説明

検出装置

【課題】 非検出物体の速度、距離、方位、大きさを検知可能な検出器を提供する。
【解決手段】
発振器と送信伝送部と送信アンテナとを含む送信部と、受信アンテナと送信部からの信号と受信アンテナからの信号を混合し中間波信号を出力するミキサとを含む、2つ以上の受信部とを設ける検出装置である。これにより、非検出物体の速度、距離、方位、大きさを検知可能となり、例えば自動ドアの開閉システムに適応したときに誤作動を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア制御装置などに用いられる人体や物体などを検出する検出装置に関し、特にミリ波センサを用いた検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動ドアの開閉を行うために検出エリア内の人体や物体を検出する検出装置が設けられている。従来の検出装置においては、例えば被検出物体に対して赤外線を投光する投光器と、被検出物体または床面での反射による光を受光する受光器とを含み、その受光量または受光量の変化量が所定のしきい値と比較され、物体が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−263435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術には、次のような問題点があった。
【0005】
受光器の検出エリア内にある植木などの静止物体が動いた場合であっても、受光量が変化し、エリア内に人体が侵入したと判断して誤検出するという問題があった。また、受光器の検出エリア内に侵入した人体や物体については、それが例えドアを通過しない方向に移動していても自動ドアを開けるという問題があった。また、受光器の検出エリアが主にドア前方である場合には、検出エリア内に斜め前方から接近する人体の検知が遅れるという問題があった。さらに、受光器の検出エリア内に侵入する人体や物体の速度に合わせた自動ドアの制御がされないため、自動ドアの開くタイミングが遅かったり、早すぎたりするという問題があった。
【0006】
以上のような問題点を解決するためには、被検出物体の移動速度,方位,距離,物体の大きさ等の情報が必要であるが、従来技術の検出装置では光学センサを用いているため、必要な情報を得られなかった。これは、赤外線センサや超音波センサを用いた場合であっても同様である。
【0007】
また、従来の検出装置は、光学的条件により感度が低下したり、周期的なメンテナンスが必要であったりするといった問題があった。さらに、例えば雨、霧、雪等の環境条件により、検知感度が低下するといった問題があった。また、赤外線センサ等は、赤外線が透過する窓の経時変化等により、検出感度が低下する問題もあった。
【0008】
本発明は上記のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、設置環境によって検出感度の変動がなく、検出エリア内に侵入した被検出物体の移動速度、方位、距離、大きさを検出できる検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検出装置は、周波数を連続的に変調させた送信信号を発生させる発振器と、前記発振器に接続され、前記送信信号を伝送する送信伝送部と、前記送信部に接続され、前記送信信号の一部を分配し、分配信号として出力する分配器と、前記送信伝送部に接続され、前記送信信号を放射する送信アンテナと、前記送信信号の反射信号を第1の受信信号として受信する第1の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナと離間して配置されており、前記送信信号の反射信号を第2の受信信号として受信する第2の受信アンテナと、前記第1の受信アンテナと前記分配器とにそれぞれ接続され、前記分配信号と前記第1の受信信号とを混合し、第1の中間波信号を出力する、第1のミキサと、前記第2の受信アンテナと前記分配器とにそれぞれ接続され、前記分配信号と前記第2の受信信号とを混合し、第2の中間波信号を出力する、第2のミキサと、前記第1および第2の中間波信号を演算処理する信号処理部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検出感度の設置環境による変動や経時変化を抑制した、信頼性が高く、かつ、被検出物体の移動速度、方位、距離、大きさを検出することのできる検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ、図1に示した検出装置を自動ドア制御装置に用いた例を示す図である。
【図3】図1に示した検出装置を自動ドア制御装置に用いた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の検出装置について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1において1は高周波信号を送信信号として発振する発振器、2は送信信号を伝送する送信伝送部、3は送信信号を放射する送信アンテナ、4は送信信号の一部を分配する分配器、5a,5bはそれぞれ、送信アンテナ3から放射された信号が被検出物体により反射された受信信号を受信する第1および第2の受信アンテナ、6a,6bはそれぞれ、第1およぶ第2の受信アンテナ5a,5bで受信した受信信号と分配器4からの分配信号とを混合し、中間波信号を出力する第1および第2のミキサ、7a,7bはそれぞれ、第1および第2の受信アンテナ5a,5bで受信した受信信号を伝送する第1および第2の受信伝送部、8は第1および第2の中間波信号を演算処理する信号処理部である。また、11は、送信伝送部2に挿入された、発振器1から発振された高周波信号を増幅する増幅器、12は、分配器4に接続された終端器、13a,13bはそれぞれ、第1および第2のミキサ6a,6bから出力された中間波信号を増幅する中間波増幅器である。
【0015】
(送信部)
発振器1は、周波数変調機能を有するものである。そのような発振器を用いることで、検出装置をFM−CW方式で検出できるものとすることができる。
【0016】
具体的には、発振器1を、入力電圧に応じて発振周波数を変化させる周波数可変発振器(VCO)と、これに接続された、所定の直流分を中心に周期的に三角状に変化する周波数変調電圧発生部と、で構成する。周波数変調電圧発生部で発生する電圧をVCOに入力することで、中心周波数で発振させる。例えば、30GHz以上のミリ波帯の高周波信号を送信信号として発振する。ミリ波帯の高周波信号は、超音波やマイクロ波、さらには光に比べ、空気中の酸素や水分による減衰が小さい。このため、送信信号を屋外に放射する場合であっても、気候条件による影響を受けにくい信号となる。さらに、このような信号は、光学的条件を必要としないため、送信信号が放射される環境の明るさに影響されることがない。特に60GHz以上のミリ波においてはこのような特徴が顕著であるため、送信信号の中間周波数がこの周波数帯を有するように設定することが好ましく、例えば76GHzとすればよい。
【0017】
送信伝送部2は、発振器1からの送信信号を伝送する伝送線路であり、発振器1と送信アンテナ3とを接続している。送信伝送部2は送信信号を伝送できれば特に限定はされないが、例えば、基板上に形成されたストリップ線路,コプレーナ線路等の平面線路や、セラミック基板内部に設けられた積層型導波管等で構成される。
【0018】
増幅器11は送信伝送部2に挿入され、発振器1からの信号を増幅する。
【0019】
このようにして、発振器1で生成された高周波信号は、増幅器11で増幅され、送信伝送部2を送信信号として伝送し、送信アンテナ3から放射される。
【0020】
(受信部)
送信アンテナ3から放射された送信信号は、被検出物体が存在する場合には反射波を生じる。この反射波を2つの受信アンテナ(第1の受信アンテナ5a,第2の受信アンテナ5b)で受信信号として受信する。ここで、第1の受信アンテナ5aで受信する反射波を第1の受信信号,第2の受信アンテナ5bで受信する反射波を第2の受信信号とする。
【0021】
第1の受信アンテナ5aと第2の受信アンテナ5bとは、自由空間波長をλとすると、λ/2以下の間隔をあけて配置する。これにより、2つの受信アンテナで受信する信号の位相差を確認することができる。
【0022】
第1の受信伝送部7aは、第1の受信アンテナ5aからの第1の受信信号を伝送するもので、第1の受信アンテナ5aと後述する第1のミキサ6aとを接続する。
【0023】
第2の受信伝送部7bは、第2の受信アンテナ5bからの第2の受信信号を伝送するもので、第2の受信アンテナ5bと後述する第2のミキサ6bとを接続する。
【0024】
第1および第2の受信伝送部7a,7bは、送信伝送部2と同様の構成とすることができる。
【0025】
(中間波発生部)
次に、第1の受信信号,第2の受信信号をそれぞれ送信信号の一部と混合し、中間波信号を出力させる。
【0026】
分配器4は、例えば、方向性結合器等で構成され、送信信号の一部を分配するために設置され送信伝送部2の増幅器11と送信アンテナ3との間に配置される。
【0027】
分配器4は、後述の第1のミキサ6a,第2のミキサ6bにそれぞれ接続されるとともに、終端器12を介して基準電位に接続される。これにより、送信信号の一部を第1のミキサ6a,第2のミキサ6bに伝送することができる。
【0028】
第1のミキサ6a,第2のミキサ6bはそれぞれ、分配器4および第1の受信伝送部7a,第2の受信伝送部7bに接続される2つの入力端子と、中間波信号を出力する出力端子とを有している。第1のミキサ6aにおいて、分配器4からの送信信号の一部と、第1の受信信号とを混合させ、これにより生成される低周波側の信号である中間波(IF信号)を第1の中間波(第1のIF信号)として出力端子より出力する。第2のミキサ6bにおいても同様に、分配器4からの送信信号の一部と、第2の受信信号とを混合させ、これにより生成される低周波側の信号である中間波(IF信号)を第2の中間波(第2のIF信号)として出力端子より出力する。なお、第1のIF信号を三角波の上り部分から得て、第2のIF信号を三角波の下り部分から得るように、三角波周期に合わせて出力させる。
【0029】
第1の中間波および第2の中間波はそれぞれ、第1および第2のミキサ6a,6bの出力端子と後述の信号処理部8との間に挿入された第1および第2の中間波増幅器13a,13bによりそれぞれ増幅される。
【0030】
(信号処理部)
信号処理部8は、第1および第2の中間波増幅器13a,13bに接続されており、第1の中間波および第2の中間波の演算処理を行なう。
【0031】
例えば、第1の中間波および第2の中間波の周波数の和より、被検出物体までの距離が得られ、周波数の差より、速度が求められる。また、第1の中間波および第2の中間波の反射レベル(振幅)より、被検出物体の大きさを検出することができる。さらに、第1の中間波および第2の中間波の位相差より、被検出物体の方位を検出することができる。なお、この位相差が検出角度と比例する。
【0032】
このように、2つの受信アンテナを用い、かつ、FM−CW方式とすることで、1つの検出装置で、被検出物体の速度,方位,距離,大きさを検出することができる。
【0033】
なお、従来までの光学センサ、赤外線センサ、超音波センサ等を用いた検出装置では、例えばセンサの検出エリアに物体が存在するかどうかのみを検出するため、上述のような情報を得ることができなかった。また、1つの受信アンテナを用いて、高周波信号のドップラー効果を利用して検出する従来の検出装置においても、1つの検出装置では上述のような情報を得ることはできず、複数の検出装置(システム)を併用する必要があった。
【0034】
これに対して、上述のような送信部,受信部,信号処理部より図1に示す検出装置が構成され、速度、方位、距離、物体の大きさを1つの検出装置で検出可能となる。また、高周波信号を用いることにより、外部の環境による検出感度の低下や、経時的な検出感度の低下を抑制することができる。
【0035】
このような検出装置は、特にその構成については限定されないが、セラミック基板の表面に発振器1,増幅器11,13a,13b,信号処理部8を構成するIC等を実装し、セラミック基板の表面および内部に伝送部2,7a,7b,分配器4,ミキサ6a,6bを形成し、セラミック基板の裏面にアンテナ3,5a,5bを配置し、互いを内層線路等で接続することで、小型な検出装置を提供することができる。特にセラミック基板の内部に伝送部2,7a,7b,分配器4を積層型導波管で形成すれば、各種信号のアイソレーション性に優れた検出装置を提供することができる。このような検出装置は、例えば自動ドアの開閉を制御するセンサや、照明のON/OFFを制御するセンサ等に用いることができる。以下、自動ドア制御装置に用いた場合を例に、図2,図3を用いて、その働きを説明する。
【0036】
図2,図3はそれぞれ、図1に示す検出装置を自動ドア制御装置に用いた例を示すものである。検出装置100は自動ドアの中央部に設置し、送信信号を、送信アンテナから自動ドア正面方向に放射させている。図中の扇型に線分で囲まれた領域が第1および第2の受信アンテナで被検出物体からの反射波を検出可能な領域を示している。
【0037】
図2に示すように、高周波信号を用いて検出することから、検出角度を広くとることができる。また、2つの受信アンテナを用いることにより、斜め方向から自動ドア方向へ侵入してくる人も正面から侵入してくる人と同様に検出することができる。
【0038】
被検出物体が静止している場合には、第1および第2のIF信号の差が0となり、速度は0と検出されるので、ドアに近い位置に人がいる場合であっても不必要なドアの開閉を抑制することができる。
【0039】
また、第1および第2のIF信号の差より被検出物体の速度を求めることができるので、人が近付くタイミングに合わせてドアを開閉させることができるので、早く移動してきた人がドアに追突したり、遅く移動してくる人のために必要以上にドアを開け続けたりすることを防ぐことができる。すなわち、自動ドアへの侵入者の歩行スピードによって自動ドアの開閉時間を制御することが可能となるため、歩行者がドアの開閉スピードに合せる必要はなく、スムーズなドア通過が可能となり、自動ドアの開閉時間が効率的に制御できる。これにより、安全で、室内の空調などを効率よく調整することができ省エネに貢献することができる。
【0040】
また、第1および第2のIF信号の反射レベルから、被検出物体の大きさを識別することができるので、これに応じてドアの開閉幅を調整することができ、省エネに貢献することができる。
【0041】
さらに、第1および第2のIF信号の位相差から、被検出物体の方位を検出することができる。位相差が変わらず振幅が増加し、2つのIF信号の周波数和も増加してくれば、侵入者が自動ドアを利用すると判断できる。逆に、2つのIF信号の位相差が変化していけばドアの前を通過していき、ドアを通過しないものと判断できる(図3)。このように、被検出物体がドアを通過するのか、ドア前を通過するのかを判断することができ、効率的なドアの開閉を行なうことができる。
【0042】
ここで、周波数変調帯域を広帯域にすることにより、解像度が上がる。したがって、微細な被検出物体についても検出する必要がある場合には、周波数変調帯域を広帯域にするように、周波数変調電圧発生部を調整すればよい。
【0043】
(変形例)
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良が可能である。
【0044】
例えば、図1に示す例では、送信アンテナが1つの場合を例に説明したが、2つ以上設けてもよい。
【0045】
また、図1に示す例では、送信アンテナと第1の受信アンテナを別の構成としたが、送受信アンテナを用いて、アンテナからの受信信号を分離して、第1のミキサに入力するようにしてもよい。
【0046】
さらに、図2においては、自動ドアの正面に検出装置を設置したが、従来通り天井やあるいは自動ドアの上部に用いることは勿論のこと、光学センサでは不可能であった下から上への放射構成も取れるため、床面に設置してもよい。
【0047】
また、高周波信号(電磁波)を使うため夜間等も感度よく検出可能であるため、自動ドアや、照明装置等の制御の他に、警備システム等のテレビモニターのバックアップなどにも有効である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・発振器
2・・・送信伝送部
3・・・送信アンテナ
4・・・分配器
5a・・・第1の受信アンテナ
5b・・・第2の受信アンテナ
6a・・・第1のミキサ
6b・・・第2のミキサ
7a・・・第1の受信伝送部
7b・・・第2の受信伝送部
8・・・信号処理部
11・・・増幅器
13a・・・第1の中間波増幅器
13b・・・第2の中間波増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を連続的に変調させた送信信号を発生させる発振器と、
前記発振器に接続され、前記送信信号を伝送する送信部と、
前記送信部に接続され、前記送信信号の一部を分配し、分配信号として出力する分配器と、
前記送信伝送部に接続され、前記送信信号を放射する送信アンテナと、
前記送信信号の反射信号を第1の受信信号として受信する第1の受信アンテナと、
前記第1の受信アンテナと離間して配置されており、前記送信信号の反射信号を第2の受信信号として受信する第2の受信アンテナと、
前記第1の受信アンテナと前記分配器とにそれぞれ接続され、前記分配信号と前記第1の受信信号とを混合し、第1の中間波信号を出力する、第1のミキサと、
前記第2の受信アンテナと前記分配器とにそれぞれ接続され、前記分配信号と前記第2の受信信号とを混合し、第2の中間波信号を出力する、第2のミキサと、
前記第1および第2の中間波信号を演算処理する信号処理部と、を有する検出装置。
【請求項2】
前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナとは、自由空間波長の1/2以下の間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−112600(P2011−112600A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271478(P2009−271478)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】