【0100】
ステップS21において、LPF59−1乃至59−3は、順次振分部57,58より供給されてくるfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ平滑化して増幅部60−1乃至60−3に供給する。増幅部60−1乃至60−3は、供給されてきたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、それぞれ増幅し、ADC60−1乃至60−3に供給する。ADC60−1乃至60−3は、平滑化され、さらに増幅されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号をデジタル信号に変換し、それぞれ切替部62−1乃至62−3に供給する。
【0101】
ステップS22において、切替部62−1乃至62−3は、送信部11のエリア切替部38より狭角切替信号が供給されてきているか否かを判定する。ステップS22において、例えば、図4のフローチャートを参照して説明したステップS1の処理により、エリア切替部38より狭角切替信号が供給されてきている場合、ステップS23において、切替部62−1乃至62−3は、それぞれデジタル信号に変換されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、衝突予備動作用信号処理部13に受信信号として供給する。
【0102】
一方、ステップS22において、例えば、図4のフローチャートを参照して説明したステップS3の処理により、エリア切替部38より広角切替信号が供給されてきている場合、ステップS24において、切替部62−1乃至62−3は、それぞれデジタル信号に変換されたfd1和信号、fd2和信号、およびfd1差信号を、車線変更警告用信号処理部15に受信信号として供給する。
【0103】
ステップS25において、周波数切替部32は、今現在出力している周波数f1、またはf2のいずれかのCW信号に切り替えてから所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないと判定された場合、処理は、ステップS12に戻る。一方、ステップS25において、所定時間が経過していると判定された場合、ステップS26において、周波数切替部32は、切替信号を切り替えて、すなわち、それまでに出力していた周波数とは別の周波数に切り替えて、発振部31にCW信号を発振させる。
【0104】
以上の処理を纏めると以下のようになる。ステップS13またはS15の処理において、例えば、送信部11のアンテナ37−1,37−2より出力される電波が、以下の式(1)で表されるものとすると、アンテナ51−1乃至51−4で受信される電波は、以下の式(2),式(3)として表される。
【0105】
【数1】

【0106】
【数2】

【0107】
【数3】

【0108】
ここで、Tiは、送信電波を、Rx1,Rx2は、それぞれアンテナ51−1乃至51−4のうちの、アンテナ51−2,51−3により受信された電波、または、アンテナ51−1,51−2、およびアンテナ51−3,51−4をそれぞれ1のアンテナと見立てたときに受信される電波を、A,Bは、それぞれ送信電波および受信電波の強度を、dは物体までの距離を、vはレーダ装置1を搭載した車両と、送信信号としての電波を反射する物体としての車両C1との相対速度を、fiは送信された電波の周波数(i=1のとき周波数f1、i=2のとき周波数f2)を、cは光速を、Lは、例えば、図8で示されるアンテナ51−2,51−3間の距離、または、アンテナ51−1,51−2における重心位置と、アンテナ51−3,51−4における重心位置との間の距離を、θは図8で示されるアンテナ51−2,51−3間、または、アンテナ51−1,51−2における重心位置と、アンテナ51−3,51−4における重心位置との間の中心から物体C1の角度(到来角)を、それぞれ表している。また、式(3)における括弧内の第3項のLsin(θ)は、図8で示されるように、アンテナ51−2,51−3、または、アンテナ51−1,51−2を1本に見立てたアンテナと、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナと見立てたアンテナとの双方に到達する電波の経路差を示すものである。したがって、車両C1から受信される電波のアンテナ51−2,51−3、または、アンテナ51−1,51−2を1本に見立てたアンテナと、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナと見立てたアンテナとへの経路は平行であるものとすれば、アンテナ51−2,51−3、または、アンテナ51−1,51−2を1本に見立てたアンテナと、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナと見立てたアンテナとの双方で受信される受信信号には、経路差Lsin(θ)分に相当する位相差が生じていることになる。
【0109】
そこで、ステップS17の処理においては、加算部53が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−2,51−3、または、アンテナ51−1,51−2を1本に見立てたアンテナと、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナと見立てたアンテナとで受信される電波の信号を加算することにより、以下の式(4)で示される和信号Raddを生成する。式(4)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表されている。すなわち、式(4)においては、2Bcos(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0110】
【数4】

【0111】
また、ステップS18の処理においては、減算部54が、式(2),式(3)で示されるアンテナ51−2,51−3、または、アンテナ51−1,51−2を1本に見立てたアンテナと、アンテナ51−3,51−4を1本のアンテナと見立てたアンテナとの受信電波に対応する信号を減算することにより、以下の式(5)で示される差信号Rsubを生成する。式(5)においては、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が、振幅として表される。すなわち、式(5)においては、2Bsin(π・Lsin(θ)・fi/c)の項により、経路差Lsin(θ)により生じる位相差の情報が振幅として表されている。
【0112】
【数5】

【0113】

そして、ステップS19の処理により、混合器56−1、56−2が、式(4),式(5)で表される和信号Raddおよび差信号Rsubを、それぞれ送信信号と混合することにより、以下の式(6),式(7)で示される和信号の混合信号Radd_dおよび差信号の混合信号Rsub_dが求められる。
【0114】
【数6】

【0115】
【数7】

【0116】
この和信号の混合信号Radd_dが、図7における周波数f1またはf2に対応するfd1和信号またはfd2和信号であり、差信号の混合信号Rsub_dが、図7における周波数f1に対応するfd1差信号である。
【0117】
すなわち、以上の処理により、式(6),式(7)で表されるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号が、周波数f1またはf2の切替信号に同期して、図7で示されるように、それぞれLPF59−1乃至59−3に供給される。そして、ステップS21の処理により、LPF59−1乃至59−3は、離散的に供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を、それぞれに平滑化することにより連続的な値に変換し、増幅部60−1乃至60−3に供給する。増幅部60−1乃至60−3は、それぞれを増幅して、ADC61−1乃至61−3に供給する。さらに、ADC61−1乃至61−3がデジタル信号に変換して、切替部62−1乃至62−3に供給する。
【0118】
そして、切替部62−1乃至62−3は、ステップS22の処理により、狭角切替信号が供給されてきていれば、ステップS23の処理により、衝突予備動作用信号処理部13に、また、広角切替信号が供給されてきていれば、ステップS24の処理により、車線変更警告用信号処理部15に、それぞれ3種類の受信信号(平滑化されて連続的なデジタル信号にされたfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号)として供給する。
【0119】
すなわち、狭角切替信号が供給されてきている場合、送信部11から狭角検知範囲となる、例えば、図2の範囲Z1に対応する強度分布の送信信号となる電波が照射され、受信部12は、対応して狭角検知範囲に対応するように電波を受信し、衝突予備動作用信号処理に必要とされる受信信号を生成して、衝突予備動作用信号処理部13に供給することが可能となる。
【0120】
また、広角切替信号が供給されてきている場合、送信部11から広角検知範囲となる、例えば、図2の範囲Z2に対応する強度分布の送信信号となる電波が照射され、受信部12は、対応して広角検知範囲に対応するように電波を受信し、車線変更警告用信号処理に必要とされる受信信号を生成して、車線変更警告用信号処理部15に供給することが可能となる。
【0121】
結果として、処理に応じた送信信号となる電波の照射と、その照射に応じた電波を適切に受信することが可能となり、処理に応じた受信信号を、切替えてそれぞれ衝突予備動作用信号処理部13または車線変更警告用信号処理部15に供給することが可能となる。
【0122】
次に、図9のフローチャートを参照して、衝突予備動作用信号処理について説明する。
【0123】
ステップS31において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、衝突判定用FFTタイミング計測用のカウンタ72aのカウント値Xを初期化してカウントを開始する。
【0124】
ステップS32において、FFT71−1乃至71−3は、受信部12より供給されてくるデジタル信号からなるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0125】
ステップS33において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、カウンタ72aのカウント値Xが所定の時間T1を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T1は、衝突を判定し、衝突が判定された場合には、衝突に対応するための予備動作を実行させる必要があるため、比較的短い時間とする必要があり、特に後述する車線変更警告用信号処理のサンプリング時間より短い時間である。
【0126】
ステップS33において、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS32に戻る。すなわち、所定の時間Tが経過するまで、ステップS32,S33の処理が繰り返され、サンプリングが継続される。
【0127】
ステップS33において、例えば、カウント値Xが所定の時間T1よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS34において、衝突判定用FFTタイミング制御部72は、FFT71−1乃至71−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT71−1乃至71−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT71−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部74に供給する。また、FFT71−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部73、および距離算出部74に供給する。さらに、FFT71−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部75に供給する。
【0128】
ステップS35において、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトルに基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v1を算出し、距離算出部74、角度算出部75、および衝突判定部76に出力する。すなわち、ドップラ周波数fd2と物体の速度vとの関係は、以下の式(8)で示される関係となる。ここで、vは、速度を、fi(i=1or2)は、CW信号の周波数、cは、光速である。したがって、ドップラ周波数算出部73は、fd2和信号のスペクトル分布から求められたドップラ周波数fd2に基づいて、式(8)を変形して速度vを速度v1として算出する。
【0129】
【数8】

【0130】
ステップS36において、距離算出部74は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT71−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v1に基づいて、fd1和信号とfd2和信号との位相差から物体までの距離D1を算出し、衝突判定部76に供給する。
【0131】
すなわち、周波数f1が数10GHzであるのに対して、周波数f2は、周波数f1と数MHzの周波数差でしかないため、ドップラ周波数fd1,fd2は、いずれも2vf1/c,2vf2/cで表されるが、いずれも同一であるものとして考えることができる。
【0132】
また、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとの位相差Δφは、以下の式(9)で表される。ここで、周波数f1,f2の周波数差をΔfとすれば、物体の距離dは、以下の式(10)で表される。
【0133】
【数9】

【0134】
【数10】

【0135】
そこで、ステップS36において、距離算出部74は、上述した式(10)を用いて、物体までの距離dを距離D1として計算する。
【0136】
ステップS37において、角度算出部75は、FFT71−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v1に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ1(図8の到来角θに相当する)を算出する。すなわち、上述した式(6),式(7)で表される和信号の混合信号Radd_dと、差信号の混合信号Rsub_dとにおける振幅Aadd,Asubは、それぞれ以下の式(11),式(12)で表される。
【0137】
【数11】

【0138】
【数12】

【0139】
ここで、図8における到来角θは、以下の式(13)で示されるように表される。
【0140】
【数13】

【0141】
角度算出部75は、上述した式(13)を用いて、角度θを角度θ1として算出し、衝突判定部76に供給する。
【0142】
以上の処理により、この時点で衝突判定部76には、検出された物体の速度v1、距離D1、および角度θ1が供給されていることになる。
【0143】
そこで、ステップS38において、衝突判定部76は、速度判定部76aを制御して、供給されてきた速度v1が、所定の速度V1よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v1が、所定の速度V1よりも高速ではないと判定された場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS31に戻る。
【0144】
一方、ステップS38において、速度v1が、所定の速度V1よりも高速であると判定された場合、ステップS39において、衝突判定部76は、範囲判定部76bを制御して、検出された物体の距離D1と角度θ1とに基づいて、物体の存在する位置を求め、衝突の可能性が高い所定の範囲内、すなわち、図2で示される範囲Z1のうち、所定の距離以内の範囲内に存在するのか否かを判定させる。ステップS39において、例えば、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在しない場合、衝突の可能性はないものとみなし、処理は、ステップS31に戻る。尚、この衝突の可能性が高い所定の範囲は、速度v1に対応して設定するようにしても良い。
【0145】
一方、ステップS39において、衝突の可能性が高い所定の範囲内に存在すると判定された場合、ステップS40において、衝突判定部76は、衝突予備動作指示部76cを制御して、衝突予備動作制御部14に対して、衝突予備動作を実施するように指示させる。
【0146】
この処理に応じて、ステップS41において、衝突予備動作制御部14は、衝突に備えて、例えば、警告音声を発することで衝突の発生を警告すると共に、シートベルトを引き上げて、乗員を座席に固定させ、いわゆる鞭打ち症などの発生を抑止したり、衝突前に適切なタイミングでエアバッグを動作させて衝突時の衝撃を吸収したり、さらには、可動式ヘッドレストを頭部に押し当てるなどして、乗員の衝突時の頭部への反動による衝撃を抑制させるといった動作を実施する。
【0147】
以上の処理により、比較的短いサンプリング時間で衝突の有無を判定し、衝突の可能性があると判定された場合、衝突に備えた予備動作を実施することが可能となるので、乗員の衝突時の安全性を向上させることができる。また、図2を参照して、上述したように、範囲Z1の範囲は、強い電波を送信信号として出力することにより、比較的遠くまで検知範囲として設定されているため、物体として検出される車両が検出される程接近しているような場合、接近に伴って、受信される受信信号も強い電波として受信されることになるため、サンプリング時間が短くても、比較的条件のよいデータをサンプリングして利用することができ、自車への衝突の有無を高精度で検出することが可能となる。
【0148】
次に、図10のフローチャートを参照して、車線変更警告用信号処理について説明する。
【0149】
ステップS51において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、車線変更警告用FFTタイミング計測用のカウンタ92aのカウント値Yを初期化してカウントを開始する。
【0150】
ステップS52において、FFT91−1乃至91−3は、受信部12より供給されてくるfd1和信号およびfd2和信号、並びにfd1差信号を取得し、順次記憶し、サンプリングする。
【0151】
ステップS53において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、カウンタ92aのカウント値Yが所定の時間T2を超えているか否か、すなわち、所定のサンプリング時間を超えているか否かを判定する。尚、この時間T2は、車線変更時の危険の有無を判定し、車線変更の危険があると判定された場合には、車線変更に対する警告を実行させる必要があるためのものであり、運転者の危険回避動作が行えるものであればよいので、衝突時の予備動作に比べて求められる時間が長くてもよいため、衝突の有無を判定する処理に用いられたサンプリング時間である時間T1よりも、比較的長い時間とすることができる。
【0152】
ステップS53において、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きくないと判定された場合、処理は、ステップS52に戻る。すなわち、所定の時間T2が経過するまで、ステップS52,S53の処理が繰り返される。
【0153】
ステップS53において、例えば、カウント値Yが所定の時間T2よりも大きいと判定され、サンプリングを終了して、処理を開始するタイミングに到達したと判定された場合、ステップS54において、車線変更警告用FFTタイミング制御部92は、FFT91−1乃至91−3に対してFFTの処理を実行させる。この指示を受けて、FFT91−1乃至91−3は、それぞれサンプリングしたデータに基づいて、FFTを掛けて、FFT91−1が、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果を距離算出部94に供給する。また、FFT91−2が、fd2和信号のスペクトル分布から得られる結果をドップラ周波数算出部93、および距離算出部94に供給する。さらに、FFT91−3が、fd1差信号のスペクトル分布から得られる結果を角度算出部95に供給する。
【0154】
ステップS55において、ドップラ周波数算出部93は、fd2和信号のスペクトルから得られる結果に基づいて、ドップラ周波数fd2を求め、さらに、ドップラ周波数fd2より、物体の速度v2を算出し、距離算出部94、角度算出部95、および車線変更警告判定部96に出力する。尚、ドップラ周波数算出部93、距離算出部94、および角度算出部95における処理は、実質的に、上述したドップラ周波数算出部73、距離算出部74、および角度算出部75における処理と同様であるので、以降においても、その説明は、適宜省略するものとする。
【0155】
ステップS56において、距離算出部94は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、および、FFT91−2より供給されてくるfd2和信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに、速度v2に基づいて、物体までの距離D2を算出し、車線変更警告判定部96に供給する。
【0156】
ステップS57において、角度算出部95は、FFT91−1より供給されてくるfd1和信号のスペクトル分布から得られる結果、およびfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果、並びに速度v2に基づいて、fd1和信号のスペクトル分布から得られる結果とfd1差信号のスペクトル分布から得られる結果との比率から物体の存在する位置の角度θ2(図8の到来角θに相当する)を算出する。
【0157】
以上の処理により、この時点で車線変更警告判定部96には、検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2が供給されていることになる。
【0158】
ステップS58において、車線変更警告判定部96は、この検出された物体の速度v2、距離D2、および角度θ2を検出した時刻情報と対応付けてデータ記憶部96cに順次記憶させる。尚、データ記憶部96cに記憶される物体の速度v2、距離D2、および角度θ2は、直近の数秒分を記憶すればよく、データ記憶部96cに記憶される情報が、所定時間分以上となる場合、最新のデータが最も古いデータの記録領域に上書きされて記録される。
【0159】
ステップS59において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速であると判定した場合、処理は、ステップS60に進む。
【0160】
ステップS60において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Va)に応じた警告範囲W1を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0161】
ステップS61において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W1内に存在するのか否かを判定させる。ステップS61において、例えば、図11で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、太線で示される警告範囲W1内に車両C13が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS62において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図11における警告範囲W1は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N1の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0162】
ステップS63において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS62における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0163】
一方、ステップS59において、例えば、速度v2が、所定の速度Vaよりも高速ではないと判定した場合、ステップS64において、車線変更警告判定部96は、速度判定部96aを制御して、供給されてきた速度v2が、所定の速度Vb(<Va)よりも高速であるか否かを判定させる。例えば、速度v2が、所定の速度Vbよりも高速であると判定された場合、処理は、ステップS65に進む。
【0164】
ステップS65において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、速度v2(>Vb)に応じた警告範囲W2を速度対範囲テーブル96dより読み出させる。
【0165】
ステップS66において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、検出された物体の距離D2と角度θ2とに基づいて、物体の存在する位置を求め、警告範囲W2内に存在するのか否かを判定させる。ステップS56において、例えば、図11で示されるように、レーダ装置1が車両C1の後部に搭載され、点線で示される警告範囲W2内に車両C12が存在するような場合、車線変更が危険であるものとみなし、ステップS62において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。尚、図11における警告範囲W2は、車両C1が図中の車線L2を下方向に走行中であるとき、車両C1の運転席横付近の位置(目視により車線変更しようとする車線に存在する車両を確認できる位置)から後方に距離N2(<N1)の範囲である。尚、図示しないが、当然のことながら、警告範囲は、車線L3側にも同様に設定されている。
【0166】
また、ステップS61において、物体の位置が警告範囲W1内ではないと判定された場合、ステップS64において、速度v2が速度Vbよりも高速ではないと判定された場合、または、ステップS66において、物体の位置が警告範囲W2内ではないと判定された場合、いずれにおいても、ステップS62,S63の処理がスキップされて、処理は、ステップS67に進む。
【0167】
すなわち、範囲判定部96bは、物体として検出された車両の速度v2の大きさに応じて、予め速度対範囲テーブル96dに格納されている警告範囲を切り替える。このため、検出された車両の相対速度v2が低速であれば、車両C1に対して比較的近い範囲からなる警告範囲W2を設定することで、ある程度接近してから警告を発するようにさせることができ、逆に、検出された車両の相対速度v2が高速であれば、車両C1に対して比較的遠い範囲を含む警告範囲W1を設定することで、ある程度離れた位置からでも警告を発するようにさせることができる。このように、警告範囲を速度に応じて設定することにより、不要な警告の発報を抑制し、相対速度に応じ適切な車線変更の警告を発することが可能となる。
【0168】
尚、以上においては、警告範囲は、速度v2に対する閾値により2つの警告範囲が設定される例について説明してきたが、それ以上の閾値を設けて、さらに多く警告範囲を設定するようにしても良い。また、予め速度対範囲テーブル96dに、速度に対応した警告範囲の情報が記憶される例について説明してきたが、例えば、速度に応じて、演算により警告範囲をシームレスに設定できるようにしても良い。
【0169】
ステップS67において、車線変更警告判定部96は、データ記憶部96cを参照して、所定時間だけ直前までの間に車両(物体)が検出されていたか否かを判定する。ステップS67において、例えば、データ記憶部96cに記憶されている物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報のうち、時刻として直近の所定時間内に存在するデータが存在する場合、ステップS68において、車線変更警告判定部96は、推定部96eを制御して、データ記憶部96cに記憶されている、所定時間内の物体の速度v2、距離D2、および角度θ2の情報に基づいて、今現在の物体の位置を算出することにより位置を推定させる。
【0170】
ステップS69において、車線変更警告判定部96は、範囲判定部96bを制御して、推定部96eにより算出された物体の存在する位置の情報に基づいて、警告範囲内に物体が存在するか否かを判定させる。尚、このステップS69の処理については、上述したステップS59乃至S61,S64乃至S66の処理と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0171】
ステップS69において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在すると判定された場合、車線変更警告判定部96は、ブラインドスポットタイミング判定部96gを制御して、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないか否かを判定させる。ブラインドスポットとは、レーダ装置1では物体の存在を検出することができない範囲であって、警告範囲を含む範囲である。例えば、図11における車両C13が、車線L1を車両C1よりも高速で走行しながら移動し、車両C12の位置を経てさらに進むと、やがてレーダ装置1で検出できない状態となり(範囲Z2から脱した状態となり)、車両C11で示されるように、一点鎖線で囲まれたブラインドスポットB1内に到達する。ブラインドスポットタイミング判定部96gは、データ記憶部96cに記憶されている時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2から検出物体がブラインドスポットに入ったと思われるタイミング(最後に検出された時刻情報)を検索し、検索されたブラインドスポットに入ったと思われるタイミングから所定の時間内であるか否かを判定する。
【0172】
ステップS70において、検出物体がブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していないと判定された場合、ブラインドスポット内の推定された位置に検出物体が存在するものとみなし、ステップS71において、車線変更警告判定部96は、警告指示部96fを制御して、車線変更警告動作制御部16に対して、車線変更警告動作を実施するように指示させる。
【0173】
ステップS72において、車線変更警告動作制御部16は、ステップS71における車線変更警告判定部96からの指示に応じて、警告音、警告を促す音声指示、または、警告を促すように座席を振動させるなどすることにより、車線変更を実施すると危険であることを警告する。
【0174】
一方、ステップS69において、推定された位置から警告範囲内に物体が存在しないと判定された場合、ステップS70乃至S72の処理がスキップされて、処理は、ステップS51に戻る。
【0175】
また、ステップS70において、ブラインドスポットに入ってから所定時間が経過していると判定された場合、直前まで検出されていた物体が、移動してブラインドスポット内から外れて、警告範囲内に存在しないものとみなし、ステップS71,S72の処理がスキップされて、処理は、ステップS51に戻る。
【0176】
尚、ステップS70の処理における検出物体がブラインドスポットに入ってからの経過時間については、速度v2に応じた所定時間との比較により、物体がブラインドスポット内に存在するか否かを判定するようにしてもよく、このようにすることで、低速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を長くし、高速で接近してきた車両については、ブラインドスポット内における考慮時間を短くできるので、ブラインドスポットを脱するまでの時間を適正に考慮して、必要とされる警告のみを実施することが可能となる。
【0177】
以上の処理により、検出物体が、受信部12により受信される受信信号では検出できないブラインドスポットに入るようなことがあっても、時刻情報に対応付けて記憶されている速度v2、距離D2、および角度θ2に基づいて、位置を推定し、推定された位置に基づいて警告範囲内であるか否かを判定することで、車線変更により生じる可能性の高い危険に対して警告することが可能となる。
【0178】
結果として、物体が直接検出できる場合には、検出結果から取得される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができ、物体が直接検出でない場合には、過去の検出結果から推定される物体の位置と警告範囲との比較により車線変更の危険を認識することができ、レーダ装置全体として、適切に車線変更の危険を警告することが可能となる。
【0179】
尚、以上の例においては、警告範囲の設定については、速度v2に対応して設定される例について説明してきたが、例えば、ブラインドスポット内であるか否かに対応付けて警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、車線変更を警告する際、実際に物体の存在を検出した位置に基づいて車線変更の警告をしているのか、または、実際に物体の存在を検出していないが、過去の検出結果を用いて推定された位置に基づいて車線変更の警告をしているのかを運転者に提示することができるので、運転者は、車線変更の警告の根拠を認識した上で、車線変更の警告を受けることが可能となる。具体的な提示方法としては、例えば、ドアミラーの付け根などに運転者からのみ視認できる角度で点滅灯を設けて、車線変更の警告時に発光させるような装置を用いる場合、実際に物体の存在を検出しているときの警告は、赤色のランプを点灯させ、実際に物体の存在は検出されていないが過去の検出結果に基づいた推定による警告は、黄色のランプを点灯させるといったものとしてもよい。
【0180】
また、当然のことながらブラインドスポットの有無とは無関係に警告範囲を設定するようにしても良く、このようにすることで、ブラインドスポットの範囲とは無関係に、速度v2で適切な警告範囲を設けることが可能となるので、車線変更時の危険を適切に警告することが可能となる。
【0181】
さらに、以上においては、検出された物体の速度の算出にあたり、ドップラ周波数fd2を用いる例について説明してきたが、周波数f1,f2との周波数差は数MHzであるため、ドップラ周波数fd1を用いて求めるようにしても略同一の速度を求めることができる。また、同様に、以上においては、距離の計算に当たり、fd1和信号およびfd2和信号の位相差を用いる例について説明してきたが、fd1差信号およびfd2差信号の位相差を用いるようにしても良く、例えば、いずれも計測できる構成とし、fd1和信号およびfd2和信号の信号品質と、fd1差信号およびfd2差信号の信号品質とを比較した上で、信号品質の高いものを用いて距離を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。さらに、同様に、以上においては、角度の計算に当たり、fd1和信号とfd1差信号との比率により求める例について説明してきたが、fd2和信号とfd2差信号との比率により求めるようにしてもよく、さらには、fd1和信号およびfd1差信号の信号品質と、fd2和信号およびfd2差信号の信号品質とを比較し、信号品質の高いものを用いて角度を計算するようにし、精度を向上させるようにしても良い。
【0182】
また、以上においては、狭角切替信号が供給されているとき、2本ずつのアンテナを対にして狭角検知範囲で、かつ、高感度なアンテナを実現する例について説明してきたが、アンテナの指向性は、より多くのアンテナを1つのアンテナとして見立てた構成とすることにより、さらに高めることが可能となるので、さらに、多くのアンテナを用いて1つのアンテナとして見立てたものを対にして構成するようにしてもよい。
【0183】
さらに、以上においては、狭角切替信号、および広角切替信号に基づいて、送信部11のアンテナ37−1,37−2を切り替えて電波を照射する例について説明してきたが、例えば、広角検知範囲の強度分布特性を備えた電波だけを切り替えることなく送信部11から照射するようにしても、受信部12によるRFスイッチ52−1,52−2の接続、または開放により受信特性を切り替えるだけで、受信される電波の分布特性を切り替えることが可能となる。
【0184】
また、以上の例においては、エリア切替部38により所定時間ごとに狭角切替信号、および広角切替信号が順次切り替わって出力される例について説明してきたが、検知範囲を狭角検知範囲とするか広角検知範囲とするかを切り替える必要があるタイミングにのみ狭角切替信号、または広角切替信号が出力されるようにしてもよい。
【0185】
結果として、衝突予備動作を実行させる、いわゆるプリクラッシュ安全装置と、車線変更警告動作を実行させる、いわゆる車線変更支援装置とのそれぞれ異なる検知範囲に対応した異なる強度分布となる電波を送信するアンテナを容易な構造で切り替え、切り替えられた状態で電波を照射すると共に、それぞれの強度分布特性の電波に対応した受信し易い構成のアンテナとして切り替えて受信することが可能となるので、両機能による安全性を確保することが可能になる。
【0186】
以上の如く、本発明によれば、プリクラッシュ安全装置用のレーダ装置と、車線変更支援装置用のレーダ装置といった、異なる強度分布特性を必要とするアンテナを簡単な構成により、切り替えて共用することが可能となり、装置構成の小型化とコストの低減を実現することが可能となる。
【0187】
ところで、上述した一連の監視処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0188】
図12は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0189】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0190】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0191】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【符号の説明】
【0192】
1 レーダ装置
11 送信部
12 受信部
13 衝突予備動作用信号処理部
14 衝突予備動作制御部
15 車線変更警告用信号処理部
16 車線変更警告動作制御部
35 RFスイッチ
37−1,37−2 アンテナ
38 エリア切替部
51−1乃至51−4 アンテナ
52−1,52−2 RFスイッチ
62−1乃至62−3 切替部
71−1乃至71−3 FFT
72 衝突判定用FFTタイミング制御部
73 ドップラ周波数算出部
74 距離算出部
75 角度算出部
76 衝突判定部
91−1乃至91−3 FFT
92 車線変更警告用FFTタイミング制御部
93 ドップラ周波数算出部
94 距離算出部
95 角度算出部
96 車線変更警告判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検出する検出装置において、
所定の範囲に電波を照射するように構成され、前記電波を照射することにより送信信号を送信する送信手段と、
第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対からなり、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信する第1の受信アンテナと、
前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対からなり、前記送信手段により送信された送信信号としての電波のうち、反射されてくる電波を受信する第2の受信アンテナと、
前記第1の受信アンテナ、または、前記第2の受信アンテナにより受信された前記電波より受信信号を生成する受信手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、サンプリングすることにより、物体を検出する検出手段と
を含む検出装置。
【請求項2】
前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対は、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を挟んで、第2の間隔で配置され、
前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対と、それぞれ前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対とを接続、または非接続に切り替える接続切替手段をさらに含み、
前記第2の受信アンテナは、前記第2の受信アンテナを構成する、少なくとも1列ずつのアンテナ対のうち、前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対を除くアンテナ対と、それぞれ前記第1の受信アンテナを構成する、前記第1の間隔で配置された1列ずつのアンテナ対とが前記接続切替手段により接続されることにより、前記第1の間隔よりも広い第2の間隔で配置された、前記第1の受信アンテナを含む、少なくとも2列ずつのアンテナ対から構成される
請求項1記載の検出装置。
【請求項3】
前記第1の受信アンテナ、および前記第2の受信アンテナは、前記接続切替手段が非接続状態の場合、前記第1の受信アンテナとして機能し、前記接続切替手段が接続状態の場合、前記第2の受信アンテナとして機能する
請求項2記載の検出装置。
【請求項4】
前記送信手段は、
第1の角度範囲であって、第1の距離近傍までの範囲からなる第1の範囲に電波を照射するように構成された第1の送信アンテナと、
前記第1の角度範囲よりも広角の第2の角度範囲であって、前記第1の距離よりも近距離の第2の距離近傍までの範囲からなる第2の範囲とを含む範囲に電波を照射するように構成された第2の送信アンテナと、
前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナとを切り替える送信アンテナ切替手段と、
前記接続切替手段の接続、または、非接続、並びに、前記アンテナ切替手段による前記第1の送信アンテナ、または前記第2の送信アンテナとの切り替えを同期して指示する切替信号を生成する切替信号生成手段をさらに含む
請求項3記載の検出装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記受信手段により生成された受信信号を、第1の所定時間の間でサンプリングすることにより、物体を検出する第1のサンプリング検出手段と、
前記受信手段により生成された受信信号を、前記第1の所定時間よりも長い第2の所定時間の間でサンプリングすることにより、前記物体を検出する第2のサンプリング検出手段とを含み、
前記切替信号に基づいて、前記第1の受信アンテナにより受信された前記電波より生成された受信信号を、前記第1のサンプリング検出手段に切り替えて出力し、前記第2の受信アンテナにより受信された前記電波より生成された受信信号を、前記第2のサンプリング検出手段に切り替えて出力する切替出力手段とをさらに含む
請求項4に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−216845(P2010−216845A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60958(P2009−60958)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】