説明

検査装置

【課題】半導体ウエハ等の縁部における欠陥を検査する検査装置に関し、被検査物の縁部からの散乱光を確実に検出する装置の提供。
【解決手段】被検査物Wを移動可能に保持する回転テーブル11と、前記被検査物Wの縁部に光を照射する照明部13と、前記縁部で発生する散乱光を受光する受光部15と、前記被検査物Wの移動に対応して変動し前記縁部からの正反射光が前記受光部15に入射することを制限する遮光部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の縁部における欠陥を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを製造するリソグラフィ工程では、レジスト塗布工程、露光工程、洗浄工程、エッチング工程、レジスト除去工程などがあり、通常、これら工程毎に欠陥検査を行う。この欠陥検査中には、半導体ウエハの縁部に生じる各種の欠陥、例えばレジストの残渣、ひび、欠け、パーティクルの付着などの検査がある。この縁部の欠陥検査は欠陥がその付近にあるチップ領域に及んで、半導体チップの歩留まりに大きく影響するので重要である。
【0003】
半導体ウエハの縁部の欠陥を検査する装置として、例えば、半導体ウエハの縁部をCCDカメラで撮影し、この撮影画像に画像処理を施し、欠陥を検出する装置が知られている。
【特許文献1】特開2003−243465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した装置では、半導体ウエハの縁部をCCDカメラで撮影し、この撮影画像に画像処理を施しているため、検査に時間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで、半導体ウエハの縁部を照明し、正反射光を除いた散乱光を受光素子で受光して欠陥を検出することが検討されている。
【0006】
しかしながら、この方法では、検査面から凹んでいる凹欠陥を検出することが比較的困難であるという問題があった。すなわち、検査面から突出している凸欠陥からの散乱光の検出は、検査面に対する照明光の入射角を大きくすることにより比較的容易であるが、入射角を大きくすると凹欠陥からの散乱光を検出することが比較的困難になる。従って、凹欠陥および凸欠陥からの散乱光を確実に検出することができる検査装置が要望されている。
【0007】
本発明は、かかる従来の事情に対処してなされたもので、被検査物の縁部からの散乱光を確実に検出することができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の検査装置は、被検査物を移動可能に保持する保持部と、前記被検査物の縁部に光を照射する照明部と、前記縁部で発生する散乱光を受光する受光部と、前記被検査物の移動に対応して変動し前記縁部からの正反射光が前記受光部に入射することを制限する遮光部とを備えてなることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の検査装置は、第1の発明の検査装置において、前記被検査物は円盤状であり、前記保持部は、前記被検査物の中心を保持して回転させることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の検査装置は、第2の発明の検査装置において、前記被検査物は、半導体ウエハであり、外周縁部にノッチ部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の検査装置は、第1ないし第3のいずれか1の発明の検査装置において、前記受光部は、前記縁部からの散乱光を受光するフォトダイオードを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の検査装置によれば、被検査物の縁部からの散乱光を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明の検査装置の一実施形態を示している。
【0015】
この検査装置は、回転テーブル11、照明部13、受光部15、遮光部17、制御部19、欠陥検出部21を有している。
【0016】
回転テーブル11は、図示しないモータにより駆動される。回転テーブル11上には、被検物体である半導体ウエハWが載置される。半導体ウエハWの外周縁部には、ノッチ部Nが形成されている。
【0017】
照明部13は、半導体ウエハWの外周縁部Eに光を照射する。照明部13は、光源23、スリット25、レンズ27を有している。光源23には、例えば、LEDが使用される。レンズ27は、スリット25を通過した光源23からの光を半導体ウエハWの外周縁部Eに照射する。
【0018】
受光部15は、半導体ウエハWの外周縁部Eからの散乱光を受光する。受光部15は、レンズ29、受光素子31を有している。レンズ29は、半導体ウエハWの外周縁部Eからの散乱光を集光し受光素子31に照射する。受光素子31は、散乱光を受光、検出する。受光素子31には、例えば、シリコンフォトダイオード(SPD)が使用される。シリコンフォトダイオードを用いることにより、受光部15を簡易に構成することができる。
【0019】
遮光部17は、外周縁部Eからの正反射光が受光部15に入射するのを制限する。遮光部17は、受光部15の前方に一体的に形成されている。遮光部17は、図3に示すように、上下方向に間隔を置いて配置される一対の遮光板33を有している。一対の遮光板33は、それぞれ上下方向に移動可能とされている。一対の遮光板33は、例えば、図示しないボイスコイルモータにより駆動可能とされている。
【0020】
制御部19は、図示しないモータを駆動して回転テーブル11を回転制御する。また、制御部19は、半導体ウエハWの回転に対応して遮光部17に配置される一対の遮光板33を移動する。遮光板33の移動は、例えば、図示しないボイスコイルモータを駆動して行われる。遮光板33の移動は、半導体ウエハWの外周縁部Eからの正反射光が受光部15に入射するのを制限するように行われる(詳細は後述する)。
【0021】
欠陥検出部21は、受光部15からの光量信号を取り込み、光量信号に基づいてノッチ部Nからの散乱光の光量を測定する。そして、測定された散乱光の総量を、予め定められた閾値と比較することにより、半導体ウエハWの欠陥を検出する。
【0022】
図4は、半導体ウエハWの外周縁部Eの詳細を示している。半導体ウエハWの外周縁部Eには、上ベベル部E1、アペックス部E2、下ベベル部E3が形成されている。上ベベル部E1および下ベベル部E3は、半導体ウエハWの上面および下面に対して所定の角度αで直線状に傾斜している。
【0023】
図5の左側は、半導体ウエハWの外周縁部Eに形成されるノッチ部Nの詳細を示している。ノッチ部Nは、半導体ウエハWの外周縁部EをV字状に切り欠いて形成されている。ノッチ部Nの外周に沿って上ベベル部E1、アペックス部E2、下ベベル部E3が形成されている。
【0024】
図5の(a)は、ノッチ部Nの中央を通り半導体ウエハWの中心Oを通る線分Dでノッチ部Nを切断した時のノッチ部Nの断面を示している。この時の断面形状は、上ベベル部E1の径方向長さがL1、傾斜角がα1である。この時の断面形状は、ノッチ部Nの外側を通り半導体ウエハWの中心Oを通る線分Aで外周縁部Eを切断した時と同一である。
【0025】
図5の(b)は、ノッチ部Nの中央より外側を通り半導体ウエハWの中心Oを通る線分CまたはEでノッチ部Nを切断した時のノッチ部Nの断面を示している。この時の断面形状は、上ベベル部E1の径方向長さがL2であり、図5の(a)の径方向長さL1に比較して長くなっている。また、傾斜角がα2であり、図5の(a)の傾斜角α1に比較して傾斜角が小さくなっている。
【0026】
図5の(c)は、ノッチ部Nの線分CまたはEよりさらに外側を通り半導体ウエハWの中心Oを通る線分BまたはFでノッチ部Nを切断した時のノッチ部Nの断面を示している。この時の断面形状は、上ベベル部E1の径方向長さがL3であり、図5の(b)の径方向長さL2に比較して長くなっている。また、傾斜角がα3であり、図5の(b)の傾斜角α2に比較して傾斜角が小さくなっている。
【0027】
上述したように、ノッチ部Nの径方向長さLは、ノッチ部Nの中央から外側に行くに従って大きくなる。また、傾斜角αは、ノッチ部Nの中央から外側に行くに従って小さくなる。従って、半導体ウエハWを回転してノッチ部Nに照明部13からの光を照射すると、ノッチ部Nで反射した正反射光の出射角が変化する。一方、この実施形態では、検査面であるノッチ部Nの上ベベル部E1から凹んでいる凹欠陥を確実に検出するため、上ベベル部E1に対する照明光の入射角を小さくしている。従って、遮光部17を設けることなく、単に半導体ウエハWを回転すると、ノッチ部Nで反射した正反射光が受光部15に入射し、散乱光の検出ができなくなる。
【0028】
図6は、半導体ウエハWの回転によりノッチ部Nの線分Dの延長上に受光部15の受光素子31が位置している状態を示している。この状態では、上ベベル部E1に入射する照明部13からの光の入射角がθ1とされている。そして、遮光部17の遮光板33が、照明部13からの光の正反射光を遮光する位置に位置されている。すなわち、点線で示す直線a1,b1の間の領域が上ベベル部E1で反射した正反射光の通過する領域であり、下側の遮光板33は、この領域を遮光する位置に位置されている。なお、上側の遮光板33は、半導体ウエハWの上面Uからの正反射光を遮光する位置に位置されている。この状態では、図7に示すように、上ベベル部E1に形成される凹欠陥Kからの散乱光fのみが受光素子31に入射し、受光素子31により検出される。
【0029】
図8は、半導体ウエハWの回転によりノッチ部Nの線分CまたはEの延長上に受光部15の受光素子31が位置している状態を示している。この状態では、上ベベル部E1に入射する照明部13からの光の入射角がθ2とされている。そして、遮光部17の遮光板33が、照明部13からの光の正反射光を遮光する位置に位置されている。すなわち、点線で示す直線a2,b2の間の領域が上ベベル部E1で反射した正反射光の通過する領域であり、下側の遮光板33は、この領域を遮光する位置に位置されている。なお、上側の遮光板33は、半導体ウエハWの上面Uからの正反射光を遮光する位置に位置されている。この状態では、図9に示すように、上ベベル部E1に形成される凹欠陥Kからの散乱光fのみが受光素子31に入射し、受光素子31により検出される。
【0030】
図10は、上述した検査装置の動作を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1:制御部19は、検査対象ロットの製品情報(ロット番号やウエハ種類、パターン種類等)を登録する。
【0032】
ステップS2:検査対象ロットから一枚の半導体ウエハWを回転テーブル11上に搭載する。この際半導体ウエハWの中心と回転テーブル11の回転軸は一致させる。
【0033】
ステップS3:半導体ウエハWのノッチ部Nの位置決めを行う。すなわち、回転テーブル11を回転してノッチ部Nを予め定められた所定の位置に位置させる。この所定の位置は、例えば、図2に示すように、照明部13と受光部15を結ぶ線分Lに対して角度β1の位置である。この位置では、ノッチ部Nは照明部13と受光部15を結ぶ線分上には位置しない。
【0034】
ステップS4:回転テーブル11の回転を開始する。
【0035】
ステップS5:照明部13をオンにする。回転テーブル11の回転により、ノッチ部Nが照明部13と受光部15を結ぶ線分L上に位置する直前に、照明部13をオンにする。
【0036】
ステップS6:遮光部17の制御を開始する。制御部19には、回転テーブル11の回転位置に対応して遮光部17の遮光板33を移動するプログラムが予め記憶されている。ノッチ部Nが照明部13と受光部15を結ぶ線分L上に位置する直前において、制御部19は、半導体ウエハWのノッチ部N以外の上ベベル部E1からの正反射光が受光素子31に入射しないように遮光部17を制御する。この時の遮光板33の状態は、図6に示すようになる。
【0037】
回転テーブル11の回転により照明部13と受光部15を結ぶ線分L上にノッチ部Nが位置すると、制御部19はプログラムに従って遮光部17の遮光板33を連続的に移動し、ノッチ部Nの上ベベル部E1からの正反射光が受光素子31に入射しないように遮光部17を制御する。例えば、図5の線分C、Eの延長上に受光部15が位置する時には、遮光板33が図8に示す状態になるように制御する。また、図5の線分Dの延長上に受光部15が位置する時には、遮光板33が図6に示す状態になるように制御する。
【0038】
ステップS7:欠陥検出部21に受光素子31から光量信号を取り込む。受光素子31には、散乱光のみが入射される。
【0039】
ステップS8:照明部13をオフにする。回転テーブル11の回転により照明部13と受光部15を結ぶ線分L上からノッチ部Nが外れると、制御部19は照明部13をオフにする。
【0040】
ステップS9:遮光部17の制御を終了する。
【0041】
ステップS10:回転テーブル11の回転を終了する。この終了位置は、例えば、図2に示すように、照明部13と受光部15を結ぶ線分Lに対して角度β2の位置である。
【0042】
ステップS11:散乱光の総量を求める。欠陥検出部21は、受光素子31から入力された光量信号を積算し散乱光の総量を求める。
【0043】
ステップS12:散乱光の総量が閾値以下か否かを判断する。閾値は、例えば、予め実験により設定されている。閾値は、散乱光の総量が閾値以下の場合に、ノッチ部Nの上ベベル部E1に欠陥が存在しないと判断可能な値に設定される。
【0044】
ステップS13:閾値以下の場合には、正常と判断する。この場合には、ノッチ部Nの上ベベル部E1に欠陥は存在しない。
【0045】
ステップS14:閾値を超えている場合には、異常と判断する。この場合には、ノッチ部Nの上ベベル部E1に欠陥が存在する。
【0046】
ステップS15:判断結果を出力する。半導体ウエハWのノッチ部Nが正常であるか否かを画像、音声等で出力する。
【0047】
上述した検査装置では、受光部15の前方に半導体ウエハWの回転に対応して変動しノッチ部Nからの正反射光が受光部15に入射することを制限する遮光部17を設けたので、半導体ウエハWのノッチ部Nからの散乱光を確実に検出することが可能になり、欠陥の検出精度を向上することができる。すなわち、遮光部17によりノッチ部Nからの正反射光が受光部15に入射することが制限されるため、照明部13からの照明光の入射角を小さくすることが可能になり、凹欠陥Kからの散乱光fを効果的に検出することが可能になる。そして、これにより凹欠陥Kからの散乱光および凸欠陥からの散乱光を確実に検出することが可能になり、欠陥の検出精度を向上することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0048】
(1)上述した実施形態では、半導体ウエハWのノッチ部Nの欠陥検出に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、種々の被検査物の欠陥検出に広く適用することができる。
【0049】
(2)上述した実施形態では、半導体ウエハWを回転して欠陥を検出した例について説明したが、例えば、半導体ウエハWを直線的に移動して欠陥を検出するようにしても良い。
【0050】
(3)上述した実施形態では、受光素子31にフォトダイオードを用いた例について説明したが、例えば、CCD等を用いても良い。
【0051】
(4)上述した実施形態では、遮光部17に一対の遮光板33を用いた例について説明したが、例えば、円形状の可変絞りを用いても良い。
【0052】
(5)上述した実施形態では、ノッチ部Nの上ベベル部E1の欠陥のみを検出した例について説明したが、例えば、半導体ウエハWの下方にも照明部、遮光部、受光部を配置し、下ベベル部E3の欠陥を同時に検出するようにしても良い。また、アペックスの外側にアペックスの欠陥を検出する装置を設け、アペックスの欠陥を同時に検出するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の検査装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の検査装置を示す上面図である。
【図3】図1の遮光部17の詳細を示す説明図である。
【図4】半導体ウエハWの外周縁部Eの詳細を示す断面図である。
【図5】ノッチ部Nの詳細を示す説明図である。
【図6】ノッチ部Nの断面Dにおける遮光部17の状態を示す説明図である。
【図7】断面Dに凹欠陥Kがある時の検出状態を示す説明図である。
【図8】ノッチ部Nの断面C,Eにおける遮光部17の状態を示す説明図である。
【図9】断面C,Eに凹欠陥Kがある時の検出状態を示す説明図である。
【図10】図1の検査装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
11…回転テーブル、13…照明部、15…受光部、17…遮光部、19…制御部、21…欠陥検出部、31…受光素子、33…遮光板、E…外周縁部、N…ノッチ部、W…半導体ウエハ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を移動可能に保持する保持部と、
前記被検査物の縁部に光を照射する照明部と、
前記縁部で発生する散乱光を受光する受光部と、
前記被検査物の移動に対応して変動し前記縁部からの正反射光が前記受光部に入射することを制限する遮光部と、
を備えてなることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置において、
前記被検査物は円盤状であり、
前記保持部は、前記被検査物の中心を保持して回転させることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2記載の検査装置において、
前記被検査物は、半導体ウエハであり、外周縁部にノッチ部が形成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の検査装置において、
前記受光部は、前記縁部からの散乱光を受光するフォトダイオードを有することを特徴とする検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−267306(P2009−267306A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118496(P2008−118496)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】