説明

検査モード切換え回路

駆動ピックアップモードとインピーダンスモードで同時に動作する構造の渦電流プローブ試験装置を提供する。渦電流プローブは2つのコイルを有する。渦電流プローブ試験装置はまた、信号発生装置、出力装置及び切換え部を含む。切換え部は信号発生装置から2つのコイルへ入力信号を送る方法を切換える構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渦電流検知器を有するロボットアームのエンドエフェクタに係り、さらに詳細には、渦電流検知器を有するロボットアームのエンドエフェクタを同時に2つのモードで作動できるようにするモード切換え回路に係る。
【背景技術】
【0002】
原子炉の加圧水容器内には放射線の危険性があるため、加圧水容器内のコンポーネントの保守及び試験はロボットアームのような遠隔操作装置により実施するのが一般的である。かかる操作機器は通常、圧力容器内のいかなるポイントにもほぼアクセス可能なロボットアームを備えている。ロボットアームには特殊な保守または試験のタスクを遂行可能なエンドエフェクタが取付けられる。例えば、原子炉の圧力容器の水入口と出口は、とりわけ表面及び表面近くの欠陥の有無を調べるための検査を行なう必要がある。かかる検査はロボットアームに結合された「スレッド」を用いて行なう。
【0003】
スレッドは検査機器を結合可能なフレームを備えている。検査機器は典型的には超音波プローブ及び渦電流プローブを有する。超音波プローブは超音波周波数成分を発射して受信するか、発射または受信する。従って、超音波プローブは超音波パルスを送信し、その反射を検知する構造になっている。即ち、超音波パルスは欠陥箇所とほぼ滑らかな表面とでは反射の仕方が異なる。渦電流プローブは磁界の変動を検知するよう動作する。即ち、渦電流プローブは少なくとも1つの電気コイルを有する。信号、即ち交流電流がコイルを流れるとコイルにより磁界が発生する。渦電流プローブを導電性表面に隣接して配置すると、磁界がその表面を相互作用して表面に循環渦電流が発生する。表面がほぼ滑らかであれば、渦電流は石を池に落下させると生じる円形のさざなみに擬すことができる。しかしながら、渦電流は渦電流プローブに信号が供給される限り繰返しそして周期的に発生する。詳説すると、渦電流の特性はその信号の特性、例えば周波数、大きさ、位相などに関連する。表面内または表面近くに(以下、「表面に」と言う)欠陥があると、その表面上の渦電流のパターンに乱れが生じる。乱れた渦電流の波の特性を測定することにより欠陥の性質を突き止めることができる。
【0004】
渦電流プローブの1つのタイプに「+ポイントプローブ」または「Xコイルプローブ」がある。「+ポイントプローブ」は2つの導電性コイルがプローブ本体内において2つのほぼ直交する平面内に配置されたものである(従って、名前に+またはXが含まれる)。渦電流プローブのもう1つのタイプは、2つのコイルを上下に積み重ねるか並置した「パンケーキ」形プローブである。これらの構成のうちでは「+ポイントプローブ」が好ましい。「+ポイントプローブ」は「駆動ピックアップ」モードと「インピーダンス」モードの2つのモードのうちの1つで使用される。プローブは両モードで使用され、渦電流を発生させ、その乱れを検知する。これはアルミニウムホイルのシートを懐中電灯で照らすのに擬することができるが、ホイルが滑らかであれば光の反射に乱れがなく、「しわ」があると光がゆがむ。しかしながら、開示する方法では、渦電流プローブは光/電磁波を発生させる懐中電灯と、欠陥を検知する目の両方の作用を有する。
【0005】
駆動ピックアップモードでは、入力信号を2つのコイルのうちの一方に加えるが、コイルに発生する磁界が隣接表面に渦電流を発生させる。渦電流はまた、第2のコイルに影響を及ぼす磁界を発生させる。詳説すると、ほぼ欠陥のない表面は第2のコイルに有意な応答を発生させない。しかしながら、表面に欠陥があると、異常磁界が発生しこの磁界を第2のコイルにより検知することができる。渦電流プローブは、この構成では、磁界同士の相互作用により、コイルの平面に対して角度を有する欠陥に対して大きな感度を有する。
【0006】
インピーダンスモードでは、信号を両方のコイルに加えるが、各コイルが発生させる磁界により隣接表面に渦電流が生じさせ、さらに、各コイルに生じるインピーダンスを他方のコイルのインピーダンスと比較する。プローブを配置した表面に欠陥がほぼなければ、両コイルのインピーダンスはほぼ同じである。即ち、欠陥がなければ、渦電流より生じる磁界は実質的に一定であり、従って、両コイルへのフィードバックは等しい。しかしながら、欠陥があると、渦電流により生じる磁界が乱れ、2つのコイルのうちの一方に生じるインピーダンスが他方より大きくなる。2つのコイルのインピーダンスを比較して欠陥を識別する。渦電流プローブは、この構成では、磁界同士の相互作用により、コイルの平面内を、またはその平面に平行に延びる欠陥に対して大きな感度を有する。
【0007】
かくして、渦電流プローブは2つの構成のうちの少なくとも1つで使用することができる。これら2つの構成はそれぞれ異なる平面にある欠陥、即ち、コイルの平面に整列するか、またはコイルの平面に対して角度を有する欠陥を検知する可能性がある。従って、渦電流プローブを用いる典型的な方法では、検査スレッドを各検査領域にわたって2回移動させる、即ち、1回目の移動は渦電流プローブを駆動ピックアップモードで、また、2回目の移動はインピーダンスモードで移動させる必要がある。この方法はコストが高く、時間がかかる。
【発明の概要】
【0008】
本願に開示した本発明の思想は、両方のモードで同時に作動するよう構成された渦電流プローブ試験装置を提供する。この構成では、大抵の欠陥を検知するために渦電流プローブを選択領域上においてただ1回移動させる必要がある。渦電流プローブはモード切換え回路により両モードでの作動可能状態にされる。モード切換え回路は2つのモード間を迅速に切換わる。モード切換え回路はマルチプレクサにより制御され、その出力はマルチプレクサを通過する。さらに、渦電流プローブ試験装置を同時の両モードで作動させる方法が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明は、添付図面を参照して好ましい実施例についての以下の説明を読めばさらに理解が深まるであろう。
【図1】原子炉圧力容器の破断斜視図である。
【図2】エンドエフェクタのスレッドの平面図である。
【図3】渦電流プローブの概略図である。
【図4】モード切換え回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中の用語「同時に」及びその派生表現は、「ほぼ同時に」を意味する。約100ヘルツより大きい周波数で起きる事象は同時的事象である。
【0011】
本明細書中の用語「平面」は薄い、即ち、三次元の空間、要素または別の要素の部分の構成体を含む。
【0012】
本明細書に記載する装置及び方法は任意の表面の検査に使用可能であり、原子炉での使用は好ましい使用であると理解されたい。
【0013】
原子炉施設は、応力を受ける、欠陥の有無につき検査の必要がある多くのコンポーネントを含んでいる。原子炉施設は、図1に示す原子炉施設はタービン装置(図示せず)及び図1に示す圧力容器10のような(それらに限定されない)複数のコンポーネントを含んでいる。以下において、原子炉圧力容器10における渦電流プローブ試験装置の使用を説
明するが、後記の特許請求の範囲に記載した装置は原子炉施設の任意のコンポーネントに使用できると理解されたい。原子炉圧力容器10は原子燃料棒(図示せず)を含む構造の原子燃料集合体(図示せず)を格納する。原子炉圧力容器10は包囲空間を画定する本体12である。原子炉圧力容器10は水の入口14と出口16を有する。原子炉圧力容器の本体12と入口14及び出口16はそれぞれ表面18を有する。原子炉圧力容器10内に水が入口14から導入され、1つまたはそれ以上のバッフル(図示せず)がその水を原子燃料集合体の下部に差し向ける。水は原子燃料集合体に沿って上昇する間にその集合体により加熱される。高温となった水は原子炉圧力容器10を出口16から排出される。
【0014】
稼働状態の原子炉圧力容器10の内部は危険な環境であるから、補修及び検査を行なうにはロボットまたは他の自動化装置に頼るのが一般的である。従って、原子炉圧力容器10は通常、少なくとも1つのロボットアーム20を含む。ロボットアーム20は遠隔端部が原子炉圧力容器10内の多数の領域にアクセスするために枢動/回転可能な関節構造を有する。原子炉圧力容器10内の種々の場所で多種多様な検査/補修作業を行なう必要があるため、ロボットアーム20は取換え可能なエンドエフェクタ30を支持するようになっている。エンドエフェクタ30はロボットアーム20の遠隔端部に結合され、所定の仕事を行なう構造の工具を備えた装置である。ロボットアーム20とエンドエフェクタ30は移動自在であるため、所定の仕事(以下、検査という)を広い表面上で行なうことができる。
【0015】
エンドエフェクタ30の1つのタイプとして「スレッド」40がある。スレッド40は通常、その上に他の機器を取付けることができるフレームである。例えば、図2に示すように、検査スレッド42は水の入口14及び出口16を検査する構造を備えている。検査スレッド42は複数の継手46を供えた関節式フレーム44を含むのが好ましい。継手46はプローブ50の取付け部材48を結合する構造である。図示のように、取付け部材48は渦電流プローブ60を支持する構造の少なくとも1つのジンバル組立体52を含む。少なくとも1つのジンバル組立体52はフレーム44に枢動自在に結合される。この構成では、少なくとも1つのジンバル組立体52は渦電流プローブ60を容器本体の表面18に接近させた状態またはそれと接触状態で支持する構造を備えている。スレッド40は超音波プローブ54及び他の試験/検査装置のような他の機器(これらに限定されない)を支持することができる。
【0016】
渦電流プローブ60は渦電流プローブ試験装置56の一部である。渦電流プローブ試験装置56はロボットアーム20、エンドエフェクタ・スレッド40(これらは上述した)、モード切換え回路80、接地バス109、信号発生装置110及び出力装置120を含む。接地バス109はアース導体である。信号発生装置110は少なくとも1つの交流試験信号を発生する構造を有する。信号発生装置110は発生される各信号の特性、例えば周波数、大きさ、位相などを制御する構造を有する。信号発生装置110は多数の出力を含むことができる。信号発生装置と出力の間でそれらと電気通信関係にある導体部またはバス(図示せず)は1またはそれ以上の抵抗(図示せず)を含む。信号発生装置110内のかかる抵抗または信号発生装置110の外部にあるがその信号発生装置110の出力と電気通信関係にある抵抗は信号の特性を変化することができる。従って、2つの別個の信号が必要であれば、信号発生装置110により単一の信号を発生させて、その信号を分割または変化させるか、または信号発生装置110を多数の信号発生器(図示せず)により構成して、元となる信号を多数発生させてもよい。信号発生装置110により発生する各信号は交流信号であり、導体を介して渦電流プローブ60へ送られる。
【0017】
出力装置120は渦電流プローブ60から出力信号を受信する構造であるが、それを記録するようにしてもよい。渦電流プローブ60からの出力信号も電気信号であり、導体を介して出力装置120へ送られる。出力装置120は人間が読取るか視認可能な形でデー
タを提示する構造を有する。渦電流プローブ60のかかる出力装置120は公知である。信号発生装置110と出力装置120を他の原子的コンポーネントと共に単一のハウジング内に組み込み能であることに注意されたい。
【0018】
渦電流プローブ60は「+ポイントプローブ」であるのが好ましい。渦電流プローブ60は、好ましくは銅線である導電材料の第1及び第2のコイル64、66を収容する本体62を有する(全て略示してある)。プローブ本体62はほぼ平坦な検査面68を有する。検査面68は検査中の表面に隣接するかそれと接触する状態に置かれる構造である。2つのコイル64、66は好ましくは、ほぼ矩形の横断面を有し、各々がプローブ本体62内の平面部または一般的な「平面」内に配置される。両コイル64、66は検査面68の平面にほぼ垂直な平面内を延びる。従って、動作時、コイル64、66は検査中の表面、即ち、容器本体の表面18の平面にほぼ垂直に配置するのが一般的である。各コイル64、66は第1端子及び第2端子を有する。即ち、第1コイルの第1端子70、第1コイルの第2端子72、第2コイルの第1端子74、第2コイルの第2端子76が存在する。
【0019】
モード切換え回路80は切換え部82と導体部90を含む。切換え部80は複数のスイッチ84、好ましくは第1スイッチ86A、第2スイッチ86B、第3スイッチ86Cを含む。好ましい実施例において、各スイッチ86A、86B、86Cは開くか閉じるかの何れかになる構造の単投スイッチとして働く。従って、各スイッチ86A、86B、86Cはそれらを選択的に導通させる構造である。即ち、スイッチ86A、86B、86Cが開位置にあれば、電流はスイッチ86A、86B、86Cを流れず、スイッチ86A、86B、86Cが閉位置にあれば、電流はスイッチ86A、86B、86Cを流れる。各スイッチ86A、86B、86Cは約1KHzと1000KHzの間の周波数で状態を変化できる電気的制御式スイッチであるのが好ましい。
【0020】
導体部90は複数の導体92を含み、選択された導体92は信号発生装置110から第1コイル64及び第2コイル66に電気信号を送る構造であり、選択された導体92は第1コイル64及び第2コイル66から出力装置120へ電気信号を送る構造である。詳説すると、導体部90は第1入力信号導体94、第2入力信号導体96、第1出力導体98、第2出力導体100及び接地導体102を含む。第1入力信号導体94と第2入力信号96は信号発生装置110に結合され、その装置と電子通信関係にある。従って、少なくとも1つの信号が第1入力信号導体94と第2入力信号導体96の両方へ送られる。第1入力信号導体94はさらに第1コイル第1端子70に結合されてそれと電子通信関係にある。接地導体102は接地バス109に結合されてそれと電子通信関係にある。さらに、接地導体102は第1コイル第2端子72と第2コイル第2端子76の両方に結合されてそれらと電子通信関係にある。第1出力導体98は第2コイル第1端子74と結合されてそれと電子通信関係にある。第1出力導体98と第2出力導体100はそれぞれ出力装置120に結合されている。公知のように、出力装置120は受信した信号を蓄積しそして/または人間が読取り可能な形に変換する。第1入力信号導体94はインピーダンスモードにある時2つのコイル64と66の間のインピーダンスをバランスさせる抵抗99を含むことに注意されたい。
【0021】
第1スイッチ86Aは接地バス109と第2出力導体100に結合され、それらの間を選択的に電気通信関係にする構造である。第2スイッチ86Bは第2入力信号導体96と第1出力導体98に結合されて、それらの間を選択的に電気通信関係にする構造である。第3スイッチ86Cは第1入力信号導体94と第2出力導体100に結合されて、それらの間を選択的に電気通信関係にする構造である。第1スイッチ86A、第3スイッチ86Cを結合して切換えスイッチ(図示せず)にできることを注意されたい。
【0022】
導体92及びスイッチ86のこの構成によると、切換え部82、従って、渦電流プロー
ブ60を、渦電流60プローブ60が駆動ピックアップモードで動作する第1の構成と、渦電流プローブ60がインピーダンスモードで動作する第2の構成との間で切換えることができる。即ち、第1の構成では、第1スイッチ86Aは閉位置にあって第2出力導体100を接地し、第2スイッチ86Bと第3スイッチ86Cは開位置にある。従って、第1入力信号導体94は第1コイル第1端子70に結合され、第1コイル64は信号発生装置110から信号を受信する。第2スイッチ86Bが開位置になると、第2入力信号導体96と第1出力導体98との間に閉じた接続関係はない。従って、信号発生装置110と第2コイル66とは接続関係にない。この構成では、第1コイル64は信号を受信し、第2コイル66は接地状態にある。この構成は駆動ピックアップモードにある渦電流プローブ60の構成に一致する。
【0023】
切換え部82が第2の構成になると、第1スイッチ86Aは開位置に、また第2スイッチ86Bと第3スイッチ86Cは閉位置に移動している。従って、第2入力信号導体96と第2コイル第1端子74は第2スイッチ86Bを介して第1出力導体98に結合され、それと電気通信関係にある。第1入力信号導体94と第1コイル第1端子70は第3スイッチ86Bを介して第2出力導体100に結合され、それと電気通信関係にある。この構成はインピーダンスモードにある渦電流プローブ60の構成に一致する。
【0024】
切換え部82は上記した2つの構成間で迅速に移動する構造である。切換え部82の構成変化速度は検査スレッド42が本体表面18上を移動する(後述する)速度及び渦電流試験信号の周波数の両方に関係がある。想定試験信号の周波数とそれに関連する切換え周波数を示す表を以下に示す。
渦電流試験周波数(KHz) 最大切換え周波数(KHz)
10 1
100 10
200 20
500 49
1,000 96
10,000 714
【0025】
切換え部82は、好ましくは、約1KHzと714KHzの間の周波数、より好ましくは、試験信号周波数の約10分の1の周波数でこれらの構成間を移動する。従って、渦電流プローブ60は両方のモードで同時に動作する構成である。
【0026】
切換え部82はマルチプレクサ130(略示する)により制御される。マルチプレクサ130は切換え制御信号を発生し、切換え部82の構成を検知する構造である。マルチプレクサ130は、マルチプレクサ130と切換え部82の各スイッチ86A、86B、86Cの間を延びてそれらを電気的通信関係にするマルチプレクサ入力導体132を含む。切換え制御信号は切換え部82を上述した構成間で移動させる。上述したように、渦電流プローブ60からの出力信号もマルチプレクサ130を通過する。
【0027】
かくして、上述した渦電流プローブ試験装置56を用いると基体を1回の移動で検査することができる。即ち、検査スレッド42を2回、即ち、駆動ピックアップモードで1回、そしてインピーダンスモードで1回、検査領域上で移動させるのではなく、検査スレッド42が領域をただ1回通過すればよい。従って、渦電流試験装置56は、少なくとも1つの渦電流プローブ60を有するエンドエフェクタ・スレッド40を原子炉圧力容器10内においてその少なくとも1つの渦電流プローブ60が原子炉圧力容器本体12に隣接する位置に配置するステップ200と、駆動ピックアップモードとインピーダンスモードで同時に働く少なくとも1つの渦電流プローブ60により原子炉圧力容器の本体12を検査するステップ202とを含む方法で使用できる。検査ステップ202はエンドエフェクタ
の検査スレッド42を本体表面18上で移動させるステップ204を含む。エンドエフェクタの検査スレッド42は、好ましくは、約0.25メートル/秒と2.5メートル/秒の間の速度で、より好ましくは、約1.0メートル/秒の速度で移動する。
【0028】
本発明を好ましい実施例につき詳細に説明したが、当業者は本願の開示全体に照らしてそれらの詳細事項に対する種々の変形例及び設計変更を想到できることがわかるであろう。従って、図示説明した特定の実施例は例示であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではなく、その範囲は特許請求の範囲及び任意且つ全ての均等物の全幅を与えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を有する少なくとも1つの試験信号を発生する構成の信号発生装置と、少なくとも1つの出力信号をディスプレイ可能なフォーマットに変換する構成の出力装置と、接地バスと、表面を有する本体の欠陥を検知するために第1モード及び第2モードで動作する構成を有し、前記本体表面にほぼ垂直の平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第1コイル及び前記本体表面及び前記第1コイルにほぼ垂直な平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第2コイルを有する渦電流プローブとより成る渦電流プローブ試験装置と協働する構造のモード切換え回路であって、
複数のスイッチを有する切換え部と、
複数の導体を有し、選択された導体が前記信号発生装置から前記第1コイル及び第2コイルへ電気信号を送る構造であり、選択された導体が前記第1コイル及び第2コイルから前記出力装置で電気信号を送る構造の導体部とより成り、
前記複数の導体のうち選択された導体は前記複数のスイッチのうち少なくとも1つのスイッチに結合されてそれと電子通信関係にあり、前記スイッチはそれぞれ前記第1コイル及び第2コイルの少なくとも1つに結合されてそれと電気通信関係にあり、
前記切換え部は、前記複数のスイッチを、前記渦電流プローブが駆動ピックアップモードで働く第1の構成と、前記渦電流プローブがインピーダンスモードで働く第2の構成との間において迅速に移動させ、かくして前記渦電流プローブを両方のモードで同時に働かせる構造であるモード切換え回路。
【請求項2】
前記導体部は第1入力信号導体、第2入力信号導体、第1出力導体、第2出力導体及び接地導体を含み、
前記切換え部はスイッチを介して選択的な電気的通信関係を提供する構造の少なくとも第1、第2及び第3スイッチを有し、
前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体は前記信号発生装置に結合されてそれと電子通信関係にあり、かくして少なくとも1つの信号が前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体に送られ、
前記第1入力信号導体は前記第1コイル第1端子に結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記接地バスに結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記第1コイル第2端子及び前記第2コイル第2端子に結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記第1出力導体は前記第2コイル第1端子と結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記第1スイッチは前記接地バスと前記第2出力導体に結合されてそれらの間を選択的に電気通信関係にする構造を有し、
前記第2スイッチは前記第2入力信号導体と前記第1出力導体に結合されてそれらの間を選択的に電気通信関係にする構造を有し、
前記第3スイッチは前記第1入力信号導体と前記第2出力導体に結合されてそれらの間を選択的に電気通信関係にする構造を有する請求項1のモード切換え回路。
【請求項3】
前記切換え部は前記第1の構成と第2の構成の間を約1KHzと714KHzの間の周波数で移動する構造を有する請求項1のモード切換え回路。
【請求項4】
前記切換え部は前記第1の構成と前記第2の構成の間を前記試験信号の約10分の1の周波数で移動する構造を有する請求項3のモード切換え回路。
【請求項5】
切換え制御信号を発生し且つ前記切換え部の構成を検知する構造のマルチプレクサと、
前記マルチプレクサと前記切換え部の各スイッチの間を延びてそれらの間を電気通信関係にするマルチプレクサ入力導体とより成り、
前記マルチプレクサは前記切換え部の構成を制御し、前記切換え部の状態を検知する請求項1のモード切換え回路。
【請求項6】
少なくとも1つの試験信号を発生する構成の信号発生装置と、少なくとも1つの出力信号をディスプレイ可能なフォーマットに変換する構成の出力装置と、接地バスと、表面を有する本体の欠陥を検知するために第1モード及び第2モードで動作する構成を有し、前記本体表面にほぼ垂直の平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第1コイル及び前記本体表面及び前記第1コイルにほぼ垂直な平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第2コイルを有する渦電流プローブとより成る渦電流プローブ試験装置と協働する構造のモード切換え回路であって、
第1入力信号導体、第2入力信号導体、第1出力導体、第2出力導体及び切換え部より成り、
前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体は前記信号発生装置に結合されてそれと電子通信関係にあり、かくして信号が前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体の両方に送られ、
前記第1入力信号導体は前記第1コイル第1端子と結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記接地バスと結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記第1コイル第2端子と前記第2コイル第2端子と結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記第1出力導体は前記第2コイル第1端子と結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記切換え部は少なくとも第1、第2及び第3スイッチを有し、前記スイッチはそれぞれ電気通信関係のない開位置と、電気通信関係がある閉位置との間で移動することにより前記スイッチを介して選択的な電気通信関係を提供し、
前記第1スイッチは前記接地バスと前記第2出力導体に結合されてそれらの間に選択的な電気通信関係を提供する構造であり、
前記第2スイッチは前記第2入力信号導体と前記第1出力導体に結合されてそれらの間に選択的な電気通信関係を提供する構造であり、
前記第3スイッチは前記第1入力信号導体と前記第2出力導体に結合されてそれらの間に選択的な電気通信関係を提供する構造であるモード切換え回路。
【請求項7】
前記切換え部は,前記第1スイッチが閉位置にあり、前記第2スイッチと第3のスイッチが開位置にある第1の構成と、前記第1スイッチが開位置にあり、前記第2スイッチと第3スイッチが閉位置にある第2の構成との間において約1KHzと714KHzの間の周波数で移動する構造である請求項6のモード切換え回路。
【請求項8】
前記切換え部は前記第1の構成と前記第2の構成の間を試験信号の約10分の1の周波数で移動する構造である請求項7のモード切換え回路。
【請求項9】
表面を有する本体である原子炉圧力容器のための渦電流プローブ試験装置であって、
原子炉圧力容器内に設置され、本体が複数の継手を有するエンドエフェクタ・スレッドを備えたロボットアームと、
前記本体表面の一部にほぼ垂直な平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第1コイルと、前記本体表面及び前記第1コイルにほぼ垂直な平面内を延び且つ第1端子と第2端子を有する第2コイルとを有し、前記本体表面の欠陥を検知するための第1モードと第2モードで動作する構造の少なくとも1つの渦電流プローブと、
前記少なくとも1つの渦電流プローブのための少なくとも1つの試験信号を発生させる構造の信号発生装置と、
前記少なくとも1つの渦電流プローブからの少なくとも1つの出力信号をディスプレイ可能なフォーマットに変換する構造の出力装置と、
接地バスと、
切換え部と導体部を有するモード切換え回路とより成り、
前記切換え部は複数の組立体を有し、
前記導体部は複数の導体を有し、選択された導体が前記信号発生装置から前記第1コイルと第2コイルへ電気信号を送る構造であり、選択された導体が前記第1コイルと第2コイルから前記出力装置へ電気信号を送る構造であり、
前記複数の導体のうち選択された導体が前記複数のスイッチのうち少なくとも1つのスイッチと結合されてそれと電子通信関係にあり、前記スイッチはそれぞれ前記第1コイルと第2のコイルのうちの少なくとも1つと結合されてそれと電気通信関係にあり、
前記切換え部は、前記渦電流プローブが駆動ピックアップモードで働く第1の構成と、前記渦電流プローブがインピーダンスモードで働く第2の構成との間において前記複数のスイッチを迅速に移動させることにより、前記渦電流プローブを両方のモードで同時に働かせる構造を有する渦電流プローブ試験装置。
【請求項10】
前記導体部は第1入力信号導体、第2入力信号導体、第1出力導体、第2出力導体を含み、
前記切換え部は前記スイッチを介する選択的な電気通信関係を提供する構造の少なくとも第1スイッチ、第2スイッチ及び第3スイッチを有し、
前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体は前記信号発生装置に結合されてそれと電子通信関係にあり、かくして信号が前記第1入力信号導体と前記第2入力信号導体の両方に送られ、
前記第1入力信号導体は前記第1コイル第1端子に結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記接地バスに結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記接地導体は前記第1コイル第2端子と前記第2コイル第2端子に結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記第1出力導体は前記第2コイル第1端子に結合されてそれと電子通信関係にあり、
前記第1スイッチは前記接地バスと前記第2出力導体に結合されてそれらを選択的な電気通信関係にする構造であり、
前記第2スイッチは前記第2入力信号導体と前記第1出力導体とに結合されてそれらを選択的な電気通信関係にする構造であり、
前記第3スイッチは前記第1入力信号導体と前記第2出力導体に結合されてそれらを選択的な電気通信関係にする構造である請求項9の渦電流プローブ試験装置。
【請求項11】
前記切換え部は前記第1の構成と第2の構成の間を約1KHzと714KHzの間の周波数で移動する構造を有する請求項9の渦電流プローブ試験装置。
【請求項12】
前記切換え部は前記第1の構成と前記第2の構成の間を前記試験信号の約10分の1の周波数で移動する構造を有する請求項11の渦電流プローブ試験装置。
【請求項13】
切換え制御信号を発生し且つ前記切換え部の構成を検知する構造のマルチプレクサと、
前記マルチプレクサと前記切換え部の各スイッチの間を延びてそれらの間を電気通信関係にするマルチプレクサ入力導体とより成り、
前記マルチプレクサは前記切換え部の構成を制御し、前記切換え部の状態を検知する請求項9の渦電流プローブ試験装置。
【請求項14】
前記エンドエフェクタ・スレッドは前記少なくとも1つの渦電流プローブを支持する構造の少なくとも1つのジンバル組立体を含み、
前記少なくとも1つのジンバル組立体は前記エンドエフェクタ・スレッドの本体に結合されている請求項9の渦電流プローブ試験装置。
【請求項15】
表面を有する本体である原子炉圧力容器の検査方法であって、
少なくとも1つの渦電流プローブを有するエンドエフェクタ検査スレッドを前記原子炉圧力容器内において前記少なくとも1つの渦電流プローブが前記原子炉圧力容器の本体に隣接するように配置し、
駆動ピックアップモードとインピーダンスモードで同時に働く少なくとも1つの渦電流プローブにより前記原子炉圧力容器の本体を検査するステップより成る原子炉圧力容器の検査方法。
【請求項16】
前記原子炉圧力容器は圧力容器の表面に隣接して移動する構造のロボットアームを含み、前記エンドエフェクタ検査スレッドは前記ロボットアームに結合され、前記少なくとも1つの渦電流プローブにより前記原子炉圧力容器の本体を検査する前記ステップは、前記エンドエフェクタ検査スレッドを前記本体表面上において約0.25m/秒と2.5m/秒の間の速度で移動させるステップを含む請求項15の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの渦電流プローブにより前記原子炉圧力容器の本体を検査する前記ステップは、前記エンドエフェクタ検査スレッドを前記本体表面上において約1.0m/秒の速度で移動させるステップを含む請求項16の方法。
【請求項18】
前記エンドエフェクタ検査スレッドを配置する前記ステップは、渦電流プローブの両モードで検査を行なうために同じ領域上におけるエンドエフェクタ検査スレッドの2度移動を必要としない請求項16の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515237(P2013−515237A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544576(P2012−544576)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/058465
【国際公開番号】WO2011/078942
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501010395)ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー (78)
【Fターム(参考)】